食用油はご法度! カロリー制限で「ベジタリアン」になる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140816-00013177-president-bus_all
プレジデント 8月16日(土)10時15分配信
■左肩脱臼、あわや溺死!
ハワイでの仕事が終わって、翌日帰国だけどちょいと時間潰しをという私にマウイ島在住の写真家トム・ハールさんがOKと、車に乗せ、ホノルルから東へダイヤモンドヘッドを越えた先で、日没までには迎えに来るから、と降ろされたのが、サンデービーチであった。
そこはボディサーフィン発祥の地で、常時6、7メートルの大波が打ち寄せている。もっとも、その大波を一つ二つと潜ってかわし沖へ出れば、うねりがあるだけで、表面上は穏やかだ。ぷかぷか浮いて、適当な波にわが身をまかせ、横滑りして、トドかシャチよろしく波打ち際にすうっと滑り込めば、成功だ。
時を忘れて遊んでいるうち、ふと気づくと10メートル級の高波に乗っていて、ほう、さすがに眺めがちがう、と感心した次の瞬間、猛烈な力で巻き込まれ、一回転、二回転して激しい衝撃を左肩に感じた、と思ったら、左腕がだらん、と垂れさがって手の感覚がない。
「いかん! 」
波もろとも砂に叩きつけられたのだ。転瞬、砕けた大波はすさまじい吸引力で這いつくばった私を沖へ浚おうとした。
「もって行かれたら死ぬ」
亀より速く蟹より遅く、右手と両足で砂をかき、無心に波打ち際をはいあがった。
一難去り、ほっと一息ついて、さて、左腕をどうしよう、と右手で持ち上げ、こねたり回したりしていたら、どうにか関節はつながったらしく、指を動かせるようになった。不思議とこのときは痛みを感じなかったのだが、ひと晩寝て、さあ帰国となって物に触れると、肩までぴりぴりと疼痛がきた。だが、病院にも行かず、我慢しているうち治ったのだから、痛風発作と比べれば脱臼なんぞたいしたことはない。(※あくまで個人的な感想です)
ハールさんには左肩のことは内緒にして、その晩はご自宅でのお別れ会に招かれ、「生還」の祝い酒となったのが、ナパ・ヴァレーのフュメ・ブランであった。
■腹が減ったら野菜を食べるべし
カリフォルニア州はワインランドと呼ばれるほど米国の一大生産地であり、ナパ・ヴァレーもワイナリーとしていまやよく知られる存在だが、30年前はさほどでもなかった。ハールさんは撮影取材でロバート・モンダヴィ社を訪問したことがあり、それが縁で愛飲するようになったとか。社名はイタリア系米国人である創業者名に由来していて、なぜか海難のたびに私はイタリアの酒に救われている。
ハワイでは、アヒィ、オ・パカパカ、マヒマヒなどの淡白な味の魚をソテー、ムニエル、フライなどにしているが、すっきりとしてキレのいいフュメ・ブランや、マコンやムルソーにも比肩するシャルドネとともに味わいながらサンセットを眺めれば、楽園とはまさにこの島、と満悦満腹至福に浸ってしまう。
ところで、カロリー制限をしているとき、食用油は極力避けなくてはならない。ソテー、フライなど、半月かひと月に1食程度にとどめるべし。野菜はほとんどがカロリー1桁(100g)で、牛馬のごとくむさぼり食っても知れているのだが、オイル系のサラダドレッシングをかけたりすると、一気にカロリーがハネ上がるので気をつけなくてはいけない。
ホノルル市内にはベジタリアン専用のレストランがあって、日本ではあまりなじみのないレンズ豆とかガルバンゾーなど豆のサラダにありつけるのが嬉しい。
減量中、空腹が気になって寝つきの悪いときがある。原則として禁酒なので、私は本を読むことにしている。フォークナー『寓話』、トゥーキュディデース『戦史』など、たいてい何頁もめくることなく、寝入っている。
それでも眠れなければ、トカイ・アスズをショットグラスに50ccくらい飲む。すると、肩のあたりがずしん、と重く感じて、眠くなる。ちなみに、ハールさんもハンガリー系米国人で、ハールとはハンガリー語で「髪」をさすそうだ。残念ながらトカイの意味は聞きそびれてしまっている。
作家 山本亥(がい)=文