http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2011060102000030.html
天安門事件 当局が遺族“口封じ”
2011年6月1日 朝刊
【北京=安藤淳】中国の公安当局が一九八九年に起きた天安門事件の一部の犠牲者遺族に対し、「真相公表と司法追及を求めないならば、賠償の話をしてもいい」と口封じとも取れる取引を持ち掛けてきたことが三十一日、分かった。四日で二十二年になる事件の風化が指摘される中、七月一日の中国共産党創立九十周年を控え、遺族には今も厳しい監視が続いている。
賠償をめぐる取引は、遺族百二十七人が全国人民代表大会(国会)に提出した事件の真相究明と賠償、責任追及を求める公開質問状の中で明らかにされた。それによると、公安当局は全人代直前の今年二月、一部の遺族と接触。四月上旬にも遺族のもとを訪れ、取引を持ち掛けてきた。ただ「この話は個人に対してで、遺族全体に対してではない」と強調したという。
事件で息子を亡くした丁子霖さんは三十一日、本紙の取材に「政府が沈黙を破ったのは歓迎に値する」と一定の評価をしながらも、「監視活動は遺族に対する人格的侮辱だ。対話も公開、透明に行われるべきだ」と当局の行為を批判した。
夫の〓培坤さんも「きょう、警察が訪ねてきて『三日の夜、息子が死んだ場所での追悼は許可しない』と言われた」と落胆した様子で話した。
〓さんは、ノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏=服役中=の妻、劉霞さんの例を挙げ、「彼女は何も罪を犯していないのに、昨年十月から一度も連絡が取れない。天安門事件以来、人権状況は最悪で今も多くの人が捕まっている」と指摘。中国当局の姿勢は二十二年前と変わっていないと訴えた。