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秘密のアッコちゃん lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx コメント履歴 No: 100011
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[政治・選挙・NHK294] 「小池百合子都知事を今朝、公職選挙法違反容疑で刑事告発しました」 元側近・小島敏郎氏が語る“7つの重大証拠”(文春オンラ… 蒲田の富士山
41. 秘密のアッコちゃん[393] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月19日 06:51:09 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[506]
<▽46行くらい>
<主張>東京都知事選 都民を守る政策競い合え
社説
2024/6/19 5:00
https://www.sankei.com/article/20240619-LZBJQBMNLZKBJKCGO2GRT6KS6A/
首都東京のリーダーを選ぶ都知事選が2024年6月20日に告示される。
「政治とカネ」
を巡り混迷する国政と絡めて論じられることもあるが、東京には解決すべき課題が幾つもある。
それを忘れてはならない。
各候補者には都政の諸課題と向き合う真摯な政策論争を望みたい。
有権者は、それぞれの政策と実現可能性を冷静に見極めてほしい。
東京は1400万人以上の人口を抱え、都内総生産(GDP)は113兆7000億円(令和3年度名目)で日本のGDPの2割を占める。
その行政のトップを決める選挙で争点となるべきは、都民の命と暮らしを守る方策だ。
1つは防災対策である。
甚大な被害が予想される首都直下地震や、富士山噴火への備えを万全にしなければならない。
有事に備える対策も重要な時代となった。
特に地下シェルター(避難施設、防空壕)の整備を急ぐ必要があろう。
ロシアのウクライナ侵略をみれば、それが大切なのは明らかである。
少子化対策も待ったなしだ。
令和5年の人口動態調査で、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率が東京は0.99と1を下回った。
現職の小池百合子氏は2期8年に渡って子育て支援などに取り組んできたが、その評価が問われる。
2024年6月18日には3選を目指す小池氏と、立憲民主党を離党した参院議員の蓮舫氏が公約を発表した。
2024年6月19日には両氏の他、元航空幕僚長の田母神俊雄氏と前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が参加し、日本記者クラブ主催で立候補予定者による討論会が開かれる。
有権者が各候補者の政策に、十分に耳を傾けられる環境作りも大切だ。
今回の都知事選には、過去最多となる50人以上が出馬の意向を表明している。
中でも政治団体
「NHKから国民を守る党」
は24人の候補者を擁立し、選挙の掲示板とNHKの政見放送を
「ジャック」
するのが目的だと明らかにした。
そうした行為は妥当なのか。
2024年4月の衆院東京15区補欠選挙では政治団体
「つばさの党」
の候補者らが他陣営を妨害し、選挙後に公職選挙法違反容疑で逮捕された。
都知事選で同様の行為があれば、選挙中でも摘発すべきである。

都知事選 田母神俊雄氏が公約発表「東京が強くなるべき」
2024/6/18 22:58
https://www.sankei.com/article/20240618-OTA4WGMAC5LZLIQKKE7CNMDMHE/
元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)は2024年6月18日、東京都内で開いた都知事選の公約を発表する記者会見で
「東京が強くならないと日本が強くならない」
と述べた。
自虐史観教育の修正などで
「日本人としての自信と誇りを持たせる」
教育政策の実施や、外資による土地の買収防止など保守色の強い政策を掲げた。
また、都民税の減税や、新築戸建て住宅などへの太陽光パネル設置を義務付ける都の条例を見直すことを盛り込んだ。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/646.html#c41

[政治・選挙・NHK294] カイロ大元幹部が声高に訴えた小池知事擁護論 「学歴詐称」刑事告発会見に“援軍”で乱入(日刊ゲンダイ) 蒲田の富士山
18. 秘密のアッコちゃん[394] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月19日 22:18:05 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[507]
<■616行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
東京都の小池百合子知事 学歴記載は「これまで通りです」
2024/6/18 16:07
https://www.sankei.com/article/20240618-MTCI3CQRONMFNN2KCWS2FCTBXI/
東京都の小池百合子知事は2024年6月18日、自身の元側近が、学歴を詐称した疑いがあるとして小池氏に対する公選法違反(虚偽事項の公表)罪での告発状を東京地検に提出したことに関して報道陣の取材に答え、
「選挙(都知事選)に入るに当たってそのような行動をされるのは如何なものか」
と批判した。
その上で、2024年6月20日告示の都知事選で、選挙公報に記載する自身の学歴について
「これまで通りです」
と述べた。

学歴詐称の疑いで小池百合子都知事の告発状を東京地検に提出 元側近の小島敏郎氏
2024/6/18 12:53
https://www.sankei.com/article/20240618-XPO3L3KSWNIDJNRYQ7R2WTOLAE/
東京都知事選(2024年6月20日告示、2024年7月7日投開票)に出馬を表明した小池百合子都知事が学歴を詐称していた疑いがあるとして、小池氏に対する公選法違反(虚偽事項の公表)罪での告発状を2024年6月18日、小池氏の元側近で元都特別顧問の小島敏郎氏が東京地検に提出した。
関係者への取材で分かった。
関係者によると、告発状は小池氏がエジプトのカイロ大学を卒業していないのにカイロ大卒という肩書を長年、公表し、学歴に対する疑惑が生じても訂正しなかったことなどが虚偽事項の公表にあたるとしている。
公選法は選挙の候補者の他、出馬を表明するなどして
「候補者になろうとする者」
についても虚偽の経歴の公表を禁じ、違反した場合は2年以下の禁錮、または30万円以下の罰金を科すとしている。
小池氏の学歴を巡っては前回都知事選直前の令和2年6月、小池氏の卒業を認めるカイロ大学長名の声明文が公表された。
告発状は声明文作成に小池氏が関与した疑いがあるとしている。
小池氏はこれまでの会見で
「声明は大学当局が意思をもって出されたと認識している」
など述べるなどして疑惑を否定している。

小池都知事元側近、やりとりのメールは「証拠として保全」 会見で改めて学歴詐称主張
2024/4/17 20:02
https://www.sankei.com/article/20240417-HSGE4TCH7VA6XCDX7OQD4PCMIQ/
東京都の小池百合子知事が学歴を詐称しているとの主張を改めて展開した、元側近の小島敏郎氏による2024年4月17日の会見。
予定時間を超過して質疑が行われるなど、一定の注目度の高さを窺わせた。
日本外国特派員協会(千代田区)で行われた会見は、午後3時頃から始まった。
小島氏は会見の冒頭で、小池氏の
「カイロ大卒」
との学歴について令和2(2020)年に詐称疑惑が取り沙汰された際、卒業証明の声明を同大から出してもらうことを自身が小池氏へ提案したことなど、月刊誌上で既に発表した経緯を改めて説明。
当時の小池氏とのやり取りのメールなどは、
「証拠として保全している」
と説明した。
今後、小池氏がカイロ大卒と明記して選挙に出た場合、小島氏は公職選挙法違反の罪での刑事告訴を示唆。
その後の質疑で記者から、
「証拠」
を提示するよう求められると、
「訴訟の段階になれば、全てを明らかにする」
「裁判官や検察官に(証拠を)出す」
などと説明した。
会見は当初予定の1時間を超え、1時間半ほどに渡って行われた。

小池百合子都知事の学歴疑惑告発の元側近会見「正確にお答えを」 刑事告発の可能性も示唆
2024/4/17 18:21
https://www.sankei.com/article/20240417-U7QSJIAEOBMXVFRFDOZESQ6UEY/
東京都の小池百合子知事のカイロ大卒業を認める同大学長名の2020(令和2)年の声明文を巡り、月刊誌で学歴詐称を主張している小池氏の元側近、小島敏郎氏(75)が2024年4月17日、都内で記者会見した。
小島氏は
「学歴詐称は公職選挙法違反に問われかねない」
「(小池氏には)正確にお答え願いたい」
と求めた。
問題となっているのは
「学歴詐称疑惑の隠蔽工作に加担した」
と小島氏が告発したとする
「文芸春秋」
の記事。
小島氏は声明文が小池氏側の主導で作成された可能性があると指摘した。
その上で、小池氏の経歴に疑義が生じているとして、今後、カイロ大卒と明記して小池氏が選挙に出た場合、公職選挙法違反の罪で刑事告発する可能性を示唆した。
小島氏は、小池氏が特別顧問を務める
「都民ファーストの会」
元事務総長。
旧築地市場の豊洲移転を巡り、移転に否定的な立場から小池氏をサポートした。
小池氏はこの記事に対し2024年4月12日の定例記者会見で、
「声明は大学当局が意思をもって出されたと認識している」
と反論している。

小池都知事、カイロ大卒「大学が卒業を認めている」 声明は「大学が意志を持って発出」
2024/4/12 14:36
https://www.sankei.com/article/20240412-Z73SM2XGSBO2FBKIRUMT2L2YEE/
東京都の小池百合子知事は2024年4月12日に都庁で開かれた定例記者会見で、前回都知事選直前の令和2年6月に自身がカイロ大を卒業したことを認めた大学側の声明の作成に、当時小池氏の周辺にいた人物が関わったとする一部報道について、
「記事が出たことは承知しているが大前提が違う」
「卒業していないと言っておられるが、大学が卒業を認めている」
と述べた。
小池氏はこれまでも同様の説明を繰り返し卒業証書も示してきたとして、
「選挙の度にこうした記事が出るのは残念だ」
とした上で
「卒業を証明するのは大学で、(カイロ)大学が何度も(卒業を)証明している」
と強調。
文案を小池氏側で作成したとされたことに
「大学が意志を持って発出された」
と指摘した。
月刊誌『文芸春秋』2024年5月号に掲載された記事によると、令和2(2020)年6月に駐日エジプト大使館のフェイスブックに掲載された小池氏のカイロ大卒の経歴を
「証明する」
とした声明の作成過程を指摘。
元環境省官僚で当時は小池氏が特別顧問を務める都民ファーストの会事務総長だった小島敏郎氏が公開した手記では、小池氏から文書作成の協力を求められたとしている他、作成に他の周辺人物も関わっていたと指摘。
小島氏が卒業の事実に関して疑義を示している。

小池百合子都知事とカイロ大学、そのどす黒い闇 学歴詐称より深刻な「政治犯罪」
Hanada2024年7月号 ジャーナリスト 浅川芳裕
小池百合子都知事の学歴詐称と、その隠蔽工作の疑惑が深まっている。
小池都知事の元側近・小島敏郎氏が『文藝春秋』2024年5月号で、
「学歴詐称工作に加担してしまった」
と告発記事を発表した。
「カイロ大学声明」
への関与の事実である。
声明は都知事選前の2020年6月8日、駐日エジプト大使館の公式フェイスブック及びウェイブサイトに掲載されたもの。
学長名で”小池氏の卒業証明”と”カイロ大学の卒業証書の信憑性に疑義を呈するジャーナリストへの警告”が記されている。
詐称疑惑が再燃し、”焦燥”する小池都知事からの相談を受け、小島氏は
「それなら大学から声明を貰っては」
と提案。
文案は別の側近ジャーナリストA氏が書いたという。
その後の記者会見(2024年4月12日)で、小島氏は
「正式な手続きを経てカイロ大学を卒業しているのであれば、なぜ隠蔽工作をしなければならなかったのか」
「卒業していないから、と考えるのが相当」
とした上で、告発に至った問題意識を明かした。
「我が国の東京都知事がエジプトからもカイロ大学からもいざという時に言われて、失職するかしないかを左右する弱みを握られていれば国益上、非常に大きな問題だ」
「そんな日本国ではダメではないか」
『カイロ大学”闘争と平和”の混沌(カオス)』(ベストセラーズ)
の著者として本疑惑を長年取材してきた筆者の結論は更に深刻だ。
既に日本の国益毀損も甚だしい、より本質的な問題が生じている。
”超法規的な”カイロ大学卒業証書保持者である小池氏は、エジプト軍・情報部に生殺与奪の権を握られており、その見返りを長年果たしてきた言わば”エジプトのエージェント”も同然の存在なのだ。
本稿では、その後の取材・調査を踏まえ、新事実を基に真相を解明していく。
■外国勢力を日本に手引き
まず、今回の小島氏の告発で重要なのは、カイロ大学声明のエジプト大使館での発表について、小池氏の関与が明らかになった点である。
大使館と言えば、我が国におけるエジプトの全権を代表する外国使節である。
声明の日本語訳にはエジプトの国章
「サラディンの鷹」
の紋章が記されており、まさしく国家紋章だ。
カイロ大学声明を取材した現地メディアも、当時、こう報じている。
「大学はコメントを控えながらも、エジプト・アラブ共和国の日本における公式代表であるエジプト大使館からの発表通りだと認めた」
(報道サイト「アルバラド」2022年6月11日)
小池氏がその作成・発表に関与した行為とは、外国の国家機関と通謀、共謀したことに他ならない。
我が国の首都の指導者を決める選挙活動において、再選を目指す現職知事が外国政府の権力行使・介入を日本に手引きしたのだ。
「反逆罪」
を呼んでも大袈裟ではない。
少なくとも、外国勢力による選挙介入という民主主義の下で犯せる深刻な
「政治犯罪」
であり、日本国民・東京都民に対する重大な裏切り行為である。
たかが外国の1大学に過ぎないカイロ大学声明ではないか、と問題を過小評価する人もいるだろう。
しかし、声明発表を本国エジプトのメディアがどう報じたかを知ればそうはいかない。
カイロ大学は。政治的意図を持って都知事選に介入したのだ。
憶測ではない。
エジプト軍・情報部の管理下にあるエジプトの現地メディアははっきり、カイロ大学声明は介入が目的だと報じている。
一部の見出しを挙げる。
「カイロ大学、小池都知事のために都知事選に点火」(前同)
「カイロ大学、都知事の卒業証書を認めない日本メディアに対し法的手段で脅迫」(「アルワフド新聞」ネット版2020年6月11日)
「カイロ大学、危機に瀕する東京都知事を救うために介入」(総合ニュースサイト「アハバーラック」(2020年6月11日)
何のための介入か。
「(2020年)7月5日に行われる日本の都知事選を前にして、小池百合子都知事の反対派や対抗馬はカイロ大学卒業の学歴を認めないキャンペーンが展開されている」(同「アルバラド」(前同)
「カイロ大学の学位を取得していないとの発言・主張をしているが、これは事実に反する」(前同)
「カイロ大学が在日エジプト大使館のフェイスブックを通じて声明を発表」
「小池百合子氏は1976年に文学部社会学科を卒業しており、日本の一部メディアが卒業証明書に疑問を呈し報じた内容を非難」
(前同)
現地メディアが解説するように、小池氏の再選目的の介入であることが明らかだ。
そのために、カイロ大学卒業に疑念を呈する者は皆、都知事の反対勢力と見做し、声明は再選を目指す都知事に代わって対抗措置を取る、との強権的な脅迫である。
しかも、何の根拠、反論も示さず、取材・報道の行為自体を罰しようとしている。
実際、声明では
「エジプトの法令に則り対応策を講じる」
と警告しており、現地取材を封じようとする意図が見える。
実力行使もあり得る。
エジプトで取材をした多くのジャーナリストが、今も軍事監獄に拘束されている。
その数は、中国、トルコに続き世界ワースト3位だ(CPJ:ジャーナリスト保護委員会2020年調べ)
この強権的な姿勢は、カイロ大学の問題を指摘する教職員に対しても同じだ。
メディア学部の教授が学長の汚職の疑いを示す証拠文書を自身のフェイスブックに挙げ告発したところ、何が起きたか。
捜査保留のまま留置場で手錠をはめられた教授の画像がいきなり現地メディアに掲載されたのだ(ニュースサイト「アルカーヒラ24」2022年1月26日)。
カイロ大学長に逆らうとこんな目に遭うぞ、という見せしめだ。
この学長こそがカイロ大学声明を出したアルフシュト氏だ。
★カイロ大学の権力と腐敗の構造
カイロ大学は、日本人が一般に想像するような大学では決してない。
軍事独裁政権の支配下にある国家機関である。
国会や省庁、裁判所、軍隊のように、国家の正式な統治機構の一部に組み込まれている。
そして事実上、カイロ大学の権力を完全に掌握しているのは、泣く子も黙るエジプト軍・情報部である。
大学と言えば”学びの園””学問の自由”といった平和な生温いイメージから理解しようとすると、本質を見誤る。
実際、筆者が小池都知事の学業・卒業実態を示す
「学生ファイル」
(学業状況「入学、試験、結果、成績、卒業」及びその日付を記録)
の取材に大学事務局を訪れたところ、通されたオフィスに現れたのは、陸軍の軍服を着た人物だった。
3人が同席し、1人は大佐のバッジを付けている。
小池氏の
「ファイル」
は軍事機密なのだ。
カイロ大学の”卒業生”のことなのに、
「彼女のことならカイロの日本大使館に行って聞け」
と横柄な態度であしらわれた。
軍事法廷や軍事監獄に連行されてはかなわない。
大人しくオフィスを後にしたが、少なくとも、大学の管理を掌握するトップクラスの軍人が小池氏の状況を認識していた様子は垣間見えた。
軍人が大学にいるのは不自然に思われるだろうが、
「軍幹部が大学の管理職の要職を独占しており、学びの場は軍の兵舎と化している」(「アルタウンニュース」2012年5月1日)
もっと詳しく言えば、軍・情報部をトップに、総合情報庁(エジプトのCIA)や国家安全保障局(内務省の治安部隊=国家憲兵)が傘下にあり、両者が派閥争いをしながら大学を統治する多層構造になっている。
更に実態を言えば、両官庁にも軍人・情報部員が天下り、結局のところ、全権を掌握しているのは軍・情報部だ。
その頂上にいるのが、軍事独裁政権トップのシシ大統領である。
カイロ声明を発表した学長のみならず、各学部長でさえ大統領に任免権があることは、エジプト・アラブ共和国大統領令1972年第69号「大学組織法及び施行規則」(2014年改正)で定められている。
学長・学部長の任命は、学術的に優れているとか、大学人として指導力があるといった理由ではない。
「大学の発展プロジェクトに照らして、共和国大統領の決定により任命される」(同法第25条)。
そもそもカイロ大学の設置自体も、
「専門家を国に提供し、社会主義社会の建設及び強化、祖国の未来の形成に貢献する」
と第1条にあり、大学そのものが国家プロジェクトなのだ。
カイロ大学を貶める報道は、エジプト国家そのものへの攻撃と同じである。
日本メディアへの圧力など、何ら驚くべき事ではない。
実際、脅しの効果は抜群だった。
小池都知事の反対勢力である都議会自民党は声明発表の翌々日、
「小池氏のカイロ大卒業の証明を求める決議案」
を取り下げた。
その理由として、川松真一朗都議は
「声明直後に決議を出せば、僕らはエジプトと闘うことになる」(日刊スポーツ」2020年6月10日)
と語ったが、まさにエジプト側の思うツボである。
川松氏は
「間違ったメッセージのように捉えられかねず、冷静に判断した」
と続けるが、それは脅しに屈した者が発する常套句そのものだ。
現地メディアが報じた通り、まさに
「危機に瀕する東京都知事を救うための介入」
に成功したのだ。
■学長レターが声明の下敷き
そうは言っても、声明の主体はカイロ大学ではなく、小島氏の告発にあるように小池都知事が依頼した側近のジャーナリストA氏が書いた作文ではないか。
そう疑問を持つ読者もいるだろう。
仮に、ジャーナリストA氏が書いたとしたら、相当なエジプト政治通である。
小島氏に直接確認した。
「カイロ大学長が文藝春秋編集部に宛てたレターがベース」
「それを見ながら、ジャーナリストAさんが書いたんです」
「そうじゃないと、声明文案を30分で書けないですよ」
「Aさんが自分で考えたわけではないんです」
声明を書いたのは国家権威主義的なエジプト人に違いない、と初めて読んだ時から確信していたが、その通りだった。
レターの内容は『女帝 小池百合子』(石井妙子著・文藝春秋)にも載っている。
「小池百合子氏は1976年にカイロ大学を卒業したことを表明しています」
(中略)
「小池百合子氏について貴誌が書かれたことは根拠のない虚偽であると思います」
「カイロ大学の名誉を汚す報道に対しては法的措置も厭いません」
(後略)
とある。
記事のどこが虚偽なのか一切示さず、法的措置を警告する内容。
声明の骨子と同じだ。
この手紙は文藝春秋社にカイロ大学の郵便封筒で届き、
「President's office」(学長室)
と書かれたレターヘッドのある用紙に日本語で
「カイロ大学長のPro Dr=Mohanmad Al Khustです」
と書かれている。
用紙の体裁と出所の学長名も、声明と全く同じだ。
レターと声明双方を出したのがカイロ大学学長室というのも、見過ごされやすいが重要な点である。
室長はエジプトの
「大学組織法」
上、高等教育大臣任命の公職。
その指名に実権を持っているのは、同省の治安局長である。
カイロ大学文学部元歴史学科長の著作『我が足跡を辿る』(未邦訳・原文アラビア語)
に明記されている。
同書はカイロ大学の権力と腐敗の構造を数々の実名で世に晒し、エジプトで大騒動となった自伝的告発本だ。
一部引用する。
「教育省の治安局長は、大臣よりも大学に対する影響力を行使し、偽善者の大学教員たちは競って彼に媚びを売った」
「大学の独立性が損なわれ、教員たちは権力に憧れ、自由を制限し、大学を治安当局の権威に服従させる、大学に対する法律(前述の「大学組織法」による統制を受け入れたのだ」
「(高等教育省治安局の上位にある)国家安全保障当局が、教員の誰に対しても左遷を正当化することができるのだから」
「(教授が代筆するなどして)国家治安当局に文学博士号を(正規の過程を経ずに)取得させた時、教員たちの権力への媚びへつらいは頂点に達した」
「その後、高等教育省の治安局長やカイロ大学内の治安局長までもが『博士号』(不正取得)という(権力)モデルを繰り返した」
(括弧内は筆者補足)
カイロ大学声明の出所が、如何に権力と腐敗にまみれた所か察しが付くだろう。
相手が権力者であれば、博士号の学位・証書の不正授与までする。
まして、論文審査がなく(小池氏の学歴にある社会学科の場合)、成績の改竄が容易な学士号の卒業証書の発行であれば、権力者からの命令(詳細は後述)1つで朝飯前だろう。
■小池再選を祝う学長祝辞
カイロ大学アルフシュト学長は都知事選直後の2020年7月7日、小池氏再選の祝辞を大学公式ホームページに載せた。
権力者に媚びを売ったり、治安当局からの指示で、要人が信任された時に学長や教授が競って祝電を送るのはカイロ大学の腐敗した習慣の1つである(参考文献『我が足跡を辿る』)。
祝電は以下の通りだ。
<カイロ大学文学部の卒業生である小池百合子氏は、日本の首都東京都知事選史上初となる22人の候補者と競い合い、2度目の当選を果たした>
<文学部を1976年10月に卒業した小池百合子氏は、民放テレビ局でニュース番組の司会者を務めた後、政界に転じ、参議院議員、衆議院議員を歴任した>
<カイロ大学学長ムハンマド・オスマン・アルシュフト博士は、カイロ大学卒業生が日本初となる女性東京都知事として、2期目の当選を果たしたことに誇りを表し、小池百合子氏が日本での重要な指導的地位を勝ち取ったことに祝辞を述べた>
<カイロ大学はあらゆる分野、あらゆる国における本学卒業生を誇りとしている>
<彼らは世界、特にアフリカと中東で多くの指導的地位に就いており、アルフシュト博士は「彼らの成功はカイロ大学の成功であると考えている」と話している>
<カイロ大学で学び、各国の要職に就いた著名な卒業生には、農学部で学んだシェイク・スルタン・アルカシミ(UAE・シャルジャ首長国首長)、法学士号を取得したサダム・フセイン(イラク大統領)、工学部を卒業したヤセル・アラファト(パレスチナ大統領)などがいる>
(後略)
祝電のポイントは2つある。
1つ目は、小池都知事の経歴を微細に紹介し、世界的な政治家と並べ、著名な”卒業”生として取り上げている点。
カイロ大学にとって、小池都知事が如何に重要かが分かる。
小池氏に対するおべっかのみが目的ではない。
カイロ大学の偉大さを証明し、国際的に宣伝するための極めて貴重な存在だからだ。
新設中のカイロ大学国際支部では
「カイロ大学はアラブの科学者や天才たちを多く輩出してきたように、日本の元防衛大臣である小池都知事の輩出に成功」(公式フェイスブック)
と、まさしく広告塔になっている。
卒業生でノーベル賞を獲った人物が4名いるが、エジプト人とアラブ人。
海外で首脳に就任した人も、やはりアラブ人。
カイロ大学を”卒業”した先進国の要人は小池都知事1人しかおらず、極めて希少価値が高いのだ。
日本でいくら学生詐称が騒がれようが、頑なに
「カイロ大学が卒業を認める」
背景がお分かり頂けるだろう。
■サダム・フセインとの共通点
2つ目のポイントは、小池氏と並び、
「法学博士号を取得したサダム・フセイン(イラク大統領)」
の紹介だ。
2人は奇しくも、カイロ大学卒業について真偽が取り沙汰されてきたという共通点がある。
更に、2人とも要人になった途端、エジプト軍事政権下のカイロ大学が偉大な卒業生として公式に発表し、賞賛されるようになった人物という稀に見るもう1つの共通点がある。
実は、フセインはカイロ大学中退説が根強かったが、後年、本人の自伝で法学部2年中退と認めている。
その点、正直で潔い。
しかし、カイロ大学はいくら本人が中退と認めていても、自国にとって有利だと見做せば、勝手に卒業を公認する学風である。
入学の待遇については、フセイン大統領と小池都知事の間には大きな違いがある。
フセインは高校時代、共産主義化を図るイラク首相暗殺未遂に関わり、秘密警察に追われ高校を中退してカイロ大学に亡命してきた人物だ。
その武勇伝がナセル大統領の目にとまり、アラブの大義を目指すエジプトの工作員にするため、大統領自身が招いたという説もあるが、学業については特別扱いしなかった。
高校中退では名門カイロ大学には入れない。
そこで、カイロのドッキ地区にあるナイルパレス高校に入り直して卒業し、正規の試験を受けて、法学部に合格している。
★小池百合子氏とハーテム情報相の深い関係
一方、小池氏の場合、同居人だった北原百代氏の証言(『女帝 小池百合子』)によると、いきなりカイロ大学2年に編入している。
エジプト人でもあり得ない話だ。
「小池さんのお父さんが、ドクター・ハーテムに頼んだ」
のがきっかけだという。
ハーテム氏と言えば当時、エジプト副首相兼文化・情報相だったアブドル・カーデル・ハーテム氏(1918〜2015)のことだ。
1952年、エジプト革命を起こした自由将校団の一員で、軍の諜報部員だった人物だ。
ナセル大統領と同郷の1年後輩で、革命後は大統領顧問に就任し、諜報機関の情報部創設を任された。
「ナセル政権はドイツ情報部に学ぶため、元ナチス将軍やゲシュタポ(秘密警察)、SS(ナチス親衛隊)の元責任者を召喚」
「これらの人物はエジプトの治安当局を前例のないレベルの残虐性と鉄拳支配に導くのに貢献した」
「その後の数年間、ナセル派の諜報機関は、政権に政治的に反対する可能性のある人物に対して、弾圧キャンペーンを展開」
「特に国家機関から反政府志向の強い人物を徹底的に粛清していった」
(アルジャジーラ電子版『誰が影を支配するのか?エジプト情報闘争の全貌』2018年3月16日)
弾圧キャンペーンは国家機関カイロ大学にも及んだ。
カイロ大学の知識人やエリート学生を支配下に置くため、キャンパスにSSに倣った
「革命親衛隊」
を送り込んだのだ。
それに対し、自由な大学を堅持しようとリベラル派とムスリム同胞団の教授・学生たちが団結し、デモ活動で対抗したが、治安部隊との力の差は歴然だった。
1954年、カイロ大学は軍部に制圧され、革命指導評議会下に置かれてしまった(エジプト現代史では「カイロ大学粛清事件」と呼ばれる)。
それ以来、軍・情報部支配というカイロ大学の伝統は今も続いており、情報統制面でその体制を作った大元の1人がハーテム氏である。
ハーテム氏から見れば、軍事独裁政権の現シシ大統領は、軍部時代の弟分タンクウィー(元国軍総司令官、2011年革命後の国家元首代行)の部下、つまり孫弟子に当たる人物だ。
また、シシ大統領の出世は軍・情報部長官就任から始まっている。
つまり、人脈的にも組織的にもハーテム氏の直系と言える。
ハーテム氏は更に、シシ前の3代の大統領ナセル、サダト、ムバラクの下、要職に就き、権力を保持してきた唯一の人物でもある。
小池氏の学歴詐称については長年、疑惑が出る度に、日本からのメディアの取材に対して
「カイロ大学が卒業を認める」
と繰り返しては収束してきたが、その背後には、こうした小池氏のハーテム人脈を頂点とするエジプトの軍・情報部と大学の権力階層構造があることも、念頭に置く必要がある。
また、カイロ大学では1954年の粛清後、小池氏が留学する1970年代まで、特殊な外国人留学生枠が存在した。
1つは、アラブ諸国で反政府活動をする若者を亡命させ、ナセルの
「アラブの大義」
で洗脳し、国に戻った時に工作員にする枠。
先述したように、イラクのフセイン大統領もその1人だった。
もう1つは、表向きは文化的だが、同様にエジプトの国策に都合の良い将来のエージェント育成のため、非アラブ特定国の若者を優遇する枠だ。
ハーテムは情報・文化省のトップとして、外国の若者の受け入れを推進すると同時に、それらの国々と友好協会を立ち上げていた。
■14歳の女の子を養女に
小池氏は、ハーテム氏が作り上げたエジプトのエージェントなのか。
エージェント育成の経緯から、いつ誰の支援で”卒業”したか。
卒業後、大臣にまで出世した小池氏がエジプトへの奉仕を語り出すまでの詳細を、政府系新聞アハラーム紙が綴っている。
「小池氏は非常に特殊な女性である」
「ハーテム情報大臣の支援を受け、彼女は社会学科を卒業」
「彼は小池を自分の子供のように見做した」
(2016年8月3日付)
とある。
小池氏自身も同紙インタビューで、ハーテム氏は
「私のエジプトの父」
「私のスピリチュアル・ファーザー(守護者)」
などと複数回、語っている。
「カイロ大学時代の教授陣(複数形)は?」
の質問に対して、小池氏は
「私の教授はハーテム博士で、私にとってエジプトの父です」
(2004年3月2日付)
と答えている。
普通、教授陣の名を訊かれれば、選考学科(小池氏の場合、社会学科)の恩師や少なくとも印象に残っている先生について語るものだが、小池氏は違う。
カイロ大学の教授ですらないハーテム氏の名を挙げるのみだ。
ハーテム氏は当時、エジプトの副首相(情報担当)であったが、2人は一体、どういう関係だったのか。
「ハーテム氏に面倒を見てもらい、小池氏はカイロでの留学中のかなりの期間、ハーテム家で家族と子供たちと一緒に住んでいた」(2019年9月3日付)。
つまり、同居していたのだ。
小池氏が1976年、カイロをあとにした後、どうなったのか。
「ハーテム氏と学生から政治家、そして大臣になった彼女の関係は、カイロの地で途切れたわけではない」
「彼女はスピリチュアル・ファーザーと呼ぶハーテム博士(中略)と常に連絡を取り合っていた」
(同)
「ハーテム博士がエジプト日本友好協会(ハーテムはその創始者で、長年会長を務めた)を通じて行った活動の1つに、次の事がある」
「1970年に日本の首相からの要請で、当時14歳だった小池百合子という日本人の女の子を養女にしたこと」
「彼女は1976年にカイロ大学を卒業」(2004年6月21日)
「小池氏は2003年9月から日本の環境大臣であり、日本の内閣でイスラム教の寛容性を説いているとハーテム博士に語った」
「博士は彼女から連絡があることを嬉しく思っている」(同)
「(小池氏が今回、カイロに来たのは)ハーテム博士から(2011年)8月にかかってきた電話でのリクエストがあったからだ」
「彼女は学生時代に過ごしたハーテム家で、ハーテム博士の家族や孫たちと再会した」
「そこで小池氏は、ハーテム博士に対して、エジプトやエジプトの友人のために奉仕するプロジェクトを話題にした」
(同紙2011年9月3日付)
★”エジプトのエージェント”
一言で言えば、小池氏はハーテム氏の目論見通り、エジプトの利益を代弁するエージェントとして立派に育ったというわけだ。
その記録をハーテム氏は歴史の証拠として、政府系新聞に明確に残している。
もちろん、ただの新聞ではない。
アハラーム紙はハーテム氏が最高執行員を務めていた新聞であり、彼が創設したエジプトの国家情報部の従属下にある
「政治機関」
である(参考文献『ハーテム回想録 10月戦争政府の首相』未邦訳。*日本で言う第4次中東戦争。ハーテム氏は戦時中、首相代行を務めた)。
つまり、記事は全てエジプトの国益に根差し、政治的意図を持って書かれた声明なのだ。
その証拠に、ハーテム氏が小池氏について最初に新聞紙上で語り始めたのは環境大臣後のこと。
日本政府の要職に就いたところで、入学・卒業の実態が正規のものというより、ハーテム氏の”支援”であることに言及。
小池氏の学歴について、”弱みを握っていること”を仄めかしたと言える。
記事の中には奇妙な記述もある。
「1970年に日本の首相からの要請で、当時14歳だった小池百合子という日本人の女の子を養女にしたこと」。
直訳すれば
「養女にした」
だが、
「子飼いにした」
「採用した」
との意訳も出来る。
アハラーム紙の政治的文脈から解せば、
「エージェントとして採用」
という訳が一番しっくりくる。
「1970年に日本の首相の要請」
という記述も意味深長だ。
時の総理は佐藤栄作である。
両者に面識はあったのか。
確かに1970年、
「*アラブ連合のアブデル・カーデル・ハーテム特使(元副首相)は首相官邸に佐藤首相を訪れ、歓談した」(読売新聞1970年6月17日付)
との記録が残っている(*当時のエジプト国名。シリアと連合を組んでいた)。
その翌年の1971年9月、小池氏は
「カイロ留学へ(家族、アラブ協会中谷武世会長が見送る)」
旅立ったと、
「李刊アラブNo54」(1989年)
に本人が書いている。
同じ記事の中で、小池氏は
「アラブ協会名誉顧問であるエジプトのハーテム氏とは現在に至るまで文字通り家族的付き合いを続けている」
「エジプトでの父親的存在だ」
と、ハーテム氏との特別な関係を明かしている。
そして、カイロ留学を見送った中谷武世アラブ協会会長こそ小池氏の”師父”と呼ばれ、佐藤首相の兄・岸信介氏の戦前からの盟友にして、佐藤自身のブレーンだった人物である。
佐藤氏自身が日記で
「中谷武世が総裁選を心配してやって来る」
「本部で中谷武世と対談」
(『佐藤栄作日記』からの一部抜粋)
と記すほどの関係だ。
中谷氏とハーテム氏の関係も相当深い。
1958年1月に初面談しており、その年の9月に
「ナセル大統領(ハーテム氏は当時、大統領顧問兼副首相)の要請に応じて」、
中谷氏はアラブ協会を設立(引用は「李刊アラブNo23」(1974年)、更に小池氏の父、勇次郎氏は中谷氏と親しく、長く同会会員だった。
以上のディープな人物相関関係からすれば、佐藤首相の要請だとして、中谷氏が勇次郎氏の娘をハーテム氏の懐に差し出すことはあながちあり得ない話ではない。
佐藤首相からハーテム氏への要請が本当なら、極めて特例な小池氏のカイロ大学編入についても説明が付く。
先述したように、フセインやその他のアラブ諸国からの亡命工作員でさえ許されなかった特別待遇のことだ。
大学組織法の87条に
「極めて必要かつ不測の事態の場合、教育大臣は、共和国大統領の決定により発行された規則及び規定に従って、学生を編入させることができる」
とある。
日本の首相からの要請は、まさに
「極めて必要かつ不測の事態」
だ。
この法律は、ナセル大統領死去後、後任のサダト大統領が1972年に制定したものだ。
この年は、小池氏がカイロ大学”入学”を謳っている年でもある。
同居人の証言・物証(母親に送った手紙、小島氏が証拠保全済)では、”編入”したのは1973年のはずだが、
「共和国大統領の決定により発行された規則及び規定」
によって、入学年の改竄などどうにでもなる。
ハーテム氏は大統領ではないが、サダト大統領とは共に革命を起こした同志であり、軍・情報部権力の中枢にいた人物であったことは、これまで見て来た通りだ。
何よりエジプトにとって日本権益の窓口であった。
■エジプト日本権益の後継者
「日本の首相の要請で小池氏を養女にした」
と記述のあるアハラーム紙の記事で、ハーテム氏は日本の権益を細部に渡って語っている。
「ハーテム博士は日本(政府)や日本の首相との良好な関係に投資した結果、日本はカイロ大学小児病院(訳注:カイロ大学医学部附属の教育機関でもある)や製鉄会社、オペラハウスの設立援助に同意したという」
「しかし、博士の日本関係での最も重要な功績は、1973年10月戦争後、スエズ運河の再開に漕ぎつけたこと」
「日本が全面的に資金を提供し、第1段階で1億8000万ドル、更に第2段階で1億8000万ドルの援助を実施したことであり、現在、スエズ運河はエジプトに年間30億ドルの利益をもたらしている」
「日本の偉大な業績のお陰である」
それにしても、首相の要請時、
「14歳であった」
の年齢が気になる。
当時、中学生だった小池氏を、佐藤栄作首相がハーテム氏の養女にさせたとは俄かには信じ難い。
しかし、相手は
「プロパガンダの父」
であり、イスラエル軍の不意を突いた奇襲攻撃を仕掛け、情報戦で勝利した第4次中東戦争における
「戦略的欺瞞計画」
を立案したほどの人物である。
小池氏が14歳の時と言えば、記事の1970年ではなく、1966年。
この年の1月14日、
「来日中のアラブ連合の副首相ハーテム氏来邸」(『佐藤栄作日記』)
と官邸で会っている。
その翌月、佐藤首相は特使をエジプトに派遣しており、ハーテム氏の出迎えを受けている(「読売新聞夕刊」1966年2月4日)。
2人共あの世に行き、真相は闇のままだが、これこそハーテム氏が生み出したエジプト流プロパガンダの真骨頂だ。
いくら疑念や疑問が寄せられても、一切答えず、更に大きな”誇張”や”法螺(ほら)を被せていく。
それを何層にも重ねることで、疑念を持つ者の追求心を削ぎ、真相を闇に葬り去る。
全てはエジプト国家に有利な言論空間を生み出していくためだ(参考文献『プロパガンダ 理論と実践』ハーテム著、未邦訳)。
首相要請の有無は別として、分かったことは小池氏が”エジプトのエージェント”として育成され、今もハーテム氏が築いたエジプトの日本権益の後継者であることだ。
話をカイロ大学に戻そう。
★「カイロ大学声明」の見返り
小池氏の”卒業”を公認する声明を出して、カイロ大学に何のメリットがあるのか。
常識では考えられない声明を出せば、大学の国際的な信用失墜に繋がる危険性もある。
この問いは、カイロ大学長の発表を見れば解ける。
2022年11月22日、都職員10人を引き連れ、小池氏が学長とした会談の内容がカイロ大学の公式ホームページに掲載されている。
小池氏側の発言要旨は、
「カイロ大学留学時代について謝意を表明」
「エジプトと日本の2国間協力を称賛」
「東京都知事、カイロ大学との協力拡大を要請」。
本文は
「会談の中で、東京都知事はカイロ大学留学時代の日々を振り返り、彼女の人生に如何に影響を与えたか、そのお陰で現在の自分に至れたことに感謝の意を表した」
「会談では(中略)、様々な分野での協力の方向性を定めるため、カイロ大学と共同協力議定書を作成することが合意された」
とある。
都の予算を使って出張し、都政と全く関係ないカイロ大学時代の思い出話に浸りながら、
「カイロ大学に対して協力拡大を要請」
するなど、知事として完全に越権行為だ。
自身の学歴詐称を否定する
「カイロ大学声明」
を出してくれた学長へのお礼の表敬訪問と見返り支援と見做せば、合点がいく。
学長もそのお返しにとばかりに、
「小池百合子東京都知事は、カイロ大学文学部社会学科を1976年に卒業した最も著名な卒業生であり、その後、参議院議員、衆議院議員を歴任し、防衛大臣を務め、初の東京都知事に選出された」(同発表資料)
と小池氏の学歴・経歴を持ち上げるのも忘れない。
現在、カイロ大学長と合意した協力議定書の中身は不明だが、前学長との会談での約束は、カイロ大学文学部日本研究センターという形で実現している。
「本センターの設立については、以前、小池都知事がカイロ大学を訪問した際に、ナッサール学長と協議したもの」
(2017年3月2日カイロ大学ホームページ)
ナッサール氏は、1度目の都知事選当時の際、祝辞を送っており、その中で日本の小池議員事務所を訪問した時のことにも触れている。
「小池氏はカイロ大学、エジプト国民に対する感謝の意を強調した」
2022年の小池氏のエジプト外遊時に要請した支援事業の中で、既に都の予算に計上されているものもある(9700万円。エジプト外遊費含む)。
「小池都知事が文科大臣に提案した、文部科学省と東京都の間で学生分野における協力の第1号議定書」(エジプト文部科学省ホームページ)
だ。
その中身はと言えば、エジプト人学生を都に受け入れたり、都立高校生に母校カイロ大学等をダイバーシティの美名の下、訪問させるプログラムだ。
わざわざ第1号議定書とあるから、2号3号と続く虞(おそれ)がある。
■援助、口利きの手口
こうした小池氏のエジプトに対する支援・援助の申し出、口利きはパターン化している。
「カイロ大学時代の思い出を語るーその時にお世話なったカイロ大学そしてエジプトに謝意ーその見返りとして、援助内容を仄めかす/要人の要望を聞くーその事業の実現ーエジプト要人から褒められる」
という流れだ。
もちろん、全てがあからさまに書いてあるわけではない。
政府系新聞が伝える小池報道を時系列に丹念に読み直すと、その実態が浮き彫りになる。
1つのパターンを紹介しよう。
2016年3月にエジプト政府系のアハラーム紙が報じた記事によると、来日した当時のシシ大統領は、小池衆議院議員(当時)と面会。
大統領は
「謝意を表した」
「彼女がエジプトとの関係発展に注意を払い、両国関係を有利に進めている事柄に対してである」。
具体的にどんな事柄なのか。
記事では
「大統領の訪日では、教育プログラムに関連して多くの目標を達成した」
と紹介されている。
実は、この報道の約1カ月前、三百数十億円に上る日本のODA(政府開発援助)による教育支援策
「エジプト・日本教育パートナーシップ」
が発表されている。
つまり、シシ大統領はODAという形で援助が実現したことについて、小池氏に謝意を表したわけだ。
このODAに小池知事が関与したのか。
アハラーム報道から約1年遡った2015年5月、現地メディアのアルマスダル紙電子版によると、エジプト大統領府で小池氏と面会したシシ大統領は
「教育分野において日本の経験から利益を得ることについて、関心を示した」
とされる。
大統領の関心に対し、小池氏は
「エジプトと日本の関係を強化する努力を惜しまない」
と後押しを表明。
更に、小池氏は
「私がエジプトを大切に思っているのは、公式のレベルだけでなく、個人のレベルのことでもある」
とまで語っている。
「エジプト・日本教育パートナーシップ」
には2つの事業がある。
1つは
「エジプト・日本学校(小中学校)支援プログラム」(186億円)、
もう1つが
「エジプト人留学生・研修生受け入れ事業」(102億円)
だ。
後者が小池発言
「個人レベルのエジプトへの思い」
に基づく事業のことである。
先程引用したアハラーム紙記事の記者が
「小池氏の経験とエジプトへの美しい対応」
と題するコラムを寄せ、種明かしをしている。
「以前、小池氏を取材した際、こう語っていた」
「『故ナセル大統領が外国人学生に対し、奨学金を提供するという重要な政策を採用していた』
『私自身もエジプト政府から月額8エジプトポンドの助成金を受け取っていた』
『ナセルの行った投資は有益で成功だったでしょ』
『だって、そうじゃない!』」
「小池氏は今日、日本政府のエジプトの学生に対する広範囲な奨学金プログラムについて、強力な支援者である」
記者は
「美しい対応」
と題し、如何にも美談のように語るが、全く違う。
小池氏が自分のエジプトからの借りを今回、100億円にして返しましたという下品な話だ。
■エジプトの召使
小池氏とエジプトとの貸し借り関係は、カイロ大学声明を発表した駐日エジプト大使館の発表からも透けて見える。
「アブバクル駐日エジプト大使は、小池都知事と会談し、エジプトと日本の関係が過去数年に渡り様々な分野で大きな勢いを見せていることを踏まえ、両国の共同協力の側面や、この協力を様々な分野に発展させるための方策について協議した」
「小池都知事は、エジプトが自国にとって特別な地位にあることを踏まえ、また、エジプト側との協力に個人的な関心を寄せており、2国間協力のレベルが具体的に飛躍することを望んでいることから、両国関係の強化に向けた全面的な支援を表明した」
(エジプト大統領直轄の「国家情報部公式ホームページ」2022年1月27日)
エジプトに外遊に出かけた2022年の年初における小池氏と大使の会談の内容だ。
次に外遊後、大使にお礼の表敬訪問をした際の記事
「東京都知事、エジプトと日本の2国間協力を称賛」(一部抜粋)
がこちらだ。
「東京都知事は今回のエジプト外遊を成功裏に終え、エジプト政府へ感謝を伝えるため、東京のエジプト大使館を訪問した」
「その中で、東京都知事はCOP27に参加した喜びを表明し、シシ大統領が議長を務めるセッションに出席する栄誉に浴したことを感謝した」
「都知事はまた、訪問したエジプト日本科学技術大学を賞賛した」
「同大学は2国間協力のユニークなモデルであると述べた」
(「アハラーム紙」2022年11月22日)
まるで、エジプト政府かやシシ大統領に仕える召使いのような扱いの内容だ。
小池氏が賞賛した
「エジプト日本科学技術大学」
はODA(40億円)で運営されている。
同大学のアドリー学長は2023年、東京で面談した小池都知事に対して、
「大学設立時から常に支援、尽力して下さっていることに感謝の意を表した」
(エジプト「国家報道局(NPA)傘下のエジプト報道サイト」2023年5月23日)。
つまり、今もエジプトへ見返りを続けながら、自分が口利きして出来た大学を都の費用で訪問し、自画自賛しているのだ。
都知事としての公約実現はゼロだが、長年エジプトへの公約(見返り)は果たしているということである。
我が国の首都のトップが、外国勢力に生殺与奪の権を握られているのだ。
今後、どんな条件を突き付けられるのか。
この状況は都民、国民にとって極めて危険な状態である。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/656.html#c18

[政治・選挙・NHK294] 政権交代に現実味 自民に衝撃 世論調査に大きな期待(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
34. 秘密のアッコちゃん[395] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月20日 07:10:30 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[508]
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<主張>改正規正法が成立 さらなる改革に取り組め
2024/6/20 5:00
https://www.sankei.com/article/20240620-7NRDG53ICNKE3I6FEQNXJ33L5Y/
自民党が提出した改正政治資金規正法が参院本会議で自民、公明両党の賛成多数により可決、成立した。
自民派閥パーティー収入不記載事件の再発防止と政治資金の透明性向上への対策が盛り込まれている。
一部を除き令和8年に施行される。
ただし今回の内容では十分とは言えない。
更なる取り組みを求めたい。
改正法は、政治資金収支報告書が適法だと証明する
「確認書」
の作成を国会議員に義務付けた。
確認が不十分だった場合、公民権停止となる。
不正を抑止する効果が期待される。
透明性の向上を図るため、パーティー券購入者の公開基準額を
「20万円超」
から
「5万円超」
に引き下げた。
一方で積み残した課題がある。
最たるものは、外国人・外国法人のパーティー券購入規制を検討にとどめた点だ。
国政が外国勢力からの影響を受けるのを防ぐため、外国人・外国法人による政治献金は禁止されている。
パーティー券の代金はパーティー参加の対価とされるが、政治活動への事実上の経済支援である。
献金と意味合いがほとんど変わらない以上、外国人・外国法人による購入を禁止すべきだ。
日本維新の会が求めた、国会議員に月額100万円を支給する
「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)
の改革を先送りしたのも残念だ。
岸田文雄首相と維新の馬場伸幸代表は立法措置を講じると合意していた。
ただ、合意文書に期限が記されなかったため実施時期で齟齬が生じた。
今国会での実現を求めた維新が反発し、参院では反対に回った。
首相は2024年6月19日の党首討論で馬場氏に
「維新との合意の結果、プロセスが始まった」
「議論を進める」
と述べた。
旧文通費の問題はもちろん、その他の改革の実現も急がねばならない。
立憲民主党提出のパーティー禁止法案は衆院で否決された。
立民は一部幹部にのみ当面の自粛を決めたが、パーティーが政治を悪くすると考えるのなら、党所属の全議員が自粛するのが道理ではないか。
不記載事件を巡っては、いつ誰が何の目的で行ったかが依然不明だ。
首相や安倍派は説明を尽くさねば、国民の不信は尚残るだろう。

<主張>政治改革の与党案 議員の責任強化を確実に
社説
2024/5/11 5:00
https://www.sankei.com/article/20240511-ATVK327JMRI35M7XFJNR4TUTN4/
自民、公明両党は、自民派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を受けた政治資金規正法の改正内容について大筋で合意した。
再発防止に向け、国会議員の責任と罰則を強化する内容だ。
ただし、政治資金の透明性確保について詰め切れていない部分が残っている。
協議を継続し、来週には野党に提示しなければならない。
与党案では議員に対し、会計責任者が作成した政治資金収支報告書が適法であることを証明する
「確認書」
の交付を義務付けた。
会計責任者が不記載などで処罰され、議員の確認が不十分と認められた場合、公民権停止になる。
現行法の規正法が
「ザル法」
と呼ばれるのは、会計責任者や秘書に責任を押し付け、議員は責任を回避できる仕組みになっていることが大きい。
規正法違反を抑止するには、議員にも責任が及ぶ連座の仕組みの導入が欠かせない。
パーティー券購入者の公開基準額は現行の20万円超から引き下げる。
ただ、具体的な金額は自公で折り合わず、与野党協議に持ち越しとなる見通しだ。
政党から議員に支出される政策活動費については議員が使途を党に報告し、党が収支報告書に記載する。
使途公開は従来義務付けていなかったものだ。
与党合意には改革すべき重要な2つの点が抜けている。
1つは税金が原資の調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)について触れなかったことだ。
規正法改正とは別の話だが、旧文通費の使途も公開しなければならない。
2つ目は外国人・外国法人による政治献金が禁じられている一方で、外国人・外国法人による政治資金パーティー券購入が認められている点だ。
この見直しに関する記載も与党案にはなく、残念である。
外国人などの政治献金を禁じているのは、国政が外国勢力から影響を受けることを防ぐためだ。
パーティー券購入は政治活動に対する事実上の経済支援に当たる。
購入に外国人への参政権付与などを望む政治的動機があってもおかしくない。
外国人・外国法人による購入は禁じるべきである。
規正法改正を今国会で実現させるべきは当然だ。
与野党が真摯な姿勢で政治改革に取り組むことが求められる。

政治資金規正法改正巡る与野党協議は難航必至 生煮え@^党案を野党批判、自民内も賛否
2024/5/10 20:03
https://www.sankei.com/article/20240510-ASLBACZX35LMFCRHHMZ2NUGUUY/
自民党は2024年5月10日、政治刷新本部の作業部会を開き、自民、公明両党で大筋合意した派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を受けた政治資金規正法改正の与党案を示した。
合意を急いだ与党案は生煮え≠フ感も否めず、自民内では賛否が分かれた。
一方、野党は同日2024年5月10日の参院政治改革特別委員会で、与党案は不十分として批判。
今後も攻勢を強める構えで与野党協議は難航必至だ。
「政治活動の自由と政治資金の透明化のバランスをどう取っていくか、非常に難しい課題だ」。
自民の作業部会で茂木敏充幹事長はこう挨拶した。
出席した議員からは、与党案で具体的な額を示さなかったパーティー券の公開基準額引き下げに関し
「全て晒すべきだ」
「購入者のプライバシーを守るべきだ」
などと両論が出た。
政策活動費の廃止や、外国人のパーティー券購入禁止を訴える声も相次いだ。
2024年4月の衆院3補欠選挙全敗を念頭に
「このままだと政権を失いかねない」(青山繁晴参院議員)
との意見もあった。
与党案がパーティー券購入者の公開基準や政策活動費の使途公開に関して具体的に盛り込まなかったのは、自公の間で溝が残っているためだ。
公明の山口那津男代表は2024年5月10日の党会合で
「合意や一致には至ってない部分がある」
と述べた。
2024年5月10日の参院特別委でも、自民の磯崎仁彦氏がパーティー券公開基準額を現行の
「20万円超」
から引き下げる与党案に言及したが、具体的な額は示さなかった。
ただ、野党はより厳しい規制を求めた。
政策活動費廃止を主張する立憲民主党の小沼巧氏は、党の政治資金収支報告書に記載するとした与党案を
「禁止と比べると、踏み込みが中途半端」
と切り捨て、
「政治資金の透明化が必要十分だと胸を張れるロジックは如何なるものか」
「与党の意見を拝聴したい」
と皮肉った。
日本維新の会の高木佳保里氏は
「我々が求める改革とは程遠い」
と批判。
「これだけの改正で終わることは容認できない」
と指摘した。
与党案がまとまったことで規正法改正の舞台は与野党協議に移ったが、政府・与党は2024年6月23日の会期末を睨みながらの綱渡りの国会運営を強いられる。

裏金!? 岸田首相の宏池会 中国人パーティ券は”無罪”なのか チャイナマネー汚染によって腐っていく政権の実態を暴く
WiLL2024年5月号 ジャーナリスト 佐々木類
■中国に乗っ取られた岸田派
手元に東亜信息網(ドンヤーシンシーワン:東アジア情報ネットワーク)という電子版(2023年5月18日付)の記事と動画がある。
動画の画面左上には
「香港日報」、
右下には
「東亜信息網」
という文字と共に、日中両国の国旗が見える。
約7分間の動画は2023年5月17日夜、港区にあるホテルで開催された
「宏池会と語る会」
の受付の様子から終了まで、在日中国人らが大勢出席している様子を鮮明に映し出している。
パーティー開始前、入口付近にある金屏風の前に立ち参加者を出迎えた自民党の林芳正外相(当時)が、在日中国人の1人1人と親し気に挨拶を交わし、名刺交換をしている姿が映っている。
パーティーに出席した在日中国人らが仲間内で記念撮影したシーンも流され、美女らと共に呉江浩(ごこうこう)・駐日中国大使が笑顔で映っていたのはご愛敬だ。
その前年(2022年)5月19日付同電子版にも、
「宏池会と語る会」
の現場レポートが載っている。
注目したいのは、以下のくだりだ。

<岸田首相の就任後、初めて開催されたパーティー会場はほぼ満席で、例年より明らかに多くの在日中国人が集まり、初めてパーティーに参加したグループも見られた>
<中でも、名古屋市在住の中国人グループがわざわざ会場に来てとても美しい光景となった>
<名古屋在住グループの主催者の女性は、
「今年(2022年)は中日国交正常化50周年であるからパーティーに参加することで、【中国を宣伝したいという希望】を示すものであり、日中関係はより良い方向に発展している>
*【】は筆者注
<中には在日中国人なら誰でも知っている中国人も来ており、豪華絢爛な顔ぶれとなった>
<壇上で挨拶した林外相も気勢を上げ、岸田首相にはっぱをかけていた>
<今年(2022年)の宏池会のパーティーが例年と違うのは、なぜか学校教育推進コーナーがあって、中国人関係者が登壇した点だ>
<参加者の誰かが
「宏池会のスポンサーに違いない」
と冗談を飛ばしていたが、取材したら本当の話だった>
<首相や重要閣僚が集まるパーティーである>
<相当高額のパーティー券(パー券)を購入したに違いない>

次いで、2019年5月16日付電子版の東亜信息網の記事だ。
見出しは、
<2万円出して宏池会のパーティーに参加すれば、何を見ることができるのか>。
2019年5月15日夜、東亜信息網の記者が
「宏池会と語る会」
に出席した模様を写真と動画付きで報じている。
記事の内容は次の通りだ。
少々長いが引用する。

<パーティー券は1枚2万円かかる>
<記者のパー券は日本の企業経営者から贈られた>
<島国にある自民党の宏池会のパーティーでは、中国人にとって想像もつかないような事が普通に行われていた>
<パーティーは有料で、中国人団体も喜んでパーティーに参加していた>
<なぜこの時期に宏池会がパーティーを開いたのか>
<今春(2019年春)から統一地方選挙が本格化してこの日パーティーが開かれた頃には選挙が最高潮に達し、各派閥が自分の派閥候補を全力で応援しているのだ>
<記者が出席した宏池会は、1957年に池田勇人首相によって設立され、
「軽武装と経済重視」
路線を掲げ、自らを保守の主流とみなしている>
<元々は、吉田(茂)派と呼ばれ、池田元首相、前尾繁三郎衆院議長、大平正芳元首相、鈴木善幸元首相らが会長を歴任した>
<1991年(*年号編集部編成)に宮澤喜一氏が総裁に選出された後、名称を宮沢派に変え、日本の歴史の中で長期に渡って政権を握り、重要な地位を占めて来た>
<派閥のメンバーは何人も首相を務めたが、1998年と2000年(*年号編集部編成)の大きな分裂で勢力が急落した>
<2017年、宏池会が創立60周年を迎え、岸田外相を安倍首相のライバルとして会長に据えた・・・>
<記者は多くの中国人を発見したが、日本の過去と現在の政治家に会うために2万円を使うのはかなり高額だ>
<ただ、地位がどれほど高くても、低くても、経歴や職業を尋ねられることはないし、提出する書類も必要ない>
<【セキュリティー・チェックもないから、】その気になって2万円さえ出せば、誰だって宏池会のパーティーに参加できるのだ>
(*【】は筆者注)

■岸田派の逃げ切りを許すな
政界と大手メディアは示し合わせたように、中国に乗っ取られたかのような派閥パーティーの実態を見て見ぬ振りをし、連日、
「裏金、裏金」
の大合唱だ。
それも問題だが、中国人によるパー券購入の方がもっと問題だろうに・・・。
派閥の政治資金パーティー収入の不記載(裏金)事件で、自民党は党規約などの改正案を整えた。
政治団体の会計責任者が政治資金規正法違反で逮捕もしくは起訴されれば、議員本人に対して最も重い場合で離党勧告を行える内容を盛り込んだものだ。
不記載となった金は裏金と化し、場合によっては、所得税法違反の疑いすら生じているのだから、議員本人の責任を問うのは当然である。
だが、如何にもお手盛りの甘い決定と言わざるを得ない。
議員の進退は選挙民の負託を受けた議員本人が決めることではあるが、
「離党勧告」
などと甘っちょろいことを言っていないで、
「辞職勧告」
にすべきであろう。
それ以上に問題なのは、岸田政権の中枢を蝕み、真っ先に除去しなければならない深刻な問題が置き去りにされたままであることだ。
何回でも言おう。
中国人らによるパー券購入問題である。
彼ら個人や団体が、中国共産党の意を汲んだ対日工作の実働部隊として、政権与党の自民党が中国に有利な政治決定をするよう、政治的な意図を持って購入しているのは明らかである。
岸田首相が、彼らが
「金は出すけど、口は出さない」
という奇特な集団だと思っていたとしたら、余りに能天気だ。
習近平政権は、友好の仮面を被りながらも本音では、日本を華夷(かい)秩序(中華思想に基づく世界観を現実に投影しようとする国際秩序)に取り込むべく、日本の政財界中枢だけでなく、地方自治体への浸透を目論んでいる。
戦前、八路軍(日中戦争時に華北で活動していた中国共産党軍の通称)を率いた毛沢東以来、プロパガンダに長けた中国共産党である。
政治的な狙いがあると見るのが当然だ。
もっとも、パーティー収入の不記載と違って、外国人によるパー券購入は政治資金規正法違反ではない。
ならば、直ちに違法とするべく、国会の責任で政治資金規正法を改正すべきである。
現行の政治資金規正法では、パー券の購入は20万円以下であれば購入者を明らかにする必要がない。
匿名での購入が罷り通っているのである。
これが外国勢力による資金提供の温床になっているのだ。
■腐り始めた政権中枢
企業・団体による【献金】は【政党】に対して【だけ】認められている。
だが、【パー券の購入】であれば、【政党以外の政治団体】からも可能である。
国の補助金を受けた法人や赤字法人、外国人・外国法人の寄付は禁じられているにもかかわらず、パー券購入には何の制約もなく抜け穴になっているのである。
こうした事実を国民の多くは知らないでいる。
知らなければ問題意識を持ちようがなく、政治に対する批判の目を向けることもない。
悪しき慣行が罷り通る所以である。
それが政治家個人の政治活動に対する責任に帰するものであるならまだしも、政治の中枢、言うなれば、国の舵取りを担う政権の屋台骨に影響が及ぶものである。
宏池会のパーティーは、日本の政権中枢が根っこから腐り始めていることを如実に示しているのである。
東京地検特捜部の捜査も掛け声倒れに終わった。
大野泰正参院議員と安倍派・二会派の会計責任者らを東京地裁に在宅起訴し、谷川弥一衆院議員と岸田派の元会計責任者、二会派の二階俊博元幹事長の秘書らを東京簡裁に略式起訴して捜査の幕を引いてしまった。
1992年の
「金丸事件」
でも似たような光景を思い出す。
政治資金規正法違反の罪に問われた金丸信元自民党副総裁の略式起訴に怒った国民感情に焦った特捜部は、脱税の事実を突き止めてようやくの思いで金丸逮捕にこぎ着けた。
その頃と違って捜査能力が落ちたのか。
強制捜査に乗り出したところまでは良かったが、大山鳴動して鼠一匹(前触れの騒ぎばかり大きく、実際の結果は極めて小さい事の例え)。
安倍派潰しだなんだと言われっ放しの状況に悔しさを感じないのか。
日本は法治国家だから犯罪事実がなければ特捜部も動きようがないのだろう。
だが、捜査を継続すべきなのは、【政治資金規正法違反】などという生温い違法行為ではなく、【脱税という所得税法違反】である。
これは国会と二人三脚の仕事であるのだが、ゆくゆくは法改正して外国人によるパー券購入を禁止し、違反した議員を摘発していかねばならない。
岸田文雄首相も自ら政治倫理審査会に出席して
「事足れり」
で済ませるのなら無責任の極みだ。
法改正を主導すべきである。
2024年2月29日の衆院政倫審で、質問に立った立憲民主党の野田佳彦元首相が指摘したのは、もっともだ。
野田氏は、
「刑事事件にもならない、責任も問われない、説明責任も果たさない、税金も払わない、処分もない」
「何もないんだったら、また同じ事が起こりますよ」
「そろそろ党として、総裁としてのリーダーシップを奮って、処分を考えるべき時期だ」
と岸田首相の政治姿勢を問うた。
岸田首相が、
「法律上の責任以外にも、政治家としての説明責任、そして政治責任、道義的責任もあると思っています」
と述べたものの、党総裁としての指導力を発揮する決意は感じられなかった。
話が拡散するから、野田氏も敢えて問わなかったのか。
それとも、違法ではないから問題ではないと考えていたのか。
いずれにせよ、外国人によるパー券購入問題には触れなかった。
政治資金収支報告書は、要旨を公表して3年を経過すれば削除できる。
つまり、3年経てば、中国の個人・団体によるパー券購入は
「無かった」
ことにできるのだ。
岸田氏は、中国のパー券購入問題がこのまま闇から闇に消え、国民の目に晒されないで済むのであれば、御の字とでも思っているのではないか。
だから、麻生太郎副総裁に相談もせずに派閥などいくらでも解散するし、政倫審にだって出席する。
「党則だって党規約だって何だって改正するさ」
と、ほくそ笑んでいるのではないだろうか。
岸田首相の逃げ切りを許してはならない。
岸田派だけではない。
この問題を放置すれば、岸田派のパー券購入に勤しんでいた中国人や団体の存在も国民に気付かれないままとなる。
国の主権に関わる問題が放置されるのと同じことである。
派閥の解散はむしろ、襟を正して再発防止を図るためではなく、中国から大量のパー券を購入してもらっていた実態を国民の目から逸らす効果をもたらしている。
■チャイマネ汚染の隠れ蓑
こうした中、中国の個人・団体によるパー券購入問題を国会で厳しく追及しているのが、自民党の有村治子参院議員である。
2024年3月6日の参院予算委員会で、岸田首相に対し、外国人による政治献金が禁じられる一方、政治資金パーティー券の購入は認められている現状について、
「事実上どちらも政治活動への経済的支援に変わりはない」
「外国人によるパーティー券の購入を正していかなければ、日本の政治が外国勢力から支配や干渉を受ける制度的な脆弱性を持ち続ける」
と述べ、法改正を訴えた。
有村氏は
「特定の外国の人が日本の政治家からパーティー券を買い続け、参政権がないにもかかわらず少なからず経済的支援を続けているとすれば、相当の(政治的)動機があるはずだ」
とも語った。
首相は
「政府として様々な分野で外国の機関による工作が行われているとの認識で情報収集・分析に努めている」
と当然のことを述べた上で、
「外国による政治、その他の分野に関する情報収集や各界への影響工作など、我が国に対する有害活動に的確に対応することは重要なことだ」
と他人事のように語っている。
気を付けねばならないのは、当たり前過ぎて聞き流してしまいそうなこの答弁が、巧妙に細工されていることだ。
「有害活動に」
と条件を付けている点に注目したい。
岸田氏は、宏池会のパー券を中国人らが大量に購入していることへの政治的意図について触れず、
「有害ではないから的確に対応する必要はない」
と抗弁しているようにも聞こえる。
外国人によるパー券購入の是非を巡っては、自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を受けて党内で議論されたが、2024年1月に了承された政治改革案の中間取りまとめには盛り込まれなかった。
一体、岸田首相(自民党総裁)はじめ、自民党は何をやっているのか。
いくらでも修正可能な
「中間取りまとめ」
にすら盛り込めず、党規約などを見直したところで、腐った根は取り除けない。
こんな体たらくでは、保守的な自民党のコアな支持層が離れ、次の総選挙で惨敗することを全自民党議員は知るべきだ。
国民の目は節穴ではない。
支持率低迷で、ダッチロール(飛行機が左右に大きく揺れたりスライドしたりしながら飛ぶ)状態にある岸田首相。
巷間取り沙汰されている北朝鮮訪問で、拉致被害者の帰国を実現すれば巻き返しも図ることができるだろうが、そこまで岸田首相に胆力はあるか。
憲法改正に向けた発議に具体的に動くという正攻法もあるが、これとて、やる気の欠片も見えてこないのが現状だ。
政権浮揚に向けて
「次の一手」
を考えているのなら、岸田氏の腹1つで、すぐにでもできることを進言したい。
「中国マネーから手を引くべきである」
と。

<独自>政策活動費使途公開、外国人のパー券購入禁止を 自民有志の要請文判明
2024/2/15 18:14
https://www.sankei.com/article/20240215-XBJQZJXFEBKPNKY7TAMTKHSFAA/
自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を受け、派閥全廃を目指す同党中堅・若手有志の議員連盟
「政治(まつりごと)変革会議」(代表・青山繁晴参院議員)
が取りまとめた要請文の全容が2024年2月15日、分かった。
派閥全廃に向けて、政策集団による政治団体登録の禁止を主張。
政策活動費の原資・使途の公開や、外国人によるパーティー券の購入禁止も盛り込んだ。
要請文は
「派閥全廃は党改革の前提であり、まっさらな状態から新たな自民を構築すべき」
と明記。
派閥が残れば
「国民の信頼は生まれない」
とも指摘した。
政治改革を進めるため、
▽新たな「政治改革大綱」の策定
▽政党法もしくは公党法の制定
▽党内に強力な監査機関の新設
なども必要と記載した。
議連は2024年2月16日、自民の渡海紀三朗政調会長に要請文を提出する方針だ。

阿比留瑠比の極言御免
外国人パー券の禁止が本丸
2024/1/25 1:00
https://www.sankei.com/article/20240125-2IJIOJAG3FK4VHMGESRQGIU4VE/
政治資金収支報告書への不記載で始まった政治とカネの問題が、派閥解消の問題へと論点ずらしされたようで得心がいかない。
自民党の政治刷新本部は2024年1月23日、政治改革の中間取りまとめ案を提示した。
派閥による政治資金パーティーの禁止を盛り込んだが、政治家個人が開く場合の
「外国人」
によるパーティー券購入の禁止は入らなかった。
■献金ならクビが飛ぶ
この問題ではかねて、政治資金規正法が
「外国人」
からの献金を禁じているのに、事実上の寄付に近いと言えるパーティー券購入は自由であるのは抜け穴になっていると指摘されていた。
自民党の有村治子元女性活躍担当相が2024年1月23日、SNSでこう問題提起していた。
「外国人による【寄付】は禁じられる一方、【パーティ券の購入】には制限がない」
「事実上どちらも、政治活動への経済的支援であることには変わりなく、(中略)日本の政治が、外国勢力から支配や干渉を受ける制度的脆弱性を持ち続けることになります」
有村氏は2016年10月6日でもこの問題を質しており、当時の高市早苗総務相はこう答弁している。
「(政治資金規正法の)規定が設けられた趣旨は、日本の政治や選挙が外国の勢力から影響を受けるということを未然に防止する趣旨であると承知を致しております」
ある政治家のパーティー券を中国や北朝鮮が大量かつ継続的に買い続け、政治家がそれに依存するようになればどうなるか。
いずれ取り込まれて身動き出来なくなることは、小学生にだって分かる。
実際、2011年3月6日には、当時の菅直人内閣の前原誠司外相が在日韓国人から25万円の違法献金を受けていたことで外相を引責辞任している。
この時は、菅直人首相自身の資金管理団体がやはり在日韓国人から約4倍の104万円の違法献金を貰っていたことも発覚した。
ところが2011年3月11日、まさにその問題を菅直人首相が国会で追及されていた絶体絶命のタイミングで東日本大震災が発生し、問題は有耶無耶のまま延命したのだった。
外国人からの寄付は閣僚のクビが飛ぶほどの重大事であるのに、外国人のパーティー券購入は度外視するのは筋が通らない。
■議論あったのに
それも自民党の政治刷新本部ではたまたここまで話題が及ばなかったというのであればともかく、2024年1月16日の本部会合では小野田紀美元防衛政務官が発言しているのに、中間取りまとめでは跡形もないというのは不自然ではないか。
X(旧ツイッター)投稿によると、小野田氏は以下のように論じたという。
「派閥の是非がメイン議題になっているのはおかしい」
「そもそもこれは派閥の問題ではない」
「個人の政治資金パーティーでの過少記載問題もあった」
「『自民党』だけの問題ではない」
「個人の政治資金パーティーにかかる疑惑は他党でもあった」
「派閥の問題云々ではなく『政治資金パーティー』の在り方が問題なのである」
「パーティー券を某外国人が沢山買っていた事が問題になった事例も自民党議員にあった」
「この抜け穴は絶対防がなきゃいけない」
詳しくは直接、小野田氏の投稿を読んでもらいたいが、重要な論点である。
2024年1月22日の政治刷新本部では有村氏も小野田氏の言葉を引いて発言し、2024年1月23日の同本部では事務局から有村発言への言及があったというが、中間取りまとめにこの本丸は反映されていない。
やはり納得できない。

中国が宏池会のパー券を買っている 岸田政権の親中・媚中はその”見返り”なのかー追及は終わらせない
作家・ジャーナリスト 門田隆将
経済安全保障アナリスト 平井宏治
WiLL2024年2月号
■岸田政権”花道退陣”シナリオ
★門田
岸田政権の支持率低下が止まりません。
世論調査では軒並み20%台の前半に。
菅直人政権末期と酷似しています。
自民党が”悪夢の民主党政権”から政権を奪還して以来、最低の数字です。
★平井
岸田総理は2024年秋に控える総裁選まで政権が”もつかどうか”も厳しい状況です。
★門田
もちません。
時間の問題です。
2024年1月に始まる通常国会までもったとしても、国会で巨額のウクライナ復興支援が議題になります。
もちろん、そのための
「増税」
が議論されるわけです。
支持率は更に低下し、目も当てられません。
★平井
2024年4月に訪米を予定したのは、これを口実に政権にしがみつきたいからでしょう。
安倍元総理と同じ国賓待遇での訪米ですが、両者の能力には埋め難い差があります。
★門田
予算成立と訪米をやり遂げて”花道退陣”というシナリオが有力です。
自民党内では早くも”ポスト岸田”を睨んだ動きが見られます。
口火を切ったのは高市早苗経済安全保障担当相。
高市氏は
「日本のチカラ研究会」(国力研)を立ち上げ、45人が入会。
初会合には13人が出席しました。
★平井
総裁選に向けた”足場固め”ですね。
閣僚という立場上、高市氏は否定していますが・・・。
■解散権を失った総理
★門田
私は、高市氏には早く動いてほしいと思っていました。
よく決断してくれたと思う半面、遅すぎたという思いもあります。
現職閣僚ですから、政局と見られる動きは慎重に進めなければなりませんでした。
勉強会を立ち上げるにも、具体的な日付が漏れたら、各派閥から”潰し”の工作が入ります。
高市氏には、その思想と政策に賛同する議員が多いですから、各派閥にとっては脅威です。
幹部たちはそれを懸念していました。
高市氏の勉強会には参加しないよう相当な”お触れ”が出ていたのが実情です。
★平井
古屋圭司議員が
「高市の勉強会には行くな」
と若手に圧力を掛けていたそうです。
古屋氏は前回の総裁選、高市陣営の選対本部長を務めた。
にもかかわらず、妨害工作を仕掛けるとは言語道断。
LGBT理解増進法でも旗振り役を担い、国体を蔑ろにした古屋氏は”朝敵”に他ならない。
安倍元総理を裏切り、高市氏を裏切り・・・。
その節操の無さは人として信用できない。
かつては保守政治家と言われていましたが、それも保守票欲しさの芝居だった。
保守のメッキが剥げました。
★門田
高市氏の動きには予想通り、自民党内から”攻撃”が入りました。
世耕弘成参院幹事長は、高市氏の勉強会にこう苦言を呈した。
「現職閣僚が、こういう形で勉強会を立ち上げるのは如何なものか」
高市氏はすかさず、X(旧ツイッター)で反論します。
「現職閣僚が担務外の同僚議員と一緒に勉強することの何が悪いのか、意味が分からん」
「本会議場で総理の批判をされた方々に、まるで私が謀反を起こしたかのような発言をして頂きたくはありません」
★平井
次期総裁選に出馬するという噂もあった世耕氏の発言。
「現職閣僚」
云々はタテマエで、
「オレより目立つな」
というのがホンネでしょうね。
★門田
世耕氏は臨時国会の代表質問で、
「国民が期待するリーダーとしての姿が示せていない」
と岸田総理を批判しました。
世耕氏は『WiLL』2024年1月号でも、
「言葉に情熱を感じない」
「返って来る答弁は無味乾燥なことが多い」
と強調している。
★平井
世耕氏の国会質問が”党内政局”のゴングを鳴らした。
”岸田降ろし”の風を吹かせた張本人です(笑)。
★門田
高市氏と世耕氏は、自民党内でも数少ない保守派議員。
2人にはあまりケンカをしてほしくないんですが・・・。
★平井
”ポスト岸田”を狙う高市氏と世耕氏が火花を散らしている。
それが表立って報じられること自体、岸田内閣の支持率が”民主党政権の最期”とほぼ同じになり、現政権の求心力が低下したことを表しています。
要するに、岸田総理は完全にナメられている。
★門田
総理を総理たらしめるのは衆院の
「解散権」
です。
解散を打てない総理など何も怖くはない。
岸田総理の失敗は、G7広島サミット後に解散できなかったこと。
岸田総理には
「覚悟」

