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2014年10月17日
7月17日付け「同題 その12http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1171.html」を書いてからちょうど3ヶ月が経過したのですが、本誌がこのシリーズで繰り返し予告していた「海外におけるオリンパス事件」が、ほんの少しだけ口を開けたようです。
日本ではもうほとんど「忘れられている」事件ですが、まさにこれから重大な局面となります。日本の当局のシナリオとは大きく違ってくるはずだからです。
本日(10月16日)夕刻から「米当局、オリンパス会計問題で独コメルツ銀行を調査」と外電が一斉に報道しています。日本の報道機関は今のところ動きがありません。
もともとコメルツ銀行は、金融制裁対象国との取引を巡り米当局の調査を受けており、6億5000万ドル(690億円)の罰金支払いで和解が近いとされていました。
同じ理由で仏BNPパリバ銀行が、本年6月に90億ドル(9500億円)もの巨額罰金を米当局に支払っています。
ところがコメルツ銀行に対しては、本件とは直接の関係がないニューヨーク・マンハッタン連邦検事局がオリンパスの損失隠しに関係がある取引記録を調査しており、和解が棚上げになっているようです。
コメルツ銀行には、オリンパスの損失隠しに重大な役割を果たしたチャン・ミン・フォン氏が、オリンパスとの取引を開始した直後の2000年に在籍していました。コメルツ銀行はオリンパスから300億円の預金を受け入れ、それを担保に「目いっぱい」海外ファンド等に融資して「飛ばし」の原資となっていたのですが、フォン氏はコメルツ銀行の残高証明に預金だけを記載しており融資の担保になっている事実を隠蔽していました。
フォン氏はまもなくコメルツ銀行から仏ソシエテ・ジェネラル銀行に「オリンパスとの取引とともに」移り、預金残高(つまり損失隠しに使われた金額にほぼ等しい)が2004年のピークに600億円となっていました。
この件でフォン氏は2012年12月にロサンゼルスで米国当局に逮捕され、まさにニューヨーク・マンハッタン検事局の取り調べを受けていました。裁判も終了しているはずですが、なぜか一切の情報が公開されず、司法取引が行われたことが強く感じられます。
大変に不思議なことに、日本ではこの件で誰も罪に問われていませんが、驚くほど単純で悪質な損失隠しの手法といえます。
こういった状況を考え合わせると、米当局がオリンパス事件でコメルツ銀行の責任だけを追及するとは考えられず、いよいよオリンパスの「外堀」を埋め始めたと考えます。
日本でのオリンパス事件とは、会社ぐるみではなく一部の経営陣が2組の「指南役」に主導されて損失隠しを重ねたという当局のシナリオ通りに決着がつけられています。それに沿った指南役の裁判については、近々書くことにします。
フォン氏の隠蔽に対してはオリンパスの関与を否定することが大変に難しく、日本当局のシナリオとは大きく違う「オリンパスが主導した悪質な証券詐欺事件」として米当局が取り上げ、和解するにも天文学的な罰金を米当局に支払う必要が出てくるはずです。
つまりフォン氏が銀行の残高証明に預金だけを記載して融資の担保になっている事実を隠蔽していたことを「オリンパスが知らなかった」とするには無理があり、一連の取引でオリンパスがフォン氏に1000万ドルもの報酬を支払っているため「オリンパスが依頼していない」とするにも無理があります。
米国政府の「罰金ビジネス」を甘く見てはいけません。
何しろ実質国有化したFNMAとFHLMCにMBSを不正販売したとして、JPモルガンに130億ドル、バンカメ(メリルリンチ)に166億ドル、シティに70億ドルもの巨額罰金を課しています。
そのMBSを組成するためのモーゲージ(担保付住宅ローン債権)はFNMAとFHLMCから取得しており、その中に不良ローンがたっぷり含まれていただけですが、そんなことは米当局にとってはお構いなしです。
それに比べれば「オリンパスがフォン氏に指示して損失隠しを主導した」と断定するほうが、はるかに簡単でかつ説得力があります。
繰り返しですが最大の問題は、日本の当局のシナリオ(つまりオリンパスは悪くなく、一部の経営陣と指南役だけが悪い)とは大きく違った結果になってしまうことです。
http://www.asyura2.com/09/news8/msg/1043.html