http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-9720.html
2013/9/2 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
世界が注目している米国のシリア空爆。オバマ米大統領は一気に攻撃に踏み切るとみられたが、ここにきて議会の承認を求める意向を表明した。米議会は休会明けの9日以降、審議する方針だ。シリア空爆はどうなるのか。
◆空爆は長期化
米議会が「ゴーサイン」を出した場合、米国のシリア空爆は駆逐艦5隻から発射する巡航ミサイル「トマホーク」が主力になる。標的は軍司令部など50カ所ほど。米国は3日程度で終わる「限定的な攻撃」と強調しているが、3日で終わらせるのはとてもムリだ。
軍事評論家の神浦元彰氏はこう言う。
「シリアは中東ではエジプトに次ぐ軍事大国です。地対空ミサイルも備えている。空爆だけで打撃を与えるのは簡単ではありません。トマホークで攻撃するにしても、標的がどこにあるのかつかむ必要があるが、正確に場所を特定できるのか。限定的な空爆では、成果を上げられないでしょう。2、3日で終わるとは思えません」
いったん攻撃が始まったら最後。終わりは見えないのだ。
◆中東戦争に突入
世界が恐れる最悪のシナリオは、米国の空爆が中東全域に飛び火することだ。シリアは周辺をトルコやイスラエル、イラク、レバノンに囲まれた地政学的に「重要な拠点」にある。
「シリアは中東が抱えるさまざまな問題に関わっている。化学兵器を保有していても、これまで近隣諸国や欧米が黙認してきたのは、ヘタに刺激したら中東全域に政情不安が広がりかねないからです。もし、米国がシリアを押さえれば、地中海、インド洋と重要な海路を握ることになる。シリアと同盟関係にあるイランは絶対に阻止に動くでしょう。米国と同盟関係にあるイスラエルを攻撃する恐れがある。そうなれば政情不安のエジプトをはじめ、サウジアラビアなどにも戦闘の火種が飛び火しかねません」(神浦元彰氏=前出)
◆火を噴くテロ
米国が空爆に踏み切ったら、イラン、シリアの支援を受けて結成されたテロ組織「ヒズボラ」は黙ってはいない。世界中の米大使館などを狙ったテロが吹き荒れるだろう。
テロが始まれば、アメリカは引くに引けなくなる。イラク戦争の時と同様、世界を巻き込みながら終わりなき100年戦争、泥沼の戦いが始まるのだ。
◆空爆断念で独裁国家暴走
仮に議会が否決した場合、オバマはどう動くのか。
「ここまできたら、もう後へは引き返せないでしょう。議会否決でも空爆は既定路線だと思います」(神浦元彰氏=前出)
とはいえ、NBCテレビの世論調査では、軍事介入に反対する米国民は50%で、賛成の42%を上回り、議会承認を得るべきとの回答は8割近くに上る。
「圧倒的多数で議会で否決されたら、空爆を断念せざるを得なくなる。そうなると、オバマは“弱腰”とみられ、世界中の反米組織、テロ集団、独裁国家を逆に勢いづかせることになりかねない」(米国在住ジャーナリスト)
引くも地獄、進むも地獄。オバマは、やっかいな問題を抱え込んだ。