「国家観」
もありませんから、自民党内の予想以上の”議席減”という内部調査の数字に尻込みしてしまったわけです。
とはいえ、2023年10月からはインボイス制度が始まり、補正予算では増税が議論されることは分かっていた。
つまり、支持率が上昇する見込みはなかったのです。
それなのに決断できなかった。
世耕氏に国会の代表質問で痛烈な指摘を受けただけでなく、経済対策の財源を巡っては財務省にもハシゴを外され、悲惨な状況に追い込まれてしまいました。
■”パー券”がトドメを刺すか
★平井
”政治とカネ”が岸田総理退陣の決め手になるかもしれない。
派閥の政治資金パーティーの売上の一部が、議員にキックバックされ、政治資金収支報告書に記載されずに裏金となった場合、これは脱税です。
★門田
安倍派”5人衆”(松野博一官房長官、萩生田光一政調会長、西村康稔経産相、世耕弘成参院幹事長、高木毅国対委員長)に与えられている閣僚、党幹部のポストは剥奪される可能性が高い。
事実上の内閣改造ですが、これが政権崩壊の決定打になり得る。
★平井
宏池会が清話会にケンカを売りました。
これは見物です。
★門田
東京地検特捜部の”線引き”が焦点になります。
安倍派と二階派が標的になる一方、岸田派と茂木派、麻生派の主流3派はスルー。
永田町でも、政治色が色濃い恣意的な捜査ではないかと囁かれている。
★平井
自身に降り掛かる火の粉を払うためか、岸田総理は岸田派の会長から退きました。
★門田
最早滑稽譚ですよね。
利益誘導などの疑いを避けるために、総理になったら派閥の会長を外れるのが自民党の慣例です。
にもかかわらず、岸田総理は首相就任後も派閥の会長に留まった。
”宏池会命”の岸田総理らしい。
宏池会の政治資金パーティーに中国人が集結するのは政界で有名です。
つまり、中国が宏池会のためにパーティー券を買ってくれるわけです。
政治資金規正法第22条の5では、外国人や外国企業からの寄付が禁止されているのに、何故パーティー券の購入は許されるのか。
完全に法の抜け穴ですよね。
20万円を超えるパーティ券購入でなければ、氏名も企業名も出ません。
一体、宏池会は中国人にパーティ券を買ってもらう見返りに何をしてあげているのでしょうか。
まさか、日本の排他的経済水域(EEZ)にぶち込んだきた中国の海上ブイを撤去できない理由もそこにあるのではないでしょうね。
たとえ岸田総理が派閥会長を辞めても、特捜部はこの真の問題を追及してほしいですよ。
★平井
例えば、同じ場所で駐車違反をしたのに、Aは切符を切られ、Bは切られない。
これは不公平です。
公平を期すために、税務署は全ての国会議員の政治資金パーティーを調べる必要がある。
■対中包囲網の切り崩し
★平井
統一教会問題でも、マスコミは安倍派の議員を狙い撃ちにしましたね。
★門田
宏池会トップの岸田総理、平成研トップの茂木幹事長。
彼らは統一教会問題を利用して、最大派閥の安倍派解体を狙っていた。
しかし、信教の自由が保障されている日本で、30年前の霊感商法全盛時代の統一教会ならいざ知らず、霊感商法被害が100分の1以下になっている今、求めに応じて政策を訴えに行くのは、政治家の仕事ですよ。
逆に、もし行かなかったら、
「思想」
「信条」
「信教」
によって
「国民を差別したこと」
になり、そっちの方が問題になります。
そのことを弁えないマスコミによって、他の宗教団体の数十分の1、数百分の1しか行っていないのに、それが
「全て」
であるかのように連日報道され、国民が洗脳された。
これを自民党の主流派が安倍派潰しに利用したのです。
★平井
岸田総理と茂木氏は何故、安倍派をそこまで目の敵にするのでしょうか。
★門田
安倍派は積極財政派が多いし、何より安倍氏が長年かけて構築した対中包囲網の切り崩しにあると考えるのが妥当でしょうね。
日中国交正常化を成し遂げたのは、田中角栄首相と大平正芳外相です。
田中派は、竹下派などを経て現在の茂木派(平成研)になっている。
大平派の宏池会と共に、今もって”親中議員の巣”ですよね。
親中政治家の背後には、経団連をはじめとする財界の存在がある。
彼らこそ
「日中友好絶対主義」
の主役です。
文化大革命で荒野と化した中国に、半世紀以上の期間と手間をかけてインフラを整えたのは日本です。
巨額のODAと、それに付随する様々な事業は、田中派と宏池会を通すことによって、初めて実現可能でした。
日本企業が中国で事業展開する際、中国共産党の許可が必ず必要ですからね。
当然、両派には中国と日本企業の
「両方」
から莫大なキックバックが入って来た歴史があります。
だから、日本は
「親中政治家」
だらけなんです。
情けない話ですよね。
★平井
政界もそうですが、経済界の小物ぶりも情けない。
BMW(ビジネス、マネー、ウーマン)で、弱みを握られた”戯け者”も多いと聞きます。
国益を念頭に置いた提言は姿を消し、株主の顔色を窺う小物ばかりになった。
”メザシの土光”こと土光敏夫氏のような畏怖を感じる経済人がいなくなりました。
■恥も外聞もない
★平井
経済対策にも”利権”が見え隠れします。
ガソリンは2重課税などと言われますが、実は4重課税(ガソリン税、石油石炭税、温暖化対策税、消費税)です。
国民民主党の玉城雄一郎代表はトリガー条項の凍結解除を訴えている。
トリガー条項を発動すれば、ガソリン税が下がり、国民生活は楽になる。
にもかかわらず、多くの自民党議員が反対しています。
★門田
彼らは何故”減税”よりも”補助金”にしたいのか。
補助金を払うことで、業者に恩を売ることが出来るからです。
ガソリン補助金の場合、元売り会社に補助金が流れる。
業者は”お返し”にパーティー券を買い、更には献金もする。
官僚も恩を売って天下り先を確保できるという一石三鳥なわけです。
国民の血税が業界に渡り、パーティー券他、様々な形で政治家に戻って来る。
パーティー券問題の根は深いんですよ。
★平井
トリガー条項発動に釘を刺したのが鈴木俊一財務相です。
反対の理由は
「トリガー条項の凍結解除には1兆5000億円もの財源を必要とするから」
というもの。
1兆5000億円のガソリン補助金に比べて、トリガー条項の方が安上がりなのに、何を渋っているのか。
★門田
鈴木氏は前にもトリガー条項について、
「発動前の買い控えや終了前の駆け込みが起こる」
などと反対していた。
全く意味不明です。
鈴木氏は財務官僚に渡されたペーパーを読んでいるだけの人です。
単なる”操り人形”だから、恥も外聞もありません(笑)。
★平井
増税すればするほど、財務省が握る予算配分の権限は強まります。
政治家は予算の元締めである財務省の顔色を窺うようになり、財務官僚は天下りという”甘い汁”にありつける。
国民生活が逼迫しているにもかかわらず、平気で増税を進める役人たち。
彼らは省益しか頭にありません。
■もはや一流国ではない
★門田
1997年の消費税増税以降、4半世紀に渡って日本のGDP成長率は1%前後を行き来しています。
各国のGDPをグラフにすると、他国は軒並み右肩上がりなのに、日本だけが地を這っている。
★平井
我が国が経済のグローバル化に舵を切ってから30年に渡り、日本経済の成長は止まっている。
国民の所得も上がっていません。
1人当たりGDPは他国にどんどん抜かれされ、最近は”安い日本”に外国人観光客が押し寄せています。
一流の先進国だった日本は今や見る影もない。
二流、いや三流の国家に没落しつつある。
★門田
日本人は勤勉で労働力の質が高い。
加えて、長時間労働を厭わない忍耐強さを備えています。
にもかかわらず、経済が一向に成長しない。
その原因が経済政策の失敗にあることは火を見るよりも明らかです。
世界中の経済学者が今、
「典型的な失敗モデル」
として日本に関心を寄せている。
要するに、笑い者になっているということ。
★平井
経済政策を財務省に丸投げした結果、失われた30年を招いてしまった。
安倍元総理はそれに気付き、財務省と距離を置いた。
だからこそ、財務省には蛇蝎の如く嫌われていましたね。
★門田
安倍政権と菅政権は内閣人事局を使って官邸主導によって霞が関の力を弱めることに成功した。
ところが、岸田政権は官僚ベッタリ。
あっという間に元の
「官僚統制国家」
の時代に”時計の針”を戻してしまった。
★平井
財務省に加えて、親中派の政治家と財界人も責任が大きい。
政官財がタッグを組み、日本国民を苦しめながら、経済植民地化を進めてきました。
ケ小平が改革開放路線を掲げて以降、中国はグローバル経済のサプライチェーンに組み込まれ、
「世界の工場」
としての地位を占めた。
西側諸国は独裁国家の価値観、政治制度の違いに目を瞑り、企業の利益確保を優先したんです。
中国に工場を移せば、日本の地方工場は閉鎖。
雇用は破壊されます。
中国製品との価格競争を強いられた中小企業は、従業員の賃金を上げる余裕がない。
この状態が今でも続いている。
■池田大作”死去”と公明党
★門田
自民党の親中派議員と共に、日本企業の中国進出に重要な役割を担ってきたのが公明党です。
★平井
防衛力強化反対、外国人土地利用規制や人権問題を巡る対中非難決議の骨抜き、セキュリティ・クリアランス導入の見送り、防衛装備品の輸出指針見直しの反対・・・。
公明党が対中政策を歪めた事例は枚挙に暇がない。
★門田
公明党の母体である創価学会に激震が走ったのは、池田大作名誉会長の死去です。
日中国交正常化に踏み切ったのは田中角栄政権ですが、その先鞭を点けたのが池田氏です。
絶対的カリスマの池田氏が1968年9月にぶち上げた
「日中国交正常化提言」。
池田氏の”私兵”に過ぎない公明党議員が親中を貫くのは当然です。
★平井
池田氏の死去により、中国の公明党への扱いは転換するのでしょうか。
★門田
創価学会と中国の関係は『日中友好侵略史』(門田隆将著、産経新聞出版)に詳述しました。
当時のベストセラー作家の有吉佐和子氏を使って池田氏を”工作”していったのは、対日工作を担う中国共産党の周恩来氏と廖承志(りょうしょうし)氏でした。
その辺りの秘話は全てこの本に書きましたが、公明党にとっては、今では”親中”が一種のアイデンティティになっている。
完全に取り込まれていますから、最早変わりようがありません。
★平井
奇しくも、池田氏の創価学会葬が執り行われた当日、公明党の山口那津男代表は王毅外相と会談した。
成果など何もありません。
福島原発の処理水を独自にモニタリングさせろと要求されるだけ。
★門田
山口氏が何のために訪中したか。
パンダを貸してもらうためです(笑)。
それと習近平に池田大作氏への弔電を出してもらうべく、必死に頼んだのでしょう。
★平井
習近平が山口氏に会わなかったのは、
「公明党はもう重視していない」
というシグナルなのかもしれませんね。
★門田
中国では今、日本人のビジネスマンが拘束されていますよね。
彼らの家族は1日も早い帰国を待っている。
日本の政治家が連れて帰るべきは、不当拘束されている邦人であり、パンダではありません。
しかし、中国に怒られるかもしれないことを山口氏が言えるはずはなかったのです。
★平井
そもそも、チベット原産のパンダは中国のものではない。
中国が処理水のモニタリングを要求するなら、山口氏には
「我が国固有の領土である尖閣諸島に領海侵犯するな」
と言ってほしかった。
■砕け散った岩盤
★門田
安倍総理の首相退任後、朝日新聞が
「若者が見た安倍さんの7年8カ月」
なる記事を掲載していました。
それによれば、安倍政権の支持率は平均で44%。
ところが、18〜29歳の男性に限ると支持率は57%。
安倍政権を支えたのは若年層でした。
世論誘導に騙されやすい”情報弱者”たちとは一線を画していたわけです。
★平井
若い世代はネットを駆使しながら、自ら情報を取捨選択している。
客観的に政策の良し悪しを判断する癖が付いています。
★門田
安倍政権の岩盤支持層だった”保守・現実派”の若者たち。
彼らは今、岸田政権をどう思っているのか。
世論調査によれば、18〜29歳の岸田内閣の支持率は10%です(時事通信、2023年10月)。
3年前の2020年に自民党を支えていた岩盤はあっという間に砕け散りました。
★平井
自民党は失った岩盤支持層の信頼を取り戻せるのでしょうか。
★門田
唯一のカードがあります。
それは”高市首班”です。
★平井
先日、福岡県で
「高市早苗さんと歩む福岡県民1000人大会」
という集会が開かれ、門田さんも講演されたとか。
★門田
予想を上回る応募人数に、主催者は”嬉しい悲鳴”を上げていました。
1000人が詰めかけた会場はパンク寸前。
会場の熱気に圧倒され、国民が如何に高市氏に期待しているかを実感した。
保守・現実派を裏切り続け、底なしの支持率下落を記録する岸田政権。
それでも、安倍元総理が推した高市氏の人気は健在です。
★平井
門田さんの話を聞いて、思い出したのが日本保守党の結党パーティーです。
パーティー会場で、門田さんにもお目にかかりましたが、会場は異様な熱気に包まれていましたね。
熱気の正体は”怒り”です。
財務省や外国の言う事ばかり聞き、国民の声を無視する岸田政権、LGBT法を成立させ、左傾化する自民党。
野党は最早論外です。
既存政党に対する不満と怒り、そして世直しを求める国民の声が日本保守党の原動力になっている。
日本保守党は凄まじい勢いで支持を拡大しています。
★門田
自民党内で唯一、日本保守党などの
「現実野党」
に対抗できるのが高市氏です。
日本保守党と高市氏は百田尚樹氏や有本香氏とも仲が良いですが、自民党が高市氏を担げば、日本保守党は対立軸が薄まってしまいますね。
裏を返せば、自民党が高市氏以外を担げば、日本保守党としては戦いやすい。
リベラル与党vs保守野党という明確な対立軸がありますからね。
★平井
私は国民のために汗を流す政治家を応援したい。
高市氏が総理になっても、”特定3選挙区”の有権者は自民党候補に投票してほしくない。
古屋圭司氏の岐阜5区、稲田朋美氏の福井1区、新藤義孝氏の埼玉2区。
安倍元総理を裏切り、LGBT法を推進した連中を再選させてはなりません。
■自民党は”選挙互助会”
★門田
リベラル議員の当選を阻止する上で、重要な役割を担うのが日本保守党の有本香氏です。
ジャーナリストである彼女は各党に人脈があります。
維新の会や参政党に働き掛け、同一選挙区で候補者が重複しないように調整すればいい。
保守・現実派の票が割れてしまえば、自民党のリベラル議員を利することになります。
個人的には、有本氏は2024年7月の東京都知事選に出馬してほしいと思っています。
日本保守党がこのままの勢いで支持を拡大していけば、小池百合子氏の3選を阻止できる。
自民党内にも、小池都政を終わらせたいと思っている議員は多いですよ。
有本氏が立候補すれば、保守・現実派は総力を挙げて応援します。
★平井
左傾化した自民党内には、高市氏の思想や政策を嫌う議員が多い。
積極財政派の高市氏は財務省にもマークされている。
”高市総理”に期待する気持ちは分かりますが、果たしてどれほど現実味があるのか。
★門田
前回の総裁選(2021年)において、高市氏は114票もの議員票を獲得した。
岸田総理は146票、河野太郎氏は86票、野田聖子氏は34票。
安倍元総理の強烈な後押しがあったとはいえ、次の総裁選でも有力候補であることには変わりがない。
自民党の本質は”選挙互助会”です。
議席を失わないことが最優先。
岸田総理のままでは選挙に惨敗する。
”茂木総裁”でも勝ち目はない。
そんな中、最強の切り札が”高市総裁”というカード。
国会議員の椅子にしがみつくためなら、思想をかなぐり捨ててでも、高市支持に回る可能性がある。
★平井
”選挙互助会”の自民党には、保守から左翼まで幅広い議員がいます。
米民主党と自民党の左翼政治家が連携して左翼政治を行い、岩盤保守層が自民党から離れました。
更に、政治資金パーティーと脱税疑惑により、派閥政治の病理が表面化しています。
無派閥の高市氏にとっては、この騒動が追い風になるでしょう。
”仲間作り”する上ではネックだった無派閥が、ここに来てプラスに働くかもしれない。
★門田
政党や派閥ではなく、個人の資質で政治家を選ぶ時代になりましたね。
■媚中の後にまた媚中
★平井
マスコミが報じる”次の総理”ランキングでは、
「小石河」
がトップスリーを独占している。
単なる知名度調査ではないかと疑ってしまいますが、マスコミは彼らの本性を決して報じない。
無能な小泉進次郎、後ろから見方を撃つ石破茂、媚中の河野太郎。
絶対に総理にしてはいけない人物であることは明らかです。
★門田
自民党が何かを勘違いして、高市氏ではなく、岸田より更に
「左」
の”小石河”を担ぐようなことになれば、自民党はもう終わりですね。
保守・現実派という岩盤支持層が逃げたために支持率が崩壊しているのに、その意味がまるで分かっていないんですからね。
★平井
気になるのが、マスコミが上川陽子外相を”初の女性総理”候補などと持ち上げ始めたこと。
”高市潰し”の一環ですね。
マスコミが高市氏の存在を恐れている証左でもある。
★門田
上川氏が師事するのは福田赳夫元総理。
外務省チャイナスクールの言いなりです。
林芳正よりも酷い外相はいないと思っていたら、上川氏も同レベルだった。
心ある外務官僚の間では、
「媚中の後にまた媚中が来た」
と言われています。
★平井
岸田総理にとって、2人は宏池会の後輩でもある。
★門田
上川氏が林氏と違うのは、米民主党にも人脈があるということ。
上川氏はハーバード大学で修士号を取得した後、民主党のマックス・ボーカスト上院議員に政策スタッフとして仕えた。
ボーカス氏はオバマ政権時代、在中国大使を務めた人物です。
上川氏を外相に据えれば、中国と米民主党の両方を喜ばせることができる。
浅はかな人事が透けて見えます。
■国民の命を守る気がない
★平井
米国では2024年、民主党から共和党に政権交代する可能性がある。
これを想定できない岸田総理の限界ですね。
しかも、中国では2023年7月に改正反スパイ法が施行されました。
冤罪で逮捕されたら、死刑や10年以上の懲役に処されてしまう。
米国は即座に中国への渡航リスクを
「レベル3」
に引き上げた。
事実上の渡航中止勧告です。
その一方、日本の外務省は未だに
「レベル1」。
未だに中国渡航は安全だと言い張っている。
★門田
問題視した松原仁衆院議員は、上川氏に国会質問で詰め寄った。
「国民の命をどう思っている!」
と。
上川氏は官僚が作ったペーパーを棒読みするだけ。
★平井
松沢成文参院議員(日本維新の会)は諜報機関の設置と
「スパイ防止法」
制定を求めた。
しかし、上川氏は
「様々な議論があると承知している」
と曖昧な回答で濁した。
スパイ防止法ができて困るのはスパイだけ。
スパイ取り締まりに消極的な議員は”対日工作員”ではないかと疑ってしまいます。
★門田
岸田政権下で改めて浮き彫りになったことがある。
それは政治家も官僚も国民の命を守る気がないということ。
岸田総理が日本のために出来ることは1つしかない。
それは”総理を辞めること”です。

自民党パーティー券疑獄の「真の巨悪」
Hanada2024年2月号  門田隆将
自民党のパーティー券問題の
「本質」
は何なのか。
東京地検特捜部は、その
「核心」
に切り込めるのか。
2023年の年末、政界は激震だ。
安倍派ばかりに話題が集中する中、
「核心は岸田派(宏池会)にある」
という声が消えない。
しかし、同時に
「特捜部はそこまでは踏み込めない」
との悲観的な見通しも流れてくる。
その理由を解説したい。
2023年12月7日、岸田首相は突然、岸田派会長を下りることを表明した。
「党内には無派閥の人間も大勢いるので、総理総裁の任にあるうちは派閥を離れるというのが適切と考えた」
「私が先頭に立ち、党の信頼回復に努力したい」
岸田首相のその言葉を聞いて
「今更何?」
とシラけた向きも少なくあるまい。
「あれだけ批判されても派閥の長をやめなかった岸田氏の”豹変”でした」
「それだけ追い詰められたということです」
とは、大手紙社会部デスク。
「パーティー券問題は、いち早く各派が政治資金収支報告書を修正し、体裁を整えています」
「しかし、単に政治資金規正法違反だけなら、検察も検事をかき集めて50名体制に増強したりしません」
「つまり”先”を見据えている、ということです」
「しかし、その壁、つまりタブーの大きさから、”恐らく無理”という見通しの方が現時点では優勢なのです」
先を狙っている、タブーの大きさ、恐らくは無理・・・これらの言葉は何を意味するのだろうか。
ポイントは
「岸田派」
にある。
例えば2022年5月18日に開かれた岸田派の政治資金パーティーを見てみよう。
この日午後6時から東京・芝公園の東京プリンスホテルで開かれたパーティーは一種、独特の空気に包まれていた。
出席者の1人が振り返る。
「岸田派のパーティーは独特なんです」
「他の派閥の雰囲気とは違います」
「理由は”中国人の多さ”です」
「他派閥も中国人はいますが、人数が違うので飛び交う中国語が凄いんです」
「つまり、岸田派のパーティー券は、中国人が数多く購入しているということです」
「まだコロナ禍の2022年は間隔を空けた椅子席で始まったんですが、明らかに中国人と分かる人たちがずらりと座っていて、その様子がネットに流れて話題になりました」
パーティー券を購入するということは、当然、
「見返りを求めて」
のことである。
では、岸田派が突出して”中国人が多い”のは何故なのか。
「岸田派、つまり宏池会は3代目会長の大平正芳が田中角栄と共に1972年に日中国交正常化を成し遂げた」
「そのため中国は、田中派と大平派を特別扱いしてきました」
「ODAなど中国への援助は主に両派を通して行われ、中国から多額のキックバックがもたらされていた話は有名です」
(自民党関係者)
井戸を掘った人を大切にする中国:言い換えれば、
「食らい付いたら離れない」
中国は、今の岸田派もずっと”手中に収めたまま”なのである。
しかし、政治家は政治資金規正法第22条により、外国人から献金を受けてはならない。
かつてこれに違反して民主党政権時代の前原誠司外相のように大臣ポストを追われた政治家もいる。
献金を受けてはならないなら、ではパーティー券購入はどうか。
そこに規定はなく、しかも20万円以下なら氏名も出てこない。
更に中国人と言っても、これを日本法人にし、代表者も中国名でなく日本の名前になっていれば、完全に”姿を隠す”ことが出来るのである。
だが、いざパーティーが開かれれば、真の購入者である中国の関係者が一斉に
「現れる」
というわけだ。
それが岸田派のパーティーなのである。
何故中国は、日本でビジネスのあらゆる場面に顔を出し、競争入札でもこれを落とし、行政にも食い込んでいるのか。
それこそ、政治資金パーティーをはじめ、あらゆる機会に政治家や派閥に恩を売り、気脈を通じているからに他ならない。
もし、特捜部が安倍派の裏金問題だけで捜査を終えるなら、
「中途半端」
との謗りは免れまい。
中国が何故ここまで日本の政治家を壟断しているのか:今回の問題をきっかけに外国勢力との異常な関係に踏み込み、弊害を正すことが出来るのは、東京地検特捜部だけである。
ターゲットが最高権力者の岸田文雄氏であることに怯むことなく、真の問題点を炙り出して欲しい。

【驚愕】岸田派の政治資金パーティーに大量の中国人!!宏池会はいつも在日中国人団体の主要メンバー達が参加!!寄付よりパーティー収入が増
https://www.youtube.com/watch?v=2P3C_PO7UL8

岸田派が就任後初パーティー…参加者2850人、手土産に「岸田ノート」と同じノート配布
2022/5/19 9:09
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220518-OYT1T50427/
自民党岸田派(45人)は2022年5月18日、東京都内のホテルで政治資金パーティーを開いた。
会長を務める岸田首相は、
「歴史の転換点に当たり、新しい時代を切り開くためには、政治の安定、政治の力が強みになる」
と述べ、2022年夏の参院選に向けた結束を呼び掛けた。
同派の政治資金パーティーは、岸田氏の首相就任後初めて。
首相は、参院選について
「日本の未来を切り開くために何としても勝たなければならない選挙だ」
と強調した。
パーティーには麻生副総裁や茂木幹事長、公明党の山口代表らが駆けつけた。
参加者は2850人で、昨年の党総裁選で首相が
「聞く力」
をアピールする際に使ったものと同型のノートが配られた。

パーティー券ザル法≠フ実態 外国人献金はNGなのに…購入は制限なし 会計上「事業収入」に「寄付と同じ扱いにする手も」
2023.12/14 14:50
https://www.zakzak.co.jp/article/20231214-CODLVHYJJBIPBBYMXS6UCPBKAA/
自民党派閥のパーティー券疑惑を巡っては、政治資金規正法の
「抜け穴」
が露呈した。
キックバック(還流)分を記載せず、裏金化していたことが焦点となっているが、他にも深刻な問題がある。
政治資金規正法では、外国人献金を禁じているのに対し、パーティー券購入の場合は制限がない。
ザル法≠フ実態を永田町関係者が語った。
政治資金規正法では、外国人や外国人が過半数の株式を保有する会社(上場5年未満)からの政治献金を禁じており、違反すれば3年以下の禁錮か50万円以下の罰金、罪が確定すれば公民権停止の対象となる。
政治や選挙への外国の関与や影響を防ぐための措置だ。
2011年3月、前原誠司外相(当時)の政治団体が京都市の在日韓国人女性から計25万円の献金を受けていたことが発覚し、前原氏は外相を辞任。
その後、別の外国人からの献金も明らかになった。
菅直人首相(当時)についても、資金管理団体への韓国籍男性からの献金疑惑が国会で追及された。
外国人献金は、閣僚が辞任に追い込まれるほどの重大問題となるが、パーティー券の購入については、外国人や外国法人を含めて購入者の制限はない。
パーティー券収入は会計上、
「事業収入」
となっているためだ。
政治資金収支報告書には、5万円以上の寄付に関し、寄付者の氏名や住所、金額など記載する義務があるが、パーティー券は20万円を超える収入でなければ記載は不要だ。
相場は
「1枚2万円程度」
とされるが、企業や個人側はパーティー券の購入記録を残す義務はなく、誰が買っているのか外部から確認するのは極めて難しい。
国会議員秘書の経験がある永田町関係者はこんな実情を明かす。
「パーティー券収入は、献金の別の窓口を作っているに等しい」
「議員側も企業に献金をお願いする際、『うちは外国人の社長だから』と断られても、『パー券がありますよ』と誘うこともできる」
「実際に、ある外国への影響力が強い議員のパーティーに、その国の関係者が多数参加することもよくある」
自民党の森山裕総務会長は2023年12月5日の記者会見で、政治資金規正法の改正も視野に、議論が不可欠との考えを示した。
政治資金に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授は
「政治資金規正法については企業献金の抜け穴になっているのが大きい問題だが、外国人によるパーティー券購入についてもザルだ」
「パーティー券は献金の枠の外側にある事業収入だが、目的は政治資金を得るためで、献金と見做してもおかしくない」
「一般的に議員がパーティー券を多く買う人に有利に動くこともあり得る」
「チェックはなかなか難しいが、まずはパーティー券も寄付と同じ扱いにするのも一手だ」
と指摘した。

「政治とカネ」本当の問題
正論2024年1月号 政策シンクタンク 原英史
「政治とカネ」
の問題が後を絶たない。
2023年8月、秋本真利外務政務官(当時)が受託収賄罪の疑いで検察の捜査を受けて辞任、2023年9月に逮捕、更に起訴されるに至った。
2023年11月には柿沢未途法務副大臣(当時)が違法なネット広告を勧めたことを理由に辞任し、その後、選挙買収の疑いでも捜査が進められていることが判明した。
更に、自民党の5派閥に関わる約4000万円の収入不記載なども問題になっている。
少し遡れば、2022年11月には寺田稔総務相(当時)が政治資金報告書や資産報告の記載漏れなどの問題で辞任に追い込まれた。
その翌月2022年12月は秋葉賢也元復興相が運動員買収の疑いなどを指摘され辞任した。
更にその前は、薗浦健太郎元首相秘書官(政治資金規正法違反で2022年に略式命令)、遠山清彦元財務副大臣(公庫融資の違法仲介で2022年に有罪判決確定)、吉川貴盛元農水相(収賄で2022年に有罪判決確定)、河井克行元法相および河井杏里元参議院議員(選挙買収でいずれも2021年に有罪判決確定)等々、挙げていくときりがない。
■ロッキードとリクルートを経て
「政治とカネ」
は古いテーマだ。
昭和・平成期から長年課題とされてきた。
かつてはしばしば、中選挙区制が元凶と指摘された。
1つの選挙区で同じ党の候補者が複数立候補するので、政策に大きな差がない以上、
「カネを配る」
で勝負することになる。
だから、政治にカネがかかり、そのため不健全に
「カネを貰う」
ことにも繋がった。
問題解消に向けた大きな動きは2度あった。
1度目は、昭和のロッキード事件が契機だ。
現職総理の収賄事件は国民に衝撃を与え、金権政治への批判は燃え上がった。
田中角栄首相の後を継いだ三木武夫首相は
「金にまつわる政治不信をなくすことは政治の使命」
と唱え、政治浄化に取り組んだ。
当初は
「企業献金の全面廃止」
を目指したが、自民党内の猛反発で断念。
それでも昭和50年、
「政治献金の上限額設定」(政治資金規正法法改正)

「選挙区内での寄付の全面禁止」(公職選挙法改正)
などが実現した。
選挙区内での寄付は、それ以前は
「当該選挙区に関して」
のみ禁じられていたが、如何なる名義をもっても禁止とされた。
2度目は、平成のリクルート事件が契機だ。
主要閣僚を含め各界を巻き込んだ収賄事件を機に、政治改革の機運は再び高まった。
更に佐川急便事件や自民党竹下派の
「経世会」
分裂などを経て、平成5年に非自民連立の細川護熙内閣が成立。
翌年平成6年
「政治改革4法」
が成立した。
「企業・団体から政治家個人への献金禁止」(政治資金規正法改正。平成5年改正で実質禁止、更に平成11年改正で全面禁止)、
「政党助成金の導入」(政党助成法制定)、
更に
「中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へ」(公職選挙法改正)
の制度改革も行われた。
大改革が断行され、元凶だったはずの中選挙区制も廃止された。
ところが、その後も
「政治とカネ」
問題はなくならない。
何故こうした事案は繰り返すのか。
答えは先に言ってしまえば、大改革の裏で
「抜け道」
がいくつも残され、
「カネを配る」

「カネを貰う」
の基本構造が温存されてきたからだ。
■「選挙買収」「陣中見舞い」
そんな状況を前に、メディアの報道ぶりは実に底が浅い。
具体的に見ていくと、まず柿沢前副大臣のケースは
「カネを配る」
側の事案だ。
柿沢氏が2023年2〜3月頃、地元の江東区議に1万〜20万円の現金提供(あるいは提供申し出)を行ったことが問題になっている。
東京地検特捜部は
「選挙買収」
との見立てだ。
2023年4月に行われた東京都江東区長選(自民党の推薦を得た前都議と元自民党衆議院議員の木村弥生氏が立候補し、柿沢氏は水面下で木村氏を支援)に関して木村氏支援を求め、その見返りにカネを渡したのではないかと見る。
これに対し、柿沢氏は、同じ日程で実施された区議選に関する
「陣中見舞い」
であって買収資金ではない、と説明している。
各紙報道は、
「選挙買収」

「陣中見舞い」
かーに焦点を当てている。
中には、捜査当局の見立てに乗っかり、ほぼ決め付けるような記事も目立つ。
例えば、2023年11月12日付産経新聞記事
「柿沢氏側が選別 江東区議に現金」
は、こんな具合だ。
・図1を掲げ、
「柿沢氏→一部の江東区議」
というカネの矢印と、
「一部の江東区議→木村区長」
という選挙支援の矢印を示す。
つまり、2つの矢印が繋がって、
「選挙買収」
だったのだろうという図。
・そして、見出しにもあるように、木村氏支援の区議を
「選別」
してカネを配ったことことを強調する。
これも、
「カネと選挙支援が連動したはず」
ということだろう。
・記事は最後に区議のこんな声を紹介して締めくくる。
「柿沢氏は意に沿う木村氏を当選させることで、地元の江東区を思いのままに動かそうとしたのではないか」
この記事は、結果的に正しかったことになるにせよ、捜査途上の段階では行き過ぎだと思う。
少なくとも産経新聞記事を見り限り、決定的な材料があるようには見えない。
「木村氏支援の区議を選別」
と強調しているが、もし純粋な
「陣中見舞い」
だったとしても、自らと関係良好な区議を
「選別」
して配るはずだ。
そして、柿沢氏と関係良好な区議が、柿沢氏と同じく木村氏を支援するのは自然なことだろう。
こうしてメディアは事件の争点だけに捉われ、
「選別」
など些末な事実究明に熱中し、一方で、大問題を見逃している。
「陣中見舞い」
などと称し
「カネを配る」
風習が未だに続いていることだ。
■「カネを配る」抜け道
「国政選挙の候補者、特に現職国会議員と地方議員や首長らとの間での現金のやり取りは、普通に行われている」
(中略)
「選挙区支部や政治資金団体を介して行われるこの金のやり取りは全くの適法である」
(中略)
「こうした団体間での金のやり取りは、与野党問わず日本全国の政治の風習であり、風習であるからこそ合法でもある」
実はこれは、河井克行元法務大臣の獄中日記(月刊「Hanada」2022年3月号)の一節だ。
河井氏は2019年参議院選挙(妻の安里氏が立候補)に際して地方議員に各数十万円の現金を提供し、大スキャンダルになった。
ここでも
「選挙買収」

「陣中見舞い」
かが争点になり、結局、有罪が確定して河井氏は収監された。
事案の経過はともかく、河井氏が上に引用した部分で述べていることは事実だ。
政治関係者の間では常識である。
こうして選挙区内で当たり前にカネを配っている実態こそが、事の本質ではないかと思う。
まず制度を確認しておくと、
「選挙区内での寄付」(有権者に金銭などを渡すこと)
は公選法で禁止されている。
先に触れた通り、ロッキード事件後に全面禁止された。
現金だけでなく、安価な記念品などでもアウトだ。
松島みどり法相(当時)はかつてうちわを配って辞任に追い込まれた。
それと比べれば、選挙区内の地方議員に数十万円のカネを配るなど、本来はあり得ないことのはずだ。
ところが、ここに
「抜け道」
がある。
公選法の条文上、
「ただし、政党その他の政治団体又はその支部に対し寄附をする場合は、この限りではない」
と定められている。
「国会議員の政治団体(政党支部など)から地方議員の政治団体にカネを配る」
との形を取れば、河井氏の言う通り
「合法」
になっているのだ。
「抜け道」
が設けられたのは、以前から
「陣中見舞い」
などの風習があったからだ。
選挙の際の
「陣中見舞い」
だけではない。
無事に当選すれば
「当選祝い」、
更に時候の挨拶のように夏は
「氷代」、
冬は
「餅代」
と称してカネを配る。
国会議員が地方議員にカネを配る風習は、中選挙区時代に広まって確立した。
これをやめるわけにはいかなかったのだ。
■封建秩序から脱却せよ
「抜け道」
と言っても、完全にセーフなわけではない。
「選挙区内の寄付禁止」
は適用されないが、
「選挙買収」(金銭の提供などによる票の獲得・誘導)
に該当すれば、話は別でアウトだ。
ただ厄介なことに、
「選挙買収」
かどうかの線引きは外形的に明確ではない。
柿沢氏の事案を例に考えても、
「区長選での支援要請」

「時候の挨拶」
かは、最後は本人たちの内心の問題で、判別は微妙だ。
だから、多くの政治家たちは万一にも選挙買収に問われないよう、カネを渡す時期などに十分注意し、危険なエリアには足を踏み入れず、上手く
「抜け道」
を通っているわけだ。
線引きが曖昧ということは、裏を返せば、本質的に大差ないということでもある。
「時候の挨拶」
としてカネを渡している数多くの国会議員たちは、決して口にはしないだろうが、本音では
「いずれ選挙で支援してくれる」
ことを期待しているはずだ。
受け取る側もそれは分かっているはずだ。
「いずれ選挙」
という時期が遠い先で、余計なことは口にせず、関係者に変なタレコミで陥れられないよう人間関係を大事にしていれば、
「選挙買収」
に問われることはない。
だが、実は
「カネで票を獲得」
していることに変わりはない。
思うに、日本の国会議員たちは戦国大名のようなものだ。
それぞれの地元において、いざ戦(=選挙)となれば馳せ参じる武将(=地方議員)たちを傘下に抱え、恩賞を与える(=カネを配る)。
恩賞が不十分だと、武将が寝返ったり、
「大名を取り換えろ」
と騒ぎになって追い落とされたりする。
だから、恩賞を十分与えることが重要だ。
この封建秩序を維持するため、公選法の
「抜け道」
は設けられてきた。
「カネを配る」
風習が続き、時に
「抜け道」
を上手に通れずアウト(選挙買収)になる事案も生じた。
河井氏や柿沢氏の事案を機に、今、本当に論ずべきことは、日本政治はそろそろ封建秩序から脱却すべきなのではないかだ。
公選法の
「抜け道」
を塞ぐべきではいか。
地方議員の活動費が必要ならば、封建的な仕組みではなく、公正・透明に党本部から配分する仕組みを作ったらどうか。
メディアは本来、こうした
「抜け道」
の問題を報じ、解決策を論ずべきはずだ。
残念ながら現状は、
「抜け道」
で転んだ政治家を叩くだけの低次元な役割しか果たしていない。
■「カネを貰う」抜け道
秋本真利前外務政務官の事案は、
「カネを貰う」
側の問題だ。
洋上風力発電事業を営む日本風力開発の元社長から、同社の事業に有利になる国会質問を行うよう依頼を受け、見返りに約7000万円の借り入れや資金提供を受けたとの容疑だ。
新聞各紙は揃って強く非難している。
「政治家が特定企業と癒着し、個人的な資金の提供を受けていた」
「それだけでも不適切なのに、国会質問で便宜を図るとは、国政を担う自覚を欠いているというほかない」
(2023年9月8日付読売新聞社説)
「国の政策に大きな影響を持つ国会質問が汚職事件の舞台となったこと自体、政治への信頼を裏切るものである」
(2023年9月8日付産経新聞主張)
いずれももっともな指摘だが、ここでもやはり見落とされている点がある。
一部政治家の
「自覚の欠如」
だけでなく、構造的な問題があることだ。
「7000万円」
という巨額なカネを通じた癒着ぶりに驚く人も少なくないだろうが、実はこのレベルの政治献金は政治の世界では当たり前だ。
自民党に限らず、例えば労組系の野党議員には労組からもっと高額の政治献金が単年度になされる例もある。
巨額のカネのやり取りは広くなされており、その中で、一部の政治家が露骨な見返りを求めるようなエラーを犯しているのだ。
「カネを貰う」
に関しても、やはり
「抜け道」
がある。
リクルート事件後の一連の改正で、
「政治家個人への企業・団体献金は禁止」
されたはずだ。
「政治家個人への個人献金は1人150万円以内」
に制限されたはずだ。
ところが、実際は図2に示すように複雑極まりないルールになっていて、上手くかいくぐれば巨額献金が出来てしまう。
・例えば、
「政党支部への献金」
という形を取れば、実質的には政治家個人への企業・団体献金が可能だ(資本金などに応じて、「年間総額750万円〜1億円の枠内」)。
個人献金は
「150万円」
の制限が外れ、
「年間総額2000万円の枠内」
で可能になる。
・献金する側で政治団体を作ってしまえば、政治団体間の寄付になり、
「5000万円以内」
まで可能になる。
大きな業界団体などでよく政治連盟を設けているのは、このルートを使うためだ。
・更に、受け取る側の政治家は通常、複数の政治団体を有している。
政党支部、資金管理団体の他、後援会などもある。
「5000万円以内」
などの制限は団体ごとなので、複数の受け皿を使えばその倍数で枠を拡大出来てしまう。
巨額の政治献金が全て不健全とは言わないが、やはり政策が歪められる温床になりやすい。
また、政治団体間でカネを回していると浄化される
「合法マネーロンダリング」
のような仕組みで、その間隙に
「裏金」
も生じやすい。
政治献金ルートは抜本的に見直すべきだろう。
「企業・団体献金の全面禁止」
は日本維新の会や共産党が提案しているが、より幅広く、簡易・明瞭で
「抜け道」
のないルールへの再設計を議論すべきだ。
■外国勢力の影響防止の観点も
同時に、政治にカネがかからなくすることも課題だ。
先に述べた
「カネを配る」
問題の解決はその1つだが、それだけではない。
例えば議員秘書の給与も、多くの国会議員にとって大きな負担だ。
制度上、公費で負担されるのは3人まで(政策担当秘書、公設第1秘書、公設第2秘書)だが、実際には、議員会館と地元選挙区で遥かに多くの私設秘書を抱えているケースが少なくない。
例えば10人の秘書を雇う国会議員には、10人分の給与を公費で出したらどうか。
国会議員は、公設秘書の数だけでなく、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の額などでも平等に扱われる。
確かに大ベテランも1年生議員も対等の
「国民の代表」
との建前はその通りだが、実際上、膨大な役割を果たす有力議員とそうではない議員の差は大きい。
前者の議員は多くのスタッフを使い、様々な経費をかけ、そのためにカネを集めなければならない。
果たす役割に応じて公設秘書数などは差があってよいのではないかと思う。
もちろん、その際、悪用防止の仕組み導入(勤務実績を開示し、有権者がチェックできるようにするなど)は不可欠だ。
最後に、
「カネを貰う」
制度の改善は、
「外国勢力の影響防止」
の観点でも早急な対処を要することを指摘しておきたい。
日本ではまだ危機感が乏しいが、米国や豪州ではこうしたルール整備が先行している。
日本では
「外国人・外国法人の献金禁止」
ルールはあるが、5年以上日本で上場すれば適用されないなど、ここにも
「抜け道」
がある。
加えて複雑な献金ルールを悪用されれば、巨額の献金で外国勢力の影響を受ける可能性も否めないから、要注意だ。
本稿執筆に際し、筆者が理事を務めるNPO法人万年野党と台湾の公民監督国会連名で共催する
「日本・台湾議会監視フォーラム第3回」(2023年11月15日)
での
「政治とカネ」
の討論を参考にした。
台湾では日本以上に
「外国からのカネ」
に対する危機感が強く、今後も情報交換が必要だ。

卑怯なパーティー禁止案
産経新聞 2024年6月16日 弁護士 北村晴男
立憲民主党は政治資金パーティー禁止法案を提出する一方で、岡田克也幹事長ら複数幹部がパーティー開催を予定していた。
彼らの心の内は
「政治には金が掛かる」
「政治資金パーティーは、政治家が支持を訴え、これに賛同する有権者から政治資金を集めるという民主主義の根幹を成すもので、これを禁止するのは間違いだ」
「しかし、禁止法案はきっと国民に受ける」
「これは絶対に成立しないから出そう」
というもの。
その証拠に批判を受けてパーティー中止に追い込まれた岡田氏は思わず、記者の前で漏らした。
「政治改革の議論が決着するまで控えた方がいい」。
パーティーを開くつもり満々である。
その心根は実に卑怯で、国民を愚弄するにも程がある。
それにしても立憲民主党の党利党略は目に余る。
国益を図る党なら、政治資金パーティーの必要性、有益性を説明すべきなのに、立憲民主党はむしろ禁止法案を出して政権批判の具に利用する。
戦前、ロンドン海軍軍縮条約に調印した内閣を、野党・立憲政友会の鳩山一郎(鳩山由紀夫元首相の祖父)や犬養毅が
「天皇の統帥権の侵略だ」
と猛烈に批判したのとよく似ている。
統帥権は軍の最高指揮官で、軍政に関わる軍縮条約とは無関係だが、鳩山らはそれを百も承知で軍部の暴論に乗り、批判。
その結果、軍部は限りなく増長を続け、政党政治は死滅し、日本は破滅の淵に追いやられた。
立憲民主党の行動原理もこれと寸分違わない。
彼らには国益のため立法府の義務を果たそうという使命感がない。
国会議員の究極の務めは、国民のため
「憲法を適切な改正により磨き続けること」
だが、その議論さえも避ける。
立憲民主党が提出した同性婚法制化の婚姻平等法もその例だ。
憲法24条は
「婚姻は、両性の合意のみに基いて・・・」
と定め、文言上、明らかに同性婚を想定していないから、法制化を目指すなら国会で憲法改正を発議し、国民投票に問うべきなのだが、それをしない。
先日の札幌高裁判決は憲法24条の文言を無理に解釈して同性婚を認めたが、国民の議論が大きく分かれる問題を、国会議員と国民ではなく裁判官個々の価値判断に丸投げするのは間違いだ。
自衛隊についても全く同じ。
最高裁は自衛権を認め、国民は自衛隊に信頼を寄せるが、多くの憲法学者は憲法9条を根拠に自衛隊を違憲とする。
この条文が放置されることで、憲法の権威は著しく傷付いている。
常に必要な改正をし、条文を磨き上げてこそ、憲法への信頼が保たれる。
だが、立憲民主党は衆参の憲法審査会でもサボタージュを続ける。
「立憲」
と名乗りながら、憲法の権威を傷付け続けるとは、何をか言わんやである。

<主張>パーティー禁止 立民の姿勢はちぐはぐだ
社説
2024/5/29 5:00
https://www.sankei.com/article/20240529-EY3OWUHTL5KXHNCXOO3BPOXJUQ/
初めから与党に否決されることを見越して厳しい内容の法案を出し、世間にいい顔をしたかっただけではないのか。
立憲民主党は政治資金パーティーを全面的に禁止する法案を衆院に提出する一方で、党幹部がパーティーを開催したり、予定したりしていた。
批判されると慌てて取りやめた。
現時点でも党所属議員に全面禁止しているわけでもなく、立民の姿勢は分かりにくい。
安住淳国対委員長は、全面禁止の方針を決めていた2024年4月にパーティーを開いた。
その後も、岡田克也幹事長が2024年5月、大串博志選対委員長が2024年6月に開催を予定していた。
岡田、大串両氏は批判を浴びて中止したが、当初は法案の成立、施行前の段階では、自粛する必要はないとの考えを言い張っていた。
立民は2024年5月27日に協議し、一部役員のパーティー開催を当面自粛することにした。
だが、それ以外の大多数の党所属議員については、開催を容認した。
本当に理解に苦しむ話だ。
パーティーをしたいなら、法案を取り下げたらどうか。
衆院政治改革特別委員会で自民党の山下貴司元法相は、岡田氏が20年以上に渡り総額18億円のパーティー収入を得てきたことを明らかにし、禁止すべき根拠を問いただした。
立民はパーティーの開催が政治を悪くしていると考えて禁止法案を出したのなら、直ちに全議員に開催を自粛させるのが自然である。
全面禁止を訴える以上、率先して範を垂れるべきである。
日本維新の会の馬場伸幸代表が
「国民の信頼を得られるかどうかは、有言実行かどうかだ」
「立派なことを言うが、なかなかやらない」
と立民を批判したのはもっともだ。
やるつもりもなかったことを定めた法案を提出するのは、立民への信頼を失わせるのみならず、国会審議の形骸化に繋がる。
維新は、国会議員に月額100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)について使途公開を訴えており、関連法案が成立していなくても実行に移している。
共産党は、政党助成金制度の廃止を主張し、受け取っていない。
立民は維新や共産を見習わなければ、国民の信頼を得ることはできまい。

立民が代表や幹事長ら執行役員の政治資金パーティー開催を当面自粛
2024/5/27 19:02
https://www.sankei.com/article/20240529-EY3OWUHTL5KXHNCXOO3BPOXJUQ/
立憲民主党は2024年5月27日、党の執行役員による政治資金パーティー開催を当面自粛する方針を決めた。
同日の執行役員会で確認し、岡田克也幹事長が記者団に明らかにした。
代表や代表代行、幹事長、国対委員長、選対委員長、政調会長らが該当する。
執行役員以外に関しては、各議員に開催の可否の判断を委ねる。
立民は政治資金パーティー開催禁止法案を国会に提出している。
岡田氏ら幹部がパーティーを予定していたことが言行不一致として批判され、開催見送りを決める動きが広がっていた。

泉氏反省「国民に違和感」 立民幹部のパーティー巡り
2024/5/26 18:03
https://www.sankei.com/article/20240526-AOBZS7NARZL3HM7PVOUX2DTF6M/
立憲民主党の泉健太代表は2024年5月26日、岡田克也幹事長ら党幹部による政治資金パーティーの開催と中止を巡る経緯に触れ
「多くの国民に疑問や違和感を覚えさせた」
と反省した。
京都府福知山市で記者団に、自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受けて立民が国会提出したパーティー開催禁止法案の審議中であることを考慮し、幹部間で協議したと明かした。
2024年5月27日の党執行役員会で、党幹部のパーティー開催について改めて議論する考えも示した。
岡田氏は2024年5月26日、仙台市で開かれた党会合で中止を決めた理由を説明した。
「仲間に『パーティーを開くべきではない』と言うつもりは毛頭ない」
と述べ、幹事長としての判断だと強調した。
岡田氏と大串博志選対委員長は2024年5月25日、開催を予定していたパーティーの中止を発表した。
泉氏は2024年5月24日の記者会見で
「法案提出時点で『禁止しないと駄目だ』というのは現実的ではない」
と開催を容認していた。

立民・大串博志選対委員長も都内で予定していたパーティーを中止 岡田克也幹事長に続き
2024/5/25 18:30
https://www.sankei.com/article/20240525-VO2EGXJEZRJXRORYTYUE4VUWWU/
立憲民主党の大串博志選対委員長は2024年5月25日、東京都内で2024年6月17日に予定していた自身の政治資金パーティーパーティーを中止すると発表した。
立民議員のパーティーを巡っては、立民が提出しているパーティー開催禁止法案との整合性を疑問視する声が上がっており、岡田克也幹事長も2024年5月25日、大阪市で2024年5月27日に開催予定だった自身のパーティーを中止すると表明した。

立民・岡田克也幹事長が開催2日前にパーティー中止を表明 「政治改革決着するまで」
2024/5/25 14:49
https://www.sankei.com/article/20240525-KRRU7ZPI5NMWZNPXUDZFXIVVAY/
立憲民主党の岡田克也幹事長は2024年5月25日、大阪市で2024年5月27日に開催予定だった自身の政治資金パーティーを中止すると表明した。
青森市で記者団に
「政治改革の議論が決着するまで控えた方がいい」
と述べた。
立民のパーティー開催禁止法案提出に伴う自粛の必要性はないとの考えを2024年5月24日に示していたが、翻意した。
岡田氏や党幹部のパーティー開催を巡っては、立民提出法案との整合性を疑問視する声が上がっている。
岡田氏は
「政治改革に熱心ではないという印象を与えている」
と語った。

<産経抄>政治資金パーティーを禁止は、別の金策手段探るだけ
2024/5/25 5:00
https://www.sankei.com/article/20240525-6HRD2OBYUVP2RF6LJHSTFVGMRM/?929035
法律や条例の必要性や正当性を根拠付けるデータなどを「立法事実」という。
耳慣れない言葉だが、立法府である国会ではよく飛び交う。
2024年5月24日の衆院政治改革特別委員会では自民党の山下貴司氏が、政治資金パーティー開催禁止法案を提出した立憲民主党側に質していた。
▼山下氏は立民の岡田克也幹事長が20年以上に渡り政治資金パーティーを開き、総額18億円以上の収入を得ていることを指摘した上で、こう問うたのだった。
「売り先との癒着や賄賂性など、禁止すべき立法事実があったということか」。
確かにそうした問題がなければ、パーティーを禁止する理由がない。
▼立民では、大串博志選対委員長が2024年6月17日にパーティーを開くことを予定している。
「法律が通ったらやらない」
と述べているが、不成立を前提としているとしか思えない。
山下氏は2024年4月25日に安住淳国対委員長が会費2万円の朝食会を開催し、2024年5月27日には岡田氏がやはり会費2万円の昼食会を催す予定であることも紹介した。
▼朝食会、昼食会も実質的にパーティーと同じ政治資金集めの場である。
一方でパーティー禁止を求めておきながら、なぜこんな矛盾した振る舞いをするのか。
自民の長尾たかし前衆院議員が月刊『Handa』2024年4月号に赤裸々に記していた。
「私的流用するほど事務所経費に余裕はありませんでした」
▼事務所運営費、秘書給与、固定費の補塡、交通費、会合費…など事務所経費は火の車で、長尾氏の持ち出し分は1千数百万円以上だという。
こんな現状を放置してパーティーだけ禁じても、別の金策手段を探るしかない
▼本当に禁止すべきは外国勢力から干渉、影響を受けかねない外国人によるパーティー券購入である。

岡田幹事長パーティー開催認める「自民はやり放題、自分たちの手を縛ると競争にならない」
2024/5/24 20:14
https://www.sankei.com/article/20240524-KN4LV7JR6ZJLVJBSWH7LHLQGYI/
立憲民主党の岡田克也幹事長は2024年5月24日、国会内で記者団の取材に応じ、会費2万円の自身の政治資金パーティーを2024年5月27日に大阪市で開催すると明らかにした。
立民は自民党派閥パーティー収入不記載事件を受けてパーティー開催禁止法案を国会に提出しているが、岡田氏は法案が成立、施行されていない現時点で自粛の必要はないとの認識を示した。
また、自民の山下貴司元法相は2024年5月24日の衆院政治改革特別委員会で、立民の安住淳国対委員長も2024年4月25日に会費2万円の朝食会としてパーティーを開催したと指摘した。
岡田氏は記者団に、パーティーは三重県四日市、津両市と東京、名古屋、大阪で毎年開いていると説明。
「自民がパーティーをやり放題の中で、自分たちの手を縛ると競争にならない」
と述べた。
「我が党でパーティーを実施していない方もいる」
「都会では可能だと思うが、地方では難しい」
とも語った。
2024年5月24日の特別委では、立民の法案提出者の本庄知史衆院議員が
「政治資金や選挙のルールは、各党、各議員、各候補者にとって同一、同等の条件であるべきだ」
などの理由から、現時点で所属議員にパーティー自粛を求めないのが立民の方針だと説明した。
その上で
「パーティーそのものが政治不信の原因だ」
「禁止こそが信頼回復の唯一の方策だ」
と訴えた。
立民では、大串博志選対委員長も2024年6月17日にパーティーを予定していることが明らかになっている。

法案施行前のパーティー禁止せず 立民・泉氏、大串氏を擁護 「現実的ではない」
2024/5/24 13:11
https://www.sankei.com/article/20240524-PD4BE37OKJPCLECMC4LRADVKXA/
立憲民主党の泉健太代表は2024年5月24日の記者会見で、同党が提出した政治資金パーティー開催禁止法案を巡り、施行されるまでは禁止するものではないと説明した。
大串博志選対委員長が2024年6月に開催を予定していることに関しても
「法案を提出した時点で、禁止しないと駄目だというのは現実的ではない」
と擁護した。
泉氏は
「ルールが違う状況で戦うのは公平だとは言えない」
と述べ、各党が同じ条件で禁止する必要があるとの認識を示した。
自身が開催する予定は現時点ではないとした。
立民の政策活動費は
「最後の執行が2年前で、それ以降はない」
と語った。
公明党の石井啓一幹事長は会見で
「禁止を主張するのであれば、自ら実践すべきではないか」
と苦言を呈した。

「パーティーそのものが政治不信」と立民議員 ただし幹部にはパーティー開催の指摘
2024/5/24 11:38
https://www.sankei.com/article/20240524-WLCHLXH3CFKVXGOIWLFMIA6TSM/
立憲民主党の政治資金パーティー開催禁止法案を提出した本庄知史氏は2024年5月24日の衆院政治改革特別委員会で
「パーティーそのものが政治不信の原因だ」
「禁止こそが信頼回復の唯一の方策だ」
と述べた。
ただ、立民では大串博志選対委員長も2024年6月17日にパーティーを予定していることが明らかになった。
この日の政治改革特別委では岡田克也幹事長が2024年5月27日に会費2万円の
「昼食会」
を予定し、安住淳国対委員長は2024年4月25日に会費2万円の
「朝食会」
を開催したことを自民党議員が指摘した。

立民・岡田幹事長と安住国対委員長がパーティー開催 自民議員が政治改革特別委で指摘
2024/5/24 11:29
https://www.sankei.com/article/20240524-BKVP7Q6P3FJZHKQIR6XYHD4AR4/
自民党の山下貴司元法相は2024年5月24日午前の衆院政治改革特別委員会の質疑で、政治資金パーティーに関し、立憲民主党の岡田克也幹事長が2024年5月27日に会費2万円の
「昼食会」
として予定し、安住淳国対委員長は2024年4月25日に会費2万円の
「朝食会」
として開催した、と指摘した。
その上で、自民派閥パーティー収入不記載事件を受けて立民が提出し、特別委で審議中の
「政治資金パーティー開催禁止法案」
について、政治活動を行う上で現実的ではないと主張した。
立民の法案提出者の本庄知史氏は、岡田、安住両氏のパーティー開催を否定せず、
「2つのパーティーは現行法に基づいて適法に行われている」
と応じた。
山下氏は
「責めているつもりは全くない」
「(開催は)当たり前のこと」
と強調。
岡田氏の政治資金収支報告書によれば、パーティー収入は(私設秘書らの)人件費や事務所費など必要経費に使われていると指摘し、
「パーティーを禁止してしまうと、政治活動に大きな制限を加える」
と主張した。
本庄氏は、
「政治資金や選挙に関するルールは、各党、各議員、各候補者にとって同一、同等の条件であるべきだ」
などの理由から、禁止法案の成立・施行前に所属議員にパーティー自粛を求めないのが立民の方針だと説明した。
政治の信頼回復のため、パーティーを禁止すべきだと改めて訴えた。
立民では、大串博志選対委員長も2024年6月17日にパーティーを予定していることが明らかになっている。
禁止法案を提出する一方で党幹部が開催する状況に、与野党から整合性を疑問視する声が上がっている。

パーティー禁止法案提出も開催予定の立民・大串博志氏「法律が通ればやらない」 一問一答
2024/5/23 11:20
https://www.sankei.com/article/20240523-65IRMKRB25EU3FNU6M3JG5QPQM/
立憲民主党の大串博志選対委員長は自身の政治資金パーティーの開催を2024年6月に東京都内で予定していることを巡り、産経新聞の取材に
「法律が通ったらやらない」
と述べ、立民が衆院に提出した政治資金パーティー開催禁止法案が成立するまではパーティーの開催を継続する考えを示した。
主なやり取りは以下の通り。

ーー2024年5月20日に立憲民主党は政治資金パーティー開催禁止法案を衆院に提出したが、大串氏は2024年6月に政治資金パーティーを予定している
★大串博志選対委員長
定期勉強会として計画している。
今のところ、やる計画をしている。
その上で、我々は企業・団体献金、それから政治資金パーティーを禁止する法案を出している。
これがきちんと法律になった場合には、やらない。
ーー党として政治資金パーティーの開催に反対しているにも関わらず、党幹部として率先垂範していないのでは
★大串博志選対委員長
我々は法律を出して、法律が通れば(政治資金パーティーを)やらないというスタンスを明確にしている。
そのことは率先垂範してやっていくつもりだ。
法律が通れば、やらない。
ーー政治資金パーティーを無くそうと旗振る立民の幹部がパーティーを開くことに疑問が生じる
★大串博志選対委員長
企業・団体献金の禁止、政治資金パーティーを禁止する考え方を発表した時に『法律が通る前に(パーティーを)やらないという考え方はあるのか』と私以外の党幹部も尋ねられたことがある。
それに対して我々は『法律が通ったらやらない』という考え方を示している。
ーー法律が通る前はパーティーを続けるということか
★大串博志選対委員長
皆で制度として金のかからない政治を作っていこうというのが我々の提案だ。
これが制度として法律が通った場合にはやらない。

政治資金パーティー禁止法案提出の立民、大串博志選対委員長がパーティー開催へ
2024/5/23 10:19
https://www.sankei.com/article/20240523-WNCZQVCPI5ETXBIGRP2KHNN3SE/
立憲民主党の大串博志選対委員長が政治資金パーティーの開催を予定していることが2024年5月23日、分かった。
パーティーの開催自体は適法とはいえ、立民は自民党の派閥パーティー収入不記載事件を受けて政治資金パーティーの開催を全面的に禁じる法案を衆院に提出した経緯がある。
党で開催禁止を謳った政治資金パーティーを党幹部が開催することについて、整合性が取れるのかどうか疑問視される状況だ。
大串氏の政治資金パーティーは2024年6月17日に東京都内のホテルで開かれる。
案内状には政治資金規正法に基づく政治資金集会と記されており、会費は昼食付で2万円。
「混迷する国内外の情勢について知見を深める機会を頂きたく、定例の勉強会を開催する」
と案内されている。
立民が2024年5月20日に衆院に提出した政治資金パーティー開催を禁じる法案は
「何人も、政治資金パーティーを開催してはならない」
と定めており、開催した場合は1年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金などの罰則が科される。
法案の提出に関して立民のホームページ(HP)は
「今回の政治とカネの問題は、自民党の派閥の政治資金パーティーの裏金問題に端を発しており、政治資金パーティーの開催を規制するのは国民感情にかなっています」
と説明している。
大串氏は産経新聞の取材に
「定期の勉強会として計画している」
と述べた上で、
「(与野党議員)皆が制度として、お金のかからない政治を作っていこうというのが今回の我々の提案だ」
「これが制度として法律が通った場合にはやらない」
と語った。
政治資金パーティーを巡っては、大串氏以外にも開催を予定する立民議員がいるとみられる。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/654.html#c34

[政治・選挙・NHK294] 「#萩生田百合子」がSNSで猛拡散!外苑再開発めぐるズブズブ癒着と利権が都知事選の一大争点に(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
20. 秘密のアッコちゃん[396] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月20日 07:53:34 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[509]
<■78行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
<産経抄>意味するものは、中国ネットの「過去削除」    
2024/6/20 5:00
https://www.sankei.com/article/20240620-LUMWQXR34JNOBBLJUS7TIU46MM/
松本清張に『削除の復元』と題した短編がある。
森鷗外の過去に迫る推理もので、導入部から謎に満ちている。
鷗外が陸軍軍医として福岡・小倉にいた頃、つけていた日記の中に、なぜか数行に渡って消された痕跡があり…。
▼主人公は浮かび上がったある女性の影をたどり、文豪には公にできない遺児≠ェいたのでは、と疑う。
謎解きの行方は作品を読んで頂くとして、題材は世上に評伝が溢れる鷗外である。
その生涯の機微に踏み込んだ、大胆な設定に驚く。
▼削除は史実か虚構か、当方は寡聞にして知らない。
いずれにせよ、何が隠されているのか余計な想像を巡らせずにはいられない。
では、海を挟んだあちらの国で今進行中の
「削除」
は何を意味するのだろう。
中国のネット上から、過去のニュース記事などが大量に消えている。
▼1990年代から2000年代までの中国語サイトの多くが、跡形もないと聞く。
例えば習近平国家主席が福建省長などを務めた頃の事績は、何も検索できないらしい。
もとより当局の監視下にあるネット空間だが、深刻の度が増したように映る。
▼米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が一因に挙げる
「政治的な理由」
に頷く。
顕著な例が天安門事件だろう。
歴史を語る口に封をし、
「無かったこと」
にする当局の思惑が透けて見えるのだ。
全ての歴史が体制礼賛の色になり、国民の頭の中まで染めてしまうのが怖い。
▼歴史は本来、不断の検証が欠かせぬものだろう。
史実に基づいた認識が広く共有されてこそ、言論の空間も成り立つ。
体制に否定的な声、都合の悪い事実が全て消された先に待つものは何か。
かの国と腹を打ち割るような関係が、更に遠のいたのは疑いない。

中国で進む「ネット崩壊」 過去サイトを大量削除、過剰検閲か アリババ創業者の情報消失
2024/6/18 11:00
https://www.sankei.com/article/20240618-JLT2536UBFNEPDSEPVLLQUKTZQ/
「中国語のインターネット崩壊が加速中」と書かれた「微信」の投稿。現在は削除されている(米国のネット情報保存サイト「ウェイバックマシン」から)
https://www.sankei.com/article/20240618-JLT2536UBFNEPDSEPVLLQUKTZQ/photo/WOKODDHXKNNZ5KC556DLE35Z7Q/
中国のインターネット上から過去のニュースや交流サイト(SNS)の投稿などが大量に削除されている。
1990年代から2000年代までの中国語ページの多くがなくなっているようだ。
「国家安全」
の名の下に共産党一党独裁体制の強化を図る習近平政権が、過去に遡って
「過剰な検閲」
を行い、不都合な情報を消し去ったとの見方が出ている。
ネット空間に蓄積されていた数々の記録が、中国で静かに消し去られている。
■「中国語のインターネット崩壊が加速中」
2024年5月、中国の通信アプリ「微信(ウィーチャット)」でこんな投稿が拡散した。
1998年から2005年までにネットにアップされたニュースやブログ、掲示板、SNSなどの情報がなくなっているとの内容だ。
例に挙げられたのが、電子商取引最大手アリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏の情報だ。
グループが躍進したこの時期には馬氏の情報が無数にアップされていたはずだが、中国の大手検索サイト「百度(バイドゥ)」では1件しかヒットしなかったという。
馬氏は共産党と確執があるとされた人物だ。
他にも、IT大手 腾讯控股(テンセント)創業者の馬化騰氏や、通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)創業者の任正非氏らの過去の情報が削除されていた。
「モバイル回線が出現する前のコンテンツの99%以上が消滅した」
「1970〜1980年代生まれは自分の歴史を検索できない」
■圧力を強める習政権
一般に、情報のアーカイブ(保存)にはサーバー運営費など多額のコストがかかるため、経済的負担を軽くするために過去のデータを削除することはある。
だが、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、中国での過去情報の削除には
「政治的な理由」
もあると指摘する。
権威主義的傾向を強める習近平政権はニュースサイトやSNSへの検閲圧力を強めており、
「サイバー空間を政治的、文化的に純粋に保つことは共産党の最重要課題」
になっているためだ。
同紙は1990年代半ばから2000年代半ばについて、この時期に福建省長などを務めた習近平国家主席を
「百度」
で検索したが、結果はゼロ件だった。
現在ほど締め付けが強くなく、ジャーナリストが比較的自由に取材できたとされる四川大地震(2008年)を2008〜2009年で検索したところ、ほぼ官製メディアの記事しか残っていなかった。
中国ネット空間の縮小は数字にも表れている。
ネットの利用状況などを調査する中国の公的機関「中国インターネット情報センター」(CNNIC)によると、中国のネットユーザーは年々増え、2023年末で約10億9200万人。
他方、ウェイブサイト数は2017年の533万から2023年の388万へと大きく減少した。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/655.html#c20

[政治・選挙・NHK294] <郷原信郎氏「新たな大ウソ」>小池百合子「キャスター時代、アラビア語でのインタビューを生放送で何度も行いました」 赤かぶ
29. 秘密のアッコちゃん[397] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月21日 07:40:38 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[510]
<■166行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
<主張>露朝同盟の成立 日本への脅威が高まった ウクライナ侵略加担許されぬ
社説
2024/6/21 5:00
https://www.sankei.com/article/20240621-7UOQPKA5MVNMPFMF5F2EEZ3H5U/
ロシアのプーチン大統領が北朝鮮を訪問し、金正恩朝鮮労働党総書記との間で、有事の軍事的相互援助などを謳う
「包括的戦略パートナーシップ条約」
に署名した。
ウクライナを侵略するプーチン氏と核・ミサイル戦力強化に走る金氏という2人の独裁者による露朝同盟の成立である。
ウクライナ情勢の悪化を懸念するだけでは済まない。
台湾有事、朝鮮半島有事への悪影響を含め、日本にとって両国の脅威が格段に高まるからである。
岸田文雄政権は深刻に受け止め、北方の防衛態勢強化にも急ぎ乗り出してもらいたい。
事態を国民に説明することも必要だ。
■所要防衛力の再検討を
露朝両国は核武装し、平然と国際法破りを繰り返す専制国家である。
隣国日本にとって、両国が軍事的に結託する危険性は、どんなに強調してもし過ぎることはない。
露朝の新条約の中身は正真正銘の軍事同盟である。
朝鮮中央通信によれば、いずれか一方に対し、武力侵略行為となり得る直接的な脅威が確認されれば、
「脅威を取り除く」
ための実践的措置を遅滞なく協議すると定めた。
更に、一方が戦争状態になれば、国連憲章第51条が規定する集団的自衛権などに基づき、遅滞なく軍事的、またはその他の援助を提供すると約定した。
1961年締結の
「ソ朝友好協力相互援助条約」
とほぼ同じだ。
同条約に基づく同盟は、ロシアが韓国と国交を結んだことで1996年に失効していた。
28年ぶりの同盟復活となる。
プーチン氏は
「北朝鮮との軍事技術協力を排除しない」
と述べ、金氏は
「新たな高い水準の同盟関係に引き上げられた」
「軍事分野を含む協力進展に繋がる」
と強調した。
日本は更なる抑止力向上を迫られることになった。
北朝鮮によるミサイル攻撃や朝鮮半島有事の展開次第では、自衛隊の防衛出動はあり得る。
その際、ロシア軍の対日攻撃に備えざるを得ない。
中国による台湾侵攻を巡っても、北朝鮮軍が日米韓などへ陽動行動を取ってくれば、ロシア軍がそれに連動して敵対行動を挑んでくる恐れがある。
台湾有事の際、自衛隊は北海道や本州の部隊を九州や南西諸島方面へ展開させる方針だが、ミサイル防衛を含め、北方など対露防衛へ十分な備えを残す必要性が高まったと言える。
林芳正官房長官は会見で
「我が国を取り巻く安全保障環境に与える影響の観点から、深刻に憂慮している」
と語った。
本当に憂慮するのであれば、実際の対応が欠かせない。
岸田政権は安全保障関連3文書を改定して、相手国の軍事的
「能力」
に備える防衛力整備という現実路線へ転換した。
露朝同盟の登場で、これまで必要と見積もった防衛力では十分に対応できるのか疑わしい。
防衛省や国家安全保障局は所要防衛力を柔軟に見直すべきである。
■首相は対応を表明せよ
非道なウクライナ侵略を激化させる恐れもある。
ブリンケン米国務長官は、プーチン氏訪朝をウクライナ侵略を続けるために、必要な武器を提供できる国との関係強化に必死になっていると批判した。
既に北朝鮮は、ロシアに数百万発もの砲弾や弾道ミサイルなどを輸出した。
ロシアは見返りとして、偵察衛星やロケットなどの高度な技術を供与しているとされる。
露朝は同盟樹立を契機に兵器・技術取引を加速するだろう。
北朝鮮を相手とする武器弾薬の調達や供給は、ロシア自身も賛成した国連安全保障理事会決議への明白な違反だ。
金氏はプーチン氏との会談で、ロシアのウクライナ侵略への
「全面的な支持と連帯」
を表明した。
ロシアは自国をウクライナから攻撃されている被害者と言い張っている。
このような歪んだ理屈に従って露朝の新条約を解釈すれば、北朝鮮が集団的自衛権を盾に、弾薬、ミサイルの供給を増やしたり、ウクライナの戦線へ北朝鮮軍を派兵したりすることが起きかねない。
北朝鮮による対露軍事支援も、ロシアによる北朝鮮の核・弾道ミサイル戦力の強化支援も世界の平和を乱すもので、到底容認できない。
岸田首相は記者会見などの機会を利用し、露朝同盟の危険性と日本の対応について、率直に語るべきである。

北朝鮮、朝露新条約の全文公開 「有事の軍事支援」記載が28年ぶりに復活
2024/6/20 16:52
https://www.sankei.com/article/20240620-V2RLUE5OSVIN7M5DKQLXN443OQ/
北朝鮮の朝鮮中央通信は2024年6月20日、金正恩朝鮮労働党総書記とロシアのプーチン大統領が2024年6月19日に署名した
「包括的戦略パートナーシップ条約」
の全文を公開した。
互いの有事には
「軍事援助を提供する」
との文言が、1996年に失効した北朝鮮・旧ソ連間の旧条約以来28年ぶりに復活し、朝鮮半島有事のロシアの介入に道を開く内容となった。
条約は23条で構成され、無期限に効力を有すると規定。
第4条には、一方の国で有事が発生した際は、集団的自衛権を規定した国連憲章と両国の法律に従って
「遅滞なく自らが保有する全ての手段で軍事その他の援助を提供する」
と明記された。
1961年に北朝鮮と旧ソ連の間で結ばれた友好協力相互援助条約にもほぼ同じ文言で有事の
「自動軍事介入」
が規定されていたが、2000年の露朝条約では自動介入条項が削除されていた。
韓国の聯合ニュースは
「両国間の同盟関係が28年ぶりに復元された」
と報道。
韓国・北韓大学院大の梁茂進(ヤンムジン)教授は
「事実上、朝ソ同盟が復活したといえる」
との見方を示した。
一方、ラブロフ露外相は2024年6月20日、ロシアメディアのインタビューに対し、第4条は一方の国が侵攻を受けた際の支援を規定した
「全面的に防御的な立場」
を示したものに過ぎないと説明した。
第4条には軍事支援の可否判断に当たり、
「両国の法律に従う」
との文言が追加されたことで
「ロシアが米朝紛争への介入を回避する余地を残した」
との指摘もあり、
「自動軍事介入」
条項に当たるか解釈が分かれている。
この他、第8条には防衛能力強化を目的に
「共同措置を取るための制度を設ける」
ことも盛り込まれた。
一方、過去の条約には南北の平和統一をロシアが支持する内容が含まれていたが、今回の新条約は記載がなかった。
韓国を
「最早同族ではなく(南北は)敵対する2つの国家」(金総書記)
とする北朝鮮の新たな国家観が反映された形だ。
2024年6月19日の共同記者発表で金総書記は、新条約を通じ露朝関係が
「新たな高い水準の同盟関係に達した」
と表明。
プーチン氏は、新条約が
「軍事技術協力を排除しない」
内容だと説明していた。

露朝首脳が戦略パートナー条約締結、協力レベル格上げ プーチン氏「軍事技術協力排除せず」
2024/6/19 20:07
https://www.sankei.com/article/20240619-7WZRVM73EVMSTOURXSSMH64J34/
ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は2024年6月19日、平壌で会談し、露朝の安全保障協力の拡大などを定める
「包括的戦略パートナーシップ条約」
に署名した。
露朝は協力レベルを格上げし、ウクライナ侵略と核・ミサイル開発を巡ってそれぞれ対立する欧米諸国に対抗する構えを鮮明にした。
タス通信によると、プーチン氏は会談後の共同記者発表で
「署名された条約に基づき、ロシアは北朝鮮との軍事技術協力を排除しない」
と表明。
条約には
「一方が攻撃された場合の相互支援も規定している」
と述べた。
一方、金氏は露朝間で
「最も強力な条約」
が署名されたとし、両国の協力は
「同盟としての新たな高いレベル」
に引き上げられたと強調。
プーチン氏について
「北朝鮮国民の最も大切な友人」
とし、
「卓越した先見性」
により条約締結を実現させたと評価した。
金氏はウクライナ侵略への
「全面的な支持と連帯」
を表明。
プーチン氏は謝意を示し、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁について
「見直す必要がある」
とも語った。
ロシアはウクライナ侵略で使用する弾道ミサイルや砲弾を北朝鮮から供与される見返りに、軍事技術を北朝鮮に提供しているとの観測が強い。
北朝鮮がロシアから自国製兵器の実戦使用データを受け取り、兵器改良に活用している可能性も指摘されている。
露朝の軍事協力の拡大は、北朝鮮と対峙する日本にとっても脅威となる。
両首脳はこの日、政府高官らを交えた形式や1対1形式の会談を行い、国際情勢や安全保障問題を協議。
その後、条約などの共同文書に署名した。
プーチン氏の訪朝は2000年以来24年ぶりで、金正恩体制下で初めてとなった。
プーチン氏は2024年6月19日、平壌から次の外遊先であるベトナムに移動。
2024年6月20日に同国の最高指導者グエン・フー・チョン共産党書記長らと会談する予定。

主張
北朝鮮の挑発 国際社会は結束し対抗を
2024/1/11 5:00
https://www.sankei.com/article/20240111-YLMUW43F2JI6JDKTMHAL5FHUYA/
北朝鮮が挑発姿勢を強めている。
金正恩朝鮮労働党総書記は韓国を主敵と強調し、
「戦争を避ける考えは全くない」
と述べた。
韓国が北朝鮮に武力行使を企てれば
「大韓民国を完全に焦土化する」
と語った。
北朝鮮メディアが2023年1月10日、報じた。
これに先立ち、北朝鮮は2023年1月5日から3日連続で韓国との海上の軍事境界線にあたる北方限界線付近へ砲撃を行った。
韓国側に被害はなかったが、住民が一時避難した。
韓国軍は対抗措置として砲撃訓練を実施した。
2023年4月の総選挙を前に韓国の尹錫悦政権を揺さぶる思惑が指摘されている。
この海域は2018年の南北軍事合意で砲撃が禁じられたが、北朝鮮は2023年11月に合意破棄を宣言していた。
北朝鮮の挑発行為は到底容認できない。
国際社会は警戒を怠ってはならない。
金氏は2023年末の党の重要会合で、韓国を
「敵対国、交戦国の関係」
と位置付け、半世紀に渡って掲げてきた同じ民族同士が平和的に南北統一するという政策を転換した。
一連の挑発的な言動には、ロシアや中国という後ろ盾を得ていることが大きい。
米政府は北朝鮮がロシアに短距離弾道ミサイルを提供し、その一部がウクライナへの攻撃に使用されたことを明かした。
日米欧など48カ国と欧州連合(EU)の外相は共同声明で、北朝鮮の弾道ミサイルを使ったウクライナへの攻撃に関し
「可能な限り強い言葉で非難する」
と表明した。
ロシアが実戦で使用したことにより、北朝鮮は技術的な知見を得ると指摘し、露朝の軍事協力がインド太平洋地域などの安全保障に与える影響を深く懸念するとした。
米国は国連安全保障理事会で、ミサイル提供を含む北朝鮮の複数の安保理決議違反について追加制裁を求める方針だ。
だが、安保理はウクライナ侵略を巡り、米欧対ロシア、中国の対立で分断状態にある。
北朝鮮の決議違反に、ロシアや中国は擁護に回ることが予想される。
採択が困難でも、日米韓欧は、非難声明や追加制裁決議案などの議論を主導すべきである。
国連総会とも連動し、対北決議案で拒否権を行使した国に、理由を説明させることも求められる。
北朝鮮の挑発行為を座視してはならない。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/663.html#c29

[政治・選挙・NHK183] 千代田区議選の「全裸ポスター候補」がすごい(ガジェット通信) 赤かぶ
17. 秘密のアッコちゃん[398] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月21日 15:54:32 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[511]
<■269行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
日本に「真の政治家」いるのか
産経新聞2024年6月21日 下條正男
日本に国会議員は数多いるが、果たして
「政治家」
と呼べる人士はどれほどいるのだろうか。
2023年末以来、国会は自民党の裏金問題で粉々とし、マスコミ各社が与野党の動きを競って報じる一方、当該議員たちは保身に汲々としている。
公明党の山口那津男代表は、パーティー券の購入者を公開する基準額を20万円超から5万円超にするよう岸田文雄首相に
「英断」
を求めたという。
だが、岸田氏の英断と言うなら、自公の連立解消だろう。
竹島問題解決の観点からすれば、自公の連立政権が続く限り進展は望めないからだ。
■条例反対の常連
それはこれまでも言及してきたように、島根県議会が
「竹島の日」
条例を制定すると、それに反発して反対運動を起こしたのが公明党の支持母体と関係が深い韓国創価学会だったからだ。
その韓国創価学会が公明党に期待したのは、自民党が竹島問題の解決に動かないよう、ブレーキ役を果たすことであった。
それに国政選挙などの際に協力してきた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)も、
「竹島の日」
条例反対の常連であった。
旧統一教会は、戦後、韓国で急成長した新興宗教である。
その教義の中には祖先崇拝を含むなど、韓国的な儒教の要素が取り入れられている、
それが植民統治をした過去の日本の歴史と結び付けば、必然的に日本の先人の行為に対する贖罪の観念を日本人信者に植え付け、寄付という名の収奪に行き着くのである。
これは事実無根の歴史を捏造し、日本に過去の反省と清算を求める
「歴史認識問題」
と同じ構造である。
歴代の自民党政権は、公明党と連立政権を組み、選挙戦ではその旧統一教会の協力を得ていたのである。
政党としての自民党が、政権の座を維持しようとする時は、国益よりも政党や派閥の論理を優先させてしまう。
それは戦前、大局的な見地に立つことができずに軍部の暴走を許し、国民を塗炭の苦しみに陥れた政党政治の悪弊と似ている。
政府自民党は
「骨太の方針」
と称して
「経済財政運営」

