20150725 R/F #133「小出裕章ジャーナル」【廃炉工程表見直しについて】
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廃炉工程表見直しについて「あまりにも楽観的な見通しの上にその工程表が作られていましてこんなものはできっこない、いずれ改訂されると思っていました」〜第133回小出裕章ジャーナル
http://www.rafjp.org/koidejournal/no133/
2015年07月25日 ラジオフォーラム
谷岡理香:
政府の関係閣僚会議は、6月12日東京電力福島第一原発の廃炉に向けた工程表について、1号機から3号機の使用済み燃料プールからの燃料の回収をこれまでより最大で3年程度遅らせること等を盛り込んだ改訂を決めました。この大幅な改訂は2013年6月以来、2年ぶりです。そこで、今回は廃炉の工程表、中期ロードマップとも言われますが、この廃炉工程表の改訂について小出さんに教えて頂きます。今日も電話がつながっています。小出さん、今日も宜しくお願い致します。
小出さん:
こちらこそ、よろしくお願いします。
谷岡:
基本的なところからですが、廃炉工程表とはどういうものなのか改めてご説明をよろしくお願い致します。
小出さん:
これは、もう皆さん十分にご承知の通り、2011年3月11日に福島第一原子力発電所が巨大な地震と津波に襲われて、当日運転中だった1号機、2号機、3号機は炉心が溶け落ちてしまって、爆発をするというような事故になりました。4号機は当日、定期検査で運転をしていなかったのですが、その4号機でもなぜか巨大な爆発が起きて、その当時の使用済み燃料を全て格納していた使用済み燃料プールが、半分壊れた建屋の中に宙吊りになってしまうという状態になったのでした。
大変危険というか、どうしていいか分からないような事故が起きて、進行していたわけですが、とにかくなんとか放射性物質を飛散させないようにしなければいけないということで、今後どのような作業が必要になるかということで、廃炉工程表というのが2011年の暮れに策定されました。
溶け落ちえしまった炉心をどうするのか。1号機から4号機まで全てに使用済み燃料プールがあって、その底に大量の使用済み燃料が眠っていたのですが、その使用済み燃料をどのように取り出すことができるか、あるいは、これも皆さんご承知だと思いますが、どんどん放射能の汚染水というのが、今溢れてきてしまっているわけですが、それをどのように閉じ込めることができるのか。海に流さないで済むのか。そのために、何が必要なのかというようなことを一応、策定したという、工程表と私達呼んでいますが、そういう計画が2011年の末にできたのです。
ただ、私から見ると、あまりにも楽観的な見通しの上にその工程表が作られていまして、「こんなものはできっこない」「いずれ改訂される」と思っていました。そして先程おっしゃってくださった通り、2013年6月に大幅に改訂されたのですが、それすらが、また実行することができないということで、6月12日に第2回目の大幅な改訂というものが行われました。
谷岡:
楽観的すぎる工程表ということですが、改めて何ができていて、何ができていないのかっていうことをもう一度、小出さんの方からお話して頂けますか?
小出さん:
はい。基本的には、使用済み燃料プールの底に使用済み燃料が大量に残っているのです。4号機の場合には、1号機、2号機、3号機、4号機の中でも、特に大量の使用済み燃料が残っていまして、爆発で、そのプールが宙吊りにになってしまったということで、とにかく一刻も早く取り出しを行わなければいけないということで、一昨年の11月から取り出し作業を始めまして、昨年の11月まで丸1年かけて、ようやくに使用済み燃料プールにあった燃料を取り出したのです。
しかし1号機、2号機、3号機の方は、4号機に比べても放射能の汚染がはるかに高くて、未だにプールに近づくことすらができない。でも、そのプールの底からとにかく燃料を取り出さなければいけないということで方策を考えて、一応、工程表というものを作ったわけですが、先程も聞いて頂いたように、あまりにも楽観的な見通しの下に作られていたわけで、到底そんなことはできないということで、3号機で、今年のもう上期には行うと予定されていたものが2年遅れることになりましたし、1号機、2号機の方も3年程遅れて作業を始めるというようなことになってしまいました。
おそらく、それもできないだろうと私は思っています。それから、もうひとつは溶け落ちた炉心をどうするのかということなのですが、未だに溶け落ちた炉心が、どこにどのような状態で存在しているのかということすらが全く分からない。人間が行けば、即死してしまうような場所です。
そのため、代わりにロボットを行かせようとしてきたのですが、ロボットという物は放射線に大変弱いのです。そのため送り込んだロボットもみんな帰ってこれないという状況で、未だに溶け落ちた炉心がどこにどのような状態であるかわかりません。国や東京電力は、いつの時点かで、その溶け落ちた炉心を外部に掴み出すというような工程表、ロードマップを作ったのです。
私は、もうとうの昔から、そんな掴み出すなんていう作業はできるはずがない。もう仕方がないので、1986年に事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所と同じように、石棺という巨大な容器で覆うしかないんだということを言ってきました。国の方も、ようやくにしてつかみ出すということが大変難しいということを認めて工程表を書き換えて、「もっと遅く、とにかくなります」と。さらに「これまで国や東京電力が言っていたようなやり方はダメかもしれないので、別のやり方も考えます」というようなことになりました。
谷岡:
でも、そうは言っても、その現場で働いてる労働者の方々とかの健康問題もありますし、スピードっていうのは大事なことだと思うんですけどもいかがですか?
小出さん:
はい。もちろんスピードは重視しなければいけません。いつまでもズルズルと手をこまねいていれば、放射能がどんどん外に出ていってしまうことになるわけですから、力をそこに集めて素早くやらなければいけないと思います。
ただし、相手が放射能ですので、やればやるだけ被ばくをしてしまいますので、労働者の被ばくを少なくするということはもちろん考えなければいけません。ですから、本当は両方きちっとやらなければいけないのですけれども、でも先程もちょっと聞いて頂きましたけれども、東京電力と国がこれまで考えてきた工程表というのは楽観的な見通しに立って作られてきました。
そのため、その工程表が次々と改訂されてきたということになったわけです。もっともっと国も東京電力も事態の深刻さを認識しなければいけませんし、こういうものは厳しい状況を考えた上で、工程表というものを本来は作らなければいけないと思いますし、今回改訂された工程表も結局、また何年かすれば改訂されて、もっともっと難しい、事故収束まで時間がかかるということに、必ずなるだろうと私は思っています。
谷岡:
なんかちょっと気が重たくなってきましたが、小出さん、どうもありがとうございました。
小出さん:
はい。ありがとうございました。