「流出ずっと続いていた」福島原発汚染水漏れの実態
http://takumiuna.makusta.jp/e225837.html
2013年07月31日 子ども達を放射能から守るネットワーク@ちば
京都大原子炉実験所の小出裕章助教
「原子炉建屋などコンクリート製の施説は必ず割れているし、漏れている。今生じた問題ではない。実際には2年半前からずっと目の前にあった。何一つ解決していないだけだ。手の打ちようもないひどい事態」
本日付けの東京新聞特報部に福島原発汚染水漏れの実態についての記事が展開されてました。
選挙後にいきなり東電が汚染水問題に関して漏れてることを認め、対策も打つ手無しという状況が明るみになってきました。
再稼働なんて論外な状況です。ストロンチウムを含んだ魚が泳いでる太平洋。
しかもセシウムしか計測してなく、ほんの一部のサンプルのみ。
日本人は311以後も変わらず、魚介類を食べ続けてます。
止まらない海洋汚染。それはやはり人間に健康被害という形で跳ね返ってくるのではないでしょうか。
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福島原発 汚染水漏れの実態 ストロンチウムの脅威 深刻
福島原発事故の汚染水が海に漏れている。しかし、どこから、どれだけ漏れて、どう止めていいのかは分からない。海に汚染が広がっていることだけは間違いない。東京電力は参院選前にこの漏出の事実をつかんでいたが、発表したのは選挙後だった。その理由もはっきりしない。つまり、東電には何も頼れない。何が起きているのか。汚染の実態を推測すべく、専門家たちに聞いた。(上田千秋、中山洋子)
「また裏切られた」 「前から知っていただろ」 「信用できない」 会場に怒号が飛び交った。東電は23日、汚染水漏出について福島県いわき市内で漁業者たちに説明会を開いた。 いわき市漁協では、9月からの試験操業を準備中だった。同漁協の新妻隆販売課長は「すべて後出し。東電は加害企業の自覚があるのか。苦しくても一歩ずつ前に進んできたのに、また足を引っ張られた」と話した。
相馬双葉漁協(同県相馬市)の阿部庄一指導部長も怒りを隠せない。それでも「汚染水を原発港内から出さないという東電の言葉を信じるしかない。どんなに信用できなくても」と嘆いた。
◆ストロンチウムの脅威 深刻
「原子炉建屋などコンクリート製の施説は必ず割れているし、漏れている」。事故当初から、そう指摘してきた京都大原子炉実験所の小出裕章助教は「今生じた問題ではない。実際には2年半前からずっと目の前にあった。何一つ解決していないだけだ」と語る。
小出助教はとりわけ、汚染水に放射性ストロンチウム90が多く含まれることを懸念する。 ストロンチウムは、骨に取り込まれて体内に残る。内部被ばくが長く続くことから白血病などを引き起こすとされる。半減期は29年だ。 測定しにくく、検査用の試料を作るだけで一週間はかかるという。「扱いが難しく、知識がある熟練の技術者が必要になる」(小出助教)
東電は「海への拡散は限定的」とし、水産庁も「高濃度のセシウムが検出されたサンプルからしか、ストロンチウムは出ていない」とする。
しかし、福島第一の専用港内では、場所によってはストロンチウムによる汚染が法廷濃度の10倍以上になっている。
今回、海へ漏出した汚染水と一致するかは不明だが、これまでは壊れた原子炉の冷却用に使われている水からストロンチウムは除去されてこなかった。除去できるとされる浄化装置「アルプス」の本格運転はこれからだ。ただ、その装置も別の放射性物質であるトリチウムは取り除けない。
水と混ざりやすいトリチウムとは違い、ストロンチウムは重く海底にたまりやすい。東電は港内から外へ汚染が拡散しないように対策が施されているというが、湾内へ汚染が拡大していないか、懸念が深まっている。 東電がこれまでに公表したデータでは原発事故以降、海への直接流入量は半減期が2年のセシウム134は3500テラベクレル(1テラは1兆)、半減期が30年のセシウム137は3600テラベクレル。ストロンチウム90は140テラベクレルとされる。
