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2013年08月16日 世相を斬る あいば達也
筆者を含め、多くの人間が法人税を殆ど払わぬ大企業群の実態を知っているが、マスメディアはスポンサー様の顔色を窺い、代表的輸出大企業や銀行金融企業が法人税をどれだけマトモに払っているかの検証は疎かになっている。日本の法人税は、法人税率としては高い方だが、企業の活動全体に占める公的負担率は、実は世界でも有数の低税率国なのだ。しかし、単純に比較としては、法人税率だけの比較になることが多い。であるならば、輸出企業や大企業の優遇税制の枠を取り払い、優遇を排除し、比較検証されやすい法人税に一本化するのが本筋である。
しかし、優遇税制の適用には、行政の介在がつきもので、役人が大好きな裁量行政の温床だけに、霞が関が本筋で税制を改正などする筈もない。しかし、此処に来て、株式市場の停滞に焦りを見せ始めた安倍政権は、海外ファンドに好感を持たれようと、腹も座らないうちから、法人税減税や経済特区構想など、アドバルーンを上げている。特に法人減税にスポットが当たれば、流石のマスメディアも記事を書く根拠が生まれるので、安倍政権の発言をエクスキューズとして、ある程度、企業の法人税支払い実態を検証する記事は書ける筈である。
企業に対する異様なサービス精神は、安倍政権の命脈が日経平均株価に連動した、驚くほど危うい政権であることを如実に示している。株価PKOに繋がる事なら、何でもやります!の神経には、呆れてものも言えない(笑)。しかし、上述の法人税減税への言及は、逆に大企業がどれ程の法人税を国家に納めているかと云う記事が書きやすい環境を整えた。おそらく、「噂の真相」のような雑誌があれば、真っ先に大企業や銀行保険など有名企業の12年の法人税一覧表を出しているに違いない。「週刊金曜日」に取り敢えず期待しておこう。以下は、その辺に触れた、ロイターの記事である。ロイターの記事の魅力は、分析力よりも、日本のメスメディアに比べ、スポンサーへの配慮が少ないことである。メディアを選ぶ時には、こう云う点を考慮する事も重要な知見だ。かなり書いているが、有名大企業の法人税支払い実績一覧などセンセーショナルなのだが…(笑)。
ここにきて、NY、東京市場ともに株価に変調が見られる。安倍政権はデフレは脱却しつつあると意気軒高だが、株式市場は、緩やかなインフレが始まったとしても、可処分所得が下がり続ける限り、消費税の駆け込み需要さえ危ういのではないか、と懐疑的見方が優勢になっている。円安ー株価上昇ーデフレ脱却ー企業業績回復ー賃金の上昇ーGDP拡大等々のシナリオが、根本的に間違ったシナリオだったのではないか、そんな不安に包まれている。このようなシナリオが間違っていることは、経済学や金融学などに関係なく、生活者の冷静な判断力が備わっていれば、容易に気づくことで、当然の結論だ。賃金の上がらないインフレを歓ぶ馬鹿が居たら、お目にかかりたいものである。
≪ 焦点:法人税の特殊事情が表面化、「効果小さい」の指摘も
[東京 15日 ロイター] - 消費増税と一体で法人税率を引き下げる政策が一部で報道され、市場の関心も高まっている。 だが、法人税率引き下げにはコストが高い割に効果が小さいとの指摘があるほか、繰越欠損金などの制度を利用し、法人税の支払いが免除されている企業も多く、企業の法人税の負担割合が本当に高いかどうか疑問の声も出ている。法人税減税の議論は、今まで表面化してこなかった法人税をめぐる特殊な事情をあぶり出そうとしている。
<税収大幅減なら財政再建と矛盾>
13日付の日本経済新聞朝刊は、安倍晋三首相が法人税の実効税率の引き下げを検討するように関係部局に指示したと報じた。同日付の共同通信も法人税のみならず所得税減税の可能性について触れている。
複数の政府関係者によると、首相による具体的な指示は出ていないものの、一部閣僚や官邸周辺で法人税率の引き下げが有効だとの声が出ているという。
