【 原子力産業界の崩壊が始まった!西側先進各国 】《前篇》
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2015年3月1日 星の金貨プロジェクト
アレバ社が発行済み株式の総額を上回る規模の損失を計上、フランス、原子力産業の崩壊を警告
西側先進各国では、稼働中の原子力発電所を段階的に廃止していく流れがもはや明白
デイヴィッド・ジョリー、スタンレー・リード / ニューヨークタイムズ 2月23日
フランスの主要原子力発電企業が、今期の損失によりもはや独立して操業を続けることが不可能になる可能性があることを明らかにしたことを受け、フランスのエネルギー大臣が国が運営する原子力産業界の見直しと再編成は、もはや避けられない事態となっていると2月23日月曜日、談話を発表しました。
23日、世界の代表的原子力企業であるアレバは今期の実績について前年度5億ユーロ上回る、49億ユーロの損失を計上する見込みであると発表しました。
これを受けフランスのセゴーレ・ヌ・ロワイヤル・エネルギー大臣は記者団に対し、フランスの主な原子力発電企業について、
「フランス国内の主要な企業と連携し、自らは核となる事業に改めて集中し、国際レベルでの入札の場での受注獲得を実現するため、業界の再編成を行う必要がある。」
と語りました。
他の先進国が原子力発電に対し懐疑的、あるいははっきりと反対の立場を取る中、フランス政府は原子力発電の支持者であり続け、アレバ社の株の87%、そしてかつてはエレクシリシテ・デ・フランスの名で知られていたEDF社の約85%の株式を保有しています。
EDF社の方は主力原発として国の北西部に建設中の、フラマンヴィル原子力発電所の工期が繰り返し遅れ、建設コストが急激に膨らみ続けているという問題に直面しています。
さらにはEDFとアレバの両社が参加することになっている、イギリスの原子力発電所建設プロジェクトが進行するのかどうかも、大きな懸念材料の一つになっています。
両社の先行きを暗くしているのは、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故以降、世界が原子力発電に向ける目が全く違ったものになったことがはっきりと影響しています。
さらには自他ともに世界のリーダーと認めてきたフランスの原子力企業自身が犯した誤りも、その地位を脅かす原因になっています。
新興国市場における原子力設備の新たな供給者としての中国の台頭、そして西側先進各国がメリットよりも、原子力発電所が宿命として抱えている数々の危険に目を向け始めたことに、フランスの原子力産業は容易には対応できませんでした。
アレバ社が月曜日に公表した37億ユーロという金額は、同社の発行済み株式の評価額の総額を大きく上回っています。
これは現存の原子力発電所の費用超過と資産としての評価減に苦しむ同社が、今後も事業を継続するのであれば新たな資金源を確保しなければならない状況にあることを示唆するものです。
世界の原子力産業の中心に座り、核燃料その他の主要な供給元であり続けるというフランスの野心を現実にするためには、アレバ社の存在は必要不可欠です。
しかし西側先進国では現在稼働している原子炉を段階的に廃止して行く方針がとられ、それに代わる原子炉建設の計画はほとんど無いという状況にあります。
「ヨーロッパは今後、電力市場における原子力発電のシェアが徐々に低下していくことを目の当たりにすることになるでしょう。」
ロンドンに拠点を置く研究組織であるチャサム・ハウスのアナリスト、アントニー・フロガットがこう語りました。
これとは対照的に今後20年から30年の間、原子力発電の中心は東に向かって移動することになるでしょう。
中国、インド、ロシア、韓国では工業生産量の増加に応じ、原子力発電が活発化すると見られます。
業界団体の世界原子力協会によれば、アメリカは建設中の原子力発電所はほとんどありませんが、それでも原子力発電の発電割合は高く、フランス、ロシアに続く規模となっています。
しかし何と言っても中国の原子力発電産業の発展が群を抜いています。
現在世界で計画中建設中の原子力発電所の約半分が中国に集中しています。
インドでも一定規模の原子力発電所の開発計画がありますが、中国同様可能な限り国内の原子力産業への依存を心掛けています。
しかし現在のところはフランスが発電量の最も多くを原子力発電に依存しています。
フランス政府がアレバにさらなる資本注入を行うのかどうか尋ねられると、ロワイヤル・エネルギー大臣は
「結論を出すには、まだ時期尚早です。」
と答え、次のように続けました。
「しかし、あらゆる選択肢がすでに用意されています。」
〈 後篇に続く 〉
http://www.nytimes.com/2015/02/24/business/international/areva-nuclear-results.html?_r=0
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【 原子力産業界の崩壊が始まった!西側先進各国 】《後篇》
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2015年3月2日 星の金貨プロジェクト
次々に問題が発生、遅れに遅れる原子力発電所建設の完成時期、巨額に膨らむ現場の維持・建設費用
フランスの巨大原子力発電企業、アレバの債券の格付けは今や『ジャンク』!