「改革の基本方針」
を示している。
だが、骨粗鬆症気味で筋力が衰え始めた日本経済に
「骨太」
を求めても、下手をすれば粉砕骨折の原因となる。
■戦略欠ける外交
ひところ日本政府はマイナンバーカードの普及に躍起になり、その事業予算は2兆円を超えたという。
しかし民間企業なら2万円ものマイナポイントのばら撒きなどしない。
民間企業の経営は常に収支を勘案し、ポイントの付与も収益の許容範囲で行うからだ。
この種の改革の始まりは小泉純一郎政権時代の
「聖域なき構造改革」
にあると言われているが、島根県が
「竹島の日」
条例を制定して
「竹島の領土権確立」
を求めた時、それを阻止しようとしたのが小泉政権である。
それを機に、ロシアは北方領土を巡る問題を領土問題から歴史問題と位置付けて
「解決済み」
だと主張した。
中国は尖閣諸島侵奪のタイミングを窺い始めたのである。
それが2010年9月、中国漁船による海上保安庁の巡視船に対する衝突事件を機に、中国は尖閣諸島から更に南シナ海にまで触手を伸ばしたのである。
それを誘発したのが民主党政権の失策である。
その後は
「台湾有事」
が叫ばれ、南西諸島に自衛隊を駐屯させると、今度は沖縄県民の避難策が問題になった。
だが台湾有事となれば、
「海上の道」
を伝って台湾の人々が大挙して日本に逃げてくる。
朝鮮動乱(朝鮮戦争)の際は、日本に人々がいた。
また第二次大戦終戦前後の旧ソ連侵攻時、南樺太や北方4島などから邦人が本土に逃げ帰っていた。
こうした悲劇を繰り返さないためにも、日本は
「尖閣カード」
を駆使して中国の野望を挫かねばならない。
だが、日本外交にはその戦略が欠けている。
■北に足元見られ
2024年6月13日付の韓国「中央日報」(電子版)は、日本政府と北朝鮮が2024年5月中旬にモンゴルで接触し、北朝鮮側からは偵察総局(対外工作機関)、外貨獲得関係者ら3人が参席したと報じられた。
岸田氏は、小泉政権に倣って拉致問題で成果を挙げたいようだが、小泉政権当時の北朝鮮は、経済が危機的状況にあった。
だが今回はこちらの都合で外交交渉に臨むのである。
北朝鮮側に外貨獲得関係者がいるのは、既に日本が足元を見られているからだ。
それに韓国が不法占拠を続ける竹島は、日韓の国交正常化交渉の際に使った韓国側の外交カードだった。
当然それは、日本海呼称問題など共に北朝鮮側の外交カードになる。
そこで歴史戦の準備として、私は竹島や日本海呼称の問題に関する小冊子を作ったが、外務省ではそれらを平然と海外広報に使って制作者側に挨拶の1つもない。
要は給付金と同じで、ばら撒けば良いと思っているのだろう。
日本に政治家がいない理由もここにある。

公明党との連立解消の勧め
Hanada2024年5月号 山際澄夫
日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第3国への輸出は、政府与党内で調整が続けられた結果、歯止め策を講じた上で認められることになった。
1年近くの協議の末、輸出解禁に消極的だった公明党に自民党が譲る形で決着した。
歯止め策とされたのは、輸出の可否を閣議で決定するとした他、輸出解禁を政府、自民党が想定していた国際共同開発全てではなく、今回の戦闘機に限定。
また、戦闘中の国は輸出先から除外された。
これにより、日本の輸出が困難となる最悪の事態は避けられたが、この問題は防衛政策という政権運営の根幹部分で、自公に越え難い対立があることを改めて見せ付けられた。
見過ごせないのは、公明党が終始、武器輸出解禁に冷淡だったことだ。
次期戦闘機は、自衛隊が現在、保有する戦闘機の内、F15とF2の老朽化を見据えて投入されるもので、2035年に配備開始の計画だ。
共同開発と発表されたのが2022年末、2023年末には3カ国が事業を管理する条約に署名した。
今回は、3カ国の作業分担の協議が本格化する直前での決着だった。
共同開発兵器の輸出は、膨大な武器の開発費用の大幅な低減を実現出来るだけでなく、外交能力の強化にも繋がるなど安保政策を展開する上で利点が多い。
このため、共同開発兵器の第3国への輸出は、言わば世界の常識なのである。
公明党も、当初はそれほど問題にしていたわけではない。
だが、2023年11月の中国訪問後に山口那津男代表が批判を強めたことから、SNS上では中国への忖度を疑う声が強い。
武器輸出の意味も分からず、他国の代弁者のような真似をする政党のどこが
「平和の党」
なのだろうか。
基本政策を異にする連立は野合と言うしかない。
自民党は、もう公明党との連立を解消した方がいい。
公明党との連立解消、他党との連立の組み換えを行うなら、岸田文雄首相が模索している解散の絶好の大義名分にもなるはずだ。
朝日新聞は、この決着も
<「歯止め」効く?>
と不満そうだった。
朝日新聞など、日本のリベラルメディアの多くが公明党に近いのは言うまでもない。
自公の政策担当者が次期戦闘機の輸出の在り方を協議していた2024年2月23日、朝日新聞は社説でこう報じていた。
<殺傷能力のある兵器の輸出は、戦前の反省を踏まえ、平和国家として歩んできた日本への信用を揺るがしかねない>
朝日新聞や公明党などに通底しているのは、軍隊も兵器も平和を破壊する存在だとの思い込みである。
だが実際には、軍隊も兵器も平和を守るために存在する。
戦争を抑止するには精強な軍隊が必要なのだ。
ところが、軍隊は悪い事をするとの偏見と、日教組教育の成果である”日本は侵略戦争を行った”との自虐史観にまみれた朝日新聞は、そんな子供でも分かるような理屈も理解出来ないのである。
あおの挙げ句が、中国への異常な傾倒である。
朝日新聞は、中国の全人代で明らかになった日本の4.4倍、34兆円もの中国国防予算を5日後の社説(2024年3月10日)でようやく取り上げた。
それも
<(核戦力も)自国防衛に必要な水準を超えつつある>
とはしていたが、
<もっとも、中国の対外姿勢は、今後も長く続くと予想される米国との競争・対立に備えたものだろう>
と、膨大な軍拡にも理があるかのような書きぶりだった。
なるほど、これなら中国を庇って、次期戦闘機の輸出を妨害しても不思議ではない。

戦闘機輸出、自公政調間で検討へ 首相が公明に譲歩、議論仕切り直し
2024/2/13 16:08
https://www.sankei.com/article/20240213-CD5XTAPEUZLUXEQVVKRAFLHXKM/
岸田文雄首相(自民党総裁)は2024年2月13日、首相官邸で公明党の山口那津男代表と会談し、次期戦闘機を念頭に置いた国際共同開発する防衛装備品の第3国輸出について、両党の政調会長間で新たに協議を開始する考えを伝えた。
会談後、山口氏が記者団に明らかにした。
首相はこれまで両党の実務者協議を継続するとしていたが、公明側が慎重姿勢を崩さず、仕切り直しを迫られた格好だ。
「(実務者協議より)もう少し広い立場で、政調を軸に検討してはどうか」
首相は2024年2月13日の会談でこう提案し、山口氏は応じる意向を伝えた。
山口氏は
「まず中身を議論し、進展に応じて国民の理解を得るにはどうしたらいいか検討していく」
と述べた。
防衛装備品の輸出ルール見直しをめぐっては自公両党が2023年4月から実務者協議を開始。
国際共同開発品の輸出は2023年7月の論点整理で、完成品を直接輸出できるようにすべきとの意見が
「大宗を占めた」
と明記した。
だが、複数の公明幹部らが
「国民に分かるように示すことが大切だ」(山口氏)
などと党内外の議論が不十分だと主張し、結論は先送りにされていた。
公明の頑なな態度からは、派閥の政治資金パーティー収入不記載事件で自民の体力が失われる中、政権内で存在感を強める思惑も透ける。
首相の提案は公明側への譲歩とも言え、ある公明議員は
「これで一歩前進だ」
と評価した。
ただ、政府は英国、イタリアと進める次期戦闘機の共同開発へ向けた協議が本格化する前の2024年2月末までに結論を得たい意向だったが、2024年2月13日の会談で期限は話題にならなかった。
焦りを募らせる自民内には
「連立解消」
に言及する議員もいる。
国防族議員は
「これでは首相のリーダーシップ不足という話になる」
「実務者協議に費やした時間は何だったんだ」
と呟いた。

英国のロングボトム駐日大使は2024年2月13日、日英伊が共同開発する次期戦闘機の第3国輸出を巡り
「日本が防衛装備品の輸出ルールの変更を近く実現することが重要だ」
と述べ、早期の輸出解禁に向けた取り組みを求めた。
東京都内で共同通信と単独会見した。

美しき勁き国へ
櫻井よしこ 派閥解散より連立解消
2024/2/5 8:00
https://www.sankei.com/article/20240205-RWYOM7OFDJJX3A66MF6HQI7ETQ/
岸田自民党は、なぜここまで世論に阿るのか。
検察庁が100人態勢で捜査し区切りをつけた政治資金不記載問題を自民党幹部が独自に調べた。
この週末を含め、安倍派や二階派などの主たる政治家への聴取を小渕優子氏らが行ったそうだが、悪い冗談であろう。
法と証拠に基づく検察官による捜査以上の何が、政治家にできると考えたのか。
正気を疑う。
宰相たる者は正気を疑われても、動揺する姿も見せてはなるまい。
ワイドショーや朝日新聞が政治資金不記載問題を裏金問題としてはやし立てる中、岸田首相は2024年1月18日午後7時過ぎ、官邸で
「派閥解散を検討」
と語った。
2024年1月18日の朝日朝刊1面トップ記事が岸田派元会計責任者を
「立件へ」
と報じたことに反応したのは明らかだった。
決定の遅さで知られる岸田首相が電光石火、派閥解消を言明し、流れを作った。
2024年1月26日の
「言論テレビ」
で政治ジャーナリストの石橋文登氏が安倍晋三元首相の鋭い解説を披露した。
「岸田さんは決断できない人に見えるが、何かの拍子で素早く動く」
「それは恐怖を感じた時だ」
「彼の決断力の源泉は恐怖心なんだ」
急転直下の派閥解消論は党や日本の国益を考えた結果というより、岸田首相の自己保身から生まれたと見てよいのだろう。
派閥なき政治勢力としての自民党の行く手には紆余曲折が予想される。
それでも党が複数の政策立案集団を擁し、政策実現で汗をかくのは大いに結構だ。
悪習は破られ、政策集団として成長すれば自民党は間違いなく再生するだろう。
その結果、日本本来の勁さが発揮され、我が国は国際社会の秩序作りに貢献する国となり存在感も増すだろう。
その時、日本国の行くべき道を指し示す知的、戦略的リーダーシップを発揮することが岸田首相には期待される。
周囲を固める官僚の助言に従うだけでは、その役割は到底果たせない。
政治家だからこそ、宰相だからこそ出来ることの最たるものが国の形の根本を成す憲法の改正である。
岸田首相は2024年の年頭所感と2024年1月30日の施政方針演説で、憲法改正言及した。
改憲にかける思いが本物であっても信じ切れない気持ちが残る。
「自分の(自民党総裁としての)任期中に」
と言うが、それは2024年9月いっぱいだ。
現時点では具体的条文案を国会に提出済みでなければ日程上、難しく、目標達成に必要な段取りが欠落している。
皇位継承の安定化に関しても同様である。
岸田首相の言葉が上滑りし、信頼に欠けるのは実に残念だ。
大目標を語ってもそこに至る道筋が示されないために、空虚に響く岸田文雄首相の言葉に真実性を持たせ、疑念を晴らす道がある。
公明党との関係を見直すことだ。
安倍晋三元首相が如何にして政策を実現していたかを改めて見てみたい。
安倍氏は決して派閥人間ではなく、政策の人だった。
安倍派の枠を突き抜けた派閥横断の政策集団は、新たな国家安全保障戦略、デフレ脱却のためのアベノミクスを生み出し、日本の活力を増強。
世界における日本の地位を引き上げた。
そんな安倍氏の前に立ち塞がったのが連立相手の公明党だった。
安倍氏はある意味、世論の高い支持と選挙に連勝した力を示して公明党との協力を得た。
自民党は政策集団として生まれ変わると宣言した岸田首相にとって、公明党は安倍氏にとってよりずっと深刻な存在となるはずだ。
公明党は時に反自民と言ってよい体質を見せる。
現在も岸田政権の政策推進を妨げている。
岸田首相が2024年に入って2度、憲法改正に言及したことは既に述べた。
それに対して公明党の山口那津男代表が、即、反論した。
能登半島地震などを念頭に先送りできない課題を差し置いて憲法改正に力を注ぐべきではないとして、岸田首相の国会演説を事実上否定した。
日本周辺で高まる一方の中国、ロシア、北朝鮮の脅威を見れば、我が国が1日も早く憲法を改正して自衛隊を
「普通の国の軍隊」
にしなければならないのは自明の理だ。
ウクライナ侵略戦争が示すように、国と国民を守る最後の手段は力である。
自衛隊を正規軍に位置付け、侵略を受けた場合、その力を最大限に発揮して防衛できるようにしなければならない。
憲法改正はそのための第一歩だが、公明党代表は後でよいと言う。
ロシアの侵略を見過ごさないために、軍事を含めてウクライナに出来る限りの支援をすることは、覇権主義的な中国への牽制にもなり、我が国の国益に資する。
しかし、今の日本は憲法の制約により武器装備面でウクライナを支援できない。
また、日英伊3カ国の共同開発による次期戦闘機の輸出も壁にぶつかっている。
公明党の反対が主たる理由だ。
国家の在り方、教育や国防に関して自公間に関して深い溝がある。
自民党が派閥解消で政策をこれまで以上に重視していくのならば公明党との連立解消が重要な鍵となる。
派閥解消宣言を岸田首相の保身の域を遥かに超えて日本全体の活性化に繋げるには、自公連立を解消した上で、政策を軸にした新たな両党の協力関係を築いていくべきだろう。
政治情勢が流動的な今こそ、議論開始の好機である。
派閥解消の先頭に立った岸田首相には、政策集団としての自民党の立て直しを確実にする責任がある。
繰り返しなるが、自公連立を解消し、政策毎の協力関係の構築を目指すことは、何よりも両党の支持者にとって心の晴れる道ともなろう。

自民、防衛装備移転の議論停滞に不満 公明党との連立解消論も噴出
2024/1/31 19:45
https://www.sankei.com/article/20240131-A3B3P7PKQJPSXE3A3X3LJ2GNZQ/
防衛装備品の輸出ルール緩和を巡り自民、公明両党の溝が深まっている。
日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機を日本から直接第三国へ輸出可能とするため、2024年年明け早々にも自公の実務者協議を再開させる予定だったが、未だ開催の目処が立っていない。
公明幹部が慎重姿勢を崩さず、自民内には不満が溜まっている。
「国益のため連立を解消してでも進めなければならない」
「岸田文雄首相が(公明の)山口那津男代表と直接話し合うべきだ」。
自民が2024年1月31日に開いた党会合では出席議員から自公間の議論停滞に憤りの声が相次いだ。
自公両党は2023年12月、外国ライセンスで生産する装備品などの輸出規制見直しを政府に提言。
政府は防衛装備移転3原則の運用指針を改定し、輸出規制を緩和した。
一方、国際共同開発品の第3国輸出に関しては殺傷兵器の輸出に慎重な公明が容認せず、結論を持ち越した。
首相は2023年末、実務者協議座長の小野寺五典元防衛相らに対し、2024年年明け早々に協議を再開するよう指示。
政府は日英伊3カ国による次期戦闘機開発の交渉本格化を見据え、2024年2月末までに結論を出すよう要請した。
自民側は2024年1月上旬にも協議を再開させたい考えだったが、公明の慎重姿勢は変わらず、幹部らは態度を硬化させた。
北側一雄副代表は2024年1月31日の記者会見で
「今の状況では(2024年2月末までに)結論が出るとは思っていない」
と重ねて強調した。
政府側の説明不足を指摘する公明幹部に対し、国家安全保障局幹部らは2024年1月以降、改めて説明に出向いているが、未だ理解は得られていない。
しびれを切らす自民は、党内の不満を吸い上げる目的で2024年1月31日の会合を開いた。
今後、小野寺氏が首相官邸を訪れ、部会で出た意見を首相に直接伝える機会を設けることを検討している。
自民内には、事態打開には首相自らが動くしかないとの意見が根強い。
自民関係者は
「実務者同士で議論することはもうない」
ただ、自民も派閥パーティー収入不記載事件によって激震が走り、首相の党内基盤も揺らぐ。
首相が防衛装備移転の推進にどこまで注力できるかは不透明な状況だ。
与党実務者協議の関係者はこう呟く。
「公明には完全に足元を見られている」
http://www.asyura2.com/15/senkyo183/msg/491.html#c17

[政治・選挙・NHK294] <恐るべき発言が飛び出した>都知事選 小池知事「外苑再開発は争点にならない」(田中龍作ジャーナル) 赤かぶ
28. 秘密のアッコちゃん[399] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月21日 16:12:25 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[512]
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<正論>保守政党の目指すべきことは
九州大学教授・施光恒
2024/6/21 8:00
https://www.sankei.com/article/20240621-C5WC6MQAARLXFGEAIRIPVU66PQ/
■グローバル化に惑わされ
最近、
「保守政党がすべきことは何か」
とよく尋ねられる。
背景にあるのは自民党支持率の低落ぶりだろう。
政治資金の問題もあろうが、自民党が
「保守らしさ」
を失ったことも大きい。
自民党政治家の多くは
「グローバル化」
の美名に惑わされ、経済政策やその他の面で保守すべき大切な物事を見失ったのではないか。
先人の大切にしてきた文化や伝統、価値観などを守り、それらをより良き形で次世代に継承することに目が向かなくなったのではないか。
1990年代半ば頃から先進各国で進められてきたグローバル化路線は、各国の各種規制を取り払い、国境を越えて資本を動かすことを容易にした。
その結果、生活の利便性は増したものの、悪影響も少なくない。
最も懸念すべきは、各国の庶民の声よりも、グローバルな投資家や企業関係者の声の方が各国政府に届きやすくなったことだ。
グローバルな投資家や企業関係者は、自分たちが稼ぎやすい環境を整えなければ、資本を移動させるぞと各国政府に圧力を掛けることが可能となった。
彼らは
「人件費が下がるような構造改革を実施しなければ、生産拠点を海外に移す」
「法人税率を下げなければ、貴国にはもう投資しない」
などと各国政府に事実上要求できるようになった。
そのため、グローバル化路線の下では、各国の経済や社会の制度は、グローバルな投資家や企業関係者に有利な形に徐々に作り変えられてしまう。
各国の文化や伝統、価値観などに配慮することもない。
その結果、各国の一般庶民層には不利な社会が出現してしまう。
実際、日本政府も1990年代後半以降、グローバルな投資家や企業に事実上従い、彼らが稼げる環境を整備する構造改革を繰り返してきた。
法人税率の引き下げ(その補塡としての消費税率の引き上げ)、非正規労働者や外国人労働者を雇用しやすくする規制緩和、株主重視の企業統治改革などである。
■日本社会の土台の弱体化
例えば日本の経済社会は、ここ約30年の間に株主中心主義へと変質した。
日本の大企業(資本金10億円以上)は、構造改革が始まって間もない平成9年と比べれば、平成30年には株主への配当金を約6.2倍にも増やした。
その一方、従業員給与は減らしている(平成9年を100とすれば平成30年は78)。
設備投資もほぼ同様に減少(やはり100から97)している(相川清「法人企業統計調査に見る企業業績の実態とリスク」『日本経営倫理学会誌』第27号・令和2年など)。
勤労よりも投資重視という風潮は、国民の価値観にも影響を及ぼす。
日本人が大切にしてきた
「コツコツ勤勉に働く」
という価値は失われつつある。
『国民性調査』(統計数理研究所)によれば、昭和63年から平成25年の間に
「努力しても報われない」
と考える若者は急激に増加した。
伝統や文化、価値観などを次世代に引き継いでいく場は、家庭や地域社会、学校教育である。
近年、これらの土台も揺らいでいる。
家庭に関しては、少子化問題が非常に深刻だ。
少子化には様々な理由があるが、最も危惧すべきは若い世代の経済状況の悪化だ。
家庭を作り、余裕を持って子育てを行うのが今は難しい。
最近の報道では20代正社員の4分の1が将来子供を持つことに消極的だった。
主な理由は
「お金が足りない」
「増税・物価高の中、自分のことで精一杯で育てる責任が持てない」
などの経済的不安だった(マイナビ意識調査・2024年5月20日)。
地域社会も、過疎化やシャッター街化が進行し壊滅状態だ。
平成2年と令和元年を比べると、全国の小学校の数は20%以上減少した(学校基本調査)。
小学校の
「校区」
は地域社会の最小単位だと言える。
地域の祭りや行事は校区単位で組織される場合が多い。
小学校の減少は、それだけ地域社会が希薄化したことを意味する。
■日本の伝統や文化、価値観
自民党の役割は、やはり日本の伝統や文化、価値観を大切にしたいと願う普通の日本人の受け皿になることであろう。
欧米の保守派には、グローバル化推進策を改め、自国の庶民の生活の安定化を目指そうとする勢力が少なくない。
米国保守派の若手論客であるオレン・キャス氏は、経済政策の中心的目標を、グローバル化路線から大幅転換し、
「人々が自分の家庭や地域社会をしっかり支えていくことを可能にする労働市場を作り出し、維持すること」
にすべきだと主張する。
日本の保守派は、諸外国のこうした保守勢力と連携を深めるべきであろう。
国際社会に対して、現行のグローバル化路線を改め、各国で各々の文化や伝統を守り、庶民の生活を第1に考えることのできる国際経済秩序を共に模索しようと呼び掛けるべきではないか。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/671.html#c28
[政治・選挙・NHK294] 東京都知事選、れいわは「静観」 蓮舫氏の支援には回らず 前回は山本太郎代表が65万得票(東京新聞 TOKYO Web) 達人が世直し
43. 秘密のアッコちゃん[400] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月22日 03:00:31 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[513]
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AI普及で電力需要増大 必要性高まる原子力
2024/6/21 8:00
https://www.sankei.com/article/20240621-5AF5MTC3LFBQVI2RSQQXNPCMVA/
■持続的活用へ新増設急務
資源価格の高騰、電気料金の値上がり、電力需給の逼迫、地球温暖化への対応―。
エネルギーを巡る課題が山積する中、国のエネルギー政策の指針となる新たな
「第7次エネルギー基本計画」
の策定に向けた議論が始まった。
計画の根幹となるのが、将来の電力需給見通しだ。
これまで省エネ化や人口減少により電力需要は減少していくとのシナリオを描いていたが、現在は大量の電力を消費する生成AI(人工知能)の普及や脱炭素に向けた電化によって増大していくと見込まれている。
山積する課題と増大する需要に対応するため、安定して必要な電力を供給でき、経済性に優れ、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原子力発電の必要性が一段と高まっている。
新たな計画では原子力を持続的に活用していく道筋を明確に示すことが求められる。
■エネルギー政策は戦後最大の難所
「今、日本はエネルギー政策における戦後最大の難所にある」
2024年5月15日に始まった新たな基本計画の策定に向けた有識者会議で、斎藤健経済産業相は強い危機感を示した。
基本計画は、およそ3年毎に見直しが行われており、新たな計画は2024年度中に閣議決定される。
現行計画が策定された2021年に比べエネルギーを取り巻く環境が激変している。
ウクライナ危機により資源価格が高騰。円安も重なり、輸入に依存する燃料費が増大している。
原子力発電所の再稼働の遅れに加え、火力発電所の休廃止が相次ぎ、自由化の進展による競争激化もあり、新規投資が停滞し電力需給が逼迫。
エネルギー安全保障と安定供給が危うい状況にある。
■電力需要は増加トレンドに転換
しかも、電力需給見通しは大幅な修正を迫られている。
現行計画では2030年度の需要(総発電電力量)を9340億キロワットアワーと、2021年度から約10%減少すると予測。
その上で、供給力である電源構成について、再エネを36〜38%程度、原子力を20〜22%程度、火力を41%程度とする目標を設定していた。
だが、前提となる電力需要は減少から増加トレンドへの転換が見込まれている。
その最大の要因が自動で文章や画像を制作してくれる
「生成AI」
の普及だ。
膨大なデータを学習させる生成AIの開発には、高速で演算処理を行う大容量のサーバーが必要で、全国各地で大量のサーバーを設置するデータセンターの新設ラッシュが起きている。
データセンターはサーバーの稼働や空調で大量の電力を消費する。
情報化の加速による世界的な半導体不足を背景に大量の電力が必要な半導体工場の国内立地も相次ぐ。
全国の電力需給の調整を行っている電力広域的運営推進機関によると、現時点で見込まれているデータセンターと半導体工場の新設だけで、2033年に400億キキロワットアワーの電力需要が発生することなどから、将来大きく増加に転じると見込んでいる(図表)。
https://www.sankei.com/article/20240621-5AF5MTC3LFBQVI2RSQQXNPCMVA/photo/XPXWGZI4LZEQHLMCYC4LK6XH6M/
同機関では有識者による
「将来の電力需給シナリオに関する検討会」
を設置し議論を進めている。
この中で、シンクタンクの電力中央研究所は2050年の電力需要が1兆2650億キロワットアワーとなり、2021年から最大で37%増大するとの試算を示した。
■原子力「最大限活用」を明記へ
新たな計画では増大する需要に対する安定供給とCO2排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現を両立することが求められ、再エネと原子力の脱炭素電源の割合が焦点となる。
24時間稼働するデータセンターの電力需要には、発電量が天候に左右され、供給力が不安定な再エネを増やすだけでは危うい。
長期間、安定的に電力を供給できるベースロード電源である原子力の必要性は一段と高まる。
原子力について、基本計画では東京電力福島第1原子力発電所事故後の第4次から第6次まで、
「依存度を可能な限り低減」
と記載してきた。
政府は2022年12月に決定した脱炭素社会に向けた
「GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針」
で、
「最大限活用」
と明記し政策を転換。
新たな基本計画でも同様の記載に見直す方針だ。
■新増設の着手は待ったなし
だが、原子力を最大限活用する道筋は見えていない。
事故後に廃炉を決めた24基を除く36基のうち再稼働できたのは12基。
2022年度の原子力の割合は約6%にとどまり、現行計画の20〜22%程度の目標は遠い。
更に今のままでは将来的に原子力の供給力は右肩下がりで減少していく。
政府は2023年5月に
「GX脱炭素電源法」
を成立させ、原子力発電所の運転期間を60年超とすることを盛り込んだ。
しかし、既存の原子力発電所を全て60年運転したとしても、2050年以降、供給力は急減し2070年にはゼロとなる。
原子力を持続的に活用するには、建て替えや新増設が不可欠だ。
原子力発電所の建設には、長い期間と莫大な費用がかかる。
増大する需要を見据え、早期に新増設に着手しなければ、間に合わない。
このままでは、供給力不足による電力危機が現実となりかねない。
■投資を促す環境整備が重要
莫大な建設費用を調達するための投資環境の整備も重要だ。
初期投資や維持コストの回収が予見できないことから金融機関が融資を躊躇しファイナンスが極めて難しい状況にある。
安定的な収益を保証し投資回収の確実性を高めるといった政府による制度措置の構築が必要だ。
また、万が一、事故が起きた際の賠償制度は電力会社が無限に責任を負うことになっている。
更に使用済み燃料の再処理や高レベル放射性廃棄物の最終処分などバックエンド事業は極めて長期の事業であり、費用面を含め不確実性が大きいことも原子力事業の予見性を難しくしている。
賠償負担に一定の条件を設けたり、バックエンド事業について官民の役割分担を明確にしたりするといった仕組みが課題となる。
新たな基本計画では、原子力の位置付けを明確にし、具体的な開発目標を明記すると共に投資環境を整え、新増設の着手を早急に促すことが求められる。
我が国の産業や生活を守っていくために、今、動かなくてはならない。
■有識者に聞く みずほ銀行産業調査部資源 エネルギーチーム次長 田村多恵
原子力や脱炭素火力の重要性、基本計画で明記を
電力需要は、2050年のカーボンニュートラルに向けた電化に加え、AIの普及と半導体工場の国内回帰によって増えていく。
特に日本は人手不足により幅広い分野でAIを使う自動化が進む。
データセンターの省エネがどこまで進歩するかにもよるが、2050年の電力需要は1.1兆〜1.4兆キロワットアワーに上ると予測している。
エネルギー源としての電力の重要性は一段と高まる。
国際競争力の観点からも電力がしっかりと供給される国であることは非常に重要だ。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/667.html#c43
[政治・選挙・NHK294] 小池陣営は“ステルス作戦”徹底か…前代未聞「会いに行けない百合子」vs「街に出る蓮舫」の行方(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
26. 秘密のアッコちゃん[401] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月22日 13:18:46 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[514]
<■103行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
戦力不保持の9条2項削除し「自衛隊保有」を明記 自民議連が独自の改憲案
2024/6/21 13:02
https://www.sankei.com/article/20240621-L32AH4G6BJPDPNZLZHWRCYV6VE/
自民党の
「憲法改正推進議員連盟」(会長・衛藤征士郎元衆院副議長)
は2024年6月21日、国会内で総会を開き、憲法9条改正を含む独自の改憲条文案を取りまとめた。
独自案は戦力不保持などを定めた9条2項を削除し
「日本国は、我が国の平和と独立を守るため、自衛隊を保有する」
と明記した。
党執行部への提出を検討している。
自民は2018年、9条について1項、2項を共に維持した上で、別立ての
「9条の2」
を新設して
「自衛隊保持」
を明記する条文案を取りまとめている。
2024年6月21日の総会には二階俊博、石破茂両元幹事長ら約20人が出席した。
議連の独自案には大規模災害時の内閣の権限強化と国会議員の任期延長を盛りこんだ緊急事態条項も記載した。

自衛隊明記の「その先」を考える 憲法改正 石井聡
論争を撃つ
2024/6/15 11:00
https://www.sankei.com/article/20240615-4U7JX2OOVZI3JOIPCTSZ4P2HLM/
岸田文雄首相は今の自民党総裁任期中の憲法改正を目標に掲げている。
今国会の情勢からその実現可能性は低いが、改正が政治日程の俎上に載るものとして位置付けられることは異例ではなくなった。
改正内容として最近は緊急事態条項が取り上げられることが多いものの、改正の核心となるのは、やはり日本の安全保障に関わる9条である。
安倍晋三元首相は在任中に、自衛隊を憲法に明記し、その存在を明確にする方針を打ち出した。
今も残る自衛隊
「違憲論」
を解消するため、公明党など他の勢力の同調も得ながら9条改正への突破口を開こうとした意義は大きい。
だが、その後の日本を取り巻く安全保障環境の悪化や、それに対応する日米同盟の更なる深化を図る上で、自衛隊明記の
「その先」
をどうするかの議論は乏しい。
■士気は上がるが
自衛隊は数多くの災害派遣などを通じて国民から絶大な信頼を得ている。
その自衛隊に対し、今も違憲論が残る環境下で、自衛隊明記で違憲論を払拭すれば自衛官の士気高揚に繋がるとの発想が基本にある。
平成29(2017)年5月、現職の統合幕僚長だった河野克俊氏が日本外国特派員協会での記者会見で、当時の安倍晋三首相が憲法9条への自衛隊明記を提起したことについて
「1自衛官として申し上げるなら、自衛隊が何らかの形で憲法に明記されることになれば、それは有り難いなあとは思います」
と述べて注目を集めた。
それから7年が経過する中でも、日本の周辺環境は激変した。
国際法を犯して海洋の自由を侵害する中国は尖閣諸島奪取への動きを強める他、フィリピンとの衝突を重ね、台湾の武力統一の意思を捨てていない。
ロシアによるウクライナ侵略は今も続き、北朝鮮は核・ミサイル開発を進め、それを止める手立ても乏しい。
これらに対処するため、日米同盟の深化が待ったなしの状況にある中で、河野克俊氏は今、
「これからの日本の安全保障を考えれば、最早『自衛隊明記』だけでは課題を解決できない」
と主張している。
■孤立主義に回帰
河野克俊氏の問題意識は、混迷する国際情勢の中で
「今まで通りに日本の防衛を米国に頼り切る」
ことへの警戒感でもある。
米国が元々孤立主義(モンロー主義)から出発した国家であり、再びそこに立ち戻るのではないかという懸念だ。
第一次世界大戦や第二次世界大戦でも米国は当初参戦に慎重だった。
その後の旧ソ連の台頭に対して米国は西側諸国の総大将の役目を果たさざるを得なかった。
しかし、冷戦期が終わるとオバマ元大統領は2013年に
「世界の警察官」
を辞めると表明し、トランプ前大統領は北大西洋条約機構(NATO)加盟国が相応の軍事費を負担しなければ、ロシアに侵攻されても米国は防衛しないと発言している。
バイデン大統領は20年に渡りアフガニスタンに駐留した米軍を撤退させた。
既に10年以上前から米国が政界への関与を抑制している中で、日本の立ち位置をどうするか。
■双務性への努力
河野克俊氏は、米国がリーダーを務めた時代は米ソ冷戦の特殊な状況だったと判断し、
「その時代に締結されたのがNATOと日米安全保障条約だ」
と指摘する。
そして、米国が本来の孤立主義に戻りつつあるとすれば
「憲法9条の制約下で片務的な同盟を求めて来た日本に、米国が距離を置く可能性」
を予想する。
日米同盟への
「甘え」
が許される時代ではないというのだ。
そうした米国を孤立主義に戻らせず同盟関係を維持するには日本の役割の拡大が不可欠で、それには
「日米同盟を双務性のレベルに極力引き上げる」
ことが必要だと河野克俊氏は提唱する。
同盟とは本来、相互に防衛するもの(双務性)だが、日本は米国が攻撃されても(憲法9条の制約上)自衛隊を海外派遣して共に戦うことはない。
戦勝国と敗戦国との間で結ばれた条約であることに起因する。
日本側では
「片務的ではない」
という議論もあるが、それが米国でどれだけ通用するか。
大事なのは米国を引き留め、日本の危機対処に巻き込むことだ。
■明白な危機とは
集団的自衛権の限定行使については、それを制約する文言が法律などに多く盛り込まれている。
行使が可能になる存立危機事態は、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態と定義された。
「根底から」
とか
「明白な危険」
を瞬時にどう判断するのか。
河野克俊氏はこの定義を
「ほぼ個別的自衛権と同じ」
と見ている。
日本の防衛の基本姿勢である
「専守防衛」

「必要最小限度」
といった武力行使を出来るだけ抑える方針も変わっていない。
これらの制約は
「戦力保持」

「交戦権」
を否定する憲法9条2項から発生する。
内閣法制局は仮に集団的自衛権の行使を拡大するなら、憲法改正が必要だとしている。
自衛隊明記では解決にならない。
トランプ政権で国防次官補代理を務めたエルブリッジ・コルビー氏は
「私が最も努力すべきことの1つは、日本の議論にもっとリアリズムを取り入れることだと考える」
とX(旧ツイッター)に投稿している。
それに呼応する日本の議論が急務だ。
■制約される集団的自衛権
★防衛出動の規定(自衛隊法76条1項2号)
・我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
★武力行使の3要件「平成26(2014)年7月閣議決定」
・我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
・これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
・必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/675.html#c26

[政治・選挙・NHK183] 千代田区議選の「全裸ポスター候補」がすごい(ガジェット通信) 赤かぶ
25. 秘密のアッコちゃん[402] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月22日 13:59:09 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[515]
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都知事選の多数同一ポスター 選管に1000件以上の苦情殺到、電話鳴りやまず
2024/6/21 20:26
https://www.sankei.com/article/20240621-GTY7VFOXGNPC3PAOL7MRQFQD2A/
過去最多の56人が立候補した東京都知事選の選挙ポスター掲示板に、同じ人物やデザインのポスターが多数張られ、有権者に困惑が広がっている。
東京都選挙管理委員会には、告示翌日の2024年6月21日までに1000件以上の苦情や問い合わせが寄せられた。
同一のポスターが張られていることに関して
「何なのか」
などとするもので、担当者は
「電話がひっきりなしに鳴っている」
と話す。
中野区役所前の掲示板には、様々な人物の画像と共に、デザインの同じピンク色のポスターがずらりと張られていた。
QRコードも記載され、読み込むと特定の交流サイト(SNS)の画面に誘導される。
画像の人物のほとんどは選挙と無関係とみられる。
総務省によると、ポスターで他の候補者の選挙運動をすることや、虚偽があった場合は処罰の対象になる。
一方で、内容を直接制限する規定はなく、事前のチェックもない。

有権者「ばかにしている」 都知事選の掲示板に大量の同じポスター
2024/6/21(金) 20:30配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2e8b8f5edfcf38e783b0c9eedff08b500fda7baf
2024年6月20日に告示された東京都知事選(2024年7月7日投開票)で、候補者のポスターを張る掲示板に、同じポスターが大量に張られる事態が起きている。
候補者を24人擁立した政治団体が掲示板のスペースを寄付者に譲っていることが主な原因だ。
選挙と関係ない人物や主張が掲示板中に広がり、都民からは
「有権者を馬鹿にしている」
と憤りの声が上がっている。
東京都中野区の区役所前では2024年6月21日午後、候補者48人分を掲載できる横長の掲示板に、女性の写真が印刷されたピンク色のポスターが凹の形のように計24枚張られていた。
それぞれQRコードが印刷され、スマートフォンをかざすと有料サイトを宣伝するページに誘導された。
近くの50代女性は
「馬鹿にされているようだ」
「税金が使われているのだから、常識の範囲内で正しいものを張ってほしい」。
男性(74)も
「アイドルのポスターかと思った」
「張る内容を規制できる方法を考えてもいいのでは」
と呆れた。
毎日新聞は都内で、候補者ではない女性格闘家のポスターや、政治的主張が書かれたポスターなどが24枚ずつ張られた掲示板を複数確認した。
いずれも、政治団体
「NHKから国民を守る党」
に関係する24人の候補者がポスターを張るスペースだった。
同団体は、5000円〜1万円(現在は2万5000円)の寄付者に、ポスターを張るスペースを譲る方針を公表している。
立花孝志党首は2024年6月21日の記者会見で、一連の動きは
「掲示板は無駄だ」
と知ってもらうためだとした上で
「無くすか徹底的に減らすべきだ」
「大きな問題提起ができた」
と持論を展開した。
ただし、内容を把握できていないポスターもあるといい
「違法なものや事実と異なる政治的主張は私の判断で剥がす」
と説明する。
同団体以外でも、物議を醸すポスターが張られたケースがあった。
警視庁は2024年6月20日、選挙ポスター掲示板に卑わいなポスターを掲示したとして、都迷惑防止条例違反(卑猥な言動)の疑いで、諸派の男性候補者に警告を出した。
捜査関係者などによると、候補者とは別の女性が裸に近い姿で写り
「表現の自由への規制はやめろ」
などの記載があった。
警視庁は、ポスターが公共の場所で卑わいな言動をすることを禁じた都条例に違反すると判断。
2024年6月20日夜に候補者の男性を呼び出し、口頭で警告した。
都選管によると、大量のポスター掲示については2024年6月21日だけで1000件以上の苦情が寄せられた。
公職選挙法にはポスターを大量に張ることを禁じる規定はないといい、担当者は
「警察が事案毎に(違法性を)判断していくと思う」
「対応を見守りたい」
と話した。
元自治省(現総務省)選挙部長で公選法に詳しい片木淳弁護士は
「選挙と関係ないポスターを大量に張るのは不適切だ」
「選挙運動は有権者の投票行動を助けるためにあり、公選法が想定した選挙の在り方ではない」
と指摘している。

東京都知事選挙の掲示板に多数同一ポスター 有権者困惑
2024年6月21日 20:50
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC21COV0R20C24A6000000/
■東京都知事選のポスター掲示板
過去最多の56人が立候補した東京都知事選の選挙ポスター掲示板に、同じ人物やデザインのポスターが多数張られ、有権者に困惑が広がっている。
政治団体
「NHKから国民を守る党」
は、団体に寄付をした人の作ったポスターを掲示板に張っているとしており、制度の隙間を突いたとの意見も。
識者は
「規制を考えていく必要がある」
と指摘する。
「カワイイ私の政見放送を見てね」。
中野区役所前の掲示板には、様々な人物の画像と共に、デザインの同じピンク色のポスターがずらりと張られていた。
QRコードも記載され、読み込むと特定の交流サイト(SNS)の画面に誘導される。
画像の人物のほとんどは選挙と無関係とみられ、同区の男性会社員(57)は
「広告なのか、候補者ポスターなのか分からない」
「違和感を覚える」。
東京・秋葉原付近では、立候補していない女性キックボクサーとみられる人物のポスターが並び、スマートフォンで撮影する姿も。
総務省によると、ポスターで他の候補者の選挙運動をすることや、虚偽があった場合は処罰の対象になる。
一方で、内容を直接制限する規定はなく、事前のチェックもない。
林芳正官房長官は2024年6月21日の記者会見で
「(掲示板は)候補者以外が使用できるものではない」
と発言。
松本剛明総務相も
「公選法上、掲示の権利を売買するものとはされていない」
と述べた。
東京都選挙管理委員会には、2024年6月21日までに1000件以上の苦情や問い合わせが寄せられた。
同一のポスターが張られていることに関して
「何なのか」
などとするもので、担当者は
「電話がひっきりなしに鳴っている」
と話す。
法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は
「掲示板は候補者の政策や顔、人となりといった情報を有権者に提供するためにある」
「法に触れないとしても趣旨から外れた行為だ」
と批判する。
その上で
「表現の自由を考慮すれば直ちに法改正までする必要はないが、選挙運営の規則などで禁止していくべきだ」
「時代の変化に合わせて選挙の在り方を見直す時期が来ている」
と述べた。
団体の立花孝志党首は2024年6月21日の記者会見で、設置費用がかさむ掲示板をなくせば供託金の額が下がり、政治参加がしやすくなると主張。
今回の取り組みは
「非常に大きな問題提起だ」
と説明した。〔共同〕

ほぼ全裸の選挙ポスターは表現の自由か 警視庁が警告 専門家「適切な表現考えるべき」
2024/6/21 18:20
https://www.sankei.com/article/20240621-RDANH77JONLB5IWPLHI6HLWDYE/
東京都知事選(2024年7月7日投開票)で、ほぼ全裸状態の女性を使用したポスターが波紋を呼んでいる。
作成した候補者は
「表現の自由を訴えるため」
としているが、相次ぐ批判に警視庁が告示日当日の2024年6月20日、都迷惑防止条例違反の疑いで警告。
候補者はポスターを剥がすことに同意した。
都選管は今回のポスターについて
「公職選挙法に抵触していない」
との見解で、選挙と表現の自由を巡る論争は今後も続きそうだ。
■想定外の選挙運動
「子供に見せられない」。
都知事選の選挙掲示板のポスターを見た都内に住む40代の男性会社員は憤った。
問題視されたポスターには、胸や下半身の一部を隠したほぼ全裸の女性があしらわれた。
書かれている内容も
「売春合法化」
「表現の自由への規制はやめろ」
「モザイク解禁」
など数パターンある。
都選管の担当者は、
「告示日に都民から多くのお叱りを頂いた」
という。
一方、表現の自由を尊重する公選法には抵触していないとの判断で、
「選管として勝手に剥がすなどの措置はできない」
と警視庁に相談。
今回、警視庁がすぐに対応したため、候補者は警告を受けた2024年6月20日夜以降、問題のポスターの撤去を進めた。
■想定外の運動に困惑
選挙と表現の自由を巡っては、2024年4月の衆院東京15区補欠選挙で他陣営を妨害したなどとして代表らが逮捕された政治団体
「つばさの党」
の事件でも注目された。
都選管は、今回のポスターも含め
「想定外の選挙運動が出てきている」
「今後の選挙がどうなるのか」
と困惑を隠せない。
産経新聞の取材に問題の候補者は、
「法の範囲内で作成したつもりだが、警視庁がルールを示した以上従う」
とした。
■有権者は意思表示を
拓殖大政経学部の岡田陽介准教授は
「どの候補にも主張はあると思うが、世の中に与える影響を考えなければならない」
「掲示板は小学校の近くなどに設置されることが多く、子供への影響や適切な表現かは考えるべきだった」
と指摘。
多様な選挙手法が出てくる中、公選法の厳格化は法の隙間を狙ういたちごっこを生みかねず現実的ではないとして、
「多くの有権者が違和感を覚える手法もある」
「望まない選挙運動に対し、有権者が意見表明をすることで、より良い選挙に繋がる」
としている。
http://www.asyura2.com/15/senkyo183/msg/491.html#c25

[政治・選挙・NHK294] <郷原信郎氏、バレた!>小池百合子氏、アラビア語インタビュー 突然、削除 ひどいキャスター時代の映像を消して再掲載  赤かぶ
24. 秘密のアッコちゃん[403] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月23日 13:12:27 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[516]
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平和主義者たちが目を背ける真実…「平和国家」日本は武器輸出が支えてきた 池上敦士
2024/6/18 7:00
https://www.sankei.com/article/20240618-KZPJF36E55PGPJKF5H3TDFLUXA/
日本で武器輸出というと、一部のマスコミや政党がやたらと反発し、
「戦争を煽る」
「死の商人か」
などと批判する。
憲法9条が定める
「平和主義」
の理念にそぐわないというのである。
岸田文雄政権も
「防衛装備品移転」
を推進してはいるが、様々な防衛装備品の中で殺傷能力のある武器は、防衛装備移転3原則によって、原則として輸出を禁止している。
厳密にいうと、例外はいくつかあるのだが、それでも、ロシアとの戦いで弾薬不足に苦しむウクライナには、日本は1発の砲弾すら送らずにきた。
ウクライナに武器を送ることは、侵略被害者の支援であり、自由と民主主義を掲げる各国は皆、戦闘にこそ参加しないが、武器弾薬をウクライナに送っている。
しかし、日本の3原則はそれも許さない。
さすがに、政府もまずいと考えたのだろう。
2023年末に3原則を一部改定し、例外として防空用兵器
「パトリオットミサイル」
を輸出できるようにした。
といっても、直接、ウクライナに送って支援できるようにしたわけではない。
パトリオットを米国に輸出し、米国がその分の余裕で自分たちの保有するパトリオットをウクライナに送れるようにしただけである。
日本政府の考え方はこうだろう。
パトリオットは、米国で開発され、日本国内で米側のライセンスを得て生産されている武器だから、開発元の米国に対する輸出は例外的に認める。
しかし、あくまで、
「第3国」
であるウクライナに日本のパトリオットを直接送ることはしない―。
同様に英国からのライセンス生産である155ミリ砲弾も、ライセンス元の英国へは輸出を可能にしたが、ウクライナに直接送ろうというのではない。
たとえ明らかな侵略を受け、自衛のために戦っている国に対してでも、武器は送らない。
せいぜい間接に間接を重ねたような支援しかしない。
これが
「平和国家」
日本の実情である。
果たしてこれが本当に平和を希求する国が取るべき態度だろうか。
侵略に目を閉ざして平和を語るのはどうかと思うが、それはともかく、そもそも、その種の人たちは、重大な史実から目を背けている。
それは戦後の
「平和国家」
日本の繁栄は、武器輸出を礎に築かれたといっても過言ではないということだ。
こう書くと、驚く人がいるかもしれないが、事実である。
■「朝鮮特需」で早期復興
戦後、日本が早期に経済復興できた最大の要因は、言うまでもなく
「朝鮮特需」
である。
敗戦から5年後の1950年、北朝鮮の南進から始まった朝鮮戦争で、日本は、米軍中心の国連軍が戦うための物資供給を担ったが、衣服や食料だけでなく、実は砲弾、バズーカ砲、対戦車地雷までを一手に担った。
米軍などへの武器の供給は、1953年の停戦後も続いた。
1950〜1953年、日本は特需で約24億ドル(約8640億円、1ドル=360円で計算)を得ているが、1953年度の政府予算は9718億円(約27億ドル)だから、当時の日本にとってこれは大きかった。
旧経済企画庁の2種類の資料(「特需契約5カ年の実績」「特需に関する統計」)によると、このうち、日本の兵器(武器)輸出額は1億100万ドルに上る。
また、1952〜1955年は日本の対米輸出品目では、
「兵器」
が第1位となっている。
朝鮮特需だけではない。
日本は他のアジア諸国にも弾薬などを輸出していたし、ベトナム戦争についても、経済産業省による調査報告書には、
「ベトナム特需を背景とする米軍向けの武器の提供などが行われていた」
とある。
1967年、政府は武器輸出を制限する武器輸出3原則を打ち出したが、実はこれも、冷戦時に共産圏などへの輸出を認めない原則を打ち出したものに過ぎなかった。
当時の日本は、米国を中心とする自由主義陣営の一員として武器輸出を続け、それによって米国との結び付きを強め、自国の平和を守っていたのだ。
共産圏など以外にも
「武器輸出を慎む」
と表明したのは1976年の三木武夫内閣になってから。
つまり、それまでの日本の
「平和主義」
は、武器輸出を前提として成立していたのだが、今は何故か多くの日本人がその事実を忘れてしまっているのだ。
■3原則大幅緩和を!
私は、金儲けのためにどんな国へでも武器を輸出しろと主張しているのではない。
日本にとって安全保障上、重要な国との関係を強化し、中国やロシアのような国に対抗するため、つまり平和を守るために、武器を含む防衛装備品を輸出すべきだと主張しているに過ぎない。
米国はもちろんだが、例えばフィリピンやベトナムの防衛力強化に日本がもっと協力することで、地域の安定が強化される。
また、単なる輸出だけでなく、欧米などとの共同開発で、日本の防衛技術の底上げも期待できる。
これらを組み合わせれば、日本に有利な安全保障環境を生み出すことができる。
そう主張しているのだ。
現在、武器輸出で存在感を出しているのが韓国だ。
韓国も基本的に紛争当事国には武器を輸出しない方針を採っているが、米紙ワシントン・ポストによれば、2023年に米国を通じて数十万発の砲弾をウクライナに支援している。
ストックホルム国際平和研究所によると、韓国は防衛装備品の輸出額で世界9位(2019〜2023年)の輸出大国だ。
2022年にはポーランド向けに戦車や自走砲など1兆円を超える契約を行うと発表された。
この自走砲はオーストラリアやフィンランドなどにも輸出されている。
一方で日本はどうだろう。
三木武夫内閣が武器輸出を
「慎む」
と表明した後、武器はおろか、殺傷能力のない防衛装備品との線引きも曖昧なまま、輸出を控えるべきだという空気が国民に醸成されてきた。
それにもかかわらず、国際情勢で必要に迫られると、政府はその都度、例外として輸出を認め、武器輸出を認めるか認めないか曖昧にしながら、
「平和国家」
を自称してきた。
2014年、安倍晋三政権が武器輸出3原則を改めて防衛装備移転3原則を設定。
殺傷能力のない5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海)の防衛装備品などに原則限定する形(つまり武器は除く形)で、輸出条件の明確化を図ったが、先に述べたように、岸田政権下ではパトリオットなどの武器輸出も例外としてぽつぽつと認められ、3原則の部分修正も行われている。
つい最近は英国・イタリアと国際共同開発する次期戦闘機について第3国への輸出が可能となった。
それ自体は悪い事ではないが、日本の腰は定まらない。
少なくとも、今のように場当たり的に武器輸出を認める
「例外化の積み重ね」
の手法には限界がある。
今後、アジア太平洋地域の安全保障で更に大きな役割を果たさなければならない日本にとって、武器輸出はアジア諸国をまとめる重要なツールになるが、このままでは武器を必要とする国々は、日本を当てに出来ない。
その結果、武器を必要とする国は他国から買う。
それが米国や韓国であればまだいいが、中露からの購入を増やせば、その国はどんどん中露に取り込まれる。
日本は今こそ、現行3原則の思い切った緩和を行うべきなのだ。
もちろんリスク管理は必要だが、
「戦争を煽る」
のではなく、
「平和を守る」
ためなら武器輸出もするという明確な姿勢を打ち出さなければならない。
責任ある
「平和国家」
日本を目指す時なのだ。

武器輸出のあり方 ゼロベースで見直せ
正論2024年5月号
日本戦略研究フォーラム副会長・元防衛事務次官 島田和久
我々は今、戦後最も厳しく、前例のない時代を生きている。
日本の平和と安全を維持していくために求められる自助努力も、前例のないものになるだろう。
過去の政策をゼロベースで見直す必要がある。
その典型が、武器輸出を巡る問題だ。
これまでの経緯を振り返りつつ、課題を考えたい。
■武器輸出の実績
意外に思われるだろうが、日本は戦後、1950年代後半から1960年代にかけて、貴重な外貨獲得の手段として、毎年、東南アジアなどに向けて武器の輸出を行っていた。
例えば、ミャンマー(当時はビルマ)や南ベトナム向けに銃弾を、タイ向けに砲弾を、インドネシア向けに機関銃の部品を、台湾(当時は中華民国)向けに拳銃を輸出していた。
いずれも、法令に基づいて輸出許可を得て行われたものだ。
輸出管理当局は無限定に輸出を許可していたわけではなく、法令の運用として、次の場合は不許可としていた。
それは、
@共産圏諸国向けの場合
A国連安保理決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
B国際紛争中の当事国、又は、その恐れのある国向けの場合
の3つである。
この規定の運用方針については、1967(昭和42)年、佐藤栄作総理が国会で総理大臣として初めて答弁したことから、以降、
「武器輸出3原則」
と称されるようになる。
当然のことながら、佐藤総理は、3原則の対象地域以外の国へは輸出を認めると明言している。
武器輸出3原則は禁輸原則ではなく、文字通り、武器輸出を行うに際して拠るべき原則であった。
佐藤答弁以降も武器輸出は行われたが、野党からの批判などもあり、輸出管理当局の対応は慎重になっていった。
そのような中、当時の通産省の事務次官が記者会見で、
「通産省としては武器である限り、どんな地域へも輸出させない方針である」
と述べたとの報道がなされ、政官の不一致が指摘された。
これを受け、1976(昭和51)年、三木武夫総理が次のような見解を示した。
@3原則対象地域については、「武器」の輸出を認めない
A3原則対象地域以外の地域については、「武器」の輸出を慎む
「慎む」とは、輸出管理実務上、不許可を意味し、これにより、事実上、全面禁輸となったのである。
過去も現在も、武器は、法令(外為法)に基づき許可を得ることにより輸出が可能である。
憲法上、武器の輸出は禁じられてはいない。
武器輸出3原則も、先に述べた統一見解も、また現行の防衛装備移転3原則も、全て外為法の運用方針に過ぎない。
武器輸出に関して、
「憲法の平和主義」
に言及されることが多いが、戦後の武器輸出も、武器輸出3原則も、憲法の平和主義に則ったものなのである。
事実上の全面禁輸は、日本の国力の向上、国際貢献の必要性などにより、国益に反する状況が次々と生じた。
1983(昭和58)年の米国への武器技術の供与に始まり、自衛隊の平和維持活動(PKO)への参加、日米物品役務相互提供協定(ACSA)の締結、弾道ミサイル防衛(BMD)の日米共同開発など、内外の情勢変化に応じて個別の例外化措置が講じられた。
三木内閣の統一見解以降、2013(平成25)年までに例外化措置は21件に上った。
■防衛装備移転3原則
第2次安倍政権は、2013(平成25)年、我が国として初めて国家安全保障戦略を策定し、その中で
「積極的平和主義」
を打ち出した。
これに基づいて
「防衛装備移転3原則」
を定め、過去の例外化も踏まえつつ、移転を認める場合を包括的にルール化した。
原則1として、次の場合には移転を禁止することを明確化した。
@我が国が締結した条約その他の国際約束が禁じている場合
A国連安保理決議が禁じている場合
B紛争当事国への移転
これは、かつての武器輸出3原則に相当するネガティブ・リスト(原則として規制がない中で、例外として禁止するものを列挙した表)である。
尚、紛争当事国とは、
「国連安保理が紛争に際して平和維持・回復のための措置を取っている対象国」
を言い、具体的には、安保理決議により国連軍が組織され撃退の対象となった北朝鮮、湾岸戦争の際に安保理決議が容認した武力行使の対象となったイラクがこれに当たる。
侵略を受けている立場である現在のウクライナは紛争当事国には該当しない。
原則2は、移転を認める場合を次のような場合に限定し、透明性を確保して個別に厳格な審査をすることだ。
@平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合
A我が国の安全保障に資する場合
武器輸出3原則では、ネガティブ・リストに該当しない場合に、輸出を許可するか否かは輸出管理当局の裁量に委ねられていたが、本原則においては、輸出を認める場合を政府として、事前に明確化して透明性と予見可能性の確保を図ったのである。
原則3として、目的外使用及び第3国移転については、原則として我が国の事前同意を相手国政府に義務付けることとした。
尚、ヘルメット、防弾チョッキなど、武器というイメージがないものも対象となることから
「防衛装備」
という用語を用い、防衛装備の
「輸出」
に加え
「技術の提供」
も含まれるため
「移転」
という用語が用いられた。
本原則は、世界的に見ても例のない、明確性と透明性を持った、かつ、節度ある方針と言えるだろう。
しかし、問題は、下位規定である
「運用方針」
において、輸出可能な装備品を局限してしまったことだ。
与党の一部の要求であり、政府は当面支障ないと判断して要求を呑んだ。
この結果、他国と共同開発した装備品を共同開発相手国に輸出する場合を除いて、国産装備を完成品の形で輸出できるのは
「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」という「5類型」に該当するものだけに限られてしまったのである。
■国家安全保障戦略下での見直し
2022年12月に策定された新たな国家安全保障戦略において、
「防衛装備移転に関する制度の見直しについて検討する」
とされたことを受け、2023年12月末、10年ぶりに見直しが行われた。
具体的には、3つの原則自体には変更はないが、移転の意義として、我が国の安全保障上の重要な政策手段であること、地域における抑止力の向上に資すること、が本文に追加された。
その上で、運用指針の改正により、概ね以下の1〜6の実質的な見直しが行われた。
1 外国から技術を導入し国内で製造された「ライセンス生産品」の輸出について、従来は米国のみが対象で、かつ、部品のみの輸出に限定されていたが、米国以外でも、また、完成品も含めてライセンス元の国や、そこから第3国に輸出することが可能になった。
この結果、「ライセンス生産品」に限っては殺傷能力のある武器であっても完成品の形で輸出可能となった。
これを受け、政府は2023年末、米国からのライセンスで国内生産した地対空ミサイル「ペトリオット」を米国に輸出することを決定している。
ウクライナ支援によって在庫が不足している米国の要請に応えたものであり、具体的には、航空機や巡航ミサイルを迎撃するPAC2と、弾道ミサイルを迎撃するPAC3が対象になる模様だ。
ただし新ルートでも、ライセンス元の国から第3国への輸出については、
「現に戦闘が行われていると判断される国を除く」
とされた。
このため、米国からウクライナに提供することはできない。
2 民間事業者が日本国内で行う武器の修理について、従来は米軍のみに限定されていたが、米軍以外の武器の修理も可能とした。
近年、豪州や欧州などの同志国の部隊が本邦に来訪して訓練・演習を行う機会が増え、修理のニーズも増大していることを受けたものである。
3 武器の「部品」については総じて輸出可能とした。
例えば戦闘機の翼やエンジンなどは、それ自体では武器としての機能を発揮できないため、「部品」として輸出が可能になった。
4 「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型に該当するものであれば、本来業務や自己防衛のために必要があれば、殺傷能力のある武器を搭載していても輸出が可能であることを明確化した。
例えば、掃海艇に機雷処分用の機関銃が付いているのは掃海という本来業務のために必要であるし、輸送機に対艦ミサイルを迎撃する自己防衛用の武器が付いているのも通常であるが、そのような場合でも輸出可能であることを明確化した。
5 ウクライナに限られていた、防弾チョッキなど殺傷能力のない武器の輸出について、国際法違反の侵略などを受けた国へと対象を拡大した。
6 パートナー国と共同開発・生産した武器について、従来、パートナー国が第3国に完成品を輸出することは可能だが、新たに、維持整備のための部品や技術については我が国から第3国に直接、輸出を可能とした。
■積み残しの課題
2023年末の見直しで積み残しとなった大きな課題は、
@パートナー国と共同開発・生産した「完成品」の我が国から第3国への輸出
A安全保障面での協力関係にある国に対する「5類型以外の完成品」の輸出
である。
両者の論点の核心は、殺傷能力のある武器を完成品の形で輸出することを認めるか否かである。
いずれも防衛装備移転3原則上は認められるが、運用指針で禁止しているものだ。
このうち、@に関しては現在、英、伊と共同開発を進めている次期戦闘機について、2024年3月以降に作業分担に関する協議が本格化することから、政府は、
「我が国から第3国への直接移転ができなければ、我が国は、英、伊が重視している輸出による価格低減を行うことができず、結果として交渉上不利な立場に置かれ、自らの要求性能の実現が困難にある」
と訴えていた。
このような状況を受け、2024年3月15日、政府与党は
「輸出する対象は次期戦闘機に限る」
「輸出先は国連憲章の目的と原則に適合した使用を義務付ける防衛装備品・技術移転協定の締結国に限る」
「現に戦闘が行われている国には輸出しない」
との方針で合意した。
協定の締結国は、現在、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、オーストラリア、インド、シンガポール、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、アラブ首長国連邦の計15カ国であり、実際に輸出する際には、改めて個別案件ごとに与党協議や閣議決定を経る
「歯止め」
も設ける方針だ。
当面の要請を満たす最低限の改善はなされた。
残る課題は継続協議と言われているが、先行きは全く不透明だ。
■武器輸出反対について考える
この問題を考える際に、反対論の前提となっているのは、次のような考えであろう。
即ち、殺傷能力のある武器は悪。
武器輸出は紛争を助長する。
今のままでも日本の安全は維持できる。
しかし本当にそうであろうか。
▼抑止力を発揮するもの
抑止力の中核は実力であり、殺傷能力がある武器を持つからこそ抑止力となる。
殺傷能力があるからこそ、一方的な現状変更を断念させる力になる。
自由で平和な国際秩序を守ることができるのだ。
ヘルメットと防弾チョッキだけでは侵略を止めることはできない。
まずは、この冷厳な事実を真正面から受け止めるべきだろう。
▼紛争を助長するのか
「武器輸出は紛争を助長する」
という考えには、
「紛争国はどちらも悪い」
という発想があるのではないか。
今や国家間の問題を武力で解決することは国際法上許されないのだ。
しかし、ロシアのように国際法を踏みにじる国が存在する以上、侵略を排除するための実力の行使は必要であり合法なのである。
それを裏付ける武器の供与は、如何なる意味でも紛争を助長するものではない。
先に述べた
「ライセンス元の国から第3国への輸出」
「次期戦闘機の第3国移転」
について、いずれも
「現に戦闘が行われていると判断される国を除く」
とされたことも同様のは発想だろう。
抑止力の維持・強化のための輸出は許されるが、不幸にして抑止が破れ、侵略が開始された途端に輸出を止めることになる。
「紛争に加担しない」
「日本製の武器が海外で使われる人を殺すようなことがあってはならない」
と言うと聞こえは良い。
しかし、その実態は違法な侵略を受けた国も助けない、ということだ。
それは結果として侵略国を助けることになり、法の支配ではなく、力の支配を認めることを意味する。
2022年にノーベル平和賞を受賞したウクライナの人権団体「市民自由センター」のオレクサンドラ・マトビチュク代表はこう語っている。
「ウクライナの人々は世界の誰よりも平和を望んでいる」
「だが、攻撃を受けている側が武器を置いても、平和が訪れることはない」。
そして
「武器を使ってでも、法の支配を守る」。
法の支配に基づく国際秩序を守るために日本の武器が使われることを一律に排除するのでは、価値を共有する同盟国・同志国との連携強化の道を閉ざすことになりかねない。
国際社会は相互主義が基本原則でもある。
このままでは、いざという時に日本を支援してくれる国はなくなるかもしれない。
▼同盟国・同志国との絆の強化
かつて我が国の安全の確保策は、世界の警察官であった米国の力に依存し、細やかな自助努力として、米国から導入した武器を備えた自衛隊を維持してきた。
誤解を恐れず極論すれば、ザッツ・オール(That's all.)である。
我が国が武器を輸出することは、我が国の安全保障上の課題ではなかった。
しかし、今、世界は大きく変わった。
米国は世界の警察官の座を降り、最早米国ですら1国では自国の安全を確保することができない時代となった。
スウェーデン、フィンランドが永年に渡る中立政策を放棄しNATOに加わったことも、
「1国平和主義」
では国を守れなくなったことを雄弁に物語っている。
我が国も、同盟国・同志国との協力関係を一層強化していく必要がある。
その目的は、協力して抑止力を強化し、力による一方的な現状変更を許さないことだ。
そのカギとなるのはやはり武器なのだ。
日本製の武器を同盟国・同志国と共有することにより、その絆は分かち難いものとなる。
これが国際社会の現実である。
侵略を続けるロシアに対して、多くの国が厳しい制裁を科す中で、インドは明確な批判すら行っていない。
その大きな理由は、インド軍が武器の相当部分をロシアから導入しているからだ。
その比率は7割とも言われる。
1度導入した武器の運用期間は数十年に及ぶ。
武器を共有すれば、強固な関係はそれだけの期間続くのだ。
汎用品や民生品ではこうはいかない。
▼防衛産業の維持・強化
かつては寛大な米国からライセンス供与を受けて武器を国産することができた。
現在の主力戦闘機であるF-15の国産化率は70%以上に上った。
しかし、最早最新技術をお金で買うことはできない時代となった。
現在導入を進めている最新鋭のF-35戦闘機では機体技術は開示されず、我が国は出来上がった部材を輸入して最終組立と検査ができるだけだ。
自ら研究開発・生産を行わなければ、防衛産業を維持することはできない。
自衛隊は武器の製造だけでなく維持整備も防衛産業に依存している。
防衛産業が無くなれば、自衛隊は戦うことはできない。
だから、防衛産業は我が国の防衛力そのものなのだ。
防衛産業を適切に維持強化していくことは、個別企業の利益のためではなく、国民の安全を確保するためなのである。
国産の武器を自衛隊だけで使用するのでは生産数量も少なくコスト高になりがちであるが、同盟国・同志国と共有することができれば、量産効果により価格低減も可能となり、我が国と移転先国でウィン・ウィンの関係となる。
同時に、防衛産業基盤の維持・強化にも資する。
一石三鳥の効果がある。
▼共同開発への参画
武器の高度化・高額化が進み、開発のコストやリスクが増大する中にあって、戦闘機を含む最先端技術を取得する上では、パートナ国と協力して、資金・技術を分担する国際共同開発・生産が益々主流化しつつある。
米国も、2024年1月に策定した
「国家防衛産業戦略」
において、共同生産を重視する方針を明らかにしている。
このような潮流の中で、我が国から第3国への直接移転を行う仕組みが存在しなければ、我が国は価格低減の努力を行わない国と見られ、国際共同開発・生産のパートナー国として相応しくないと国際的に認識されてしまう。
同盟国・同志国との国際共同開発・生産への参加が困難となれば、いずれ我が国が求める性能を有する装備品の取得・維持が困難となり、我が国の防衛に支障を来すことになるだろう。
■平和国家とは
武器輸出に反対するのは、
「つまるところ平和国家としての信頼が崩れるからだ」
との主張を聞く。
しかし、一体誰に対する信頼であろうか。
かつて日本と戦火を交えた欧米諸国や豪州も、今や日本が自由で開かれた国際秩序の維持に積極的に寄与することを期待している。
日本が武器輸出を行っても、これら同盟国・同志国との信頼が崩れることはない。
かつて国内では大きな反対があった国連PKOへの参加や集団的自衛権の行使容認についても、世界からは歓迎されたのだ。
残る課題をクリアするため、
「運用方針」
が設けた制限を撤廃し
「防衛装備移転3原則」
本来の姿に立ち返るべきだ。
昭和から平成にかけて21件の個別の例外を重ねたように、場当たり的に例外措置を講じていくことは、国際的にも透明性に欠け、企業にとっても予見可能性に欠ける。
個々の輸出については、
「3原則」
に照らして、客観的・合理的にその妥当性を判断していくことが適当であろう。
日本が内向きの論理で
「何もしない平和国家」
であり続けることを喜ぶのは、力による一方的な現状変更を意図する国々だけだ。
権威主義国家を利することになる。
それは日本の国益を害するものだ。
1国平和主義の
「不都合な真実」
から目を背けるべきではない。

<正論>平和を気取る身勝手な偽善排せ 
麗澤大学特別教授、元空将・織田邦男
2024/3/1 8:00
https://www.sankei.com/article/20240301-VGYN7DDSYFJR7KWB4VFNBGJTPI/
ロシアのウクライナ侵攻から2年が経過した。
2023年10月からウクライナ東部の防衛拠点アウディーイウカで激戦が続いていたが、遂に露軍の手に落ちた。
米国の軍事支援が滞っている今、同拠点のみならず全局面でウクライナ軍は苦境に立たされている。
■ウクライナ支援継続、強化
「支援疲れ」
もあり、
「停戦」
をという声もある。
だが約18%の領土をロシアに占領されたまま停戦が実現すれば、軍事力による国境変更を禁じた戦後の国際規範は崩壊する。
しかもプーチン露大統領のいう
「停戦」
は、次なる戦争への準備期間にすぎず、真の平和が訪れる保証はない。
もし日本が侵略され、四国、九州、沖縄(合計で約15%)が占領されたところで、
「停戦」
を促されたらどう思うか。
約18%の領土を諦めるのは、ウクライナ国民にとって耐え難い事である。
「力による現状変更」
を認めないためにも日本は諸外国と連携しウクライナ支援を継続、強化しなければならない。
米国に対してはウクライナ支援継続を強く訴えるべきだ。
そのためにも日本自身が武器支援に踏み出す必要がある。
朝鮮戦争の際、日本は武器弾薬を輸出して国連軍に貢献した。
しかしながら1967年、佐藤栄作首相が共産圏・紛争当事国などへの武器輸出禁止を決め、1976年には三木武夫首相が
「武器輸出を慎む」
と答弁して武器輸出の全面禁止が定着した。
2014年、
「防衛装備移転3原則」
が閣議決定され厳格な審査を条件に武器輸出が認められた。
紛争当事国へや国連安保理決議に違反する場合、輸出はできない。
平和貢献・国際協力や日本の安全保障に資する場合などは認められる。
現在、「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型のみ認める指針で運用されている。
ウクライナは紛争当事国だから武器弾薬支援は認められない。
だがそれでいいのだろうか。
ウクライナを支援するのは戦後の国際規範維持のためであり、我が国の平和のためでもある。
単に
「殺傷兵器だから」
「紛争当事国だから」
と禁止するのは教条的過ぎる。
■「武器」と付くだけで拒否
万が一、日本が侵略された場合、自衛隊は国家国民を守るために敢然と立ち向かうだろう。
だが武器弾薬は決定的に不足し、他国の援助に頼らざるを得ない。
そんな時、諸外国が
「(日本がそうしたように)武器弾薬は日本に支援しない」
となることもあり得る。
それだけで日本の抑止力は低下する。
日本はその覚悟があるのか。
侵略に立ち向かうウクライナに武器支援をしないメリットは何か。
平和を気取る、独り善がりで身勝手な偽善に過ぎないのではないか。
侵略を許さない国際規範を守るため、あらゆる支援を尽くしてこそ国際社会で
「名誉ある地位を占める」
ことができる。
防衛装備移転3原則は法律ではなく、政府の意思さえあれば変更可能だ。
ウクライナ国民を守る
「防空兵器」
くらいは直ちに支援すべきだろう。
5類型に
「防空」
を加えればいい。
2023年末、運用指針改正でライセンス生産の地対空ミサイルを米国へ輸出することが可能になった。
これをウクライナにも広げるべきだ。
ウクライナに発電機、変圧器は供与しても防空兵器は供与しないというのは、国際社会に理解されないだろう。
かつて機関砲が付いた巡視艇は輸出できなかった。
自衛隊のトラックも銃の懸架台があるだけで供与できなかった。
「武器」
と付くだけで心情的に拒否する偽善を続けている場合ではない。
■国際社会で日本の孤立招くな
日本、英国、イタリアとで共同開発する次期戦闘機の第3国輸出に関する問題にも通底している。
共同開発品の直接輸出を巡っては、昨年春から自民、公明両党の実務者で慎重に検討がなされてきた。
2023年7月、実務者協議で容認の方向性が打ち出されたが、2023年11月になって突然、公明党幹部が
「ちゃぶ台返し」
をした。
この間何があったのか、ここでは触れない。
戦闘機は
「殺傷兵器」
ではあるが、開発装備品の輸出は
「友好国を作る」
「抑止力を強める」
「安価になり防衛力整備に貢献」
といった安全保障上のメリットが大きい。
装備品は高性能化、高価格化しており、今や1国では手に負えず、共同開発が主力である。
こんな時、共同開発国の日本だけが輸出できないのは、余りにも理不尽で共同開発国からの信頼も理解も得られない。
ロングボトム駐日英国大使も第3国輸出を巡り
「日本が防衛装備品の輸出ルールの変更を近く実現することが重要だ」
と述べ、
「(日英伊の)対等なパートナーシップに関わる」
と懸念を示している。
湾岸戦争では、日本だけが汗も流さず、130億ドル供与という金で済ませた結果、
「小切手外交」
「身勝手」
「価値観共有せず」
と非難され、孤立した。
国際社会での孤立は、軍事小国としては致命的である。
決して繰り返してはならない。
武器輸出についても諸外国と価値観を共有し、国際平和実現に貢献すべきである。

<主張>戦闘機合意先送り 公明は平和履き違えるな
社説
2024/2/29 5:00
https://www.sankei.com/article/20240229-EH4ACUXENFIPNOGWVRTDWIE5GU/
国際共同開発する防衛装備品の第3国輸出解禁を巡り、自民、公明両党が2024年2月中の合意を断念した。
次期戦闘機を念頭に置いた与党協議で、政府は2024年2月月内の決着を求めていたが、結論を先送りした。
公明が、政府側の説明が十分ではないとして慎重姿勢を崩さないのが最大の理由だ。
殺傷力の有無に拘わらず、国際共同開発する防衛装備品の第3国輸出は日本の守りにも資する。
それを理解しない公明の姿勢は問題で、先送りは残念だ。
公明は早期に容認に転じてもらいたい。
懸念されるのは、公明が
「一国平和主義」
の残滓に捉われている点だ。
日本だけを守れればよい、日本だけが平和であればよいという一国平和主義は、同盟国や同志国と共に抑止力を向上させて平和を守る努力を妨げる。
現代日本に戦乱や危機を呼び込みかねない反平和主義の一種とも言える。
「平和の党」
を掲げているように、公明が真剣に平和を願っていることは分かる。
日本の守りのために次期戦闘機の国際共同開発も容認した。
だが、第3国輸出の意義を理解せず慎重姿勢を崩さないのであれば、平和追求の方法が間違っている。
責任ある与党であり続けたいなら、平和を守る手立てを履き違えてはならない。
「積極的平和主義」
による平和の追求が必要な時代になった点を理解すべきだ。
日英伊3カ国が共同開発する次期戦闘機の第3国輸出を日本が拒めば数兆円かかる開発コストの低減幅が縮む。
価格上昇で英伊両国にも迷惑をかける。
日本には経済力の伸長著しい東南アジアなどへの輸出が期待されている。
日本が見送ると英伊両国がカバーすることは難しく、中国製やロシア製の戦闘機が東南アジア各国で採用されていく恐れもある。
この地域と中露の接近が進みかねない。
法の支配など基本的価値観を共有する友好国に、日本が戦闘機など軍の主要装備を輸出できれば、同志国への格上げを図れる。
東南アジアの民主主義国家などを、専制国家の覇権主義に対抗する抑止力向上の環に加えられれば、日本の安全保障環境の改善にも大きく寄与する。
このような広い視野に立って防衛装備品の輸出を容認するのが、積極的平和主義、現実的平和主義の道である。

防衛装備移転三原則G
防衛装備移転三原則I
武器弾薬なお不足 日本の支援に限界 マリウポリ陥落2年 記録映画各地で上映
2024年5月22日 産経新聞
ロシアによるウクライナ侵略で激戦地となった東部マリウポリの陥落から2024年5月20日で2年となった。
これに合わせ、当時の戦場を記録した映画
「マリウポリの20日間」
が日本各地で上映されている。
当時の惨状は武器・弾薬不足により東部などで苦戦する現在のウクライナの状況と
「二重写しだ」(日本政府関係者)
との声があり、支援国による武器提供の重要性が改めて浮き彫りとなっている。
「ロシア人になりたくない」
2022年2月、露軍の攻撃に避難したウクライナ人女性がこう訴えた。
爆発で足を吹き飛ばされて病院に運ばれたイルヤ君(16)は医師の治療のかいなく亡くなった。
一連の映像に対し露側が
「フェイクだ」
と反発する場面もあった。
映画を見た日本政府関係者は
「当時のマリウポリの惨状は武器・弾薬不足が深刻化して前線で苦戦する今のウクライナと重なる」
と話す。
最大の武器支援国である米国は2024年4月下旬、下院がウクライナへの緊急支援予算案を可決し、軍事支援の継続が決まったが、ウクライナ軍の後退を食い止めるほどに戦況が変化する気配はまだない。
米欧と連携しウクライナ支援を続ける日本は防衛装備移転3原則の運用指針などで、ウクライナに対し殺傷能力のある武器は提供できない。
こうした状況について日本政府内外からは疑問の声も上がっている。
長年、ロシアや欧州外交に携わってきた外務省幹部は
「紛争に巻き込まれないための外交は重要だ」
と強調する。
一方で、日本が重視する法の支配に基づく国際秩序に挑むロシアの侵略を許せば、
「日本にとって明日は我が身となる」
と指摘。
「(武器提供を含む)あらゆる支援を通じてウクライナを助けないと、日本が困った時に誰も助けてくれなくなる」
と懸念を示す。
外務省OBは
「どこの国でもできる武器支援を日本だけが国内事情でできない」
「そういう時代は過ぎていくべきだ」
と話している。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/681.html#c24

