天皇陛下の退位について安倍晋三首相の私的諮問機関として設置された「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の座長代理である御厨貴・東京大名誉教授は、世論調査では、特別法よりも皇室典範改正で恒久制度化を求める声が強いことに対して、12月29日の会見で次のように述べた。
すなわち、「一度定まった特別法は、次に同様の問題が起きた時に先例となる。特別法も一代限りでおしまいではなくなる。一方、恒久化する場合、どのような要件を盛り込むかが非常に難しい。特別法なら、将来の事態にもフレキシブル(柔軟)に対応できる」、また恒久法の問題点として「例として『高齢』が言われるが、例えば八十五歳で退位すると書くと、それが独り歩きする。次の陛下が八十五歳になっても元気であっても、世間的に『八十五歳で定年だね』となり、強制退位となる可能性は十分にある。一方、高齢の要件を入れないと、若いうちにやめたいといった恣意(しい)的な退位を許しかねない。恒久的制度の方が皇位の安定が心配になるとの思いがある」と述べた。
しかしながら、これらの問題は特別法か皇室典範改正かの問題ではなく、規定内容の問題である。特別法でも特定の年齢での退位を規定すれば、上記の恒久法の問題点はそのまま該当するのであって、「特別法なら、将来の事態にもフレキシブル(柔軟)に対応できる」という理由にはならない。
皇室典範を改正して、例えば「天皇が高齢又は心身の病気により日本国の象徴及び日本国民統合の象徴としての行為を果たすことが困難との理由により退位を申し出たときは、皇室会議において、医師の見解を徴し、天皇の御意思を尊重すべきであると議決した場合は、天皇は退位することができる」と規定すれば、上記問題は解消できるのであって、なんら特別法による必要性はない。また、高齢又は心身の病気により、本国の象徴及び日本国民統合の象徴としての行為が困難となることは今上天皇に限って起きることではないのであるから、退位の規定を今上天皇に限定する必要性はない。
「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」のであるから、安倍晋三首相の単なる私的諮問機関の見解によることなく、各政党における皇室典範の改正案や広く国民の議論や意見により、国民の総意として、天皇陛下の退位についての規定を設けることが必要である。
特に、国会議員は、世論調査によって明らかなように、国民は特別法よりも皇室典範改正での恒久制度化を求めていることを重く受け止めなければならない。
NHK及び民放各テレビ局、新聞各社などの報道機関は、有識者会議の見解に国民を誘導するような世論調査は、断じて行ってはならない。
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