デイヴィッド・ジョリー、スタンレー・リード / ニューヨークタイムズ 2月23日
2月2日、アレバ社は今期の年間売上総額が前年比が8パーセント減の83億ユーロに減少すると公表しました。
その理由について同社は23日いくつかの理由を明らかにしましたが、その中でも保有株式の評価額の低下、フィンランドで建設中のオルキルオト原子力発電所の著しい工期の遅れによる事業収入の実現の遅れ、計画外の経費の増大が原因だと語っています。
※営業運転開始は2013年を予定していたが、2016年以降に延期されている。[訳者注]
アレバはこの後3月4日に2014年の決算報告を行う予定ですが、
「競争力強化のための体質強化に取り組むとともに、戦略的・財政的なロードマップの作成に注力する」ことを表明する予定になっています。
アレバ社広報担当のキャサリン・ベレゾウスキーは23日、公式にコメントした以上のことは現時点では明らかにできないが、3月には計画の詳細について明らかにできるだろうと語りました。
一方のEDFは、コメントの要請に応じませんでした。
EDFの英国ヒンクリー・ポイント原子力発電所の建設計画はアレバ以上に世界の注目を集めていますが、246億ドルをかけてのこのプロジェクトは、フランスの原子力技術の優劣を明らかにする絶好の機会になりそうです。
EDFは今月、1990年以降英国として最大規模の原子力発電所建設が、今後も続けられるべきかどうかの決定が、近いうちに行われる可能性があると語りました。
アレバもヒンクリー・ポイント・プロジェクトの共同参画企業のひとつされていますが、直近の巨額の損失計上により、今後はこの巨大プロジェクトに参加し続ける体力を維持できるかどうか疑問が持ち上がっています。
アレバは2018年までにはヒンクリー・ポイント原発の稼働を規定していましたが、今や2023年の稼働開始さえ危ぶまれています。
アレバあるいはEDFはヨーロッパにおけるすべての原子力発電所建設に関わっていますが、特徴的なことは建設されるのは1990年代にフランスが開発し世界的にも大きなシェアを持つEPR原子炉であることです。
しかしEPR原子炉は構造が極めて複雑で、建設費用が莫大な額に昇ることが解っています。
23日に行った会見で、1週間ほど前からル・フィガロを含むフランスのメディアが、アレバが決算発表で巨額の損失を計上する見込みであると伝えている点に特に言及しました。
アレバはこうした情報の根拠が曖昧であり、正確な財務情報については3月4日の正式な発表において明らかになるはずであるとコメントしました。
会見の合った23日月曜日、アレバの株価は2.1%下落したまま取引終了となりました。
パリに本社を置くアレバは、前々から経営状態の悪化が指摘されていました。
昨年11月同社は2015年と2016年のフィナンシャル・ガイダンス※作成の延期を発表しました。
※企業の内部者である経営者自らが公表する利益予想であるアーニングス・ガイダンスに、財務ガイダンスおよび非財務ガイダンスを含めたガイダンスの総称。
アメリカ、ヨーロッパの株式や債券市場においては、企業の業績予想の重要な材料の一つとされている。[訳者注]
その直後、スタンダード&プアーズはアレバの債券の格付けを『ジャンク』に引き下げました。
その理由についてスタンダード&プアーズは、アレバの「経営資源が底を尽きかけている」点に言及しました。
〈 完 〉
http://www.nytimes.com/2015/02/24/business/international/areva-nuclear-results.html?_r=0
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日本の原子力問題を的確に把握し、最も理性的な結論を導き出すためにはどうすればよいのでしょうか?
これまでも何度かご紹介しましたが、大いに参考にして良いのが下記の『神話の果てに・東北から問う原子力』という新聞記事のシリーズだと思います。
特に第16部『私の視座』の記事はぜひ皆さんにも一度、お目を通していただきたいと思います。
http://www.kahoku.co.jp/special/spe1098/