悩む経営者は多いが…(C)日刊ゲンダイ
遅刻注意され慰謝料請求 「アタリ屋社員」から会社を守る方法
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/163177
2015年8月29日 日刊ゲンダイ
来年の新卒採用が本格化している。どんな会社も、将来性のある新人が欲しいだろう。しかし、売り手市場の今、かわいい顔した新人サンの中には、羊の皮をかぶったオオカミみたいな怖いヤツがいるという。
■自宅謹慎を命じたら「慰謝料50万円」の請求
都内の運送会社社長が言う。
「この業界は経験がモノをいいますが、人材不足でベテランドライバーはなかなか採用できない。それで、去年、体育会系で愛想がいい新人を採用して育てる方針に切り替えたんです。『先輩のように大型免許を取って、たくさんの荷物を運びたい』とヤル気を見せていたんですが、2カ月ほどで無断遅刻するわ、遅配するわ、お客さんの荷物を壊したこともありました。それで、自宅謹慎を命じたら、翌日、“その筋”の男が『彼に長時間労働をさせた上、自宅謹慎とは何事だ』と怒鳴り込んできて、『慰謝料50万円を払わなければ、裁判するぞ』と脅されたのです」
まるでアタリ屋みたいだが、業界の悪しき慣例として、サービス残業が横行し、長時間労働があったのは事実。怖いお兄さんはそこを突いて、「遅刻や遅配は、オタクらの過重労働のせいだ」と責め立てた。
社長にしてみれば、まったくの言いがかりだろう。ブラック企業アナリストの新田龍氏が言う。
「アタリ屋社員は決して少なくありません。運送業界や物流、飲食など、サービス残業が多い業界で目立ちます。悪い連中は、ターゲットの会社を見つけると、アタリ屋を忍び込ませて、すぐ無断欠勤や遅刻を繰り返し、上司や経営者から『クビだ』という言質を引き出すと、モンスター役が登場。慰謝料を要求するのがよくある手口です。会社にしてみれば、のめる要求ではありませんが、法律上、このような悪徳社員でも、解雇は難しい。だから、サービス残業があったりすると、思いもよらぬ言いがかりが、成立してしまうのです」
■悪徳弁護士が介在するケースも
飲食業界のAさんも苦い経験がある。
「3年前に採用した新人がシフトをすっぽかすようになり、『いい加減にしろ。やる気ないなら、辞めろ』と言った翌日、社員は出社してこず、その次の日、ある弁護士事務所から慰謝料として3カ月分の給料を求める内容証明が送られてきたのです。事務所に電話すると、こちらの落ち度を指摘されるばかり。釈然とはしませんでしたが、3カ月分の60万円を払いましたよ」
このケースのように、モンスター役として弁護士事務所が介在するケースもある。アタリ屋をクビにしたと思ったら、弁護士から内容証明が送られてきたなんて、シャレじゃ済まないだろう。アタリ屋から会社を守る手立てはないのか。
「中小企業だと、顧問弁護士を雇う余裕がなく、法的な知識に疎い。裁判などになれば、カネも時間もかかります。それで、大きなトラブルに発展することを嫌って、要求されるままカネを払ってしまうのですが、そんなことをしているとカモられます。ですから、解雇や残業などについてきちんと就業規則を整えておくこと。カネを払ってしまう会社ほど、就業規則がいい加減だったり、そもそもなかったりする。弁護士や社労士に相談するのはそれからです」(新田氏)
アタリ屋は新入社員だけでなく、アルバイトにもいる。そんなヤツらに好き勝手させてはダメだ。