「浮上する日本経済:来年・再来年の消費税増税が日本経済の浮沈を決する」
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/859.html
「01. のnJF6kGWndYさんへ:消費税の内実について」
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/871.html
の続きです。
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nJF6kGWndYさん、レスポンスありがとうございます。
ものごとをよく考えられていると思っているnJF6kGWndYさんでさえ、消費税の内実を理解されていないのではと思われることに少しがっくりしています。
こうして新しいスレッドを立てたのは、消費税(増税)問題が、その税制についての共通の認識がないまま、賛成か反対かで対立している現状を憂慮しているからです。
読まれている人のなかには、あっしらがnJF6kGWndYさんを“攻撃”するために新スレッドを立ててまで追い込んでいると受け止める人もいるかもしれませんが、nJF6kGWndYさんがそのような機会を提供してくれたという思いで利用させてもらっていることをご理解ください。
まず、今回いただいたレスポンスは、前回の私のコメントに対するものとしては的が外れているように思われます。(末尾にnJF6kGWndYさんのレスポンス全文を引用)
前回の私のコメントを要約すると、
1)消費税の転嫁(負担)は、“納税”ではないということ。
2)それゆえ、「輸出戻し税」を代表とする消費税還付制度は、広く事業者から集めた税金を正当性なく特定の事業者に渡す国家的詐欺行為であること。
3)消費税の建前である財政的問題を解決する間接税であるなら、詐欺的なおカネの移動が伴う消費税(付加価値税)ではなく、米国州税のような「小売売上税」を採用すべきこと。
4)付加価値税(消費税)が欧州諸国のみならず工業製品輸出国で広く採用されていることから、グローバル企業を中心とした輸出企業の国際競争力を高める“合法的手段”(補助金として後ろ指を指されないという意味)意図があることを認めるが、国民経済全体の利益になるような貢献度はないこと。
5)税制で輸出企業の国際競争力を高めたいのであれば、設備投資や研究開発などの費用認定で課税ベースを縮小したり、法人税(国税)の税率を下げたりすることで行うべきこと。
いただいたコメントについていくつか説明をさせていただきます。
■ 消費税の転嫁(負担)は“納税”と言えるのか?
● 「消費税の課税対象者は国内最終消費者だから当然の話」
消費税の負担は国内最終消費者という説明は成立するとしても、課税対象者は国内最終消費者ではありません。
そのようなことは財務省も言っていません。消費税の課税対象者は、あくまでも法律で規定された課税事業者です。
消費税の負担が国内最終消費者という説明は、企業の利益や法人税などにも通用する論理的な話ですから、税制にとって、巷間叫ばれているほどの意味はありません。
消費税は最終消費者が負担するという説明は、法人税は最終消費者が負担するという説明と変わらないものです。ですから、最終消費者が消費税を負担しなければならないような広報は、詐欺に等しい犯罪行為だと思っています。
貴殿の「消費税の課税対象者は国内最終消費者」というのは錯誤です。
消費者は、消費税を負担しないと宣言し、ある取引でそれを実現しても(妄想でしかありませんが)、罪に問われることはありません。
どういうことかと言えば、税込1万5百円の商品を買おうとしたとき、消費税分はまけろと交渉し、1万円で買ったような場合です。
買い手は、消費税を負担しないで済んだと錯覚するかもしれませんが、売り手は、10500円の商品を10000円で売っても、その取引で荒利(付加価値)を得ることができたのなら消費税が発生します。端的に言えば、仕入値よりも高い価格で販売できれば、消費税を転嫁していようがいまいが消費税が発生します。
そして、客が“所定”の消費税を支払わなかったことを理由に、その取引分を消費税額の計算から除外すれば脱税になります。
1万円に値切ることで消費税から逃れたと思っている買い手も、実のところ、消費税を負担しています。なぜなら、消費税は付加価値に課されるもので、このケースでも買い手の購入によって付加価値が生まれているからです。
