01. 2011年9月15日 07:01:59: qv02J3xCTA
http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=31132772
9月12日、秋の連邦議会が始まった。脱原発、大手銀行の規制強化、スイスフラン高で行き詰まる輸出部門といった重要課題を巡り大議論が予想される。10月の総選挙に向け各党は主張を際立たせ力量を見せる必要があるからだ。
政府が5月に「歴史的決断」として発表した脱原発の方針は、日和見主義や信念に欠けるなどとも評され、政財界の評価は分かれていた。しかし国民議会(下院)は6月に、現存の5基の原発は稼働の寿命で廃炉、現在の型の原発は建設しないという段階的脱原発案を承認した。
9月28日には全州議会(上院)で原発を巡る議論が行われる。そこでは条件付き脱原発という新たなシナリオが浮上している。全州議会の委員会の過半数が、ほかの分野と同じく原子力エネルギー分野においても新たな技術開発、すなわちトリウム原発などの次世代原発の建設への道を閉ざすべきではないと主張したからだ。
全州議会で、新技術は禁止しないという条件つきの脱原発を決定した場合、脱原発の議論は国民議会へ戻される。そうなると国民議会に残される選択肢は、全州議会の決定を承認するか脱原発案そのものを廃案とするか、そのどちらかしかない。しかし逆に全州議会が国民議会による段階的脱原発の決定を支持した場合は、それが最終決定となる。
銀行の自己資本を強化
2008年秋、銀行最大手UBSの経営危機は大きな波紋を広げた。政府は、UBSが破綻すれば国民経済に深刻な危機をもたらすとの懸念から、数十億フラン規模のてこ入れを行った。
それ以来UBSなどの大手銀行の問題は政治問題として取り上げられるようになった。なぜなら、大手銀行は自国の経済までもが破たんするほどに規模が大きく、金融システム全体にとって重要という新たな認識が広がっているからだ。「つぶすには大きすぎる(too big to fail)」というテーマのもとに、議会は銀行に関する法制度改革に着手し、そうした巨大銀行の自己資本および組織構成に対する規制を強化する。
具体的には、巨大銀行は今後自己資本の19%をリスク管理に充てなくてはならない、というものだ。そのうち10%は自己資本または繰越利益に、残りの9%は偶発転換社債(CoCo債)に組み込み、金融危機に際してはそれを自己資本に転換しなければならない。
全州議会は夏の連邦議会で既にそうした法改正を承認し、国民議会の経済予算委員会もその決定に倣った。それにもかかわらず国民議会ではこの改正案をめぐってさらなる議論が展開されるとみられる。なぜなら、左派政党がさらに厳しい銀行規制を狙っているからだ。
さらに中道派の一部は、改正案を否決するか、危機に際して銀行の業務全体と投資部門を分離することができる銀行分割システムを導入したいとしている。
萎んだ緊急経済支援策
8月中旬スイスフランが対ユーロでほぼ等価になったころ、ヨハン・シュナイダー・アマン経済相は記者会見で、雇用確保を最大の目的として輸出および観光部門に20億フラン(約1741億円)規模の緊急支援策を発表した。ところがスイス企業連盟(economiesuisse)など各界から相次ぐ批判を受けたため、8億7000万フラン(約757億円)と大幅に減額した。
国民議会の専門委員会は、スイス国立銀行(SNB/スイス中銀)が対ユーロ相場の上限を設定し為替介入を発表したことを指摘してこの救済策を否決したが、その一方で全州議会の委員会は救済策を支持した。
全州議会の委員会の決定通り8億7000万フラン規模になった場合、失業保険基金(ALV/LACI)に5億フラン(約480億円)を投じて雇用を保つ一方、期間限定で労働時間を短縮する。また、技術革新および研究開発分野に2億1250万フラン(約185億円)、観光分野に1億フラン(約87億円)が投じられる。これらは今期の連邦議会で両院で検討される予定。
総選挙に落とす影
難民問題に関しても踏み込んだ討論が予想されている。というのも、7000〜1万件のイラク人難民申請が数年にわたり処理されず、保留状態にあることが8月末に発覚した経緯があるからだ。
いずれにしても、現職議員の多くは10月23日の総選挙を視野に入れ、支持者に今一度アピールする絶好の機会を逃す手はないと考えている。今期のあらゆる課題について、メディアでの見解発表が相次ぎ議論の長期化が予想される。
アンドレアス・カイザー, swissinfo.ch
(独語からの翻訳、濱四津雅子)
http://www.asyura2.com/11/genpatu16/msg/524.html#c1