雑感。ギリシャと中国
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2015年06月29日 在野のアナリスト
ギリシャが昨晩、資本規制の導入を宣言しました。1日60ユーロまでの引きだししか認めない。ということは、その分のお金しか市場に流通しない。経済はさらに失速することになります。しかも1週間、混乱がつづけばさらに長くなるかもしれず、ECBは支援をつづけるとしますが、状況をみて、という但し書き付きです。つまり見捨てられる可能性を残してしまいました。これでは安定にはほど遠く、逆に不安を煽るのですが、ECBも保身を考え出したということでしょう。
例えばリーマンショック後、米国がいち早く立ち直ったのは、金融機関にムダとも思えるほどの巨額な資本を積み、破綻させないとの態度を鮮明にしたためです。これで取引も落ち着き、信用不安に陥りかけていた市場を安心させた。翻って今のECB、ギリシャ中銀の手法ではいずれ潰れるかもしれない、との疑念を払拭できません。つまりギリシャの信用不安にはまったく応えていないのです。バブル崩壊後の日本の小出し対応に似て、危機を長引かせてしまっています。
先週末、追加利下げを発表していた中国では上海株が後場に崩れ、景気対策効果に疑問が呈せられました。実は、ギリシャ問題も色々と云われますが、根っこは『社会主義の体質を引きずる国が、資本主義市場に参入するときが、もっとも経済効果がある』という点が重要です。ギリシャではPASOKによる社会主義的体制がつづき、国民には暗黙の国家保証という概念が根付いてしまった。欧州圏でも高い社会保障を見直せ、というのはこうした歴史からですが、それが国民の安閑となり、楽観が景気を押し上げてきた。これは現在の中国にも当てはまります。
国が何とかしてくれる、そうした意識が経済を押し上げる反面、それが崩れると脆い。これは戦後の日本がバブルを起こした状況とも似ますが、国がどれほど体制の転換を訴えても、国民の意識が変革するには10年以上かかります。未だにギリシャが他の欧州圏と異なるのは、こうした意識の差でもあります。そして中国にも、同じ状況が突きつけられており、国民が現実に気づき始めるタイミングも、近づきつつあるのかもしれません。もう国の保証はないのだ、と。
ギリシャの露国への接近も危惧されますが、元々露国はギリシャ正教と近いロシア正教の国であり、かつ露語にもギリシャ語の影響がみられる。近縁とは言わないまでも、ユーロ圏離脱となれば、次に近づくのは露国であるのが必定です。ユーロ圏が揺らぐ事態すら想定されます。経済的には露国も苦境でも、世界でふたたび存在感を増すことが、プーチン氏の人気をさらに押し上げるのですから、露国としてはムリしてでもギリシャとは接近したいところでしょう。
社会主義的体質を引きずる国が、そろって経済に不安が生じ始めた。そしてその成長に頼ってきた資本主義国も、ここに来て意外と根が深いと気づき始めた。それは信用を毀損する、という最も資本主義では大切にしなければならないことを、経済不安に陥る国が簡単に裏切ってしまう、という事実を目の当たりにし始めた点にあるのかもしれません。AIIBへの調印を、7ヶ国が先延ばしにしたのも、様々な事情があるとはいえ、中国への信用が影響しているのでしょう。
日本でも社会保障の減額、が叫ばれますが、中々すすみません。それは戦後の社会主義的体質だった時代に築かれたもの、その恩恵に浴していた層にとって、見直しは国が嘘つきにみえるためでもあります。ギリシャ、中国ともにその体質では国がもたない、ということを国民に示していかないと、対策を打ちだしても空砲にすらならない。世界同時株安の号砲を鳴らしましたが、そのゴールはまだ見えない点が、さらに不安を煽っているところなのでしょうね。