にぎわうソウル市内の繁華街、明洞(ミョンドン)。しかし、韓国には経済危機の影が忍び寄っている(森田達也撮影)
韓国の国内銀行、深刻な破綻リスク リーマン・ショック以上の危機
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130809/frn1308091810003-n1.htm
2013.08.09 夕刊フジ
経済の低迷を背景に、韓国の国内銀行が重大な経営問題を抱えている。その深刻度は1997年のアジア通貨危機や2008年のリーマン・ショックを超え、金融関係者は「今まで一度も体験したことのない危機的状況」と悲鳴を上げる。企業の業績不振や家計の過剰債務によって、経済の血液とされる金融が停滞する事態が続けば、複数の銀行が「突然死」しかねないリスクをはらんでいる。
韓国紙の中央日報が7月下旬に掲載した「韓国の銀行が危ない」というコラムが波紋を広げている。朴槿恵(パク・クネ)政権の前に銀行危機という“パンドラの箱”があると指摘、「ふたが開いてしまったら? 韓国経済はまさに重傷だ」と危機感をあらわにしており、金融専門家の「銀行はかろうじて息だけしている延命段階に陥るだろう」との予測や、シティグループ現地法人会長の「今までただの一度も体験したことのない危機的状況が展開されている」と憂慮する声を紹介している。
アジア通貨危機では韓国は国際通貨基金(IMF)の管理下に入り、リーマン・ショックでは世界の金融システムがクラッシュ寸前となったが、それ以上の危機というのだからただ事ではない。
前述のコラムでは、銀行の利益が急減しているとし、「資産売却による特別利益を除けば赤字に転落する銀行もある」「金融当局の高位関係者でさえ5年後の銀行の当期純利益は昨年の6分の1レベルに落ちる可能性もあると話す」と悲観的な見解が続く。
韓国の銀行がなぜ収益力を低下させているのか。日本総合研究所上席主任研究員の向山英彦氏は、「韓国企業の業績が一部の大企業を除いてよくないのが大きな要因。特に低迷が長期化している建設業や、経営破綻のあった造船業界が厳しく、不良債権が膨らんでいる。新規の優良な貸出先も増えていない状況」と解説する。
今年5月には造船大手、STXグループの資金繰りが悪化し、銀行の管理下に入った。4〜6月期決算でも、鉄鋼大手のポスコが31%減益、現代重工業は20%減益と落ち込みが目立つ。国内総生産(GDP)は1・1%増となったものの、韓国企業を沈滞ムードが覆っている。
GDPの約2割を占めるといわれるサムスン電子は過去最高益を更新したが、主力のスマートフォンには陰りも見える。そもそも「サムスンなどグローバル企業については、自社で資金調達できるうえ、銀行を使う場合も外資系を含めて取引している」(向山氏)という事情もあり、国内銀行が受ける恩恵は限定的だという。
企業向けの融資が伸び悩む一方、個人も借金漬けだ。韓国の家計の負債は今年3月時点で約961兆ウォン(約85兆円)と、2012年の名目GDPの約75%相当まで膨れあがっている。
「韓国の商業銀行はもともと、企業向け融資が大半だったが、1997年の通貨危機の後、新たな収益源としてクレジットカードや教育ローン、住宅ローン家計向けの貸し出しを増やしていった。しかし不動産価格の下落などで家計の債務も大きくなり、新たに貸し出しを増やすのは難しい。企業向け、家計向けともに資金需要が閉塞(へいそく)しており、厳しいのは間違いない」と向山氏は指摘する。
韓国経済低迷が直撃しているのは国内金融機関だけではない。すでに海外の大手金融機関は、相次いで韓国からの事業撤退や縮小を決めているが、韓国に残った金融機関では、英大手のスタンダードチャータード銀行が韓国事業で1000億円近い評価損を出して減益に追い込まれた。
さらに、韓国の国内銀行は構造的な問題も抱えている。その一つは低い収益性だ。朝鮮日報は今月7日、世界の銀行のランキングを選定している「バンカー」誌の資料を分析した結果について報じている。それによると、世界100大銀行のうち、欧米と日本を除く新興国の銀行は33行で、韓国の銀行はKB国民銀行、新韓銀行、ウリ銀行、ハナ銀行、韓国産業銀行、農協銀行が含まれる。ただ、収益性の指標となる総資産利益率(ROA)はいずれも1%以下と最下位圏内だという。
もう一つの要因が、韓国の銀行が国内向けの融資事業が中心という点だ。
「韓国の銀行は日本のメガバンクなどと比べて規模が小さく、グローバル展開も遅れている。収益低下を受けて、人員削減や給料の見直しなどリストラを進め、韓国経済全体の回復を待つしかない」と向山氏はみる。
ただ、韓国経済は長期低迷に陥るとの見方が根強く、国内経済が沈めば、銀行も沈む。韓国の財閥系経済シンクタンクの代表はこんな本音を明かしているという。
「このままなら銀行のいくつかが突然死してもおかしくない」