「小沢氏はホリエモンと似てる」 東京地検に逮捕された元秘書・石川知裕衆院議員が熱く語る
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2011年07月09日09時43分 BLOGOS編集部
「相撲で言えば朝青龍、経済界で言えばホリエモン、政界では小沢一郎。作られた“悪党像”という意味では似ているんです」。こう熱っぽく語るのは、民主党代表をしていた小沢一郎氏の元秘書、石川知裕・衆院議員(38)だ。小沢氏の側近だった彼は、昨年1月、現役議員にも関わらず、政治資金規正法違反の罪で東京地検特捜部に逮捕された。現在は、東京地裁で公判中の身だが、6月末に「検察官の取調べに問題があった」ということで、多くの供述調書が却下されている。やっと主張が認められたことで吹っ切れたのか、どこかサバサバした様子。7月8日、東京都千代田区内で開かれた自由報道協会主催の会見だった。
会見場の前では金属探知機が設置され、報道陣は厳重な手荷物検査を受けた。やはり、重要人物だけに主催者側も相当用心しているようだ。衆院本会議が伸びたせいで、10分ほど遅れて現れた石川氏は、ノーネクタイのスーツ姿。前日に「悪党 小沢一郎」に仕えて(朝日新聞出版)という著書を出したばかりだ。「小沢さんは読んでないと思うけど」と苦笑していた。【取材・文:安藤健二(BLOGOS編集部)】
BLOGOSを読んでいた石川氏
実は会見前に予習しておこうと思って、この本を読んだのだが、「まえがき」でいきなりびっくりした。石川氏はこう書いていたのだ。
私淑する作家の佐藤優さんは、かつてライブドア・ニュースで寄せたコラムで小沢一郎のことを「平成の悪党になれ」と書いた。彼の意図するところは、マスコミが多用する犯罪者ではない。南北朝時代に南朝・後醍醐天皇の忠臣として大暴れした楠木正成が束ねた野武士集団をイメージしている。
そう、これはBLOGOSの記事のことだ。2010年5月に掲載された【佐藤優の眼光紙背】小沢一郎が『平成の悪党』になる日を、彼は読んだのだった。悪党には二つの意味がある。一つは「わるものの集団。転じてわるもの」。一般的な使い方だ。しかし、元々の意味は、こうだ。「鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて、秩序を乱すものとして支配者の禁圧の対象となった武装集団」(広辞苑より)。石川氏はこう続けている。
約700年前、日本は北朝と南朝に真っ二つに分かれた。鎌倉幕府を倒した盟友の足利尊氏は、官僚のような政治エリートと結託して光明天皇を担いで北朝を支えた。吉野に逃れた南朝を支えるために楠木は尊氏と戦い討ち死にするが、残された悪党は南北朝統一後も南朝のために戦った。佐藤さんは、小沢一郎を楠木正成に、悪党を小沢系議員に見立てた。
石川氏が本のタイトルにあえて「悪党」とつけたのも、この佐藤氏の見解に沿って既成勢力と戦う武装集団の頭領だと、小沢氏のことを言いたかったのだろうか。私は質問をぶつけてみることにした。
「集合的無意識が小沢さんを叩いている」
―ライブドアの安藤と申します。著書の中で、佐藤優さんのBLOGOSの記事を取り上げて頂きましたが、本のタイトルで小沢一郎さんに「悪党」というセンセーショナルな言葉をあてた理由を教えてください。
石川氏:今回の一連の事件は、まず2009年3月3日に西松建設事件がありました。それから10カ月経過して陸山会事件。と大きく分けて二つに分かれます。西松事件の前は小沢一郎さんが民主党の代表として、いよいよ今度の総選挙に勝利したら「おそらく総理大臣になるだろう」という時期でした。(西松事件の後も)それから2カ月、小沢さんは民主党代表の座に留まり続けますけども、その後は退いて、鳩山さんの代表の座を譲って、政権交代となりました。
あの2カ月間は、(小沢さんにとって)地獄の日々だったと思います。秘書も逮捕されて、世の中からも随分、糾弾されました。でも、政権交代をするためには自分から他の人に代表が移った場合に、「もし運営を間違えたら政権交代できないだろう」と小沢さんは思っていたと思います。まあ、菅さんを見ればそれは自明の理でしたよ。
