http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130731-00016611-toyo-bus_all
東洋経済オンライン 7月31日(水)8時0分配信
日本の株式市場は急に活気がなくなった。下落が続き、出来高水準も落ちてきている。いったいどうしてしまったのだろうか。
直近の下落を見てみると、日経平均は、7月19日は218円安となった後、小幅上昇が続いたが、24日から下落が始まり47円安、25日は168円安、26日には432円安と大幅下落、27日も468円安となり、1万3661円となった。28日は208円上げて少し回復した。
■ ミニバブルの米国市場
しかし、問題は下落幅よりも下落の理由である。目立った理由がないのが問題だ。もちろん、説明はいろいろできる。参議院選挙が終わって、いわゆる材料出尽くしとなったとか、成長戦略には期待できそうもないとか、様々な理由が語られる。しかし、環境は思ったよりも大分悪い。
例えば米国だ。
株価は最高値を更新している。金融を中心に、多くの企業で好決算となり、株価は個別にも上昇し、フェイスブックもモバイル広告収入の大幅増加で、急騰した。これらの個別株価の積み重ねで、NYダウもナスダックも上昇トレンドを継続している。FRBのバーナンキ議長の出口戦略問題もひと段落で、今は、過度な心配の反動で、相場にはプラスだ。
それにもかかわらず、雰囲気が悪い。最高値を喜ぶよりも、あがればあがるほど、下げへの不安が高まっている。米国は最高値更新の流れを世界に広げると言うよりは、自分だけが上がって、高すぎるところからの下落の不安だけを広めている感じだ。
これはバーナンキ議長の金融政策に関するプレゼンがぶれており、ぶれる度に、市場は振り回されているということになっているが、実際は違う。かなり上昇トレンドが続いたので、不安なのだ。これは、ミニバブルの一つのピークに現れる特徴である。
米国株式市場は現在、3つの条件がそろっている。まず、企業収益は絶好調であり、ファンダメンタルズからも買うという説明がつく。第二に、バーナンキ議長の出口戦略は、債券には大きなダメージだが、逆にカネが債券から株へ流れることになっている。第三に、しかも、世界的には、米国金融政策の引き締めへの転化は、リスクオフの動きをもたらし、カネは新興国から米国へ戻ってきている。
面白いのは、米国内で見れば、リスクオフなら株から債券なのだが、それが量的緩和の縮小によるものなので、米国債券に直接的なダメージがあるため、株へ流れるということであり、新興国からはリスクオフで普通に資金が戻ってくるから、本来なら米国債へ行くところが、それが米国株となっているのだ。したがって、米国株にはとことん資金が集まっている。
■ 上がるイメージが、誰にも浮かばない日本株
しかし、だからこそ、米国株式市場は怖いのだ。資金が集まりすぎており、短期的には過熱の雰囲気があるからだ。ただ、米国株が調整しても米国株自体には大きなダメージはないだろう。なぜなら、短期の過熱が怖いだけで、中期的には回復するというシナリオを多数派が望んでいるからだ。前述のように、カネは集まっている。また、ファンダメンタルズも強い。金融引き締めもファンダメンタルズが強いからということなので、どこかで株価のネガティブな反応は収まるだろう。
問題は、日本株なのだ。日本株が下がっている理由は、上がるイメージが、誰にも浮かばなくなっているからだ。
アベノミクスという言葉は、もう飽きた。株価上昇も一時は興奮するほど急騰したが、5月後半から6月でその熱も冷めた。冷静になってみると、急激に上がったから今さら買うのもどうかという気もしてくる。そこへ、企業決算は期待したほど強くはない。安倍政権の安定性は、民主党政権時代から見ると非常に貴重だったが、もう慣れてきてしまって、ポジティブな材料にならない。消費税は上がれば景気にマイナス、上げられなければ、政府財政、国債市場にマイナス、ということは金融市場全般にもマイナス。いずれにせよマイナスなのだ。そして、成長戦略は当然失望に終わる。
■ 冷静に理屈で株を買いたい人にはチャンス
そこへ、米国株の調整が起これば、日本株は下に触れやすくなる可能性が高い。そして、このシナリオを多くの投資家が予想しているだけに、今買い上げて行く気にならない。だから、動きが小さくなってくる。盛り上がりに欠けるのだ。
相場エネルギーが落ちたのだ。
これが株式市場においては致命的だ。株は勢いと気合、債券は理屈、為替はその両方、というのが本質だから、株式市場でいったんエネルギーが落ちてしまうと、理屈はどうであれ、大きく上がっていくシナリオは描けなくなっていく。これが日本の株式の現状だ。
今後は、様々なニュースが出ても、株式の動きは限定的だろう。さらに、株価が大きく動く瞬間があっても、それが大きなインパクトを金融市場全体、世界市場に与えることは徐々になくなっていくだろう。しかし、逆に言うと、だからこそ、冷静に理屈で株を買いたい人にとってはチャンスなのだ。
株式市場は、過去半年とは別世界に入ったのだ。
小幡 績