[政治・選挙・NHK294] 都知事選ポスター掲示板が《公衆電話のピンクチラシ》に…N国党“掲示板ジャック”は選挙制度の愚弄(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
50. 秘密のアッコちゃん[404] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月23日 13:44:24 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[517]
<■253行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
東京都知事選で候補者乱立 供託金没収1億円超の可能性も
2024/6/22 16:16
https://www.sankei.com/article/20240622-ZCI7RBL2XROEZA2Q2L6OVTBPJI/
2024年6月20日に告示された東京都知事選では史上最多の56人が立候補している。
都選管によると、都知事選は昭和22年以降、前回までに21回実施され、立候補者の平均は約12人。
これまでの最多記録は前回の22人で、過去最少は平成15年の5人だった。
現行公選法では、選挙を利用した売名行為を防ぐ目的で供託金制度が設けられている。
知事選の場合は1候補者につき300万円を予め供託し、得票が有効投票数の1割未満であれば供託金は没収され、都に納められる。
前回の都知事選では、当選した小池百合子氏を含む3人を除いた19人が没収の対象となり、合計額は5700万円に達した。
今回も多くの候補者が没収対象になるとみられ、合計額は1億円を超える可能性が高い。
にもかかわらず乱立が起こるのは、街頭演説や政見放送で得られる候補者や団体の宣伝効果のためとみられており、現行の供託金制度に疑問を投げかける有権者の声も多く聞かれる。
新宿区の60代の無職男性は
「いつも選挙公報などで政策を見ているが、これだけ多くの候補者がいると見きれないと思う」
と困惑気味。
これまで選挙には毎回欠かさず票を投じてきたという葛飾区の70代の無職女性は
「主義主張と関係のない人がこんなにたくさん出てくるのは、おかしいと思う」
と話した。

「掲示場をジャックせよ」 都知事選候補者乱立の陰で掲示枠「販売」に波紋
2024/6/22 15:12
https://www.sankei.com/article/20240622-6YZCQ3GS6BOGVEJVT7HR5N4RYI/
神宮通公園前に設置されている選挙ポスター。「ぱんちゃん璃奈」のポスターが多数を占めている=2024年6月22日午前、東京都渋谷区(相川直輝撮影)※画像を一部処理しています※
https://www.sankei.com/article/20240622-6YZCQ3GS6BOGVEJVT7HR5N4RYI/photo/677ZNE6UFJMLJG3BOV6CRTPQKU/
2024年6月20日に告示された東京都知事選(2024年7月7日投開票)で24人を擁立した政治団体が、ポスター掲示場の枠を事実上
「販売」
していることが波紋を広げている。
公職選挙法には権利譲渡を禁止する規定はないが、売名≠ネど本来の目的とは異なる掲示場の使用が行われており、有識者からは対策を求める声が出ている。
■「広告媒体」
「ポスター掲示場をジャックせよ。選挙ポスター掲示場の常識をぶっ壊す!」
政治団体
「NHKから国民を守る党」
の公式サイトは、こうした文言で参加者を募る。
具体的には1口2万5000円を
「寄付」
すると、都内約1万4000カ所のポスター掲示場のうち1カ所を選び、候補者の枠に自ら作成したポスターを貼る権利が与えられる。
1口の寄付額は2024年5月は5000円、2024年6月1〜19日は1万円だったが、告示以降更に引き上げられた。
同団体から出馬したのは関係団体を含め24人。
応募した人は掲示板の半分ほどを占める最大24枚分のポスターを貼れることになる。
同団体によると、2024年6月21日現在で約1000カ所分の応募があり、1人で約100カ所分を応募した人もいるという。
同団体としては、1口1万円、掲示場1万4000カ所で単純計算した場合、1億4000万円の寄付収入が入る可能性がある。
24人分の供託金(1人300万円)を支払っても6800万円の利益が出る計算だ。
同団体の代表は今回の
「ポスタージャック」
について紹介した動画の中で、配信サイトで生計を立てるユーチューバーを念頭に
「いわゆる末端でも有名な人でもご自身の主張をしていくには広告媒体としては最高だと思う」
とアピールする。
■選管に苦情殺到
同団体の担当者は
「寄付者に許可を出しているのであって、収益目的ではない」
と説明するが、ビジネス利用と取られかねない動きに対し、林芳正官房長官は2024年6月21日の記者会見で
「候補者自身の選挙運動用ポスターを掲示するために設置されるもので、候補者以外が使用できるものではない」
との見解を示した。
選挙運動を所管する総務省によると、公選法の規定では選挙ポスターは他候補の応援や虚偽内容でない限り自由で、チェックするための仕組みもない。
ただ、松本剛明総務相は
「公選法上、掲示の権利を売買するものとはされていない」
と指摘し、処罰対象になるかどうかは捜査機関が判断するとしている。
都選挙管理委員会には2024年6月21日までに
「同一のポスターが貼られているのは何なのか」
などとする苦情や問い合わせが1000件以上寄せられた。
また、大量擁立で候補者数が増え、1カ所の掲示場に貼れる最大数48を超えたため、都選管は候補者にクリアファイルを支給し、個別に増設を要請する対応を迫られた。
都内のある区選管関係者は
「税金で運営される以上、疑問は感じる」
「ただ、違反がなければ取り締まるのは現実的に難しい」
と漏らした。

■「広告収入制限など事業者側の規制必要」
白鳥浩・法政大大学院教授の話
行政の長を決める真摯な選択の場である選挙をビジネスにすることは、日本の民主主義自体を空洞化させ、政治不信を助長させる。
今回の
「掲示板ジャック」
は、供託金を没収されても掲示板を全部売れば収入が大きく上回り、ポスターを貼る様子を動画投稿するなど、選挙をビジネスモデルとして確立しようとする狙いがあると考えられる。
現行の公選法はインターネットがない時代に作られた法律で、ビジネスに利用される事態は想定されておらず、掲示板の内容は表現の自由の範囲であれば法的には問題ない。
制限することも検閲に当たるので難しい。
動画投稿サイトなどを使って広告収入を得ることと、選挙で政策を訴えることは切り分ける必要がある。
選挙期間中の候補者や、候補者が属する陣営が出すコンテンツなどに対し、事業者側が広告収入を制限するなどの規制が必要だ。

「政見放送がカオスに」「候補者に足切り条項を設けよ」千葉・熊谷知事が都知事選に懸念
2024/6/22 15:07
https://www.sankei.com/article/20240622-ER4GMHALK5JMJLUO4VIAFRIAAE/
千葉県の熊谷俊人知事が2024年6月22日、自身のX(旧ツイッター)で候補者が乱立し、選挙ポスターの過激な表現が問題になっている都知事選について
「今後は政見放送がカオスになるでしょう」
と懸念を示した。
選挙カーや選挙ポスター・ハガキなどが全て公費で賄われる現状に対し、
「ネット選挙の時代、選挙カー自体が不要という候補者もいる中、そろそろ公費支援の対象を見直す議論があって然るべきだ」
と主張した。
「ユーチューブで個人が利益を上げることが出来るようになった現代において、国政選挙や知事選などの大型選挙における選挙ポスターと政見放送は、売名行為として供託金分を回収できると見込めるものになっており、選挙の本質を大きく歪めるものだ」
と指摘した。
その上で、
「選挙の対象有権者の一部(数百〜数千)の署名提出をもって立候補者とするなどの足切り条項を設ける方が、供託金という『お金』を積んで足切りにするよりもマシだと思う」
「候補の乱立も防げるかと思う」
「今のままでは年を追う毎に酷い状況になるでしょう」
と訴えた。
マスメディアにも注文を付けた。
「マスメディアには表層的な報道ではなく、ましてや悪ふざけしている候補者を視聴率・インプレッション目的で過剰に取り上げ、売名目的を更に満たすような真似はせず、日本の公選法と諸外国の選挙関連の実態を比較の上で、日本の今に合った制度議論を展開して頂きたいと切に願います」
と結んだ。

都知事選の多数同一ポスター 選管に1000件以上の苦情殺到、電話鳴りやまず
2024/6/21 20:26
https://www.sankei.com/article/20240621-GTY7VFOXGNPC3PAOL7MRQFQD2A/
過去最多の56人が立候補した東京都知事選の選挙ポスター掲示板に、同じ人物やデザインのポスターが多数張られ、有権者に困惑が広がっている。
東京都選挙管理委員会には、告示翌日の2024年6月21日までに1000件以上の苦情や問い合わせが寄せられた。
同一のポスターが張られていることに関して
「何なのか」
などとするもので、担当者は
「電話がひっきりなしに鳴っている」
と話す。
中野区役所前の掲示板には、様々な人物の画像と共に、デザインの同じピンク色のポスターがずらりと張られていた。
QRコードも記載され、読み込むと特定の交流サイト(SNS)の画面に誘導される。
画像の人物のほとんどは選挙と無関係とみられる。
総務省によると、ポスターで他の候補者の選挙運動をすることや、虚偽があった場合は処罰の対象になる。
一方で、内容を直接制限する規定はなく、事前のチェックもない。

有権者「ばかにしている」 都知事選の掲示板に大量の同じポスター
2024/6/21(金) 20:30配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2e8b8f5edfcf38e783b0c9eedff08b500fda7baf
2024年6月20日に告示された東京都知事選(2024年7月7日投開票)で、候補者のポスターを張る掲示板に、同じポスターが大量に張られる事態が起きている。
候補者を24人擁立した政治団体が掲示板のスペースを寄付者に譲っていることが主な原因だ。
選挙と関係ない人物や主張が掲示板中に広がり、都民からは
「有権者を馬鹿にしている」
と憤りの声が上がっている。
東京都中野区の区役所前では2024年6月21日午後、候補者48人分を掲載できる横長の掲示板に、女性の写真が印刷されたピンク色のポスターが凹の形のように計24枚張られていた。
それぞれQRコードが印刷され、スマートフォンをかざすと有料サイトを宣伝するページに誘導された。
近くの50代女性は
「馬鹿にされているようだ」
「税金が使われているのだから、常識の範囲内で正しいものを張ってほしい」。
男性(74)も
「アイドルのポスターかと思った」
「張る内容を規制できる方法を考えてもいいのでは」
と呆れた。
毎日新聞は都内で、候補者ではない女性格闘家のポスターや、政治的主張が書かれたポスターなどが24枚ずつ張られた掲示板を複数確認した。
いずれも、政治団体
「NHKから国民を守る党」
に関係する24人の候補者がポスターを張るスペースだった。
同団体は、5000円〜1万円(現在は2万5000円)の寄付者に、ポスターを張るスペースを譲る方針を公表している。
立花孝志党首は2024年6月21日の記者会見で、一連の動きは
「掲示板は無駄だ」
と知ってもらうためだとした上で
「無くすか徹底的に減らすべきだ」
「大きな問題提起ができた」
と持論を展開した。
ただし、内容を把握できていないポスターもあるといい
「違法なものや事実と異なる政治的主張は私の判断で剥がす」
と説明する。
同団体以外でも、物議を醸すポスターが張られたケースがあった。
警視庁は2024年6月20日、選挙ポスター掲示板に卑わいなポスターを掲示したとして、都迷惑防止条例違反(卑猥な言動)の疑いで、諸派の男性候補者に警告を出した。
捜査関係者などによると、候補者とは別の女性が裸に近い姿で写り
「表現の自由への規制はやめろ」
などの記載があった。
警視庁は、ポスターが公共の場所で卑わいな言動をすることを禁じた都条例に違反すると判断。
2024年6月20日夜に候補者の男性を呼び出し、口頭で警告した。
都選管によると、大量のポスター掲示については2024年6月21日だけで1000件以上の苦情が寄せられた。
公職選挙法にはポスターを大量に張ることを禁じる規定はないといい、担当者は
「警察が事案毎に(違法性を)判断していくと思う」
「対応を見守りたい」
と話した。
元自治省(現総務省)選挙部長で公選法に詳しい片木淳弁護士は
「選挙と関係ないポスターを大量に張るのは不適切だ」
「選挙運動は有権者の投票行動を助けるためにあり、公選法が想定した選挙の在り方ではない」
と指摘している。

東京都知事選挙の掲示板に多数同一ポスター 有権者困惑
2024年6月21日 20:50
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC21COV0R20C24A6000000/
■東京都知事選のポスター掲示板
過去最多の56人が立候補した東京都知事選の選挙ポスター掲示板に、同じ人物やデザインのポスターが多数張られ、有権者に困惑が広がっている。
政治団体
「NHKから国民を守る党」
は、団体に寄付をした人の作ったポスターを掲示板に張っているとしており、制度の隙間を突いたとの意見も。
識者は
「規制を考えていく必要がある」
と指摘する。
「カワイイ私の政見放送を見てね」。
中野区役所前の掲示板には、様々な人物の画像と共に、デザインの同じピンク色のポスターがずらりと張られていた。
QRコードも記載され、読み込むと特定の交流サイト(SNS)の画面に誘導される。
画像の人物のほとんどは選挙と無関係とみられ、同区の男性会社員(57)は
「広告なのか、候補者ポスターなのか分からない」
「違和感を覚える」。
東京・秋葉原付近では、立候補していない女性キックボクサーとみられる人物のポスターが並び、スマートフォンで撮影する姿も。
総務省によると、ポスターで他の候補者の選挙運動をすることや、虚偽があった場合は処罰の対象になる。
一方で、内容を直接制限する規定はなく、事前のチェックもない。
林芳正官房長官は2024年6月21日の記者会見で
「(掲示板は)候補者以外が使用できるものではない」
と発言。
松本剛明総務相も
「公選法上、掲示の権利を売買するものとはされていない」
と述べた。
東京都選挙管理委員会には、2024年6月21日までに1000件以上の苦情や問い合わせが寄せられた。
同一のポスターが張られていることに関して
「何なのか」
などとするもので、担当者は
「電話がひっきりなしに鳴っている」
と話す。
法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は
「掲示板は候補者の政策や顔、人となりといった情報を有権者に提供するためにある」
「法に触れないとしても趣旨から外れた行為だ」
と批判する。
その上で
「表現の自由を考慮すれば直ちに法改正までする必要はないが、選挙運営の規則などで禁止していくべきだ」
「時代の変化に合わせて選挙の在り方を見直す時期が来ている」
と述べた。
団体の立花孝志党首は2024年6月21日の記者会見で、設置費用がかさむ掲示板をなくせば供託金の額が下がり、政治参加がしやすくなると主張。
今回の取り組みは
「非常に大きな問題提起だ」
と説明した。〔共同〕

ほぼ全裸の選挙ポスターは表現の自由か 警視庁が警告 専門家「適切な表現考えるべき」
2024/6/21 18:20
https://www.sankei.com/article/20240621-RDANH77JONLB5IWPLHI6HLWDYE/
東京都知事選(2024年7月7日投開票)で、ほぼ全裸状態の女性を使用したポスターが波紋を呼んでいる。
作成した候補者は
「表現の自由を訴えるため」
としているが、相次ぐ批判に警視庁が告示日当日の2024年6月20日、都迷惑防止条例違反の疑いで警告。
候補者はポスターを剥がすことに同意した。
都選管は今回のポスターについて
「公職選挙法に抵触していない」
との見解で、選挙と表現の自由を巡る論争は今後も続きそうだ。
■想定外の選挙運動
「子供に見せられない」。
都知事選の選挙掲示板のポスターを見た都内に住む40代の男性会社員は憤った。
問題視されたポスターには、胸や下半身の一部を隠したほぼ全裸の女性があしらわれた。
書かれている内容も
「売春合法化」
「表現の自由への規制はやめろ」
「モザイク解禁」
など数パターンある。
都選管の担当者は、
「告示日に都民から多くのお叱りを頂いた」
という。
一方、表現の自由を尊重する公選法には抵触していないとの判断で、
「選管として勝手に剥がすなどの措置はできない」
と警視庁に相談。
今回、警視庁がすぐに対応したため、候補者は警告を受けた2024年6月20日夜以降、問題のポスターの撤去を進めた。
■想定外の運動に困惑
選挙と表現の自由を巡っては、2024年4月の衆院東京15区補欠選挙で他陣営を妨害したなどとして代表らが逮捕された政治団体
「つばさの党」
の事件でも注目された。
都選管は、今回のポスターも含め
「想定外の選挙運動が出てきている」
「今後の選挙がどうなるのか」
と困惑を隠せない。
産経新聞の取材に問題の候補者は、
「法の範囲内で作成したつもりだが、警視庁がルールを示した以上従う」
とした。
■有権者は意思表示を
拓殖大政経学部の岡田陽介准教授は
「どの候補にも主張はあると思うが、世の中に与える影響を考えなければならない」
「掲示板は小学校の近くなどに設置されることが多く、子供への影響や適切な表現かは考えるべきだった」
と指摘。
多様な選挙手法が出てくる中、公選法の厳格化は法の隙間を狙ういたちごっこを生みかねず現実的ではないとして、
「多くの有権者が違和感を覚える手法もある」
「望まない選挙運動に対し、有権者が意見表明をすることで、より良い選挙に繋がる」
としている。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/679.html#c50

[政治・選挙・NHK294] れいわ新選組はなぜ都知事選を「静観」する? 今回出馬しない山本太郎代表は「小池百合子氏が最も悪い」(東京新聞 TOKYO Web) 達人が世直し
35. 秘密のアッコちゃん[405] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月23日 13:54:45 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[518]
<▽34行くらい>
<主張>沖縄慰霊の日 史実を歪めず追悼したい
社説
2024/6/23 5:00
https://www.sankei.com/article/20240623-IPPDTEFI4NP35EH2M4YLND2UFM/
沖縄戦の終結から79年となる
「慰霊の日」
を迎えた。
最後の激戦地となった沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園では2024年6月23日、
「沖縄全戦没者追悼式」
が営まれる。
熾烈な地上戦となった沖縄戦では、日本の軍民約18万8000人が亡くなった。
米軍は約1万2000人が命を落とした。
その犠牲の上に現在の平和があることを思い、全ての戦没者に哀悼の誠を捧げたい。
同時にこの平和を、守り抜くことを誓いたい。
沖縄戦は、沖縄の慶良間諸島に米軍が上陸した昭和20年3月26日から、摩文仁で守備隊の牛島満第32軍司令官が自決し、組織的戦闘が終結した1945年6月23日まで3カ月間続いた。
沖縄を守ろうと九州などからも陸海軍の特攻機2571機や空挺隊が出撃した。
県内の中等学校生らも鉄血勤皇隊やひめゆり学徒隊などに動員され、多くが戦没した。
秋待たで 枯れ行く島の 青草は 皇国の春に 甦(よみがえ)らなむ
牛島司令官の辞世の句だ。
沖縄は戦後27年間に渡り米国の統治下に置かれ、春が訪れたのは本土復帰を果たした昭和47(1972)年である。
その苦難の歴史にも思いを馳せたい。
ところが最近、那覇駐屯の陸上自衛隊第15旅団のホームページに牛島司令官の辞世の句が掲載されているのは問題であるとし、地元メディアや左派勢力が陸自へのバッシングを繰り広げている。
地元メディアは
「日本軍を美化」
「皇国史観だ」
などと批判しているが、辞世の句は、沖縄の再興を祈って詠んだものだ。
平成30(2018)年からホームページに掲載されているが、本土から最近沖縄に移住した記者が地元紙で取り上げるまで、特に問題になっていなかった。
沖縄では毎年、慰霊の日が近付くと一部の左派勢力が日本軍将兵を貶めるようなキャンペーンを展開し、それを米軍基地などへの反対運動に結び付ける傾向がみられる。
しかし多くの日本軍将兵が沖縄の地で国に殉じたのは事実だ。
県民も軍に協力し、懸命に戦った。
戦後のイデオロギーで史実を歪めるのは間違っている。
それは戦没者を慰霊することにも、沖縄の平和を守ることにも繋がらない。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/684.html#c35
[政治・選挙・NHK294] 蓮舫陣営が“敵の本丸”八王子に殴り込み! 猛烈「#萩生田百合子」批判の大合唱(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
24. 秘密のアッコちゃん[406] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月23日 14:14:36 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[519]
<■65行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
<主張>通常国会の閉幕 「国の根幹」進まなかった
社説
2024/6/23 5:00
https://www.sankei.com/article/20240623-U3XRSIZPX5NJ7OXR3P2VP5ZH5A/
通常国会が事実上閉幕した。
150日間の会期で経済安全保障上の機密情報へのアクセスを官民の有資格者に限る「重要経済安保情報保護・活用法」や政府の自治体への指示権を拡充する改正地方自治法、少子化対策関連法などが成立した。
日英伊が次期戦闘機を共同開発するための国際機関を設立する条約も承認された。
いずれも評価できる。
岸田文雄首相は記者会見で、多くの法律が成立したことを強調した。
ただ
「政治とカネ」
を巡る問題では、国民の信頼を取り戻せたとはいえない。
改正政治資金規正法を成立させたとはいえ、
「外国人・外国法人のパーティー券購入規制」

「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)
の改革は先送りされた。
自民党の派閥パーティー収入不記載事件についても不明な点が残った。
安定的な皇位継承に向けた皇族数確保について、各党の意見集約には至らなかった。
憲法改正の条文案作成にも着手できなかった。
極めて残念である。
国の根幹に関わる重要課題を進めるために、会期を延長すべきだったのではないか。
皇位継承策に関しては閉会中も与野党協議を進め、男系(父系)継承の大原則を踏まえた合意形成を急いでもらいたい。
憲法改正については南海トラフ巨大地震や首都直下地震、有事への備えとして、国会議員の任期延長など緊急事態条項の新設が急務だ。
国防規定がない現憲法は問題で、最低限、自衛隊明記は必要である。
終盤国会で立憲民主党は、条文化を進めた場合、参院側で全ての法案審議に応じない意向を示した。
このようなやり方で改憲を阻止しようとする立民の見識を疑う。
最後の定例日だった2024年6月20日の衆院憲法審査会も、立民が内閣不信任決議案を提出した影響で開催できなかった。
自民、公明党、日本維新の会、国民民主党などは閉会中の審査を求めている。
立民は応じるべきだ。
閉会中審査で議論すべき課題はまだある。
ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が、軍事同盟と言える
「包括的戦略パートナーシップ条約」
に署名した。
日本への脅威は格段に高まる。
緊迫化する安保環境を踏まえた審議が必要だ。

<産経抄>平和ボケ国会とほくそ笑む金正恩氏
2024/6/22 5:00
https://www.sankei.com/article/20240622-J6AQAYKDHRJEZN72P5BSM36W6U/
2018年6月、シンガポールで当時のトランプ米大統領と初めて会談した際の北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の顔は緊張でこわばり、歩みはぎこちなかった。
それから6年が経ち、今度はプーチン露大統領を平壌に迎えた金氏は終始リラックスした表情で、余裕すら窺えた。
▼北は2017年9月に6回目の核実験を実施し、米西海岸まで届く大陸間弾道弾(ICBM)搭載用の水爆実験に
「完全に成功した」
と発表した。
2017年9月に訪米し、トランプ氏と会談した安倍晋三首相は帰国後、抄子に情勢の緊迫を告げた。
「金氏は凄く臆病だから自分からは絶対先制攻撃しない」
「一方で米国が来年(2018年)、先制攻撃する可能性が出ている」
▼実際、米国は当時、金氏個人を狙った
「斬首作戦」
から広範囲を攻撃する核兵器使用まであらゆる選択肢を検討していた。
自衛隊幹部も朝鮮半島有事では
「拉致被害者救出のため自衛隊を出したい」
と漏らしていた。
金氏が米朝首脳会談に臨んだのは、このままでは自身の命が危ういと考えたからだろう。
▼今回、金氏とプーチン氏が署名した
「包括的戦略パートナーシップ条約」
には、互いの有事に
「軍事援助を提供する」
との文言がある。
朝鮮半島有事に、ロシアが軍事介入する道を開いたもので、米国の軍事的圧力に怯えてきた金氏がほくそ笑む姿が目に浮かぶようである。
▼核大国を目指し着々と歩を進めてきた北が、ロシアという老舗の核大国と手を握ったとあっては、米国も迂闊には手出しできない。
中国の脅威も合わせ、我が国を取り巻く安全保障環境はかつてなく厳しい。
▼にもかかわらず、2024年6月21日に事実上閉会した通常国会は
「政治とカネ」
に明け暮れた。
平和ボケは病膏肓(やまいこうこう)に入っている。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/682.html#c24

[政治・選挙・NHK294] 小池都知事「7つのウソ・デタラメ」…首都決戦告示から2日で早くも露呈(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
24. 秘密のアッコちゃん[407] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月24日 11:50:13 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[520]
<■896行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
都知事選、風俗店広告ポスターで警告 風営法違反疑い
2024年6月23日 21:03
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE231FX0T20C24A6000000/#:~
東京都知事選の選挙ポスター掲示板に風俗店の広告ポスターを張ったとして、警視庁は2024年6月23日までに、政治団体の党首に風営法違反の疑いで警告した。
捜査関係者への取材で分かった。
捜査関係者によると、警告は2024年6月22日付。
「NHKから国民を守る党」
の立花孝志党首に出された。
渋谷区の掲示板に女性専用風俗店を紹介するポスターを張っていた。
政治団体側は警告に応じ、既にポスターを張り直すなどの対応をしているという。
都知事選のポスター掲示を巡っては、ほぼ全裸の女性のポスターを張ったとして、警視庁が2024年6月20日に都迷惑防止条例違反の疑いで候補者に警告した。〔共同〕

「公選法改正見直し必要」自民・田村氏
産経新聞2024年6月24日
自民党の田村憲久政調会長代行は2024年6月23日のフジテレビ番組で、東京都知事選の選挙ポスター掲示板に同一のポスターが多数張られた問題に関し、公選法を念頭に見直しが必要だとの認識を示した。
「知事選を目的にしていないなら大きな問題だ」
「法改正を含め検討しなければならない」
と述べた。
2024年6月19日に成立した改正政治資金規正法では、抜け道が残った可能性にも言及した。
オンラインによる政治資金パーティー開催を挙げ
「あまり準備もかからず一定程度の金が集められる」
「透明性がないとすれば見直す必要がある」
と語った。
政治資金パーティー収入不記載事件の対応を巡り、岸田文雄首相への批判が党内で上がっていることについては
「総裁が代わっても支持率が上がるほど甘い状況ではない」
と指摘した。

東京都知事選で候補者乱立 供託金没収1億円超の可能性も
2024/6/22 16:16
https://www.sankei.com/article/20240622-ZCI7RBL2XROEZA2Q2L6OVTBPJI/
2024年6月20日に告示された東京都知事選では史上最多の56人が立候補している。
都選管によると、都知事選は昭和22年以降、前回までに21回実施され、立候補者の平均は約12人。
これまでの最多記録は前回の22人で、過去最少は平成15年の5人だった。
現行公選法では、選挙を利用した売名行為を防ぐ目的で供託金制度が設けられている。
知事選の場合は1候補者につき300万円を予め供託し、得票が有効投票数の1割未満であれば供託金は没収され、都に納められる。
前回の都知事選では、当選した小池百合子氏を含む3人を除いた19人が没収の対象となり、合計額は5700万円に達した。
今回も多くの候補者が没収対象になるとみられ、合計額は1億円を超える可能性が高い。
にもかかわらず乱立が起こるのは、街頭演説や政見放送で得られる候補者や団体の宣伝効果のためとみられており、現行の供託金制度に疑問を投げかける有権者の声も多く聞かれる。
新宿区の60代の無職男性は
「いつも選挙公報などで政策を見ているが、これだけ多くの候補者がいると見きれないと思う」
と困惑気味。
これまで選挙には毎回欠かさず票を投じてきたという葛飾区の70代の無職女性は
「主義主張と関係のない人がこんなにたくさん出てくるのは、おかしいと思う」
と話した。

「掲示場をジャックせよ」 都知事選候補者乱立の陰で掲示枠「販売」に波紋
2024/6/22 15:12
https://www.sankei.com/article/20240622-6YZCQ3GS6BOGVEJVT7HR5N4RYI/
神宮通公園前に設置されている選挙ポスター。「ぱんちゃん璃奈」のポスターが多数を占めている=2024年6月22日午前、東京都渋谷区(相川直輝撮影)※画像を一部処理しています※
https://www.sankei.com/article/20240622-6YZCQ3GS6BOGVEJVT7HR5N4RYI/photo/677ZNE6UFJMLJG3BOV6CRTPQKU/
2024年6月20日に告示された東京都知事選(2024年7月7日投開票)で24人を擁立した政治団体が、ポスター掲示場の枠を事実上
「販売」
していることが波紋を広げている。
公職選挙法には権利譲渡を禁止する規定はないが、売名≠ネど本来の目的とは異なる掲示場の使用が行われており、有識者からは対策を求める声が出ている。
■「広告媒体」
「ポスター掲示場をジャックせよ。選挙ポスター掲示場の常識をぶっ壊す!」
政治団体
「NHKから国民を守る党」
の公式サイトは、こうした文言で参加者を募る。
具体的には1口2万5000円を
「寄付」
すると、都内約1万4000カ所のポスター掲示場のうち1カ所を選び、候補者の枠に自ら作成したポスターを貼る権利が与えられる。
1口の寄付額は2024年5月は5000円、2024年6月1〜19日は1万円だったが、告示以降更に引き上げられた。
同団体から出馬したのは関係団体を含め24人。
応募した人は掲示板の半分ほどを占める最大24枚分のポスターを貼れることになる。
同団体によると、2024年6月21日現在で約1000カ所分の応募があり、1人で約100カ所分を応募した人もいるという。
同団体としては、1口1万円、掲示場1万4000カ所で単純計算した場合、1億4000万円の寄付収入が入る可能性がある。
24人分の供託金(1人300万円)を支払っても6800万円の利益が出る計算だ。
同団体の代表は今回の
「ポスタージャック」
について紹介した動画の中で、配信サイトで生計を立てるユーチューバーを念頭に
「いわゆる末端でも有名な人でもご自身の主張をしていくには広告媒体としては最高だと思う」
とアピールする。
■選管に苦情殺到
同団体の担当者は
「寄付者に許可を出しているのであって、収益目的ではない」
と説明するが、ビジネス利用と取られかねない動きに対し、林芳正官房長官は2024年6月21日の記者会見で
「候補者自身の選挙運動用ポスターを掲示するために設置されるもので、候補者以外が使用できるものではない」
との見解を示した。
選挙運動を所管する総務省によると、公選法の規定では選挙ポスターは他候補の応援や虚偽内容でない限り自由で、チェックするための仕組みもない。
ただ、松本剛明総務相は
「公選法上、掲示の権利を売買するものとはされていない」
と指摘し、処罰対象になるかどうかは捜査機関が判断するとしている。
都選挙管理委員会には2024年6月21日までに
「同一のポスターが貼られているのは何なのか」
などとする苦情や問い合わせが1000件以上寄せられた。
また、大量擁立で候補者数が増え、1カ所の掲示場に貼れる最大数48を超えたため、都選管は候補者にクリアファイルを支給し、個別に増設を要請する対応を迫られた。
都内のある区選管関係者は
「税金で運営される以上、疑問は感じる」
「ただ、違反がなければ取り締まるのは現実的に難しい」
と漏らした。

■「広告収入制限など事業者側の規制必要」
白鳥浩・法政大大学院教授の話
行政の長を決める真摯な選択の場である選挙をビジネスにすることは、日本の民主主義自体を空洞化させ、政治不信を助長させる。
今回の
「掲示板ジャック」
は、供託金を没収されても掲示板を全部売れば収入が大きく上回り、ポスターを貼る様子を動画投稿するなど、選挙をビジネスモデルとして確立しようとする狙いがあると考えられる。
現行の公選法はインターネットがない時代に作られた法律で、ビジネスに利用される事態は想定されておらず、掲示板の内容は表現の自由の範囲であれば法的には問題ない。
制限することも検閲に当たるので難しい。
動画投稿サイトなどを使って広告収入を得ることと、選挙で政策を訴えることは切り分ける必要がある。
選挙期間中の候補者や、候補者が属する陣営が出すコンテンツなどに対し、事業者側が広告収入を制限するなどの規制が必要だ。

「政見放送がカオスに」「候補者に足切り条項を設けよ」千葉・熊谷知事が都知事選に懸念
2024/6/22 15:07
https://www.sankei.com/article/20240622-ER4GMHALK5JMJLUO4VIAFRIAAE/
千葉県の熊谷俊人知事が2024年6月22日、自身のX(旧ツイッター)で候補者が乱立し、選挙ポスターの過激な表現が問題になっている都知事選について
「今後は政見放送がカオスになるでしょう」
と懸念を示した。
選挙カーや選挙ポスター・ハガキなどが全て公費で賄われる現状に対し、
「ネット選挙の時代、選挙カー自体が不要という候補者もいる中、そろそろ公費支援の対象を見直す議論があって然るべきだ」
と主張した。
「ユーチューブで個人が利益を上げることが出来るようになった現代において、国政選挙や知事選などの大型選挙における選挙ポスターと政見放送は、売名行為として供託金分を回収できると見込めるものになっており、選挙の本質を大きく歪めるものだ」
と指摘した。
その上で、
「選挙の対象有権者の一部(数百〜数千)の署名提出をもって立候補者とするなどの足切り条項を設ける方が、供託金という『お金』を積んで足切りにするよりもマシだと思う」
「候補の乱立も防げるかと思う」
「今のままでは年を追う毎に酷い状況になるでしょう」
と訴えた。
マスメディアにも注文を付けた。
「マスメディアには表層的な報道ではなく、ましてや悪ふざけしている候補者を視聴率・インプレッション目的で過剰に取り上げ、売名目的を更に満たすような真似はせず、日本の公選法と諸外国の選挙関連の実態を比較の上で、日本の今に合った制度議論を展開して頂きたいと切に願います」
と結んだ。

都知事選の多数同一ポスター 選管に1000件以上の苦情殺到、電話鳴りやまず
2024/6/21 20:26
https://www.sankei.com/article/20240621-GTY7VFOXGNPC3PAOL7MRQFQD2A/
過去最多の56人が立候補した東京都知事選の選挙ポスター掲示板に、同じ人物やデザインのポスターが多数張られ、有権者に困惑が広がっている。
東京都選挙管理委員会には、告示翌日の2024年6月21日までに1000件以上の苦情や問い合わせが寄せられた。
同一のポスターが張られていることに関して
「何なのか」
などとするもので、担当者は
「電話がひっきりなしに鳴っている」
と話す。
中野区役所前の掲示板には、様々な人物の画像と共に、デザインの同じピンク色のポスターがずらりと張られていた。
QRコードも記載され、読み込むと特定の交流サイト(SNS)の画面に誘導される。
画像の人物のほとんどは選挙と無関係とみられる。
総務省によると、ポスターで他の候補者の選挙運動をすることや、虚偽があった場合は処罰の対象になる。
一方で、内容を直接制限する規定はなく、事前のチェックもない。

有権者「ばかにしている」 都知事選の掲示板に大量の同じポスター
2024/6/21(金) 20:30配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2e8b8f5edfcf38e783b0c9eedff08b500fda7baf
2024年6月20日に告示された東京都知事選(2024年7月7日投開票)で、候補者のポスターを張る掲示板に、同じポスターが大量に張られる事態が起きている。
候補者を24人擁立した政治団体が掲示板のスペースを寄付者に譲っていることが主な原因だ。
選挙と関係ない人物や主張が掲示板中に広がり、都民からは
「有権者を馬鹿にしている」
と憤りの声が上がっている。
東京都中野区の区役所前では2024年6月21日午後、候補者48人分を掲載できる横長の掲示板に、女性の写真が印刷されたピンク色のポスターが凹の形のように計24枚張られていた。
それぞれQRコードが印刷され、スマートフォンをかざすと有料サイトを宣伝するページに誘導された。
近くの50代女性は
「馬鹿にされているようだ」
「税金が使われているのだから、常識の範囲内で正しいものを張ってほしい」。
男性(74)も
「アイドルのポスターかと思った」
「張る内容を規制できる方法を考えてもいいのでは」
と呆れた。
毎日新聞は都内で、候補者ではない女性格闘家のポスターや、政治的主張が書かれたポスターなどが24枚ずつ張られた掲示板を複数確認した。
いずれも、政治団体
「NHKから国民を守る党」
に関係する24人の候補者がポスターを張るスペースだった。
同団体は、5000円〜1万円(現在は2万5000円)の寄付者に、ポスターを張るスペースを譲る方針を公表している。
立花孝志党首は2024年6月21日の記者会見で、一連の動きは
「掲示板は無駄だ」
と知ってもらうためだとした上で
「無くすか徹底的に減らすべきだ」
「大きな問題提起ができた」
と持論を展開した。
ただし、内容を把握できていないポスターもあるといい
「違法なものや事実と異なる政治的主張は私の判断で剥がす」
と説明する。
同団体以外でも、物議を醸すポスターが張られたケースがあった。
警視庁は2024年6月20日、選挙ポスター掲示板に卑わいなポスターを掲示したとして、都迷惑防止条例違反(卑猥な言動)の疑いで、諸派の男性候補者に警告を出した。
捜査関係者などによると、候補者とは別の女性が裸に近い姿で写り
「表現の自由への規制はやめろ」
などの記載があった。
警視庁は、ポスターが公共の場所で卑わいな言動をすることを禁じた都条例に違反すると判断。
2024年6月20日夜に候補者の男性を呼び出し、口頭で警告した。
都選管によると、大量のポスター掲示については2024年6月21日だけで1000件以上の苦情が寄せられた。
公職選挙法にはポスターを大量に張ることを禁じる規定はないといい、担当者は
「警察が事案毎に(違法性を)判断していくと思う」
「対応を見守りたい」
と話した。
元自治省(現総務省)選挙部長で公選法に詳しい片木淳弁護士は
「選挙と関係ないポスターを大量に張るのは不適切だ」
「選挙運動は有権者の投票行動を助けるためにあり、公選法が想定した選挙の在り方ではない」
と指摘している。

東京都知事選挙の掲示板に多数同一ポスター 有権者困惑
2024年6月21日 20:50
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC21COV0R20C24A6000000/
■東京都知事選のポスター掲示板
過去最多の56人が立候補した東京都知事選の選挙ポスター掲示板に、同じ人物やデザインのポスターが多数張られ、有権者に困惑が広がっている。
政治団体
「NHKから国民を守る党」
は、団体に寄付をした人の作ったポスターを掲示板に張っているとしており、制度の隙間を突いたとの意見も。
識者は
「規制を考えていく必要がある」
と指摘する。
「カワイイ私の政見放送を見てね」。
中野区役所前の掲示板には、様々な人物の画像と共に、デザインの同じピンク色のポスターがずらりと張られていた。
QRコードも記載され、読み込むと特定の交流サイト(SNS)の画面に誘導される。
画像の人物のほとんどは選挙と無関係とみられ、同区の男性会社員(57)は
「広告なのか、候補者ポスターなのか分からない」
「違和感を覚える」。
東京・秋葉原付近では、立候補していない女性キックボクサーとみられる人物のポスターが並び、スマートフォンで撮影する姿も。
総務省によると、ポスターで他の候補者の選挙運動をすることや、虚偽があった場合は処罰の対象になる。
一方で、内容を直接制限する規定はなく、事前のチェックもない。
林芳正官房長官は2024年6月21日の記者会見で
「(掲示板は)候補者以外が使用できるものではない」
と発言。
松本剛明総務相も
「公選法上、掲示の権利を売買するものとはされていない」
と述べた。
東京都選挙管理委員会には、2024年6月21日までに1000件以上の苦情や問い合わせが寄せられた。
同一のポスターが張られていることに関して
「何なのか」
などとするもので、担当者は
「電話がひっきりなしに鳴っている」
と話す。
法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は
「掲示板は候補者の政策や顔、人となりといった情報を有権者に提供するためにある」
「法に触れないとしても趣旨から外れた行為だ」
と批判する。
その上で
「表現の自由を考慮すれば直ちに法改正までする必要はないが、選挙運営の規則などで禁止していくべきだ」
「時代の変化に合わせて選挙の在り方を見直す時期が来ている」
と述べた。
団体の立花孝志党首は2024年6月21日の記者会見で、設置費用がかさむ掲示板をなくせば供託金の額が下がり、政治参加がしやすくなると主張。
今回の取り組みは
「非常に大きな問題提起だ」
と説明した。〔共同〕

ほぼ全裸の選挙ポスターは表現の自由か 警視庁が警告 専門家「適切な表現考えるべき」
2024/6/21 18:20
https://www.sankei.com/article/20240621-RDANH77JONLB5IWPLHI6HLWDYE/
東京都知事選(2024年7月7日投開票)で、ほぼ全裸状態の女性を使用したポスターが波紋を呼んでいる。
作成した候補者は
「表現の自由を訴えるため」
としているが、相次ぐ批判に警視庁が告示日当日の2024年6月20日、都迷惑防止条例違反の疑いで警告。
候補者はポスターを剥がすことに同意した。
都選管は今回のポスターについて
「公職選挙法に抵触していない」
との見解で、選挙と表現の自由を巡る論争は今後も続きそうだ。
■想定外の選挙運動
「子供に見せられない」。
都知事選の選挙掲示板のポスターを見た都内に住む40代の男性会社員は憤った。
問題視されたポスターには、胸や下半身の一部を隠したほぼ全裸の女性があしらわれた。
書かれている内容も
「売春合法化」
「表現の自由への規制はやめろ」
「モザイク解禁」
など数パターンある。
都選管の担当者は、
「告示日に都民から多くのお叱りを頂いた」
という。
一方、表現の自由を尊重する公選法には抵触していないとの判断で、
「選管として勝手に剥がすなどの措置はできない」
と警視庁に相談。
今回、警視庁がすぐに対応したため、候補者は警告を受けた2024年6月20日夜以降、問題のポスターの撤去を進めた。
■想定外の運動に困惑
選挙と表現の自由を巡っては、2024年4月の衆院東京15区補欠選挙で他陣営を妨害したなどとして代表らが逮捕された政治団体
「つばさの党」
の事件でも注目された。
都選管は、今回のポスターも含め
「想定外の選挙運動が出てきている」
「今後の選挙がどうなるのか」
と困惑を隠せない。
産経新聞の取材に問題の候補者は、
「法の範囲内で作成したつもりだが、警視庁がルールを示した以上従う」
とした。
■有権者は意思表示を
拓殖大政経学部の岡田陽介准教授は
「どの候補にも主張はあると思うが、世の中に与える影響を考えなければならない」
「掲示板は小学校の近くなどに設置されることが多く、子供への影響や適切な表現かは考えるべきだった」
と指摘。
多様な選挙手法が出てくる中、公選法の厳格化は法の隙間を狙ういたちごっこを生みかねず現実的ではないとして、
「多くの有権者が違和感を覚える手法もある」
「望まない選挙運動に対し、有権者が意見表明をすることで、より良い選挙に繋がる」
としている。

東京都の小池百合子知事 学歴記載は「これまで通りです」
2024/6/18 16:07
https://www.sankei.com/article/20240618-MTCI3CQRONMFNN2KCWS2FCTBXI/
東京都の小池百合子知事は2024年6月18日、自身の元側近が、学歴を詐称した疑いがあるとして小池氏に対する公選法違反(虚偽事項の公表)罪での告発状を東京地検に提出したことに関して報道陣の取材に答え、
「選挙(都知事選)に入るに当たってそのような行動をされるのは如何なものか」
と批判した。
その上で、2024年6月20日告示の都知事選で、選挙公報に記載する自身の学歴について
「これまで通りです」
と述べた。

学歴詐称の疑いで小池百合子都知事の告発状を東京地検に提出 元側近の小島敏郎氏
2024/6/18 12:53
https://www.sankei.com/article/20240618-XPO3L3KSWNIDJNRYQ7R2WTOLAE/
東京都知事選(2024年6月20日告示、2024年7月7日投開票)に出馬を表明した小池百合子都知事が学歴を詐称していた疑いがあるとして、小池氏に対する公選法違反(虚偽事項の公表)罪での告発状を2024年6月18日、小池氏の元側近で元都特別顧問の小島敏郎氏が東京地検に提出した。
関係者への取材で分かった。
関係者によると、告発状は小池氏がエジプトのカイロ大学を卒業していないのにカイロ大卒という肩書を長年、公表し、学歴に対する疑惑が生じても訂正しなかったことなどが虚偽事項の公表にあたるとしている。
公選法は選挙の候補者の他、出馬を表明するなどして
「候補者になろうとする者」
についても虚偽の経歴の公表を禁じ、違反した場合は2年以下の禁錮、または30万円以下の罰金を科すとしている。
小池氏の学歴を巡っては前回都知事選直前の令和2年6月、小池氏の卒業を認めるカイロ大学長名の声明文が公表された。
告発状は声明文作成に小池氏が関与した疑いがあるとしている。
小池氏はこれまでの会見で
「声明は大学当局が意思をもって出されたと認識している」
など述べるなどして疑惑を否定している。

小池都知事元側近、やりとりのメールは「証拠として保全」 会見で改めて学歴詐称主張
2024/4/17 20:02
https://www.sankei.com/article/20240417-HSGE4TCH7VA6XCDX7OQD4PCMIQ/
東京都の小池百合子知事が学歴を詐称しているとの主張を改めて展開した、元側近の小島敏郎氏による2024年4月17日の会見。
予定時間を超過して質疑が行われるなど、一定の注目度の高さを窺わせた。
日本外国特派員協会(千代田区)で行われた会見は、午後3時頃から始まった。
小島氏は会見の冒頭で、小池氏の
「カイロ大卒」
との学歴について令和2(2020)年に詐称疑惑が取り沙汰された際、卒業証明の声明を同大から出してもらうことを自身が小池氏へ提案したことなど、月刊誌上で既に発表した経緯を改めて説明。
当時の小池氏とのやり取りのメールなどは、
「証拠として保全している」
と説明した。
今後、小池氏がカイロ大卒と明記して選挙に出た場合、小島氏は公職選挙法違反の罪での刑事告訴を示唆。
その後の質疑で記者から、
「証拠」
を提示するよう求められると、
「訴訟の段階になれば、全てを明らかにする」
「裁判官や検察官に(証拠を)出す」
などと説明した。
会見は当初予定の1時間を超え、1時間半ほどに渡って行われた。

小池百合子都知事の学歴疑惑告発の元側近会見「正確にお答えを」 刑事告発の可能性も示唆
2024/4/17 18:21
https://www.sankei.com/article/20240417-U7QSJIAEOBMXVFRFDOZESQ6UEY/
東京都の小池百合子知事のカイロ大卒業を認める同大学長名の2020(令和2)年の声明文を巡り、月刊誌で学歴詐称を主張している小池氏の元側近、小島敏郎氏(75)が2024年4月17日、都内で記者会見した。
小島氏は
「学歴詐称は公職選挙法違反に問われかねない」
「(小池氏には)正確にお答え願いたい」
と求めた。
問題となっているのは
「学歴詐称疑惑の隠蔽工作に加担した」
と小島氏が告発したとする
「文芸春秋」
の記事。
小島氏は声明文が小池氏側の主導で作成された可能性があると指摘した。
その上で、小池氏の経歴に疑義が生じているとして、今後、カイロ大卒と明記して小池氏が選挙に出た場合、公職選挙法違反の罪で刑事告発する可能性を示唆した。
小島氏は、小池氏が特別顧問を務める
「都民ファーストの会」
元事務総長。
旧築地市場の豊洲移転を巡り、移転に否定的な立場から小池氏をサポートした。
小池氏はこの記事に対し2024年4月12日の定例記者会見で、
「声明は大学当局が意思をもって出されたと認識している」
と反論している。

小池都知事、カイロ大卒「大学が卒業を認めている」 声明は「大学が意志を持って発出」
2024/4/12 14:36
https://www.sankei.com/article/20240412-Z73SM2XGSBO2FBKIRUMT2L2YEE/
東京都の小池百合子知事は2024年4月12日に都庁で開かれた定例記者会見で、前回都知事選直前の令和2年6月に自身がカイロ大を卒業したことを認めた大学側の声明の作成に、当時小池氏の周辺にいた人物が関わったとする一部報道について、
「記事が出たことは承知しているが大前提が違う」
「卒業していないと言っておられるが、大学が卒業を認めている」
と述べた。
小池氏はこれまでも同様の説明を繰り返し卒業証書も示してきたとして、
「選挙の度にこうした記事が出るのは残念だ」
とした上で
「卒業を証明するのは大学で、(カイロ)大学が何度も(卒業を)証明している」
と強調。
文案を小池氏側で作成したとされたことに
「大学が意志を持って発出された」
と指摘した。
月刊誌『文芸春秋』2024年5月号に掲載された記事によると、令和2(2020)年6月に駐日エジプト大使館のフェイスブックに掲載された小池氏のカイロ大卒の経歴を
「証明する」
とした声明の作成過程を指摘。
元環境省官僚で当時は小池氏が特別顧問を務める都民ファーストの会事務総長だった小島敏郎氏が公開した手記では、小池氏から文書作成の協力を求められたとしている他、作成に他の周辺人物も関わっていたと指摘。
小島氏が卒業の事実に関して疑義を示している。

小池百合子都知事とカイロ大学、そのどす黒い闇 学歴詐称より深刻な「政治犯罪」
Hanada2024年7月号 ジャーナリスト 浅川芳裕
小池百合子都知事の学歴詐称と、その隠蔽工作の疑惑が深まっている。
小池都知事の元側近・小島敏郎氏が『文藝春秋』2024年5月号で、
「学歴詐称工作に加担してしまった」
と告発記事を発表した。
「カイロ大学声明」
への関与の事実である。
声明は都知事選前の2020年6月8日、駐日エジプト大使館の公式フェイスブック及びウェイブサイトに掲載されたもの。
学長名で”小池氏の卒業証明”と”カイロ大学の卒業証書の信憑性に疑義を呈するジャーナリストへの警告”が記されている。
詐称疑惑が再燃し、”焦燥”する小池都知事からの相談を受け、小島氏は
「それなら大学から声明を貰っては」
と提案。
文案は別の側近ジャーナリストA氏が書いたという。
その後の記者会見(2024年4月12日)で、小島氏は
「正式な手続きを経てカイロ大学を卒業しているのであれば、なぜ隠蔽工作をしなければならなかったのか」
「卒業していないから、と考えるのが相当」
とした上で、告発に至った問題意識を明かした。
「我が国の東京都知事がエジプトからもカイロ大学からもいざという時に言われて、失職するかしないかを左右する弱みを握られていれば国益上、非常に大きな問題だ」
「そんな日本国ではダメではないか」
『カイロ大学”闘争と平和”の混沌(カオス)』(ベストセラーズ)
の著者として本疑惑を長年取材してきた筆者の結論は更に深刻だ。
既に日本の国益毀損も甚だしい、より本質的な問題が生じている。
”超法規的な”カイロ大学卒業証書保持者である小池氏は、エジプト軍・情報部に生殺与奪の権を握られており、その見返りを長年果たしてきた言わば”エジプトのエージェント”も同然の存在なのだ。
本稿では、その後の取材・調査を踏まえ、新事実を基に真相を解明していく。
■外国勢力を日本に手引き
まず、今回の小島氏の告発で重要なのは、カイロ大学声明のエジプト大使館での発表について、小池氏の関与が明らかになった点である。
大使館と言えば、我が国におけるエジプトの全権を代表する外国使節である。
声明の日本語訳にはエジプトの国章
「サラディンの鷹」
の紋章が記されており、まさしく国家紋章だ。
カイロ大学声明を取材した現地メディアも、当時、こう報じている。
「大学はコメントを控えながらも、エジプト・アラブ共和国の日本における公式代表であるエジプト大使館からの発表通りだと認めた」
(報道サイト「アルバラド」2022年6月11日)
小池氏がその作成・発表に関与した行為とは、外国の国家機関と通謀、共謀したことに他ならない。
我が国の首都の指導者を決める選挙活動において、再選を目指す現職知事が外国政府の権力行使・介入を日本に手引きしたのだ。
「反逆罪」
を呼んでも大袈裟ではない。
少なくとも、外国勢力による選挙介入という民主主義の下で犯せる深刻な
「政治犯罪」
であり、日本国民・東京都民に対する重大な裏切り行為である。
たかが外国の1大学に過ぎないカイロ大学声明ではないか、と問題を過小評価する人もいるだろう。
しかし、声明発表を本国エジプトのメディアがどう報じたかを知ればそうはいかない。
カイロ大学は。政治的意図を持って都知事選に介入したのだ。
憶測ではない。
エジプト軍・情報部の管理下にあるエジプトの現地メディアははっきり、カイロ大学声明は介入が目的だと報じている。
一部の見出しを挙げる。
「カイロ大学、小池都知事のために都知事選に点火」(前同)
「カイロ大学、都知事の卒業証書を認めない日本メディアに対し法的手段で脅迫」(「アルワフド新聞」ネット版2020年6月11日)
「カイロ大学、危機に瀕する東京都知事を救うために介入」(総合ニュースサイト「アハバーラック」(2020年6月11日)
何のための介入か。
「(2020年)7月5日に行われる日本の都知事選を前にして、小池百合子都知事の反対派や対抗馬はカイロ大学卒業の学歴を認めないキャンペーンが展開されている」(同「アルバラド」(前同)
「カイロ大学の学位を取得していないとの発言・主張をしているが、これは事実に反する」(前同)
「カイロ大学が在日エジプト大使館のフェイスブックを通じて声明を発表」
「小池百合子氏は1976年に文学部社会学科を卒業しており、日本の一部メディアが卒業証明書に疑問を呈し報じた内容を非難」
(前同)
現地メディアが解説するように、小池氏の再選目的の介入であることが明らかだ。
そのために、カイロ大学卒業に疑念を呈する者は皆、都知事の反対勢力と見做し、声明は再選を目指す都知事に代わって対抗措置を取る、との強権的な脅迫である。
しかも、何の根拠、反論も示さず、取材・報道の行為自体を罰しようとしている。
実際、声明では
「エジプトの法令に則り対応策を講じる」
と警告しており、現地取材を封じようとする意図が見える。
実力行使もあり得る。
エジプトで取材をした多くのジャーナリストが、今も軍事監獄に拘束されている。
その数は、中国、トルコに続き世界ワースト3位だ(CPJ:ジャーナリスト保護委員会2020年調べ)
この強権的な姿勢は、カイロ大学の問題を指摘する教職員に対しても同じだ。
メディア学部の教授が学長の汚職の疑いを示す証拠文書を自身のフェイスブックに挙げ告発したところ、何が起きたか。
捜査保留のまま留置場で手錠をはめられた教授の画像がいきなり現地メディアに掲載されたのだ(ニュースサイト「アルカーヒラ24」2022年1月26日)。
カイロ大学長に逆らうとこんな目に遭うぞ、という見せしめだ。
この学長こそがカイロ大学声明を出したアルフシュト氏だ。
★カイロ大学の権力と腐敗の構造
カイロ大学は、日本人が一般に想像するような大学では決してない。
軍事独裁政権の支配下にある国家機関である。
国会や省庁、裁判所、軍隊のように、国家の正式な統治機構の一部に組み込まれている。
そして事実上、カイロ大学の権力を完全に掌握しているのは、泣く子も黙るエジプト軍・情報部である。
大学と言えば”学びの園””学問の自由”といった平和な生温いイメージから理解しようとすると、本質を見誤る。
実際、筆者が小池都知事の学業・卒業実態を示す
「学生ファイル」
(学業状況「入学、試験、結果、成績、卒業」及びその日付を記録)
の取材に大学事務局を訪れたところ、通されたオフィスに現れたのは、陸軍の軍服を着た人物だった。
3人が同席し、1人は大佐のバッジを付けている。
小池氏の
「ファイル」
は軍事機密なのだ。
カイロ大学の”卒業生”のことなのに、
「彼女のことならカイロの日本大使館に行って聞け」
と横柄な態度であしらわれた。
軍事法廷や軍事監獄に連行されてはかなわない。
大人しくオフィスを後にしたが、少なくとも、大学の管理を掌握するトップクラスの軍人が小池氏の状況を認識していた様子は垣間見えた。
軍人が大学にいるのは不自然に思われるだろうが、
「軍幹部が大学の管理職の要職を独占しており、学びの場は軍の兵舎と化している」(「アルタウンニュース」2012年5月1日)
もっと詳しく言えば、軍・情報部をトップに、総合情報庁(エジプトのCIA)や国家安全保障局(内務省の治安部隊=国家憲兵)が傘下にあり、両者が派閥争いをしながら大学を統治する多層構造になっている。
更に実態を言えば、両官庁にも軍人・情報部員が天下り、結局のところ、全権を掌握しているのは軍・情報部だ。
その頂上にいるのが、軍事独裁政権トップのシシ大統領である。
カイロ声明を発表した学長のみならず、各学部長でさえ大統領に任免権があることは、エジプト・アラブ共和国大統領令1972年第69号「大学組織法及び施行規則」(2014年改正)で定められている。
学長・学部長の任命は、学術的に優れているとか、大学人として指導力があるといった理由ではない。
「大学の発展プロジェクトに照らして、共和国大統領の決定により任命される」(同法第25条)。
そもそもカイロ大学の設置自体も、
「専門家を国に提供し、社会主義社会の建設及び強化、祖国の未来の形成に貢献する」
と第1条にあり、大学そのものが国家プロジェクトなのだ。
カイロ大学を貶める報道は、エジプト国家そのものへの攻撃と同じである。
日本メディアへの圧力など、何ら驚くべき事ではない。
実際、脅しの効果は抜群だった。
小池都知事の反対勢力である都議会自民党は声明発表の翌々日、
「小池氏のカイロ大卒業の証明を求める決議案」
を取り下げた。
その理由として、川松真一朗都議は
「声明直後に決議を出せば、僕らはエジプトと闘うことになる」(日刊スポーツ」2020年6月10日)
と語ったが、まさにエジプト側の思うツボである。
川松氏は
「間違ったメッセージのように捉えられかねず、冷静に判断した」
と続けるが、それは脅しに屈した者が発する常套句そのものだ。
現地メディアが報じた通り、まさに
「危機に瀕する東京都知事を救うための介入」
に成功したのだ。
■学長レターが声明の下敷き
そうは言っても、声明の主体はカイロ大学ではなく、小島氏の告発にあるように小池都知事が依頼した側近のジャーナリストA氏が書いた作文ではないか。
そう疑問を持つ読者もいるだろう。
仮に、ジャーナリストA氏が書いたとしたら、相当なエジプト政治通である。
小島氏に直接確認した。
「カイロ大学長が文藝春秋編集部に宛てたレターがベース」
「それを見ながら、ジャーナリストAさんが書いたんです」
「そうじゃないと、声明文案を30分で書けないですよ」
「Aさんが自分で考えたわけではないんです」
声明を書いたのは国家権威主義的なエジプト人に違いない、と初めて読んだ時から確信していたが、その通りだった。
レターの内容は『女帝 小池百合子』(石井妙子著・文藝春秋)にも載っている。
「小池百合子氏は1976年にカイロ大学を卒業したことを表明しています」
(中略)
「小池百合子氏について貴誌が書かれたことは根拠のない虚偽であると思います」
「カイロ大学の名誉を汚す報道に対しては法的措置も厭いません」
(後略)
とある。
記事のどこが虚偽なのか一切示さず、法的措置を警告する内容。
声明の骨子と同じだ。
この手紙は文藝春秋社にカイロ大学の郵便封筒で届き、
「President's office」(学長室)
と書かれたレターヘッドのある用紙に日本語で
「カイロ大学長のPro Dr=Mohanmad Al Khustです」
と書かれている。
用紙の体裁と出所の学長名も、声明と全く同じだ。
レターと声明双方を出したのがカイロ大学学長室というのも、見過ごされやすいが重要な点である。
室長はエジプトの
「大学組織法」
上、高等教育大臣任命の公職。
その指名に実権を持っているのは、同省の治安局長である。
カイロ大学文学部元歴史学科長の著作『我が足跡を辿る』(未邦訳・原文アラビア語)
に明記されている。
同書はカイロ大学の権力と腐敗の構造を数々の実名で世に晒し、エジプトで大騒動となった自伝的告発本だ。
一部引用する。
「教育省の治安局長は、大臣よりも大学に対する影響力を行使し、偽善者の大学教員たちは競って彼に媚びを売った」
「大学の独立性が損なわれ、教員たちは権力に憧れ、自由を制限し、大学を治安当局の権威に服従させる、大学に対する法律(前述の「大学組織法」による統制を受け入れたのだ」
「(高等教育省治安局の上位にある)国家安全保障当局が、教員の誰に対しても左遷を正当化することができるのだから」
「(教授が代筆するなどして)国家治安当局に文学博士号を(正規の過程を経ずに)取得させた時、教員たちの権力への媚びへつらいは頂点に達した」
「その後、高等教育省の治安局長やカイロ大学内の治安局長までもが『博士号』(不正取得)という(権力)モデルを繰り返した」
(括弧内は筆者補足)
カイロ大学声明の出所が、如何に権力と腐敗にまみれた所か察しが付くだろう。
相手が権力者であれば、博士号の学位・証書の不正授与までする。
まして、論文審査がなく(小池氏の学歴にある社会学科の場合)、成績の改竄が容易な学士号の卒業証書の発行であれば、権力者からの命令(詳細は後述)1つで朝飯前だろう。
■小池再選を祝う学長祝辞
カイロ大学アルフシュト学長は都知事選直後の2020年7月7日、小池氏再選の祝辞を大学公式ホームページに載せた。
権力者に媚びを売ったり、治安当局からの指示で、要人が信任された時に学長や教授が競って祝電を送るのはカイロ大学の腐敗した習慣の1つである(参考文献『我が足跡を辿る』)。
祝電は以下の通りだ。
<カイロ大学文学部の卒業生である小池百合子氏は、日本の首都東京都知事選史上初となる22人の候補者と競い合い、2度目の当選を果たした>
<文学部を1976年10月に卒業した小池百合子氏は、民放テレビ局でニュース番組の司会者を務めた後、政界に転じ、参議院議員、衆議院議員を歴任した>
<カイロ大学学長ムハンマド・オスマン・アルシュフト博士は、カイロ大学卒業生が日本初となる女性東京都知事として、2期目の当選を果たしたことに誇りを表し、小池百合子氏が日本での重要な指導的地位を勝ち取ったことに祝辞を述べた>
<カイロ大学はあらゆる分野、あらゆる国における本学卒業生を誇りとしている>
<彼らは世界、特にアフリカと中東で多くの指導的地位に就いており、アルフシュト博士は「彼らの成功はカイロ大学の成功であると考えている」と話している>
<カイロ大学で学び、各国の要職に就いた著名な卒業生には、農学部で学んだシェイク・スルタン・アルカシミ(UAE・シャルジャ首長国首長)、法学士号を取得したサダム・フセイン(イラク大統領)、工学部を卒業したヤセル・アラファト(パレスチナ大統領)などがいる>
(後略)
祝電のポイントは2つある。
1つ目は、小池都知事の経歴を微細に紹介し、世界的な政治家と並べ、著名な”卒業”生として取り上げている点。
カイロ大学にとって、小池都知事が如何に重要かが分かる。
小池氏に対するおべっかのみが目的ではない。
カイロ大学の偉大さを証明し、国際的に宣伝するための極めて貴重な存在だからだ。
新設中のカイロ大学国際支部では
「カイロ大学はアラブの科学者や天才たちを多く輩出してきたように、日本の元防衛大臣である小池都知事の輩出に成功」(公式フェイスブック)
と、まさしく広告塔になっている。
卒業生でノーベル賞を獲った人物が4名いるが、エジプト人とアラブ人。
海外で首脳に就任した人も、やはりアラブ人。
カイロ大学を”卒業”した先進国の要人は小池都知事1人しかおらず、極めて希少価値が高いのだ。
日本でいくら学生詐称が騒がれようが、頑なに
「カイロ大学が卒業を認める」
背景がお分かり頂けるだろう。
■サダム・フセインとの共通点
2つ目のポイントは、小池氏と並び、
「法学博士号を取得したサダム・フセイン(イラク大統領)」
の紹介だ。
2人は奇しくも、カイロ大学卒業について真偽が取り沙汰されてきたという共通点がある。
更に、2人とも要人になった途端、エジプト軍事政権下のカイロ大学が偉大な卒業生として公式に発表し、賞賛されるようになった人物という稀に見るもう1つの共通点がある。
実は、フセインはカイロ大学中退説が根強かったが、後年、本人の自伝で法学部2年中退と認めている。
その点、正直で潔い。
しかし、カイロ大学はいくら本人が中退と認めていても、自国にとって有利だと見做せば、勝手に卒業を公認する学風である。
入学の待遇については、フセイン大統領と小池都知事の間には大きな違いがある。
フセインは高校時代、共産主義化を図るイラク首相暗殺未遂に関わり、秘密警察に追われ高校を中退してカイロ大学に亡命してきた人物だ。
その武勇伝がナセル大統領の目にとまり、アラブの大義を目指すエジプトの工作員にするため、大統領自身が招いたという説もあるが、学業については特別扱いしなかった。
高校中退では名門カイロ大学には入れない。
そこで、カイロのドッキ地区にあるナイルパレス高校に入り直して卒業し、正規の試験を受けて、法学部に合格している。
★小池百合子氏とハーテム情報相の深い関係
一方、小池氏の場合、同居人だった北原百代氏の証言(『女帝 小池百合子』)によると、いきなりカイロ大学2年に編入している。
エジプト人でもあり得ない話だ。
「小池さんのお父さんが、ドクター・ハーテムに頼んだ」
のがきっかけだという。
ハーテム氏と言えば当時、エジプト副首相兼文化・情報相だったアブドル・カーデル・ハーテム氏(1918〜2015)のことだ。
1952年、エジプト革命を起こした自由将校団の一員で、軍の諜報部員だった人物だ。
ナセル大統領と同郷の1年後輩で、革命後は大統領顧問に就任し、諜報機関の情報部創設を任された。
「ナセル政権はドイツ情報部に学ぶため、元ナチス将軍やゲシュタポ(秘密警察)、SS(ナチス親衛隊)の元責任者を召喚」
「これらの人物はエジプトの治安当局を前例のないレベルの残虐性と鉄拳支配に導くのに貢献した」
「その後の数年間、ナセル派の諜報機関は、政権に政治的に反対する可能性のある人物に対して、弾圧キャンペーンを展開」
「特に国家機関から反政府志向の強い人物を徹底的に粛清していった」
(アルジャジーラ電子版『誰が影を支配するのか?エジプト情報闘争の全貌』2018年3月16日)
弾圧キャンペーンは国家機関カイロ大学にも及んだ。
カイロ大学の知識人やエリート学生を支配下に置くため、キャンパスにSSに倣った
「革命親衛隊」
を送り込んだのだ。
それに対し、自由な大学を堅持しようとリベラル派とムスリム同胞団の教授・学生たちが団結し、デモ活動で対抗したが、治安部隊との力の差は歴然だった。
1954年、カイロ大学は軍部に制圧され、革命指導評議会下に置かれてしまった(エジプト現代史では「カイロ大学粛清事件」と呼ばれる)。
それ以来、軍・情報部支配というカイロ大学の伝統は今も続いており、情報統制面でその体制を作った大元の1人がハーテム氏である。
ハーテム氏から見れば、軍事独裁政権の現シシ大統領は、軍部時代の弟分タンクウィー(元国軍総司令官、2011年革命後の国家元首代行)の部下、つまり孫弟子に当たる人物だ。
また、シシ大統領の出世は軍・情報部長官就任から始まっている。
つまり、人脈的にも組織的にもハーテム氏の直系と言える。
ハーテム氏は更に、シシ前の3代の大統領ナセル、サダト、ムバラクの下、要職に就き、権力を保持してきた唯一の人物でもある。
小池氏の学歴詐称については長年、疑惑が出る度に、日本からのメディアの取材に対して
「カイロ大学が卒業を認める」
と繰り返しては収束してきたが、その背後には、こうした小池氏のハーテム人脈を頂点とするエジプトの軍・情報部と大学の権力階層構造があることも、念頭に置く必要がある。
また、カイロ大学では1954年の粛清後、小池氏が留学する1970年代まで、特殊な外国人留学生枠が存在した。
1つは、アラブ諸国で反政府活動をする若者を亡命させ、ナセルの
「アラブの大義」
で洗脳し、国に戻った時に工作員にする枠。
先述したように、イラクのフセイン大統領もその1人だった。
もう1つは、表向きは文化的だが、同様にエジプトの国策に都合の良い将来のエージェント育成のため、非アラブ特定国の若者を優遇する枠だ。
ハーテムは情報・文化省のトップとして、外国の若者の受け入れを推進すると同時に、それらの国々と友好協会を立ち上げていた。
■14歳の女の子を養女に
小池氏は、ハーテム氏が作り上げたエジプトのエージェントなのか。
エージェント育成の経緯から、いつ誰の支援で”卒業”したか。
卒業後、大臣にまで出世した小池氏がエジプトへの奉仕を語り出すまでの詳細を、政府系新聞アハラーム紙が綴っている。
「小池氏は非常に特殊な女性である」
「ハーテム情報大臣の支援を受け、彼女は社会学科を卒業」
「彼は小池を自分の子供のように見做した」
(2016年8月3日付)
とある。
小池氏自身も同紙インタビューで、ハーテム氏は
「私のエジプトの父」
「私のスピリチュアル・ファーザー(守護者)」
などと複数回、語っている。
「カイロ大学時代の教授陣(複数形)は?」
の質問に対して、小池氏は
「私の教授はハーテム博士で、私にとってエジプトの父です」
(2004年3月2日付)
と答えている。
普通、教授陣の名を訊かれれば、選考学科(小池氏の場合、社会学科)の恩師や少なくとも印象に残っている先生について語るものだが、小池氏は違う。
カイロ大学の教授ですらないハーテム氏の名を挙げるのみだ。
ハーテム氏は当時、エジプトの副首相(情報担当)であったが、2人は一体、どういう関係だったのか。
「ハーテム氏に面倒を見てもらい、小池氏はカイロでの留学中のかなりの期間、ハーテム家で家族と子供たちと一緒に住んでいた」(2019年9月3日付)。
つまり、同居していたのだ。
小池氏が1976年、カイロをあとにした後、どうなったのか。
「ハーテム氏と学生から政治家、そして大臣になった彼女の関係は、カイロの地で途切れたわけではない」
「彼女はスピリチュアル・ファーザーと呼ぶハーテム博士(中略)と常に連絡を取り合っていた」
(同)
「ハーテム博士がエジプト日本友好協会(ハーテムはその創始者で、長年会長を務めた)を通じて行った活動の1つに、次の事がある」
「1970年に日本の首相からの要請で、当時14歳だった小池百合子という日本人の女の子を養女にしたこと」
「彼女は1976年にカイロ大学を卒業」(2004年6月21日)
「小池氏は2003年9月から日本の環境大臣であり、日本の内閣でイスラム教の寛容性を説いているとハーテム博士に語った」
「博士は彼女から連絡があることを嬉しく思っている」(同)
「(小池氏が今回、カイロに来たのは)ハーテム博士から(2011年)8月にかかってきた電話でのリクエストがあったからだ」
「彼女は学生時代に過ごしたハーテム家で、ハーテム博士の家族や孫たちと再会した」
「そこで小池氏は、ハーテム博士に対して、エジプトやエジプトの友人のために奉仕するプロジェクトを話題にした」
(同紙2011年9月3日付)
★”エジプトのエージェント”
一言で言えば、小池氏はハーテム氏の目論見通り、エジプトの利益を代弁するエージェントとして立派に育ったというわけだ。
その記録をハーテム氏は歴史の証拠として、政府系新聞に明確に残している。
もちろん、ただの新聞ではない。
アハラーム紙はハーテム氏が最高執行員を務めていた新聞であり、彼が創設したエジプトの国家情報部の従属下にある
「政治機関」
である(参考文献『ハーテム回想録 10月戦争政府の首相』未邦訳。*日本で言う第4次中東戦争。ハーテム氏は戦時中、首相代行を務めた)。
つまり、記事は全てエジプトの国益に根差し、政治的意図を持って書かれた声明なのだ。
その証拠に、ハーテム氏が小池氏について最初に新聞紙上で語り始めたのは環境大臣後のこと。
日本政府の要職に就いたところで、入学・卒業の実態が正規のものというより、ハーテム氏の”支援”であることに言及。
小池氏の学歴について、”弱みを握っていること”を仄めかしたと言える。
記事の中には奇妙な記述もある。
「1970年に日本の首相からの要請で、当時14歳だった小池百合子という日本人の女の子を養女にしたこと」。
直訳すれば
「養女にした」
だが、
「子飼いにした」
「採用した」
との意訳も出来る。
アハラーム紙の政治的文脈から解せば、
「エージェントとして採用」
という訳が一番しっくりくる。
「1970年に日本の首相の要請」
という記述も意味深長だ。
時の総理は佐藤栄作である。
両者に面識はあったのか。
確かに1970年、
「*アラブ連合のアブデル・カーデル・ハーテム特使(元副首相)は首相官邸に佐藤首相を訪れ、歓談した」(読売新聞1970年6月17日付)
との記録が残っている(*当時のエジプト国名。シリアと連合を組んでいた)。
その翌年の1971年9月、小池氏は
「カイロ留学へ(家族、アラブ協会中谷武世会長が見送る)」
旅立ったと、
「李刊アラブNo54」(1989年)
に本人が書いている。
同じ記事の中で、小池氏は
「アラブ協会名誉顧問であるエジプトのハーテム氏とは現在に至るまで文字通り家族的付き合いを続けている」
「エジプトでの父親的存在だ」
と、ハーテム氏との特別な関係を明かしている。
そして、カイロ留学を見送った中谷武世アラブ協会会長こそ小池氏の”師父”と呼ばれ、佐藤首相の兄・岸信介氏の戦前からの盟友にして、佐藤自身のブレーンだった人物である。
佐藤氏自身が日記で
「中谷武世が総裁選を心配してやって来る」
「本部で中谷武世と対談」
(『佐藤栄作日記』からの一部抜粋)
と記すほどの関係だ。
中谷氏とハーテム氏の関係も相当深い。
1958年1月に初面談しており、その年の9月に
「ナセル大統領(ハーテム氏は当時、大統領顧問兼副首相)の要請に応じて」、
中谷氏はアラブ協会を設立(引用は「李刊アラブNo23」(1974年)、更に小池氏の父、勇次郎氏は中谷氏と親しく、長く同会会員だった。
以上のディープな人物相関関係からすれば、佐藤首相の要請だとして、中谷氏が勇次郎氏の娘をハーテム氏の懐に差し出すことはあながちあり得ない話ではない。
佐藤首相からハーテム氏への要請が本当なら、極めて特例な小池氏のカイロ大学編入についても説明が付く。
先述したように、フセインやその他のアラブ諸国からの亡命工作員でさえ許されなかった特別待遇のことだ。
大学組織法の87条に
「極めて必要かつ不測の事態の場合、教育大臣は、共和国大統領の決定により発行された規則及び規定に従って、学生を編入させることができる」
とある。
日本の首相からの要請は、まさに
「極めて必要かつ不測の事態」
だ。
この法律は、ナセル大統領死去後、後任のサダト大統領が1972年に制定したものだ。
この年は、小池氏がカイロ大学”入学”を謳っている年でもある。
同居人の証言・物証(母親に送った手紙、小島氏が証拠保全済)では、”編入”したのは1973年のはずだが、
「共和国大統領の決定により発行された規則及び規定」
によって、入学年の改竄などどうにでもなる。
ハーテム氏は大統領ではないが、サダト大統領とは共に革命を起こした同志であり、軍・情報部権力の中枢にいた人物であったことは、これまで見て来た通りだ。
何よりエジプトにとって日本権益の窓口であった。
■エジプト日本権益の後継者
「日本の首相の要請で小池氏を養女にした」
と記述のあるアハラーム紙の記事で、ハーテム氏は日本の権益を細部に渡って語っている。
「ハーテム博士は日本(政府)や日本の首相との良好な関係に投資した結果、日本はカイロ大学小児病院(訳注:カイロ大学医学部附属の教育機関でもある)や製鉄会社、オペラハウスの設立援助に同意したという」
「しかし、博士の日本関係での最も重要な功績は、1973年10月戦争後、スエズ運河の再開に漕ぎつけたこと」
「日本が全面的に資金を提供し、第1段階で1億8000万ドル、更に第2段階で1億8000万ドルの援助を実施したことであり、現在、スエズ運河はエジプトに年間30億ドルの利益をもたらしている」
「日本の偉大な業績のお陰である」
それにしても、首相の要請時、
「14歳であった」
の年齢が気になる。
当時、中学生だった小池氏を、佐藤栄作首相がハーテム氏の養女にさせたとは俄かには信じ難い。
しかし、相手は
「プロパガンダの父」
であり、イスラエル軍の不意を突いた奇襲攻撃を仕掛け、情報戦で勝利した第4次中東戦争における
「戦略的欺瞞計画」
を立案したほどの人物である。
小池氏が14歳の時と言えば、記事の1970年ではなく、1966年。
この年の1月14日、
「来日中のアラブ連合の副首相ハーテム氏来邸」(『佐藤栄作日記』)
と官邸で会っている。
その翌月、佐藤首相は特使をエジプトに派遣しており、ハーテム氏の出迎えを受けている(「読売新聞夕刊」1966年2月4日)。
2人共あの世に行き、真相は闇のままだが、これこそハーテム氏が生み出したエジプト流プロパガンダの真骨頂だ。
いくら疑念や疑問が寄せられても、一切答えず、更に大きな”誇張”や”法螺(ほら)を被せていく。
それを何層にも重ねることで、疑念を持つ者の追求心を削ぎ、真相を闇に葬り去る。
全てはエジプト国家に有利な言論空間を生み出していくためだ(参考文献『プロパガンダ 理論と実践』ハーテム著、未邦訳)。
首相要請の有無は別として、分かったことは小池氏が”エジプトのエージェント”として育成され、今もハーテム氏が築いたエジプトの日本権益の後継者であることだ。
話をカイロ大学に戻そう。
★「カイロ大学声明」の見返り
小池氏の”卒業”を公認する声明を出して、カイロ大学に何のメリットがあるのか。
常識では考えられない声明を出せば、大学の国際的な信用失墜に繋がる危険性もある。
この問いは、カイロ大学長の発表を見れば解ける。
2022年11月22日、都職員10人を引き連れ、小池氏が学長とした会談の内容がカイロ大学の公式ホームページに掲載されている。
小池氏側の発言要旨は、
「カイロ大学留学時代について謝意を表明」
「エジプトと日本の2国間協力を称賛」
「東京都知事、カイロ大学との協力拡大を要請」。
本文は
「会談の中で、東京都知事はカイロ大学留学時代の日々を振り返り、彼女の人生に如何に影響を与えたか、そのお陰で現在の自分に至れたことに感謝の意を表した」
「会談では(中略)、様々な分野での協力の方向性を定めるため、カイロ大学と共同協力議定書を作成することが合意された」
とある。
都の予算を使って出張し、都政と全く関係ないカイロ大学時代の思い出話に浸りながら、
「カイロ大学に対して協力拡大を要請」
するなど、知事として完全に越権行為だ。
自身の学歴詐称を否定する
「カイロ大学声明」
を出してくれた学長へのお礼の表敬訪問と見返り支援と見做せば、合点がいく。
学長もそのお返しにとばかりに、
「小池百合子東京都知事は、カイロ大学文学部社会学科を1976年に卒業した最も著名な卒業生であり、その後、参議院議員、衆議院議員を歴任し、防衛大臣を務め、初の東京都知事に選出された」(同発表資料)
と小池氏の学歴・経歴を持ち上げるのも忘れない。
現在、カイロ大学長と合意した協力議定書の中身は不明だが、前学長との会談での約束は、カイロ大学文学部日本研究センターという形で実現している。
「本センターの設立については、以前、小池都知事がカイロ大学を訪問した際に、ナッサール学長と協議したもの」
(2017年3月2日カイロ大学ホームページ)
ナッサール氏は、1度目の都知事選当時の際、祝辞を送っており、その中で日本の小池議員事務所を訪問した時のことにも触れている。
「小池氏はカイロ大学、エジプト国民に対する感謝の意を強調した」
2022年の小池氏のエジプト外遊時に要請した支援事業の中で、既に都の予算に計上されているものもある(9700万円。エジプト外遊費含む)。
「小池都知事が文科大臣に提案した、文部科学省と東京都の間で学生分野における協力の第1号議定書」(エジプト文部科学省ホームページ)
だ。
その中身はと言えば、エジプト人学生を都に受け入れたり、都立高校生に母校カイロ大学等をダイバーシティの美名の下、訪問させるプログラムだ。
わざわざ第1号議定書とあるから、2号3号と続く虞(おそれ)がある。
■援助、口利きの手口
こうした小池氏のエジプトに対する支援・援助の申し出、口利きはパターン化している。
「カイロ大学時代の思い出を語るーその時にお世話なったカイロ大学そしてエジプトに謝意ーその見返りとして、援助内容を仄めかす/要人の要望を聞くーその事業の実現ーエジプト要人から褒められる」
という流れだ。
もちろん、全てがあからさまに書いてあるわけではない。
政府系新聞が伝える小池報道を時系列に丹念に読み直すと、その実態が浮き彫りになる。
1つのパターンを紹介しよう。
2016年3月にエジプト政府系のアハラーム紙が報じた記事によると、来日した当時のシシ大統領は、小池衆議院議員(当時)と面会。
大統領は
「謝意を表した」
「彼女がエジプトとの関係発展に注意を払い、両国関係を有利に進めている事柄に対してである」。
具体的にどんな事柄なのか。
記事では
「大統領の訪日では、教育プログラムに関連して多くの目標を達成した」
と紹介されている。
実は、この報道の約1カ月前、三百数十億円に上る日本のODA(政府開発援助)による教育支援策
「エジプト・日本教育パートナーシップ」
が発表されている。
つまり、シシ大統領はODAという形で援助が実現したことについて、小池氏に謝意を表したわけだ。
このODAに小池知事が関与したのか。
アハラーム報道から約1年遡った2015年5月、現地メディアのアルマスダル紙電子版によると、エジプト大統領府で小池氏と面会したシシ大統領は
「教育分野において日本の経験から利益を得ることについて、関心を示した」
とされる。
大統領の関心に対し、小池氏は
「エジプトと日本の関係を強化する努力を惜しまない」
と後押しを表明。
更に、小池氏は
「私がエジプトを大切に思っているのは、公式のレベルだけでなく、個人のレベルのことでもある」
とまで語っている。
「エジプト・日本教育パートナーシップ」
には2つの事業がある。
1つは
「エジプト・日本学校(小中学校)支援プログラム」(186億円)、
もう1つが
「エジプト人留学生・研修生受け入れ事業」(102億円)
だ。
後者が小池発言
「個人レベルのエジプトへの思い」
に基づく事業のことである。
先程引用したアハラーム紙記事の記者が
「小池氏の経験とエジプトへの美しい対応」
と題するコラムを寄せ、種明かしをしている。
「以前、小池氏を取材した際、こう語っていた」
「『故ナセル大統領が外国人学生に対し、奨学金を提供するという重要な政策を採用していた』
『私自身もエジプト政府から月額8エジプトポンドの助成金を受け取っていた』
『ナセルの行った投資は有益で成功だったでしょ』
『だって、そうじゃない!』」
「小池氏は今日、日本政府のエジプトの学生に対する広範囲な奨学金プログラムについて、強力な支援者である」
記者は
「美しい対応」
と題し、如何にも美談のように語るが、全く違う。
小池氏が自分のエジプトからの借りを今回、100億円にして返しましたという下品な話だ。
■エジプトの召使
小池氏とエジプトとの貸し借り関係は、カイロ大学声明を発表した駐日エジプト大使館の発表からも透けて見える。
「アブバクル駐日エジプト大使は、小池都知事と会談し、エジプトと日本の関係が過去数年に渡り様々な分野で大きな勢いを見せていることを踏まえ、両国の共同協力の側面や、この協力を様々な分野に発展させるための方策について協議した」
「小池都知事は、エジプトが自国にとって特別な地位にあることを踏まえ、また、エジプト側との協力に個人的な関心を寄せており、2国間協力のレベルが具体的に飛躍することを望んでいることから、両国関係の強化に向けた全面的な支援を表明した」
(エジプト大統領直轄の「国家情報部公式ホームページ」2022年1月27日)
エジプトに外遊に出かけた2022年の年初における小池氏と大使の会談の内容だ。
次に外遊後、大使にお礼の表敬訪問をした際の記事
「東京都知事、エジプトと日本の2国間協力を称賛」(一部抜粋)
がこちらだ。
「東京都知事は今回のエジプト外遊を成功裏に終え、エジプト政府へ感謝を伝えるため、東京のエジプト大使館を訪問した」
「その中で、東京都知事はCOP27に参加した喜びを表明し、シシ大統領が議長を務めるセッションに出席する栄誉に浴したことを感謝した」
「都知事はまた、訪問したエジプト日本科学技術大学を賞賛した」
「同大学は2国間協力のユニークなモデルであると述べた」
(「アハラーム紙」2022年11月22日)
まるで、エジプト政府かやシシ大統領に仕える召使いのような扱いの内容だ。
小池氏が賞賛した
「エジプト日本科学技術大学」
はODA(40億円)で運営されている。
同大学のアドリー学長は2023年、東京で面談した小池都知事に対して、
「大学設立時から常に支援、尽力して下さっていることに感謝の意を表した」
(エジプト「国家報道局(NPA)傘下のエジプト報道サイト」2023年5月23日)。
つまり、今もエジプトへ見返りを続けながら、自分が口利きして出来た大学を都の費用で訪問し、自画自賛しているのだ。
都知事としての公約実現はゼロだが、長年エジプトへの公約(見返り)は果たしているということである。
我が国の首都のトップが、外国勢力に生殺与奪の権を握られているのだ。
今後、どんな条件を突き付けられるのか。
この状況は都民、国民にとって極めて危険な状態である。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/694.html#c24