その商品の税込仕入が7千円であれば、1万円−7千円=3千円が付加価値で、その5%の150円が消費税となります。
付加価値3千円は買い手が負担しており、そのなかの150円が消費税になるわけですから、消費税も、買い手が負担していることになります。
元の1万5百円で買っていれば、1万5百円−7千円=3千5百円が付加価値で、その5%の175円が消費税となります。
販売事業者は、付加価値が5百円増え、消費税が25円増えたということになり、税金を引いたあとの手取り荒利が1万円で買ったときより475円多くなります。
(個々の取引に消費税が課されるわけではなく、付加価値より狭い年間の消費税課税ベース付加価値なので、説明のわかりやすさでこのような例にしたことをご了承ください)
消費税は付加価値を手に入れた事業者が負担しなければならないものであるがゆえに、事業者が課税対象者になるのです。
最終消費者は、付加価値を生み出してはいますが、付加価値を手に入れるわけではないので、課税対象にはなりません。
貴殿が「消費税の課税対象者は国内最終消費者だから当然の話」と応えられた部分は、「輸出戻し税」が正当なものなら、一般消費者も消費税を納税していることになるのだから、医療費や住宅ローンなど所得税に関する税金の還付制度は、その個人(家計)の消費税“納税”額を加味したものでなければならないという話に対するコメントとして的外れだと思われます。
輸出事業者が、消費税をまったく納付していないにもかかわらず、「輸出戻し税」というかたちで消費税の還付を受けられるのなら、一般消費者も、税金の還付を受けるとき、消費税“納税”分が考慮された上限にすべきという話だからです。
輸出事業者の“納税”と最終消費者の“納税”に差があるとお思いですか?それとも差はないと思われますか?
● 「そして仕入れ税額控除は海外輸出業者に限らず、免税事業に一般的な制度だ 」
まず、消費税における「仕入れ税額控除」は、あくまでも消費税の算出方法の一部ですから、免税事業(ゼロ%課税取引)に限らず、課税事業者の課税取引でもごく普通に行われるものです。
「仕入れ税額控除」(「仕入に係わる消費税額」を控除)というのは、あくまでも、決算時に消費税額を計算するときに用いられる概念であり、「仕入に係わる消費税額」が“納税”や最終的な消費税額を意味するわけでありません。
そのことは、対概念である「売上に係わる消費税額」が、売上に伴い“納税”した消費税額ではないことを考えればわかるはずです。
計算のための区分でしかないものを、実際の“納税”と錯誤しているために、「輸出戻し税」が正当なものであるかのように思われているのです。
計算上の概念としても、「仕入れ税額控除」は、課税取引のように、「売上に係わる消費税額」が実存するときにのみ正当性があります。
売上と仕入が税込という前提で、消費税額の計算は、
A:「売上に係わる消費税額−仕入に関わる消費税額」
で求められます。
しかし、消費税額を算定する途中に消費税額が出てきてしまう“わかりにくさ”を回避する計算式も成立します。
B:「(売上−仕入)×消費税率/(100+消費税率)」
消費税額を求める計算式のAとBは、見てわかるように等価です。
Bを、「売上×消費税率/(100+消費税率)−仕入×消費税率/(100+消費税率)」というかたちにしたものがAだからです。
付加価値税である消費税は、負担したはずの消費税・受け取ったはずの消費税といったまどろっこしい概念を導入せずに、Bの算定式でズバッと求めれば済むものなのです。
しかし、そんなことにしてしまうと困るのは「輸出戻し税」制度です。
売上を「輸出売上」と「国内売上」に区分したとしても、(輸出売上+国内売上−仕入)に変わるだけで、「輸出戻し税」をもっともらしく思わせる「仕入れ税額控除」が入り込む隙間がありません。
Aの算定式にすることで、「(輸出売上に係わる消費税額+国内売上に係わる消費税額)−仕入に関わる消費税額」という“もっともらしい”かたちになります。
輸出取引(「輸出戻し税」)の問題は、「仕入れ税額控除」にあるのではなく、“ゼロ%課税”で売上に係わる消費税額をゼロとすることで、輸出向けを含むすべての仕入について「仕入れ税額控除」ができるようにしていることにあります。
わかりやすく言えば、輸出では消費税が課されていないのに、ゼロ%の課税がなされていると擬制することで、「輸出戻し税」の仕組みが正当であるかのように誤魔化しているのです。
貴殿は「免税事業に一般的な制度」と書かれていますが、輸出取引以外の“免税事業”とはどのようなものでしょうか?
