買うか、様子見か。見極める力を養いたい
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20130811/ecn1308110733000-n1.htm
2013.08.11 本当は教えたくないマンション業界の秘密 榊淳司
アベノミクスの影響がマンション市場にも浸透している。昨年の暮れから都心の高額物件が売れ始めたが、今は「駆け込み需要」的な動きも一部に出始めている。今年初めから春先にかけては投資を兼ねたような需要が多かったが、今は「実際に住むため」という実需的な動きも見られる。
このような場合、販売側はやけに強気になる。不動産業者というのは、基本的にエラそうにしたがる人種なのである。
中堅の不動産会社を経営する40代のある経営者は、学生の頃にキャバクラのような店でボーイのアルバイトをしていた。その店で多くの金を使い、威張り散らしているのは不動産業者ばかりだったそうだ。
「そんなに儲かるものなのか。オレもあんな風に威張ってみたいな」
彼は、卒業すると迷わずに不動産業の会社に就職した。今では、独立して会社を成長させ、立派な不動産業者になったというわけだ。
彼らがネオン街でエラそうにするのは一向に構わない。だが、住宅を買いに来た客に向かって威張られたのではたまらない。ところが、彼らは住宅が売れ出すと、すぐに「こっちが売ってやる」的な発想になり、態度に表れる。
まぁ、100人が100人ともそうではないが、体質としてそういう面を多分に持っている。なぜなら、それは土地神話の時代に堅固に築かれ、彼らの上司、そのまた上司から連綿と受け継がれているからだ。
だからこういう時期は、ハッキリ言って「買い時」ではない。その逆だ。
新築マンションのモデルルームに行っても、どこか向こうがエラそうで、失礼さを感じるだろう。もちろん、値引き交渉もしづらい。また、応じてもらえない物件が多い。
では、どうすればいいのか。
今、住宅が売れているというのは一時的な現象だ。景気が本格的に回復すると住宅への需要もそれなりに生まれるだろう。しかし、日本全体で住宅が余っていて、生産年齢人口が減っているのは動かしがたい事実。そういう大きな流れの中で、今はつかの間の逆流現象が起きているに過ぎない。待っていれば必ず住宅が売れない時代がやってくる。
早ければ、来年4月の消費税増税以降。そうなれば、再び住宅は買い手市場になる。不動産業者たちは、手のひらを返したようにお客に擦り寄ってくるだろう。彼らはそういう面で、とても分かりやすい習性を持っている。売れないものは値段を下げるしかない。値下げや値引きも復活するはずだ。
株でもマンションでも、「みんなが買うときに買う」という行動は、あまり賢明ではない。高値をつかむ可能性が大きくなる。「みんなが買わない時にじっくりといいものを選ぶ」というのが賢い買い方。選択肢も多くなる。そういった面で、今は何も慌てることはない。様子見で十分だと思う。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。不動産会社の注意情報や物件の価格評価の分析に定評がある(www.sakakiatsushi.com)。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」(WAVE出版)など。