[政治・選挙・NHK294] 都知事選告示報道を見て仰天 大新聞は女帝の学歴詐称 完全スルー(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
47. 秘密のアッコちゃん[408] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月24日 12:44:12 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[521]
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見逃されてきた女性の強制労働…ウルムチ事件の真相
日本ウイグル協会会長 レテプ・アフメット
2024/6/24 8:00
https://www.sankei.com/article/20240624-YJSSHGXJS5O65LSOFMFSYJDVS4/
米国で
「ウイグル強制労働防止法」
が2022年6月に施行されてから2年が経過した。
欧米ではウイグル人強制労働問題への対応が着々と進んでいる。
2024年2月にも欧州化学最大手のドイツBASFが、強制労働への関与の可能性が指摘された事業から撤退を発表したし、2024年3月には欧州連合(EU)の欧州議会などが、強制労働で生産された製品の流通や輸入を禁止する規制案で暫定合意した。
2024年5月には米政府が中国企業26社を新たにウイグル強制労働防止法のリストに追加、2024年6月にも3社を追加し、輸入禁止の対象としたことを発表した。
ただ、このように厳しい措置が取られるようになったのは、近年になってからである。
2001年12月、世界貿易機関(WTO)に正式加盟した中国は、安い製品を世界市場で自由に売って急成長する陰で、ウイグル人の強制労働を続けてきたが、国際社会がそれを気にすることはほぼなかった。
中国当局が新疆ウイグル自治区カシュガルなどウイグル人集住地から、ウイグル人女性を
「余剰な労働力」
と称して中国沿岸部の複数都市の工場へ集団移送する政策を始めたのは、WTO盟から4年後の2005年だった。
対象となったのは16歳から25歳の未婚女性で、第11次5カ年計画(2006〜2010年)の間に計40万人の移送が目標とされていた。
毎日のように政府支援を受けた大勢の漢人が入植し職を得ている一方で、地元のウイグル人女性が家族から引き離され、言葉も文化も異なる5000kmも離れた地へ集団で移送されることには強い反発が起きた。
しかし、中国は
「各戸最低1人を」
とのスローガンの下、女性たちを本人の意思と関係なく強制的に連行。
厳重な監視下の長時間労働、人種差別、性暴力などの事例も伝わり、移送先でウイグル人が無差別襲撃され死亡する事件まで発生した。
2009年7月5日、ウイグル人の町ウルムチで起きた
「ウルムチ事件」
は、実はこのウイグル人襲撃に対する大学生らの抗議デモから始まったのだ。
日本では
「ウイグル暴動」
などと報じられたが、実際には平和的なデモを警察が武力で無理に解散させようとしたため、悲惨な衝突に発展したものだ。
そのウルムチ事件から間もなく15年になる。
当時、国際社会は事件の背景にある強制連行、強制労働と向き合うことなく、その結果、問題は10年以上、放置された。
その間、数十万人ものウイグルの若者が苦しみ、数えきれない人々が犠牲になった。
そして、日本を含む世界中の企業が、強制労働による商品を供給するという形で強制労働に手を貸し続けた。
これ以上、この問題を放置せず、厳しい態度を示す日本であってほしい。

群馬「正論」 レテプ・アフメット氏招き講演「進行中のウイグルジェノサイドの実態」
2024/6/6 17:53
https://www.sankei.com/article/20240606-UCM4L5ODJNK6DJK4BQNH7CUEOE/
群馬「正論」懇話会(会長=田中善信・田中二階堂法律事務所長)は2024年6月28日、日本ウイグル協会会長、レテプ・アフメット氏(46)を招き、第66回講演会を開催します。
アフメット氏は中国・新疆ウイグル自治区出身。
平成14年に来日、東大大学院理学系研究科で修士号を取得し日本のIT企業に就職しました。
平成29年頃からウイグルの家族と連絡が取れなくなり、一般人まで強制収容所に送られているという情報が届き始め、父親や弟らも再教育施設即ち強制収容所に入ったことを知ります。
当局の脅迫めいた圧力を受けながらも同じ境遇の同胞と力を合わせ、圧政の告発を続けています。
演題は「進行中のウイグルジェノサイドの実態」。
欧州の人権団体は、中国がここ10年で海外在住のウイグル人やチベット人約1万2000人を強制帰国させたとの報告書を発表。
強制収容所に入れられ死亡した女性もいるとされます。
何のために迫害するのか。
ウイグル支配の歴史的経緯、中国政府による凄惨な実態を語っていただきます。

【日時】2024年6月28日(金)午後1時半開演
【会場】前橋商工会議所会館2階「ローズ」(前橋市日吉町1の8の1)
【申し込み方法】往復はがきに郵便番号、住所、氏名、電話番号を明記、〒371−0858 前橋市総社町桜が丘1037の136 産経新聞前橋支局「正論」係へ。同伴者がいる場合はその名前も。整理券をお送りします。
【一般入場料】1000円
【締切】2024年6月26日必着

秘密裏に消される文化人…中国のウイグル弾圧はあまりに卑劣だ
日本ウイグル協会会長 レテプ・アフメット
2024/3/31 8:00
https://www.sankei.com/article/20240331-MUC3TII5FNJ6FM57MLP4YGRXFQ/
2024年3月開かれた中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)の期間中、中国共産党側はウイグルジェノサイド(集団殺害)を否定する主張を繰り返していた。
新疆ウイグル自治区の王明山党副書記は記者団に対し
「ウイグルで文化の大虐殺が行われているという報道は全くの噓だ」
「言葉の使用は保障されているし、文化も尊重されている」
と主張したが、その主張こそ噓八百だ。
例えば、2001年にウイグル自治区内の大学を卒業した私は、小学校から全ての学校教育をウイグル語で受け、中国語の授業は週に数時間の1科目に過ぎなかったが、現在、ウイグル語での学校教育は全て廃止になっている。
不満を抱く者は過激思想のレッテルを貼られ、容赦なく弾圧される。
2017年以降はウイグル文化人に対する大粛清が行われており、中国側から流出した内部資料などによると、400人以上の著名な知識人が強制収容され、行方不明になっている。
欧米メディアが確認しただけでも、新疆医科大の元学長で、現代ウイグル民族医学の父と言われるハリムラット・グブル教授ら3人が死刑宣告。
ウイグルの最高学府、新疆大教授でウイグルの伝統・文化研究の第1人者として知られる女性のラヒレ・ダウット氏ら7人が無期懲役の判決。
作家でカシュガルウイグル出版社の元編集者、ミリザヒド・ケリミ氏ら著名な知識人7人が強制収容され、死亡している。
皆、若者がウイグル文化を誇りに思い堂々と生きるよう希望を与えてきた人物ばかりだ。
粛清対象には、中国共産党を否定しない人々も含まれる。
ウイグル独自文化が継承されるルーツを断ち切りたい習近平政権は、彼らを
「両面人」(表向きは共産党支持者だが、心の中では民族を愛している者)
として粛清するのみならず、ばれると、誤魔化そうとする。
代表例が新疆大の学長を務めていたタシポラット・ティップ教授の失踪だ。
東京理科大で理学博士号を取得し、立正大や九州大の研究者と共同研究するなど日本と縁の深い人物だが、2017年に消息不明となり、その後、秘密裏に両面人として死刑宣告を受けていた。
これが国際社会で表面化し、2019年12月に国連人権高等弁務官事務所が学者への死刑宣告は国際法に反するとの声明を発表すると、中国はティップ氏については
「汚職の罪で調査中」
と発表し報道を否定した。
しかし2022年5月に流出した秘密文書
「新疆公安ファイル」
には、当局が彼を
「両面人」
として糾弾していたことが記載されていた。
国際社会は、中国の共犯者にならないためにも、習近平政権のこの大粛清に声を上げる時だ。

中国の人権侵害を無視する国連 日本ウイグル協会会長レテプ・アフメット
2024/2/4 8:00
https://www.sankei.com/article/20240204-OEDRAL43CVKF5LPWZMBOS6AFAY/
今から27年前の1997年2月5日、中国の弾圧政策に抗議するウイグルの若者たちがグルジャ(中国名・伊寧)で平和的なデモ行進を行った。
中国の武装警察はデモ隊に発砲し、これを鎮圧。
その後も広範囲の無差別拘束が続き、グルジャからは若者の姿が消えた。
後には拘束された人々の凍死、拷問死、釈放後に精神を病んだ人など多くの悲惨なケースが報告されたグルジャ事件である。
当時は通信手段が限られた上、厳しい情報統制のため世界は実情を知らず、中国が国際社会から厳しい制裁を受けることもなかった。
日本は事件の翌月1997年3月、中国の核実験を理由に原則凍結していた無償資金協力を再開すらしている。
中国はその後、日本を含む先進国の経済支援や技術支援によって飛躍的な経済成長を果たし、中国共産党の独裁政治を盤石にした。
もしあの時、国際社会が事件に注目し経済支援などをやめていれば、中国は今のような国際秩序を脅かす巨大モンスター国家になっていなかったかもしれない。
あれから4半世紀経った今、国連ではウイグル問題を巡り、人権の価値観を共有する民主主義国家と中国マネーに支配される国々の対立が続いている。
2022年8月、国連人権高等弁務官事務所が、中国のウイグル人に対する行為は
「人道に対する罪に相当する可能性がある」
と認める報告書を公表したが、国連人権理事会は2022年10月、この報告書基づいてウイグルの人権問題を討論するよう求める動議を否決した。
中国が加盟国に影響力を及ぼし続ける国連では、同じ国連機関が中国の人権侵害を指摘しているにもかかわらず、その報告を無視するという呆れた行為が罷り通っている。
最近、私たちが注目したのは、中国の人権状況を定期的に審査する国連人権理事会の普遍的・定期的審査(UPR)作業部会である。
2024年1月23日の会合では、
米国が
「ジェノサイド(民族大量虐殺)」
スイスが
「人道に対する罪」
と非難するなど、30以上の国々がウイグル問題に言及した。
その結果、
「ジェノサイド」
の非難は盛り込まれなかったが、作業部会は400以上の勧告をまとめた。
前回の作業部会ではウイグル問題に触れなかった日本も今回は言及してくれた。
ただ、この勧告も法的拘束力はない。
2024年1月23日の会合当日、ウイグルではマグニチュード(M)7.1の地震が発生したが、通信が遮断されているため、私たちはウイグルに住む家族の安否確認すらできなかった。
家族の生死を知る権利までも奪われているのだ。
国際社会は懸念を伝えるだけの不毛な芝居をやめ、経済制裁を含む具体的な行動を起こす時だ。

月曜コラム
父さんを人質にする中国 日本ウイグル協会会長 レテプ・アフメット
2023/11/20 9:45
https://www.sankei.com/article/20231120-HDKCFCZXANLALLB7SYY6R75NSI/
中国共産党政権によるウイグル迫害は近年に始まったことではない。
1949年の
「中華人民共和国」
建国後、70年に渡りウイグル人の
「中華民族」
への同化を図ってきたと言っていい。
ただ、2017年以降、迫害が異常なレベルで行われるようになったため国際問題として注目されるようになった。
習近平政権は、同化が思うように進まないことに焦りを募らせ、ウイグル人を力で滅ぼす方向へ大きく舵を切ったのだろう。
300万人超と指摘される大規模な強制収容、強制労働、不妊手術の強制、親子の強制的引き離し。
AI(人工知能)による監視システム、ウイグル人宅に100万人規模で政府職員を寝泊まりさせるなど想像を絶する監視も常態化した。
著名な知識人や経済人らが一斉に収容され、行方不明となる悪夢の事態も起こっている。
外国に暮らすウイグル人らは故郷に残る家族との通信が遮断され、生き別れを強いられている。
私自身も2017年夏に、父や弟を含む親族12人が強制収容されたことを知ったが、その後、消息が確認できていない。
翌年2018年3月、地元警察から、収容所で撮影された父のビデオが送られてきて、
「中国共産党への忠誠心を示し当局に協力すればお父さんを出してあげる」
と告げられたが、断った。
それ以降、一切の通信は断ち切られたままだ。
私は日本のパスポートを持っているので、世界中ほとんどの場所に安心して行けるが、唯一怖くて行けない場所が実家だ。
2019年には、強制収容された家族を捜すために留学先の日本から帰国した20代のウイグル人女性ミギライ・エリキンさんが直後に強制収容され、収容所で死亡した。
今、欧州連合(EU)や英仏など10カ国・地域の議会と米国政府が、ウイグル問題をジェノサイド(民族大量虐殺)か、その深刻なリスクがあるものと認定しているが、日本ではどうだろうか。
国会でも2022年、決議を採択したが、中国へ配慮し過ぎた内容だった。
日本企業は無意識にこの問題に関与している。
日本ウイグル協会の調査では、複数の企業の技術が
「ウイグルジェノサイド」
を支える監視システムに悪用されていることが確認されている。
日本は太陽光パネルのほとんどを中国からの輸入に頼っているが、その多くはウイグル人の強制労働と繋がっていると指摘されている。
強制労働でもたらされた製品の供給先になっている可能性が高いのだ。
欧米では、強制労働防止法や外国の人権侵害に対し資産凍結などの制裁を科すマグニツキー法などの整備も進み、制裁の流れも強まっているが、日本は後れを取る。
日本が制裁逃れの穴場として利用されるリスクが高まっている。

習氏指示に日本ウイグル協会長「非常に危機的」
2023/9/11 17:38
https://www.sankei.com/article/20230911-OMVE7ZOFUBLAJBILI7JA5EUGTU/
中国の習近平国家主席が2023年8月26日に新疆ウイグル自治区を視察し、
「イスラム教の中国化」
の推進や
「中華民族の共同体意識の増強」
を指示した。
国際社会が中国の民族迫害政策を非難する中、ウイグル人への同化政策を緩めない姿勢を改めて示した形だ。
日本ウイグル協会のレテプ・アフメット会長は2023年9月11日までに産経新聞の取材に応じ、
「『ジェノサイド』(集団殺害)の加速を謳い、非常に危機的なメッセージだ」
と懸念を示した。

《習氏のウイグル自治区入りは2014年以来8年ぶりだった2022年から2年連続となる》
《今回、習氏は区都ウルムチ市で開かれた会議に出席し、地元幹部に
「社会の安定維持」

「違法な宗教活動」
を押さえ込むよう指示した》
《標準中国語(漢語)教育の徹底、漢人の自治区移住の推奨なども表明した》
ーー習氏のウルムチでの発言をどう受け止めているか
★レテプ・アフメット会長
欧米諸国などからジェノサイドと批判されるウイグル政策の加速を明確に謳った形で、非常に危機的なメッセージだ。
言語も宗教も人口比もウイグルのアイデンティティーを薄めようとしている。
国際社会がどんなに声を上げても、ウイグル民族や文化を滅ぼす意志は固いと受け止めている。
《国際社会はウイグルの人権侵害状況への批判を強めている》
《国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は2022年8月、テロ対策の名目でウイグル人に
「深刻な人権侵害が行われている」
とする報告書を発表》
《米国は2022年6月、ウイグル自治区からの物品輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法を施行し、制裁対象の中国企業を追加するなど、運用も厳格化した》
ーー習氏はウイグル人の収容政策に言及しなかった
★レテプ・アフメット会長
中国共産党は2019年までに(ウイグル人を強制収容したとされる)『職業技能教育訓練センター』を閉鎖したと主張する。
だが、消息不明の人や施設から解放されていない人がいる。
2023年9月も新たな収容者の存在が相次いで報じられた。
私の親戚も12人が収容されたと確認された。
妻の兄弟は勤務先で警察に呼ばれたまま、消息が分からず、裁判も開かれていない状況だ。
ーー中国当局は自治区へのツアーを催し、平穏な暮らしぶりをアピールする
★レテプ・アフメット会長
習氏も今回、ウイグル自治区の良さを伝えるとして、外国人旅行者向けのツアーの拡大を指示した。
ツアーは中国政府がコントロールし、幸せに暮らしているウイグル人を装うプロパガンダ(政治宣伝)に過ぎない。
尾行や行動制限もない旅行は許可されていない。
隠したいことがあるからだ。
日本人がツアーに参加して統制された情報をそのまま発信することは中国の犯罪に加担することだ。
ーー自治区出身者に対する嫌がらせはあるか
★レテプ・アフメット会長
在日ウイグル人は中国当局から現地に残した家族を人質に取られ、ウイグル協会の活動情報などを求められている。
パスポート更新の申請も何カ月も放置され、現地で手続きを求められた人もいる。
ーー2023年10月に「国際ウイグルフォーラム」が開催される。日本で開く意義は
★レテプ・アフメット会長
中国がウイグル問題について欧米が作り上げたデマだと宣伝する中、アジアで唯一中国側の主張に反論している国が日本だ。
国際社会がこれまで以上に連携してウイグル問題に取り組まないと、民族迫害は改善しない。
中国の隣国の日本から
『国際社会は納得していない』
『責任を追及する声がここにある』
と発信してほしい。

嘘拡散の”共犯”になる官製新疆ツアー
正論2023年9月号 日本ウイグル協会会長 アフメット・レテプ
中国共産党中央直属の中国外交出版発行事業局が管理・運営するニュースサイト、中国網日本語版(チャイナネット)に2023年6月22日に掲載された
「新疆をきっかけに日本社会の対中感情を改善」
と題する記事に目が留まった。
記事の前後には日本の悪口や日本批判の記事が溢れていた。
「核汚染水海洋放出の強行、日本の道徳の赤字と知恵の苦境を露呈」
とあり
「南京大虐殺の生存者が逝去 存命中は残り39人のみに」

「海洋で中国けん制、苦杯を喫するのは日本」
と題している。
対日感情の憎悪を煽る記事が並ぶ中で
「新疆をきっかけに日本社会の対中感情を改善」
とは一体、どういうことなのだろう。
日本国民を馬鹿にしているのかと不思議に思って調べた。
すると、中国在大阪総領事館主催
「日本市民新疆ツアー第1陣」
について、中国網日本語版や中国共産党中央機関紙『人民日報』のWEB版、人民網日本語版が自画自賛の記事を必死で発信していることが分かった。
発信は主に
「薛剣(せつけん)駐大阪総領事」

「新疆ウイグル自治区政府文化顧問」
を名乗る日本人僧侶
「小島康誉」
氏による記事だった。
薛剣総領事と言えば、大阪総領事館の公式アカウントや個人アカウントで外交官とは思えぬ過激ツイートを暴走させることで知れらる人物だ。
最近の事例で言うと、2021年10月、国際人権団体、アムネスティ・インターナショナルが香港オフィスをやむなく閉鎖すると発表した際に、
ツイッターで
「害虫駆除!!!快適性が最高の出来事また1つ」
と投稿し、
「人間性が言葉に出る」
などと批判を浴びた。
また、その2カ月後の2021年12月には在大阪総領事館の公式ツイッターが、ウイグルの子供たちの動画を投稿して
「顔面偏差値が高すぎる新疆の小学生たち、・・・新疆ツアーにご意向のある方は、ぜひご登録を!」
投稿を見た人々から
「人を顔だけで格付けし評価するなんて気持ち悪い」
「子供たちは装飾品ではなく人間です」
「さすがに人権無視の差別主義国家の言うことは違う」
等の批判が殺到した。
小島氏は
「発展」

「幸せ」
に満ちたウイグルをアピールし、ウイグルの現状に関するメディア報道の多くが色眼鏡的と主張している。
薛剣総領事らが同行し、最初から最後まで全てのプロセスに中国当局による誘導が組み込まれた今回の
「プロパガンダツアー」
の意義の大きさを繰り返し強調し、レコードチャイナへの寄稿では
「ギネス級の価値がある」
とまで称賛している。
ツアーの参加者でもないのに、日本社会に与えた影響はほぼゼロと言っていい
「プロパガンダツアー」
をここまで称賛するとは、この方は正気なのかと疑ってしまう。
家族と生き別れを強いられる身として、あるいは留学先の日本から一時帰国したら強制収容され死亡した仲間がいる身として、人命や家族を奪う犯罪者を擁護する行為は仏教の教えにも反しているとの疑問を感じ、僧侶としての自覚すらないのかと憤りを感じる。
■新疆ツアー第1陣
薛剣総領事が、駐大阪総領事として着任したのは2021年6月だ。
着任から半年後の2021年12月には
「新疆は良いところーコロナ後の中国新疆ツアー大募集」
と題する団体旅行の告知を大阪総領事館の公式サイトに掲載した。
大阪総領事館の発表によると、2021年12月31日に締め切った募集には1カ月間で日本国内から1028人が応募した。
あれから1年半が経ち、去る2023年6月19日から27日に、中国当局に選ばれた小学5年生から83歳までの日本人男女20人のウイグル訪問が実現したそうだ。
中国当局としては日本国民を現地に案内し、ウイグル人らに対する非人道的犯罪で地に堕ちた中国への信用を回復したい思惑があったはずだ。
薛剣総領事らが発信したこのツアーの始まりから終わりまでのプロセスを見れば、決してこれは通常の団体旅行ではなく政治的意図が仕込まれた
「プロパガンダツアー」
であることは明白だ。
まず、1028人の申込者から20人を選別し(98%を審査の段階で落としている計算になる)、出発前夜の2023年6月18日に大阪総領事館で
「新疆ツアー第1陣壮行会」
と書かれた赤い横断幕を掲げた式典を開催し、薛剣総領事から中国ビザの押されたパスポートが参加者1人1人に手渡された。
通常のツアーで外国を旅行する際にこんな大袈裟な経験をすることなどないだろう。
ツアーには大阪総領事館の領事らが同行し、関西空港を飛び立つ直前に撮影された写真には
「中国駐大阪総領事館主催 日本市民新疆ツアー第1陣」
と書かれた赤い横断幕を持った参加者たちの姿があった。
後に人民網が発信した今回のツアーを特集した英語字幕付きの動画の最初にもこの写真は使われている。
ウルムチ到着時も、空港で
「日本市民新疆ツアー第1陣の皆様を熱烈歓迎」
と書かれた赤い横断幕を持った当局者たちが出迎える写真が撮られ、盛んに発信された。
だが、こうした写真撮影自体、日本国民が世界の他の場所を旅行する際には決して遭遇することはない不自然な光景だ。
一行の出発に合わせて、共産党機関紙、人民日報系の環球時報で薛剣総領事はこう述べている。
「今回の新疆ツアーは内容が豊富で充実している」
「一部の日程は想像を遥かに上回る」
「例えばトルファンではウイグル族の家庭を訪問し、現地人と共に昼食を取る」
「新疆少数民族の日常生活を近距離で体験する」
「更に現地のウイグル族の小学校を訪問する機会があり、子供たちの天真爛漫な笑顔を通じ現地の人民生活が幸福で満ち足りていることを直感的に感じる」
「アクスでは広々とした綿花畑を見ることができる」
「綿花紡績工場を見学することで、西側のいわゆる強制労働という根も葉もない話を一蹴する」
注目してほしいのは、薛剣総領事の自画自賛は、ツアーに参加した日本人らがどこで何を見るかだけではなく、そこで何を感じるのか、考えが変わって帰国するのか、といった細かい所まで初めから決まっていることだ。
ツアーがプロパガンダだと明白に物語る所以である。
前述の人民網が発信した英語字幕付きの動画と比べると、ツアー参加者が全てを薛剣総領事の”予言”通りに実感し、考えが一変したかのような内容になっている。
これが、この先どんな宣伝に使われるのか、ツアー参加者たちは注意深く見ておくべきだろう。
「今回の新疆ツアーの情報発表も異例で、新疆訪問団のメンバーが個人メディアで今回のイベント全過程を自由にライブ発信する」
などとわざわざ強調するのも首を傾げる話だ。
一体、そのどこが異例で凄いのか。
世の中の常識が通じるまともな国では、旅行者は旅先で写真や動画を撮り、ネットに自由に流している。
ごく普通で当たり前の話だ。
「自由にライブ発信」

「異例」
と強調すること自体が、自由が奪われた中国ならではの話でしかなく、果たして日本人参加者は本当に自由を感じたのか。
仕組まれたパフォーマンスによって自分たちの言動を全て中国当局が誘導し操ろうとしていると感じた参加者はいなかったのか。
聞いてみたいところである。
■自己弁護の末の新看板
大阪総領事館のツアーは突如告知されたものではない。
告知のタイミングと国際情勢を思い出して頂きたい。
継続的に明らかになる証拠を受け、国際社会は2021年以降、ウイグル問題で態度を大きく変化させた。
2021年1月には、アメリカ政府がジェノサイド(特定の民族などの集団を破壊する目的で行われる集団殺害、及びそれに準ずる行為)認定し、2021年12月までにカナダ議会、英国議会、リトアニア議会、チェコ議会、ベルギー議会等でジェノサイド認定が続いた。
2021年3月には、米国、英国、カナダ、そして欧州連合(EU)でウイグル人らへの重大な人権侵害が行われているとして、中国に対する制裁措置が一斉に発表された。
ツアーが告知された2021年12月には、更に大きな出来事があった。
アメリカでは
「ウイグル強制労働防止法案」
が下院と上院で相次いで可決、2021年12月23日にはバイデン大統領が、ウイグルからの輸入を全面的に禁止する
「ウイグル強制労働防止法」
に署名し成立した。
2021年12月9日には英国に設置された国際法や人権問題の専門家も加わった民間法廷
「ウイグル特別法廷」
が18カ月に及ぶ調査の末、ジェノサイドと人道に対する罪がウイグル人や他のチュルク系民族に対して行われているとの結論を下していた。
それだけではない。
2021年12月1日には、英BBC等の主要メディアが、ウイグル人らに対する大規模強制収容や強制労働等に、習近平国家主席など上層部の関与を示す極秘文書
「新疆文書」
が流出したと大々的に報道され、ツアーの告知はその翌日2021年12月2日だった。
相次いで明らかになる中国の人権侵害の証拠と国際社会の非難。
それを前に中国当局はあの手この手で自己弁護せざるを得ない状況に追い込まれていた時期だった。
日本国内でもウイグル問題で中国への非難の声は高まっていた。
地方議会が次々とウイグル問題で国に対策を求める意見を採択し、その自治体数は80を超えていた。
ちなみに、2021年12月以降も採択は続き、私たちが把握しているだけで102の地方議会で採択されている。
■日本国民がターゲットに
自己弁護に追い込まれた中国当局は、国連の調査チームや主要な外国メディアの自由な取材を徹底して断る一方で、都合の良い所だけを見せるパフォーマンスに納得してくれそうな外国人をピックアップしては
「やらせツアー」
を積極的に企画している。
この手のツアーは、2023年だけでも複数回確認されている。
例えば、2023年1月にシリアなど14のアラブ諸国から30名以上がツアーでウイグルを訪問した。
2023年4月にはベトナムやカンボジアなどの複数国の駐中国大使や領事らがツアーでウイグルを訪れている。
この時は
「新疆ウイグル自治区政府」
のトップ、馬興瑞が面会し、中国の友好国の大使・領事として、中国を擁護する発信を積極的に行うよう求めたと報道されている。
2023年6月になるとスーダンなどアラブ諸国から30名以上のツアーが実施され、ウイグル訪問が行われた。
2023年7月にはカザフスタンの市民らのツアー団が訪問した。
いずれも中国の影響力が強く、人権や価値観の面で中国とそう変わらない国々がターゲットとされている。
そう考えると、西側と同じ価値観を共有する日本の市民らをツアーのターゲットに選ぶのは異例と言っていいだろう。
ジェノサイドや人道に対する犯罪が今も進行中の東トルキスタンに比較的近い位置にありながら、国連などの国際舞台では中国の犯罪行為を非難する共同声明に毎年署名している唯一の国が日本であり、中国もそれを強く意識しているはずだからだ。
日本をターゲットに選んだものの、中国の意図や狙いが自分たちの思惑通りに日本人に果たして浸透するか否か。
アラブやアフリカ諸国の人々のツアーとは勝手が違って中国は決して自信満々ではなかったようである。
例えば、ツアーの対象者を日本人に限定すると初めから宣言したのもそのせいだろう。
これは日本に住むウイグル人が参加してしまうと中国人よりも遥かに現地に詳しい。
中国にとって都合の悪い所まで案内できる。
政府機関の主催ツアーだから、無事帰国を保証する義務もあるが、在日ウイグル人を除外したのは保証できる自信がないためでもあるだろう。
それだけではない。
日本のメディア関係者も除外されている。
薛剣総領事は、2023年6月13日のツイートで
「この度の新疆ツアーは基本的に参加者の皆様の自費で実施」
「日本メディアの同行取材について、問い合わせがあったが、新疆について余りにも酷い虚偽報道してきた為、敢えて断った」
「正直言って、現状では信頼置けない!」
と投稿している。
この投稿から分かることが2つある。
1つは、日本メディアを同行させる自信がないことだ。
これはメディア関係者を案内するとパフォーマンスに大人しく納得しない恐れがあるからだ。
もう1つは
「基本的に参加者の自費で実施」
という表現だ。
「基本的に自費」
とは穿った言い方をすれば一部に中国当局の負担があると言っているようなものだからだ。
■ウイグル人とメディアお断り
2023年7月12日に大阪総領事館は
「新疆ツアー『第2陣』大募集」
の告知を出している。
そこには、
「募集対象:日本人のみ、訪中歴のない方大歓迎」
「日本メディアの同行取材はお断り致します」
「旅費は基本的に自己負担となります」
等と明記している。
第1陣と同じやり方で実施するらしい。
実は第1陣のツアーとほぼ同時期にJNNの記者がウイグルを取材し、連載記事(TBS NEWS DIGサイトに掲載)を発信している。
ツアー参加者を希望する人は是非読んでほしいものだ。
2023年7月5日、ウルムチを取材したJNN記者は、初日から帰りの空港まで尾行が続いて、現地のウイグル人らが恐怖に怯えて胸の内を語ることができなかったことを詳しく報じている。
大阪総領事館のツアーで見る光景とは180度異なる全くの別世界だ。
どちらが信用できるか、読者も考えてほしい。
ウイグルジェノサイドを隠し、私たちの家族を奪った恐怖政治を正当化するためのプロパガンダツアーに参加し、その中身を鵜呑みにして
「ウイグル人は幸せに生きている」
などと発信することは、ジェノサイドに加担することに他ならない。
「時間と大きな出費を伴う旅行なのだから、中国当局の思惑で振り回すのではなく、尾行・監視・行動制限を断って自由にさせて欲しい」
と突き付けるくらいであってほしいものだ。
■薛剣総領事に申す
悪いことをしていないなら隠す必要などない。
メディア関係者を恐れる必要もない。
日本を見てほしい、国が日本を訪問する中国人を選別して、訪問先を全て国が設計し、国が手配した案内人が誘導する都合の良い場所だけ見せて大人しく帰国してもらったり
「中国メディア関係者は除外」
などと堂々と宣言したりするツアー等聞いたことがない。
いつ、誰と、どこへ行って何を見るか、見たこと感じたことをどう発信するかも本人が決める。
メディア関係者の友人と一緒に行くかどうかも本人が決める。
尾行や監視を気にすることなく好きな場所で好きな人に接触する・・・それが健全な社会における当たり前の旅行というものだ。
ウイグル人らに対して非人道的犯罪を犯していないと言える自信があるなら、家族と生き別れを強いられている在日ウイグル人の帰国を保証すると国際社会に約束し私たちを同行させてほしい。
「非人道的扱いを受けた」
と証言する強制収容所の生還者たちも同行させるべきで、国際法や人権の専門家、学者たち、そしてメディア関係者も欠かせない。
何よりも重要なことは、現地での行動制限や尾行、監視などがない自由な旅行であることだ。
悪いことをしておらず自信があれば、これらは全て簡単な話で、都合の良い所だけ見せて、それ以外は徹底的に隠すだけでは、中国と同じ価値観の国々の人たちは騙せても、国際社会の常識が通用する国々の人たちを騙せるはずがない。
全くもって説得力がなく、やればやるほど国際社会の疑念は深まるだけである。
私を同行させてくれれば、2017年以降、一切の通信ができずにいる家族をまず訪問したい。
それ以外にもどうしても会いたい人たちはたくさんいる。
例えば、ウイグル自治区教育出版社編集長のワヒットジャン・オスマン氏。
同じく教科書編集担当で著名な評論家、ヤリクン・ロズ氏や自治区教育庁の元庁長、サッタル・ダウット氏や自治区社会科学院副院長で新疆教育出版社長のアブドゥラザク・サイム氏らウイグルの教育を支えた人たちがそうだ。
新疆大学の学長、タシポラット・ティッブ教授や副学部長のアブドサラム・ジャリディン教授にも会いたいし、新疆医科大学の学長で現代ウイグル民族医学の父、ハリムラット・グブル教授や新疆師範大学教授で著名な作家、アブドゥカディリ・ジャラリディン教授、ウイグル文化研究の第一人者で新疆大学人類学研究所のラヒレ・ダウット教授、新疆人民出版社社長のアブドゥラヒマン・エベイ氏なども再会したい人たちだ。
新疆新聞社の社長、アリムジャン・メメットイミン氏、カシュガルウイグル出版社の編集者で著名な女流詩人、チメングリ・アウット氏、ウイグル人社会のIT化に最も貢献した人物として知られる著明なコンピュータープログラマー、アリム・エヘット氏等々・・・。
名前を挙げ始めると、際限がない。
この方々は、誰もがウイグル人に生きる希望を与え、ウイグルの文化が消滅しないよう先頭に立って尽力してきた人々だった。
2017年以降相次いで強制収容され行方不明となっている。

尾行・監視は当たり前、まさかの”手のひら返し”も…中国で最も“取材困難”新疆ウイグル自治区 超敏感エリアの中心都市「ウルムチ」の今
2023/7/7
https://uyghur-j.org/japan/2023/07/fnn-articles-552223/
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/690.html#c47

[政治・選挙・NHK294] 自民党連戦連敗で見えてきた都知事選後の日本 適菜収 だから何度も言ったのに(BEST TiMES) 赤かぶ
39. 秘密のアッコちゃん[409] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月25日 10:31:55 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[522]
<■433行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
<主張>党首討論 国の基本を競い合いたい
社説
2024/6/25 5:00
https://www.sankei.com/article/20240625-7CXG6N55IZOVZMHXLEVGIGIQOU/
通常国会の最終盤で岸田文雄首相と野党各党との党首討論が3年ぶりに開かれた。
取り上げられた課題は
「政治とカネ」
を巡る問題が中心だった。
それは否定しないが、他にも論じるべき課題があったのではないか。
安定的な皇位継承策や憲法改正、厳しい安全保障環境を踏まえた外交防衛政策、エネルギー政策も極めて重要だ。
これらに関する議論が十分ではなかったのは残念である。
首相は、憲法改正の条文化を進めた場合、参院側で全ての法案審議に応じない意向を立憲民主党が示していたことに言及し、
「極めて無責任」
と批判した。
その上で
「起案について協力をお願いしたい」
と述べた。
立民の泉健太代表に責任ある対応を求めたものだ。
泉氏は
「議論を真摯にやっている」
と述べ、審議拒否をちらつかせる態度を改める表明はしなかった。
首相が泉氏に迫ったのはもっともだ。
同時に、最大政党である自民党の総裁として首相は、憲法第9条改正や緊急事態条項創設の必要性についても論じてほしかった。
党首討論は政治家のリーダーとしての資質を見極める場として有意義である。
首相は質問に答えるだけでなく、野党党首に質問することもできる。
国家観や政策の方向性を競い合う場として活用すべきだ。
そのためには、国家の命運を左右する外交防衛論議も欠かせない。
党首討論の運営を見直すことが必要である。
今は1回45分間で、複数の野党党首が時間を分け合うため、野党党首1人当たりの時間が短い。
見直しは単に時間を延ばすだけでなく、内政、外交安保をテーマ別にどちらも開催するなどの工夫がほしい。
開催頻度も高めたい。
導入当初の平成12年は8回開催されたが、平成29年には初めて1回も開かれないなど、回数は減少傾向にある。
低調な要因としては、野党側が首相を長時間拘束でき、一方的に質問できる予算委員会を重視している面がある。
自民も首相の失点を避けるために、必ずしも開催に積極的ではない。
国会で首相と党首が火花を散らす論戦をしなくてどうする。
国を背負う気概が伝わる討論にしなければならない。

<主張>電気・ガス代補助 必要な層に絞った支援を
社説
2024/6/25 5:00
https://www.sankei.com/article/20240625-IUCFM5MN2FN45O24WMG6WADGUU/
岸田文雄首相が2024年6月21日の会見で物価高対策として電気・ガス料金の負担軽減策を2024年8月使用分から3カ月間、復活させると表明した。
電気・ガス料金の補助は2024年5月使用分をもって終了している。
これに伴い、大手電力の2024年7月請求分(2024年6月使用分)の電気料金は、10社のうち8社が過去最高となる見通しだ。
首相は再開の理由について
「暑い夏を乗り切るための緊急支援だ」
と述べた。
先の終了では、液化天然ガス(LNG)や石炭の輸入価格がロシアのウクライナ侵略前と同程度に低下したことを理由にしていたはずだ。
LNG、石炭とも輸入価格は当時より下がっており、唐突な補助の再開は政策の一貫性を欠く。
支持率が低迷する政権浮揚のアピール材料にしたいとの思惑があると見られても仕方あるまい。
日銀がマイナス金利政策を解除し、国債に頼る財政は厳しさを増す。
物価高対策が必要なのであれば、一律補助ではなく低所得者や中小企業など真に支援を必要とする層に対象を絞る仕組みを導入すべきだ。
国民の誰もが使うエネルギーに対する支援策は、これまでも延長が繰り返されてきた。
電気・ガス料金の補助は令和5年1月の使用分から適用された。
令和5年9月使用分で終了する予定だったが、補助を縮小して延長された。
ガソリンや灯油など燃油価格を抑制するための補助金は令和4年1月に導入された後、これまで7度に渡り延長されている。
首相は今回、燃油補助金について年内と期限を区切ったが、両補助金を合わせると、予算額は既に10兆円を超えている。
政府は2024年6月から1人当たり計4万円の定額減税も実施している。
エネルギー補助金を含め、財政出動による物価高対策はいつまでも続けられないと認識すべきだ。
首相は今回、原発再稼働が進んでいる地域とそうでない地域とでは電気料金に大きな格差があると指摘した。
その上で安全が確認された原発を再稼働させる意向を改めて示した。
再稼働を進めるには首相の強力なリーダーシップが欠かせない。
再稼働の地元了解を得るために、避難路整備など地元の要望に政府を挙げて取り組む必要がある。
首相は言葉だけでなく行動で示してもらいたい。

<主張>通常国会の閉幕 「国の根幹」進まなかった
社説
2024/6/23 5:00
https://www.sankei.com/article/20240623-U3XRSIZPX5NJ7OXR3P2VP5ZH5A/
通常国会が事実上閉幕した。
150日間の会期で経済安全保障上の機密情報へのアクセスを官民の有資格者に限る「重要経済安保情報保護・活用法」や政府の自治体への指示権を拡充する改正地方自治法、少子化対策関連法などが成立した。
日英伊が次期戦闘機を共同開発するための国際機関を設立する条約も承認された。
いずれも評価できる。
岸田文雄首相は記者会見で、多くの法律が成立したことを強調した。
ただ
「政治とカネ」
を巡る問題では、国民の信頼を取り戻せたとはいえない。
改正政治資金規正法を成立させたとはいえ、
「外国人・外国法人のパーティー券購入規制」

「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)
の改革は先送りされた。
自民党の派閥パーティー収入不記載事件についても不明な点が残った。
安定的な皇位継承に向けた皇族数確保について、各党の意見集約には至らなかった。
憲法改正の条文案作成にも着手できなかった。
極めて残念である。
国の根幹に関わる重要課題を進めるために、会期を延長すべきだったのではないか。
皇位継承策に関しては閉会中も与野党協議を進め、男系(父系)継承の大原則を踏まえた合意形成を急いでもらいたい。
憲法改正については南海トラフ巨大地震や首都直下地震、有事への備えとして、国会議員の任期延長など緊急事態条項の新設が急務だ。
国防規定がない現憲法は問題で、最低限、自衛隊明記は必要である。
終盤国会で立憲民主党は、条文化を進めた場合、参院側で全ての法案審議に応じない意向を示した。
このようなやり方で改憲を阻止しようとする立民の見識を疑う。
最後の定例日だった2024年6月20日の衆院憲法審査会も、立民が内閣不信任決議案を提出した影響で開催できなかった。
自民、公明党、日本維新の会、国民民主党などは閉会中の審査を求めている。
立民は応じるべきだ。
閉会中審査で議論すべき課題はまだある。
ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が、軍事同盟と言える
「包括的戦略パートナーシップ条約」
に署名した。
日本への脅威は格段に高まる。
緊迫化する安保環境を踏まえた審議が必要だ。

<産経抄>平和ボケ国会とほくそ笑む金正恩氏
2024/6/22 5:00
https://www.sankei.com/article/20240622-J6AQAYKDHRJEZN72P5BSM36W6U/
2018年6月、シンガポールで当時のトランプ米大統領と初めて会談した際の北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の顔は緊張でこわばり、歩みはぎこちなかった。
それから6年が経ち、今度はプーチン露大統領を平壌に迎えた金氏は終始リラックスした表情で、余裕すら窺えた。
▼北は2017年9月に6回目の核実験を実施し、米西海岸まで届く大陸間弾道弾(ICBM)搭載用の水爆実験に
「完全に成功した」
と発表した。
2017年9月に訪米し、トランプ氏と会談した安倍晋三首相は帰国後、抄子に情勢の緊迫を告げた。
「金氏は凄く臆病だから自分からは絶対先制攻撃しない」
「一方で米国が来年(2018年)、先制攻撃する可能性が出ている」
▼実際、米国は当時、金氏個人を狙った
「斬首作戦」
から広範囲を攻撃する核兵器使用まであらゆる選択肢を検討していた。
自衛隊幹部も朝鮮半島有事では
「拉致被害者救出のため自衛隊を出したい」
と漏らしていた。
金氏が米朝首脳会談に臨んだのは、このままでは自身の命が危ういと考えたからだろう。
▼今回、金氏とプーチン氏が署名した
「包括的戦略パートナーシップ条約」
には、互いの有事に
「軍事援助を提供する」
との文言がある。
朝鮮半島有事に、ロシアが軍事介入する道を開いたもので、米国の軍事的圧力に怯えてきた金氏がほくそ笑む姿が目に浮かぶようである。
▼核大国を目指し着々と歩を進めてきた北が、ロシアという老舗の核大国と手を握ったとあっては、米国も迂闊には手出しできない。
中国の脅威も合わせ、我が国を取り巻く安全保障環境はかつてなく厳しい。
▼にもかかわらず、2024年6月21日に事実上閉会した通常国会は
「政治とカネ」
に明け暮れた。
平和ボケは病膏肓(やまいこうこう)に入っている。

<正論>保守政党の目指すべきことは
九州大学教授・施光恒
2024/6/21 8:00
https://www.sankei.com/article/20240621-C5WC6MQAARLXFGEAIRIPVU66PQ/
■グローバル化に惑わされ
最近、
「保守政党がすべきことは何か」
とよく尋ねられる。
背景にあるのは自民党支持率の低落ぶりだろう。
政治資金の問題もあろうが、自民党が
「保守らしさ」
を失ったことも大きい。
自民党政治家の多くは
「グローバル化」
の美名に惑わされ、経済政策やその他の面で保守すべき大切な物事を見失ったのではないか。
先人の大切にしてきた文化や伝統、価値観などを守り、それらをより良き形で次世代に継承することに目が向かなくなったのではないか。
1990年代半ば頃から先進各国で進められてきたグローバル化路線は、各国の各種規制を取り払い、国境を越えて資本を動かすことを容易にした。
その結果、生活の利便性は増したものの、悪影響も少なくない。
最も懸念すべきは、各国の庶民の声よりも、グローバルな投資家や企業関係者の声の方が各国政府に届きやすくなったことだ。
グローバルな投資家や企業関係者は、自分たちが稼ぎやすい環境を整えなければ、資本を移動させるぞと各国政府に圧力を掛けることが可能となった。
彼らは
「人件費が下がるような構造改革を実施しなければ、生産拠点を海外に移す」
「法人税率を下げなければ、貴国にはもう投資しない」
などと各国政府に事実上要求できるようになった。
そのため、グローバル化路線の下では、各国の経済や社会の制度は、グローバルな投資家や企業関係者に有利な形に徐々に作り変えられてしまう。
各国の文化や伝統、価値観などに配慮することもない。
その結果、各国の一般庶民層には不利な社会が出現してしまう。
実際、日本政府も1990年代後半以降、グローバルな投資家や企業に事実上従い、彼らが稼げる環境を整備する構造改革を繰り返してきた。
法人税率の引き下げ(その補塡としての消費税率の引き上げ)、非正規労働者や外国人労働者を雇用しやすくする規制緩和、株主重視の企業統治改革などである。
■日本社会の土台の弱体化
例えば日本の経済社会は、ここ約30年の間に株主中心主義へと変質した。
日本の大企業(資本金10億円以上)は、構造改革が始まって間もない平成9年と比べれば、平成30年には株主への配当金を約6.2倍にも増やした。
その一方、従業員給与は減らしている(平成9年を100とすれば平成30年は78)。
設備投資もほぼ同様に減少(やはり100から97)している(相川清「法人企業統計調査に見る企業業績の実態とリスク」『日本経営倫理学会誌』第27号・令和2年など)。
勤労よりも投資重視という風潮は、国民の価値観にも影響を及ぼす。
日本人が大切にしてきた
「コツコツ勤勉に働く」
という価値は失われつつある。
『国民性調査』(統計数理研究所)によれば、昭和63年から平成25年の間に
「努力しても報われない」
と考える若者は急激に増加した。
伝統や文化、価値観などを次世代に引き継いでいく場は、家庭や地域社会、学校教育である。
近年、これらの土台も揺らいでいる。
家庭に関しては、少子化問題が非常に深刻だ。
少子化には様々な理由があるが、最も危惧すべきは若い世代の経済状況の悪化だ。
家庭を作り、余裕を持って子育てを行うのが今は難しい。
最近の報道では20代正社員の4分の1が将来子供を持つことに消極的だった。
主な理由は
「お金が足りない」
「増税・物価高の中、自分のことで精一杯で育てる責任が持てない」
などの経済的不安だった(マイナビ意識調査・2024年5月20日)。
地域社会も、過疎化やシャッター街化が進行し壊滅状態だ。
平成2年と令和元年を比べると、全国の小学校の数は20%以上減少した(学校基本調査)。
小学校の
「校区」
は地域社会の最小単位だと言える。
地域の祭りや行事は校区単位で組織される場合が多い。
小学校の減少は、それだけ地域社会が希薄化したことを意味する。
■日本の伝統や文化、価値観
自民党の役割は、やはり日本の伝統や文化、価値観を大切にしたいと願う普通の日本人の受け皿になることであろう。
欧米の保守派には、グローバル化推進策を改め、自国の庶民の生活の安定化を目指そうとする勢力が少なくない。
米国保守派の若手論客であるオレン・キャス氏は、経済政策の中心的目標を、グローバル化路線から大幅転換し、
「人々が自分の家庭や地域社会をしっかり支えていくことを可能にする労働市場を作り出し、維持すること」
にすべきだと主張する。
日本の保守派は、諸外国のこうした保守勢力と連携を深めるべきであろう。
国際社会に対して、現行のグローバル化路線を改め、各国で各々の文化や伝統を守り、庶民の生活を第1に考えることのできる国際経済秩序を共に模索しようと呼び掛けるべきではないか。

国家主権より「裏金」の危険
産経新聞2024年5月24日 拓殖大名誉教授・下條正男
中国海警局艦艇による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域での接続水域侵入は、150日を超えた。
だがその間、日本の与野党の国会議員たちの関心は、自民党のパーティー券問題に端を発した政治資金規正法の改正に向かい、国家主権が侵され続けているという現実から目を逸らしてきた。
彼らにとっては、国家主権よりも政権の奪取と死守が優先されるからだろう。
その最中、韓国の総選挙では与党「国民の力」が惨敗した。
日本に融和的な外交姿勢を示す尹錫悦氏が大統領に就任し、日韓関係にも改善の兆しが見えていたが、日本はせっかく訪れていた外交チャンスを逃してしまった。
■対日カード再び
韓国では総選挙の直後、野党「共に民主党」の議員ら17人が大挙して竹島(島根県隠岐の島町)に上陸すると、続いて文在寅政権時代の法相、゙国(チョ・グク)氏も竹島に上陸し、尹錫悦政権を
「親日政権」
と批判した。
韓国の野党陣営は、竹島を政権批判と対日批判のカードに使い、尹錫悦政権に揺さぶりを掛けたのである。
だが何とも皮肉な話である。
竹島は1954年以来、韓国によって不法占拠され続けている日本の領土である。
その竹島に韓国の国会議員らが上陸し、尹錫悦政権批判と対日批判の外交カードにしていたからだ。
だが、日本政府の官房長官や外相は、韓国の議員らの竹島上陸に
「遺憾の意」
を表しただけで、無為無策に徹していた。
また日本には2013年以来、
「領土・主権対策企画調整室」
なる機関が存在し、領土担当相も誕生していた。
しかし民主党政権時代の2010年以来、尖閣諸島周辺では中国政府による挑発行為が続き、来年2025年は、島根県議会が
「竹島の日」
条例を定めて20周年を迎える。
その間に、領土・主権対策企画調整室が戦略的な対応を企画したとも、領土担当相が竹島問題や尖閣問題の解決に努めたとも聞いたことがない。
それは江戸時代の
「槍奉行」
などと同じで、閑職の類である。
それに、2013年からは毎年、
「竹島の日」
の式典に政務官が派遣されるようになったものの、彼らは竹島問題の
「解決に向けて粘り強く努めていきます」
と誓って帰るが、その後は音沙汰無しである。
■政治不信の本質
昨今の日本では、パーティー券問題から裏金問題となり、それが派閥の解散となって今では政治資金規正法の改正議論に辿り着いた。
だが国民の政治不信の本質はそこにはない。
問題は、立法府が法案を成立させ、行政府がその法律を規則として実務を行うそのプロセスにある。
2013年に新設された領土・主権対策企画調整室は、尖閣諸島問題や竹島問題で失策続きだった民主党政権のアイデアを基に発足した。
そこでは
「対外情報発信」

「国民啓蒙」
が、既定の方針であった。
だがその有識者会議のメンバーの1人となった私は、竹島問題や尖閣諸島問題の現状を説明し、
「今は対外情報発信や国民啓蒙よりも領土問題での研究が必要だ」
と訴えた。
しかし、報告書がまとめられる段階で、私の異見(他の人とは違った考え。異議。異論)は立法府に忖度したのか削除を求められ、封印されてしまった。
これは1度決まってしまうと、そこに課題があっても軌道修正ができないということである。
2024年4月27日、沖縄県石垣市が実施した尖閣諸島の環境調整に国会議員5人が参加し、中国海警局の公船と洋上で対峙したという。
後日、その1人は
「私はもう本当に怒りましたよ」
「(腸が)煮えくり返っていますから」
と発言したそうだ。
だがこの種のパフォーマンスは、極めて危険である。
中国側でも尖閣諸島を
「歴史的にも国際法上も中国固有の領土」
と思い込んでいるからだ。
これは竹島に上陸した韓国の国会議員たちの行動と似ている。
相手を挑発するのなら、次の一手も考えておくべきだからだ。
私は2024年1月末、尖閣諸島問題をテーマにしたウェビナーを公開し、中国側が尖閣諸島を中国領としてきた文献を逆手に取って、正しく読めていなかった事実を明らかにした。
その歴史研究は領土・主権対策企画調整室や外務省とも違っていた。
■党利党略で失敗
現時、野党が政権を奪いたいなら、侵され続ける国家主権に不作為で臨んできた自公連立政権を追及すればよい。
また、自民党を再生したいというなら、何度か述べてきたように組閣の際、国務大臣をできるだけ多く国会議員以外から選ぶことだ。
派閥の論理で国務大臣が任用されている限り専門性は問われず、派閥の勢力拡大が優先される。
それでは論功行賞のための人事となり、副大臣や政務官といった
「槍奉行」
が増えるだけだ。
自民党のパーティー問題の本質はそこにある。
政権維持が目的となれば、特定の業界との癒着に繋がり、国民生活とは無縁の法案が成立する。
戦前の政党政治の失敗は、党利党略を優先させ、軍部の独走を防げなかったことにある。

尖閣上陸の12年前と一変…維新・和田有一朗衆院議員「目の前に海警の船」 尖閣視察を語る
2024/5/23 22:59
https://www.sankei.com/article/20240523-WPJTFPA535INNJP4PI7CGPQBN4/
沖縄県石垣市が2024年4月に実施した尖閣諸島(同市)の海洋調査には、与野党の国会議員5人が同行した。
そのうちの1人で、平成24(2012)年8月には魚釣島に上陸した日本維新の会の和田有一朗衆院議員に話を聞いた。
ーー尖閣諸島周辺の様子は
調査船は2024年4月26日の夜に石垣島を出発し、2024年4月27日の早朝には既に魚釣島から2〜3キロの辺りを航行していた。
日の出の光で目を覚まし、デッキに出ると海上保安庁の巡視船と中国海警局(海警)の船が何隻も入り乱れて航行している姿が目に飛び込んできた。
大袈裟かもしれないが、船の煙突から立ち上る煙を見て、日露戦争で連合艦隊とバルチック艦隊が激突した日本海海戦を扱った映画のワンシーンのように思え、『こんな状況になっているのか』と驚いた。
ーー旧民主党政権が尖閣諸島を「国有化」する直前の平成24(2012)年8月、魚釣島に上陸した
当時兵庫県議だった私を含む地方議員有志の数人で上陸したが、その時は非常に牧歌的な雰囲気だった。
1時間余り上陸し、日章旗を立ててきたが、辺りはヤギのフンだらけで、臭かったのを覚えている。
海警の船は当然いなかったし、海保の巡視船は遠くの方で、我々の安全を確保するために見守ってくれていたように見えた。
ーー状況は一変した
12年前『平成24(2012)年8月』はこんな事になるとは想像もしなかった。
海警の船が連日のように領海侵入していることは知ってはいたが、日本の領海の、日本の島のすぐ横、目の前に海警の船がある。
これはちょっと異常じゃないかと思った。
日本の領海であるのに、そうでないと錯覚しかねない状況があった。
ーー政府は尖閣諸島を「有効に支配」していて、現場海域で海保などが「冷静かつ毅然とした対応」を行っているとしている
海保の巡視船は数隻で海警の船を取り囲んで、進路を阻んでいた。
操船技術の高さを含め、海保の日夜の対応には敬意を表したい。
だが、それらも対症療法だ。
抗議をし続けても、どんどん海警の船が領海に入ってきている現実がある。
操船技術が海保に劣るという海警の船が海保に誤ってぶつかってきたらどうするのか。
あるいは発砲してきたらどうするのか。
現実問題として真剣に考えなければいけない。
ーー抗議以外に何が必要か
政府は、原則として政府関係者以外の尖閣諸島への上陸を認めない方針を取っているが、それならば、政府職員を上陸させ、常駐させるべきだ。
携帯電話の基地局を設置することも考えられる。
実効支配を強化するためだ。
今回、機会あって調査に同行できたが、上川陽子外相をはじめ、全ての国会議員が尖閣諸島を視察すべきだと思う。

わだ・ゆういちろう
昭和39年、神戸市生まれ。
早稲田大卒、神戸市外大大学院修士課程修了。
衆院議員秘書、神戸市議、兵庫県議を経て令和3年10月の衆院選で初当選。
59歳。

尖閣周辺に中国海警局の船 154日連続
2024/5/23 10:40
https://www.sankei.com/article/20240523-3VPEQB6YRFOLTOBLP2GE2GZ2YA/
尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海外側にある接続水域で2024年5月23日、中国海警局の船4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。
尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは154日連続。
第11管区海上保安本部(那覇)によると、1隻は機関砲のようなものを搭載。
領海に近付かないよう巡視船が警告した。

<主張>政府の基金見直し 監視強めて無駄をなくせ
2024/5/19 5:00
https://www.sankei.com/article/20240519-JXRAF7KZ5BP2JJWVFNQGAUI5PQ/
複数年度に渡る政策事業に対し弾力的に資金を投じられるよう積み立てる政府の基金は、予算の単年度主義の弊害を是正し、中長期的な視点で政策を推進するために活用すべきものである。
ところが、その中には政策効果や目標が不明瞭で、無駄に積み上がっているものも多い。
これを是正しなければならないのは当然だ。
政府が国の基金事業を総点検し、その運営を見直した。
基金を有効活用するために欠かせぬ布石である。
まずはここで定めた方針の徹底を求めたい。
同時に基金の運営状況への監視の目を強め、成果の検証や更なる改善点の検討などを不断に続けることが肝要である。
基金残高は令和4年度末で計16兆6000億円に上る。
政府は今回、152基金の200事業を点検した。
その結果、新型コロナ対策関連などの基金から、使用見込みがない5466億円を国庫に返納することになった。
また電気自動車(EV)の充電設備を設置するための事業など、休眠状態の11事業は令和6年度に廃止することも決めた。
これまでの基金運営は極めて杜撰だった。
2023秋の集計では定量的な短期成果目標を設けていない例が71事業に上り、事業終了時期を設定していないものも65事業あった。
これでは効果的な運用など望むべくもない。
政府は今回の見直しを通じて全ての事業に成果目標を設定させた。
また、事業は原則10年以内に終わらせる。
基金への予算の積み立ては3年程度とし、それ以降の予算追加は成果目標の達成状況を踏まえて判断することにした。
基金の水膨れを避けるためにも欠かせぬ措置だ。
基金事業を巡っては、補助金交付の基準策定や審査を民間に委託する例もあり、その多くを所管する経済産業省は今回、こうした外注を改めることを決めた。
公的な資金を扱う以上、民間任せにすべきではない。
一連の見直しで問われるのは実効性である。
例えば基金事業の終了時期は平成18年に閣議決定された基準により
「10年を超えない範囲内」
で設定するとされていたのに、必ずしも守られてこなかった。
同様のことを繰り返してはならない。
基金は一旦設置されれば監視の目が行き届きにくくなりがちだ。
そうならないよう透明性を高めることも等しく重要である。

国の基金もチェック機能に限界 ネットで「公金チューチュー」と厳しい目、第三者の指摘に報奨金の検討も
2024.4/17 11:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20240417-LQKFWSKEIVI45JJ4NH7SCIWZ4Q/2/
ただし、財務省も1度認めた予算でも、その後の執行をみて看過できないものがあったのだろう。
国が所管する基金は現在、180超ある。
新型コロナウイルス対策で積立額が膨らみ、全体の残高は2022年度末時点で計約16兆6000億円となる。
廃止を調整している基金は、
電気自動車充電設備を設置する「省エネルギー設備導入促進基金」、
農林漁業者が発電事業を行う「地域還元型再生可能エネルギーモデル早期確立基金」、
東京電力福島第1原発事故で企業立地が落ち込んだ地域を支援する「環境対応車普及促進基金」
などだという。
しかし、これで十分だろうか。
政府内の会計検査院も基金を見過ごしていないだろう。
さらにネット上では
「公金チューチュー」
という言葉が流行っている。
「暇空茜」
というハンドルネームの人が1人で東京都を相手として福祉関係の団体に対する補助金支出について監査請求などを行い、訴訟で勝ったりしている。
他のネットユーザーは称賛し、資金提供もするという現象も起きている。
この例で示唆されることは、財務省のチェック機能には限界があるので、第3者のチェックも有効ということだ。
第3者の指摘に対して報奨金を出すというのも検討していいだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

国の10基金「無駄」廃止へ 千数百億円を国庫返納 総点検の結果を月内に報告
2024/4/8 19:12
https://www.sankei.com/article/20240408-JMWKZQGNYBIPFHBJFT2JNYTT4Q/
政府は、中長期的な政策推進のため積み立てた基金の総点検を巡り、事業が事実上終了している約10の基金を廃止する方向で調整に入った。
管理費だけの支出が続き、無駄と判断した。
存続を認める場合も不用額を割り出し、国庫返納させる余剰金は計千数百億円となりそうだ。
2024年4月下旬に開くデジタル行財政改革会議に点検結果を報告する見通し。
政府関係者が明らかにした。
国が所管する基金は現在、180超ある。
新型コロナウイルス対策で積立額が膨らみ、全体の残高は令和4年度末時点で計約16兆6000億円。
継続的な施策に財源をまとめて確保できる一方、不要不急の出費に繋がりやすいとの指摘がある。
岸田文雄首相が2023年12月、全基金の点検を指示していた。
行財政改革に取り組む政権の姿勢をアピールする狙いがある。

4兆円削減も基金乱立で7.5兆円歳出増 PB黒字視野も、さらなる歳出改革必要
2024/4/2 21:39
https://www.sankei.com/article/20240402-LC74336UMVIHTABACBGA2RCBIE/
政府は2024年4月2日、経済財政諮問会議を開き、経済・財政一体改革や中長期の政策の方向性を議論した。
会議では、財政の健全度を示す、令和7年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)に関する有識者による検証結果が示され、歳出削減の努力や税収増により収支改善が進む一方で、基金の乱立や多額の補正予算執行で約7.5兆円分の追加歳出が生じているとして、更なる歳出改革の必要性を指摘した。
検証では令和6年1月時点に試算したPBと、令和3年7月時点に試算したPBを比較。
この間に約4兆円の歳出削減が進み、物価高などで5.3兆円程度税収が増加するが、3年前2021年は想定しなかった防衛力強化や半導体の生産や開発を支援する基金など、基金の乱立により多額の追加歳出が発生。
赤字幅は2.9兆円から1.1兆円への縮小にとどまるとした。
多額の追加歳出に繋がっていた基金の残高は、新型コロナウイルス禍前の令和元年度から令和4年度にかけて約7倍に膨張。
基金は複数年度に渡り予算を柔軟に使える半面、いつまでも執行されないケースもあり、
「無駄遣いの温床」
と指摘されている。
こうした問題に切り込めば、PBの収支改善は更に前進するとして、会議では、目標とする令和7年度のPB黒字化が
「視野に入る」
と報告された。
岸田文雄首相も会議で
「今後の財政運営に当たっては経済、物価動向などに配慮しながら歳出改革を継続していく必要がある」
と述べた。
ただリスクもある。
1つは社会保障費の増大だ。
特に医療費は今後、医療の高度化で更に膨らむことが避けられない。
また、日本銀行が金融政策の正常化に踏み出したことで、金利上昇にも注意が必要となる。
国債の利払い費が増えれば、財政悪化に直結する。
新型コロナ禍のような危機に備えるためにも、早期にPBを黒字化させることが重要だ。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/703.html#c39

[政治・選挙・NHK294] 大阪万博はうっすらウンコ臭い? “腐った卵”硫化水素が流出も「対策これから」の体たらく(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
22. 秘密のアッコちゃん[410] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月26日 11:22:58 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[523]
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選択的夫婦別姓 経団連・十倉雅和会長「スピーディーに議論を」自民に要求
2024/6/25 23:24
https://www.sankei.com/article/20240625-GN2CKAAVRFIKFERTR7RAD7JTXQ/
経団連の十倉雅和会長は2024年6月25日の定例記者会見で、自民党が
「選択的夫婦別姓制度」
に関する党内議論を本格化する意向を示したことについて、
「女性の社会進出、社会での活躍を進めたいという思いは一緒だと思う」
「オープンでスピーディーに議論してほしい」
と述べた。
経団連は結婚後も希望すれば夫婦それぞれが生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる同制度の早期実現を求める提言を2024年6月10日に発表し、2024年6月21日に自民党に提言を提出していた。
経済同友会の新浪剛史代表幹事も2024年6月18日の定例会見で、
「1つの姓を選ばなくてはいけないという非常に不都合なことがずっと放置されたままだ」
と指摘。
「政治が解決しないのであれば経済界がモノを言っていかなければならない」
との認識を示していた。

選択的夫婦別姓議論、自民が3年ぶり再開 慎重派は懸念「保守離れ加速する」
2024/6/25 22:34
https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/
選択的夫婦別姓を巡る議論の経緯
https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/photo/TNK63PLFCRO4BDS2LNDI5YSMIU/
自民党は近く選択的夫婦別姓を巡る党内議論を3年ぶりに再開させる。
経団連が早期実現を求める提言を発表するなど、家族の多様性を尊重する風潮が背景にある。
とはいえ、保守層を中心に家族の一体感が失われるとして慎重論も少なくない。
保守層が求める早期の憲法改正が一向に進まない中で推進論に傾けば、
「自民離れ」
が加速するのは必至だ。
自民の茂木敏充幹事長は2024年6月25日の記者会見で、
「多様な人材の活躍は社会活力の源だ」
「選択的夫婦別姓は社会全体にも関わる問題であり、国民の幅広い意見も踏まえて、しっかり議論を進めていきたい」
と述べた。
自民の渡海紀三朗政調会長は2024年6月21日、選択的夫婦別姓を含む
「氏制度のあり方に関するワーキングチーム(WT)」
で議論に着手すると表明した。
新たな座長には逢沢一郎党紀委員長を起用する方針だ。
党幹部は
「政権与党として、いつまでも夫婦別姓の議論を棚ざらしというわけにはいかない」
と議論再開の必要性を強調する。
自民は菅義偉政権下の令和3年4月にWTの初会合を開催。
令和3年6月に論点整理をまとめたが、議論が紛糾したため制度導入の是非には踏み込まず、結論を先送りしていた。
しかし、経団連が2024年6月10日、早期実現を訴える政府への提言を発表したことを受け、党内では再び推進派と慎重派が動きを活発化させている。
自民の有志議員で作る
「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」(会長・浜田靖一国対委員長)
は2024年6月21日、国会内で会合を開き、経団連から提言を受け取った。
浜田氏は
「大変心強い」
「時代の要請として受け止めていく」
と語った。
一方、慎重派で作る
「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」(会長・中曽根弘文元外相)
は2024年6月19日に党本部で会合を開き、結婚前の氏を通称として幅広く使用できる環境整備を進めることを確認。
慎重派の議員は
「拙速に議論を進めれば『岩盤保守層』の更なる離反を招きかねない」
と不安を口にする。
岸田文雄首相(自民総裁)も2024年6月21日の会見で、慎重な姿勢を示した。
対立の激化は自民分断の芽となりかねず、党重鎮は
「経団連の手前、議論はしなければならないが、明確な方向性を示すことは難しいのではないか」
と述べた。

<主張>経団連「夫婦別姓」 家族の呼称をなくすのか
社説
2024/6/19 5:00
https://www.sankei.com/article/20240619-I4Q7IU7X5FJQTNZ3V4LDQESQHQ/
結婚後に夫婦が同じ姓を名乗るか、旧姓を維持するか選べる
「選択的夫婦別姓」
について経団連が早期実現を提言した。
十倉雅和会長は、女性の社会進出が進む中で
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べたが、国民の合意を欠いたまま、急ぐ問題ではない。
経団連は従来、夫婦同姓の下で職場での通称使用で対応できるとの立場だった。
別姓推進に転じたのは
「ビジネス上のリスク」
などが理由だ。
経団連が行ったアンケートなどでは職場で旧姓の通称使用が増えている一方、通称では銀行口座などが作れないことや海外渡航、契約で戸籍上の姓と異なることでトラブルが生じていることを指摘した。
だが夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定を変えることは、家族や社会の有り様に関わる。
岸田文雄首相が2024年6月17日の衆院決算行政監視委員会で、選択的夫婦別姓の早期導入の提言に慎重な考えを示し、
「家族の一体感や子供の利益に関わる問題であり、国民の理解が重要だ」
と述べたのは、もっともだ。
夫婦別姓を認めない民法の規定を
「違憲」
だとする訴えに対し、最高裁は平成27年と令和3年に合憲の判断を示し、夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。
別姓制が導入されれば、こうした姓の意義が、砂粒のような個人の呼称へと大きく変わる。
専門家によると姓は血縁血統を表すもので、家族の歴史や絆が断ち切られかねない。
同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要がある。
「選択」
と言っても別姓を希望しない人も含め社会に関わる問題だ。
別姓推進論は子供からの視点にも欠ける。
夫婦別姓では、どちらかの親と子が別姓になる。
子供の姓をどうするのか。
祖父母らも絡み、いさかいや分断が起きるのは見たくない。
最高裁の判決では、姓の在り方について国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきだ、としている。
深く理解すべきだ。
住民票や運転免許証、パスポートなどで旧姓を併記できる制度も広がっている。
経団連は、トラブルを嘆くより、我が国の夫婦同姓の意義を国際的に発信し、問題を解消してほしい。

<産経抄>経団連の「夫婦別姓提言」に異議あり       
2024/6/17 5:00
https://www.sankei.com/article/20240617-BKNKSTIQ3FJ2DDKD2AI3HWGCEQ/
夫婦別姓が叶わなくとも、パートナーを守る方法はある
経団連は
「選択的夫婦別姓」
の早期実現を求める提言を発表したが、法制化には国民の合意が必要だ
2024年6月の第3日曜は
「父の日」
だったが、
「母の日」
に比べ影が薄い。
父親の地位低下が指摘され久しい。
▼ゲームに押されて、子供のおままごと遊びはあまり見かけなくなったが、やってみてもパパ役はママに叱られ、オタオタする様子を真似するのだとか。
「正論」
を重んじる同僚も、家では言いたいことを言えず、妻や娘たちに阿る日々だという。
それも平和を守る知恵か。
▼だがこちらは黙って見過ごせない問題だ。
経団連が
「選択的夫婦別姓」
の早期実現を求める提言を先日、発表した。
十倉雅和会長は
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べたが、拙速に進めては禍根を残す。
▼選択的夫婦別姓は夫婦で同じ姓(氏)にするか、旧姓を名乗るかを選べる制度だ。
民法の改正などが必要となる。
女性の社会進出に伴い、平成8年に法制審議会が導入を求める答申をした。
30年近く経っても法制化に至らないのは、国民の合意が得られないからだ。
財界が
「急げ」
と号令をかける話なのか。
▼最高裁は平成27年と令和3年に、夫婦別姓を認めない民法の規定について
「合憲」
とする判断を示した。
夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。
選べるならいいじゃないか、別姓を希望しない人には関係ない、と考えるのは早計だ。
専門家からは、姓について家族の呼称から個人の呼称へと大きく変質することが指摘されている。
▼同じ戸籍に同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要があり、社会全体に関わる。
夫婦同姓は子供も両親と姓を同じくすることで利益を享受しやすい意義もある。
別姓では子の姓をどうするか。
双方の祖父母も絡み、決まらない混乱も予想される。

