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2013/3/25 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
ロシア、トルコ、中東に翻弄される特殊な国
25日のタイムリミットまでにユーロ圏と金融支援で合意――。債務危機で世界中の注目を集めているキプロス共和国。地中海の小国がこれだけ脚光を浴びるのには理由がある。
キプロスは金融問題だけでなく、安全保障上の観点からも非常に特殊な国なのだ。キプロス危機によって、世界の軍事バランスが激変する可能性もある。
外交問題に詳しいジャーナリストの歳川隆雄氏が言う。
「地中海の東端に位置するキプロスは、ヨーロッパとアジア、アフリカに囲まれた地政学的に特殊な場所にあります。そのため、米ソ冷戦時代を含め、常に地中海の重要な軍事ポイントになってきました。帝政時代から続くロシアの南下政策では、カスピ海を経てイラン・イラクを通って地中海に出るルートで重要な拠点のひとつ。同時に、何世紀にもわたってギリシャとトルコによる民族主義的な対立の舞台になり、74年には南北に分断された。そして、今は金融危機。キプロスが破綻した場合、EUにとって、安全保障上の懸念が増すのは間違いない。キプロスがEUに加盟したことで、対アジア、対アフリカの砦(とりで)のような役割を果たしてきた面があるからです。キプロスは北朝鮮とも国交があり、国際安全保障の面から非常にユニークな国と言えます」
キプロス島の一部はイギリスの海外領土で、英空軍基地がある。トルコとイタリアには米軍の基地もある。ロシアや中東を含めた微妙な軍事バランスが崩れれば、一触即発の事態になりかねない。
「そもそも、ドイツを中心としてEUが強硬に預金課税を求めたのは、キプロスの銀行がマネーロンダリングに使われているという疑念からでした。多くがロシア系のアングラマネーですが、中東のテロリストの資金も入ってきている。もし、キプロスがEUの支援を受けなければ、ロシアによる資金援助が行われるかもしれないし、トルコも発言権を強めようとする。キプロスを追い込むことはEU諸国にとって得策ではないため、最終的には支援せざるを得ない。ただ、仮に今回の金融危機を回避できたとしても、キプロスをめぐって各国の思惑が入り乱れ、今後も一筋縄ではいきそうにありません」(金融関係者)
地中海の火薬庫みたいな国だ。