05. 2012年4月21日 09:11:43 : MzGOoKEVOM
ソニーの創業者の一人、井深大(いぶか まさる)氏は、技術担当重役として他社に先んじて新分野の製品を次々と送り出した。真空管ラジオの時代、世界に先んじてトランジスタラジオを発売した。1950年代当時、東の横綱・東芝と西の横綱・松下電器が安定したシェアを占めていた家庭用ホームラジオの分野に、小型化したトランジスタラジオで果敢に挑戦し、持ち歩くラジオと言う新しい需要を生み出した。後年のウォークマンは、これの延長線上にある商品だと思われる。ジャッカルと言うテレビも、ポータブルだった。
井深氏は無線やラジオに人一倍興味を持っていて、小さいだけでなく性能面でも世界一の高性能ラジオを目指した。短波による国際放送を受信するラジオの分野で、彼は世界に名だたるゼニスやグルンディッヒに果敢に挑戦し、そして結果的に彼らを凌駕する製品を作り上げた。
1960年代、西欧諸国で高性能かつ高価格ラジオとして頂点に君臨していた西ドイツのグルンディッヒ社。七つの海を航海する豪華客船には必ず積まれていた伝説のラジオ、グルンディッヒ・サテライト2000。これを超えたソニーのCRF-230は、1969年に登場した。両機をドイツのサイトからリンクする。
http://www.shortwaveradio.ch/radio-e/grundig-sat2000-e.htm
http://www.shortwaveradio.ch/radio-e/sony-crf230-e.htm
ソニーは、このCRF-230の後継機として1975年8月、CRF-320をフランクフルト国際見本市に出品した。周波数を1kHz単位で表示するデジタル周波数カウンターを備え、受信回路は第一局発周波数をこれまでの2MHzから45,145 MHzに変更。イメージ妨害比率を飛躍的に改善した。その局発にPLLシンセサイザーを採用したが、これは民生用ラジオとして世界初だった。これに勝てるラジオは西欧諸国のどこにもなく、浮沈艦大和、武蔵クラスの衝撃であった。
http://www.shortwaveradio.ch/radio-e/sony-crf320-e.htm
グルンディッヒ社は、これに対抗してサテライト3000を1977年に登場させたが、同社の技術ではPLLシンセサイザーを開発できず、旧態依然の第一局発周波数2MHzのままであった。ドイツ、西欧陣営の敗北は決定的であった。同社は衰退の一途を辿り、西欧諸国の同業他社も相次いで経営難に転落。グルンディッヒ社は後に倒産している。他社も買収、合併の運命に晒され、音響・映像機器からの撤退が相次いだ。
http://www.shortwaveradio.ch/radio-e/grundig-sat3000-e.htm
名門グルンディッヒブランドは現在、ブランド管理会社によって中国で生産されるラジオにつけられているバッジに過ぎない。後を追うように、ソニーのラジオも中国の生産委託先で生産されたものにバッジをつける例が増えている。日本国内で生産されるソニーのラジオは、現在は生産委託先の秋田県の十和田オーディオで生産されているのだ。ソニー本体は、とっくに生産から撤退している。CRF-320のような大型機も姿を消した。他社から調達した製品を平気で売る現在のソニーには、ものづくりのこだわりはない。復活はありえない。
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/659.html#c5