沖ノ鳥島沖で洋上補給する中国艦艇(左)と補給艦(防衛省統合幕僚監部提供)。反日攻勢は、習近平国家主席の立場の弱さを示しているのか
中国軍に「制御不能」の懸念 8月15日控え突発的衝突の可能性も
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130726/frn1307261810004-n1.htm
2013.07.26 夕刊フジ
中国の軍事的挑発がエスカレートしている。沖縄県・尖閣諸島周辺海域への中国公船の侵入だけでなく、中国軍機が南西諸島を通過して太平洋まで初飛行したうえ、中国海軍のミサイル駆逐艦など5隻が、7・21参院選を挟むように日本列島を1周したのだ。中国経済の失速が指摘されるなか、習近平国家主席は「反日世論」に火をつけて、国民の不満をそらすつもりなのか。それとも、中国人民解放軍の一部が暴走しているのか。
「今までにない特異な行動で、今後を注視していきたい」
安倍晋三首相は25日、中国軍のY8早期警戒機1機が前日、沖縄本島と宮古島の間にある公海上空を通過し、東シナ海から太平洋を往復飛行したことについて、こう語った。
中国の対米防衛ラインである第1列島線(九州−沖縄−台湾)を中国軍機が越えて飛行したのは初めて。小野寺五典防衛相は「ますます中国が海洋進出していく1つの方向ではないか」と警戒感をあらわにした。
さらに、防衛省統合幕僚監部は25日、中国海軍のミサイル駆逐艦やフリゲート艦など艦艇5隻が同日午後7時ごろ、沖縄本島と宮古島の間の海域を通過したのを確認したと発表した。5隻は今月3日に対馬海峡を北上、14日には北海道の宗谷海峡を通過した艦艇。中国艦として初めて日本列島を1周した=図参照。
尖閣周辺の接続水域でも、22日に発足した中国海警局所属の船4隻が、24、25日と2日続けて航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。同局所属の公船は武装しているとされる。
英金融大手HSBCが24日発表した7月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は、6月の確報値から0・5ポイント悪化し、47・7となるなど、中国経済の減速が止まらない。国内で鬱積する不平不満を外に向けてガス抜きするのは、中国の十八番ともいえる。
ただ、今回の軍事的挑発について、軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「参院選で、安倍首相率いる自民党が圧勝したことも影響しているはずだ」といい、解説する。
「中国が期待していた『反安倍・反自民勢力』が、参院選で壊滅状態となった。民主党時代とは違って、日本は今後、主権をめぐって毅然とした姿勢を取るとみられる。来月15日には、安倍首相や閣僚らの靖国神社参拝が注目される終戦記念日もある。中国の言葉に『文攻武嚇(ぶんこうぶかく)』という言葉がある。言葉で攻撃し、武力で威嚇して勝つというもので、日本を脅しあげて譲歩させようとしている。防衛省関係者も『ここまで挑発するとは…』と驚いていた。突発的な衝突もあり得る」
確かに、中国メディアは参院選後、安倍政権への激しい論調であふれている。人民日報系の環球時報は、9月11日に尖閣国有化1周年を迎えることを挙げて、「中国は1周年の日を静かに過ごすことはあり得ない」とまで恫喝している。中国側の一連の動きは、習国家主席の指令なのか。
中国情勢に詳しい作家の宮崎正弘氏は「習氏は就任以降、反腐敗キャンペーンを継続している。共産党幹部はアワビを食べていただけで失脚し、軍幹部は中国の国酒として知られるマオタイ酒すら飲めなくなり、みんな頭にきている。習氏の権力基盤は液状化しつつあり、人民解放軍の総参謀長すら横を向いている状態だ」という。
江沢民元国家主席が今月初め、上海で米国のキッシンジャー元国務長官と会食し、その席で「習近平国家主席は非常に能力があり、知恵がある国家指導者だ」と絶賛したことが先日報じられた。
宮崎氏は「江氏が、中国外務省を通じてリークしなければならないほど、習氏は国内の統制が取れていない。最近の軍事的挑発が、習氏による戦略の下で行われているとは思えない。軍部の跳ね上がりの行動ではないか。日本にとっては、その方が恐ろしい」と分析する。
米国の中国専門家からも、中国軍の行動への疑念が噴出している。ジョージ・ワシントン大学での討論会で、米国防大戦略研究所のT・X・ハムズ上級研究員は「中国軍は、だれが軍を制御しているのか不明で、行動を予測できない」と懸念を表明した。日本はどうすべきなのか。
前出の井上氏は「毅然と対応するしかない。独立国家としては、領土や領海で譲歩することはあり得ない。韓国は明確に中国に接近している。安倍首相は『世界地図を俯瞰(ふかん)する外交』を掲げている。ロシアや北朝鮮というカードも考える時期に来ている」と語っている。