デフレ転落の危機が待ち受ける韓国。朴槿恵大統領の手腕が問われる局面だ(ロイター)
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130725/frn1307251811008-n1.htm
2013.07.25
韓国経済は底割れしてしまうのか。日本経済がアベノミクスによってデフレ脱却の展望が開けてきたのと対照的に、不動産価格の下落やマネー不足に陥っており、デフレに転落しかねない危機的状況が続いている。景気刺激策というカンフル剤で高い成長率を取り戻そうとしているものの、専門家は「一過性のもの」と指摘する。国内の構造的問題を抱えるほか、頼みの中国経済も失速しており、先行きは厳しい。
韓国銀行(中央銀行)が25日午前、公表した4〜6月期の国内総生産(GDP)成長率速報値は、季節調整済みで前期比1・1%と、事前の予想の中心である0・8%を上回った。
四半期ベースでみると、韓国の経済成長率は2011年の4〜6月期以降、0%台が続いていたが、久々に1%台を回復したことになる。設備投資が減少した一方、民間消費は増加に転じたという。
韓国は経済成長に強気で、韓国政府と韓国銀行は13年度の成長率見通しをそれぞれ上方修正している。
第一生命経済研究所の西濱徹主任エコノミストはその背景について、「利下げや中小企業への低利融資、減税など景気対策の効果で上ぶれを見込んでいるが、一過性のもので、持続可能ではない」と指摘する。中長期的には懸念材料が多いというわけだ。
韓国経済は、朝鮮戦争後の1960年代、朴槿恵(パク・クネ)現大統領の父親、朴正煕(パク・チョンヒ)政権下で高度成長を果たし、「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれ、80年代以降もおおむね年率2ケタを含む成長を続けてきた。
その間、1997年のアジア通貨危機や2008年のリーマン・ショックなど急激な経済危機はあったが、今回はジワジワと低迷が続いている。
西濱氏は「最大の要因は中国経済の減速で輸出が伸びないこと。韓国は輸出依存度が高いので、景気へのインパクトは大きい。輸出が低迷すると設備投資も伸び悩み、内需も喚起されない」と語る。
その中国経済は、英金融大手HSBCが24日に発表した7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は6月から0・5ポイント悪化し、47・7となるなど悪化が止まらない。正規の銀行ルートを経ない融資「影の銀行(シャドーバンキング)」対策として引き締め路線を取ってきた李克強首相が「7%以上の成長率」を厳命、鉄道建設などの景気刺激に必死だが、「やみくもな景気対策はバブルを膨らませるだけ」(外資系証券エコノミスト)との指摘もある。
経済成長と並ぶ深刻な問題が物価上昇率の鈍化だ。韓国は2・5〜3・5%というインフレ目標を設定しているが、6月の物価上昇率は1・0%増、農産物と石油を除くコア指数が1・4%増と、いずれも下限を下回っている。
韓国銀行は今年5月、0・25%利下げしたが、より思い切った金融緩和策を実施するのは簡単ではないという。金融緩和は景気を刺激するうえ、ウォン安で輸出企業にも恩恵が期待できる半面、「輸入に頼っている生活必需品の価格が上昇し、生活が苦しくなるのでやりにくい」(西濱氏)というジレンマを抱えているためだ。韓国は社会保障や再分配制度が貧弱で、非正規雇用の割合が高いこともあって、アベノミクスと同様の策は取りにくいという。
「海外資金の先細りにより不動産価格が値下がりし、住宅を持つ家計の消費意欲をそいでいる。資産デフレが日本型のデフレに陥るリスクも高まっている」と西濱氏は警鐘を鳴らす。
前政権の李明博(イ・ミョンバク)大統領は、10年以内に経済成長率7%と1人当たり所得4万ドル、世界7大国入りという「747ビジョン」を掲げたが、目標達成にはほど遠い状況で幕を閉じた。
続く朴槿恵政権も、科学技術やITと産業を融合させる「創造経済」や、財閥偏重から中小企業との共生に経済構造を変える「経済民主化」によって、「第2の漢江の奇跡」の実現を目指すなど、スローガンは華々しい。
「クネノミクス」で経済を再浮上させられるのか、このまま没落するのか、韓国経済は重大な岐路に立たされている。