http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130731-00000004-sasahi-soci
週刊朝日 2013年8月9日号
県名や郡名が抜けているだけで必要書類を受理せず、「1日分の仕事を4日でやる」ような、ずさんな実態が明らかになった福島第一原発事故の補償業務。ジャーナリストの宮田賢治氏が最前線で業務にあたる派遣社員たちの生の声とともに、いまだ変わっていない、その横暴ぶりを再び明らかにする。「3次審査」には25ページにも及ぶ書類の審査があり、それが被災者を苦しめているのだという。
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A(被災者からの電話受け付け及び不動産補償業務を担当する40代):最初の書類と同様に、妥当性をチェックします。納得がいかない書類に関しては社員が直接電話してましたね。「写真撮って送ってください」とか平気で言ってましたが、原発に近い居住制限区域ですよ。相手が反論すると、「こちらの専門家送りますか?」なんて上から目線で言ってる。宅地・建物のみの請求なんで、それに付帯するソーラーパネルとか、浄水設備とか、登記書類に載っていない高額な物が本当にそこにあるのか、証拠を出せ、ということなんですね。ほとんど払いたくない言いがかりみたいでした。加害者が確かめに行けよ!と、いつも思ってました。
宮田:昨年暮れ、有明の派遣は2千人を超えましたが、現在はどうでしょう?
A:ビルの保守の人に聞いたら5千人超えてるそうです。
B(被災者からの電話受け付けを担当する30代):うちは数百人。雑居ビルなんでよくわかりません。
C(書類入力や判定を担当する40代):同じです。ビルもいくつかありますし。
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東京電力広報部に問い合わせたところ、7月17日時点で不動産補償で約5700件の書類を受け付け、約2800件は支払い済みという返事が来た。4月25日から3カ月足らずで2件から2800件、真実なら従来と違い素晴らしい仕事率だ。現場からの情報では、「最終支払い決定は東電が行っており、われわれはノータッチです。あの仕事で、支払い済みが全体の5%ほどなら上出来でしょう」ということだった。
6月に、復興庁の被災者支援担当だった水野靖久参事官が自らのツイッターで被災地などを中傷するつぶやきをして停職処分になった。さらに調べると、福島で行われた会合において双葉町の井戸川克隆前町長が、「水野参事官が『仕事をしないのが仕事』と言った」と証言している。
そして時効問題。東電社長は「民法上の消滅時効を主張しない」と発言しているが、「消滅時効を主張する可能性を前提とした事業計画を(監督官庁に)提出していた」と東北弁護士会連合会に追及されている。
仮に派遣社員6千人が働いているとすると、人件費は少なく見積もっても月に18億円を超す。その原資は税金や、われわれの電気料金だ。
東電広報部は、「ヒマ」な派遣社員の現状について、「請求書の返送がピークを迎えるタイミングでも滞りなく作業を行えるよう、要員を配置しております」と、説明する。
不動産補償は住居分だけで東電が賠償対象としているのは4万9千件あまり。ただし、農業設備などその他の不動産補償には手も付けられていない。すべての補償が終わるまでに、あといくらつぎ込むつもりなのか? 時効は社長が語ったことと役所に提出した書類とどちらが本心なのか?
真相が判明するまで、あらゆる面からの追及を止めてはならない。