米中投資協定、本格交渉へ 中国「全分野を協議対象に」
【ワシントン=斎藤徳彦、山川一基】ワシントンで開かれていた米中両国政府による「戦略・経済対話」が11日閉幕し、両政府は米中投資協定の締結に向けて本格交渉に入ることで合意した。両国企業による相互の投資を拡大する狙いがある。実現すれば米中の経済面での結びつきがさらに深まることになりそうだ。
米中は2008年に投資協定の交渉開始を決めたが、同年に深刻化した金融危機の影響でほとんど進んでいなかった。近く具体的な交渉に入り、両国における規制の緩和や投資家の保護をめざす。
合意をめざす時期のめどは明らかにしていない。ただ、中国側は「すべての分野を協議の対象とし、例外は少数の分野となる」と約束した。規制する産業だけを決め、それ以外はどの産業でも自由に参入を認めるやり方を、他国との投資協定では初めて採る。
米国には、中国市場の拡大を見込んで投資をさらに増やしていく狙いがある。一方、中国には、米国に投資することで米企業の技術力や信頼性を自国側に取り込みたい思惑がある。
両国はまた、銀行や大手企業による「シャドーバンキング(影の銀行)」と呼ばれる不透明な融資など、中国の金融システムが抱える問題について、米国が協力して監視体制の整備に取り組んでいくことでまとまった。米国が「硬直的だ」としてきた中国の人民元レートについて、中国はさらに柔軟化させることを約束した。
また、会見した汪洋(ワンヤン)副首相によると、米国は米連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和の縮小について、中国など米国外への悪影響に配慮していくことを約束した。
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■米中対話で合意した内容
<外交>
・北朝鮮の非核化への協力を確認
・軍事交流を強化
<経済>
・投資協定の交渉を本格化
・人民元の市場化・国際化をさらに進める
・中国の金融システム改革で協力
・米ハイテク製品の対中禁輸措置の緩和を検討
<環境>
・地球温暖化防止へ協力を拡大
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〈投資協定〉 企業が海外に工場や企業をつくったり、海外企業を買収したりする際の条件を、国同士であらかじめ決めておくための協定。投資先の国の政府が不当な措置をとれなくすることで、企業が安心して投資できるようにする。自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)も、投資の約束事を含んでいることが多い。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201307120073.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201307120073