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◆「流出ずっと続いていた」 泥に蓄積 魚に影響の恐れも
一昨年7月から5回にわたり、福島県第一原発の沖合を調べた東京海洋大大学院の神田穣太教授(化学海洋学)は「原発の専用港内の海水の分析から、セシウム137の直接流出量は5000テラベクレル程度と考えるのが妥当だろう」と推測する。 他の事例と比べても、これは少ないとは言い切れない値だ。1986年に起きたチェルノブイリ事故のセシウム137の環境への全放出量は8万5000テラベクレル。
使用済み核燃料再処理工場などの施設が集中し、長年にわたって放射性物質を垂れ流していたことが明らかになっている英国セラフィールドでは、51年から92年までの41年間に計4万1000テラベクレルが流出。最も汚染がひどかった75年の1年間だけでも5200テラベクレルとされ、福島事故の海への直接流出量はこれに匹敵する。
放射性物質の大半は一昨年3月の事故直後から同年6月までに流れ出たとみられ、それ以降はほとんどの海域で速やかに低下して、多くは検出限界値以下になった。 ただ、数字がゼロになってはおらず、神田教授は「汚染水の流出は今回に限らず、事故以来止まることなく、ずっと続いていた」と説明する。その意味で、環境への急激な変化はないとみる。
しかし、それで懸念が薄まるわけではない。海中での直接的な汚染だけでなく、食物連鎖による魚類の汚染は深刻だ。「それだけでなく、放射性物質が入った海洋生物のふんや死骸が海底に沈んで泥に蓄積し、魚類などに再び移行していく可能性も否定できない」(神田教授)
加えて、神田教授が指摘するのは地上のタンクに移した汚染水の行き先が決まらないこと。「水を完全に封じ込めるのは簡単ではない。集中豪雨や地震、津波などが起きれば安全とは言い切れない。そちらの対策も考えるべきだ」と訴える。
◆国際ルール踏みにじる行為
もうひとつ注目されるのは海外の反応だ。海はつながっており、海洋汚染に国境はない。
放射性物質による海洋汚染を規制する国際条約として、ロンドン条約がある。日本も批准しているが、想定するのは船舶などからの投棄で陸上からの排出は対象外。今回の汚染水漏出は条約には抵触しない。
しかし、国際NGOグリーンピースジャパンのエネルギー担当の高田久代氏は「海の汚染を防ぐ条約の精神に反していることには変わりない。国際ルールを踏みにじるもの」と批判する。 「現在の汚染水漏れは早急に食い止めなければならないが、『安全な付近の地下水』を放出するという東電の計画も、漁業関係者ならずとも信用できない。少なくとも、第三者機関やNGOによるチェックが必要だ」
平和問題のNPO法人ピースデポの湯浅一郎代表も「海外から批判されても当然だろう。原発を進め、事故を起こした国は、その批判を引き受けなければならない。その覚悟を抜きに再稼働を進めるなんて、お話にならない」と指摘する。
東電は取水口付近の土壌に薬剤を投入して地盤を固め、汚染水を止めようとしている。だが、対象は海に面した約80メートルのみで、第一原発の一部しかカバーできない。漏出場所が特定できていないことを考えれば、効果には疑問が残る。
小出助教も「手の打ちようもないひどい事態」で特効薬は浮かばないという。「海に漏れ出ないよう汚染水を他に移すしかないが、タンクを増設するにも限度がある」
[デスクメモ]
やや古い本で『ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね』という物語集がある。漫画家の岡崎京子さんの作品だ。終わりのない原発事故。漏れ続ける汚染水。非日常の日常化にもう感覚がマヒしている。岡崎さんは「落ちかた」を書きたかったという。落ちる現実から目をそらさない。最低限の務めだ。(牧)