「国民の意見さまざま」 法相、選択的別姓に慎重
2024/6/11 11:24
https://www.sankei.com/article/20240611-JHRCRF76CFIA3LM3MAVGM7R5GY/
小泉龍司法相は2024年6月11日の閣議後記者会見で、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求めた経団連の提言に対し
「国民の間にまださまざまな意見がある」
とした上で
「積極的に動きを見極め、対応を検討していくことが必要だ」
と述べ、慎重な姿勢を示した。
法相の諮問機関の法制審議会は1996年、結婚後もそれぞれ婚姻前の名字を使える選択的別姓制度の導入を含む民法改正案を答申。
だが、保守系議員の反対などで法案は提出されなかった。
小泉氏はこの点にも触れ
「国会議員の方々の間でもしっかりと議論をし、幅広い理解を得ていただくため、法務省として積極的な情報提供をしたい」
とした。

「夫婦別姓制度、早期実現を」経団連が初の提言 通称は海外で理解得られずトラブルも
2024/6/10 18:29
https://www.sankei.com/article/20240610-PLZOKGZSLVKTZKDUTL3OBW74UQ/
経団連は2024年6月10日、選択的夫婦別姓制度の実現を求める提言を発表した。
希望すれば生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる制度の早期実現を要求。
政府に対し
「一刻も早く改正法案を提出し、国会で建設的な議論を期待する」
とした。
経団連による同制度に関する提言は初めて。
十倉雅和会長は2024年6月10日の定例記者会見で
「世の中は大きく変わっている」
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べた。
現在は婚姻時に夫か妻のいずれかの姓を選べるが、妻が改姓することが圧倒的に多い。
提言では
「生活上の不便、不利益といった改姓による負担が女性に偏っているのが現実」
と訴えた。
経団連の調査では、国内の91%の企業は旧姓などを通称として使用することを認めているものの、通称は海外では理解されづらく、トラブルの原因になることがあると指摘。
「企業にとってもビジネス上のリスクとなり得る」
とした。

主張
夫婦同姓は合憲 家族制度の原則を守った
2021/6/24 5:00
https://www.sankei.com/article/20210624-BGWW7J52VRJMJFEQ5FVP7KQAZQ/
最高裁大法廷は、
「夫婦別姓」
を認めない民法の規定を再び
「合憲」
と判断した。
夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めた平成27(2015)年の最高裁判決を踏襲した。
妥当な判断である。
事実婚の男女3組が、夫婦別姓を希望して婚姻届を提出したが、不受理となり、家事審判を申し立て、最高裁に特別抗告していた。
女性の社会進出や世論など最近の情勢変化を踏まえた判断が注目されたが、最高裁は決定理由で、社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、6年前の判断を変更すべきとは認められない―と判示した。
平成27(2015)年の最高裁の判断を通し、夫婦同一の姓について、男女差別を助長したり、人格を傷付けたりする制度ではないことも明確になっている。
最高裁はこの時と同様、
「制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべき事柄」
と指摘した。
平成8(1996)年に法制審議会が、夫婦で同じ姓にするか、旧姓をそれぞれ名乗るか選べる選択的夫婦別姓の導入を答申して25年経つ。
法制化に至らなかったのは、立法府が問題を放置しているというより、国民の十分な合意が得られないからである。
選択的夫婦別姓について、個人の自由で選択の幅が広がる―などと歓迎するのは考え違いである。
導入されれば夫婦同一姓を原則とした戸籍制度が崩れかねず、全国民に影響が及ぶ。
親子が別々の姓になる事態も起きる。
子供の姓を両親どちらの姓にするかなど、諍いや混乱も予想される。
平成29(2017)年に行われた内閣府の世論調査では、夫婦別姓が子供に与える影響について、6割以上が
「子供にとって好ましくない影響があると思う」
と答えていた。
社会情勢の変化と言うなら、旧姓が通称使用できる企業は増えている。
2年前の2019年には住民票やマイナンバーカードなどで旧姓を併記できるようにするため、政令改正が行われた。
パスポート(旅券)についても旧姓併記の申請が容易になるよう緩和された。
日本の伝統や文化に根差した家族制度の原則を崩す必要はなく、更に働きやすい職場作りなどに知恵を絞る方が現実的だ。
国や社会の基盤である家族の意義に理解を深くしたい。

夫婦別姓認めぬ規定、再び「合憲」 最高裁
2021/6/23 21:54
https://www.sankei.com/article/20210623-WTZ3HHNALJO5RNCEOMMHNPXNAI/
夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は違憲として、東京都内に住む事実婚の男女3組が起こした家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は2021年6月23日、規定は
「合憲」
とする判断を示した。
最高裁は平成27(2015)年にも夫婦同姓を定めた民法の規定を合憲としており、今回は2度目の判断。
15人中4人は違憲とする意見や反対意見を出した。
決定理由で最高裁は、家族が同じ姓を名乗るのは日本社会に定着しており、規定に男女の不平等はないとした平成27(2015)年の判断について
「社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、変更すべきとは認められない」
と指摘。
一方で、夫婦の姓を巡りどのような制度が妥当なのかという問題と、憲法違反かどうかを審査する問題とは
「次元が異なる」
とした上で
「国会で論じられ、判断されるべき事柄だ」
と、前回判断に続き、改めて立法での議論を促した。
合憲とした深山卓也裁判官、岡村和美裁判官、長嶺安政裁判官の3人は
「今回の判断は、国会での選択的夫婦別姓制度を含む法制度の検討を妨げるものではなく、国民の様々な意見や社会の状況変化などを十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待する」
と、共同補足意見で述べた。
一方、違憲とした宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官は
「結婚に対する当事者の意思決定は自由かつ平等であるべきで、規定は不当な国家介入に当たる」
などと述べた。
事実婚の3組は、婚姻届に
「夫は夫の氏、妻は妻の氏を希望します」
と付記して自治体に提出したが不受理となり平成30(2018)年3月、東京家裁などに家事審判を申し立てたが、却下された。
2審東京高裁でも棄却され、最高裁に特別抗告していた。
結婚後の姓を巡っては、平成8(1996)年に法相の諮問機関・法制審議会が、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を答申したが、法案提出には至らなかった。
2021年に入り自民党がワーキングチームを設置し本格的な議論が始まったが、実現への目処は立っていない。

■夫婦同姓の規定
民法750条は、結婚した夫婦は
「夫または妻の氏」
を名乗るよう規定。
戸籍法でも、結婚時に
「夫婦が称する氏」
を提出書類に記載するよう定めている。
昭和22(1947)年に改正される前の明治民法では
「家の姓を名乗る」
とされていた。
厚生労働省の統計では、平成27(2015)年に結婚した夫婦のうち、96%が夫の姓を選択。
改姓による社会的な不便・不利益が指摘されてきたことなどを背景に、夫婦が希望する場合には結婚後に姓を変えない
「選択的夫婦別姓制度」
の導入を求める声が強まっている。

夫婦別姓認めぬ最高裁判断「家族に一体感」安堵の声も
2021/6/23 20:45
https://www.sankei.com/article/20210623-CEFJAVRIAZIRPHCEU6S7ZFUAEI/
最高裁大法廷が2021年6月23日、6年前に続き、
「夫婦別姓」
を認めない民法の規定を
「合憲」
とする判断を示した。
この間の社会情勢や国民の意識の変化を踏まえつつ、国会に議論を委ねた形に。
「違憲」
となれば、新たな対応を迫られる現場からは安堵の声も聞かれた一方、申立人からは決定に不満が漏れた。
「結婚して姓が一緒になることで、家族としての一体感が生まれる」。
結婚生活40年以上になる東京都江東区の男性(71)は、合憲判断に納得の表情を浮かべた。
「子供のことを考えれば、両親が違う姓だと違和感を覚えるのではないか」
とも指摘した。
内閣府の平成29年の調査では、選択的夫婦別姓の導入に向けた法改正42.5%が賛成と答え、反対の29.3%を上回った。
ただ、賛成派に実際に別姓とするかを尋ねたところ、希望するが19.8%、希望しないが47.4%だった。
夫婦別姓が認められれば、子供への心理的影響も懸念される教育現場。
最高裁の決定に注目していた千代田区の幼稚園園長は
「途中で姓が変わった場合に、子供たちの間に動揺が広がらないようにケアするなど、新たな対応が必要になってくるだろうと思っていた」
と打ち明ける。
一方、先祖代々の墓を管理する寺院は、家族観の変化に危機感を抱いていた。
豊川稲荷(愛知県豊川市)によると、旧姓と結婚後の姓の両方を墓石に刻む女性が増えてきているといい、同寺の男性役員(53)は
「夫婦別姓になると、家という概念が失われる可能性がある」
「別姓が認められるのは難しいと思っていた」
と話した。
夫婦別姓には、財産をめぐる問題が持ち上がる可能性もある。
生命保険の受取人は原則戸籍上の配偶者や2親等以内の血縁者に限られており、ライフネット生命保険(東京)の担当者は
「姓が異なる場合、配偶者であることの確認が課題になる」。
同社では事実婚のパートナーらを保険金の受取人にできる仕組みを作っており、
「今後も社会の変化に合わせて検討していきたい」
と話した。

選択的夫婦別姓 社会混乱の引き金に 八木秀次×小島新一・大阪正論室長
ラジオ大阪ぶっちゃけ正論
2021/6/17 8:00
https://www.sankei.com/article/20210617-C2ELAEDPJ5MIHI5KLUORROEF4A/
■家族名が消える
小島
選択的夫婦別姓制度を導入すべきだという議論が昨年から国会で盛んになりました。
八木
選択的夫婦別姓とは、夫婦同姓、親子同姓という民法の考え方をふまえ、同姓にしたい人はこれまで通り同姓だけど、別姓にしたい夫婦は別姓を選んでもいい。
選択ができるという仕組みです。
一見よさそうに思えるんですよ。
小島
自分たち夫婦、家族は同姓でいたいと考えている人たちも、自分たちの同姓が守られるのならと考えてしまいますよね。
八木
ところが選択的であったとしても、その影響は別姓夫婦にとどまりません。
別姓では、1つの戸籍の中に2つの姓が存在することになります。
戸籍から、家族に共通の姓、ファミリーネーム、家族名がなくなるわけです。
小島
家族名がある戸籍とない戸籍、ある人とない人が共存することはないので、全体として家族名はなくなると。
八木
「氏名」の性格が根本的に変わるんです。
氏名とは、家族名に個人の名前を合わせたものです。
家族名がなくなれば、氏名は純粋な個人の名前になる。
すべての家族から家族名が奪われ、戸籍上、姓が同じ夫婦や子供も、各人の名前の上の部分が重なっているにすぎなくなる。
小島
たまたま上の名が同じということですね。
八木
ええ。
たいした問題ではないと思う人がいるかもしれませんが、社会制度や慣行に影響が及びます。
家族単位、世帯単位で主になされてきたものが崩れて個人単位になる。
■3つの姓から選択も
八木
別姓夫婦だと、子供の姓をいつ決めるのかという問題もあります。
兄弟姉妹で姓は統一なのか、バラバラなのか。
子供が1人だけだと、夫婦で子供の姓の取り合い、押し付け合いにならないか。
すでに結婚して同姓の夫婦も、1年あるいは3年の経過措置期間を設けて別姓を選ぶことができるとしています。
妻、あるいは夫が旧姓を名乗りたいとなった場合、夫婦の間に生まれた子供の姓の選び直しも行われることになる。
複数世代にわたる姓の変更を認めるのかという問題も想定されます。
子供のいる夫婦の妻側の母親、おばあちゃんが実家の姓に戻すという選択をした場合、連動して、妻の姓もおばあちゃんの旧姓に変えられるのか。
旧姓に戻す決断をしたおばあちゃんの娘である妻や孫は3つの姓から選ぶということになりかねない。
おばあちゃんの旧姓、夫の姓、妻の旧姓です。
小島
社会が大混乱しますね。
八木
自民党内では一時、選択的夫婦別姓の導入機運が高まりましたが、こうした現実的な問題点への理解が広まり、賛成意見はしぼみつつあります。

櫻井よしこ氏「保守政党らしからぬ提言に危機感」
2021/5/19 16:40
https://www.sankei.com/article/20210519-FRWVDCNTRVN7PLO57QDGPU2CK4/
選択的夫婦別姓制度の導入に慎重な自民党有志議員を中心に作る
「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」
が2021年5月19日、ジャーナリストの櫻井よしこ、麗澤大学教授の八木秀次の両氏を講師に招いて国会内で会合を開いた。
櫻井氏は
「保守政党としての自民党の矜持」
と題して講演。
安倍晋三政権から菅義偉政権に代わったことで党内に変化が生じていると指摘し、
「保守政党らしからぬ政策提言、法案の提出、そしてそれを通そうとする非常に強い動きに大変な危機感を感じている」
と強調した。
「保守は、よりよい社会や国をつくるために変化はするが、その本質は変えず守っていくことだ」
とも語った。
八木氏は、選択的夫婦別姓を導入した場合の課題について
「多くの人は子供の氏が決まらないことや、氏の取り合いが起こることを懸念して結婚や出産を躊躇する」
「逆に少子化が進む可能性がある」
と指摘。
「現在の戸籍制度の下では、旧姓の通称使用を拡充することが最も現実的な解決策だ」
と訴えた。
一方、会合ではLGBTなど性的少数者をめぐる
「理解増進」
法案についても取り上げられた。
法案をめぐっては、稲田朋美元防衛相が委員長を務める
「性的指向・性自認に関する特命委員会」
が中心となり、立憲民主党などと協議して今国会での成立を目指している。
これについて、山谷えり子参院議員は
「もともとの自民党案は国柄に基づいた内容だったが、超党派の議員立法でガラッと哲学がかわってしまった」
「自民党として認めるには大きな議論が必要だ」
と語った。

異論暴論
正論6月号好評販売中 やるべきことは「夫婦別姓」か?
2021/5/3 10:00
https://www.sankei.com/article/20210503-QHTMRK3OE5KWVOEUGDN5FVJWZE/
自民党内で選択的夫婦別姓をめぐる論議が起きている。
推進論者からは結婚に伴う改姓によって生じる生活上の不都合や不便が強調されるのだが、そもそも夫婦が別姓になれば親子は別姓を余儀なくされる。
これまでの家族観や結婚観は変わり、子供に与える影響も無視できないはずだ。
正論2021年6月号では
「やるべきことは『夫婦別姓』か?」
を特集した。
高市早苗衆院議員(自民党)は、自民党のこれまでの選挙公約の実現に向け、自身が起草した
「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」
の成立の必要性を強調する。
高橋史朗・麗澤大学大学院客員教授と池谷和子・長崎大学准教授の論文は、推進者たちの主張の見せ方がいかに一面的で、良い面ばかりが強調されたものかを考えさせられる。
ジャーナリスト、平野まつじ氏は夫婦別姓が現実になると、何がもたらされ、どんな弊害が起こるのか、具体的に考えた。
子供の最善の利益をどうするか、という視点がいかに蔑ろにされ、議論のあり方として極めて危ういかがわかる。
党内で提唱される
「婚前氏続称制度」
「ミドルネーム案(結合氏制度)」
など歯牙にかけるに値しない。
選択的であろうが、夫婦別姓の導入は必要ない。

正論
国民の大多数は夫婦別姓望まず 国士舘大学特任教授 日本大学名誉教授・百地章
2021/7/6 8:00
https://www.sankei.com/article/20210706-2KVYJSZJQNPT3OSBPGFYEMTHXA/
■最高裁は合憲判断を維持
2021年6月23日、最高裁大法廷は予想通り夫婦同姓(氏)制は憲法に違反しないと判断した。
しかも合憲とした裁判官は11人と前回の平成27年判決より1人増えている。
平成27年の最高裁判決は、氏には
「家族の呼称」
としての意義があり、その呼称を一つに定める夫婦同姓制には合理性があるとして現行制度を合憲とした。
その上で、夫婦の姓の在り方は国会で判断すべきだとして、国会の立法政策に委ねた。
今回の最高裁決定は、この平成27年判決の立場を維持し、夫婦同姓を定めた民法750条や戸籍法を合憲とした上で、その後の社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、合憲判断を変更する必要はないとした。
これも妥当と言えよう。
ところがマスメディアの中には各種世論調査を引き合いに、別姓支持が国民多数の声であり、夫婦別姓の実現へと誘導するような報道があふれている。
そのため同姓支持を主張することがはばかられるような雰囲気さえある。
確かに内閣府の調査でも別姓支持が平成24年には35.5%だったものが、平成29年には42.5%に増加しており、その傾向は否定できない。
しかし、平成29年の調査でも、
「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだ」が29.3%、
「夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが旧姓を通称として使用するのは構わない」が24.4%
あった。
つまり、同姓支持は計53.7%もあり、別姓支持を上回っている。
■別姓望む国民はわずか8%
さらに、別姓支持者の中で自ら
「別姓を希望する」と答えた者は19.8%
にとどまる。
つまり、別姓希望者は支持者(42.5%)の19.8%だから全体でいえば0.08、つまり国民のわずか8%が別姓を希望しているだけである。
平成24年の調査でも別姓希望者は全体の8%にすぎないから、別姓希望者は全く増えていないことが分かる。
そのようなごく少数の希望者のために、明治以来120年以上の伝統を有し、国民の中に広く定着している夫婦同姓制度を改正してしまうのは乱暴ではないか。
この問題は慎重な上にも慎重に対処すべきだ。
夫婦別姓希望者のために、現在では運転免許証、パスポート、さらにマイナンバーカードまで、旧姓を通称として併記することが認められている。
だから、日常生活における彼らの不便はほぼ解消しているはずだ。
にもかかわらず彼らが別姓にこだわるのはなぜか。
今回の決定において反対意見を述べた裁判官の中には、
「家族」
の定義は不明確であるとして否定的に解し、
「姓」

「個人の呼称」
の一部と考えて、夫婦同姓制度は
「個人の尊厳」
の侵害に当たると主張する者もいる。
■「家族呼称」か「個人呼称」か
確かに、憲法24条2項は家族について
「個人の尊厳と両性の本質的平等」
に立脚して制定するよう定めているが、憲法は
「家族の保護」
を否定するものではない。
それどころか、憲法制定時の議会においては
「従来の良き意味の家族制度はどこまでも尊重していかなければならぬ」
(木村篤太郎司法大臣)
との答弁がある。
わが国が批准している国際人権規約でも
「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し…与えられるべきである」
としている。
それ故、わが国の家族制度は、
「個人の尊厳」

「家族の保護」
によって支えられていると見なければならない。
だからこそ、平成27年の最高裁大法廷判決も、
「家族は社会の自然的かつ基礎的な集団単位であり、氏には家族の呼称としての意義があり、氏の在り方については国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきである」
とした。
それでは、家族制度の基本にかかわる
「姓(名字)」
について、国民はどのように考えているだろうか。
先の内閣府の調査(平成29年)によれば、国民の56.9%は姓を
「先祖から受け継がれてきた名称」
ないし
「夫婦を中心とした家族の名称」
と答えている。
これに対して姓は
「他の人と区別して自分を表す名称の一部」
と考える者は、全体のわずか13.4%にすぎない。
つまり、姓を
「個人の呼称」
の一部と考え、
「個人の尊厳」
を強調する反対意見は、姓を先祖伝来の
「家」

「家族」
の呼称と考える多数国民の意識と相当ズレていることが分かる。
以前、本欄で述べたように夫婦の姓をどう決めるかは、個人個人の問題であると同時に、わが国の家族制度の基本にかかわる公的制度の問題である。
しかも選択的夫婦別姓制は
「ファミリー・ネームの廃止」
につながり
「戸籍解体」
の恐れさえある(「『戸籍の解体』を招く夫婦別姓制」2021年3月29日)。
したがって、自らは希望しないにもかかわらず、
「選択的だから」
「望む人が別姓を名乗るだけだから」
などといった安易な発想で賛成してしまうのは、推進派を利するだけであり、非常に疑問といわざるを得ないであろう。

次世代の党、夫婦同姓規定「合憲」判断を「歓迎」
2015/12/16 19:12
https://www.sankei.com/article/20151216-JTCPST5AN5IUNNFTBEMB2AHLCU/
次世代の党は2015年12月16日、最高裁が夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断したことについて、中野正志幹事長名で
「判断を歓迎する」
との談話を出した。
談話では
「日本社会においては、夫婦、親子が同じ姓を名乗ることが家族の基本であり、家族の一体感を高めてきた」
「一方、夫婦別姓を求める運動では、家族が同じ姓を名乗ることを子供が望んでいることは省みられていない」
と指摘。
その上で
「日本は、既に職場などでの通称使用(旧姓使用)が否定されない社会になった」
「旧姓に拘りを持つ方は通称を用いることが可能であるし、結婚時に夫が妻の姓を選択することも可能である」
としている。

夫婦同姓規定は合憲 再婚禁止6カ月は違憲 最高裁が初判断
2015/12/16 15:24
https://www.sankei.com/article/20151216-EIZGWR6BTRIYTNB6YH7JAHKFYU/
【産経新聞号外】夫婦同姓「合憲」[PDF]
https://www.sankei.com/module/edit/pdf/2015/12/20151216iken.pdf
民法で定めた
「夫婦別姓を認めない」
とする規定の違憲性が争われた訴訟の上告審判決で最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は2015年12月16日、
「規定は合憲」
とする初めての判断を示した上で、原告側の請求を棄却した。
原告は
「時代の変化に従って選択的夫婦別姓を認めるべきだ」
などと主張したが、
「夫婦や親子など家族の在り方が損なわれる」
との慎重論は多く、世論調査も賛成・反対が拮抗してきた。
一方、
「女性は離婚後6カ月間、再婚できない」
とする規定を巡る訴訟で、大法廷は
「規定は違憲」
と初判断。
100日間を超える部分は違憲だとしたことで、国は法改正を迫られる。
最高裁が法律を違憲と判断したのは戦後10件目。
夫婦の姓について原告側は
「選択的夫婦別姓を認めないことは、婚姻の自由を不合理に制約していて、両性の本質的平等に立脚していない」
と主張。
「規定は違憲で、国会の高度な立法不作為に当たる」
と指摘していた。
国側は
「民法では、結婚後にどちらの姓を名乗るかについて、夫婦の協議による決定に委ねている」
「婚姻の自由や男女の平等を侵害していない」
と反論。
規定に違憲性はなく国会の立法不作為にも当たらないと主張していた。
両規定を巡っては、法相の諮問機関の法制審議会が平成8年、選択的夫婦別姓を導入し、再婚禁止期間も100日に短縮するよう答申した。
しかし、国会や世論の反対が多く、改正は見送られた。
民主党政権時代にも改正の動きがあったが、閣内の反対などで法案提出には至っていない。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/714.html#c22

[政治・選挙・NHK294] グタグダ維新が内部分裂危機…都知事選“掟破り”の「石丸支援者」続出で小池知事は票減らす恐れ(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
31. 秘密のアッコちゃん[411] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月26日 20:49:28 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[524]
<■547行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
愚か者! 経団連「夫婦別姓」提言
WiLL2024年8月号 副県立大学名誉教授 島田洋一
2024年6月10日、経団連がいわゆる
「選択的夫婦別姓」

「早期実現」
を政府に求める提言を出した(具体的には民法750条の改正)。
経団連は、夫婦が妻の姓を選ぶことも可能ではあるものの、
「実際には95%の夫婦が夫の姓を選び、妻が姓を改めている」
「そのため、アイデンティティの喪失や自己の存在を証することが出来ないことによる日常生活・職業生活上の不便・不利益といった、改姓による負担が、女性に偏っている」
と言う。
経団連によれば、
「女性のエンパワーメント(強化)において、我が国は世界に大きく立ち遅れており」、
その背後に、
「各社の取り組みだけでは解決できない、女性活躍を阻害する社会制度」
がある。
その代表的なものが夫婦同氏制度だというのである。
まず最初の疑問だが、女性の活躍に関して日本が
「世界に大きく立ち遅れて」
いるというのは本当か。
経団連・十倉雅和会長の頭にある
「世界」
がどの範囲なのか知らないが、少なくとも相当怪しい
「世界観」
だろう。
実際日本において、実力ある女性の活躍が、男の場合以上に阻害されているとすれば、
「女を下に見る」
不見識な経営者や重役が各所に残るでいではないか。
だとすれば、経済界の頂点に位置する経団連会長の責任が相当大きいと言わざるを得ない。
まずは自らの指導力不足を反省すべきだろう。
経団連提言で最も問題なのは、従来
「夫婦別姓」
法制化論で常に論点となってきた、
@親子や兄弟姉妹の間で姓が異なって良いのか
A明治以来の戸籍制度を崩すことにならないか
といった懸念に全く答えていないことである。
そもそも言及自体ない。
これは無責任だろう。
近年、パスポート、マイナンバーカードを始め、旧姓の通称使用が拡大されてきた。
経団連提言も、
「官民の職場では、女性の社会進出の進展を踏まえ、改姓によるキャリアの分断等を避けるため、職場における旧姓の通称としての使用を推進してきた」
「公的証明書や各種国家資格等でも婚姻前の姓(旧姓)の併記が可能になるなど、政府の施策としても通称使用が拡大され、経済界においても、通称使用は定着している」
と述べている。
「経団連調査では91%の企業が通称使用を認めている」
とも言う。
まだ不十分と言うなら、100%になるよう、経団連が強い姿勢で
「立ち遅れている」
経営者を叱咤すべきだろう。
そのための経済団体ではないか。
この問題で慎重論の先頭に立ってきた高市早苗議員は次のように言う。
「結婚すると、夫婦やその間に生まれる子供は同じ戸籍に登載され、姓は『家族の名称』という意味を持つ」
「だが、別姓になれば姓は単なる『個人の名称』になる」
「たとえ『選択制』にしても、家族の呼称を持たない存在を認める以上、結局は制度としての家族の呼称は廃止せざるを得なくなるだろう」
「事は家族の根幹に関わる」
(産経新聞・2021年3月18日)
「国際的トレンド」
云々についても高市氏は、
「日本は日本」
と一蹴する。
経団連は、旧姓の通称使用では問題解決にならない例として次のような
「トラブル」
を挙げる。
カッコ内は私のコメントである。
・クレジットカードの名義が戸籍上の場合、ホテルの予約等もカードの名義である戸籍姓に合わせざるを得ない。
(合わせたら良いではないか。合わせると女性活躍が阻害されるのか)。
・国際機関で働く場合、公的な氏名での登録が求められるため、姓が変わると別人格として見做され、キャリアの分断や不利益が生じる。
(結婚したから姓が変わったと言えば済む話、国際機関を馬鹿にし過ぎてはいないか)
・社内ではビジネスネーム(通称)が浸透しているため、現地スタッフが通称でホテルを予約した。
その結果、チェックイン時にパスポートの姓名と異なるという理由から、宿泊を断られた。
(現地スタッフとの意思疎通をより密にすれば良いだけ。あるいはパスポートに旧姓を併記すればよい。令和3年4月1日以降、申請が非常に簡略化された)
これが、女性にとって
「アイデンティティの喪失」

「自己の存在を証することができない」
ほどの不条理であり、家族別姓しか解決策がない次元の
「トラブル」
だろうか。
この程度の事象にも効果的に対処のマニュアルを示せない経団連では、日本経済停滞も無理はない。

民法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

選択肢のある社会の実現を目指して
〜女性活躍に対する制度の壁を乗り越える〜
2024年6月18日
一般社団法人 日本経済団体連合会
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044_honbun.html

選択的夫婦別姓 経団連・十倉雅和会長「スピーディーに議論を」自民に要求
2024/6/25 23:24
https://www.sankei.com/article/20240625-GN2CKAAVRFIKFERTR7RAD7JTXQ/
経団連の十倉雅和会長は2024年6月25日の定例記者会見で、自民党が
「選択的夫婦別姓制度」
に関する党内議論を本格化する意向を示したことについて、
「女性の社会進出、社会での活躍を進めたいという思いは一緒だと思う」
「オープンでスピーディーに議論してほしい」
と述べた。
経団連は結婚後も希望すれば夫婦それぞれが生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる同制度の早期実現を求める提言を2024年6月10日に発表し、2024年6月21日に自民党に提言を提出していた。
経済同友会の新浪剛史代表幹事も2024年6月18日の定例会見で、
「1つの姓を選ばなくてはいけないという非常に不都合なことがずっと放置されたままだ」
と指摘。
「政治が解決しないのであれば経済界がモノを言っていかなければならない」
との認識を示していた。

選択的夫婦別姓議論、自民が3年ぶり再開 慎重派は懸念「保守離れ加速する」
2024/6/25 22:34
https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/
選択的夫婦別姓を巡る議論の経緯
https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/photo/TNK63PLFCRO4BDS2LNDI5YSMIU/
自民党は近く選択的夫婦別姓を巡る党内議論を3年ぶりに再開させる。
経団連が早期実現を求める提言を発表するなど、家族の多様性を尊重する風潮が背景にある。
とはいえ、保守層を中心に家族の一体感が失われるとして慎重論も少なくない。
保守層が求める早期の憲法改正が一向に進まない中で推進論に傾けば、
「自民離れ」
が加速するのは必至だ。
自民の茂木敏充幹事長は2024年6月25日の記者会見で、
「多様な人材の活躍は社会活力の源だ」
「選択的夫婦別姓は社会全体にも関わる問題であり、国民の幅広い意見も踏まえて、しっかり議論を進めていきたい」
と述べた。
自民の渡海紀三朗政調会長は2024年6月21日、選択的夫婦別姓を含む
「氏制度のあり方に関するワーキングチーム(WT)」
で議論に着手すると表明した。
新たな座長には逢沢一郎党紀委員長を起用する方針だ。
党幹部は
「政権与党として、いつまでも夫婦別姓の議論を棚ざらしというわけにはいかない」
と議論再開の必要性を強調する。
自民は菅義偉政権下の令和3年4月にWTの初会合を開催。
令和3年6月に論点整理をまとめたが、議論が紛糾したため制度導入の是非には踏み込まず、結論を先送りしていた。
しかし、経団連が2024年6月10日、早期実現を訴える政府への提言を発表したことを受け、党内では再び推進派と慎重派が動きを活発化させている。
自民の有志議員で作る
「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」(会長・浜田靖一国対委員長)
は2024年6月21日、国会内で会合を開き、経団連から提言を受け取った。
浜田氏は
「大変心強い」
「時代の要請として受け止めていく」
と語った。
一方、慎重派で作る
「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」(会長・中曽根弘文元外相)
は2024年6月19日に党本部で会合を開き、結婚前の氏を通称として幅広く使用できる環境整備を進めることを確認。
慎重派の議員は
「拙速に議論を進めれば『岩盤保守層』の更なる離反を招きかねない」
と不安を口にする。
岸田文雄首相(自民総裁)も2024年6月21日の会見で、慎重な姿勢を示した。
対立の激化は自民分断の芽となりかねず、党重鎮は
「経団連の手前、議論はしなければならないが、明確な方向性を示すことは難しいのではないか」
と述べた。

<主張>経団連「夫婦別姓」 家族の呼称をなくすのか
社説
2024/6/19 5:00
https://www.sankei.com/article/20240619-I4Q7IU7X5FJQTNZ3V4LDQESQHQ/
結婚後に夫婦が同じ姓を名乗るか、旧姓を維持するか選べる
「選択的夫婦別姓」
について経団連が早期実現を提言した。
十倉雅和会長は、女性の社会進出が進む中で
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べたが、国民の合意を欠いたまま、急ぐ問題ではない。
経団連は従来、夫婦同姓の下で職場での通称使用で対応できるとの立場だった。
別姓推進に転じたのは
「ビジネス上のリスク」
などが理由だ。
経団連が行ったアンケートなどでは職場で旧姓の通称使用が増えている一方、通称では銀行口座などが作れないことや海外渡航、契約で戸籍上の姓と異なることでトラブルが生じていることを指摘した。
だが夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定を変えることは、家族や社会の有り様に関わる。
岸田文雄首相が2024年6月17日の衆院決算行政監視委員会で、選択的夫婦別姓の早期導入の提言に慎重な考えを示し、
「家族の一体感や子供の利益に関わる問題であり、国民の理解が重要だ」
と述べたのは、もっともだ。
夫婦別姓を認めない民法の規定を
「違憲」
だとする訴えに対し、最高裁は平成27年と令和3年に合憲の判断を示し、夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。
別姓制が導入されれば、こうした姓の意義が、砂粒のような個人の呼称へと大きく変わる。
専門家によると姓は血縁血統を表すもので、家族の歴史や絆が断ち切られかねない。
同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要がある。
「選択」
と言っても別姓を希望しない人も含め社会に関わる問題だ。
別姓推進論は子供からの視点にも欠ける。
夫婦別姓では、どちらかの親と子が別姓になる。
子供の姓をどうするのか。
祖父母らも絡み、いさかいや分断が起きるのは見たくない。
最高裁の判決では、姓の在り方について国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきだ、としている。
深く理解すべきだ。
住民票や運転免許証、パスポートなどで旧姓を併記できる制度も広がっている。
経団連は、トラブルを嘆くより、我が国の夫婦同姓の意義を国際的に発信し、問題を解消してほしい。

<産経抄>経団連の「夫婦別姓提言」に異議あり       
2024/6/17 5:00
https://www.sankei.com/article/20240617-BKNKSTIQ3FJ2DDKD2AI3HWGCEQ/
夫婦別姓が叶わなくとも、パートナーを守る方法はある
経団連は
「選択的夫婦別姓」
の早期実現を求める提言を発表したが、法制化には国民の合意が必要だ
2024年6月の第3日曜は
「父の日」
だったが、
「母の日」
に比べ影が薄い。
父親の地位低下が指摘され久しい。
▼ゲームに押されて、子供のおままごと遊びはあまり見かけなくなったが、やってみてもパパ役はママに叱られ、オタオタする様子を真似するのだとか。
「正論」
を重んじる同僚も、家では言いたいことを言えず、妻や娘たちに阿る日々だという。
それも平和を守る知恵か。
▼だがこちらは黙って見過ごせない問題だ。
経団連が
「選択的夫婦別姓」
の早期実現を求める提言を先日、発表した。
十倉雅和会長は
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べたが、拙速に進めては禍根を残す。
▼選択的夫婦別姓は夫婦で同じ姓(氏)にするか、旧姓を名乗るかを選べる制度だ。
民法の改正などが必要となる。
女性の社会進出に伴い、平成8年に法制審議会が導入を求める答申をした。
30年近く経っても法制化に至らないのは、国民の合意が得られないからだ。
財界が
「急げ」
と号令をかける話なのか。
▼最高裁は平成27年と令和3年に、夫婦別姓を認めない民法の規定について
「合憲」
とする判断を示した。
夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。
選べるならいいじゃないか、別姓を希望しない人には関係ない、と考えるのは早計だ。
専門家からは、姓について家族の呼称から個人の呼称へと大きく変質することが指摘されている。
▼同じ戸籍に同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要があり、社会全体に関わる。
夫婦同姓は子供も両親と姓を同じくすることで利益を享受しやすい意義もある。
別姓では子の姓をどうするか。
双方の祖父母も絡み、決まらない混乱も予想される。

「国民の意見さまざま」 法相、選択的別姓に慎重
2024/6/11 11:24
https://www.sankei.com/article/20240611-JHRCRF76CFIA3LM3MAVGM7R5GY/
小泉龍司法相は2024年6月11日の閣議後記者会見で、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求めた経団連の提言に対し
「国民の間にまださまざまな意見がある」
とした上で
「積極的に動きを見極め、対応を検討していくことが必要だ」
と述べ、慎重な姿勢を示した。
法相の諮問機関の法制審議会は1996年、結婚後もそれぞれ婚姻前の名字を使える選択的別姓制度の導入を含む民法改正案を答申。
だが、保守系議員の反対などで法案は提出されなかった。
小泉氏はこの点にも触れ
「国会議員の方々の間でもしっかりと議論をし、幅広い理解を得ていただくため、法務省として積極的な情報提供をしたい」
とした。

「夫婦別姓制度、早期実現を」経団連が初の提言 通称は海外で理解得られずトラブルも
2024/6/10 18:29
https://www.sankei.com/article/20240610-PLZOKGZSLVKTZKDUTL3OBW74UQ/
経団連は2024年6月10日、選択的夫婦別姓制度の実現を求める提言を発表した。
希望すれば生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる制度の早期実現を要求。
政府に対し
「一刻も早く改正法案を提出し、国会で建設的な議論を期待する」
とした。
経団連による同制度に関する提言は初めて。
十倉雅和会長は2024年6月10日の定例記者会見で
「世の中は大きく変わっている」
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べた。
現在は婚姻時に夫か妻のいずれかの姓を選べるが、妻が改姓することが圧倒的に多い。
提言では
「生活上の不便、不利益といった改姓による負担が女性に偏っているのが現実」
と訴えた。
経団連の調査では、国内の91%の企業は旧姓などを通称として使用することを認めているものの、通称は海外では理解されづらく、トラブルの原因になることがあると指摘。
「企業にとってもビジネス上のリスクとなり得る」
とした。

主張
夫婦同姓は合憲 家族制度の原則を守った
2021/6/24 5:00
https://www.sankei.com/article/20210624-BGWW7J52VRJMJFEQ5FVP7KQAZQ/
最高裁大法廷は、
「夫婦別姓」
を認めない民法の規定を再び
「合憲」
と判断した。
夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めた平成27(2015)年の最高裁判決を踏襲した。
妥当な判断である。
事実婚の男女3組が、夫婦別姓を希望して婚姻届を提出したが、不受理となり、家事審判を申し立て、最高裁に特別抗告していた。
女性の社会進出や世論など最近の情勢変化を踏まえた判断が注目されたが、最高裁は決定理由で、社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、6年前の判断を変更すべきとは認められない―と判示した。
平成27(2015)年の最高裁の判断を通し、夫婦同一の姓について、男女差別を助長したり、人格を傷付けたりする制度ではないことも明確になっている。
最高裁はこの時と同様、
「制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべき事柄」
と指摘した。
平成8(1996)年に法制審議会が、夫婦で同じ姓にするか、旧姓をそれぞれ名乗るか選べる選択的夫婦別姓の導入を答申して25年経つ。
法制化に至らなかったのは、立法府が問題を放置しているというより、国民の十分な合意が得られないからである。
選択的夫婦別姓について、個人の自由で選択の幅が広がる―などと歓迎するのは考え違いである。
導入されれば夫婦同一姓を原則とした戸籍制度が崩れかねず、全国民に影響が及ぶ。
親子が別々の姓になる事態も起きる。
子供の姓を両親どちらの姓にするかなど、諍いや混乱も予想される。
平成29(2017)年に行われた内閣府の世論調査では、夫婦別姓が子供に与える影響について、6割以上が
「子供にとって好ましくない影響があると思う」
と答えていた。
社会情勢の変化と言うなら、旧姓が通称使用できる企業は増えている。
2年前の2019年には住民票やマイナンバーカードなどで旧姓を併記できるようにするため、政令改正が行われた。
パスポート(旅券)についても旧姓併記の申請が容易になるよう緩和された。
日本の伝統や文化に根差した家族制度の原則を崩す必要はなく、更に働きやすい職場作りなどに知恵を絞る方が現実的だ。
国や社会の基盤である家族の意義に理解を深くしたい。

夫婦別姓認めぬ規定、再び「合憲」 最高裁
2021/6/23 21:54
https://www.sankei.com/article/20210623-WTZ3HHNALJO5RNCEOMMHNPXNAI/
夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は違憲として、東京都内に住む事実婚の男女3組が起こした家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は2021年6月23日、規定は
「合憲」
とする判断を示した。
最高裁は平成27(2015)年にも夫婦同姓を定めた民法の規定を合憲としており、今回は2度目の判断。
15人中4人は違憲とする意見や反対意見を出した。
決定理由で最高裁は、家族が同じ姓を名乗るのは日本社会に定着しており、規定に男女の不平等はないとした平成27(2015)年の判断について
「社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、変更すべきとは認められない」
と指摘。
一方で、夫婦の姓を巡りどのような制度が妥当なのかという問題と、憲法違反かどうかを審査する問題とは
「次元が異なる」
とした上で
「国会で論じられ、判断されるべき事柄だ」
と、前回判断に続き、改めて立法での議論を促した。
合憲とした深山卓也裁判官、岡村和美裁判官、長嶺安政裁判官の3人は
「今回の判断は、国会での選択的夫婦別姓制度を含む法制度の検討を妨げるものではなく、国民の様々な意見や社会の状況変化などを十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待する」
と、共同補足意見で述べた。
一方、違憲とした宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官は
「結婚に対する当事者の意思決定は自由かつ平等であるべきで、規定は不当な国家介入に当たる」
などと述べた。
事実婚の3組は、婚姻届に
「夫は夫の氏、妻は妻の氏を希望します」
と付記して自治体に提出したが不受理となり平成30(2018)年3月、東京家裁などに家事審判を申し立てたが、却下された。
2審東京高裁でも棄却され、最高裁に特別抗告していた。
結婚後の姓を巡っては、平成8(1996)年に法相の諮問機関・法制審議会が、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を答申したが、法案提出には至らなかった。
2021年に入り自民党がワーキングチームを設置し本格的な議論が始まったが、実現への目処は立っていない。

■夫婦同姓の規定
民法750条は、結婚した夫婦は
「夫または妻の氏」
を名乗るよう規定。
戸籍法でも、結婚時に
「夫婦が称する氏」
を提出書類に記載するよう定めている。
昭和22(1947)年に改正される前の明治民法では
「家の姓を名乗る」
とされていた。
厚生労働省の統計では、平成27(2015)年に結婚した夫婦のうち、96%が夫の姓を選択。
改姓による社会的な不便・不利益が指摘されてきたことなどを背景に、夫婦が希望する場合には結婚後に姓を変えない
「選択的夫婦別姓制度」
の導入を求める声が強まっている。

夫婦別姓認めぬ最高裁判断「家族に一体感」安堵の声も
2021/6/23 20:45
https://www.sankei.com/article/20210623-CEFJAVRIAZIRPHCEU6S7ZFUAEI/
最高裁大法廷が2021年6月23日、6年前に続き、
「夫婦別姓」
を認めない民法の規定を
「合憲」
とする判断を示した。
この間の社会情勢や国民の意識の変化を踏まえつつ、国会に議論を委ねた形に。
「違憲」
となれば、新たな対応を迫られる現場からは安堵の声も聞かれた一方、申立人からは決定に不満が漏れた。
「結婚して姓が一緒になることで、家族としての一体感が生まれる」。
結婚生活40年以上になる東京都江東区の男性(71)は、合憲判断に納得の表情を浮かべた。
「子供のことを考えれば、両親が違う姓だと違和感を覚えるのではないか」
とも指摘した。
内閣府の平成29年の調査では、選択的夫婦別姓の導入に向けた法改正42.5%が賛成と答え、反対の29.3%を上回った。
ただ、賛成派に実際に別姓とするかを尋ねたところ、希望するが19.8%、希望しないが47.4%だった。
夫婦別姓が認められれば、子供への心理的影響も懸念される教育現場。
最高裁の決定に注目していた千代田区の幼稚園園長は
「途中で姓が変わった場合に、子供たちの間に動揺が広がらないようにケアするなど、新たな対応が必要になってくるだろうと思っていた」
と打ち明ける。
一方、先祖代々の墓を管理する寺院は、家族観の変化に危機感を抱いていた。
豊川稲荷(愛知県豊川市)によると、旧姓と結婚後の姓の両方を墓石に刻む女性が増えてきているといい、同寺の男性役員(53)は
「夫婦別姓になると、家という概念が失われる可能性がある」
「別姓が認められるのは難しいと思っていた」
と話した。
夫婦別姓には、財産をめぐる問題が持ち上がる可能性もある。
生命保険の受取人は原則戸籍上の配偶者や2親等以内の血縁者に限られており、ライフネット生命保険(東京)の担当者は
「姓が異なる場合、配偶者であることの確認が課題になる」。
同社では事実婚のパートナーらを保険金の受取人にできる仕組みを作っており、
「今後も社会の変化に合わせて検討していきたい」
と話した。

選択的夫婦別姓 社会混乱の引き金に 八木秀次×小島新一・大阪正論室長
ラジオ大阪ぶっちゃけ正論
2021/6/17 8:00
https://www.sankei.com/article/20210617-C2ELAEDPJ5MIHI5KLUORROEF4A/
■家族名が消える
小島
選択的夫婦別姓制度を導入すべきだという議論が昨年から国会で盛んになりました。
八木
選択的夫婦別姓とは、夫婦同姓、親子同姓という民法の考え方をふまえ、同姓にしたい人はこれまで通り同姓だけど、別姓にしたい夫婦は別姓を選んでもいい。
選択ができるという仕組みです。
一見よさそうに思えるんですよ。
小島
自分たち夫婦、家族は同姓でいたいと考えている人たちも、自分たちの同姓が守られるのならと考えてしまいますよね。
八木
ところが選択的であったとしても、その影響は別姓夫婦にとどまりません。
別姓では、1つの戸籍の中に2つの姓が存在することになります。
戸籍から、家族に共通の姓、ファミリーネーム、家族名がなくなるわけです。
小島
家族名がある戸籍とない戸籍、ある人とない人が共存することはないので、全体として家族名はなくなると。
八木
「氏名」の性格が根本的に変わるんです。
氏名とは、家族名に個人の名前を合わせたものです。
家族名がなくなれば、氏名は純粋な個人の名前になる。
すべての家族から家族名が奪われ、戸籍上、姓が同じ夫婦や子供も、各人の名前の上の部分が重なっているにすぎなくなる。
小島
たまたま上の名が同じということですね。
八木
ええ。
たいした問題ではないと思う人がいるかもしれませんが、社会制度や慣行に影響が及びます。
家族単位、世帯単位で主になされてきたものが崩れて個人単位になる。
■3つの姓から選択も
八木
別姓夫婦だと、子供の姓をいつ決めるのかという問題もあります。
兄弟姉妹で姓は統一なのか、バラバラなのか。
子供が1人だけだと、夫婦で子供の姓の取り合い、押し付け合いにならないか。
すでに結婚して同姓の夫婦も、1年あるいは3年の経過措置期間を設けて別姓を選ぶことができるとしています。
妻、あるいは夫が旧姓を名乗りたいとなった場合、夫婦の間に生まれた子供の姓の選び直しも行われることになる。
複数世代にわたる姓の変更を認めるのかという問題も想定されます。
子供のいる夫婦の妻側の母親、おばあちゃんが実家の姓に戻すという選択をした場合、連動して、妻の姓もおばあちゃんの旧姓に変えられるのか。
旧姓に戻す決断をしたおばあちゃんの娘である妻や孫は3つの姓から選ぶということになりかねない。
おばあちゃんの旧姓、夫の姓、妻の旧姓です。
小島
社会が大混乱しますね。
八木
自民党内では一時、選択的夫婦別姓の導入機運が高まりましたが、こうした現実的な問題点への理解が広まり、賛成意見はしぼみつつあります。

櫻井よしこ氏「保守政党らしからぬ提言に危機感」
2021/5/19 16:40
https://www.sankei.com/article/20210519-FRWVDCNTRVN7PLO57QDGPU2CK4/
選択的夫婦別姓制度の導入に慎重な自民党有志議員を中心に作る
「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」
が2021年5月19日、ジャーナリストの櫻井よしこ、麗澤大学教授の八木秀次の両氏を講師に招いて国会内で会合を開いた。
櫻井氏は
「保守政党としての自民党の矜持」
と題して講演。
安倍晋三政権から菅義偉政権に代わったことで党内に変化が生じていると指摘し、
「保守政党らしからぬ政策提言、法案の提出、そしてそれを通そうとする非常に強い動きに大変な危機感を感じている」
と強調した。
「保守は、よりよい社会や国をつくるために変化はするが、その本質は変えず守っていくことだ」
とも語った。
八木氏は、選択的夫婦別姓を導入した場合の課題について
「多くの人は子供の氏が決まらないことや、氏の取り合いが起こることを懸念して結婚や出産を躊躇する」
「逆に少子化が進む可能性がある」
と指摘。
「現在の戸籍制度の下では、旧姓の通称使用を拡充することが最も現実的な解決策だ」
と訴えた。
一方、会合ではLGBTなど性的少数者をめぐる
「理解増進」
法案についても取り上げられた。
法案をめぐっては、稲田朋美元防衛相が委員長を務める
「性的指向・性自認に関する特命委員会」
が中心となり、立憲民主党などと協議して今国会での成立を目指している。
これについて、山谷えり子参院議員は
「もともとの自民党案は国柄に基づいた内容だったが、超党派の議員立法でガラッと哲学がかわってしまった」
「自民党として認めるには大きな議論が必要だ」
と語った。

異論暴論
正論6月号好評販売中 やるべきことは「夫婦別姓」か?
2021/5/3 10:00
https://www.sankei.com/article/20210503-QHTMRK3OE5KWVOEUGDN5FVJWZE/
自民党内で選択的夫婦別姓をめぐる論議が起きている。
推進論者からは結婚に伴う改姓によって生じる生活上の不都合や不便が強調されるのだが、そもそも夫婦が別姓になれば親子は別姓を余儀なくされる。
これまでの家族観や結婚観は変わり、子供に与える影響も無視できないはずだ。
正論2021年6月号では
「やるべきことは『夫婦別姓』か?」
を特集した。
高市早苗衆院議員(自民党)は、自民党のこれまでの選挙公約の実現に向け、自身が起草した
「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」
の成立の必要性を強調する。
高橋史朗・麗澤大学大学院客員教授と池谷和子・長崎大学准教授の論文は、推進者たちの主張の見せ方がいかに一面的で、良い面ばかりが強調されたものかを考えさせられる。
ジャーナリスト、平野まつじ氏は夫婦別姓が現実になると、何がもたらされ、どんな弊害が起こるのか、具体的に考えた。
子供の最善の利益をどうするか、という視点がいかに蔑ろにされ、議論のあり方として極めて危ういかがわかる。
党内で提唱される
「婚前氏続称制度」
「ミドルネーム案(結合氏制度)」
など歯牙にかけるに値しない。
選択的であろうが、夫婦別姓の導入は必要ない。

正論
国民の大多数は夫婦別姓望まず 国士舘大学特任教授 日本大学名誉教授・百地章
2021/7/6 8:00
https://www.sankei.com/article/20210706-2KVYJSZJQNPT3OSBPGFYEMTHXA/
■最高裁は合憲判断を維持
2021年6月23日、最高裁大法廷は予想通り夫婦同姓(氏)制は憲法に違反しないと判断した。
しかも合憲とした裁判官は11人と前回の平成27年判決より1人増えている。
平成27年の最高裁判決は、氏には
「家族の呼称」
としての意義があり、その呼称を一つに定める夫婦同姓制には合理性があるとして現行制度を合憲とした。
その上で、夫婦の姓の在り方は国会で判断すべきだとして、国会の立法政策に委ねた。
今回の最高裁決定は、この平成27年判決の立場を維持し、夫婦同姓を定めた民法750条や戸籍法を合憲とした上で、その後の社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、合憲判断を変更する必要はないとした。
これも妥当と言えよう。
ところがマスメディアの中には各種世論調査を引き合いに、別姓支持が国民多数の声であり、夫婦別姓の実現へと誘導するような報道があふれている。
そのため同姓支持を主張することがはばかられるような雰囲気さえある。
確かに内閣府の調査でも別姓支持が平成24年には35.5%だったものが、平成29年には42.5%に増加しており、その傾向は否定できない。
しかし、平成29年の調査でも、
「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだ」が29.3%、
「夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが旧姓を通称として使用するのは構わない」が24.4%
あった。
つまり、同姓支持は計53.7%もあり、別姓支持を上回っている。
■別姓望む国民はわずか8%
さらに、別姓支持者の中で自ら
「別姓を希望する」と答えた者は19.8%
にとどまる。
つまり、別姓希望者は支持者(42.5%)の19.8%だから全体でいえば0.08、つまり国民のわずか8%が別姓を希望しているだけである。
平成24年の調査でも別姓希望者は全体の8%にすぎないから、別姓希望者は全く増えていないことが分かる。
そのようなごく少数の希望者のために、明治以来120年以上の伝統を有し、国民の中に広く定着している夫婦同姓制度を改正してしまうのは乱暴ではないか。
この問題は慎重な上にも慎重に対処すべきだ。
夫婦別姓希望者のために、現在では運転免許証、パスポート、さらにマイナンバーカードまで、旧姓を通称として併記することが認められている。
だから、日常生活における彼らの不便はほぼ解消しているはずだ。
にもかかわらず彼らが別姓にこだわるのはなぜか。
今回の決定において反対意見を述べた裁判官の中には、
「家族」
の定義は不明確であるとして否定的に解し、
「姓」

「個人の呼称」
の一部と考えて、夫婦同姓制度は
「個人の尊厳」
の侵害に当たると主張する者もいる。
■「家族呼称」か「個人呼称」か
確かに、憲法24条2項は家族について
「個人の尊厳と両性の本質的平等」
に立脚して制定するよう定めているが、憲法は
「家族の保護」
を否定するものではない。
それどころか、憲法制定時の議会においては
「従来の良き意味の家族制度はどこまでも尊重していかなければならぬ」
(木村篤太郎司法大臣)
との答弁がある。
わが国が批准している国際人権規約でも
「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し…与えられるべきである」
としている。
それ故、わが国の家族制度は、
「個人の尊厳」

「家族の保護」
によって支えられていると見なければならない。
だからこそ、平成27年の最高裁大法廷判決も、
「家族は社会の自然的かつ基礎的な集団単位であり、氏には家族の呼称としての意義があり、氏の在り方については国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきである」
とした。
それでは、家族制度の基本にかかわる
「姓(名字)」
について、国民はどのように考えているだろうか。
先の内閣府の調査(平成29年)によれば、国民の56.9%は姓を
「先祖から受け継がれてきた名称」
ないし
「夫婦を中心とした家族の名称」
と答えている。
これに対して姓は
「他の人と区別して自分を表す名称の一部」
と考える者は、全体のわずか13.4%にすぎない。
つまり、姓を
「個人の呼称」
の一部と考え、
「個人の尊厳」
を強調する反対意見は、姓を先祖伝来の
「家」

「家族」
の呼称と考える多数国民の意識と相当ズレていることが分かる。
以前、本欄で述べたように夫婦の姓をどう決めるかは、個人個人の問題であると同時に、わが国の家族制度の基本にかかわる公的制度の問題である。
しかも選択的夫婦別姓制は
「ファミリー・ネームの廃止」
につながり
「戸籍解体」
の恐れさえある(「『戸籍の解体』を招く夫婦別姓制」2021年3月29日)。
したがって、自らは希望しないにもかかわらず、
「選択的だから」
「望む人が別姓を名乗るだけだから」
などといった安易な発想で賛成してしまうのは、推進派を利するだけであり、非常に疑問といわざるを得ないであろう。

次世代の党、夫婦同姓規定「合憲」判断を「歓迎」
2015/12/16 19:12
https://www.sankei.com/article/20151216-JTCPST5AN5IUNNFTBEMB2AHLCU/
次世代の党は2015年12月16日、最高裁が夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断したことについて、中野正志幹事長名で
「判断を歓迎する」
との談話を出した。
談話では
「日本社会においては、夫婦、親子が同じ姓を名乗ることが家族の基本であり、家族の一体感を高めてきた」
「一方、夫婦別姓を求める運動では、家族が同じ姓を名乗ることを子供が望んでいることは省みられていない」
と指摘。
その上で
「日本は、既に職場などでの通称使用(旧姓使用)が否定されない社会になった」
「旧姓に拘りを持つ方は通称を用いることが可能であるし、結婚時に夫が妻の姓を選択することも可能である」
としている。

夫婦同姓規定は合憲 再婚禁止6カ月は違憲 最高裁が初判断
2015/12/16 15:24
https://www.sankei.com/article/20151216-EIZGWR6BTRIYTNB6YH7JAHKFYU/
【産経新聞号外】夫婦同姓「合憲」[PDF]
https://www.sankei.com/module/edit/pdf/2015/12/20151216iken.pdf
民法で定めた
「夫婦別姓を認めない」
とする規定の違憲性が争われた訴訟の上告審判決で最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は2015年12月16日、
「規定は合憲」
とする初めての判断を示した上で、原告側の請求を棄却した。
原告は
「時代の変化に従って選択的夫婦別姓を認めるべきだ」
などと主張したが、
「夫婦や親子など家族の在り方が損なわれる」
との慎重論は多く、世論調査も賛成・反対が拮抗してきた。
一方、
「女性は離婚後6カ月間、再婚できない」
とする規定を巡る訴訟で、大法廷は
「規定は違憲」
と初判断。
100日間を超える部分は違憲だとしたことで、国は法改正を迫られる。
最高裁が法律を違憲と判断したのは戦後10件目。
夫婦の姓について原告側は
「選択的夫婦別姓を認めないことは、婚姻の自由を不合理に制約していて、両性の本質的平等に立脚していない」
と主張。
「規定は違憲で、国会の高度な立法不作為に当たる」
と指摘していた。
国側は
「民法では、結婚後にどちらの姓を名乗るかについて、夫婦の協議による決定に委ねている」
「婚姻の自由や男女の平等を侵害していない」
と反論。
規定に違憲性はなく国会の立法不作為にも当たらないと主張していた。
両規定を巡っては、法相の諮問機関の法制審議会が平成8年、選択的夫婦別姓を導入し、再婚禁止期間も100日に短縮するよう答申した。
しかし、国会や世論の反対が多く、改正は見送られた。
民主党政権時代にも改正の動きがあったが、閣内の反対などで法案提出には至っていない。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/719.html#c31

[政治・選挙・NHK294] シャッポを挿げ替え目くらまし 語るに落ちた菅前首相の妄言、盲動(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
22. 秘密のアッコちゃん[412] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月27日 05:49:40 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[525]
<■652行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
別姓で自己否定する自民
阿比留瑠比の極言御免
2024/6/27 1:00
https://www.sankei.com/article/20240627-TWC52YKBYNKC7DKHOP5EBO4BQU/
自民党が性懲りもなく選択的夫婦別姓に関する党内議論を再開させるという。
経団連や経済同友会のビジネス的見地からの要請に後押しされた形だが、不必要だったLGBT理解増進法に続いて夫婦別姓にまで突き進むとしたら、自民の存在価値をまた1つ自己否定することになろう。
「多様性」
というはやりの聞こえのいい掛け声に目が眩み、安易に取り込もうとするのでは、立憲民主党や共産党、社民党と最早選ぶ所がない。
もっとも、岸田文雄首相は2024年6月21日の記者会見で、選択的夫婦別姓については次のように慎重だった。
「様々な立場の方に大きな影響を与える問題だ」
「だからこそ世論調査でも意見が分かれている」
「前向きな意見の方の一方、家族の一体感や子供の姓をどうするかなどに関心を持つ消極的な意見もある」
LGBT法を巡っては、元首相秘書官の性的少数者差別とも受け取られかねない発言や米民主党政権の圧力に屈して成立に前のめりになった首相だが、今度はぶれないでもらいたい。
安倍晋三元首相もかつてこの問題に関し、首相にこう信頼を示していた。
「岸田さんはそうリベラルではないんだ」
「以前、夫婦別姓の議論が高まった時に
「子供の視点が全然ない」
と話していた。
■アンケートでは
やはりこの点が重要だと考えるので、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を紹介する。
子供対象の世論調査自体が珍しく、古い調査だが寡聞にして他に知らないのでご容赦願いたい。
それによると、両親が別姓となったら
「嫌だと思う」(41.6%)
「変な感じがする」(24.8%)
の否定的な意見が、合わせて3分の2に達した。
一方で
「嬉しい」
は僅か2.2%しかいなかった。
また、成人を対象とした令和3年実施の内閣府の
「家族の法制に関する世論調査」
結果を見ても、選択的夫婦別姓制度導入を求める回答は28.6%に留まった。
「夫婦同姓制度を維持した方が良い」が27.0%、
「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方が良い」が42.2%で、
夫婦同姓維持派が7割近くに達している。
夫婦の姓が異なることでの子供への影響に関しては
「好ましくない影響があると思う」と答えた者の割合が69.0%で
「影響はないと思う」は30.3%
に留まっている。
留意すべきは
「兄弟の姓が異なっても構わない」が僅か13.8%で、
「姓は同じにするべきだ」が63.5%
に上ることだろう。
夫婦どちらの姓を名乗らせるかを巡り、親族間のトラブルも予想される。
■フェミニストの議論
選択的夫婦別姓については、
「選択的」
だから別に同性を選びたい人はそうすればいいだけだという意見もあるが、事はそう単純ではないだろう。
既に平成17年刊行の
「ザ・フェミニズム」(上野千鶴子、小倉千加子著)
で、フェミニスト【フェミニストとは、全ての性が平等な権利を持つべきだという理由から女性の権利を主張する行為(フェミニズム)を支持する人のことだと、英オックスフォード辞書で定義されている】である小倉氏がこんな議論をしている。
「(選択的)夫婦別姓になったら、まるで夫婦別姓をしている人の方が進んでいて、夫婦同姓の人の方が遅れているみたいになりかねない」
「そこでまた1つの差別化が行われるわけじゃないですか」
女優でタレントの橋本マナミさんが2024年6月
「私は一緒の名字がいいです」
「好きで結婚したから」
とテレビで発言しただけでニュースとして取り上げられる現状を見ると別姓導入で同性夫婦が肩身の狭い思いをする日が来るかもしれない。
(論説委員兼政治部編集委員)

阿比留瑠比の極言御免
日経、朝日のコラムに異議あり 夫婦別姓論議に欠ける子供の視点
2015/11/9 5:00
https://www.sankei.com/article/20151109-Q7P53O3IFNNVLFLL3DOXYENVFM/
2015年11月4日は最高裁大法廷で夫婦別姓(氏)を巡る訴訟の弁論が開かれるとあって、日経新聞と朝日新聞の朝刊1面コラムが、それぞれこの問題を取り上げていた。
夫婦別姓に賛成・推進する立場で書かれたこの2つのコラムを読んで感じたのは、立論の前提、出発点が異なり、議論が噛み合わないもどかしさだった。
「誰かに迷惑もかけない」
「コストも知れている」
「歩みの遅さを合理的に説明するのは難しい」
日経はこう書いていたが、夫婦別姓論議でいつも気になるのが、当事者である子供の視点の欠落だ。
子供の意見を反映した調査がなかなか見当たらないので少し古くなって恐縮だが、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を引用したい。
それによると、両親が別姓となったら
「嫌だと思う」(41.6%)

「変な感じがする」(24.8%)
との否定的な意見が、合わせてほぼ3分の2に達している。
一方、
「嬉しい」は僅か2.2%
しかいなかった。
また、20歳以上の成人を対象とする内閣府の世論調査(平成24年12月実施)でも、夫婦の名字が違うと
「子供にとって好ましくない影響があると思う」と答えた人が67.1%
に上り、
「影響はないと思う」(28.4%)
を大きく上回った。
夫婦別姓と言うと、両性が納得すればいいと思いがちだが、夫婦が別姓を選択した場合、子供は必ず片方の親と別姓になる。
事は夫婦の在り方だけの問題ではなく、簡単に
「誰かに迷惑もかけない」
と言い切れるような話ではない。
日経コラムは更に、こうも書いている。
「反発する人の声から『自分と違う価値観を持つ人間が、とにかく許せない』との響きを感じることがある」
どう感じようと自由ではあるが、この見解はかなり一方的だろう。
10年以上前のことだが、夫婦別姓を議論していた自民党の会議を取材した同僚記者は、夫婦別姓推進派で、現在は党総裁候補の1人と言われる議員から、こう面罵された。
「(夫婦別姓に慎重論を唱える)産経新聞は、新聞じゃない」
当たり前のことだが、自分と違う価値観が許せないのは、何も夫婦別姓に
「反発する人」
に限らないということである。
多様な価値観を説く人が、異なる価値観を否定するという矛盾を犯すのは珍しくない。
ちなみに、朝日のコラムにはこうあった。
「結婚や家族の多様化、個の尊重という冒頭に引いた変化(※国民意識の多様化、個人の尊重)は、別姓の議論にもそのまま当てはまる」
「社会は旧姓使用を広げる方向に動く」
確かに一般論としては、社会の多様化は歓迎すべきことなのだろう。
多様性を失えば硬直化し、やがては行き詰まっていく。
とはいえ、何でもかんでも
「多様化」
という言葉で正当化しても、そこで思考停止することになる。
また、夫婦別姓を法的に位置付ける事と、旧姓使用は全く別物である。
現在、夫婦同姓制度の下で通称使用が大きく緩和され、旧姓使用が広がっていることがその証左だと言える。
いずれにしてもこの問題を考える時は、直接影響を受けることになる子供の意見をもっと聞いた方がいい。
政府にも、今度調査する時は是非その視点を盛り込むようお願いしたい。
(論説委員兼政治部編集委員)

愚か者! 経団連「夫婦別姓」提言
WiLL2024年8月号 副県立大学名誉教授 島田洋一
2024年6月10日、経団連がいわゆる
「選択的夫婦別姓」

「早期実現」
を政府に求める提言を出した(具体的には民法750条の改正)。
経団連は、夫婦が妻の姓を選ぶことも可能ではあるものの、
「実際には95%の夫婦が夫の姓を選び、妻が姓を改めている」
「そのため、アイデンティティの喪失や自己の存在を証することが出来ないことによる日常生活・職業生活上の不便・不利益といった、改姓による負担が、女性に偏っている」
と言う。
経団連によれば、
「女性のエンパワーメント(強化)において、我が国は世界に大きく立ち遅れており」、
その背後に、
「各社の取り組みだけでは解決できない、女性活躍を阻害する社会制度」
がある。
その代表的なものが夫婦同氏制度だというのである。
まず最初の疑問だが、女性の活躍に関して日本が
「世界に大きく立ち遅れて」
いるというのは本当か。
経団連・十倉雅和会長の頭にある
「世界」
がどの範囲なのか知らないが、少なくとも相当怪しい
「世界観」
だろう。
実際日本において、実力ある女性の活躍が、男の場合以上に阻害されているとすれば、
「女を下に見る」
不見識な経営者や重役が各所に残るでいではないか。
だとすれば、経済界の頂点に位置する経団連会長の責任が相当大きいと言わざるを得ない。
まずは自らの指導力不足を反省すべきだろう。
経団連提言で最も問題なのは、従来
「夫婦別姓」
法制化論で常に論点となってきた、
@親子や兄弟姉妹の間で姓が異なって良いのか
A明治以来の戸籍制度を崩すことにならないか
といった懸念に全く答えていないことである。
そもそも言及自体ない。
これは無責任だろう。
近年、パスポート、マイナンバーカードを始め、旧姓の通称使用が拡大されてきた。
経団連提言も、
「官民の職場では、女性の社会進出の進展を踏まえ、改姓によるキャリアの分断等を避けるため、職場における旧姓の通称としての使用を推進してきた」
「公的証明書や各種国家資格等でも婚姻前の姓(旧姓)の併記が可能になるなど、政府の施策としても通称使用が拡大され、経済界においても、通称使用は定着している」
と述べている。
「経団連調査では91%の企業が通称使用を認めている」
とも言う。
まだ不十分と言うなら、100%になるよう、経団連が強い姿勢で
「立ち遅れている」
経営者を叱咤すべきだろう。
そのための経済団体ではないか。
この問題で慎重論の先頭に立ってきた高市早苗議員は次のように言う。
「結婚すると、夫婦やその間に生まれる子供は同じ戸籍に登載され、姓は『家族の名称』という意味を持つ」
「だが、別姓になれば姓は単なる『個人の名称』になる」
「たとえ『選択制』にしても、家族の呼称を持たない存在を認める以上、結局は制度としての家族の呼称は廃止せざるを得なくなるだろう」
「事は家族の根幹に関わる」
(産経新聞・2021年3月18日)
「国際的トレンド」
云々についても高市氏は、
「日本は日本」
と一蹴する。
経団連は、旧姓の通称使用では問題解決にならない例として次のような
「トラブル」
を挙げる。
カッコ内は私のコメントである。
・クレジットカードの名義が戸籍上の場合、ホテルの予約等もカードの名義である戸籍姓に合わせざるを得ない。
(合わせたら良いではないか。合わせると女性活躍が阻害されるのか)。
・国際機関で働く場合、公的な氏名での登録が求められるため、姓が変わると別人格として見做され、キャリアの分断や不利益が生じる。
(結婚したから姓が変わったと言えば済む話、国際機関を馬鹿にし過ぎてはいないか)
・社内ではビジネスネーム(通称)が浸透しているため、現地スタッフが通称でホテルを予約した。
その結果、チェックイン時にパスポートの姓名と異なるという理由から、宿泊を断られた。
(現地スタッフとの意思疎通をより密にすれば良いだけ。あるいはパスポートに旧姓を併記すればよい。令和3年4月1日以降、申請が非常に簡略化された)
これが、女性にとって
「アイデンティティの喪失」

「自己の存在を証することができない」
ほどの不条理であり、家族別姓しか解決策がない次元の
「トラブル」
だろうか。
この程度の事象にも効果的に対処のマニュアルを示せない経団連では、日本経済停滞も無理はない。

民法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

選択肢のある社会の実現を目指して
〜女性活躍に対する制度の壁を乗り越える〜
2024年6月18日
一般社団法人 日本経済団体連合会
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044_honbun.html

選択的夫婦別姓 経団連・十倉雅和会長「スピーディーに議論を」自民に要求
2024/6/25 23:24
https://www.sankei.com/article/20240625-GN2CKAAVRFIKFERTR7RAD7JTXQ/
経団連の十倉雅和会長は2024年6月25日の定例記者会見で、自民党が
「選択的夫婦別姓制度」
に関する党内議論を本格化する意向を示したことについて、
「女性の社会進出、社会での活躍を進めたいという思いは一緒だと思う」
「オープンでスピーディーに議論してほしい」
と述べた。
経団連は結婚後も希望すれば夫婦それぞれが生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる同制度の早期実現を求める提言を2024年6月10日に発表し、2024年6月21日に自民党に提言を提出していた。
経済同友会の新浪剛史代表幹事も2024年6月18日の定例会見で、
「1つの姓を選ばなくてはいけないという非常に不都合なことがずっと放置されたままだ」
と指摘。
「政治が解決しないのであれば経済界がモノを言っていかなければならない」
との認識を示していた。

選択的夫婦別姓議論、自民が3年ぶり再開 慎重派は懸念「保守離れ加速する」
2024/6/25 22:34
https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/
選択的夫婦別姓を巡る議論の経緯
https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/photo/TNK63PLFCRO4BDS2LNDI5YSMIU/
自民党は近く選択的夫婦別姓を巡る党内議論を3年ぶりに再開させる。
経団連が早期実現を求める提言を発表するなど、家族の多様性を尊重する風潮が背景にある。
とはいえ、保守層を中心に家族の一体感が失われるとして慎重論も少なくない。
保守層が求める早期の憲法改正が一向に進まない中で推進論に傾けば、
「自民離れ」
が加速するのは必至だ。
自民の茂木敏充幹事長は2024年6月25日の記者会見で、
「多様な人材の活躍は社会活力の源だ」
「選択的夫婦別姓は社会全体にも関わる問題であり、国民の幅広い意見も踏まえて、しっかり議論を進めていきたい」
と述べた。
自民の渡海紀三朗政調会長は2024年6月21日、選択的夫婦別姓を含む
「氏制度のあり方に関するワーキングチーム(WT)」
で議論に着手すると表明した。
新たな座長には逢沢一郎党紀委員長を起用する方針だ。
党幹部は
「政権与党として、いつまでも夫婦別姓の議論を棚ざらしというわけにはいかない」
と議論再開の必要性を強調する。
自民は菅義偉政権下の令和3年4月にWTの初会合を開催。
令和3年6月に論点整理をまとめたが、議論が紛糾したため制度導入の是非には踏み込まず、結論を先送りしていた。
しかし、経団連が2024年6月10日、早期実現を訴える政府への提言を発表したことを受け、党内では再び推進派と慎重派が動きを活発化させている。
自民の有志議員で作る
「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」(会長・浜田靖一国対委員長)
は2024年6月21日、国会内で会合を開き、経団連から提言を受け取った。
浜田氏は
「大変心強い」
「時代の要請として受け止めていく」
と語った。
一方、慎重派で作る
「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」(会長・中曽根弘文元外相)
は2024年6月19日に党本部で会合を開き、結婚前の氏を通称として幅広く使用できる環境整備を進めることを確認。
慎重派の議員は
「拙速に議論を進めれば『岩盤保守層』の更なる離反を招きかねない」
と不安を口にする。
岸田文雄首相(自民総裁)も2024年6月21日の会見で、慎重な姿勢を示した。
対立の激化は自民分断の芽となりかねず、党重鎮は
「経団連の手前、議論はしなければならないが、明確な方向性を示すことは難しいのではないか」
と述べた。

<主張>経団連「夫婦別姓」 家族の呼称をなくすのか
社説
2024/6/19 5:00
https://www.sankei.com/article/20240619-I4Q7IU7X5FJQTNZ3V4LDQESQHQ/
結婚後に夫婦が同じ姓を名乗るか、旧姓を維持するか選べる
「選択的夫婦別姓」
について経団連が早期実現を提言した。
十倉雅和会長は、女性の社会進出が進む中で
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べたが、国民の合意を欠いたまま、急ぐ問題ではない。
経団連は従来、夫婦同姓の下で職場での通称使用で対応できるとの立場だった。
別姓推進に転じたのは
「ビジネス上のリスク」
などが理由だ。
経団連が行ったアンケートなどでは職場で旧姓の通称使用が増えている一方、通称では銀行口座などが作れないことや海外渡航、契約で戸籍上の姓と異なることでトラブルが生じていることを指摘した。
だが夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定を変えることは、家族や社会の有り様に関わる。
岸田文雄首相が2024年6月17日の衆院決算行政監視委員会で、選択的夫婦別姓の早期導入の提言に慎重な考えを示し、
「家族の一体感や子供の利益に関わる問題であり、国民の理解が重要だ」
と述べたのは、もっともだ。
夫婦別姓を認めない民法の規定を
「違憲」
だとする訴えに対し、最高裁は平成27年と令和3年に合憲の判断を示し、夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。
別姓制が導入されれば、こうした姓の意義が、砂粒のような個人の呼称へと大きく変わる。
専門家によると姓は血縁血統を表すもので、家族の歴史や絆が断ち切られかねない。
同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要がある。
「選択」
と言っても別姓を希望しない人も含め社会に関わる問題だ。
別姓推進論は子供からの視点にも欠ける。
夫婦別姓では、どちらかの親と子が別姓になる。
子供の姓をどうするのか。
祖父母らも絡み、いさかいや分断が起きるのは見たくない。
最高裁の判決では、姓の在り方について国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきだ、としている。
深く理解すべきだ。
住民票や運転免許証、パスポートなどで旧姓を併記できる制度も広がっている。
経団連は、トラブルを嘆くより、我が国の夫婦同姓の意義を国際的に発信し、問題を解消してほしい。

<産経抄>経団連の「夫婦別姓提言」に異議あり       
2024/6/17 5:00
https://www.sankei.com/article/20240617-BKNKSTIQ3FJ2DDKD2AI3HWGCEQ/
夫婦別姓が叶わなくとも、パートナーを守る方法はある
経団連は
「選択的夫婦別姓」
の早期実現を求める提言を発表したが、法制化には国民の合意が必要だ
2024年6月の第3日曜は
「父の日」
だったが、
「母の日」
に比べ影が薄い。
父親の地位低下が指摘され久しい。
▼ゲームに押されて、子供のおままごと遊びはあまり見かけなくなったが、やってみてもパパ役はママに叱られ、オタオタする様子を真似するのだとか。
「正論」
を重んじる同僚も、家では言いたいことを言えず、妻や娘たちに阿る日々だという。
それも平和を守る知恵か。
▼だがこちらは黙って見過ごせない問題だ。
経団連が
「選択的夫婦別姓」
の早期実現を求める提言を先日、発表した。
十倉雅和会長は
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べたが、拙速に進めては禍根を残す。
▼選択的夫婦別姓は夫婦で同じ姓(氏)にするか、旧姓を名乗るかを選べる制度だ。
民法の改正などが必要となる。
女性の社会進出に伴い、平成8年に法制審議会が導入を求める答申をした。
30年近く経っても法制化に至らないのは、国民の合意が得られないからだ。
財界が
「急げ」
と号令をかける話なのか。
▼最高裁は平成27年と令和3年に、夫婦別姓を認めない民法の規定について
「合憲」
とする判断を示した。
夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。
選べるならいいじゃないか、別姓を希望しない人には関係ない、と考えるのは早計だ。
専門家からは、姓について家族の呼称から個人の呼称へと大きく変質することが指摘されている。
▼同じ戸籍に同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要があり、社会全体に関わる。
夫婦同姓は子供も両親と姓を同じくすることで利益を享受しやすい意義もある。
別姓では子の姓をどうするか。
双方の祖父母も絡み、決まらない混乱も予想される。

「国民の意見さまざま」 法相、選択的別姓に慎重
2024/6/11 11:24
https://www.sankei.com/article/20240611-JHRCRF76CFIA3LM3MAVGM7R5GY/
小泉龍司法相は2024年6月11日の閣議後記者会見で、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求めた経団連の提言に対し
「国民の間にまださまざまな意見がある」
とした上で
「積極的に動きを見極め、対応を検討していくことが必要だ」
と述べ、慎重な姿勢を示した。
法相の諮問機関の法制審議会は1996年、結婚後もそれぞれ婚姻前の名字を使える選択的別姓制度の導入を含む民法改正案を答申。
だが、保守系議員の反対などで法案は提出されなかった。
小泉氏はこの点にも触れ
「国会議員の方々の間でもしっかりと議論をし、幅広い理解を得ていただくため、法務省として積極的な情報提供をしたい」
とした。

「夫婦別姓制度、早期実現を」経団連が初の提言 通称は海外で理解得られずトラブルも
2024/6/10 18:29
https://www.sankei.com/article/20240610-PLZOKGZSLVKTZKDUTL3OBW74UQ/
経団連は2024年6月10日、選択的夫婦別姓制度の実現を求める提言を発表した。
希望すれば生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる制度の早期実現を要求。
政府に対し
「一刻も早く改正法案を提出し、国会で建設的な議論を期待する」
とした。
経団連による同制度に関する提言は初めて。
十倉雅和会長は2024年6月10日の定例記者会見で
「世の中は大きく変わっている」
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べた。
現在は婚姻時に夫か妻のいずれかの姓を選べるが、妻が改姓することが圧倒的に多い。
提言では
「生活上の不便、不利益といった改姓による負担が女性に偏っているのが現実」
と訴えた。
経団連の調査では、国内の91%の企業は旧姓などを通称として使用することを認めているものの、通称は海外では理解されづらく、トラブルの原因になることがあると指摘。
「企業にとってもビジネス上のリスクとなり得る」
とした。

