日航、全日空と真っ向対立 あす再上場1年…競争環境で大きな格差主張
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2013.9.18 06:00 SankeiBiz
日本航空が東京証券取引所に再上場してから19日で1年となる。経営再建は軌道に乗りつつあるが、ライバルの全日本空輸を傘下に持つANAホールディングス(HD)は、公的支援を受けて再生した日航が税制面などで優遇され、競争環境で大きな格差があると強調。来年春に拡大が予定されている羽田空港の国際線発着枠の配分でも、両社の主張は対立している。
■コスト改善進め躍進
日航の近年の業績は順調だ。2013年3月期の連結最終利益は1716億円と、ANAHD(431億円)の約4倍。直近の13年4〜6月期もANAHDが営業・最終赤字だったのに対し、日航は大幅減益ながらも黒字を確保した。
経営破綻を機に社員の意識改革が進んだ上に、部門別採算制度を導入して自力でコスト改善を進めたことが躍進の背景。国土交通省幹部は「1便ごとの収支を管理するなど必要な手が打たれている」と評価する。
これに対してANAHDは、公的支援を受けて再生した日航が競争環境をゆがめていると危機感を募らせる。
10年に経営破綻した日航には3500億円の公的資金が投じられ、会社更生法の適用で金融機関も5215億円の債権を放棄した。今も法人税の減免などを受けており、ANAHDの伊東信一郎社長は「自助努力ではカバーできないほど、経営体力の差が開いている」と訴える。
■世界屈指の高収益性
日航の収益性の高さは、世界の航空大手の中でも屈指の水準だ。13年3月期連結決算で、本業のもうけを示す営業利益が売上高に占める比率を示す営業利益率は15.8%と、ANAHDの7%を大きく引き離す。
SMBC日興証券によると、海外の航空大手の前期決算の営業利益率は、米デルタ航空が7.2%、豪カンタス航空が2.5%、シンガポール航空が1.6%、独ルフトハンザ航空がマイナス1.2%など。板崎王亮シニアアナリストは「日航の収益性はずば抜けて高い」と指摘する。
ただ、世界の航空業界では格安航空会社(LCC)や中東の航空会社などが勢力を拡大させるなど競合が激化している。板崎氏は「来年春に配分される羽田空港の国際線発着枠で一つでも多くの枠を獲得し、いかに自社の収益増につなげられるかが課題だ」と分析する。
羽田空港の国際線発着枠は現在年間6万回だが、来年3月末に昼間帯の発着枠が3万回増える。1日当たり約40枠の計算で、日本の航空会社には半分の約20枠が配分される見通し。国交省は今月末か10月初めに配分を決める方針だ。
ANAHDは、公的支援を受けて再生した日航との競争条件を対等にする方策の一つとして、「極力多く(発着枠を配分して)ほしい」(伊東社長)と、自社への優先配分を主張。一方の日航は「(日航と全日空に)均等に配分することで、健全な競争が成り立つ」(幹部)と、真っ向から対立している。
東京都心から近く、利便性の高い羽田空港の国際線は、昼間の1枠で年間十数億円の営業増益につながるとされる「ドル箱」。両社とも譲る気配はなく、国交省は難しい判断を迫られる。