住宅ローン、「ボーナス払いは危険」のウソと、35年返済の意外なリスク〜具体的試算より
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140325-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 3月25日(火)3時20分配信
住宅ローンの返済方法についてのアドバイスを行う際、ボーナスをもらっている人にはボーナス併用払いを勧めている。
ところが、「ボーナス併用払いは、ボーナスが減るかもしれないリスクがあるから、月払いのみの返済を利用したい」、あるいは「繰り上げ返済をする予定なので、とりあえず35年返済で考えている」と言われる機会が少なくない。
個人的に疑問なのは、「ボーナス払いは怖くて、35年の長期返済は怖くないのか」ということである。
私が勧めるボーナス併用払いは、「借入額の1割」をボーナス返済に回す方法。返済例を用いてご紹介すると、下記のようになる。2000万円のプランは200万円、3000万円のプランは300万円をボーナスで返すプランである。月々の返済額は、できるだけ近い金額に設定してある。
●返済期間5年短縮、総返済額も大きな差
【2000万円を金利2%で借りた場合の返済例】
月払いのみ(返済期間35年)......月々返済額6万6252円、総返済額2782万5840円
ボーナス併用払い(返済期間30年)......月々返済額6万6531円、ボーナス時4万4488円、総返済額2662万440円
返済額の差......120万5400円
【3000万円を金利2%で借りた場合の返済例】
月払いのみ(返済期間35年)......月々返済額9万9378円、総返済額4173万8760円
ボーナス併用払い(返済期間30年)......月々返済額9万9797円、ボーナス時6万6733円、総返済額3993万900円
返済額の差......180万7860円
見ていただくとわかるとおり、2000万円の借り入れでは1回4万円台(年に約9万円)、3000万円の借り入れだと1回6万円台(年に約13万円)のボーナス返済をすれば、月々の返済額は数百円しか増えないのに、返済期間を5年も短縮できる。返済期間が短縮されれば、当然、返済総額も減るわけで、それぞれ100万円以上も返済総額を抑えられる。
ボーナス併用払いに対する抵抗感を和らげていただくため、「月々の返済額よりも、ボーナス時の返済額を低めに設定する」ように促している。年間8〜15万円程度のボーナス払いなら、繰り上げ返済用の貯蓄をするのにも、特段問題は生じないと考えている。
年数が経過するほど、ローン残高の差が開く
しかもボーナス併用払いにして、返済期間を短縮すると、元金の減り方が早くなるメリットも得られる。例えば2000万円の借り入れの場合、月払いのみの35年返済は5年後のローン残高が1792万4531円となる。これに対し、ボーナス併用払いで返済期間を5年短縮すると、5年後のローン残高は1744万582円まで下がる。
ボーナス併用払いのほうが、年間の返済額が多いので、残高が少なくなるのは当然ともいえるが、両者の差は48万3949円。将来、なんらかの理由で家を売却する場合、ローン残高が少ないほど、売却したお金から手元に残せるお金を増やせるのはいうまでもないだろう。年数が経過するほど、ローン残高の差は開いていく点も見逃せない。
●35年返済のリスク
最後に、35年返済のリスクにも触れておきたい。
ご相談者からは、たびたび「ボーナス併用払いは怖い」という言葉を耳にするが、個人的には35年返済のほうが怖いと感じている。
その理由として、35年返済でスタートして返済に窮してしまったら、いきなり「救済措置」を利用することになるからだ。例えば30年返済でスタートしていれば、途中で返済に窮したとしても、自分の意向で35年まで返済期間を延ばすことは可能である。こちらは住宅ローンの条件変更になる。
ところが、35年返済でスタートした場合、返済期間をさらに延ばしたいと思っても、借入先の金融機関が認めた場合のみ、延長できる。救済措置と条件変更では、利用する側の立場に雲泥の差があるのだ。自分の意向だけで返済期間を延長できない点はリスクだろう。
住宅ローンの返済について「ボーナス併用払いは怖い」というイメージで捉えている方が少なくないが、イメージだけで決めるのは避けたほうがよい。具体的な返済シミュレーションを幾通りも行った上で、よりリスクが少ない方法を選択するべきだからである。
畠中雅子/ファイナンシャルプランナー、「高齢期のお金を考える会」メンバー