主張
夫婦同姓は合憲 家族制度の原則を守った
2021/6/24 5:00
https://www.sankei.com/article/20210624-BGWW7J52VRJMJFEQ5FVP7KQAZQ/
最高裁大法廷は、
「夫婦別姓」
を認めない民法の規定を再び
「合憲」
と判断した。
夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めた平成27(2015)年の最高裁判決を踏襲した。
妥当な判断である。
事実婚の男女3組が、夫婦別姓を希望して婚姻届を提出したが、不受理となり、家事審判を申し立て、最高裁に特別抗告していた。
女性の社会進出や世論など最近の情勢変化を踏まえた判断が注目されたが、最高裁は決定理由で、社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、6年前の判断を変更すべきとは認められない―と判示した。
平成27(2015)年の最高裁の判断を通し、夫婦同一の姓について、男女差別を助長したり、人格を傷付けたりする制度ではないことも明確になっている。
最高裁はこの時と同様、
「制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべき事柄」
と指摘した。
平成8(1996)年に法制審議会が、夫婦で同じ姓にするか、旧姓をそれぞれ名乗るか選べる選択的夫婦別姓の導入を答申して25年経つ。
法制化に至らなかったのは、立法府が問題を放置しているというより、国民の十分な合意が得られないからである。
選択的夫婦別姓について、個人の自由で選択の幅が広がる―などと歓迎するのは考え違いである。
導入されれば夫婦同一姓を原則とした戸籍制度が崩れかねず、全国民に影響が及ぶ。
親子が別々の姓になる事態も起きる。
子供の姓を両親どちらの姓にするかなど、諍いや混乱も予想される。
平成29(2017)年に行われた内閣府の世論調査では、夫婦別姓が子供に与える影響について、6割以上が
「子供にとって好ましくない影響があると思う」
と答えていた。
社会情勢の変化と言うなら、旧姓が通称使用できる企業は増えている。
2年前の2019年には住民票やマイナンバーカードなどで旧姓を併記できるようにするため、政令改正が行われた。
パスポート(旅券)についても旧姓併記の申請が容易になるよう緩和された。
日本の伝統や文化に根差した家族制度の原則を崩す必要はなく、更に働きやすい職場作りなどに知恵を絞る方が現実的だ。
国や社会の基盤である家族の意義に理解を深くしたい。

夫婦別姓認めぬ規定、再び「合憲」 最高裁
2021/6/23 21:54
https://www.sankei.com/article/20210623-WTZ3HHNALJO5RNCEOMMHNPXNAI/
夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は違憲として、東京都内に住む事実婚の男女3組が起こした家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は2021年6月23日、規定は
「合憲」
とする判断を示した。
最高裁は平成27(2015)年にも夫婦同姓を定めた民法の規定を合憲としており、今回は2度目の判断。
15人中4人は違憲とする意見や反対意見を出した。
決定理由で最高裁は、家族が同じ姓を名乗るのは日本社会に定着しており、規定に男女の不平等はないとした平成27(2015)年の判断について
「社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、変更すべきとは認められない」
と指摘。
一方で、夫婦の姓を巡りどのような制度が妥当なのかという問題と、憲法違反かどうかを審査する問題とは
「次元が異なる」
とした上で
「国会で論じられ、判断されるべき事柄だ」
と、前回判断に続き、改めて立法での議論を促した。
合憲とした深山卓也裁判官、岡村和美裁判官、長嶺安政裁判官の3人は
「今回の判断は、国会での選択的夫婦別姓制度を含む法制度の検討を妨げるものではなく、国民の様々な意見や社会の状況変化などを十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待する」
と、共同補足意見で述べた。
一方、違憲とした宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官は
「結婚に対する当事者の意思決定は自由かつ平等であるべきで、規定は不当な国家介入に当たる」
などと述べた。
事実婚の3組は、婚姻届に
「夫は夫の氏、妻は妻の氏を希望します」
と付記して自治体に提出したが不受理となり平成30(2018)年3月、東京家裁などに家事審判を申し立てたが、却下された。
2審東京高裁でも棄却され、最高裁に特別抗告していた。
結婚後の姓を巡っては、平成8(1996)年に法相の諮問機関・法制審議会が、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を答申したが、法案提出には至らなかった。
2021年に入り自民党がワーキングチームを設置し本格的な議論が始まったが、実現への目処は立っていない。

■夫婦同姓の規定
民法750条は、結婚した夫婦は
「夫または妻の氏」
を名乗るよう規定。
戸籍法でも、結婚時に
「夫婦が称する氏」
を提出書類に記載するよう定めている。
昭和22(1947)年に改正される前の明治民法では
「家の姓を名乗る」
とされていた。
厚生労働省の統計では、平成27(2015)年に結婚した夫婦のうち、96%が夫の姓を選択。
改姓による社会的な不便・不利益が指摘されてきたことなどを背景に、夫婦が希望する場合には結婚後に姓を変えない
「選択的夫婦別姓制度」
の導入を求める声が強まっている。

夫婦別姓認めぬ最高裁判断「家族に一体感」安堵の声も
2021/6/23 20:45
https://www.sankei.com/article/20210623-CEFJAVRIAZIRPHCEU6S7ZFUAEI/
最高裁大法廷が2021年6月23日、6年前に続き、
「夫婦別姓」
を認めない民法の規定を
「合憲」
とする判断を示した。
この間の社会情勢や国民の意識の変化を踏まえつつ、国会に議論を委ねた形に。
「違憲」
となれば、新たな対応を迫られる現場からは安堵の声も聞かれた一方、申立人からは決定に不満が漏れた。
「結婚して姓が一緒になることで、家族としての一体感が生まれる」。
結婚生活40年以上になる東京都江東区の男性(71)は、合憲判断に納得の表情を浮かべた。
「子供のことを考えれば、両親が違う姓だと違和感を覚えるのではないか」
とも指摘した。
内閣府の平成29年の調査では、選択的夫婦別姓の導入に向けた法改正42.5%が賛成と答え、反対の29.3%を上回った。
ただ、賛成派に実際に別姓とするかを尋ねたところ、希望するが19.8%、希望しないが47.4%だった。
夫婦別姓が認められれば、子供への心理的影響も懸念される教育現場。
最高裁の決定に注目していた千代田区の幼稚園園長は
「途中で姓が変わった場合に、子供たちの間に動揺が広がらないようにケアするなど、新たな対応が必要になってくるだろうと思っていた」
と打ち明ける。
一方、先祖代々の墓を管理する寺院は、家族観の変化に危機感を抱いていた。
豊川稲荷(愛知県豊川市)によると、旧姓と結婚後の姓の両方を墓石に刻む女性が増えてきているといい、同寺の男性役員(53)は
「夫婦別姓になると、家という概念が失われる可能性がある」
「別姓が認められるのは難しいと思っていた」
と話した。
夫婦別姓には、財産をめぐる問題が持ち上がる可能性もある。
生命保険の受取人は原則戸籍上の配偶者や2親等以内の血縁者に限られており、ライフネット生命保険(東京)の担当者は
「姓が異なる場合、配偶者であることの確認が課題になる」。
同社では事実婚のパートナーらを保険金の受取人にできる仕組みを作っており、
「今後も社会の変化に合わせて検討していきたい」
と話した。

選択的夫婦別姓 社会混乱の引き金に 八木秀次×小島新一・大阪正論室長
ラジオ大阪ぶっちゃけ正論
2021/6/17 8:00
https://www.sankei.com/article/20210617-C2ELAEDPJ5MIHI5KLUORROEF4A/
■家族名が消える
小島
選択的夫婦別姓制度を導入すべきだという議論が昨年から国会で盛んになりました。
八木
選択的夫婦別姓とは、夫婦同姓、親子同姓という民法の考え方をふまえ、同姓にしたい人はこれまで通り同姓だけど、別姓にしたい夫婦は別姓を選んでもいい。
選択ができるという仕組みです。
一見よさそうに思えるんですよ。
小島
自分たち夫婦、家族は同姓でいたいと考えている人たちも、自分たちの同姓が守られるのならと考えてしまいますよね。
八木
ところが選択的であったとしても、その影響は別姓夫婦にとどまりません。
別姓では、1つの戸籍の中に2つの姓が存在することになります。
戸籍から、家族に共通の姓、ファミリーネーム、家族名がなくなるわけです。
小島
家族名がある戸籍とない戸籍、ある人とない人が共存することはないので、全体として家族名はなくなると。
八木
「氏名」の性格が根本的に変わるんです。
氏名とは、家族名に個人の名前を合わせたものです。
家族名がなくなれば、氏名は純粋な個人の名前になる。
すべての家族から家族名が奪われ、戸籍上、姓が同じ夫婦や子供も、各人の名前の上の部分が重なっているにすぎなくなる。
小島
たまたま上の名が同じということですね。
八木
ええ。
たいした問題ではないと思う人がいるかもしれませんが、社会制度や慣行に影響が及びます。
家族単位、世帯単位で主になされてきたものが崩れて個人単位になる。
■3つの姓から選択も
八木
別姓夫婦だと、子供の姓をいつ決めるのかという問題もあります。
兄弟姉妹で姓は統一なのか、バラバラなのか。
子供が1人だけだと、夫婦で子供の姓の取り合い、押し付け合いにならないか。
すでに結婚して同姓の夫婦も、1年あるいは3年の経過措置期間を設けて別姓を選ぶことができるとしています。
妻、あるいは夫が旧姓を名乗りたいとなった場合、夫婦の間に生まれた子供の姓の選び直しも行われることになる。
複数世代にわたる姓の変更を認めるのかという問題も想定されます。
子供のいる夫婦の妻側の母親、おばあちゃんが実家の姓に戻すという選択をした場合、連動して、妻の姓もおばあちゃんの旧姓に変えられるのか。
旧姓に戻す決断をしたおばあちゃんの娘である妻や孫は3つの姓から選ぶということになりかねない。
おばあちゃんの旧姓、夫の姓、妻の旧姓です。
小島
社会が大混乱しますね。
八木
自民党内では一時、選択的夫婦別姓の導入機運が高まりましたが、こうした現実的な問題点への理解が広まり、賛成意見はしぼみつつあります。

櫻井よしこ氏「保守政党らしからぬ提言に危機感」
2021/5/19 16:40
https://www.sankei.com/article/20210519-FRWVDCNTRVN7PLO57QDGPU2CK4/
選択的夫婦別姓制度の導入に慎重な自民党有志議員を中心に作る
「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」
が2021年5月19日、ジャーナリストの櫻井よしこ、麗澤大学教授の八木秀次の両氏を講師に招いて国会内で会合を開いた。
櫻井氏は
「保守政党としての自民党の矜持」
と題して講演。
安倍晋三政権から菅義偉政権に代わったことで党内に変化が生じていると指摘し、
「保守政党らしからぬ政策提言、法案の提出、そしてそれを通そうとする非常に強い動きに大変な危機感を感じている」
と強調した。
「保守は、よりよい社会や国をつくるために変化はするが、その本質は変えず守っていくことだ」
とも語った。
八木氏は、選択的夫婦別姓を導入した場合の課題について
「多くの人は子供の氏が決まらないことや、氏の取り合いが起こることを懸念して結婚や出産を躊躇する」
「逆に少子化が進む可能性がある」
と指摘。
「現在の戸籍制度の下では、旧姓の通称使用を拡充することが最も現実的な解決策だ」
と訴えた。
一方、会合ではLGBTなど性的少数者をめぐる
「理解増進」
法案についても取り上げられた。
法案をめぐっては、稲田朋美元防衛相が委員長を務める
「性的指向・性自認に関する特命委員会」
が中心となり、立憲民主党などと協議して今国会での成立を目指している。
これについて、山谷えり子参院議員は
「もともとの自民党案は国柄に基づいた内容だったが、超党派の議員立法でガラッと哲学がかわってしまった」
「自民党として認めるには大きな議論が必要だ」
と語った。

異論暴論
正論6月号好評販売中 やるべきことは「夫婦別姓」か?
2021/5/3 10:00
https://www.sankei.com/article/20210503-QHTMRK3OE5KWVOEUGDN5FVJWZE/
自民党内で選択的夫婦別姓をめぐる論議が起きている。
推進論者からは結婚に伴う改姓によって生じる生活上の不都合や不便が強調されるのだが、そもそも夫婦が別姓になれば親子は別姓を余儀なくされる。
これまでの家族観や結婚観は変わり、子供に与える影響も無視できないはずだ。
正論2021年6月号では
「やるべきことは『夫婦別姓』か?」
を特集した。
高市早苗衆院議員(自民党)は、自民党のこれまでの選挙公約の実現に向け、自身が起草した
「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」
の成立の必要性を強調する。
高橋史朗・麗澤大学大学院客員教授と池谷和子・長崎大学准教授の論文は、推進者たちの主張の見せ方がいかに一面的で、良い面ばかりが強調されたものかを考えさせられる。
ジャーナリスト、平野まつじ氏は夫婦別姓が現実になると、何がもたらされ、どんな弊害が起こるのか、具体的に考えた。
子供の最善の利益をどうするか、という視点がいかに蔑ろにされ、議論のあり方として極めて危ういかがわかる。
党内で提唱される
「婚前氏続称制度」
「ミドルネーム案(結合氏制度)」
など歯牙にかけるに値しない。
選択的であろうが、夫婦別姓の導入は必要ない。

正論
国民の大多数は夫婦別姓望まず 国士舘大学特任教授 日本大学名誉教授・百地章
2021/7/6 8:00
https://www.sankei.com/article/20210706-2KVYJSZJQNPT3OSBPGFYEMTHXA/
■最高裁は合憲判断を維持
2021年6月23日、最高裁大法廷は予想通り夫婦同姓(氏)制は憲法に違反しないと判断した。
しかも合憲とした裁判官は11人と前回の平成27年判決より1人増えている。
平成27年の最高裁判決は、氏には
「家族の呼称」
としての意義があり、その呼称を一つに定める夫婦同姓制には合理性があるとして現行制度を合憲とした。
その上で、夫婦の姓の在り方は国会で判断すべきだとして、国会の立法政策に委ねた。
今回の最高裁決定は、この平成27年判決の立場を維持し、夫婦同姓を定めた民法750条や戸籍法を合憲とした上で、その後の社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、合憲判断を変更する必要はないとした。
これも妥当と言えよう。
ところがマスメディアの中には各種世論調査を引き合いに、別姓支持が国民多数の声であり、夫婦別姓の実現へと誘導するような報道があふれている。
そのため同姓支持を主張することがはばかられるような雰囲気さえある。
確かに内閣府の調査でも別姓支持が平成24年には35.5%だったものが、平成29年には42.5%に増加しており、その傾向は否定できない。
しかし、平成29年の調査でも、
「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだ」が29.3%、
「夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが旧姓を通称として使用するのは構わない」が24.4%
あった。
つまり、同姓支持は計53.7%もあり、別姓支持を上回っている。
■別姓望む国民はわずか8%
さらに、別姓支持者の中で自ら
「別姓を希望する」と答えた者は19.8%
にとどまる。
つまり、別姓希望者は支持者(42.5%)の19.8%だから全体でいえば0.08、つまり国民のわずか8%が別姓を希望しているだけである。
平成24年の調査でも別姓希望者は全体の8%にすぎないから、別姓希望者は全く増えていないことが分かる。
そのようなごく少数の希望者のために、明治以来120年以上の伝統を有し、国民の中に広く定着している夫婦同姓制度を改正してしまうのは乱暴ではないか。
この問題は慎重な上にも慎重に対処すべきだ。
夫婦別姓希望者のために、現在では運転免許証、パスポート、さらにマイナンバーカードまで、旧姓を通称として併記することが認められている。
だから、日常生活における彼らの不便はほぼ解消しているはずだ。
にもかかわらず彼らが別姓にこだわるのはなぜか。
今回の決定において反対意見を述べた裁判官の中には、
「家族」
の定義は不明確であるとして否定的に解し、
「姓」

「個人の呼称」
の一部と考えて、夫婦同姓制度は
「個人の尊厳」
の侵害に当たると主張する者もいる。
■「家族呼称」か「個人呼称」か
確かに、憲法24条2項は家族について
「個人の尊厳と両性の本質的平等」
に立脚して制定するよう定めているが、憲法は
「家族の保護」
を否定するものではない。
それどころか、憲法制定時の議会においては
「従来の良き意味の家族制度はどこまでも尊重していかなければならぬ」
(木村篤太郎司法大臣)
との答弁がある。
わが国が批准している国際人権規約でも
「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し…与えられるべきである」
としている。
それ故、わが国の家族制度は、
「個人の尊厳」

「家族の保護」
によって支えられていると見なければならない。
だからこそ、平成27年の最高裁大法廷判決も、
「家族は社会の自然的かつ基礎的な集団単位であり、氏には家族の呼称としての意義があり、氏の在り方については国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきである」
とした。
それでは、家族制度の基本にかかわる
「姓(名字)」
について、国民はどのように考えているだろうか。
先の内閣府の調査(平成29年)によれば、国民の56.9%は姓を
「先祖から受け継がれてきた名称」
ないし
「夫婦を中心とした家族の名称」
と答えている。
これに対して姓は
「他の人と区別して自分を表す名称の一部」
と考える者は、全体のわずか13.4%にすぎない。
つまり、姓を
「個人の呼称」
の一部と考え、
「個人の尊厳」
を強調する反対意見は、姓を先祖伝来の
「家」

「家族」
の呼称と考える多数国民の意識と相当ズレていることが分かる。
以前、本欄で述べたように夫婦の姓をどう決めるかは、個人個人の問題であると同時に、わが国の家族制度の基本にかかわる公的制度の問題である。
しかも選択的夫婦別姓制は
「ファミリー・ネームの廃止」
につながり
「戸籍解体」
の恐れさえある(「『戸籍の解体』を招く夫婦別姓制」2021年3月29日)。
したがって、自らは希望しないにもかかわらず、
「選択的だから」
「望む人が別姓を名乗るだけだから」
などといった安易な発想で賛成してしまうのは、推進派を利するだけであり、非常に疑問といわざるを得ないであろう。

次世代の党、夫婦同姓規定「合憲」判断を「歓迎」
2015/12/16 19:12
https://www.sankei.com/article/20151216-JTCPST5AN5IUNNFTBEMB2AHLCU/
次世代の党は2015年12月16日、最高裁が夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断したことについて、中野正志幹事長名で
「判断を歓迎する」
との談話を出した。
談話では
「日本社会においては、夫婦、親子が同じ姓を名乗ることが家族の基本であり、家族の一体感を高めてきた」
「一方、夫婦別姓を求める運動では、家族が同じ姓を名乗ることを子供が望んでいることは省みられていない」
と指摘。
その上で
「日本は、既に職場などでの通称使用(旧姓使用)が否定されない社会になった」
「旧姓に拘りを持つ方は通称を用いることが可能であるし、結婚時に夫が妻の姓を選択することも可能である」
としている。

夫婦同姓規定は合憲 再婚禁止6カ月は違憲 最高裁が初判断
2015/12/16 15:24
https://www.sankei.com/article/20151216-EIZGWR6BTRIYTNB6YH7JAHKFYU/
【産経新聞号外】夫婦同姓「合憲」[PDF]
https://www.sankei.com/module/edit/pdf/2015/12/20151216iken.pdf
民法で定めた
「夫婦別姓を認めない」
とする規定の違憲性が争われた訴訟の上告審判決で最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は2015年12月16日、
「規定は合憲」
とする初めての判断を示した上で、原告側の請求を棄却した。
原告は
「時代の変化に従って選択的夫婦別姓を認めるべきだ」
などと主張したが、
「夫婦や親子など家族の在り方が損なわれる」
との慎重論は多く、世論調査も賛成・反対が拮抗してきた。
一方、
「女性は離婚後6カ月間、再婚できない」
とする規定を巡る訴訟で、大法廷は
「規定は違憲」
と初判断。
100日間を超える部分は違憲だとしたことで、国は法改正を迫られる。
最高裁が法律を違憲と判断したのは戦後10件目。
夫婦の姓について原告側は
「選択的夫婦別姓を認めないことは、婚姻の自由を不合理に制約していて、両性の本質的平等に立脚していない」
と主張。
「規定は違憲で、国会の高度な立法不作為に当たる」
と指摘していた。
国側は
「民法では、結婚後にどちらの姓を名乗るかについて、夫婦の協議による決定に委ねている」
「婚姻の自由や男女の平等を侵害していない」
と反論。
規定に違憲性はなく国会の立法不作為にも当たらないと主張していた。
両規定を巡っては、法相の諮問機関の法制審議会が平成8年、選択的夫婦別姓を導入し、再婚禁止期間も100日に短縮するよう答申した。
しかし、国会や世論の反対が多く、改正は見送られた。
民主党政権時代にも改正の動きがあったが、閣内の反対などで法案提出には至っていない。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/720.html#c22

[政治・選挙・NHK294] 小田全弘(石丸候補の選挙対策本部長)、世界日報、改憲派、安倍夫妻と昵懇。石丸は統一教会の刺客なのか? 幽季 茶良
12. 秘密のアッコちゃん[413] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月27日 07:09:01 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[526]
<■532行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
公明が性別要件変更へ論点協議、秋の臨時国会に改正案提出意欲 自民に協力呼びかけ
2024/6/26 15:35
https://www.sankei.com/article/20240626-YZEAXZR7A5LNXED64G4DFKVM6Q/
公明党は2024年6月26日、性同一性障害特例法の生殖能力要件を違憲とした2023年10月の最高裁決定を受け、法改正の論点を協議した。
終了後、谷合正明幹事長代理は、生殖能力要件を削除する方向だと記者団に説明。
残った論点を整理した上で、秋の臨時国会に改正案を提出する意欲を示した。
自民党にも協力を呼び掛ける。
特例法には性別変更の要件として、生殖能力をなくす手術を事実上求める規定と、変更後の性器に似た外観を持つことを求める規定がある。
最高裁は生殖能力要件を違憲とした一方、外観要件については判断を見送り、高裁段階に差し戻した。
谷合氏は記者団に
「高裁判断がいつ出てもおかしくない」
と述べた。
2024年7月中旬までに法改正に向けた党見解を表明する考えも明らかにした。

女性スペースの利用は「身体的特徴で判断」 自民議連、女性の安全・安心確保法整備へ
2024/6/14 10:39
https://www.sankei.com/article/20240614-S3OEC6PK5BFE3GI7WIDMLRHU3I/
自民党有志議員で作る
「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」(略称・女性を守る議連)
が、公衆浴場や旅館・ホテルの共同浴室など女性スペースを利用する際は男女の取り扱いを心の性ではなく
「身体的な特徴」
で区別する議員立法の法案骨子を策定した。
性別適合手術などを経ずに男性器を備えた
「法的女性」
が誕生した場合に備え、性自認は女性だと主張する性犯罪目的の元男性が女性スペースで性加害行為を働く余地を狭める狙いがある。
■各党の賛同を求めて立法化
骨子では公衆トイレを含め、不特定多数の利用者が性別で区別される施設(特定施設)について、管理者に女性の安全・安心を確保するために必要な施設構造の変更や照明設備・警報装置の設置、警備の実施などハード・ソフト両面で努力義務を課した。
議連は各党の賛同を求めつつ条文化し、2024年秋の臨時国会で提出を目指す。
施設側は身体的な特徴の性をもって男女を判断し、性別適合手術などを経ずに男性器を備えた
「法的女性」
らの利用を断ることができる根拠となる。
これまでも公衆浴場での男女の取り扱いに関して、厚生労働省は
「身体的な特徴をもって判断する」
と通知を出している。
その方針を改めて法律に明記する形となる。
女性スペースの安全確保の徹底を図る背景には、性別適合手術を経ないで戸籍上の性別を変更できる可能性が高まっていることがある。
性同一性障害特例法が求めている生殖機能の喪失を要件とした規定は、2023年10月の最高裁で憲法違反と判断された。
変更後の性別の性器に似た外観を備えている外観要件についても憲法適合性の審理が2審に差し戻されている。
■「被害比率の高い方を守る」
一方、性別適合手術を経ないトランスジェンダー女性(生まれた時の性別は男性、性自認は女性)は女性スペースを利用する権利を侵害されることになる。
骨子をまとめた2024年6月13日の会合後、議連の共同代表を務める片山さつき元地方創生担当相は記者団に
「(施設管理者の)注意義務が上がるから(女性や女児の)安心・安全性は高まると思う」
と語った上で、
「(手術要件が撤廃され)社会問題化した場合に備えて、我々は身体的要件で判断するという答えを出した」
「平等に競争している社会の中では一定のルールが必要で、やはり弱い方、被害比率の高い方を守るというのが鉄則だ」
と強調した。
海外でトランスジェンダー女性が女性スペース内で女性に性的暴行を加えた事例が確認されていることから、
「女性のスペースをきちんと管理して守るというのが必要な時代になっている」
と指摘した。

立民、性別変更時に「生殖能力ないこと」などの要件削除を要求 特例法改正案を提出
2024/6/11 17:12
https://www.sankei.com/article/20240611-RYOTPUIP6JP4RMSOLAGZNHJR6U/
立憲民主党は2024年6月11日、戸籍上の性別変更を巡り、生殖能力がないことなどの要件を削除する性同一性障害特例法改正案を衆院に提出した。
生殖能力要件を憲法違反とした2023年10月の最高裁判断を踏まえた。
削除するのは
@生殖機能がない
A未成年の子がいない
B変更後の性別の性器部分に似た外観がある
の3要件。
法律の名称にある
「性同一性障害者」
の文言も、性同一性障害を障害として位置付けない国際的な流れを踏まえ、妥当性を検討するよう求めた。

適合手術なしで男性への性別変更認める、静岡家裁 最高裁の違憲判断後に審判申し立て
2024/4/24 21:57
https://www.sankei.com/article/20240424-WZKUX7F3QZMWRBD2DOW3VNG2LM/
生殖能力をなくす性別適合手術をしないまま戸籍上の性別を女性から男性に変更するよう求めていた静岡市の会社社長、安池中也さん(54)の家事審判で、静岡家裁は性別変更を認めた。
決定は2024年6月18日付。
安池さんによると、家裁で変更が認められた後、手続きのために訪れた区役所で職員から
「おめでとうございます」
と声を掛けられた。
一方で
「気持ち悪い」
「公共施設を共有するのが怖い」
といった内容のメールも多数寄せられたという。
安池さんは平成13年、性同一性障害と診断され、ホルモン治療を開始。
2024年2月、性別適合手術をせずに戸籍上の性別変更を求める家事審判を申し立てていた。
性同一性障害特例法には、性別変更の際に生殖能力をなくす手術を事実上求める規定(生殖能力要件)があるが、最高裁は2023年10月に違憲、無効とする決定を出した。

性別変更の厳格化を提言、自民・女性守る議連「ふわっとした多様性で片付けられぬ」
2024/4/19 20:33
https://www.sankei.com/article/20240419-PNM5KML25JEP5MSHYMSIR26Z5I/
性同一性障害特例法を巡り、自民党有志議員で作る
「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」
のメンバーは2024年4月19日、小泉龍司法相と面会し、性別変更する際の要件の厳格化を盛り込んだ提言を提出した。
生殖機能の喪失を要件とした特例法の規定が憲法違反と判断されたが、規定の撤廃が広がれば、性同一性障害を抱える生来の男性と、
「女性のなりすまし」
との見極めが困難になりかねないとの指摘もある。
小泉氏は
「様々な論点が議論され、多くの国民に理解してもらい、一番良い形で進むことが出来ればと思う」
と述べた。
■女性スペースを守る議員立法を先行
提言では、10年以上継続して性同一性障害の治療を受け、他の性別で社会生活を営んでいることの確認を新たな要件に加えている。
女性の生殖機能を持った
「法的男性」
が出産した場合に備え、民法上の親子関係などを整理する必要にも言及している。
更に、女性専用トイレ、浴室、更衣室、女子寮など、男女が
「生来の性別」
で分けられたスペースに関して、国や地方自治体、事業者など管理者に対して女性の安心・安全を守る努力義務を課す議員立法を作成する方針を盛り込み、各省庁に協力を求めた。
議連共同代表の片山さつき元地方創生担当相は小泉氏に対し、
「理念法として『女性スペースの安心・安全を守る議員立法』を先行し、世の中の不安を取り除いていく」
と述べた上で、特例法について
「慎重に国民にとって良い形での改正をされるならお願いしたい」
と訴えた。
■腰を据えて考えるべき課題
特例法は、性別を変更するために複数の医師から性同一性障害の診断を受けた上で
@18歳以上
A未婚
B未成年の子がいない
C生殖不能
D変更後の性別の性器に似た外観を備えている
の要件を定めている。
最高裁は2023年10月、Cの要件を違憲と判断し、Dについての憲法適合性の審理を広島高裁に差し戻している。
CとDを合わせて
「手術要件」
と言われる。
提言を提出後、議連の副代表を務める柴山昌彦元文部科学相は記者団に
「(女性のなりすましなどによる)性犯罪に近いことが起きかねない不安が起きている」
「女性スペースの安全確保が極めて大きな検討課題で解決しなければならない」
と強調した。
「(手術要件が撤廃された場合)精神的な判断だけで性別変更が認められる可能性が出てきている」
「(法的)男性である母親、女性である父親も出てくる」
「腰を据えて慎重に考えるべき課題だ」
「ふわっとした多様性で片付けていいのか」
と疑問視した。

脅迫のジェンダー本、政治家や医療関係者、当事者らが読む「差別つながる要素ない」
2024/4/19 11:17
https://www.sankei.com/article/20240419-U77SPSCSBFAHZLQ7NEZEQWSV3A/
2024年4月3日に発売された翻訳本
「トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇」(産経新聞出版)。
放火を示唆する脅迫メールが送り付けられたこともあり、一部書店では現在も販売を見送っている。
国内での発売から約半月。
欧米で先行する、性別違和を訴える若者の性別移行を進める
「ジェンダー肯定医療」
の負の側面も指摘した内容を巡り、国内のトランスジェンダー当事者や識者からは様々な声が上がっている。
■客観的な視座
「一方的ではなく非常に客観的な視座で描かれている」
「今まで光が当たっていない分野だったが、かなり事態が客観化されるのではないか」
「『差別助長に繋がる』要素はない」
自民党の有志議員で作る
「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」
の片山さつき共同代表は同書についてこう指摘する。
同書は米ジャーナリスト、アビゲイル・シュライアーさんが手術などで回復不可能なダメージを受けて後悔する少女らを取材し、2020年6月に米国で発売された著書の翻訳本だ。
フランス語、ドイツ語などに翻訳された。
日本語版はKADOKAWAが2023年末、発行を予定したが
「(心と体の性が一致しない)トランスジェンダーへの差別を助長する」
といった批判を受けて中止された。
2024年4月3日に発行した産経新聞出版にも脅迫メールが届いた。
■トランスジェンダーへの逆風を防ぐ
性別違和を訴える若者に対し、倫理的でエビデンスに基づく医療の推進を目指す
「ジェンダー医療研究会」
の加藤祥子共同代表は同書について
「『ジェンダー肯定医療』の負の側面を明確に問題提起した本が事実上初めて日本で発売された」
と評価する。
「過去の研究では性別違和を訴える児童の8割で後に性別違和が消失したというものがある」
「思春期の性別違和は一過性のこともあると理解が進むきっかけになってほしい」
と期待も込める。
加藤氏は、同書がトランスジェンダー差別に繋がるといった見方にも首を傾げる。
「むしろ、著書を通じてジェンダー肯定医療に慎重な雰囲気が出来れば、若年者への医療虐待を防ぐ結果になり、将来的な分断が防げるのではないか」
と指摘。
理由について
「欧米では医療を巡るトラブルが多発し、成長して手術を後悔した患者が医師や病院を相手に裁判を起こしたことなどがきっかけで、強い社会の反発が(慎重さに欠くトランスジェンダー支援団体に対して)起こり、深い分断と対立を生んでいる」
と説明する。
■思春期の変身願望
「性同一性障害特例法を守る会」
副代表の浅利進氏は、同書で描かれる性別移行を望む少女らについて
「自分とは違う」
と語った。
浅利氏は女性として生まれ、幼少期から自身を男性だと認識してきた。
ネクタイ姿で仕事していたが、外見の女性化が進んだため、30代で男性ホルモンを投与した。
48歳になった今、ようやく中身と外見が一致したと感じている。
浅利氏はそもそも男性に見られること自体に喜びを感じることはないという。
「女性性が欠けた状態のまま成長し、普通におじさんをやっている」
「男装に喜びを見い出すのは思春期の変身願望に過ぎない」
と述べ、
「不可逆的な性別移行に手を出すのを思春期の冒険に思わないでほしい」
と訴える。
■思春期で性別移行ならぬ
「思春期女子の生きづらさに丁寧に寄り添うことの重要性が語られ、SNSの悪影響や、杜撰なジェンダー医療の問題を伝える本書は、子供に関わる全ての人に読んでほしい」
ジャーナリストの郡司真子氏はこう語る。
郡司氏は拘りが強いなど発達特性を抱える子供の支援に20年以上携わってきた。
2年前の2022年はトランスジェンダーを表明する子供が多かったが、最近は性自認が男女のどちらでもない
「ノンバイナリー」
を訴える子供が増えているという。
郡司氏は
「性別違和を形容するための言葉は変化していく」
「発達特性を抱える子供は特に思春期は揺れる」
と述べ、同書の副題にある
「流行の悲劇」
に直面しないためにもこう強調する。
「ジェンダー肯定医療に進むといった先鋭的な行動は自我が確立した段階で考えるべき問題だ」
「思春期の状態に性別移行を決断してはいけない」

性別変更の手術要件撤廃「出産する男性誕生は民法大改正に至る課題」 自民・片山さつき氏
2024/4/16 16:28
https://www.sankei.com/article/20240416-BGBBMMKGWNFEDCVIAJXUYUBULI/
性同一性障害特例法を巡り、性別変更する際に求められる生殖機能を喪失する要件(生殖不能要件)が2023年10月に憲法違反と判断され、更に性器の外観を他の性に近付ける要件(外観要件)について憲法適合性が争われている。
同特例法の要件厳格化を求める提言をまとめた自民党の
「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」
の片山さつき共同代表が産経新聞のインタビューに応じ、性別適合手術などを受けずに戸籍上の性別を変更できる可能性について強い懸念を示した。

■客観性と持続性は「10年」の移行期間で
(生殖不能、外観要件を合わせた)「手術要件」
が撤廃された場合、どうやってなりすましと峻別するのか。
その完全な答えは得られていない。
性別違和(性同一性障害)を訴える患者の診断症例が最も多い精神科医も議連の会合で
「正確な診断が困難になる」
と語っている。
岸田文雄首相が2024年3月15日の参院予算委員会で
(2023年6月施行されたLGBTなど性的少数者への理解増進法が尊重を求める)「ジェンダーアイデンティティー」
について
「本人のその時々の主張を指すものではなく、自分の性別についてのある程度の一貫性を持った認識を指す」
と述べたように、ジェンダーアイデンティティーには
「何らかの客観性と持続性が必要」
というのが公式見解だ。
提言には、違憲と判断された
「生殖不能要件」
の規定に代わり、性別変更する要件に
「一定期間(10年以上)継続して他の性別で社会生活を営んでいると認められること」
と盛り込んだ上、従来通り、手術を受けるルートを残した。
(戸籍上の性別を変更するまでの)移行期間についての絶対的な基準は医学的に存在していない。
日本は性別移行の症例が(同特例法が成立した)平成15年以降、約1万2800件と言われ、これらの症例の診断結果もデータベース化されていない。
手術自体を望む人もいて、手術を受けても性別変更申請していない人もいることを知るべきだ。
特例法を改正するにしても、女性スペースを守る理念法のような議員立法の成立を優先するべきだろう。
■マジョリティーの言論封殺すべきではない
「10年」
に移行期間を設定したのは、今国会に政府が提出した
(法案で創設する子供と接する仕事に就く人の性犯罪歴の有無を確認する)「日本版DBS」
で、軽度の性犯罪を犯歴10年まで開示する法文などを手掛かりにした。
ドイツはかつて移行期間を
「3年」
としたが、つい最近年限を撤廃した。
英国は
「2年」
としているが、女性の安全を確保する議連である以上、厳格な姿勢を示した形になる。
これより短くても大丈夫というなら反証を示してほしい。
トランス女性には女性の格好で気持ちも女性だが、男性の性的機能を保ちながら、性的対象が女性である人もかなりいる。
そこを悪用した性犯罪事例も出てきている。
更に、女性の側には自分たちの裸を異性から見られない尊厳・権利、盗撮されない権利がある。
性的マイノリティーについての配慮は当然だが、社会生活上、皆が上手く共生するにはルールが必要だ。
不安や懸念を抱くマジョリティーの人が非難され、
「ヘイト」
の烙印を押され、発言が封じられる現状はあるべきではない。
双方傷付かないように、丁寧に分類をすべきだ。
■戸籍無力化される、国論に付すべき
そもそも、日本の法制は
「父、夫=男性」
「母、妻=女性」
の仕様で成り立っている。
手術要件が撤廃された場合、女性の生殖機能を保った
「法的男性」
が存在することになる。
妊娠・出産すれば母親になり、戸籍上の男性が
「母」
の欄に記されることになる。
立憲民主党は戸籍から
「父母」
「親子」
の区別をなくす
「婚姻平等法案」
を議員立法として国会に提出している。
同法案のように民法の
夫の記載を「男と限らない」、
妻について「女と限らない」
と書き直すのか。
戸籍が無力化される恐れがあるが、国会で議論されていない。
民法の大改正に至る課題で、議員立法である性同一性障害特例法で派生的に議論すべき話ではない。
国論に付すべき問題だ。
正面から議論しないと極めて非民主的になる。
にもかかわらず、手術要件が撤廃されれば何が起こるか、国民に論点が共有されているとは言えない。
それはマスコミが報じないからではないか。

性別変更「10年以上の治療と他性別の生活」手術要件撤廃に備え、自民女性守る議連が提言
2024/4/15 14:26
https://www.sankei.com/article/20240415-IPIQTUL4ZJA3DAF25FI7652XZI/
自民党有志の
「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」
が性同一性障害特例法が定める性別変更する上での要件厳格化を求める提言をまとめ、党政務調査会の特命委員会に2024年4月9日、提出した。
提言は10年以上継続して性同一性障害の治療を受け、他の性別で社会生活を営んでいるという要件の追加を求めた。
女性の生殖機能を持った
「法的男性」
が出産する場合などに備え、民法上の親子関係を整理する必要性にも言及した。
■法的男性が妊娠した場合、戸籍は女性に
特例法は性別変更する上で生殖機能の喪失を求める要件があるが、最高裁大法廷は2023年10月、これを憲法違反と判断した。
法改正が迫られているが、要件を撤廃すれば、性同一性障害を抱える人々と女性へのなりすましなどの見極めが困難になるとも指摘されている。
提言は
「一定期間(10年以上)継続して一定の治療を受け、かつ、一定期間(10年以上)継続して他の性別で社会生活を営んでいると認められること」
を新たに要件に盛り込んだ。
カナダや英国では、刑務所や留置場などで、女性に性別変更した元男性による女性への性犯罪が発生している。
これを踏まえ、提言では
「収容施設などにおいては、生物学上の性別に基づき区別して収容される」
ことを求めた。
性別変更する上で、子供と接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する
「日本版DBS」
創設法案に盛り込まれた、就業を制限する
「特定性犯罪」
の前科がないという要件も追加した。
女性の生殖機能を持ったままの
「法的男性」
が妊娠・出産した場合は、戸籍を女性に戻すとの条文の追加についても、検討を求めた。
提言は
「『なりすましによって生じた性的被害への国家賠償』
『女性生殖機能が残っているので妊娠・出産してしまった戸籍上男性が母親になることの社会的混乱』
という、現在までには、ほぼあり得なかったケースがあり得ることになる」
と指摘。
「女性たちの安心と安全を1ミリたりとも危うくしない」
と強調し、リスクの排除を訴えた。
■「診断の判断があやふやに」
平成15年に成立した特例法は、性別を変更するために複数の医師から性同一性障害の診断を受けた上で
@18歳以上
A未婚
B未成年の子がいない
C生殖不能
D変更後の性別の性器に似た外観を備えている
の要件を定めている。
2023年10月、最高裁大法廷は生殖不能要件を違憲と判断し、Dの
「外観要件」
について憲法適合性の審理を広島高裁に差し戻した。
CとDを合わせて
「手術要件」
と言われる。
特例法は性同一性障害者について
「他の性別であるとの持続的な確信を持ち、身体的および社会的に他の性別に適合させる意思を有する者」
と定義する。
ただ、手術要件が撤廃された場合、客観的な基準がなくなり、衝動的に元の性別による性行動に出る場合も含め、
「なりすまし」
が排除しきれないとの懸念もある。
性同一性障害を訴える患者を数多く診断してきた精神科医の針間克己氏は2024年4月9日、特命委の会合に出席後、
「手術要件がなくなると(性同一性障害者の)定義に一致するかどうかの判断が非常にあやふやになってしまう」
「診断が難しくなるので何らかの基準を設けたほうがいい」
と産経新聞などの取材に語った。

「女性は人数多くてもマイノリティー」武蔵大・千田有紀教授 性自認尊重のトレンドに懸念
2024/3/25 13:55
https://www.sankei.com/article/20240325-CCBO54JDBRDJTP6QTSNHOMXAZE/
武蔵大の千田有紀教授(家族社会学・ジェンダー論)が国会内で講演し、生物学的な性差から性自認(心の性)を重視する流れが強まっているとして、
「性別の基準に性自認の尊重を置けば、
『女性に見えないけど、あなたは本当に女性なの』
と疑うこと自体、差別とされかねない」
「女性は数は多くてもマイノリティーだということを分かってほしい」
と述べ、警鐘を鳴らした。
女性の権利保護を目指す
「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」
が2024年3月18日に開いた集会でも講演した。
千田氏の発言要旨は以下の通り。

■見られる存在になることに不安
女性は、心と体が一致しない性同一性障害(GID)の人たちの
「体を変えたい」
との思いに対し、温かな眼差しを送っていた。
自由な社会を目指す思いはGIDも女性も同じだ。
戸籍上の性別を変更するために男性器を取ってしまうほど女の人になりたいと思っているならば、その人は女性だと思い、共存していた。
《2023年10月、最高裁大法廷は性同一性障害特例法が戸籍上の性別を変更する上で求めていた
「生殖腺がないか生殖機能を永続的に欠く状態」(生殖不能要件)
の規定を憲法違反と判断した》
《「変更後の性別の性器に似た外観を備えている」(外観要件)
との規定については広島高裁に差し戻し今後、憲法適合性の審理が予定される》
《双方の要件を合わせて「手術要件」と言われる》
判決では
「女性は男性器を見たくないのだろう」(=異性の性器を見せられる羞恥心)
といった指摘があった。
そうではない。
女性は自分の身体を(元男性に)見られることに対し不安を感じている。
ここが理解されていない。
手術要件がなくなれば性別変更する上で司法や医療の関与が薄まる。
性同一性障害特例法は自己申告に基づく性別変更を可能とする『ジェンダー・セルフ・ID』の制度に近付くことになる。
短時間で性同一性障害の診断を下すべきではない。
診断基準を厳しくするのが解決の道だろう。
海外では性自認を尊重する余り、女湯や女性トイレで様々なトラブルが起きている。
■女性スペースの安全は身体で担保
国連が定義したトランスジェンダーには異性装者やノンバイナリー(男性にも女性にも当てはまらない人)といった属性に加え、女性のアイデンティティーを主張するのに、外見上は髭を生やしたままなど女性に見られる気がない属性もある。
その人の性自認を疑えば、
「差別」
とされる世界が広がりつつある。
性自認を認めるなというのではない。
これまで女性スペースの安全性や女性スポーツの公平性は身体によって担保されてきたが、性自認の尊重が過ぎれば社会のシステムが崩れる。
例えば、女子トイレは女性が社会参加する上で基本的なインフラだ。
女性はトイレでの安全性が担保されないと外に出られない。
性自認は自由だが、別に制度的な解決が政治に求められる。
LGBT活動家の主張には
「女子トイレや女湯に入りたいというトランスジェンダー女性はいない」
という声に加え、
「手術要件が廃止されれば、その時に話し合えばいい」
という声もある。
「女子トイレを使いたい」
と主張するトランスジェンダー女性(生まれつきの性別は男性、性自認は女性)がSNS上で女性に対して暴力的な言葉を使っているケースもある。
(トランス女性の権利を優先する)LGBT活動家から
「女性はマジョリティーだ」
といわれている。
女性は妊娠する身体を持ち、相対的に脆弱だ。
数が多くても女性はマイノリティーだということを分かってほしい。

女性スペース守る連絡会 性同一性障害特例法の改正案私案で集会 外観要件議論に危機感
2024/3/19 11:35
https://www.sankei.com/article/20240319-HJ33CQDNQNCNFLSDMU4JWDRNS4/
女性の権利保護を目指す
「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」
は2024年3月18日、国会内で集会を開き、性同一性障害特例法の改正案や女性スペースに関する法案など会がまとめた独自案について説明し、生来の女性を保護するための法整備の必要性を訴えた。
2023年10月の最高裁で、戸籍上の性別を変更する上で生殖機能の喪失を要件とした特例法の規定が憲法違反と判断されるなど区別が曖昧になりつつある現状を踏まえた対応となる。
特例法を巡っては、性別変更する上で
「変更後の性別の性器に似た外観を備えている」
という外観要件について、広島高裁で憲法適合性の審理が改めて予定されるなど、違憲と判断される余地を残している。
最高裁は2023年7月、経済産業省に勤務するトランスジェンダー女性(生まれつきの性別は男性、性自認は女性)の職員に対し職場の女性用トイレの使用に制限を設けたことを違憲と判断している。
男性として生まれたトランス女性が女性スペースを利用する機会が広がりつつある現状を受けて、連絡会の
「女性スペースに関する法律案」
は、身分証明書上は女性でも男性器を備えていた場合は女性スペースの利用を認めない趣旨を盛り込んだ。
経産省のトランス女性に関するトイレを巡る判決を踏まえて、女子トイレを利用する女性らの意向を踏まえた上で、施設管理者が特定のトランス女性の入場を許容した場合は例外的に認めるとした。
会合に出席した自民党の片山さつき元地方創生担当相は
「マイノリティー(性的少数者)でずっと悩まれて、社会的に悲しい思いをした人は実際いる」
「そういう人に手を差し伸べることに反対したことはない」
と述べた上で、
「(女性や女児の)安全性を毀損することは国家の要諦としてあってはならない」
「今も女性や女児に対する犯罪を完全に防止できていない」
「今よりも危うくしてはならないという線を譲らない」
と語った。
集会では、女性スペースを巡る国内外の現状として、
▷性自認による差別を禁止する差別禁止法が施行されているカナダで、トランス女性を自認するという男が女性専用シェルターに滞在して女性利用者に性的暴行を行った
▷英国で性犯罪で逮捕された男が服役中にトランス女性になった
▷性別適合手術を受けていない女性を自認する外国人の男性が東京で女湯に侵入した
といった事例が紹介された。
連絡会は約3200人が賛同する
「女性スペースを守る会」
や性同一性障害者らで作る
「性同一性障害特例法を守る会」、
LGBT活動家に批判的な当事者団体
「白百合の会」、
「性暴力被害者の会」
などで構成される。

拡声器で「帰れ」「ヘイトデモ中止」性別変更反対の女性デモに3度目の妨害行為
2024/3/3 15:27
https://www.sankei.com/article/20240304-OJBMXROHUBHLHEIQTCCTLJVAMY/
女子トイレや女子更衣室、女湯などに男性が入ることを反対する
「女性の権利と尊厳を取り戻す会」
が2024年3月2日、東京・新宿でデモ活動を行い、戸籍上の性別変更を可能にする性同一性障害特例法の廃止を訴えた。
こうしたデモ活動に対しては妨害行為が繰り返されており、この日も同会の主張に反対する集団が現れて、デモの参加者に罵詈雑言を浴びせていた。
特例法を巡っては、広島高裁で性別を変更する要件の1つである
「変更後の性別の性器に近い外観を備える」(外観要件)
の規定の合憲性について審理が行われる予定だ。
デモに参加する女性らは、この規定が違憲となった場合、
「体は性別適合手術をしていない男性のままで、戸籍の上では女性」
という人物が現れ、
「女性専用スペース」
を共有する可能性が生じるとして、強い懸念を抱いているという。
一方、2023年の10月や12月のデモ活動では、マスクやサングラスで顔を隠す参加者に対し、執拗に撮影したり、拡声器で
「差別者、帰れ」
「へらへら笑うな」
と罵声を浴びせたりする集団が現れていた。
この日も同様だった。
デモが始まる前から、多様性のシンボルとされるレインボーのフラッグを掲げた集団が
「トランス差別扇動デモ」
「言い返してみろよ、ただの差別なんだよ」
などと持論を展開していた。
警察官が先導する形でデモ参加者が移動を始めると、拡声器越しに
「ヘイトデモ中止」
「トランス差別は今すぐやめろ」
「帰れ」
と興奮した様子で繰り返した。
デモの参加者は
「男は男、女は女」
などと訴えても、周囲に声がほとんど届かなかった。
デモの後、同会の青谷ゆかり共同代表は
「妨害は良くないと思う」
「妨害する音を小さくしてほしい」
「こちらの主張が伝えられない」
と訴えた。
妨害する人々に対しては
「口封じするのではなく、お互いの意見について話し合いたい」
と語った。

サイレンにスマホ撮影、罵声、中指‥「男性は女性になれない」デモに過激な妨害
2023/12/23 19:00
https://www.sankei.com/article/20231223-TFXAL24VUJEXJJ2YMUSMHWIWGI/
戸籍上の性別変更を可能にした性同一性障害特例法の廃止を訴えるデモ活動が2023年12月23日、東京・新宿で行われ、参加者の女性らが
「性別は変えられない」
「女性の尊厳を守れ」
「性別は気持ちではない」
などと訴えた。
現場では、心と体の性別が一致しないトランスジェンダーが性別を変更する権利が脅かされるとしてデモ活動を妨害する人々も現れ、休日の繁華街で聞くに堪えない罵詈雑言を浴びせていた。
午後1時前のJR新宿駅前。
コーンで仕切られたスペースに20人弱の女性が集まった。
女性団体
「女性の権利と尊厳を取り戻す会」
が主催するデモの参加者だ。
平成16年施行の特例法に基づき性別適合手術を経て性別変更が認められても、元男性と女性トイレや女性更衣室などを女児や成人女性が共有することなどに強い拒否感を覚えている。
参加者の多くはサングラスやマスクで顔を隠している。
インターネット上に顔が公開される恐れがあるためだという。
周囲はデモの開始前から、虹色のフラッグを掲げた人々が参加者の数倍の規模で取り囲んでいる。
「ヘイトデ〜モ中止!」
「トランス差別者、かーえーれ!」
と罵声を浴びせ、スマートフォンやビデオカメラで参加者を撮影する。
多くの警察官が警備する中、デモ行進が始まった。
妨害者の側がデモ参加者に接近してメガホンで大声を張り上げるので、参加者が訴える内容がなかなか聞き取れない。
ようやくデモの参加者側がメガホンの音量を上げ、
「性別の定義を変えるな」
「女性の尊厳を守れ」
と訴えると、妨害する側も
「かーえーれー」
とボリュームを上げて対抗する。
妨害する側の行為は眉をひそめる内容だった。
「とっとと帰れって言ってんじゃねーか」
と大声を発する女性。
「ファン、ファン、ファン」
とサイレンを大音量で鳴らす女性。
「うわー」「うわー」「うわー」
と叫びながら、デモの参加女性にスマホを近付ける男性もいた。
デモの参加者に親指を下げ、中指を立てる人たちも少なくなかった。
デモ参加者の訴えを周囲に聞かせない狙いがあるという。
通行人に向かい、
「悪質なトランスジェンダー差別が行われています」
「どうか皆さま、耳を貸さないようにお願いします」
となどと頭を下げている。
今回のデモ活動は事前に警察から許可を得たものだ。
こうした妨害行為を、参加者はどう感じているのか。
主催団体の共同代表を務める青谷ゆかりさんは
「意見や立場が違う人がいるのは分かる」
「でも、このようなカウンター(反対)行為を行うのではなく、お互いどう考えているのか議論すべきだ」
「カウンター行為は反対だ」
という。
同じく共同代表の白瀬詩織さんも
「我々の主張が広がれば、賛同者が増えてしまうから都合が悪いと考えているのではないか」
「まずは聞いてほしい」
と語った。
デモの開始前、記者がデモ参加者に挨拶をしていると、ある男性が記者にスマートフォンを向けてきた。
撮影されているのだろうか。
その場を離れると、その男性から指を差され、
「これが産経新聞だ」
と周囲に伝えている。
デモの取材中、記者に対する威圧的な行為はなかったものの、妨害する人々の一部は取材する記者の顔も事前に把握していたことに恐怖を覚えた。

「マスコミはLGBT活動家の意見ばかり‥」女性スペース守る連絡会が会見
2023/12/15 19:04
https://www.sankei.com/article/20231215-XGMFAGQOB5EBPDHUKCFYWCALOU/
女性の権利保護を目指す
「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」
は2023年12月15日、東京都内で記者会見し、戸籍上の性別を変更する要件を盛り込んだ性同一性障害特例法に関する最高裁の決定に否定的な考えを示した上で、男性器を有した人による女性トイレの利用を公認しないための法整備などを訴えた冊子の発行を公表した。
最高裁は2023年10月に性別変更する上で特例法が求める生殖機能の喪失要件について憲法違反と判断し
「変更後の性別の性器部分に似た外観がある」
と求めた外観要件については高裁に審理を差し戻した。
性別適合手術に否定的なLGBT活動団体などは特例法に対し
「人権侵害の懸念が極めて強い手術要件を中心に撤廃すべきだ」
などと主張していた。
会見で、性別適合手術を経て女性に性別変更した
「性同一性障害特例法を守る会」
の美山みどりさんは
「LGBT活動家の主張だけを鵜呑みにして、イデオロギー的な偏った立場で判断を下したとしか思えない」
と最高裁の決定を疑問視し、
「マスコミは活動家の意見を取り上げた半分でも(特例法の堅持を求める)我々の意見を報道したのか」
と苦言を呈した。
「性暴力被害者の会」
の郡司真子さんは、性交の多様な在り方や自慰行為の快楽性を子供たちに教える性教育が欧米で先行する状況に強い懸念を示した。
「行き過ぎた性教育を一方的に進めていくのではなく、海外の事例について検討して議論を進める必要がある」
と訴えた。
「女性の権利を守るトランスの会」
の森永弥沙さんは、トランスジェンダー女性(生まれつきの性別は男性、性自認は女性)と女性の権利衝突に懸念を唱えるとLGBT活動家から糾弾される現状について、
「懸念を示す女性を蔑み、汚い言葉で踏みしだくなど論外だ」
と述べた。
「戸籍を変更しなくてもトランスジェンダーが社会に適用しやすいように(法制度が)運用されることが肝心だ」
「将来的にはトランスジェンダーなど多様な属性が意識されることなく、ありふれた、ただの人間と認識される社会を目指さないといけないと思う」
と語った。
「女性スペースを守る会」
の森谷みのりさんは、2023年6月に施行されたLGBT理解増進法について
「性の多様性を承認し理解増進を掲げたもので、それに従った法令上の取り扱いを受ける権利を予定したものではない」
と指摘し、
「最高裁は性別を蔑ろにして、性自認至上主義で安易に女性や男性の定義を変更しようとしている」
と批判した。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/716.html#c12

[政治・選挙・NHK294] 市民178人が小池知事を刑事告発 首長への出馬要請は公選法違反(田中龍作ジャーナル) 赤かぶ
27. 秘密のアッコちゃん[414] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月27日 22:17:01 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[527]
<■773行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
安倍元総理の三回忌を前に 「夫婦別氏」よりも「婚姻前の氏の使用」の利便化で
WiLL2024年8月号 経済安全保障担当大臣 高市早苗
■安倍元総理が夢に
2024年7月8日には、2022年の参議院選挙応援中に凶弾に倒れ、逝去された安倍晋三元総理の三回忌を迎えますね。
度々つまらない口喧嘩をしたり、仲直りをしたりの繰り返しでしたが、それも叶わなくなった今は、しみじみ淋しくなります。
先般、疲労が極限に達した時に、亡き両親と安倍元総理が一緒に夢に出てきたので、
「迎えに来たのかな」
と感じましたが、その夢には昭恵夫人も登場していたことを思い出して一安心!
安倍元総理も懸命に応援して下さった2021年9月の自民党総裁選以降、土日は党務か政務で地方講演、平日は仕事、深夜には大量の資料読みや原稿書き・・・と休みなく働き続けていて、人間ドックなど健康診断も3年以上は受けていないので、注意喚起のために夢に出て来て下さったのかなとも思いました。
2024年夏は、各方面との調整がつけば、安倍元総理の御命日に出国して、G7科学技術大臣会合に出席しますが、イタリアから帰国したら、1日だけは休みを確保して健康診断に行ってみようと考えています。
■経済界が夫婦別氏制度導入を要望
安倍元総理が何度も仰っていたことがありました。
「選択的夫婦別氏だけどさ、あれは駄目だよ」
「高市さんが法務部会に提出している法案を早く成立させればいいんだよ」
私が自民党政調会長の法務部会に提出した法律案というのは、
『婚姻前の氏の通称使用に関する法律案』
のことです。
この法律案では、戸籍上の夫婦親子の氏が同一であること(ファミリー・ネーム)は維持しつつ、
「婚姻前の氏を通称として称する旨の届出をした者」
について、
「国、地方公共団体、事業者、公私の団体」

「婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を講ずる責務を有する」
としたものです。
この法律案を、2002年と2020年の2回に渡って法務部会に提出しましたが、1回目は
「戸籍の氏も住所も別々にするべきだ」
といった強烈な反対意見が出て党議決定には至らず、2回目は、審査もされないまま放置されています。
私は、足掛け約4年の総務大臣任期期間の後半(2019年9月からの約1年間)で、『住民基本台帳法』『地方自治法』『公職選挙法』『消防法』『放送法』『電気通信事業法』をはじめ総務省が所管する全法令をチェックし、資格や各種申請など事務手続きに戸籍氏しか使えなかったものを、全て婚姻前の氏の単記か併記で対応できるように変更しました。
総務省単独の判断で変更できたものだけでも、合計1142件でした。
仮に全府省庁が阻害と同じ取り組みを実施し、地方公共団体や公私の団体や企業も同じ取り組みを実施すれば、婚姻による戸籍氏の変更によって社会生活で不便を感じることはなくなると考えます。
例えば、金融庁や厚生労働省。
私自身の経験では、銀行の預金通帳でしたが、婚姻前の氏のままで使える銀行と戸籍氏に作り直すよう求める銀行が混在していました。
数年前に年金受給者の方から伺った話ですが、通称使用届けを出して戸籍氏と婚姻前の氏が併記された住民票を提示したのに、厚生労働省の方針として
「戸籍氏の通帳でなければ年金を振り込めない」
とされ、通帳を作り直したということです。
こういった所管府省庁によってバラバラの対応が残っている現状を改善するためにも、私が起草した法律案によって、
「国、地方公共団体、事業者、公私の団体」

「婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を講ずる責務を有する」
ことを明確にするべきだと思っていました。
2024年6月、経団連会長が
「選択的夫婦別氏制度の導入」
を要望する
「提言」
を公表されました。
報道で知る限りの理由は、働く女性の不便解消や国際社会での活躍のためにということらしいのですが、先ずは前記したような法整備を行うということでは不十分でしょうか。
既に、マイナンバーカード、パスポート、運転免許証、住民票、印鑑登録証明書は、戸籍氏と婚姻前の氏の併記が可能になっています。
仕業・師業と呼ばれる国家資格の殆どで、免許証などへの婚姻前の単記や併記が可能になっています。
国際社会での活躍についても、同氏や別氏だけではなく、複合氏を使う国もあれば、氏が無い国もあり、様々です。
■「子の氏の安定性」
最近は、
「夫婦別氏制度」
の導入に賛成する政治家は
「改革派=善」、
反対する政治家は
「守旧派=悪」
といったレッテル貼りがされているように感じますので、私のような考え方は変だと思われる方も多いのかもしれません。
私が選択的であったとしても
「夫婦別氏制度」
の導入に慎重な姿勢を続けてきた最大の理由は、
「子の氏の安定性」
が損なわれる可能性があると思うからです。
現行制度では、婚姻届けを提出した夫婦の戸籍は全て同氏ですから、子も出生と同時に両親と同氏になることが確定しています。
法改正によって戸籍上も別氏の夫婦が出現した場合、子の氏の決め方について、
「全ての別氏夫婦が納得できるルール」
が必要になります。
仮に
「別氏夫婦が子の氏を取り合って、協議が調わない場合」
には子の氏が定まらないので、『戸籍法』が規定する
「出生の届出は、14日以内」
というルールも見直す必要があるのではないでしょうか。
これまでに衆議院に提出された
「夫婦別氏制度」
の導入を可能にする
「民法の一部を改正する法律案」(立憲民主党案)
を拝見すると、
「別氏夫婦の子は、その出生の際に父母の協議で定める父又は母の氏を称する」
「協議が調わない時は、家庭裁判所は、協議に代わる審判をすることができる」
とされています。
同法律案でも、別氏夫婦が子の氏を取り合って決められないケースを想定しているわけですが、果たして、この争いを持ち込まれる家庭裁判所は、一体どのような判断基準で審判を行うのでしょうか。
離婚の際に子の親権を争う裁判でしたら、法律に判断基準は明記されていないものの、過去の裁判例では
「子を養う経済力」
「子と過ごす時間を確保できるのか」
「子との関わりや愛情」
「子の年齢によっては子の意思」
「健康状態」
「教育・居住環境」
などの要素を総合的に考慮して判断されているようです。
しかし、出生直後の子の氏を争っている場合、家庭裁判所が如何なる審判をしたとしても、夫婦双方が納得できる理由を示すことができるとは考えられません。
裁判官、検事、法務省大臣官房審議官としても活躍された小池信行弁護士は、
「夫婦の協議で決まらない時の補充的な決定方法を定めておく必要がある」
として、スウェーデンでは
「出生から3カ月以内に決まらない時は母の氏を称するとしている」
ことを例示しておられました。
私は、幸せであるはずの出産直後に、子の氏を巡る争いの種を作ることを、特に懸念していました。
「夫婦別氏制度」
の導入を求める方々からは
「余計なお世話だ」
と批判されるのでしょうが・・・。
■世界に誇れる日本の戸籍制度
「そもそも、戸籍制度を廃止するべきだ」
と主張される方々もおられますが、私は、日本の
「戸籍制度」
は、世界に誇れる見事なシステムだと思っています。
戸籍は、重要な身分関係を明確にするために、血族・姻族・配偶関係を記載した公簿です。
新戸籍と旧戸籍の双方に相手方戸籍を特定表示することから、相手方戸籍を相互に索出でき、両戸籍を連結する記載が可能で、無限の親族関係の広がりを証明することができます。
よって、戸籍の
「公証力」
は、非常に強いものです。
例えば、遺産相続の分割協議手続きでは、
「隠れた法定相続人」
の存否を確認するため、死亡者の戸籍謄本を全て遡ることによって親族関係を確定できます。
重要な契約事も、戸籍で証明するものが多くあります。
この他、戸籍は、近親婚の防止、婚姻要件の調査、出生、死亡、離婚、任意認知、母子家庭の児童扶養手当、障害児童の特別児童扶養手当、母子父子寡婦福祉資金貸付、戦没者遺族に対する特別弔慰金、成年後見の申立手続き、家事調停事件手続きなど、様々な場面で行政・司法の基礎となっています。
20年以上婚姻関係を継続している夫婦間で居住用不動産を贈与した時の配偶者控除の制度でも、戸籍によって、20年以上に及ぶ婚姻関係を把握し立証します。
「他国に例を見ない戸籍制度だから、廃止するべき」
なのではなくて、
「他国に誇れる極めて優れた制度だから、守り抜くべき」
だと考えています。

別姓で自己否定する自民
阿比留瑠比の極言御免
2024/6/27 1:00
https://www.sankei.com/article/20240627-TWC52YKBYNKC7DKHOP5EBO4BQU/
自民党が性懲りもなく選択的夫婦別姓に関する党内議論を再開させるという。
経団連や経済同友会のビジネス的見地からの要請に後押しされた形だが、不必要だったLGBT理解増進法に続いて夫婦別姓にまで突き進むとしたら、自民の存在価値をまた1つ自己否定することになろう。
「多様性」
というはやりの聞こえのいい掛け声に目が眩み、安易に取り込もうとするのでは、立憲民主党や共産党、社民党と最早選ぶ所がない。
もっとも、岸田文雄首相は2024年6月21日の記者会見で、選択的夫婦別姓については次のように慎重だった。
「様々な立場の方に大きな影響を与える問題だ」
「だからこそ世論調査でも意見が分かれている」
「前向きな意見の方の一方、家族の一体感や子供の姓をどうするかなどに関心を持つ消極的な意見もある」
LGBT法を巡っては、元首相秘書官の性的少数者差別とも受け取られかねない発言や米民主党政権の圧力に屈して成立に前のめりになった首相だが、今度はぶれないでもらいたい。
安倍晋三元首相もかつてこの問題に関し、首相にこう信頼を示していた。
「岸田さんはそうリベラルではないんだ」
「以前、夫婦別姓の議論が高まった時に
「子供の視点が全然ない」
と話していた。
■アンケートでは
やはりこの点が重要だと考えるので、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を紹介する。
子供対象の世論調査自体が珍しく、古い調査だが寡聞にして他に知らないのでご容赦願いたい。
それによると、両親が別姓となったら
「嫌だと思う」(41.6%)
「変な感じがする」(24.8%)
の否定的な意見が、合わせて3分の2に達した。
一方で
「嬉しい」
は僅か2.2%しかいなかった。
また、成人を対象とした令和3年実施の内閣府の
「家族の法制に関する世論調査」
結果を見ても、選択的夫婦別姓制度導入を求める回答は28.6%に留まった。
「夫婦同姓制度を維持した方が良い」が27.0%、
「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方が良い」が42.2%で、
夫婦同姓維持派が7割近くに達している。
夫婦の姓が異なることでの子供への影響に関しては
「好ましくない影響があると思う」と答えた者の割合が69.0%で
「影響はないと思う」は30.3%
に留まっている。
留意すべきは
「兄弟の姓が異なっても構わない」が僅か13.8%で、
「姓は同じにするべきだ」が63.5%
に上ることだろう。
夫婦どちらの姓を名乗らせるかを巡り、親族間のトラブルも予想される。
■フェミニストの議論
選択的夫婦別姓については、
「選択的」
だから別に同性を選びたい人はそうすればいいだけだという意見もあるが、事はそう単純ではないだろう。
既に平成17年刊行の
「ザ・フェミニズム」(上野千鶴子、小倉千加子著)
で、フェミニスト【フェミニストとは、全ての性が平等な権利を持つべきだという理由から女性の権利を主張する行為(フェミニズム)を支持する人のことだと、英オックスフォード辞書で定義されている】である小倉氏がこんな議論をしている。
「(選択的)夫婦別姓になったら、まるで夫婦別姓をしている人の方が進んでいて、夫婦同姓の人の方が遅れているみたいになりかねない」
「そこでまた1つの差別化が行われるわけじゃないですか」
女優でタレントの橋本マナミさんが2024年6月
「私は一緒の名字がいいです」
「好きで結婚したから」
とテレビで発言しただけでニュースとして取り上げられる現状を見ると別姓導入で同性夫婦が肩身の狭い思いをする日が来るかもしれない。
(論説委員兼政治部編集委員)

阿比留瑠比の極言御免
日経、朝日のコラムに異議あり 夫婦別姓論議に欠ける子供の視点
2015/11/9 5:00
https://www.sankei.com/article/20151109-Q7P53O3IFNNVLFLL3DOXYENVFM/
2015年11月4日は最高裁大法廷で夫婦別姓(氏)を巡る訴訟の弁論が開かれるとあって、日経新聞と朝日新聞の朝刊1面コラムが、それぞれこの問題を取り上げていた。
夫婦別姓に賛成・推進する立場で書かれたこの2つのコラムを読んで感じたのは、立論の前提、出発点が異なり、議論が噛み合わないもどかしさだった。
「誰かに迷惑もかけない」
「コストも知れている」
「歩みの遅さを合理的に説明するのは難しい」
日経はこう書いていたが、夫婦別姓論議でいつも気になるのが、当事者である子供の視点の欠落だ。
子供の意見を反映した調査がなかなか見当たらないので少し古くなって恐縮だが、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を引用したい。
それによると、両親が別姓となったら
「嫌だと思う」(41.6%)

「変な感じがする」(24.8%)
との否定的な意見が、合わせてほぼ3分の2に達している。
一方、
「嬉しい」は僅か2.2%
しかいなかった。
また、20歳以上の成人を対象とする内閣府の世論調査(平成24年12月実施)でも、夫婦の名字が違うと
「子供にとって好ましくない影響があると思う」と答えた人が67.1%
に上り、
「影響はないと思う」(28.4%)
を大きく上回った。
夫婦別姓と言うと、両性が納得すればいいと思いがちだが、夫婦が別姓を選択した場合、子供は必ず片方の親と別姓になる。
事は夫婦の在り方だけの問題ではなく、簡単に
「誰かに迷惑もかけない」
と言い切れるような話ではない。
日経コラムは更に、こうも書いている。
「反発する人の声から『自分と違う価値観を持つ人間が、とにかく許せない』との響きを感じることがある」
どう感じようと自由ではあるが、この見解はかなり一方的だろう。
10年以上前のことだが、夫婦別姓を議論していた自民党の会議を取材した同僚記者は、夫婦別姓推進派で、現在は党総裁候補の1人と言われる議員から、こう面罵された。
「(夫婦別姓に慎重論を唱える)産経新聞は、新聞じゃない」
当たり前のことだが、自分と違う価値観が許せないのは、何も夫婦別姓に
「反発する人」
に限らないということである。
多様な価値観を説く人が、異なる価値観を否定するという矛盾を犯すのは珍しくない。
ちなみに、朝日のコラムにはこうあった。
「結婚や家族の多様化、個の尊重という冒頭に引いた変化(※国民意識の多様化、個人の尊重)は、別姓の議論にもそのまま当てはまる」
「社会は旧姓使用を広げる方向に動く」
確かに一般論としては、社会の多様化は歓迎すべきことなのだろう。
多様性を失えば硬直化し、やがては行き詰まっていく。
とはいえ、何でもかんでも
「多様化」
という言葉で正当化しても、そこで思考停止することになる。
また、夫婦別姓を法的に位置付ける事と、旧姓使用は全く別物である。
現在、夫婦同姓制度の下で通称使用が大きく緩和され、旧姓使用が広がっていることがその証左だと言える。
いずれにしてもこの問題を考える時は、直接影響を受けることになる子供の意見をもっと聞いた方がいい。
政府にも、今度調査する時は是非その視点を盛り込むようお願いしたい。
(論説委員兼政治部編集委員)

愚か者! 経団連「夫婦別姓」提言
WiLL2024年8月号 副県立大学名誉教授 島田洋一
2024年6月10日、経団連がいわゆる
「選択的夫婦別姓」

「早期実現」
を政府に求める提言を出した(具体的には民法750条の改正)。
経団連は、夫婦が妻の姓を選ぶことも可能ではあるものの、
「実際には95%の夫婦が夫の姓を選び、妻が姓を改めている」
「そのため、アイデンティティの喪失や自己の存在を証することが出来ないことによる日常生活・職業生活上の不便・不利益といった、改姓による負担が、女性に偏っている」
と言う。
経団連によれば、
「女性のエンパワーメント(強化)において、我が国は世界に大きく立ち遅れており」、
その背後に、
「各社の取り組みだけでは解決できない、女性活躍を阻害する社会制度」
がある。
その代表的なものが夫婦同氏制度だというのである。
まず最初の疑問だが、女性の活躍に関して日本が
「世界に大きく立ち遅れて」
いるというのは本当か。
経団連・十倉雅和会長の頭にある
「世界」
がどの範囲なのか知らないが、少なくとも相当怪しい
「世界観」
だろう。
実際日本において、実力ある女性の活躍が、男の場合以上に阻害されているとすれば、
「女を下に見る」
不見識な経営者や重役が各所に残るでいではないか。
だとすれば、経済界の頂点に位置する経団連会長の責任が相当大きいと言わざるを得ない。
まずは自らの指導力不足を反省すべきだろう。
経団連提言で最も問題なのは、従来
「夫婦別姓」
法制化論で常に論点となってきた、
@親子や兄弟姉妹の間で姓が異なって良いのか
A明治以来の戸籍制度を崩すことにならないか
といった懸念に全く答えていないことである。
そもそも言及自体ない。
これは無責任だろう。
近年、パスポート、マイナンバーカードを始め、旧姓の通称使用が拡大されてきた。
経団連提言も、
「官民の職場では、女性の社会進出の進展を踏まえ、改姓によるキャリアの分断等を避けるため、職場における旧姓の通称としての使用を推進してきた」
「公的証明書や各種国家資格等でも婚姻前の姓(旧姓)の併記が可能になるなど、政府の施策としても通称使用が拡大され、経済界においても、通称使用は定着している」
と述べている。
「経団連調査では91%の企業が通称使用を認めている」
とも言う。
まだ不十分と言うなら、100%になるよう、経団連が強い姿勢で
「立ち遅れている」
経営者を叱咤すべきだろう。
そのための経済団体ではないか。
この問題で慎重論の先頭に立ってきた高市早苗議員は次のように言う。
「結婚すると、夫婦やその間に生まれる子供は同じ戸籍に登載され、姓は『家族の名称』という意味を持つ」
「だが、別姓になれば姓は単なる『個人の名称』になる」
「たとえ『選択制』にしても、家族の呼称を持たない存在を認める以上、結局は制度としての家族の呼称は廃止せざるを得なくなるだろう」
「事は家族の根幹に関わる」
(産経新聞・2021年3月18日)
「国際的トレンド」
云々についても高市氏は、
「日本は日本」
と一蹴する。
経団連は、旧姓の通称使用では問題解決にならない例として次のような
「トラブル」
を挙げる。
カッコ内は私のコメントである。
・クレジットカードの名義が戸籍上の場合、ホテルの予約等もカードの名義である戸籍姓に合わせざるを得ない。
(合わせたら良いではないか。合わせると女性活躍が阻害されるのか)。
・国際機関で働く場合、公的な氏名での登録が求められるため、姓が変わると別人格として見做され、キャリアの分断や不利益が生じる。
(結婚したから姓が変わったと言えば済む話、国際機関を馬鹿にし過ぎてはいないか)
・社内ではビジネスネーム(通称)が浸透しているため、現地スタッフが通称でホテルを予約した。
その結果、チェックイン時にパスポートの姓名と異なるという理由から、宿泊を断られた。
(現地スタッフとの意思疎通をより密にすれば良いだけ。あるいはパスポートに旧姓を併記すればよい。令和3年4月1日以降、申請が非常に簡略化された)
これが、女性にとって
「アイデンティティの喪失」

「自己の存在を証することができない」
ほどの不条理であり、家族別姓しか解決策がない次元の
「トラブル」
だろうか。
この程度の事象にも効果的に対処のマニュアルを示せない経団連では、日本経済停滞も無理はない。

民法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

選択肢のある社会の実現を目指して
〜女性活躍に対する制度の壁を乗り越える〜
2024年6月18日
一般社団法人 日本経済団体連合会
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044_honbun.html

選択的夫婦別姓 経団連・十倉雅和会長「スピーディーに議論を」自民に要求
2024/6/25 23:24
https://www.sankei.com/article/20240625-GN2CKAAVRFIKFERTR7RAD7JTXQ/
経団連の十倉雅和会長は2024年6月25日の定例記者会見で、自民党が
「選択的夫婦別姓制度」
に関する党内議論を本格化する意向を示したことについて、
「女性の社会進出、社会での活躍を進めたいという思いは一緒だと思う」
「オープンでスピーディーに議論してほしい」
と述べた。
経団連は結婚後も希望すれば夫婦それぞれが生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる同制度の早期実現を求める提言を2024年6月10日に発表し、2024年6月21日に自民党に提言を提出していた。
経済同友会の新浪剛史代表幹事も2024年6月18日の定例会見で、
「1つの姓を選ばなくてはいけないという非常に不都合なことがずっと放置されたままだ」
と指摘。
「政治が解決しないのであれば経済界がモノを言っていかなければならない」
との認識を示していた。

選択的夫婦別姓議論、自民が3年ぶり再開 慎重派は懸念「保守離れ加速する」
2024/6/25 22:34
https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/
選択的夫婦別姓を巡る議論の経緯
https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/photo/TNK63PLFCRO4BDS2LNDI5YSMIU/
自民党は近く選択的夫婦別姓を巡る党内議論を3年ぶりに再開させる。
経団連が早期実現を求める提言を発表するなど、家族の多様性を尊重する風潮が背景にある。
とはいえ、保守層を中心に家族の一体感が失われるとして慎重論も少なくない。
保守層が求める早期の憲法改正が一向に進まない中で推進論に傾けば、
「自民離れ」
が加速するのは必至だ。
自民の茂木敏充幹事長は2024年6月25日の記者会見で、
「多様な人材の活躍は社会活力の源だ」
「選択的夫婦別姓は社会全体にも関わる問題であり、国民の幅広い意見も踏まえて、しっかり議論を進めていきたい」
と述べた。
自民の渡海紀三朗政調会長は2024年6月21日、選択的夫婦別姓を含む
「氏制度のあり方に関するワーキングチーム(WT)」
で議論に着手すると表明した。
新たな座長には逢沢一郎党紀委員長を起用する方針だ。
党幹部は
「政権与党として、いつまでも夫婦別姓の議論を棚ざらしというわけにはいかない」
と議論再開の必要性を強調する。
自民は菅義偉政権下の令和3年4月にWTの初会合を開催。
令和3年6月に論点整理をまとめたが、議論が紛糾したため制度導入の是非には踏み込まず、結論を先送りしていた。
しかし、経団連が2024年6月10日、早期実現を訴える政府への提言を発表したことを受け、党内では再び推進派と慎重派が動きを活発化させている。
自民の有志議員で作る
「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」(会長・浜田靖一国対委員長)
は2024年6月21日、国会内で会合を開き、経団連から提言を受け取った。
浜田氏は
「大変心強い」
「時代の要請として受け止めていく」
と語った。
一方、慎重派で作る
「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」(会長・中曽根弘文元外相)
は2024年6月19日に党本部で会合を開き、結婚前の氏を通称として幅広く使用できる環境整備を進めることを確認。
慎重派の議員は
「拙速に議論を進めれば『岩盤保守層』の更なる離反を招きかねない」
と不安を口にする。
岸田文雄首相(自民総裁)も2024年6月21日の会見で、慎重な姿勢を示した。
対立の激化は自民分断の芽となりかねず、党重鎮は
「経団連の手前、議論はしなければならないが、明確な方向性を示すことは難しいのではないか」
と述べた。

