雑感。ものごとの決め方
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2015年05月26日 在野のアナリスト
対ドル、対ユーロでも急速に円安がすすんでいます。ギリシャ不安が理由として挙げられますが、それだとユーロに対しては円高になるはずです。先週末のイエレンFRB議長講演で米利上げ局面を意識した動きが、メモリアルデイ明けに急速に出てきたのか? いずれにしろ、ここからは思惑による値動きが出やすくなるのでしょう。それが米国の癇に障り、あらゆる圧力によって日本の金融政策、経済政策にも影響が出るか。影響は様々に出てくるはずです。
日本では安保法制の国会論戦がはじまりました。概念的なことはおいて、日本では物事の決め方に問題を感じます。安倍政権では、安保法制のリスクを説明せず、審議を深めないことで国会を通過させようとします。それはマイナンバー法案も同じ、リスクの説明が正しくされず、国民がそれを理解しないまま法案が通り、運用されて始めて不利益を感じ、撤廃や修正となります。
安倍首相自ら「グレーゾーンから集団的自衛権まで切れ目ない対応」と述べているのですから、当然のようにリスクも高まりますし、難しい判断を迫られます。安倍政権では「絶対にない」などとして、様々なリスクが起きない、起きるはずがないと封印しますが、その根拠は法案内には見えず、単にそう述べているだけ、に過ぎません。言葉は悪いですが、安倍政権は単に頭が悪くてそう言っているのか、確信犯的にそう述べているか。いずれにしろリスクを議論せず、実際に自衛官が苦境に陥る、死亡事例が生じたとき、始めてそのリスクについて国民が意識し、この安保法制の問題について知ることになります。しかしそれでは遅いのです。
インドの例でみてみます。モディ政権になって1年、モディノミクスと持て囃され、資金流入がつづき内需が好調、一見うまくいっているように見えます。しかし独裁色を強め、国会との調整がつかず、決めきれないことも多い。内需は堅調といっても、国内では負債の多い企業に対して、シャドウバンキングが融資する形で延命している、といった事情もあります。市場が期待したほど、経済改革もすすんでおらず、ここからはマネーの変調が起こるのかどうか? それによっては一気に景気も悪化する懸念すら漂うほどとなっています。
前政権は、逆に周りの意見に耳を傾け、調整するものの決めきれない、といった形も多かった。人種の坩堝であるインドでは、民主主義的であると多様な意見がぶつかり合い、難しいといった面はあったのでしょう。しかし逆からみれば、モディ政権がいずれシリアのアサド政権化する恐れもあります。独裁を強めていくと、必ず反対派の勢力が不満をため、何らかのきっかけで暴発する恐れもある。独裁により物事を決めてしまう、とは速さがメリットである一方、別の問題も孕む。特に、国の制度には利害が密接にからむため、尚更危険でもあるのです。
安倍政権はこれまでも、物事の決め方ばかりでなく、検討の課程から問題のあるケースが多い。直近でも、TPP要件を国会議員に開示する、といった後で取りやめる。東京五輪も同様、国立競技場の件など、地方自治体の了承を得る前に、安倍氏に都の負担は500億円と報告していたと伝わります。決め方、手続きからして素人、独善的であって、これで自分たちだけで決め、本来は必要なリスクについての議論を封殺してしまうので、法案にもまったくそれについてのケアが盛り込めない状況となっているのです。独裁、独善は後に抱える問題も大きい。安倍政権では、まさにこの愚を犯そうとしています。インドでトラブルが出てくるのはもう少し先になるでしょうが、安倍政権はすでに2年半を越してくるので、初期の経済政策でも、問題点が出てくるのでしょう。金融緩和をしても夏ごろにはデフレに戻るかもしれない。そうした金融政策、経済政策の失敗を意識して円安がすすんでいるのなら、止め処ない下落の、今は幕開けを迎えようとしているかもしれず、注意が必要な円安局面に入ってきた、といえるのでしょうね。