スーパー業界、イオン参画で加速する再編の舞台裏 大手の傘下入り、地方連合化…
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Business Journal 10月28日(火)6時0分配信
消費増税で消費者の財布の紐が固くなる一方、コンビニエンスストアやドラッグストアとの競合が激しくなり、スーパー業界は生き残りのためにスケールメリットを意識した再編が進んでいる。
中でも注目されるのが、イオンを軸にした動きだ。流通大手2社の2014年3〜5月期決算は明暗を分けた。セブン&アイ・ホールディングスは入れたてコーヒー「セブンカフェ」の販売増などコンビニ事業の好調に支えられ、最終利益は前年同期比5.6%増の395億円と過去最高を更新した。一方、イオンは来店客の減少や消費増税の影響で総合スーパーと食品スーパー事業が営業赤字に転落したことから、最終利益は90.1%減の13億円に激減した。
そこでイオンはスーパー事業の再編に乗り出した。傘下のダイエーを完全子会社化して、首都圏と関西は「イオンフードスタイルストア」の看板に掛け替え、食品スーパーに特化。他地域のダイエー店舗は、「イオン」か「マックスバリュ」に集約し、ダイエーは14年12月末で上場廃止する。
また、関東地域の食品スーパーの経営統合も行う。マルエツと、茨城県を中心に展開するカスミ、イオンの完全子会社マックスバリュ関東の3社が対象だ。2015年3月に持ち株会社を新設し、3社を傘下に置く。単純合算で店舗数は451店、売上高(14年2月期実績)は約6000億円と、国内最大級の食品スーパー連合となる。マルエツとカスミは15年2月に上場廃止とする。
イオンがグループ再編に踏み切った背景には、コンビニやドラッグストアが生鮮食品の販売を始めるなど、経営環境が一段と厳しくなっていることがある。
●先行する地方スーパーの再編
食品スーパーの再編は、地方が先行して進んでいる。地方の有力スーパー同士の連携が中心だったが、そこへイオンが参戦してきた。九州北部を地盤とする中堅食品スーパー、レッドキャベツ(山口県下関市)を9月に買収し、増資の引き受けなどで全株式の88.7%を取得して連結子会社に組み入れた。レッドキャベツは福岡県を中心に山口、佐賀、長崎、熊本の5県で低価格志向のスーパー41店を展開し、13年7月期の売上高は307億円。九州では食品を安い価格で売るコスモス薬品(福岡市)やトライアルカンパニー(同)、「安売王」の看板を掲げスーパーに進出し急成長を遂げるディスカウントストアのルミエール(福岡県京都郡)などと顧客の争奪戦が激しくなっている。中堅食品スーパーのマルキョウ(福岡県大野城市)は赤字に転落し、西鉄ストアを傘下に持つ西日本鉄道(福岡市)の出資を受け入れた。レッドキャベツも異業種との価格競争に敗れたことが、イオンに身売りする引き金になった。イオンはイオン九州とマックスバリュ九州などスーパーを中心に計200店を展開しているが、レッドキャベツの店舗が多い北九州市などは手薄だった。
北海道では食品スーパー大手、アークス(札幌市)が9月、岩手県を地盤とするベルプラス(盛岡市)と経営統合した。今回の統合でアークスグループは北海道と東北で計318店となり、岩手県の食品小売りのシェアは40%に上昇する。東北では10月、マエダ(青森県むつ市)、マイヤ(岩手県大船渡市)、おーばんホールディングス(山形県天童市)、キクチ(福島県相馬市)の食品スーパー4社が経営統合。4社合計で店舗数は66店、売上高は786億円(14年3月期実績)となる。
●スーパー再編、4つのパターン
地方では食品スーパーのライバルは同業者だけではない。ドラッグストアやディスカウントストアが採算を無視した低価格で、スーパーの本丸である食品販売を拡大している。コンビニも生鮮食品を扱うようになっており、異業種との価格競争が激しいのが特徴だ。
食品スーパーの再編は、主に次の4つのパターンに分類できる。
(1)セブン&アイ、イオンの大手2社の傘下に入る
イオンはレッドキャベツや山陽マルナカ(岡山市)を買収。セブン&アイは傘下のイトーヨーカ堂が岡山県を地盤とする老舗百貨店、天満屋(岡山市)のグループ会社で食品スーパーの天満屋ストアに出資して中国地方に足場を築いた。
(2)地域有力スーパーの傘下に入る
イズミ(広島市)、バロー(岐阜県多治見市)、オークワ(和歌山市)、平和堂(滋賀県彦根市)といった地域で高いシェアを持つ有力スーパーは、周辺の中小スーパーを傘下に組み入れている。
(3)地場スーパーのグループ化
北海道のアークスが共同仕入れ機構でのつながりを利用してグループ化を進めている。アクシアル リテイリング(新潟県長岡市)は共同仕入れ機構に加盟している新潟県と群馬県の食品スーパーが統合してできたことで知られる。
(4)異業種大手の傘下に入る。中堅スーパーのイズミヤ(大阪市)は今年6月、阪急百貨店、阪神百貨店などを展開するエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングの完全子会社になった。
イオンが生き残りをかけてスーパーの再編に着手したことで、今後、業界全体の再編がどのようなかたちで進むのか。スーパー各社は、待ったなしの対応を迫られている。
編集部