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流通速度はユーロの2.5倍_減価する地域通貨キームガウアー
近年、日本では「地産地消」という言葉が良く使われるようになってきましたが、ドイツでは地域通貨を利用した「地産地消」が活性化しています。
ドイツには全国に28の地域通貨があり、37地域で準備が進んでいて、指定金融機関でユーロと1対1で換金でき、商店での支払いだけでなく、企業間の決済にも使われているそうです。
紹介するドイツ最大の地域通貨「キームガウアー」は3ヶ月ごとに価値が減っていくことから、蓄財にまわらずどんどん使われ、年々流通量が伸び続けています。
また、公共投資的な使われ方で地域の教育施設などの発展にも寄与しはじめており、地域活性化のほか、近年のグローバリズムやマネー経済に対する意識変化に合致したお金の使われ方としても面白い事例だと感じます。
*****以下Global Press リンクより引用*****
ドイツ最大の地域通貨は「キームガウアー」である。2003年にバイエルン州キームガウ地方の有志が始め、たちまち市民の圧倒的な支持を得て協会組織に発展した。その後キームガウと周辺住民約48万人を対象に通貨流通量は9年間で65倍に増え、2011年末時点で65万キームガウアーが流通する規模に成長。キームガウアーでの決済に参加する事業者の業種も商店にとどまらず不動産、弁護士事務所、ITサービスまで幅が広がり、消費者を含めた協会会員総数は3300に達している。「キャッシュレス決済や少額融資など、地域通貨としては思い切ったツールの導入が成功のカギです」と協会理事のクリスティアン・ゲレリさんは胸を張る。
キームガウアーは3カ月ごとに2%価値が下がるため、使う人が貯め込まずにどんどん支払いにあてる。このため流通速度はユーロの2.5倍と速い。平均して流通量の約4分の1は事業者がユーロに換金しているが、5%の換金手数料のうち3%が自動的に非営利団体会員への寄付金になる。この仕組みを通じて、2011年には5万キームガウアー(=ユーロ)が地域内200以上の学校や福祉施設などに寄付された。経済だけでなく地元の文化や教育を支援する性格があってこそ、キームバウアーがここまで成長したと言える。
地域通貨が各地で根を下ろす一方、地元製品に統一ブランドを与えて域内消費者にアピールしようとする動きも全国で見られる。自治体が地域開発の一環として導入するケースが多い。統一ブランドを与える際の基準や難度は各地で異なるが、おおむね共通するのは(1)生産地が明確(2)人体にも環境にも安全(3)サステナビリティを意識(4)地元の伝統重視、の4点だ。
(中略)
地域通貨や地元ブランドが成功するのは、それが地元の共感を呼ぶからだ。小売リサーチ研究所(ケルン)の最新調査でも、回答者の72%が「海外製品より地元製品を好む」と答えている。どこから来たかわからない大量生産品でなく、作り手の顔が見える地元製品は安心感がある。域内で仕入れるので輸送距離が短く、製品が新鮮で、環境への負荷も低い。こうした点を高く評価する消費者が多いということだ。ドイツがかつては独立した領邦の集まりであり、ドイツ人の間で今でも地元意識が強いことも背景にあるだろう。
(中略)
ユーロが混迷を続け、世界中の製品が店頭に並ぶなか、むしろ小さな地域内での取り引きに満足を感じるドイツ人。地域通貨と地元ブランドの人気は、何より安全と確実を求める国民性の発露なのか、グローバル化するご時世への無意識の抵抗なのか。(柳瀬尚弘)