ただ、15日になって政府はやや否定的なニュアンスを出している。菅義偉官房長官は15日閣議後の会見で「総理がそのような指示をした事実はない」と否定した。その上で「これから50人前後のいわゆる有識者や現場で商売をしている方などの意見を聞く中で、総理が判断をすること。まずは意見を聞くことから始まる」と述べ、今後の展開に含みを残した。
財務省や与党関係者には、予定通り来春以降に消費増税を実施しなければ、長期金利急上昇や円高など市場の急変を招きかねないとの声が多 い。
一方、安倍首相の経済ブレーンである浜田宏一氏と本田悦朗氏の両内閣官房参与は、物価が本格的に上昇し始める時期に予定通り3%の増税を実施すれば、デフレ脱却に失敗する可能性があると警鐘を鳴らしている。増税によるマイナスの影響を最小限に食い止めるため、首相周辺では様々な案が想定されるもようだ。
ただ、市場関係者の間では、消費増税対策として法人税減税は評価できないとの声が少なくない。
ゴールドマン・サックス証券、金融商品開発部部長の西川昌宏氏は「法人税率減税を行うとなると、消費税率引き上げの意味が益々薄らいでいく」と指摘。消費増税の目的である財政再建が揺らぐことを懸念する。
特に「法人税は税収弾性値が消費税より大きく、法人税を下げ消費税を上げれば、景気が良くなっても税収が増えにくくなる」と構造的な税収減要因になるのを懸念する。
<実現に政治的な課題、一部企業には減益要因>
消費増税の景気下押しを緩和する対策としても「法人税減税による設備投資など波及効果は、せいぜい2─3兆円。2013年度と比べ16年度で13兆円程度と試算される増税の下押しの影響と比べるとバランスが悪い」(クレディ・スイス証券、経済調査部長の白川浩道氏)と分析する見方が多 い。 そもそも「家計の負担を拡大して企業の負担を減らす政策が、政治的に難しい」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也 氏)という側面もある。 政府部内にも野党に絶好の攻撃材料を与えると懸念する声がある。家計のみに負担増大を強いるのは難しいため、最終的に所得税の減税議論も浮上し、財政再建の所期目的と矛盾しかねないと、この先の議論の迷走を懸念する見方も一部のエコノミストから出ている。 麻生太郎副総理兼財務・金融担当相は15日の会見で、今の段階で法人税を引き下げることに効果は少ないとの認識を示した。
<7割が欠損法人、利益計上企業も繰越欠損金で相殺>
一方、繰延税金資産の取り崩しで利益を得ている企業は、法人税引き下げが減益要因になるケースもあるという。J.P.モルガン証券の イェスパー・コール調査部長は「ゼロ金利下では大きな問題でない」としつつ「家電業界などは影響を受ける可能性がある」とみる。
法人税を支払っている企業が少ないことも、減税の効果が限定される一因だ。財務省の法人企業統計(対象2万8148社)によると、全企業の経常利益は2011年度45.3兆円。これに対して11年度の法人税収入は9.3兆円にとどまっている。
国税庁の会社標本調査によると、257万社中利益を計上している法人は71万社。72.3%が欠損法人となっている。7割の企業がそもそも法人税を払っていないため、減税による所得への波及効果は限定的と考えられる。
利益を計上している企業も、必ずしも法人税を払っていない。企業がある年度に税務上の赤字を計上すると、繰越欠損金として翌年度以降の黒字と相殺し、法人税の減免を受けることができるためだ。
繰越欠損金の翌期繰越額は2001年以降毎年70兆円台だったが、リーマンショック後に80兆円前後の水準に膨らんでいる。この制度を利用して大手銀行は10年以上にわたり法人税の納付をせずに推移。メガバンク3行がいずれも法人税を支払ったのは昨年のことだ。
日本の法人税は国際的に高いとして、経済同友会は法人税率を25%に引き下げると主張している。
だが、財務省によると、2011年1月時点での比較で対国内総生産(GDP)比での法人所得課税負担率は1.9%と、英国の3.6%、韓国3.9%などG7やアジア諸国の中では低い方に属する。≫(ロイターニュース 竹本 能文、山口 貴也、Nathan Layne 編集;田巻 一彦)