非課税や不課税には、「仕入れ税額控除」はありません。
■ 消費税と国際競争力
●「どこの国でも付加価値の高い輸出産業を免税にするのは、その方が遥かに非効率な内需産業を優遇するより、労働生産性を高め、交易条件を高めて、国益になるからだ 」
誤解があるようです。
消費税の輸出免税は、課税される場合よりも国際価格競争力を高めるものではあっても、即、「労働生産性を高め、交易条件を高めて、国益になる」とは言えません。
労働生産性は、付加価値/労働者数ですから、生産した製品の輸出価格を高くして付加価値(荒利)を増やしたほうが高くなります。消費税は付加価値として算定される要素です。
輸出で得た付加価値にも消費税を課税するかたちにし、その分、資本増強でコストダウンを図るように誘導する方が長期的には国益にかなうかもしれませんね。
交易条件も、輸出価格と輸入価格の比ですから、輸出価格を高くした方が高まる指標です。
なお、この間続いている日本の交易条件悪化(労働生産性も)は、97年の消費税増税を契機に陥ったデフレ状況と円高のなかで、賃金を切り下げるかたちで円建て輸出価格を引き下げてきたことが主因です。
何より、輸出先にとって、輸入価格に消費税や法人税などの転嫁分が含まれていようがいまいがまったく関係がない話です。それは、輸入価格の内、コストがどれだけで、利益はどれだけかといった構成がどうでもいいことと同じです。
輸入するほうは、ずばり、需要を満たす機能・品質をトータル価格いくらで輸入できるのかが問題なのです。
消費税の輸出免税は、まず価格面で国際競争力を劣化させないこと、そして、「輸出戻し税」で、国際価格競争力を強化させつつ利益を増加させることに意味があります。 為替レートの変動や競合企業との競争関係で、「輸出戻し税」を価格競争力に活かしたり利益増加に活かしたりするわけです。
利益の増大は、設備投資や研究開発に回せる資金の増加を意味しますから、それをもって、労働生産性を高める効果があるとは言えるかもしれません。
また、研究開発費が潤沢にあれば、新興国が競争力を上昇させてくる分野にとどまって乱打戦をやるのではなく新しい分野を開拓できるので、それをもって、交易条件を改善する効果があるとも言えるでしょう。
●「輸出がダメージを受けた時期の交易条件の悪化は大きなマイナスだが、それでも途上国よりはマシだったのは、それだけ日本の過去の蓄積があったから」
「輸出がダメージを受けた時期の交易条件の悪化は大きなマイナス」ということがどのようなことを指しているのかよくわかりませんが、日本は、過去の蓄積をベースに現在なお世界有数の国際競争力を維持しています。
■ グローバル企業にとっての消費税
私の「消費税は、グローバル企業にとっては利益になっても、日本経済総体にとっては利益になっていない」という説明に、貴殿は、「正しくは、消費税増税は、グローバル企業にとってもマイナスだが、仕入れ税額控除によって、輸出に対する悪影響を0にしているということだ 」と応えています。
そのような貴殿の説明は表面的なものと言わざるを得ません。
「輸出免税」によって、確かに、下請けや納入企業が買い叩かれる度合いが減っている(サプライチェーンの健全な維持につながる)ことは認めますが、グローバル企業にとって、消費税制度は大きなプラスです。
「輸出免税」がなければ、下請けや弱い納入企業は、今以上にひどい買い叩きにあうはずです。
法人税減税をあれだけ声高に叫んでいる経団連(グローバル企業が加盟企業の中心)が、プラスでない消費税をあれだけ声高に叫び続けているとお思いなのでしょうか?
経団連は、「法人税減税+消費税増税+輸入関税撤廃」が望ましい税制政策だと考えています。
消費税増税は、「輸出戻し税」によって還付される金額を増大させることで利益を増加させます。法人税減税は、そうやって増えた利益をより多く手元に残すことを可能にします。輸入関税撤廃は、消費税があることで外国企業の国内市場進出は抑制できる一方、自社製品の輸入に伴う消費税負担は「輸出戻し税」で帳消しにできるからです。輸入関税は、法人税処理では費用として計上できますが、帳消しされることはありません。
■ 確認させていただきたい内容
「消費税自体には、以前から反対だから議論しても意味はない」ということですが、どのような理由で消費税に反対なのでしょうか?
