消費税増税と景気対策のセット販売
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52511724.html
2013年09月12日 在野のアナリスト
今日になり、各紙が一斉に消費税増税が決定、ただし約2%にあたる5兆円を、景気対策に充てるとする記事が並びました。しかしこれは最悪の記事です。今年初めにうたれた景気対策で、通常なら年末の臨時国会で、税収増の上ぶれ分として計上されるものから、国債整理基金の繰越分にいたるまで、予算をはきだしています。つまり、今年から来年にかけて、補正に回す予算はほぼないのです。
いくら捻りだしても、1〜2兆円がやっと。これが、財務省が安倍政権の動きを牽制する一因となっています。しかし、これは官僚にとって願ったり叶ったり。つまり、もう補正予算に回す分はないので、仮に5兆円の大型の景気対策をうつとすれば、来年の消費税増税による税収増分を充てるしかない。これは付則で示された、消費税増税分を社会保障以外に充てられる、を初年度から達成できます。再来年から、消費税増税分は一般会計として使い放題にできる、という腹をもっているでしょう。
しかもどうして2%分なのか? について、経済ブレーンが1%刻みを主張しているから、に焦点をあてて報道する向きもありますが、実は社会保障費の増分が、年間2.5兆円程度なのです。これは、年金の国庫負担の増分を補える額であり、2.5兆円は下回りたくない。そんな意識が働いています。
つまり、消費税増税分を回さない限り、捻出できない額の補正予算をくみ、党内のバラマキ隊を納得させる。一方、社会保障の単年度分は下回らない額、それが5兆円なのです。しかしそう上手くいくのか? 財務省の試算では、1%で2.7兆円の税収増がみこめますが、恐らく税収は率が上がると右肩下がりになるので、8%だと7兆円は下回るはずです。そのとき、5兆円の景気対策をうつと、結果的に社会保障の増分さえ賄えない、という事態になり、それが財政への懸念を強めるでしょう。
さらに、これまでも指摘しましたが、復興需要、五輪特需、国土強靭化計画など、これまでの景気対策で、すでに浮揚効果の薄い景気対策しか打てません。しかも、これまでの補正予算が大して景気を上昇させなかったのも、官僚の利権に関わる部分に予算を回すため、です。つまり増税して、官僚の裁量できる予算枠をふやし、景気対策で自分たちが肥え太る、という構図が強まる懸念もあります。
何度もいいますが、穴の開いたボールに、いくら上から水を注いでもダメなのです。消費税増税で上から水を注ぐ前に、今の経済構造に合わない、社会保障制度を見直さなければならない。景気対策を打つ前に、官僚利権、政治家のバラマキ、の構図を改めなければいけない。それが、安倍政権ではまったくできていない。旧来の自民と何の違いもない、しかも規模を拡大している、最悪の状況が、この増税と景気対策を一体でうちだす姿勢に、縮図として表れています。将来のためのお金を、施策をどんどんと食い潰していく安倍ノミクスが終わったとき、日本に残るのは焦燥感と危機感、という事態にまた一歩近づいた、と云えるようなニュースなのでしょうね。