山東省青島港のコンテナターミナルに接岸した貨物船。6月の中国の輸出入はともに予想外の減少となった(AP)
欧州危機に反日ブーメラン… 中国経済に失速懸念、国家主導のいびつな市場に限界
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20130711/ecn1307111206008-n1.htm
2013.07.11 夕刊フジ
【上海=河崎真澄】中国経済に先行き不安が広がっているのは、安い人民元為替レートに支えられた輸出ドライブや、需給バランスを無視した公共投資の乱発など、市場経済の枠組みを踏み外した国家主導型の成長路線が限界に近づいているからだ。中国政府系シンクタンクまでが「7月危機説」を叫ぶ。一方、世界第2位の経済大国、中国がクシャミをすれば、世界経済がカゼを引きかねない現実もあり、米中戦略・経済対話でも、中国経済のソフトランディング(軟着陸)が欠かせぬテーマになる。
中国の国内総生産(GDP)成長率は昨年、実質で前年比7.8%と13年ぶりに8%を下回った。今年の政府目標は同7.5%。右肩下がりのカーブを描き始めており、高度経済成長時代の終焉も見えてきた。
昨年は欧州危機の影響が深刻化したことに加え、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる反日デモの暴徒化など、中国側の問題が製造業やサービス業で密接な関係を築きつつあった日本との経済関係に打撃を与え、これがブーメランのように中国経済を弱体化させた。
こうしたタイミングで3月に誕生した習近平国家主席と李克強首相による新政権は、リーマン・ショック脱出のため4兆元(約66兆円)の緊急対策を行った前政権のツケである公共投資の不良債権や、銀行の簿外運用「影の銀行(シャドーバンキング)」など、「金融リスクに一斉にメスを入れようとしている」(上海の経済専門家)段階だ。
GDPを支える投資、輸出、消費で、公共投資は金融引き締めで抑圧、日本など外国直接投資も、賃金高騰など中国リスク増大で二の足を踏んで伸び悩む。輸出は、日本に加え太陽光パネルのダンピング問題で揺れる欧州向けの輸出も細ってきた。10日発表の新車販売が1〜6月累計で前年同期比12.3%増と伸びる消費だが、GDP寄与度は日米に比べて大幅に低く、実体経済はどれも厳しい。
次の一手を中国はどう打つか。市場では最近「リコノミクス」と呼ばれる李首相主導の経済政策に関心が集まる。安倍晋三政権が進める「アベノミクス」を意識し、李克強氏の中国語読み「リ・カチァン」をもじった造語だ。ただ、景気浮揚を狙うアベノミクスとは対照的に、リコノミクスは国家主導型のいびつな市場経済に、政府自身が立ち向かうとの矛盾がある。
5年に一度の中国共産党大会(前回は昨年11月)の翌年に、「過去5年の経済失策をリカバーしようと大ナタを振るう経験則」(エコノミスト)もある。経済政策を管轄する李首相のリコノミクスは、就任から4カ月で正念場を迎えた。