ドワンゴと統合 KADOKAWAを決断させた“買収恐怖”
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/150219
2014年5月15日 日刊ゲンダイ
いくらコンテンツがあっても一寸先は闇
出版最大手のKADOKAWAと「ニコニコ動画」で知られるドワンゴが経営統合する。10月に設立する持ち株会社「KADOKAWA・DWANGO」に両社ともぶら下がる計画で、ネット上では早くも「カドワンゴ」と呼ばれ、好意的に受け止められている。
事業拡大への期待からマーケットの反応も上々だ。14日の終値は両社ともに9%超の上げ幅だった。15日午前の終値はKADOKAWAが前日比10円安の3455円と下落したものの、ドワンゴは136円高の2934円と勢いが続いている。会見では、新会社の会長に就任するドワンゴ創業者の川上量生会長が「コンテンツとプラットホームの融合で新しい世界を切り開く」と言えば、取締役相談役に就く角川歴彦会長は「21世紀の新メディアを作りたい」と意気込んだ。
ITジャーナリストの井上トシユキ氏はこう言う。
「海外戦略に力を入れたいKADOKAWAの悩みの種が、チャンネル不足。主力コンテンツであるBL(ボーイズラブ)を中心としたライトノベルや『艦隊これくしょん』などの美少女ゲームは海外でも人気が高いので、ニコ動のプラットホームも欲しかったのでしょう。初音ミク人気の発火点となったように、アキバ系文化発信のプラットホームとして世界的に知名度を上げている。とりわけ、台湾やタイ、インドネシアでは勢いがありますが、牽引役だったモバイルゲームに陰りがみえるドワンゴにとっても渡りに船なのです」
KADOKAWAのコンテンツ制作力と、ドワンゴの動画配信ノウハウ。確かに、補完関係は大きい。ただ、2011年の資本提携を機に関係強化は順調に進んでいた。経営統合にまで踏み切ったのは、それぞれのお家事情も見え隠れする。東洋経済ニュース編集長の山田俊浩氏はこう言う。
「KADOKAWA経営陣の焦りと不安が背中を押したのです。現在の時価総額はKADOKAWA1013億円に対し、ドワンゴは1141億円。提携間もない時期は300億円ほどKADOKAWAが上回っていたのを逆転されてしまった。2、3年後にはさらに引き離される可能性がある。そうなればのみ込まれる懸念も出てきます。KADOKAWAが主導権を握ってコトを進めるには、ギリギリのタイミングだったのでしょう」
とはいえ、ドワンゴの大株主にはエイベックスや日テレが名を連ねていて、14%超を握る筆頭株主の川上会長が自社株をどこかに売り渡し、先行きが見えなくなる心配もあったのだろう。株式移転比率は、ドワンゴ1に対し、KADOKAWA1.168で着地した。
米国では昨年、ワシントン・ポストがアマゾンCEOに買収された。優良コンテンツをいくら抱えても、自前のネット戦略がないと、明日はどうなるかわからない。