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週刊実話 2013年9月19日 特大号
政府が60人の有識者・専門家から意見を聞く「集中点検会合」が始まった。主婦連の山根香織会長のように増税に真っ向から反対する人もいたが、大部分の有識者は消費税増税に理解を示した。特に約20人の経済専門家の中で、消費税増税の先送りを主張したのは、安倍総理のブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一氏と本田悦朗氏のほかには、三菱東京UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士氏の3人だけだった。
完全に意図的な人選だ。例えば元財務官僚の高橋洋一教授、東京新聞の長谷川幸洋氏、産経新聞の田村秀男氏といった消費税増税そのものに反対している人たちは、排除されている。
安倍総理の指示は、「消費税増税の賛否に関して幅広い意見を聴取せよ」というものだったのに、その指示が完全に無視されたのだ。
私も消費税増税そのものに反対なので、なぜ消費税増税をすべきでないのかを、ここで整理しておこう。
第一に、デフレ脱却が実現すれば、消費税増税に頼らずとも税収は十分に増えていくということだ。消費税増税をやむなしと考えている人は、高齢化にともなって増加する社会保障負担を賄うためには増税が不可欠だと考えていることが多い。現実に当分の間、社会保障費は毎年1兆円ずつ増えていく。しかし、その分は、税の自然増収で十分に賄えるのだ。
簡単な計算をしてみよう。いま政府が設定している物価上昇率の目標は2%だ。物価が2%上昇すれば、まったく経済成長しなくても名目GDPは2%増える。名目GDPを500兆円とすると、10兆円増える計算だ。増加したGDPの1割が税収として入ってくるから、物価が毎年2%上がれば毎年税収が1兆円ずつ増えていく。つまり、2%のインフレターゲットだけで、社会保障の自然増を賄えるのだ。現実には、デフレを脱却すれば実質経済成長率もプラスになるから、その分も当然、税収に結びつく。さらに、税収のGDP弾性値は2〜3だ。名目GDPが増えた時、税収はGDPの伸びの2〜3倍の伸び率で増えるのだ。
実際、今年度の4〜6月期の税収は、前年比で5%も増えている。しかも、ここには今年度の法人税はほとんど入っていない。4〜6月期の企業の最終利益は前年比で3倍近くに増えているから、最終的には莫大な法人税が転がり込んでくる。今年度の税収は、上手くいくと5兆円くらい増えるかもしれない。税収を増やす最良の手段は、景気を拡大させることなのだ。
一方、消費税を引き上げると、せっかく戻りかけた景気が失速する。下手をしたら、デフレに戻りかねない。'97年に消費税率を引き上げた後、何が起きたのかをもう一度冷静に考えるべきだ。消費税率を引き上げた'97年度こそ、税収は前年比でプラスになったが、その後、日本経済がデフレに突入してしまったため、税収全体は増税後、減り続けた。
イソップ童話に「欲ばりな犬」という話がある。肉を咥えた犬が橋の上から水面を覗くと、大きな肉を咥えた犬がいる。思わずワンと吠えると、犬の口から肉が滑り落ちた。財務省も欲をかきすぎると、この犬のようになる。財政再建のためにも、消費税を上げてはならないのだ。