BS世界のドキュメンタリー「地下深く永遠に 〜10万年後の安全〜」 投稿者 dm_4fe5d773d97d4
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http://digital.asahi.com/articles/TKY201301230741.html
原発ゴミ最終処分、実現へ 世界初、フィンランドの施設を見る
朝日新聞 2013年1月24日
北欧フィンランドで、高レベル放射性廃棄物である原発の使用済み燃料を400メートル以深の地下に埋める民間最終処分場計画が大詰めの段階を迎えた。昨年末に建設許可が申請され、同国の審査が順調に進めば来年6月に建設を始める。2020年操業が目標だ。「トイレなきマンション」という原発の課題を世界で初めて乗り越えることになる。
処分場の予定地はフィンランドの首都ヘルシンキから北西へ250キロのバルト海に浮かぶオルキルオト島にある。車で約4時間、雪に覆われた景色を見続けながら現地に入った。
すぐ近くに同国の電力会社「TVO」のオルキルオト原発1、2号機(沸騰水型、出力各86万キロワット)が運転している。さらに、最新型の3号機(加圧水型、同160万キロワット)が建設中。東芝や三菱重工業が参加している4号機の建設準備も進められている。
処分場は、別の地域にあるフォルトゥム社のロビーサ原発1、2号機(加圧水型、出力各48・8万キロワット)と合わせて、計6基の運転で出る9千トンの使用済み燃料を埋める予定だ。
日本記者クラブ取材団の一員として、試験施設「オンカロ」に入った。オンカロとは「洞窟」という意味だが、2004年に着工した人工トンネルだ。照明に照らされた坑道(高さ5・8メートル、幅6メートル)が続く。傾斜は1キロで100メートル下がる。壁は岩がむき出しで緩やかな斜面が暗闇に吸い込まれていく。最深部の420メートルまでは車で15分ほどかかる。
●「活断層はない」
処分場を運営するポシバ社の地質学の専門家で地元で生まれたトーマス・ペレさん(31)は「周辺で地震があった記憶はない。プレート境界からも離れているし、活断層もないと考えている」と話した。
フィンランドはスカンディナビア全体を覆っている極めて古い地層の真ん中にある。堆積(たいせき)岩ではなくて19億年前に形成された結晶質の岩石だ。火山や地震活動はほとんどないという。
ポシバ社は昨年12月28日に建設許可申請を政府に出した。規制機関の審査は1年半ほどで終わるとみられ、20年の操業は計画通りにできそうという。使用済み燃料の処分場はスウェーデンでも建設が決まっているが、25年の試験操業を目標にしており、フィンランドが先行する。
オンカロの最深部では、水平方向に二つの坑道が掘られ、さらに三つの縦穴が掘られていた。模擬でつくられた穴だが、操業が始まればこうした縦穴に金属製の筒に入れた使用済み燃料を順次埋めていく。
処分場の坑道の長さは最終的には計40キロになる。2100年に事業が終われば、全て埋め戻され、人間社会から隔離される。
●安全性に異論も
ポシバ社によると6万年後には再び氷河期を迎えると予想され、氷の厚さは2キロにもなる。その重さでこの一帯はある程度沈む。放射能が自然減衰によって無害化される10万年後には、氷が溶けて再び持ち上がる。その際に、地表に近い部分では断層ができたり割れ目が出来たりすると考えられているが、深い部分は大きな変化があるとは考えられていないという。
10万年後まで安全性を保証できるかには異論もある。オンカロを題材に処分の安全性を問うドキュメンタリー映画「10万年後の安全」のミケル・マッセン監督は「とてつもない長い期間の問題。将来の世代に残す是非を多くの人に考えてもらいたかった」と話す。
日本は使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出す政策を進めてきた。その過程で出る高レベル放射性廃棄物を、しっかりした岩盤を探して埋めるという方策だ。処分場の公募は02年に始まったが、立候補している自治体はない。
日本は世界でもまれにみる地震や火山活動が活発な国だ。日本学術会議は千年・万年単位で地下に処分するリスクについて技術や社会的合意形成がなされていないとし、使用済み燃料は地上に暫定保管することを提言している。
●原子力推進の方針は転換
オルキルオト原発の立地自治体で、使用済み燃料最終処分場も受け入れたエウラヨキ市(人口6千人)のヒーティオ市長は「原発を受け入れた地域として責任がある」と話す。
ただ、住民からは「これ以上、原発も最終処分場も造ってほしくない」といった声も聞いた。
フィンランドはロシアからのエネルギー輸入に依存している。石炭や石油の9割を輸入している。原発でこの依存から抜け出そうとしてきたが、最終処分場が実現できるめどがたったからといって、今後も原子力を選択するわけではない。
フィンランドは、東京電力福島第一原発事故が起きた後、11年4月に6政党の連立政権になった。政権内ではその前年に認めたオルキルオト原発4号機と、フェンノボイマ社がピュハヨキに新規立地する2基の建設計画以外で原発を新設しないという方針を決めた。
同国のニーニスト環境相は福島第一原発事故の影響について「エネルギーの問題は世界的にも見直されている。フィンランドでも原発は減らしていくべきだと思っている」と強調した。
計画中の原発も問題を抱えている。オルキルオト原発3号機の建設工事は管理態勢の問題などで遅れ、09年の完成予定は15年にずれ込んだ。TVOは「最近になって安全システム上の問題が出てきた」とし、さらに遅れる可能性がある。
フェンノボイマ社の計画でも、使用済み燃料の処分場は決まっておらず、確保できなければ建設は断念せざるを得ない。ドイツの企業が出資していることから、フィンランド国内での処分を疑問視する声もあったが、昨秋にはこのドイツ企業自体が計画からの撤収を発表。先行きが見えなくなっている。
(オルキルオト=編集委員・服部尚)
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