消費増税には意味がなかった?「日本の決算報告」を読んで分かった財務省「増税論」のワナ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44174
2015年07月19日(日) ドクターZ 週刊現代 :現代ビジネス
■税収が大幅に増えた
財務省が'14年度決算概要を公表し、税収が前年度比7兆円の大幅増となった。
まず所得税については、「'14年度税収額」、「前年度比増加額」、「前年度比増加率」がそれぞれ16兆7902億円、1兆2594億円増、8・1%増。法人税は、11兆316億円、5379億円増、5・1%増。消費税は増税もあったので、16兆289億円、5兆1996億円増、48%増で、その他税では10兆1200億円、209億円増、0・2%増。そして、税収全体では、53兆9707億円、7兆178億円増、14・9%増だった。
さて、これはなにを意味するのか。
財務省はこれまで、税収弾性値(名目GDPが1%伸びるときに、税収が何%伸びるかという指標)が「ほぼ1」だと主張し、景気回復しても税収はさほど伸びないと言ってきた。これが今回の税収の大幅増を受けて、財務省の主張が大きく崩れ去ったとネット上で騒がれている。
たしかに、その気持ちはわかる。'14年度の名目GDP成長率は1・6%なので、形式的に税収弾性値を計算すると、税収伸び率14・9%を1・6%で割って、9・3と言いたくなる。
しかし、これは財務省に簡単に論破されてしまう。というのは、税収弾性値は「税制改正なかりせば」という前提で計算されるもの。実際、税収増の大半は消費税の増加であり、これは消費増税に基づく。税制改正の影響を除いて正確な税収弾性値を計算するのは、専門家でないとまず無理なのだ。
というわけで、この理屈では財務省に一泡吹かせることはできない。しかし、財務省を攻めるポイントはほかにある。
■予算のいい加減さ
一つは、「当初予算のいい加減さ」だ。年末に来年度予算の政府案が決まると、マスコミ各紙は特集を組んで、来年度予算の解説をする。それらの記事は、財務省から事前資料をもらわないと書けないので、マスコミは日頃から財務省との関係を良好に保とうと、「ポチ」になる。もし事前資料を入手できず、一社だけ記事が書けないのはマスコミとしては一番怖い。
さて、'14年度決算で、景気の変動を受ける所得税と法人税について、当初予算と比べると、所得税で13・5%増で、法人税で10・1%増だった。つまり、当初予算の税収はまったくあてにならない数字だった。
しかも、これは'14年度に限らない。'13年度でも決算と当初予算を比べると、所得税で11・7%増、法人税20・4%増。こうしてみると、当初予算では、財務省は意図的に税収を少なめに見積もっているのではないかという疑問すら出てくる。もちろんその目的は、財政危機を煽るためだ。
もう一つのポイントは、前年度比でみて、'14年度決算の所得税、法人税は、'13年度ほど伸びていないこと。'14年度決算の所得税、法人税は前述したように、前年度比で8・1%増、5・1%増だが、'13年度には、それぞれ11%増、7・5%増とより伸びが大きい。消費増税によって、'14年度の景気は落ち込んだわけだ。
要するに、消費増税で消費税は増えたが、所得税と法人税はもっと増えるべきところが増えなかった。消費増税しなくても、結果としての税収は変わらなかったかもしれない。決算から見えてくるのは、増税ばかりを主張する財務省は賢くないということなのだ。
『週刊現代』2015年8月1日号より