私は民由合併で、自由党から民主党に移りました。小沢さんの秘書として移った後に、候補者として民主党から出馬して衆院議員になりました。民主党の過去歴代の代表の中で、安定した党運営を行っているのは、これは間違いなく小沢さんです。一番長期にわたって安定して選挙に勝っております。そうしたところに、自民党も危惧を抱いていたでしょうし、もし解散して政権交代をしてしまったら「いろんな改革をしてしまうんでは?」と、官僚の方々は危惧を抱いていたと思います。そのほか、既得権益を持っている方々もそうだったと思います。
佐藤優さんは、そうした危惧について、こう分析したんです。「誰かが小沢一郎を貶めようと思って絵図を描いて、それぞれに指示を出し、お金をまいて物語を作っていたわけじゃなくて、みんなの意識が集合的無意識として小沢さんをそうしたところに追い詰めているんじゃないか」と。それは(旧ライブドアの社長時代に東京地検特捜部に逮捕された)ホリエモン(堀江貴文)さんも、そうだったかもしれません。この前、初めて会いしましたけど、大分、太ってましたよね(笑)。
お話すると「すごく立派な方だなぁ」「大した方だなぁ」と思いました。「やっぱり叩かれるには、それだけの理由がある」と思ったんですが、ちょっと(小沢さんと)似てるかもしれない。相撲で言えば朝青龍、経済界で言えばホリエモン、政界では小沢一郎かもしれません。そう考えると、どこかで作られた「悪党像」という物がありましたから、これは小沢さんを表す上では「悪党」というのがいいのかな?と。
あともう一つは、小沢さんは徹底的に大衆に寄り添ってる政治家だと思ったんです。菅さんは何だかんだ言ったって、「総理の一日」を見たら高給料理店をハシゴしているでしょ。もっと庶民政治家だったら(小沢さんのように居酒屋チェーンの)「庄や」とか行きなさいよ!って思うんですけどね(笑)。
小沢さんは(お金を)使うところは使うけど……。秘書を飲みに連れて行くときは「もっといい店行けよ」と思うこともありましたよ(苦笑)。でも、それが素で出ている。やっぱり自民党幹事長時代は贅沢してたと思うんですよ。高給料亭行ったりとか。でも今は心臓も悪くなったから、自然体で安いところに行ってるんでしょうけど、やっぱりそういう庶民的な感覚ってのがあると思いますね。それがやっぱり佐藤さんが言うようにね、楠木正成が悪党って言われてたみたいに、「庶民のために戦う」ってイメージを出したかったなっていうのがありました。
「日本改造計画」のような本を出す人でないと
小沢氏の政治団体「陸山会」の土地取引をめぐる事件で、逮捕起訴されたのに関わらず、石川氏は今も小沢氏に心酔しているようだった。質問が小沢氏のことに及ぶと、冗談を交えつつも非常に能弁。楽しそうに話していた。検察官の取調べに対する質問には、言葉を選びながら慎重に答えていたのとは対照的だった。小沢氏が新進党の党首だった1996年1月。大学4年生だった石川氏は、石川氏は小沢一郎事務所に入った。小沢氏の私邸に書生として住み込んで、車清掃や庭掃除という下積みをした上で、私設秘書としてデビュー。政治資金の会計事務を担当していた。足掛け9年も小沢氏の部下を務めていたから思い入れも強いのだろう。
記者団から「小沢さんも高齢だし、もし政界引退となったら意志を引き継ぐ人物は誰かいるのか?」と質問を受けた石川氏がこう話すシーンが印象に残った。
石川氏:「小沢さんの跡を継ぐ」と自負を持って言える人物が、最低限、資格を持つのだとしたら田中角栄さんの「日本列島改造論」、小沢一郎の「日本改造計画」に次ぐような「日本国をこうする!」という政策体系を世に訴えるような本を出す方でないと私はいけないと思っています。
菅直人首相はもちろん、岡田克也氏や前原誠司氏、仙谷由人氏などの民主党の主要メンバーには、自分の政策集を出版している人はいない。「小沢氏を排除したところで、今の民主党にはそれに匹敵できる人物はいない」と石川氏は言いたかったのだろう。世間では「嫌われ者」の印象が強い小沢氏だが、6月にBLOGOS編集部が実施したアンケート「次の首相に誰がふさわしいか?」では、小沢氏が約6割とダントツ。ネットユーザーの間では小沢氏の剛腕に期待するムードが強いことを伺わせた。小沢氏は陸山会事件で強制起訴された身だが、果たして石川氏ともども裁判で無罪を勝ち取ることができるのか。今後も注目していきたい。
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