4月30日(ブルームバーグ):今や国民的カジュアルウエアの代名詞になった「ユニクロ」は、日本株市場でも代表的指数の1つ、日経平均株価 のリード役として存在感を増している。ただ、大き過ぎる存在故に業況の実態とかけ離れた投機的売買の温床にもなっており、還暦を過ぎた歴史ある指数にも、その正当性を疑問視する声が挙がる。
「ユニクロ」ブランドを展開するファーストリテイリング の日経平均における構成ウエートは、26日時点で10.3% 。これは、同指数での時価総額比率1.4%と大きく乖離(かいり)し、ウエートから見た存在感は、東証1部の時価総額上位5社であるトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ホンダ、JT、NTTドコモの合計(5.2%)のおよそ2倍だ。ブルームバーグ・データによると、過去2年間の日経平均の上昇率51%に対する同社の寄与度は16%となっている。
ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役は、「日経平均は明らかに指数として価格形成がいびつ」と指摘。1社がここまで影響を与えているのは問題で、「1社のウエートがある水準まで上がると見直しを行うなど、明確なルールを設けた方がいい」と言う。
Fリテイリは指数のみならず、日経平均に連動する資産にも大きな影響を与えていることになる。投資信託協会のまとめでは、日経平均連動型インデックス投信の純資産総額は3月末時点で3.9兆円。大阪証券取引所、シンガポール取引所、シカゴ・マーカンタイル取引所の3市場で取引されている日経平均先物(ミニ先物を含む)の26日時点の想定元本の合計は、中心限月の6月物だけで約9.5兆円に上る。
押し上げ寄与度5割の日も
日経平均株価の算出開始は1950年9月。構成銘柄の株価平均を基に算出される同指数、米国のダウ工業株30種平均 を除き、米S&P500種など多くの世界的株価指数は時価総額加重平均で算出されている。日本を代表するもう1つの株価指数、TOPIX も時価総額型で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を筆頭に、機関投資家の多くはTOPIXを日本株のベンチマークとして採用している。
日本経済新聞社広報グループはブルームバーグの取材に対し、Fリテイリ株の日経平均におけるウエートが大きい点については認識しており、「株価の上昇が相対的に大きくなれば、それだけウエートは大きくなる」と回答した。
直近25営業日を見ても、Fリテイリが日経平均の変動に占める寄与度が25%を超えた日が6営業日ある。今月3日には、同社株は4350円(14%)上昇し、日経平均の押し上げ寄与度は約5割に達した。対照的に、24銭安と日経平均が小安く引けた9日はFリテイリ1銘柄で52円押し下げており、同社株を除外すれば、同指数はプラスだった。
過去2年間にFリテイリ株は約3倍に上昇し、日経平均に対する影響力を徐々に強めてきた。ちょうど1年前の日経平均におけるウエートは7.5%で、その日までの25営業日で寄与度が25%を超えた日は5営業日。2年前のウエート、寄与度が25%を超えた日はそれぞれ5.4%、2営業日にとどまっていた。
SQ前に売買急増の怪
かねてより、日経平均の問題点を指摘してきた三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は、Fリテイリの指数に対する影響力の大きさを利用し、「デリバティブを取引するヘッジファンドなどの一部投資家が、同社株を売買することで恣意(しい)的に指数を動かしている可能性がある」とみる。
過去1年間のFリテイリ株は、日経平均先物・オプションの特別清算値(メジャーSQ)算出週の1日当たり平均売買高 が、その前の週末時点の15日移動平均に比べ2.1倍に急増。日経平均構成銘柄の売買高合計は同1.1倍で、SQにかけFリテイリ株の取引は活発化した。
3月1週(4−8日)にFリテイリ株は前週末比6120円(24%)高と急騰、日経平均は1週間前の1万1600円台から677円(5.8%)上げ、8日算出のSQは1万2072円と節目の1万2000円を上回った。オプション価格は、原資産の価格が権利行使価格に接近するに連れ上昇する傾向にあり、1万2000円のコール(買う権利)オプションを買っていた投資家は、日経平均が上昇基調を強めた中で利益を得た可能性がある。
悪いのは投資家ではなく指数
ベイビュー・アセット・マネジメント運用第2部の高松一郎ファンドマネジャーは、PERなどから見たFリテイリ株のバリュエーションは高く、「ファンダメンタルズとは関係のない取引が同社の株価形成をゆがめている」との認識を示した。
Fリテイリの予想PERは26日時点で39倍。グローバルで見た競合会社のへネス&モーリッツ(H&M)の21倍、ギャップ の14倍、インドゥストリア・デ・ディセニョ・テクスティルの24倍を大きく上回る。アナリストの目標株価の平均は2万7592円と、26日終値の3万5700円を23%下回っている。
結果的にFリテイリ株の変動幅、下げ相場での下落が大きくなることから、「会社も迷惑しているのではないか」とベイビューの高松氏。同社株を利用し、日経平均を動かそうとする投資家はいるだろうが、「悪いのは投資家ではなく、欠陥のある指数の方だ」と強調した。パインブリッジ・インベストメンツの前野達志執行役員も、「日経平均は東証1部全体の動きを反映する指数としてはもはや機能していない」とし、「指数の算出方法は変えた方がいいのではないか」と話している。
Fリテイリ株は、セブン−イレブン・ジャパンとイトーヨーカ堂が共同持ち株会社を設立したことを受け、05年8月に日経平均に採用された。採用当時の株価は9000円で、日経平均に占めるウエートは2.7%。ブルームバーグ・データによると、同社は06年から12年までの期間における上昇率が日経平均採用銘柄中、1位だった。
Fリテイリ広報担当の古川啓滋氏は、同社株の日経平均におけるウエートが高いことは「認識している」ものの、こういった状況に関しては「コメントは差し控える」とした。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MLR4MS0UQVI901.html
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/674.html