ところが、軍政時代に中国と契約したダム建設を中止すると、テイン・セイン大統領が議会で表明したのだそうですね。
【バンコクー1深沢淳一】ミャンマーのテイン・セイン大統領は30日、中国がミャンマー北部カチン州に建設中の水力発電用大型ダム「ミッソンダム」の開発を中止すると表明した。事業は軍事政権が認可したもので、民政移管後の新政府が軍政時代の決定を覆したことになり、極めて異例の事態だ。政権内の改革派が、既得権益を守ろうとする守旧派を押し切ったとの見方も出ている。
ダムは軍政が中国政府と契約し、中国国有企業がミャンマーを流れるイラワディ川源流の合流地点に36億ドル(約2760億円)を投じて出力600万キロワット(同国有企業発表)の発電ダムを建設する計画。2年前に着工した。中国は周辺に計七つの大型ダムを開発し、発電した電力の9割を中国雲南省に送る。
ミャンマーでは新聞の検閲緩和に伴い、環境保護などを理由に開発に反対する世論が噴出している。当時、軍政幹部が中国から賄賂を受け取ったとも指摘され、新政府内では、軍政トップだったタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長の右腕とされたゾウ・ミン第1電力相らが開発推進を強く主張した。
だが、大統領は議会への声明で「国民は美しい自然が失われることを心配している」と世論への配慮を強調し、「私の政権中は開発を中止する」と宣言した。ただ、中国との賠償問題を懸念する声もある。
政治犯の恩赦「大統領が検討」 労相、スー・チーさんに
一方、アウン・チー労相は同日、ヤンゴンで民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんと7月以来3度目の会談を行い、「大統領は恩赦を考えている」として政治犯が釈放される可能性を伝えた。
欧米は経済制裁を解除する条件として、2000人以上にのぼる政治犯の釈放を要求しており、これに柔軟に応じる姿勢を示唆したものといえそうだ。
スー・チーさんもこれまで、ミッソンダムの開発中止を政府に求めており、会談後、記者団に「国民の声に耳を傾けたのはとても良いことだ」と評価した。
中国が、インド洋進出の為の「真珠の首飾り作戦」の一翼として、また、中東からの原油の陸送基地港として、ミャンマー軍政府と中国は密接な関係を築いてきました。
その関係の中での、中国の支援策と称するダム建設ですが、軍政出身のテイン・セイン大統領が中止を決断・表明した理由は何なのでしょう。
民政に移管され、世論を重視する民主化をアピールするためでしょうか。
ひとつは、ミャンマーでは依然として少民族が割拠していて民兵組織を持っているのだそうです。カチン州ではカチン続の民兵組織があり、ダム建設を妨害し政府軍と衝突してきているのだそうです。
さらに、アフリカでの中国の経済支援が進むにつれ、現地で反発の声が上がり始めている様に、建設の雇用も中国人が押しかけて奪い、施設の完成後の利益も中国が独り占めしてしまい、現地にお金が落ちないという事実が露呈してきていますが、ミャンマーのダム建設でも同じ傾向があるようです。
産経新聞によれば、(1)ダム建設に伴い、カチン族の63村、12千人が移住を強いられた(2)ダムで発電される電力の 9割が中国へ供給され、住民には還元されない(3)生態系に影響が出るといった、3つの理由で、カチン族、民主化勢力、環境保護団体などが反対しているとの事です。
テイン・セイン大統領は、カチン属軍との内戦の発展を恐れるとともに、この国益に利さない中国の支援の正体に気付き、中国へ牽制球を投げたのでしょう。
民主化路線を表面に出しているのは、欧米の規制を撤廃させ、経済の活性化を進めたいからですね。ワナ・マウン・ルウィン外相が米国を訪問するなどし外交攻勢をかけていますね。読売の記事に書かれている、軍内部での既得利権を持つ旧守派に対する改革派の宣言もあげられますね。
ビルマ時代の古くから関係の深い日本は、欧米ほどの強い規制は行っておらず、ミャンマー政府は日本企業の進出を期待していると、どこかのテレビで報道していましたが、高騰する中国の人権費に対し、最低水準にあるとされるミャンマーへは、繊維産業などが一部進出をしていて、多くの日本企業も興味を示しているのだそうです。
日本企業ミャンマー視察ラッシュ、理由は? : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ミャンマー - Wikipedia
これまでバスされてきたASEAN議長国にも名乗りをあげているミャンマー。北朝鮮の様に、中国の属国化して細々と生きていくのかと思っていましたが、中国と欧米諸国の両方を天秤にかけ牽制し、中国一辺倒の属国から脱却しようとしているとすれば、たくましい試みで、眼が離せませんね。
# -冒頭の写真は、テイン・セイン大統領とスーチーさん
http://www.asyura2.com/11/test23/msg/458.html