【引用】
「投機的な要因で金利上昇やインフレが発生すれば、日本経済全体にとって大きなマイナスになるから
その場合、財政支出の削減や増税が利益になることは確実だろう
ただし、そうした判断を前倒しで行うのはほぼ不可能だから、どうしてもズレが発生するのは避けられない
先走ると、過剰流動性バブル、橋下増税や日銀の速すぎる引き締めによるデフレ不況のような事態を招く」
【コメント】
この部分については、推測はできますが、消費税と関わるどういう事態を指しているのかはよくわかりません。
推測による説明になりますが、ご容赦いただき、誤って理解している部分はご指摘ください。
インフレは、政府日銀が考えているようなマイルドなインフレではなく、円安と国際的投機家による資源価格引き上げが起点の悪性なものが生ずる可能性はあると思っています。
それはスタグフレーションを意味しますから、デフレの方がまだマシだと言えます。
金利上昇に関しては、現状で国際投機筋が日本国債を売り叩いたとしても、日銀がそれを好機として買い増しすれば済むことで、国際投機筋は、とんでもない損失を被って清算しなければならなくなります。
日銀が膨大な金額の国債を買い入れている理由の一つは、日本の銀行や生保までが日本国債を売りたくなるような状況がやってこないとは言い切れないと考えていることです。
投機筋の売り叩きに銀行などが反応するような経済状況というのは、資金需要も増大し、期待インフレも高まっているときですから、買い増しで対抗できないわけではなくとも、ベースマネーの噴出的増大が悪性インフレを招来してしまうことになりかねません。
そのために、政府・日銀は、現段階から、市中にある国債の量を調整しておきたいと思っているはずです。
「財政支出の削減や増税が利益になることは確実だろう」というのも、消費税増税は安倍首相や麻生財務相も認めているように税の増収につながるものではなく、現時点で財政支出を削減することも、デフレ脱却に逆行する政策であり、金融緩和というアクセルと財政緊縮というブレーキを同時に踏むような動きで誤りです。
貴殿は、「そうした判断を前倒しで行うのはほぼ不可能だから、どうしてもズレが発生するのは避けられない」 と書かれていますが、現状は輸入物価が及ぼす悪影響をウオッチしつつ、国民生活を困窮化させたり、事業者の収益を圧迫させたりする場合は、“バラマキ”で対応することになります。
むろん、このまま供給力が衰退していれば、将来的には、財政支出の削減や有効な増税策を採らなければ、悪性インフレに苛まれるようになると思っています。
「先走ると、過剰流動性バブル、橋下増税や日銀の速すぎる引き締めによるデフレ不況のような事態を招く」(97年の橋本増税と理解)恐れがあることに同意します。
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【nJF6kGWndYさんの直前のコメント全文】
01. 2013年7月11日 09:20:01 : nJF6kGWndY
>還付されている企業の消費税納税額はゼロ
>転嫁されたことが“納税”という論理が通用するのなら、最終消費者が消費税を“納税”していることになりますから、住宅ローンなどに関する所得税の還付額が納税額範囲になっていることは誤り
消費税の課税対象者は国内最終消費者だから当然の話
そして仕入れ税額控除は海外輸出業者に限らず、免税事業に一般的な制度だ
>外国人に消費税を転嫁できないということはありません。
もちろん可能だ
ただし、どこの国でも付加価値の高い輸出産業を免税にするのは、その方が遥かに非効率な内需産業を優遇するより、労働生産性を高め、交易条件を高めて、国益になるからだ
輸出がダメージを受けた時期の交易条件の悪化は大きなマイナスだが、それでも途上国よりはマシだったのは、それだけ日本の過去の蓄積があったから
>消費税は、グローバル企業にとっては利益になっても、日本経済総体にとっては利益になっていないのです。
正しくは、消費税増税は、グローバル企業にとってもマイナスだが、仕入れ税額控除によって、輸出に対する悪影響を0にしているということだ
消費税自体には、以前から反対だから議論しても意味はないが
投機的な要因で金利上昇やインフレが発生すれば、日本経済全体にとって大きなマイナスになるから
その場合、財政支出の削減や増税が利益になることは確実だろう
ただし、そうした判断を前倒しで行うのはほぼ不可能だから、どうしてもズレが発生するのは避けられない
先走ると、過剰流動性バブル、橋下増税や日銀の速すぎる引き締めによるデフレ不況のような事態を招く