日本や韓国ならともかく、ロシアが北朝鮮と親密な関係を築くことが「米国のアジア戦略への対抗」になるというのは、日経新聞記者の妄想の域を超えない。
日経記者は、「中国に対抗」という認識の披瀝にとどめておくべきだった。
日本などで広く信じられている北朝鮮と米国が敵対関係という見立てそのものが、見かけに引きずられたものでしかない。
ロシアの動きは、日朝・米朝・南北の関係が名実ともに良化していく歴史の先取りとみるのが正解である。
日本の政府やメディアが説明しているような日米韓の対北朝鮮政策が事実であれば、ロシアが記事にあるような無駄な動きをするはずもない。
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ロシア、北朝鮮に接近 鉄道や鉱山開発狙う 「アジア重視」米に対抗
ロシアが北朝鮮との経済関係の強化に乗り出している。トルトネフ副首相(極東担当)は4月末に平壌を訪れ、ロ朝に韓国を含めた3国共同の経済協力を働き掛けた。韓国、北朝鮮両国との関係強化をテコにパイプラインなどの開発を加速し、重要課題である極東地域の経済発展を進めるのが狙いだ。米オバマ政権のアジア戦略に対抗する思惑も透けて見える。
トルトネフ氏は極東連邦管区の大統領全権代表も務めるプーチン大統領の側近。訪朝したロシア要人のランクでは金正恩(キム・ジョンウン)体制発足以降で最も高い。
タス通信によるとトルトネフ氏は28日から3日間の滞在中、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長や朴奉珠(パク・ポンジュ)首相らと会談。北朝鮮経由でロシアと韓国を結ぶガスパイプラインや朝鮮半島縦断鉄道の建設、北朝鮮の鉱山開発へのロシア企業の参加などを協議した。
トルトネフ氏は北朝鮮側に南北朝鮮とロシアの3国が共同開発事業を推進するための国際会議をモスクワか極東などで開くことを提案。北朝鮮側も関心を示し、同氏は近く韓国側の意向を確かめる意向を示した。
北朝鮮への積極外交の背景には、朝鮮半島が絡んだ大型の経済案件をきっかけに極東への投資を呼び込みたいプーチン政権の思惑がある。極東地域の開発は遅れが目立ち、08年に策定した13年までの極東・東シベリアの発展計画の達成率は4割程度にとどまった。
北朝鮮への太いパイプを使って朝鮮半島への影響力を強め、アジア重視を掲げる米オバマ政権に対抗する狙いもある。金永南氏はトルトネフ氏との会談でウクライナ問題に関し「他国の内政干渉を続けている」と米国を非難。反米的な立場での連帯を印象づけた。
ただ、北朝鮮は韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権への対決姿勢を強めている。3国の共同事業を早期に進めるのは困難との見方が多い。ロシアは4回目の核実験の構えを見せる北朝鮮に自制を促すが「今のロシアに核実験を止めるだけの影響力はない」(欧州外交筋)のも実情だ。
(モスクワ=田中孝幸)
[日経新聞5月6日朝刊P.5]