増税前に住宅を買うのは決して得ではない!?
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20130725-00039179-diamond-nb
ダイヤモンド・オンライン 2013/7/25 11:35
2014年4月1日から消費税率が現行の5%から8%、再来年10月には10%と消費税の引き上げの予定が発表されており、それに伴って増税直前の今年度は、住宅などの高額商品を中心に買い急ぐ「駆け込み需要」が叫ばれている。
確かに住宅や自動車など、単価が高い買い物は増税前に買う方がお得なように思える。そこでフィナンシャルプランナーの西原憲一氏に「駆け込み需要」のお得度について話を伺った!
● 「駆け込み需要」に右往左往するよりも 肝心なのは先々のプラン
消費税増税前に、人生で一番大きな買い物となる住宅購入を考えている方も少なくないだろう。例えば2000万円の住宅(建物部分)を購入する際、今だと消費税は5%なので消費税額は100万円。だが8%になる予定の来年度には160万円となり、60万円もの差額が。それを避けるために、やはり住宅購入に踏み切るのは今がベストなのでは?
「いいえ。むしろ今購入すると損をする可能性もあるためオススメはしませんね。というのも、住宅ローン控除(控除率1%)が適用される借入限度額は、現行制度では原則2000万円だったため、税額控除限度額は毎年20万円まででした。けれど、来年4月1日から借入限度額の枠が4000万円まで広げられ、税額控除限度額は毎年40万円までアップするんです。また増税後の需要の落ち込みに伴い、住宅価格が下落する可能性もあります。税制面でのサポートや価格の低下などを考慮すると、増税後の方こそ負担が軽く済むケースも生じると思います。ただ、地価が下げ止まりつつあるというデータが国土交通省より発表されましたから、地域によって地価が上がってくるかもしれません。金融取引や設備投資が活発になると、ローンの金利が上向きになる傾向もあります。ですから現状では、買った方が得とも損とも言えないというのが正直なところですね」(西原氏)
● 増税前の自動車購入は得?
それでは自動車はどうだろう。今年、200万円の新車を購入すれば消費税額は10万円ですむが、来年同額の新車を購入したとすると消費税額は16万円。自動車取得税(取得金額200万円×90%×5%=9万円)や重量税(1t〜1.5tの非エコカー場合/12300円)も合算すると、税金だけで約20万円も支払うことになるわけだから、せめて消費税が5%と安い今年度のうちに購入した方がお得に思えるが……。
「ちょうど買い替えの時期という方は購入に踏み切るのもいいかもしれませんが、今年度は『駆け込み需要』によって価格の上昇が考えられます。また消費税が10%になる予定の2015年には自動車取得税が廃止される予定なので、様子を見てもよさそうです」(西原氏)
● 洗濯機や冷蔵庫は?
住宅と自動車には増税後も手当やサポートがつくようだが、洗濯機や冷蔵庫などに代表される大型の白物家電はどうだろうか?
「以前は省エネ家電への助成金などがありましたが、今回は税制面での大きな手当は見込めないですね。ただ増税後に価格が下がってくる場合、変動が大きいのではと思います。そもそも家電製品は入れ替えが激しいので、欲しい商品を1年以上我慢したら安く買えたりします。なので、とりわけ家電製品に関しては増税を意識するよりも、欲しい商品のコストパフォーマンスを優先する方がいいという気がします。少し我慢して値下がりを待つなど、慌てて高値買いするよりいいのではないかと思いますね」(西原氏)
● 金(きん)の売買によって 消費税分の差額で稼ぐ方法も疑問視 今年度、得する買い物は?
売却時にも消費税分が上乗せされる金(きん)の購入を考えている人もいるかもしれない。確かに今年度、金を購入して消費税が上がる来年度以降に売却すれば差額で儲けられそうだが、これについてはどうだろうか?
「確かに増税のタイミングに売却することで利益を出すのは効果的かもしれません。しかしそれは“金の価格が購入時と売却時で同じ”という前提の上に成り立つ方法なので、当然損をする可能性も考えられます。増税うんぬんは考えずに、従来通りの金の相場変動を意識して売り買いした方が、一般的な売却益は得られやすくなると思いますね。また消費税増税は国内の事情ですが、金は国際的な為替や株価の影響で相場が変動するので、短絡的に考えず慎重になってみる必要があります」(西原氏)
それでは来年度の増税時までに購入しておいてお得になるといったものは、ほぼない?
「数百万円、数千万円といった高額商品に関しては、お得だと断言できるものはないです。ただし、例えば電車の定期券は増税前の今年度中に買っておくのがお得ですし、ブランド品なども増税後に価格が急激に下落する可能性は低いので、増税前に購入すればお得感がありますね」
西原氏の指摘する通り、「駆け込み需要」で得をするといったケースはごく稀のようだ。単に税率の面だけではなく、増税後の手当や値段の下落などを視野に入れつつ、家計にとって何が本当に重要な買い物であるかを見極めることが、賢い消費者のあり方と言えそうだ。
(取材・文/照井琢磨、昌谷大介[A4studio])