〔カバー裏〕
スコット南極探検隊の映像記録を残したポインティングは、世界を旅し、日本を殊の外愛し、この世の楽園と讃えた。
京都の名工との交流、日本の美術工芸品への高い評価。美しい日本の風景や日本女性への愛情こもる叙述。
浅間山噴火や決死の富士下山など迫力満点の描写。江戸の面影が今なお色濃く残る百年前の明治の様子が著者自らが写した貴重な写真ととものありありと甦る。
〔第八章 日本の婦人について〕
日本を旅行するときに一番すばらしいことだと思うのは、何かにつけて婦人たちの優しい手助けなしには一日たりとも過ごせないことである。
婦人は家の中で卓越した存在であるだけでなく、日本の社会や産業においても急速に極めて重要な存在となりつつある。
(かつて)ラフカディオ・ハーンが「この世で最も気立ての優しい女性」と書いた…。
今日でさえも、日本の主婦が夫の尊敬と愛情を受けながら、家庭で保っている地位がほとんど理解されていない。
松山にあるロシア人捕虜のための病院で一週間過ごした後で、日本の看護婦こそまさに慈愛にあふれた救いの女神だと、心底から感じたのである。その優しい心遣い、病院の中を妖精のように素早く動き回る優雅な動作、病人の希望にすぐ応じられるような絶え間ない心配り、疲れを知らぬ気力と献身、その忍耐と熱意、患者に対する丁重な態度、包帯を洗って交換する優しい介抱ぶり、こういったものすべてが、日本の婦人は世界のどこの婦人たちにも負けない女性として最高の美徳に溢れていることを示している。彼女たちは気高く、かくも誠意をこめて、義務と人間愛の要請に応えたのだ。
日本の婦人の真価を陸軍の将校が認識していた証拠を、私が満州の第一師団に従軍していた間に何度となく見たことがある。
黒木(為)大将はこう言った。「日本の兵隊の業績は、もし我が国の兵隊がその母親から、義務と名誉のためにはすべてを犠牲にしなければならないという武士道の教育を受けなかったら、今日の成果を挙げることができなかったでしょう。日本の婦人は非常に優しく、おとなしく、そして謙虚で、また、それと同時に大変勇敢でもあり、我が国の兵隊の勇気は大部分、小さい時にその母親から受けた教育の賜物です。兵隊と同様に、日本の婦人は国に大きな貢献をしているのです」
最後に藤井包総陸軍中将が黒木大将の言葉に付け加えて、誇らしげな調子でこう言った。「日本の婦人は世界一です。皆で乾杯しましょう」。私はラフカディオがこれと同じことを言っているのを再び思い出した。
日本の婦人の真の姿とその能力をほんとうに知っている人なら、公平に見て、この世の中にこれ以上勝れた、これ以上忠実な、これ以上勇気のある婦人はいないと主張するにちがいない。そこで我々全員は、黒木大将の「日本婦人はこれからもそうあってほしいものです」という言葉に共鳴しつつ乾杯した。
【出典】「英国人写真家の見た明治日本〜この世の楽園・日本」ハーバート・G・ポンティング/講談社学術文庫
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