<主張>経団連「夫婦別姓」 家族の呼称をなくすのか
社説
2024/6/19 5:00
https://www.sankei.com/article/20240619-I4Q7IU7X5FJQTNZ3V4LDQESQHQ/
結婚後に夫婦が同じ姓を名乗るか、旧姓を維持するか選べる
「選択的夫婦別姓」
について経団連が早期実現を提言した。
十倉雅和会長は、女性の社会進出が進む中で
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べたが、国民の合意を欠いたまま、急ぐ問題ではない。
経団連は従来、夫婦同姓の下で職場での通称使用で対応できるとの立場だった。
別姓推進に転じたのは
「ビジネス上のリスク」
などが理由だ。
経団連が行ったアンケートなどでは職場で旧姓の通称使用が増えている一方、通称では銀行口座などが作れないことや海外渡航、契約で戸籍上の姓と異なることでトラブルが生じていることを指摘した。
だが夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定を変えることは、家族や社会の有り様に関わる。
岸田文雄首相が2024年6月17日の衆院決算行政監視委員会で、選択的夫婦別姓の早期導入の提言に慎重な考えを示し、
「家族の一体感や子供の利益に関わる問題であり、国民の理解が重要だ」
と述べたのは、もっともだ。
夫婦別姓を認めない民法の規定を
「違憲」
だとする訴えに対し、最高裁は平成27年と令和3年に合憲の判断を示し、夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。
別姓制が導入されれば、こうした姓の意義が、砂粒のような個人の呼称へと大きく変わる。
専門家によると姓は血縁血統を表すもので、家族の歴史や絆が断ち切られかねない。
同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要がある。
「選択」
と言っても別姓を希望しない人も含め社会に関わる問題だ。
別姓推進論は子供からの視点にも欠ける。
夫婦別姓では、どちらかの親と子が別姓になる。
子供の姓をどうするのか。
祖父母らも絡み、いさかいや分断が起きるのは見たくない。
最高裁の判決では、姓の在り方について国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきだ、としている。
深く理解すべきだ。
住民票や運転免許証、パスポートなどで旧姓を併記できる制度も広がっている。
経団連は、トラブルを嘆くより、我が国の夫婦同姓の意義を国際的に発信し、問題を解消してほしい。

<産経抄>経団連の「夫婦別姓提言」に異議あり       
2024/6/17 5:00
https://www.sankei.com/article/20240617-BKNKSTIQ3FJ2DDKD2AI3HWGCEQ/
夫婦別姓が叶わなくとも、パートナーを守る方法はある
経団連は
「選択的夫婦別姓」
の早期実現を求める提言を発表したが、法制化には国民の合意が必要だ
2024年6月の第3日曜は
「父の日」
だったが、
「母の日」
に比べ影が薄い。
父親の地位低下が指摘され久しい。
▼ゲームに押されて、子供のおままごと遊びはあまり見かけなくなったが、やってみてもパパ役はママに叱られ、オタオタする様子を真似するのだとか。
「正論」
を重んじる同僚も、家では言いたいことを言えず、妻や娘たちに阿る日々だという。
それも平和を守る知恵か。
▼だがこちらは黙って見過ごせない問題だ。
経団連が
「選択的夫婦別姓」
の早期実現を求める提言を先日、発表した。
十倉雅和会長は
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べたが、拙速に進めては禍根を残す。
▼選択的夫婦別姓は夫婦で同じ姓(氏)にするか、旧姓を名乗るかを選べる制度だ。
民法の改正などが必要となる。
女性の社会進出に伴い、平成8年に法制審議会が導入を求める答申をした。
30年近く経っても法制化に至らないのは、国民の合意が得られないからだ。
財界が
「急げ」
と号令をかける話なのか。
▼最高裁は平成27年と令和3年に、夫婦別姓を認めない民法の規定について
「合憲」
とする判断を示した。
夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。
選べるならいいじゃないか、別姓を希望しない人には関係ない、と考えるのは早計だ。
専門家からは、姓について家族の呼称から個人の呼称へと大きく変質することが指摘されている。
▼同じ戸籍に同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要があり、社会全体に関わる。
夫婦同姓は子供も両親と姓を同じくすることで利益を享受しやすい意義もある。
別姓では子の姓をどうするか。
双方の祖父母も絡み、決まらない混乱も予想される。

「国民の意見さまざま」 法相、選択的別姓に慎重
2024/6/11 11:24
https://www.sankei.com/article/20240611-JHRCRF76CFIA3LM3MAVGM7R5GY/
小泉龍司法相は2024年6月11日の閣議後記者会見で、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求めた経団連の提言に対し
「国民の間にまださまざまな意見がある」
とした上で
「積極的に動きを見極め、対応を検討していくことが必要だ」
と述べ、慎重な姿勢を示した。
法相の諮問機関の法制審議会は1996年、結婚後もそれぞれ婚姻前の名字を使える選択的別姓制度の導入を含む民法改正案を答申。
だが、保守系議員の反対などで法案は提出されなかった。
小泉氏はこの点にも触れ
「国会議員の方々の間でもしっかりと議論をし、幅広い理解を得ていただくため、法務省として積極的な情報提供をしたい」
とした。

「夫婦別姓制度、早期実現を」経団連が初の提言 通称は海外で理解得られずトラブルも
2024/6/10 18:29
https://www.sankei.com/article/20240610-PLZOKGZSLVKTZKDUTL3OBW74UQ/
経団連は2024年6月10日、選択的夫婦別姓制度の実現を求める提言を発表した。
希望すれば生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる制度の早期実現を要求。
政府に対し
「一刻も早く改正法案を提出し、国会で建設的な議論を期待する」
とした。
経団連による同制度に関する提言は初めて。
十倉雅和会長は2024年6月10日の定例記者会見で
「世の中は大きく変わっている」
「国会でスピーディーに議論してほしい」
と述べた。
現在は婚姻時に夫か妻のいずれかの姓を選べるが、妻が改姓することが圧倒的に多い。
提言では
「生活上の不便、不利益といった改姓による負担が女性に偏っているのが現実」
と訴えた。
経団連の調査では、国内の91%の企業は旧姓などを通称として使用することを認めているものの、通称は海外では理解されづらく、トラブルの原因になることがあると指摘。
「企業にとってもビジネス上のリスクとなり得る」
とした。

主張
夫婦同姓は合憲 家族制度の原則を守った
2021/6/24 5:00
https://www.sankei.com/article/20210624-BGWW7J52VRJMJFEQ5FVP7KQAZQ/
最高裁大法廷は、
「夫婦別姓」
を認めない民法の規定を再び
「合憲」
と判断した。
夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めた平成27(2015)年の最高裁判決を踏襲した。
妥当な判断である。
事実婚の男女3組が、夫婦別姓を希望して婚姻届を提出したが、不受理となり、家事審判を申し立て、最高裁に特別抗告していた。
女性の社会進出や世論など最近の情勢変化を踏まえた判断が注目されたが、最高裁は決定理由で、社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、6年前の判断を変更すべきとは認められない―と判示した。
平成27(2015)年の最高裁の判断を通し、夫婦同一の姓について、男女差別を助長したり、人格を傷付けたりする制度ではないことも明確になっている。
最高裁はこの時と同様、
「制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべき事柄」
と指摘した。
平成8(1996)年に法制審議会が、夫婦で同じ姓にするか、旧姓をそれぞれ名乗るか選べる選択的夫婦別姓の導入を答申して25年経つ。
法制化に至らなかったのは、立法府が問題を放置しているというより、国民の十分な合意が得られないからである。
選択的夫婦別姓について、個人の自由で選択の幅が広がる―などと歓迎するのは考え違いである。
導入されれば夫婦同一姓を原則とした戸籍制度が崩れかねず、全国民に影響が及ぶ。
親子が別々の姓になる事態も起きる。
子供の姓を両親どちらの姓にするかなど、諍いや混乱も予想される。
平成29(2017)年に行われた内閣府の世論調査では、夫婦別姓が子供に与える影響について、6割以上が
「子供にとって好ましくない影響があると思う」
と答えていた。
社会情勢の変化と言うなら、旧姓が通称使用できる企業は増えている。
2年前の2019年には住民票やマイナンバーカードなどで旧姓を併記できるようにするため、政令改正が行われた。
パスポート(旅券)についても旧姓併記の申請が容易になるよう緩和された。
日本の伝統や文化に根差した家族制度の原則を崩す必要はなく、更に働きやすい職場作りなどに知恵を絞る方が現実的だ。
国や社会の基盤である家族の意義に理解を深くしたい。

夫婦別姓認めぬ規定、再び「合憲」 最高裁
2021/6/23 21:54
https://www.sankei.com/article/20210623-WTZ3HHNALJO5RNCEOMMHNPXNAI/
夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は違憲として、東京都内に住む事実婚の男女3組が起こした家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は2021年6月23日、規定は
「合憲」
とする判断を示した。
最高裁は平成27(2015)年にも夫婦同姓を定めた民法の規定を合憲としており、今回は2度目の判断。
15人中4人は違憲とする意見や反対意見を出した。
決定理由で最高裁は、家族が同じ姓を名乗るのは日本社会に定着しており、規定に男女の不平等はないとした平成27(2015)年の判断について
「社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、変更すべきとは認められない」
と指摘。
一方で、夫婦の姓を巡りどのような制度が妥当なのかという問題と、憲法違反かどうかを審査する問題とは
「次元が異なる」
とした上で
「国会で論じられ、判断されるべき事柄だ」
と、前回判断に続き、改めて立法での議論を促した。
合憲とした深山卓也裁判官、岡村和美裁判官、長嶺安政裁判官の3人は
「今回の判断は、国会での選択的夫婦別姓制度を含む法制度の検討を妨げるものではなく、国民の様々な意見や社会の状況変化などを十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待する」
と、共同補足意見で述べた。
一方、違憲とした宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官は
「結婚に対する当事者の意思決定は自由かつ平等であるべきで、規定は不当な国家介入に当たる」
などと述べた。
事実婚の3組は、婚姻届に
「夫は夫の氏、妻は妻の氏を希望します」
と付記して自治体に提出したが不受理となり平成30(2018)年3月、東京家裁などに家事審判を申し立てたが、却下された。
2審東京高裁でも棄却され、最高裁に特別抗告していた。
結婚後の姓を巡っては、平成8(1996)年に法相の諮問機関・法制審議会が、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を答申したが、法案提出には至らなかった。
2021年に入り自民党がワーキングチームを設置し本格的な議論が始まったが、実現への目処は立っていない。

■夫婦同姓の規定
民法750条は、結婚した夫婦は
「夫または妻の氏」
を名乗るよう規定。
戸籍法でも、結婚時に
「夫婦が称する氏」
を提出書類に記載するよう定めている。
昭和22(1947)年に改正される前の明治民法では
「家の姓を名乗る」
とされていた。
厚生労働省の統計では、平成27(2015)年に結婚した夫婦のうち、96%が夫の姓を選択。
改姓による社会的な不便・不利益が指摘されてきたことなどを背景に、夫婦が希望する場合には結婚後に姓を変えない
「選択的夫婦別姓制度」
の導入を求める声が強まっている。

夫婦別姓認めぬ最高裁判断「家族に一体感」安堵の声も
2021/6/23 20:45
https://www.sankei.com/article/20210623-CEFJAVRIAZIRPHCEU6S7ZFUAEI/
最高裁大法廷が2021年6月23日、6年前に続き、
「夫婦別姓」
を認めない民法の規定を
「合憲」
とする判断を示した。
この間の社会情勢や国民の意識の変化を踏まえつつ、国会に議論を委ねた形に。
「違憲」
となれば、新たな対応を迫られる現場からは安堵の声も聞かれた一方、申立人からは決定に不満が漏れた。
「結婚して姓が一緒になることで、家族としての一体感が生まれる」。
結婚生活40年以上になる東京都江東区の男性(71)は、合憲判断に納得の表情を浮かべた。
「子供のことを考えれば、両親が違う姓だと違和感を覚えるのではないか」
とも指摘した。
内閣府の平成29年の調査では、選択的夫婦別姓の導入に向けた法改正42.5%が賛成と答え、反対の29.3%を上回った。
ただ、賛成派に実際に別姓とするかを尋ねたところ、希望するが19.8%、希望しないが47.4%だった。
夫婦別姓が認められれば、子供への心理的影響も懸念される教育現場。
最高裁の決定に注目していた千代田区の幼稚園園長は
「途中で姓が変わった場合に、子供たちの間に動揺が広がらないようにケアするなど、新たな対応が必要になってくるだろうと思っていた」
と打ち明ける。
一方、先祖代々の墓を管理する寺院は、家族観の変化に危機感を抱いていた。
豊川稲荷(愛知県豊川市)によると、旧姓と結婚後の姓の両方を墓石に刻む女性が増えてきているといい、同寺の男性役員(53)は
「夫婦別姓になると、家という概念が失われる可能性がある」
「別姓が認められるのは難しいと思っていた」
と話した。
夫婦別姓には、財産をめぐる問題が持ち上がる可能性もある。
生命保険の受取人は原則戸籍上の配偶者や2親等以内の血縁者に限られており、ライフネット生命保険(東京)の担当者は
「姓が異なる場合、配偶者であることの確認が課題になる」。
同社では事実婚のパートナーらを保険金の受取人にできる仕組みを作っており、
「今後も社会の変化に合わせて検討していきたい」
と話した。

選択的夫婦別姓 社会混乱の引き金に 八木秀次×小島新一・大阪正論室長
ラジオ大阪ぶっちゃけ正論
2021/6/17 8:00
https://www.sankei.com/article/20210617-C2ELAEDPJ5MIHI5KLUORROEF4A/
■家族名が消える
小島
選択的夫婦別姓制度を導入すべきだという議論が昨年から国会で盛んになりました。
八木
選択的夫婦別姓とは、夫婦同姓、親子同姓という民法の考え方をふまえ、同姓にしたい人はこれまで通り同姓だけど、別姓にしたい夫婦は別姓を選んでもいい。
選択ができるという仕組みです。
一見よさそうに思えるんですよ。
小島
自分たち夫婦、家族は同姓でいたいと考えている人たちも、自分たちの同姓が守られるのならと考えてしまいますよね。
八木
ところが選択的であったとしても、その影響は別姓夫婦にとどまりません。
別姓では、1つの戸籍の中に2つの姓が存在することになります。
戸籍から、家族に共通の姓、ファミリーネーム、家族名がなくなるわけです。
小島
家族名がある戸籍とない戸籍、ある人とない人が共存することはないので、全体として家族名はなくなると。
八木
「氏名」の性格が根本的に変わるんです。
氏名とは、家族名に個人の名前を合わせたものです。
家族名がなくなれば、氏名は純粋な個人の名前になる。
すべての家族から家族名が奪われ、戸籍上、姓が同じ夫婦や子供も、各人の名前の上の部分が重なっているにすぎなくなる。
小島
たまたま上の名が同じということですね。
八木
ええ。
たいした問題ではないと思う人がいるかもしれませんが、社会制度や慣行に影響が及びます。
家族単位、世帯単位で主になされてきたものが崩れて個人単位になる。
■3つの姓から選択も
八木
別姓夫婦だと、子供の姓をいつ決めるのかという問題もあります。
兄弟姉妹で姓は統一なのか、バラバラなのか。
子供が1人だけだと、夫婦で子供の姓の取り合い、押し付け合いにならないか。
すでに結婚して同姓の夫婦も、1年あるいは3年の経過措置期間を設けて別姓を選ぶことができるとしています。
妻、あるいは夫が旧姓を名乗りたいとなった場合、夫婦の間に生まれた子供の姓の選び直しも行われることになる。
複数世代にわたる姓の変更を認めるのかという問題も想定されます。
子供のいる夫婦の妻側の母親、おばあちゃんが実家の姓に戻すという選択をした場合、連動して、妻の姓もおばあちゃんの旧姓に変えられるのか。
旧姓に戻す決断をしたおばあちゃんの娘である妻や孫は3つの姓から選ぶということになりかねない。
おばあちゃんの旧姓、夫の姓、妻の旧姓です。
小島
社会が大混乱しますね。
八木
自民党内では一時、選択的夫婦別姓の導入機運が高まりましたが、こうした現実的な問題点への理解が広まり、賛成意見はしぼみつつあります。

櫻井よしこ氏「保守政党らしからぬ提言に危機感」
2021/5/19 16:40
https://www.sankei.com/article/20210519-FRWVDCNTRVN7PLO57QDGPU2CK4/
選択的夫婦別姓制度の導入に慎重な自民党有志議員を中心に作る
「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」
が2021年5月19日、ジャーナリストの櫻井よしこ、麗澤大学教授の八木秀次の両氏を講師に招いて国会内で会合を開いた。
櫻井氏は
「保守政党としての自民党の矜持」
と題して講演。
安倍晋三政権から菅義偉政権に代わったことで党内に変化が生じていると指摘し、
「保守政党らしからぬ政策提言、法案の提出、そしてそれを通そうとする非常に強い動きに大変な危機感を感じている」
と強調した。
「保守は、よりよい社会や国をつくるために変化はするが、その本質は変えず守っていくことだ」
とも語った。
八木氏は、選択的夫婦別姓を導入した場合の課題について
「多くの人は子供の氏が決まらないことや、氏の取り合いが起こることを懸念して結婚や出産を躊躇する」
「逆に少子化が進む可能性がある」
と指摘。
「現在の戸籍制度の下では、旧姓の通称使用を拡充することが最も現実的な解決策だ」
と訴えた。
一方、会合ではLGBTなど性的少数者をめぐる
「理解増進」
法案についても取り上げられた。
法案をめぐっては、稲田朋美元防衛相が委員長を務める
「性的指向・性自認に関する特命委員会」
が中心となり、立憲民主党などと協議して今国会での成立を目指している。
これについて、山谷えり子参院議員は
「もともとの自民党案は国柄に基づいた内容だったが、超党派の議員立法でガラッと哲学がかわってしまった」
「自民党として認めるには大きな議論が必要だ」
と語った。

異論暴論
正論6月号好評販売中 やるべきことは「夫婦別姓」か?
2021/5/3 10:00
https://www.sankei.com/article/20210503-QHTMRK3OE5KWVOEUGDN5FVJWZE/
自民党内で選択的夫婦別姓をめぐる論議が起きている。
推進論者からは結婚に伴う改姓によって生じる生活上の不都合や不便が強調されるのだが、そもそも夫婦が別姓になれば親子は別姓を余儀なくされる。
これまでの家族観や結婚観は変わり、子供に与える影響も無視できないはずだ。
正論2021年6月号では
「やるべきことは『夫婦別姓』か?」
を特集した。
高市早苗衆院議員(自民党)は、自民党のこれまでの選挙公約の実現に向け、自身が起草した
「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」
の成立の必要性を強調する。
高橋史朗・麗澤大学大学院客員教授と池谷和子・長崎大学准教授の論文は、推進者たちの主張の見せ方がいかに一面的で、良い面ばかりが強調されたものかを考えさせられる。
ジャーナリスト、平野まつじ氏は夫婦別姓が現実になると、何がもたらされ、どんな弊害が起こるのか、具体的に考えた。
子供の最善の利益をどうするか、という視点がいかに蔑ろにされ、議論のあり方として極めて危ういかがわかる。
党内で提唱される
「婚前氏続称制度」
「ミドルネーム案(結合氏制度)」
など歯牙にかけるに値しない。
選択的であろうが、夫婦別姓の導入は必要ない。

正論
国民の大多数は夫婦別姓望まず 国士舘大学特任教授 日本大学名誉教授・百地章
2021/7/6 8:00
https://www.sankei.com/article/20210706-2KVYJSZJQNPT3OSBPGFYEMTHXA/
■最高裁は合憲判断を維持
2021年6月23日、最高裁大法廷は予想通り夫婦同姓(氏)制は憲法に違反しないと判断した。
しかも合憲とした裁判官は11人と前回の平成27年判決より1人増えている。
平成27年の最高裁判決は、氏には
「家族の呼称」
としての意義があり、その呼称を一つに定める夫婦同姓制には合理性があるとして現行制度を合憲とした。
その上で、夫婦の姓の在り方は国会で判断すべきだとして、国会の立法政策に委ねた。
今回の最高裁決定は、この平成27年判決の立場を維持し、夫婦同姓を定めた民法750条や戸籍法を合憲とした上で、その後の社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、合憲判断を変更する必要はないとした。
これも妥当と言えよう。
ところがマスメディアの中には各種世論調査を引き合いに、別姓支持が国民多数の声であり、夫婦別姓の実現へと誘導するような報道があふれている。
そのため同姓支持を主張することがはばかられるような雰囲気さえある。
確かに内閣府の調査でも別姓支持が平成24年には35.5%だったものが、平成29年には42.5%に増加しており、その傾向は否定できない。
しかし、平成29年の調査でも、
「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだ」が29.3%、
「夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが旧姓を通称として使用するのは構わない」が24.4%
あった。
つまり、同姓支持は計53.7%もあり、別姓支持を上回っている。
■別姓望む国民はわずか8%
さらに、別姓支持者の中で自ら
「別姓を希望する」と答えた者は19.8%
にとどまる。
つまり、別姓希望者は支持者(42.5%)の19.8%だから全体でいえば0.08、つまり国民のわずか8%が別姓を希望しているだけである。
平成24年の調査でも別姓希望者は全体の8%にすぎないから、別姓希望者は全く増えていないことが分かる。
そのようなごく少数の希望者のために、明治以来120年以上の伝統を有し、国民の中に広く定着している夫婦同姓制度を改正してしまうのは乱暴ではないか。
この問題は慎重な上にも慎重に対処すべきだ。
夫婦別姓希望者のために、現在では運転免許証、パスポート、さらにマイナンバーカードまで、旧姓を通称として併記することが認められている。
だから、日常生活における彼らの不便はほぼ解消しているはずだ。
にもかかわらず彼らが別姓にこだわるのはなぜか。
今回の決定において反対意見を述べた裁判官の中には、
「家族」
の定義は不明確であるとして否定的に解し、
「姓」

「個人の呼称」
の一部と考えて、夫婦同姓制度は
「個人の尊厳」
の侵害に当たると主張する者もいる。
■「家族呼称」か「個人呼称」か
確かに、憲法24条2項は家族について
「個人の尊厳と両性の本質的平等」
に立脚して制定するよう定めているが、憲法は
「家族の保護」
を否定するものではない。
それどころか、憲法制定時の議会においては
「従来の良き意味の家族制度はどこまでも尊重していかなければならぬ」
(木村篤太郎司法大臣)
との答弁がある。
わが国が批准している国際人権規約でも
「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し…与えられるべきである」
としている。
それ故、わが国の家族制度は、
「個人の尊厳」

「家族の保護」
によって支えられていると見なければならない。
だからこそ、平成27年の最高裁大法廷判決も、
「家族は社会の自然的かつ基礎的な集団単位であり、氏には家族の呼称としての意義があり、氏の在り方については国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきである」
とした。
それでは、家族制度の基本にかかわる
「姓(名字)」
について、国民はどのように考えているだろうか。
先の内閣府の調査(平成29年)によれば、国民の56.9%は姓を
「先祖から受け継がれてきた名称」
ないし
「夫婦を中心とした家族の名称」
と答えている。
これに対して姓は
「他の人と区別して自分を表す名称の一部」
と考える者は、全体のわずか13.4%にすぎない。
つまり、姓を
「個人の呼称」
の一部と考え、
「個人の尊厳」
を強調する反対意見は、姓を先祖伝来の
「家」

「家族」
の呼称と考える多数国民の意識と相当ズレていることが分かる。
以前、本欄で述べたように夫婦の姓をどう決めるかは、個人個人の問題であると同時に、わが国の家族制度の基本にかかわる公的制度の問題である。
しかも選択的夫婦別姓制は
「ファミリー・ネームの廃止」
につながり
「戸籍解体」
の恐れさえある(「『戸籍の解体』を招く夫婦別姓制」2021年3月29日)。
したがって、自らは希望しないにもかかわらず、
「選択的だから」
「望む人が別姓を名乗るだけだから」
などといった安易な発想で賛成してしまうのは、推進派を利するだけであり、非常に疑問といわざるを得ないであろう。

次世代の党、夫婦同姓規定「合憲」判断を「歓迎」
2015/12/16 19:12
https://www.sankei.com/article/20151216-JTCPST5AN5IUNNFTBEMB2AHLCU/
次世代の党は2015年12月16日、最高裁が夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断したことについて、中野正志幹事長名で
「判断を歓迎する」
との談話を出した。
談話では
「日本社会においては、夫婦、親子が同じ姓を名乗ることが家族の基本であり、家族の一体感を高めてきた」
「一方、夫婦別姓を求める運動では、家族が同じ姓を名乗ることを子供が望んでいることは省みられていない」
と指摘。
その上で
「日本は、既に職場などでの通称使用(旧姓使用)が否定されない社会になった」
「旧姓に拘りを持つ方は通称を用いることが可能であるし、結婚時に夫が妻の姓を選択することも可能である」
としている。

夫婦同姓規定は合憲 再婚禁止6カ月は違憲 最高裁が初判断
2015/12/16 15:24
https://www.sankei.com/article/20151216-EIZGWR6BTRIYTNB6YH7JAHKFYU/
【産経新聞号外】夫婦同姓「合憲」[PDF]
https://www.sankei.com/module/edit/pdf/2015/12/20151216iken.pdf
民法で定めた
「夫婦別姓を認めない」
とする規定の違憲性が争われた訴訟の上告審判決で最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は2015年12月16日、
「規定は合憲」
とする初めての判断を示した上で、原告側の請求を棄却した。
原告は
「時代の変化に従って選択的夫婦別姓を認めるべきだ」
などと主張したが、
「夫婦や親子など家族の在り方が損なわれる」
との慎重論は多く、世論調査も賛成・反対が拮抗してきた。
一方、
「女性は離婚後6カ月間、再婚できない」
とする規定を巡る訴訟で、大法廷は
「規定は違憲」
と初判断。
100日間を超える部分は違憲だとしたことで、国は法改正を迫られる。
最高裁が法律を違憲と判断したのは戦後10件目。
夫婦の姓について原告側は
「選択的夫婦別姓を認めないことは、婚姻の自由を不合理に制約していて、両性の本質的平等に立脚していない」
と主張。
「規定は違憲で、国会の高度な立法不作為に当たる」
と指摘していた。
国側は
「民法では、結婚後にどちらの姓を名乗るかについて、夫婦の協議による決定に委ねている」
「婚姻の自由や男女の平等を侵害していない」
と反論。
規定に違憲性はなく国会の立法不作為にも当たらないと主張していた。
両規定を巡っては、法相の諮問機関の法制審議会が平成8年、選択的夫婦別姓を導入し、再婚禁止期間も100日に短縮するよう答申した。
しかし、国会や世論の反対が多く、改正は見送られた。
民主党政権時代にも改正の動きがあったが、閣内の反対などで法案提出には至っていない。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/726.html#c27

[政治・選挙・NHK294] この都知事選は政権交代前哨戦 あと10日間、何が起こるか まだ分からない(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
38. 秘密のアッコちゃん[415] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月28日 22:28:41 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[528]
<■221行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
東京都知事選 女の戦い カビ饅頭2つに割って誰が食う 小池百合子対蓮舫という究極の選択ー東京はどうなるのか
WiLL2024年8月号
元東京都選挙管理委員会事務局長・元東京都環境公社理事長 澤章
東京都議会議員 上田令子
■小池知事の作戦ミス
★澤
上田先生とお会いするのも久しぶりですね。
都庁の職員時代には、まさかこうして『WiLL』で対談をすることになるとは夢にも思いませんでした。
★上田
お互い”小池批判の急先鋒”ですから(笑)。
こうして対談できて嬉しいです。
★澤
2024年6月20日、東京都知事選挙が告示されました。
小池百合子知事は2024年6月20日、都議会定例会の最終日に都知事選挙への出馬を表明した。
当初、定例会の初日に表明をすると見られていましたが、大幅に遅れました。
これは先手を打った蓮舫氏の出馬表明が世間の耳目を集めたからでしょう。
★上田
”小池劇場”を格好よく幕開けしようと画策していたところ、自分よりも若く、しかもタレント出身の蓮舫氏が注目を集めたので、出鼻を挫かれたわけです。
さぞ、悔しがったに違いありません(笑)。
小池知事は蓮舫氏の出馬表明に焦り、自分をアピールするため、すぐさま都庁保育園の視察に行きました。
その時、小池知事が子供たちに
「おいで」
と手招きしたら、子供が嫌がって逃げたという”放送事故級”の映像がテレビで流れています(笑)。
★澤
お得意のパフォーマンスが失敗に終わったわけですね。
★上田
実は保育園視察のパフォーマンスは、2016年の最初の知事選の際も江戸川区の保育園で行っています。
これがマスコミにも大きく報道されたので、”成功体験再び”という狙いで、8年前と同じジャケットを着て都庁保育園へ視察に行ったのでしょう。
★澤
8年前と同じジャケットですか(笑)。
★上田
小池知事は物持ちが良いので、ゲンを担いで同じ物を着たのでしょう。
★澤
更に小池知事は自分のやってきた事をアピールするため、生成AIで自分の似姿を作り、
「AIゆりこ」
を使ってSNS上で自分の実績を流しました。
★上田
相変わらず自分をアピールすることには余念がない(笑)。
★澤
上田先生は小池知事が出馬表明した定例会最終日に、知事への不信任案を提出しています。
★上田
結局、不信任案に賛成したのは提出者の私1人でした。
2017年の都議選で、小池知事に一杯食わされた自民党も、ここ数年は小池知事に擦り寄っています。
今回の知事選でも小池知事支援を表明しており、不信任案には反対。
ここ数年の自民党を見ていると、本当に情けなく感じます。
しかし自民党以上に酷いのは、立憲民主党と共産党です。
この2党は都知事選で蓮舫氏を支援するのに、不信任案に反対しています。
もし不信任案が通った場合、知事は対抗手段として10日以内に議会を解散できます。
そうなると、都議会議員選挙になりますから、選挙準備の出来ていない彼らは自分の身が危うくなる。
つまり、自己保身のための反対です。
★澤
都議会も保身ですが、小池知事の出馬も同じです。
「カイロ大卒」
という”大嘘”を貫き通すためにも、小池知事は政治家という立場を続けている限りは、カイロ大側も日本の首都の知事が卒業しているというステータスとして利用価値があるので、口裏を合わせるはずですから。
★上田
アラブはギブアンドテイクの社会なので、旨味がなければ切り捨てられます。
小池知事がニュースキャスターのままなら、エジプト大使館も、わざわざフェイスブックで彼女の卒業証明なんてしなかったでしょう。
カイロ大卒の虚飾を続けるためにも、小池知事は都知事選で3選を目指すしかないのです。
■”アラブ人モドキ”
★澤
小池知事の動きを見ていると、小池知事側から自民党・公明党に擦り寄っているように見えます。
小池知事自身も、自民党の組織票がなければ、都知事選での勝利は厳しいと考えているのでしょう。
★上田
2016年の都知事選の時は、自民党東京都連を
「ブラックボックス」
と非難し、”反自民”を貫いて当選しましたが、今回は反自民の旗を蓮舫氏が掲げていますから、反自民票は蓮舫氏に流れやすい。
★澤
小池知事は”選挙の鬼”ですから、如何に票を得るかという策略には抜かりがありません。
各市町村の首長が応援してくれれば有権者が動いてくれると目論見、応援を要請しています。
ところが、その応援要請が何故か
「各首長から出馬を依頼された」
という
「出馬要請」
に掏り替わって報道されました。
★上田
これは小池知事による見事な”自作自演”です。
★澤
小池知事は
「応援要請はしていない」
と否定していますが、日野市の大坪冬彦市長が
「元々は小池知事からの応援要請だった」
と”暴露”しています。
どうしてこのような暴露が出るのかと言えば、東京都には三多摩格差(特別区と多摩地域の間に存在する社会基盤の格差)があり、多摩地域の首長が不満を持っているからです。
小池知事は臆病な性格なので、蓮舫氏の出馬で自分が不利なるのではないかと過剰に反応し、各自治体の首長に泣きつきました。
2020年の都知事選の際の学歴詐称疑惑を巡る騒動の時、沈静化のためにエジプト大使館に泣きついたのと同じ構図です。
★上田
小池知事は”アラブ人モドキ”なのです。
アラブ人は自ら脅す分、脅されることにも強い。
しかし、”モドキ”の小池知事は中途半端にエジプトにいたので、脅すことは出来ても、脅されるのには弱いのでしょう。
澤さんは都知事選の行方をどう見ますか?
★澤
小池都政の8年間、ピンポイントでの批判は多々ありますが、”政治とカネ”といった大きなスキャンダルはありません。
すると、多くの都民が
「小池さんでいいんじゃないの」
となるでしょう。
蓮舫氏の出馬会見も見ましたが、余りに小池知事に攻撃的でした。
国政と違い、都知事選では対立構図を鮮明にしても有権者には響きません。
「私ならこうする」
という具体的な政策で小池知事と戦わなければ、蓮舫氏が支持を広げることは難しいでしょう。
更に蓮舫氏は共産党との共闘を進めているので、共産党を嫌う
「連合東京」
も小池知事支援を決めています。
加えて、小池知事には現職の強みもあり、いくら知名度が高い蓮舫氏でも小池知事に勝利するのは至難の業です。
★上田
確かに蓮舫氏が小池知事に勝利するのは難しいでしょう。
しかし、私が地元を回っていると、映像に映る姿がふてぶてしいという理由で小池知事を嫌う声も多く耳にします。
私は当初、小池知事を圧勝させないことで力を削ぎたいと考えていました。
「辛くも勝利」
となれば、自公に頭が上がらなくなり、好き勝手な事が出来なくなるからです。
前回の選挙では366万票の支持を得て圧勝したので、その自信が
「私がいないと、政策実現が出来ないでしょ」
と言わんばかりに、”暴走”と”女帝化”に繋がりました。
いずれにしても小池知事、蓮舫氏。
カビた饅頭を2つに割って左右どちらかを食べろと言われても・・・という虚しい選択です。
(中略)
★上田
石原慎太郎都政下で積み上げた財政調整基金1兆円を使い果たした小池知事と都民ファーストの会(以下、都ファ)の議員。
★澤
都の財政調整基金がコロナの時に底をついてしまいましたが、小池知事が協力関係にあった公明党の要望を聞くために予算を膨張したのが原因で、都民を馬鹿にしています。
■女帝による陰湿なイジメ
★上田
お互い小池知事とは直に接してきていますが、澤さんは知事の人間性に対してどんな印象をお持ちですか?
★澤
ネチネチしたパワハラ気質だと感じました。
豊洲市場の追加対策工事がひと段落し、いよいよ1年後に豊洲移転が決まった直後、小池知事と市場当局の管理職との夕食会がセッティングされました。
私を含めた市場当局の管理職の面々はこれまで小池知事と移転について散々揉めてきましたから、遂に知事と和解できると手を叩いて喜びました。
ところが、職員が豊洲移転の詳細が書かれた資料を小池知事に見せる前にマスコミと議会に配ってしまったことで、知事は激怒。
小池知事に呼び出され、
「なぜ見せなかったのか」
とお説教が始まりました。
お説教が終わり、部屋を出ようとした際
「澤さん、今日は楽しい夕食会になるでしょう」
「でも、私は用事ができたので、野田(特別秘書を務めた小池知事の元側近・野田数(かずさ))を代わりに行かせます」
と言われました。
私は小池知事の静かなる怒りに背筋が凍るような感覚を覚えました。
★上田
小池知事が冷徹な口調で言い放った様が目に浮かびます。
澤さんが東京都環境公社の理事長を辞められたのも、事実上の”排除”でしたね。
★澤
私は理事長在任中に『築地と豊洲』(都政新報社)という本を出版し、小池都政を批判していましたから、目障りな存在だったのでしょう。
都庁人事の権限を握る副知事から呼び出され、クビを告げられた時に黙って従うのも嫌だったので、理由を聞きました。
すると、
「お前は常識がない」
「都知事選の前にマスコミに出て、雑誌・メディアで小池知事を批判している」
「これは都庁OBとしてあるまじき行為だ」
と言われました。
事実を主張しただけなので怒りで体が震えましたが、それ以上に呆れて何も言えませんでした。
★上田
まるでどこかの独裁国家みたいですね。
東京都に長年貢献し、知識もある澤さんをクビする一方、ただのイエスマンを要職に起用する。
小池知事は自分より目立たず、ほどよく利用できる人を重用します。
都ファの議員を見ていても、小池知事よりも目立って排除されないよう、服装も発言も地味に徹しています。
★澤
女帝に対し、皆、戦々恐々としている証拠です。
★上田
私は2016年の都知事選で小池知事を支援した際、仲間の無所属議員を集めて雨の中ポスター貼りなどの支援をしたにもかかわらず、”グリーン旋風”が吹き荒れた途端に街頭演説では、きっかけを作った私たちがマイクを持つことを許しませんでした。
これは手柄を全て小池知事自身と側近のものにしたいからで、私をはじめとした無所属議員は応援したのに”排除”されたのです。
私が媚びへつらうような態度を取らなかったので、面白くなかったのでしょう。
★澤
1度小池知事に疎まれると、”手を変え、品を変え”虐められます。
最近では、SNSで安易に都政関連の情報をアップすると都の職員がチェックしており、発信元の”犯人探し”が始まります。
私も1度、SNSで都庁の内部に関するコメントを書いたら、
「消して下さい」
と現役管理職から言われたことがあります。
このように今の都庁は、監視の目が常に光っている職場と化してしまった。
★上田
まるで言論統制ですね(笑)。
都庁に
「職員目安箱」
があり、小池知事は職員ファーストを掲げ、
「直接私に言って下さい」
と設置しましたが、そこに意見を投稿した職員が犯人探しされたという話も私の元に届いています。
都庁で何かあれば、秘書は必ず守るので、私のホームページにある問い合わせホームで相談してほしいと思います。
■小池知事最大の愚策
★上田
小池知事は人間性は疎か、都知事としての実務能力も欠いています。
安倍晋三元首相が『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)で、
「小池知事は実務が苦手」
と述べていましたが、当初の公約である
「7つのゼロ」
に関して、
「ペットの殺処分ゼロ」
しか達成出来ていないことがその象徴です。
しかし、ペット殺処分ゼロに関しても、譲渡可能なペットを殺すことを
「殺処分」、
病気の動物の処分を
「安楽死」
としているので、結果的に殺さてしまうペットがゼロになっているわけではありません。
★澤
私が小池知事の愚策としてまず思い浮かぶのが、多くの混乱を生じさせた築地市場の豊洲移転問題です。
また、直近のものでは2023年1月に突如宣言した0歳から18歳までの東京在住の子供に月5000円の支給を行う
「018サポート」
です。
018サポートは1200億円の予算がかかっていますが、議会で熟議されないまま政策が通ってしまった。
これでは議会制民主主義の体をなしていません。
しかも、マスコミから財源についての批判がないことも不自然です。
国の政策の場合、防衛費にしても少子化対策にしても財源が問題になり、マスコミから批判を浴びます。
マスコミは岸田政権と小池都政を対比させたいがために小池知事の財源問題に対しては”ダンマリ”を決め込む。
★上田
月額5000円を所得制限なしに子育て世帯に支給する018サポートは、2023年1月4日、都庁の仕事始めの午前中に突如発表されました。
これは所轄である福祉保健局の局長も知らなかった話です。
実は同日午後、岸田政権が異次元の少子化対策を発表することを受けて、小池知事は国より先に目立つ意図もあり、慌てて発表したのです。
018サポートが急に決まったこともあり、行政上の手続きが追い付かず、あろうことかこの支援を一番必要とする生活保護世帯が、恩恵を受けられないことが発覚しました。
小池知事が慌てて収入認定からの除外要請を依頼する手紙を、厚生労働大臣に送る事態に発展。
更に、案内チラシを17万件もの転居者に誤って送るミスまでありました。
この誤送付で、多額の血税が郵送費等で消えています。
それについて、私は情報開示請求をしています。
私が最も驚いたのは、小池知事の政策設計が悪かったにもかかわらず、あたかも政府に原因があるかのような報道をさせることで責任転嫁する始末です。
★澤
岸田首相と比較して自分がどれだけ目立つかということだけで018サポートを始めたので、まさに選挙を意識した”バラマキ”です。
小池知事はコロナ禍でも意味もなく国と対立構造を作りました。
また、忘れていけないのは、環境問題に関するパフォーマンスのため、新築住宅に太陽光パネルの設置を義務付ける条例改正をし、大混乱を引き起こしたことです。
都民の利益を考えずに、自分ファーストで突っ走っています。
★上田
本誌『WiLL』でも散々指摘してきましたが、太陽光パネルは8割が中国製です。
しかも、新疆ウイグル自治区での強制労働によって作られており、欧米では中国への制裁を発動しているにもかかわらず、小池知事は強硬に進めています。
最近新築戸建て住宅の価格がパネル設置で100万円上昇するということが報道され、それ見たことかという状況になりました。
更に、元日に発生した能登半島地震でも、経産省が、落下したパネルに触らないよう異例の注意喚起をするなど、危険性が明らかになりました。
万が一、東京都で首都直下型地震が起きてしまったら、目も当てられないような2次災害が起こりかねません。
★澤
自分のパフォーマンスのために都民に被害や犠牲が出かねない判断です。
都庁OBとして、都民のためにも職員のためにも小池知事には1秒でも早く都庁から去ってほしい。
皆が戦々恐々としながら、何も言えないという状況は異常です。
この状況を改善しなければ、都民のためにも東京の街のためにもなりません。
でも蓮舫氏はなあ・・・。
★上田
嘘つきは泥棒の始まりと言われているように、私たち日本人の美徳は正直であることです。
にもかかわらず、日本の首都・東京の顔である知事に学歴詐称疑惑が持ち上がっているのは如何なものか。
カイロ大学とエジプト政府に学歴を証明してもらって弱みを握られていることも外交上、”百害あって一利なし”です。
小池知事にはこの責任をきっちり取って頂きたいです。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/734.html#c38
[政治・選挙・NHK294] 性的暴行容疑で逮捕の“関西検察のエース”は森友事件全員不起訴時の検事正だった(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
30. 秘密のアッコちゃん[416] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月29日 12:04:47 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[529]
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もっと沖縄の平和を考えよう 
風を読む 論説委員長・榊原智
2024/6/29 9:00
https://www.sankei.com/article/20240629-NORXDJZFRVP7FM6QHPF6PM46IY/
沖縄全戦没者追悼式とそこでの玉城デニー知事の
「平和宣言」
を伝えた毎日新聞2024年6月24日付朝刊の1面トップ記事に心底驚いた。
大見出しで
「自衛隊増強 憂える沖縄」
とあったからだ。
記事は
「中国が軍事力を強化する中、米軍基地の集中に加え、自衛隊の増強も進む状況に、玉城デニー知事は『平和宣言』で『県民は強い不安を抱いている』と憂慮を示し、外交による緊張緩和を求めた」
と報じた。
平和宣言が
「抑止力の強化が却って地域の緊張を高めている」
とした点も引用した。
知事の宣言も記事も、抑止力の重要性が分かっていない。
まるで民主党政権の鳩山由紀夫首相(当時)のようだ。
先進7カ国(G7)などの民主主義国が安全保障政策を展開する上での常識を踏まえず、自国の防衛努力を否定的に捉える誤謬(間違えること。間違い)にも陥っている。
自衛隊増強にブレーキがかかって喜ぶのは、中国、ロシア、北朝鮮という周囲の専制主義国の政府と軍だと気付くべきだ。
沖縄を含む南西諸島は防衛の最前線になっている。
県民が不安に思うことは自然だ。
だからと言って、抑止力向上策である自衛隊増強を否定的に見て
「外交での緊張緩和」
を代替策として持ち出すのは感心しない。
防衛力と外交力は、沖縄を含む日本の平和を守る車の両輪だからだ。
片方では済まない話だ。
岸田文雄首相は令和4年12月、国家安保戦略などの閣議決定時の会見で
「まず優先されるべは、我が国にとって望ましい国際環境、安保環境を作るための外交努力だ」
「同時に、外交には裏付けとなる防衛力が必要であり、防衛力の強化は外交に於ける説得力にも繋がる」
と述べた。
その通りで、世界の民主主義国の常識だ。
中露、北朝鮮は国際法を守らない
「力の信奉者」
だ。
彼らとの外交には、民主主義国側にも十分な防衛力が欠かせない。
平和宣言も毎日の記事もこの肝心な所を踏まえない。
もう1つ、理解していない点がある。
基地負担は確かに問題だが、中国の脅威はそれよりも遥かに深刻という点だ。
自衛隊や米軍が沖縄から姿を消したり、弱くなったりすれば沖縄はすぐさま、南シナ海の岩礁を巡り中国から深刻なハラスメントを受けるフィリピンと同じ目に遭い、その後、侵略されるかもしれない。
平和を守る方策をもっと真剣に考えてもらいたい。

主張
沖縄「慰霊の日」 県民守り抜く決意新たに
2023/6/24 5:00
https://www.sankei.com/article/20230624-S2KUOFTFP5POJFI6JUHZJUV34M/
沖縄戦の終結から78年となる
「慰霊の日」
を迎えた。
最後の激戦地となった糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園では2024年6月23日、県主催の沖縄全戦没者追悼式が営まれた。
激しい地上戦で日米合わせて20万人以上が犠牲になった。
県民は4人に1人が亡くなった。
日本軍将兵は死力を尽くし、九州などから2500機以上の特攻機が出撃した。
その犠牲の上に今の平和がある。
全ての戦没者に哀悼の誠を捧げると共に、沖縄を2度と戦場にしない決意を新たにしたい。
追悼式に出席した岸田文雄首相は挨拶で、戦没者を追悼し、日本を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しいとして、
「世界の誰もが平和で心豊かに暮らせる世の中を実現するため、不断の努力を重ねる」
と誓った。
沖縄の在日米軍基地を巡っては
「基地負担の軽減に全力で取り組む」
と語った。
玉城デニー知事は平和宣言で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設断念などを
「求め続ける」
と述べた。
防衛を巡っては、南西諸島を含む日本の防衛強化に向け、政府が2023年12月に閣議決定した安保関連3文書について
「県民の間に大きな不安を生じさせている」
と批判した。
県民を守るべき立場にある玉城氏が、これら2つの考え違いを追悼式で披露したのは残念だ。
普天間飛行場は市街地に囲まれている。
周辺で暮らす県民の命を守るため移設は急務だ。
玉城氏や県の辺野古移設反対が危険性除去を妨げている。
安保3文書は防衛力の抜本的強化を図る内容だ。
沖縄を含む日本を攻撃しようとする国が現れる場合への備えである。
それを不安の原因と難じるのはおかしい。
警戒すべきは、例えば中国の動きである。
2024年6月4日付の人民日報は、習近平国家主席が沖縄の島である尖閣諸島(石垣市)に関連し、
「琉球」
と中国の交流の深さに言及したと報じた。
中国に狙われているのは沖縄そのものではないかという警戒感を持つ必要がある。
台湾有事が沖縄へ戦火をもたらす恐れもある。
玉城氏は中国や北朝鮮の脅威を直視し、政府や自衛隊と協力して県民を守り抜く態勢を整えてほしい。
それこそが、平和を守る抑止力を構成するのである。

<主張>沖縄慰霊の日 史実を歪めず追悼したい
社説
2024/6/23 5:00
https://www.sankei.com/article/20240623-IPPDTEFI4NP35EH2M4YLND2UFM/
沖縄戦の終結から79年となる
「慰霊の日」
を迎えた。
最後の激戦地となった沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園では2024年6月23日、
「沖縄全戦没者追悼式」
が営まれる。
熾烈な地上戦となった沖縄戦では、日本の軍民約18万8000人が亡くなった。
米軍は約1万2000人が命を落とした。
その犠牲の上に現在の平和があることを思い、全ての戦没者に哀悼の誠を捧げたい。
同時にこの平和を、守り抜くことを誓いたい。
沖縄戦は、沖縄の慶良間諸島に米軍が上陸した昭和20年3月26日から、摩文仁で守備隊の牛島満第32軍司令官が自決し、組織的戦闘が終結した1945年6月23日まで3カ月間続いた。
沖縄を守ろうと九州などからも陸海軍の特攻機2571機や空挺隊が出撃した。
県内の中等学校生らも鉄血勤皇隊やひめゆり学徒隊などに動員され、多くが戦没した。
秋待たで 枯れ行く島の 青草は 皇国の春に 甦(よみがえ)らなむ
牛島司令官の辞世の句だ。
沖縄は戦後27年間に渡り米国の統治下に置かれ、春が訪れたのは本土復帰を果たした昭和47(1972)年である。
その苦難の歴史にも思いを馳せたい。
ところが最近、那覇駐屯の陸上自衛隊第15旅団のホームページに牛島司令官の辞世の句が掲載されているのは問題であるとし、地元メディアや左派勢力が陸自へのバッシングを繰り広げている。
地元メディアは
「日本軍を美化」
「皇国史観だ」
などと批判しているが、辞世の句は、沖縄の再興を祈って詠んだものだ。
平成30(2018)年からホームページに掲載されているが、本土から最近沖縄に移住した記者が地元紙で取り上げるまで、特に問題になっていなかった。
沖縄では毎年、慰霊の日が近付くと一部の左派勢力が日本軍将兵を貶めるようなキャンペーンを展開し、それを米軍基地などへの反対運動に結び付ける傾向がみられる。
しかし多くの日本軍将兵が沖縄の地で国に殉じたのは事実だ。
県民も軍に協力し、懸命に戦った。
戦後のイデオロギーで史実を歪めるのは間違っている。
それは戦没者を慰霊することにも、沖縄の平和を守ることにも繋がらない。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/733.html#c30

[政治・選挙・NHK294] 都庁を牛耳る詐欺師「小池百合子」の最大の問題 適菜収「それでもバカとは戦え」(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
37. 秘密のアッコちゃん[417] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年6月29日 16:40:53 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[530]
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「国籍の嘘」で蓮舫は政治家失格
Hanada2024年8月号 評論家 八幡和郎
■場当たり的な説明に終始
蓮舫参議院議員が東京都知事選挙に立候補を表明してい以来、二重国籍(多重国籍)への関心が再燃し、
「第1発見者」
である私は、様々な機会に意見を述べている。
二重国籍問題が激しく再燃するというのは、蓮舫陣営にとって想定外だったようだ。
「小池氏の抱える『学歴詐称疑惑』に対比させる形で、決着が着いたはずの蓮舫氏の『二重国籍問題』が蒸し返されている」
といった論調もあちこちに見受けられる。
しかし、蓮舫氏の二重国籍を能天気に擁護した記事を書いた人がヤフコメの世界で見事に炎上したのを見て、最初の指摘から8年間、私としても蓮舫氏の事件と二重国籍の弊害を地道に説いてきたことの成果が浸透しているのが感じられて嬉しい。
問題が発覚した2016年は
「何が悪い」
「政治家だからおかしいが、一般人なら問題ない」
と言う人が多かった。
メディアは人権侵害になるのではないかなどという見当外れの懸念を持っており、おっかなびっくりでほとんど取り上げなかった。
蓮舫二重国籍発覚事件とはどういう事件だったのか、顛末を改めて振り返り、その過程で見せた蓮舫氏の場当たり的な説明の酷さや、残ったままの疑惑、そして、なぜ二重国籍はいけないのかを、提起したい。
蓮舫氏は、台湾人(中華民国籍)の父親と日本人である資生堂の花形美容部員だった斎藤桂子さんの長女として、1967年に東京で生まれた。
祖母の陳杏村は台南地方の出身で、未亡人となった後、東京で洋裁を学び、軍関係者の知己を得て、日華事変後の上海で暗躍した政商だった。
戦後は、蓮舫氏の父で同志社大学出身の謝哲信と共に、台湾バナナ輸入の利権を握って日本政界で暗躍。
政治家にダミー会社を創らせて政治資金を渡す手法を使い、国会でも公明党の黒柳明参議院議員から追及されたことがある。
■「二重国籍」を自称
蓮舫氏は3人きょうだいで、幼稚園から大学まで青山学院で学んだ。
高校生時代からタレント活動をしてクラリオン・ガールとなったり、男性週刊誌のグラビアなどで人気を博し、テレビキャスターとなった。
子供の頃は、夏休みなど台湾に長期滞在していた。
1993年、田原総一郎氏のスタッフ的な存在だったジャーナリストの村田信之氏と結婚。
夫婦で北京に留学し、それ以降、中国政府の外交にも理解を示すようになる。
この留学のお世話をしたのは高野孟(はじめ)氏らしい。
タレント時代には、中国籍だとか二重国籍だとか自称していたが、2004年に参議院選挙東京都選挙区から出馬し当選した時には、選挙公報に
「1985年、台湾籍から帰化」
としていた。
誕生時の戸籍法では父親の国籍にされたから、台湾(中華民国)籍の謝蓮舫だった。
ところが17歳の時、国籍法の改正で、22歳までに両親どちらかの国籍を選択する条件の下で母親の日本国籍を取得出来るようになり、それを行使して合法的な二重国籍になった。
その時に、斎藤蓮舫という名も17歳にして獲得した。
「帰化」
と選挙公報に書いたが、法律用語としては間違いで、
「国籍取得」
である。
私が蓮舫氏をネットメディア「アゴラ」で追及し始めたのは、蓮舫氏の出馬が噂された2016年の東京都知事選の時だ。
私は「アゴラ」でこう書いた。
「帰化した人が政治家になっても構わないが、帰化した国の文化への愛着を示すとか、母国との関係で日本の国益を強く支持することが求められるのが世界の常識である」
「蓮舫氏はどちらでも失格だ」
こういった見方をしたのは、フランスでのアルジェリア系などの政治家や官僚に興味を持ち、彼らから話を聞いて研究していたからだ。
その後、蓮舫氏が野党第1党・民進党代表選に立候補したので、尖閣諸島についての問題発言とか、和服を着たこともなく日本文化への愛着がないといった視点から批判すると共に、蓮舫氏は日本国籍を選択した経緯と台湾籍離脱についても、日付も含めて説明すべきだと指摘した。
■言い訳の数々
ところが、蓮舫サイドは夕刊フジからの問い合わせにも答えず、慌てた様子だった。
私は、22歳までに国籍を選択はしたにしても、台湾籍からの離脱をしておらず法に反する形でそれなりの期間、あるいは、現在に至るまで二重国籍の可能性がある、と指摘した(2016年8月29日)。
それに対して、蓮舫氏は
「父親が台湾籍離脱手続きをしてくれたはず」
「(本人の名も載ったはずの)父親の台湾の戸籍は見たことがない(遺産相続しているので見なかったとは考えにくい)」
「私は18歳(実際は17歳)で日本国籍を選んだ」
「台湾籍をいつ抜いたかは台湾当局に問い合わせ中」
などと反論。
タレント時代の二重国籍発言については、深く考えずにしたとか、記事の原稿を確認しなかったとか、言を左右にした。
ただ、この段階では、
「日本国籍の選択」
をし、日本の戸籍法上の手続きは完了し、台湾の国籍を離脱するべきなのが遅滞しているだけだと、私も含めて思っていた。
離脱手続きを強い義務にしていないのは、ブラジルのように国籍離脱を許さなかったり、インドのように多大な時間や費用が生じたりするケースがあるからだ。
しかし、台湾では国籍離脱はそんなに難しくない。
ここで、更なる
「証拠」
が見つかる。
台湾籍を離脱したら台湾の官報に記載されるはずだが、
「謝蓮舫」
の国籍離脱の公示はされていないことを、ネット民が突き止めたのだ。
台湾の官報はネットで公開されていたので、過去の離脱記録を調べるのは何人かで手分けしたらさほど難しくなかった。
そこで、蓮舫氏は
「台湾籍を抜いたかどうかは確認中だが、抜いていない可能性があるので改めて離脱申請をした」
と言う(2016年9月6日)。
死んだ父親の責任にしたのである。
当時、民進党党首の党員・サポーター投票が続いていたから、それに影響すると困ると思ったのだろう。
締め切りの翌日になって、
「台湾当局から国籍が残っているという連絡を受けたので離脱手続きを進めたい」
とやっと公表した(2016年9月13日)。
■親兄弟も知らなかった?
ここに至って、蓮舫氏の説明全体が信用できる状態ではなくなり、蓮舫氏が国籍離脱手続きをしていないとの疑問も生じたので、アゴラ編集部から
「国籍選択をしたことを証明する書類」
「台湾旅券」
「台湾からの国籍離脱証明」
の3点セットを公開するようにという公開質問状を出した(2016年9月29日)。
そして2016年10月15日に、蓮舫氏は2016年9月23日に台湾の
「国籍離脱証明書を目黒区役所に提出」
して戸籍法に定める国籍選択をしようとしたが、台湾と国交がないことを理由に、もう1つの方法である
「国籍選択宣言」
の方法を選ぶように指導されて、その手続きをしたと語った(この時点ではいつか不明だったが、後に2016年10月7日だと判明)。
17歳から22歳までは合法的な二重国籍だった蓮舫氏は、その後は法に定められた
「日本国籍の選択」

「台湾籍からの離脱」
のどちらもしていない
「法的義務に反した」
二重国籍者だったことが判明したのである(ちなみに、この状況の法的説明としては、違法であるとか違法でないとかいう言葉に馴染まず、法的義務に反した状態と言うのだそうだ)。
つまり、2016年10月7日までは、台湾人謝蓮舫が日本国籍も併せ取って斎藤蓮舫、次いで村田蓮舫という名を獲得しただけだったのである。
これほど嘘が連鎖して、バレルと違う説明を繰り返せば、上記の説明すら信じてもらえないのは当然だ。
そこで、追い詰められた蓮舫氏は、翌年2017年の7月18日になって決断した。
つまり、日本国籍選択宣言日を
「平成28(2016)年10月7日」
と明記された戸籍謄本の複写の一部、2016年9月13日付発行の台湾籍の
「国籍喪失許可証書」、
離脱手続きのために提出した台湾の子供時代の旅券などを公開した。
しかし、今も多くの疑問がある。
最大のものは、二重国籍状態であることを知らなかったという発言を、まだ撤回していないことである。
如何にも不自然だし、本人の発言としても大々的に二重国籍とか報道されていた。
限りなく黒に近いが、身の潔白を説明しようとしないのは何故か。
蓮舫氏が余程物覚えが悪いとしても、親や兄弟が知らなかったはずがない。
公開した台湾の旅券は子供の時だけのものだが、台湾国籍を持っている以上は、日本の旅券で台湾に出入りすることは台湾において違法で、その疑問にも答えていない。
台湾の国籍離脱証明の様式が普通と違うとか、写真も真正面でないなど不自然で、偽物ではないにせよ、特別の便宜の結果ではないかと疑う人もいる(小池知事の卒業証明に似ている)。
戸籍謄本は国籍選択を記したページだけを公開したが、これが18〜19ページもある。
新しい夫婦と子供だけの戸籍が、これだけのページになることは普通ない。
何か複雑な状況でもあるように思える。
2021年になって、長男の琳(りん)さんが元自民党議員で資産家の糸山英太郎氏の養子になって、その後、解消したらしいが、例えば国籍についてのややこしい事情とか、本人か子供か知らないが、複雑な養子縁組でもしたかでないと説明できないと推察する人もいる。
保守派の中には、中国政府との繋がりを訝る人もいる。
ただ、蓮舫氏の人脈は台南地方出身であることもあって、民進党系の方が強いという指摘もあるし、陳水扁総統(当時)に会ったりもしている。
しかし、このような有力者の子弟で有名タレントが、日中交流の実力者の仲介で中国へ留学し、中国政府が繋がりを作らなかったなど不自然だ。
そもそも、台湾の有力者は大陸との繋がりを作っておき、保険を掛けているケースが多い。
中国との関係についても、蓮舫氏の過去の経緯、また、二重国籍を隠していたことを踏まえたら、証拠がないと開き直るべきではないのだ。
■なぜ二重国籍はいけないか
なぜ、二重国籍はいけないのか。
一言で言えば、1人分の義務で2人分の権利を有するという不公平な状態だからである。
国籍を持つと、その国のルールに沿って権利と義務とが生じ、外国にいても自国の政府に守ってもらえる。
だから、複数の国籍を持つと法的関係が複雑になるので、二重国籍を認めている米国政府も推奨はできないと明言している。
中国は禁止で、フランスはテロ組織に絡んだ場合は国籍剥奪するなど、規制が厳しくなっている。
一方、当事者にとっては、二重国籍はとても美味しい。
2人分の権利があるので、両国の選挙にも投票できるし、2枚の旅券も使い分けられる。
一方、二重課税されたり、両方の国で兵役を求められたりすることは皆無ではないが、少ないからだ。
両国の選挙で投票したり、候補者になれ、両方の国会議員になることもあり得るだろう。
また、就職にも有利だ。
両親がアメリカにいる時に生まれた米国との二重国籍者の場合、留学や勤務の際、ビザ取得や永住権の苦労がない。
企業にとっても余計な手間がなく、便利だから就職の時に有利に働き、ライバルたちに差を付けられる。
米国では前科などがあると入国拒否されるが、二重国籍ならそれもかいくぐることが出来る。
■安全保障上のリスク
二重国籍の容認は、不公平なだけでなく、安全保障上のリスクもある。
将来、韓国・北朝鮮・中国から反日的な行動を取るような義務を負ったまま帰化した大量の二重国籍者が、日本で参政権まで持つという危険性だってあるのだ。
いずれにせよ、日本では二重国籍を禁止している。
帰化するには前の国籍からの離脱を条件とし、よその国籍を取ったら日本国籍は剥奪が原則だ。
あるネットメディアで、政治ジャーナリストが
「決着が着いたはずの二重国籍問題」
とか書いていたが、国籍で嘘を付いた政治家は一生、政治家である資格はない。
少なくとも、蓮舫氏は一旦議員辞職するべきだった。
それに先述したように、
「疑惑」
はまだ残っているのだ。
法的義務に反する二重国籍であって、それを隠してい議員になった政治家を、そのまま党首として首相候補にしていた民進党はおかしかった。
「学歴について粉飾する」
のも問題だが、
「国籍について全くの嘘を付いて議員になった」
方が、政治家にとっては重大な
「欠格事由」
なのである。

東京都知事選 女の戦い カビ饅頭2つに割って誰が食う 小池百合子対蓮舫という究極の選択ー東京はどうなるのか
WiLL2024年8月号
元東京都選挙管理委員会事務局長・元東京都環境公社理事長 澤章
東京都議会議員 上田令子
■小池知事の作戦ミス
★澤
上田先生とお会いするのも久しぶりですね。
都庁の職員時代には、まさかこうして『WiLL』で対談をすることになるとは夢にも思いませんでした。
★上田
お互い”小池批判の急先鋒”ですから(笑)。
こうして対談できて嬉しいです。
★澤
2024年6月20日、東京都知事選挙が告示されました。
小池百合子知事は2024年6月20日、都議会定例会の最終日に都知事選挙への出馬を表明した。
当初、定例会の初日に表明をすると見られていましたが、大幅に遅れました。
これは先手を打った蓮舫氏の出馬表明が世間の耳目を集めたからでしょう。
★上田
”小池劇場”を格好よく幕開けしようと画策していたところ、自分よりも若く、しかもタレント出身の蓮舫氏が注目を集めたので、出鼻を挫かれたわけです。
さぞ、悔しがったに違いありません(笑)。
小池知事は蓮舫氏の出馬表明に焦り、自分をアピールするため、すぐさま都庁保育園の視察に行きました。
その時、小池知事が子供たちに
「おいで」
と手招きしたら、子供が嫌がって逃げたという”放送事故級”の映像がテレビで流れています(笑)。
★澤
お得意のパフォーマンスが失敗に終わったわけですね。
★上田
実は保育園視察のパフォーマンスは、2016年の最初の知事選の際も江戸川区の保育園で行っています。
これがマスコミにも大きく報道されたので、”成功体験再び”という狙いで、8年前と同じジャケットを着て都庁保育園へ視察に行ったのでしょう。
★澤
8年前と同じジャケットですか(笑)。
★上田
小池知事は物持ちが良いので、ゲンを担いで同じ物を着たのでしょう。
★澤
更に小池知事は自分のやってきた事をアピールするため、生成AIで自分の似姿を作り、
「AIゆりこ」
を使ってSNS上で自分の実績を流しました。
★上田
相変わらず自分をアピールすることには余念がない(笑)。
★澤
上田先生は小池知事が出馬表明した定例会最終日に、知事への不信任案を提出しています。
★上田
結局、不信任案に賛成したのは提出者の私1人でした。
2017年の都議選で、小池知事に一杯食わされた自民党も、ここ数年は小池知事に擦り寄っています。
今回の知事選でも小池知事支援を表明しており、不信任案には反対。
ここ数年の自民党を見ていると、本当に情けなく感じます。
しかし自民党以上に酷いのは、立憲民主党と共産党です。
この2党は都知事選で蓮舫氏を支援するのに、不信任案に反対しています。
もし不信任案が通った場合、知事は対抗手段として10日以内に議会を解散できます。
そうなると、都議会議員選挙になりますから、選挙準備の出来ていない彼らは自分の身が危うくなる。
つまり、自己保身のための反対です。
★澤
都議会も保身ですが、小池知事の出馬も同じです。
「カイロ大卒」
という”大嘘”を貫き通すためにも、小池知事は政治家という立場を続けている限りは、カイロ大側も日本の首都の知事が卒業しているというステータスとして利用価値があるので、口裏を合わせるはずですから。
★上田
アラブはギブアンドテイクの社会なので、旨味がなければ切り捨てられます。
小池知事がニュースキャスターのままなら、エジプト大使館も、わざわざフェイスブックで彼女の卒業証明なんてしなかったでしょう。
カイロ大卒の虚飾を続けるためにも、小池知事は都知事選で3選を目指すしかないのです。
■”アラブ人モドキ”
★澤
小池知事の動きを見ていると、小池知事側から自民党・公明党に擦り寄っているように見えます。
小池知事自身も、自民党の組織票がなければ、都知事選での勝利は厳しいと考えているのでしょう。
★上田
2016年の都知事選の時は、自民党東京都連を
「ブラックボックス」
と非難し、”反自民”を貫いて当選しましたが、今回は反自民の旗を蓮舫氏が掲げていますから、反自民票は蓮舫氏に流れやすい。
★澤
小池知事は”選挙の鬼”ですから、如何に票を得るかという策略には抜かりがありません。
各市町村の首長が応援してくれれば有権者が動いてくれると目論見、応援を要請しています。
ところが、その応援要請が何故か
「各首長から出馬を依頼された」
という
「出馬要請」
に掏り替わって報道されました。
★上田
これは小池知事による見事な”自作自演”です。
★澤
小池知事は
「応援要請はしていない」
と否定していますが、日野市の大坪冬彦市長が
「元々は小池知事からの応援要請だった」
と”暴露”しています。
どうしてこのような暴露が出るのかと言えば、東京都には三多摩格差(特別区と多摩地域の間に存在する社会基盤の格差)があり、多摩地域の首長が不満を持っているからです。
小池知事は臆病な性格なので、蓮舫氏の出馬で自分が不利なるのではないかと過剰に反応し、各自治体の首長に泣きつきました。
2020年の都知事選の際の学歴詐称疑惑を巡る騒動の時、沈静化のためにエジプト大使館に泣きついたのと同じ構図です。
★上田
小池知事は”アラブ人モドキ”なのです。
アラブ人は自ら脅す分、脅されることにも強い。
しかし、”モドキ”の小池知事は中途半端にエジプトにいたので、脅すことは出来ても、脅されるのには弱いのでしょう。
澤さんは都知事選の行方をどう見ますか?
★澤
小池都政の8年間、ピンポイントでの批判は多々ありますが、”政治とカネ”といった大きなスキャンダルはありません。
すると、多くの都民が
「小池さんでいいんじゃないの」
となるでしょう。
蓮舫氏の出馬会見も見ましたが、余りに小池知事に攻撃的でした。
国政と違い、都知事選では対立構図を鮮明にしても有権者には響きません。
「私ならこうする」
という具体的な政策で小池知事と戦わなければ、蓮舫氏が支持を広げることは難しいでしょう。
更に蓮舫氏は共産党との共闘を進めているので、共産党を嫌う
「連合東京」
も小池知事支援を決めています。
加えて、小池知事には現職の強みもあり、いくら知名度が高い蓮舫氏でも小池知事に勝利するのは至難の業です。
★上田
確かに蓮舫氏が小池知事に勝利するのは難しいでしょう。
しかし、私が地元を回っていると、映像に映る姿がふてぶてしいという理由で小池知事を嫌う声も多く耳にします。
私は当初、小池知事を圧勝させないことで力を削ぎたいと考えていました。
「辛くも勝利」
となれば、自公に頭が上がらなくなり、好き勝手な事が出来なくなるからです。
前回の選挙では366万票の支持を得て圧勝したので、その自信が
「私がいないと、政策実現が出来ないでしょ」
と言わんばかりに、”暴走”と”女帝化”に繋がりました。
いずれにしても小池知事、蓮舫氏。
カビた饅頭を2つに割って左右どちらかを食べろと言われても・・・という虚しい選択です。
(中略)
★上田
石原慎太郎都政下で積み上げた財政調整基金1兆円を使い果たした小池知事と都民ファーストの会(以下、都ファ)の議員。
★澤
都の財政調整基金がコロナの時に底をついてしまいましたが、小池知事が協力関係にあった公明党の要望を聞くために予算を膨張したのが原因で、都民を馬鹿にしています。
■女帝による陰湿なイジメ
★上田
お互い小池知事とは直に接してきていますが、澤さんは知事の人間性に対してどんな印象をお持ちですか?
★澤
ネチネチしたパワハラ気質だと感じました。
豊洲市場の追加対策工事がひと段落し、いよいよ1年後に豊洲移転が決まった直後、小池知事と市場当局の管理職との夕食会がセッティングされました。
私を含めた市場当局の管理職の面々はこれまで小池知事と移転について散々揉めてきましたから、遂に知事と和解できると手を叩いて喜びました。
ところが、職員が豊洲移転の詳細が書かれた資料を小池知事に見せる前にマスコミと議会に配ってしまったことで、知事は激怒。
小池知事に呼び出され、
「なぜ見せなかったのか」
とお説教が始まりました。
お説教が終わり、部屋を出ようとした際
「澤さん、今日は楽しい夕食会になるでしょう」
「でも、私は用事ができたので、野田(特別秘書を務めた小池知事の元側近・野田数(かずさ))を代わりに行かせます」
と言われました。
私は小池知事の静かなる怒りに背筋が凍るような感覚を覚えました。
★上田
小池知事が冷徹な口調で言い放った様が目に浮かびます。
澤さんが東京都環境公社の理事長を辞められたのも、事実上の”排除”でしたね。
★澤
私は理事長在任中に『築地と豊洲』(都政新報社)という本を出版し、小池都政を批判していましたから、目障りな存在だったのでしょう。
都庁人事の権限を握る副知事から呼び出され、クビを告げられた時に黙って従うのも嫌だったので、理由を聞きました。
すると、
「お前は常識がない」
「都知事選の前にマスコミに出て、雑誌・メディアで小池知事を批判している」
「これは都庁OBとしてあるまじき行為だ」
と言われました。
事実を主張しただけなので怒りで体が震えましたが、それ以上に呆れて何も言えませんでした。
★上田
まるでどこかの独裁国家みたいですね。
東京都に長年貢献し、知識もある澤さんをクビする一方、ただのイエスマンを要職に起用する。
小池知事は自分より目立たず、ほどよく利用できる人を重用します。
都ファの議員を見ていても、小池知事よりも目立って排除されないよう、服装も発言も地味に徹しています。
★澤
女帝に対し、皆、戦々恐々としている証拠です。
★上田
私は2016年の都知事選で小池知事を支援した際、仲間の無所属議員を集めて雨の中ポスター貼りなどの支援をしたにもかかわらず、”グリーン旋風”が吹き荒れた途端に街頭演説では、きっかけを作った私たちがマイクを持つことを許しませんでした。
これは手柄を全て小池知事自身と側近のものにしたいからで、私をはじめとした無所属議員は応援したのに”排除”されたのです。
私が媚びへつらうような態度を取らなかったので、面白くなかったのでしょう。
★澤
1度小池知事に疎まれると、”手を変え、品を変え”虐められます。
最近では、SNSで安易に都政関連の情報をアップすると都の職員がチェックしており、発信元の”犯人探し”が始まります。
私も1度、SNSで都庁の内部に関するコメントを書いたら、
「消して下さい」
と現役管理職から言われたことがあります。
このように今の都庁は、監視の目が常に光っている職場と化してしまった。
★上田
まるで言論統制ですね(笑)。
都庁に
「職員目安箱」
があり、小池知事は職員ファーストを掲げ、
「直接私に言って下さい」
と設置しましたが、そこに意見を投稿した職員が犯人探しされたという話も私の元に届いています。
都庁で何かあれば、秘書は必ず守るので、私のホームページにある問い合わせホームで相談してほしいと思います。
■小池知事最大の愚策
★上田
小池知事は人間性は疎か、都知事としての実務能力も欠いています。
安倍晋三元首相が『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)で、
「小池知事は実務が苦手」
と述べていましたが、当初の公約である
「7つのゼロ」
に関して、
「ペットの殺処分ゼロ」
しか達成出来ていないことがその象徴です。
しかし、ペット殺処分ゼロに関しても、譲渡可能なペットを殺すことを
「殺処分」、
病気の動物の処分を
「安楽死」
としているので、結果的に殺さてしまうペットがゼロになっているわけではありません。
★澤
私が小池知事の愚策としてまず思い浮かぶのが、多くの混乱を生じさせた築地市場の豊洲移転問題です。
また、直近のものでは2023年1月に突如宣言した0歳から18歳までの東京在住の子供に月5000円の支給を行う
「018サポート」
です。
018サポートは1200億円の予算がかかっていますが、議会で熟議されないまま政策が通ってしまった。
これでは議会制民主主義の体をなしていません。
しかも、マスコミから財源についての批判がないことも不自然です。
国の政策の場合、防衛費にしても少子化対策にしても財源が問題になり、マスコミから批判を浴びます。
マスコミは岸田政権と小池都政を対比させたいがために小池知事の財源問題に対しては”ダンマリ”を決め込む。
★上田
月額5000円を所得制限なしに子育て世帯に支給する018サポートは、2023年1月4日、都庁の仕事始めの午前中に突如発表されました。
これは所轄である福祉保健局の局長も知らなかった話です。
実は同日午後、岸田政権が異次元の少子化対策を発表することを受けて、小池知事は国より先に目立つ意図もあり、慌てて発表したのです。
018サポートが急に決まったこともあり、行政上の手続きが追い付かず、あろうことかこの支援を一番必要とする生活保護世帯が、恩恵を受けられないことが発覚しました。
小池知事が慌てて収入認定からの除外要請を依頼する手紙を、厚生労働大臣に送る事態に発展。
更に、案内チラシを17万件もの転居者に誤って送るミスまでありました。
この誤送付で、多額の血税が郵送費等で消えています。
それについて、私は情報開示請求をしています。
私が最も驚いたのは、小池知事の政策設計が悪かったにもかかわらず、あたかも政府に原因があるかのような報道をさせることで責任転嫁する始末です。
★澤
岸田首相と比較して自分がどれだけ目立つかということだけで018サポートを始めたので、まさに選挙を意識した”バラマキ”です。
小池知事はコロナ禍でも意味もなく国と対立構造を作りました。
また、忘れていけないのは、環境問題に関するパフォーマンスのため、新築住宅に太陽光パネルの設置を義務付ける条例改正をし、大混乱を引き起こしたことです。
都民の利益を考えずに、自分ファーストで突っ走っています。
★上田
本誌『WiLL』でも散々指摘してきましたが、太陽光パネルは8割が中国製です。
しかも、新疆ウイグル自治区での強制労働によって作られており、欧米では中国への制裁を発動しているにもかかわらず、小池知事は強硬に進めています。
最近新築戸建て住宅の価格がパネル設置で100万円上昇するということが報道され、それ見たことかという状況になりました。
更に、元日に発生した能登半島地震でも、経産省が、落下したパネルに触らないよう異例の注意喚起をするなど、危険性が明らかになりました。
万が一、東京都で首都直下型地震が起きてしまったら、目も当てられないような2次災害が起こりかねません。
★澤
自分のパフォーマンスのために都民に被害や犠牲が出かねない判断です。
都庁OBとして、都民のためにも職員のためにも小池知事には1秒でも早く都庁から去ってほしい。
皆が戦々恐々としながら、何も言えないという状況は異常です。
この状況を改善しなければ、都民のためにも東京の街のためにもなりません。
でも蓮舫氏はなあ・・・。
★上田
嘘つきは泥棒の始まりと言われているように、私たち日本人の美徳は正直であることです。
にもかかわらず、日本の首都・東京の顔である知事に学歴詐称疑惑が持ち上がっているのは如何なものか。
カイロ大学とエジプト政府に学歴を証明してもらって弱みを握られていることも外交上、”百害あって一利なし”です。
小池知事にはこの責任をきっちり取って頂きたいです。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/742.html#c37

[政治・選挙・NHK294] <山本太郎が応援に入れば熱い風が吹く!>都知事選 過去にもあった 逆転劇を呼ぶ現場の熱(田中龍作ジャーナル) 赤かぶ
79. 秘密のアッコちゃん[418] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年7月01日 06:03:57 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[531]
<■633行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
現地匿名座談会 前安芸高田市長・石丸伸二とは何者か?
Hanada2024年8月号
安芸高田(あきたかた)市は、広島市から北東へ80kmほどの中山間部にある。
「平成の大合併」
で、2004年に高田郡吉田町、八千代町、美土里(みどり)町、高宮町、甲田町、向原町が新設合併して安芸高田市が発足した。
林業などが盛んだったが、地域は過疎化が進んでいる。
人口は約2万5000人。
中心部の吉田町には、戦国武将の毛利元就が本拠地とした郡山城の跡や墓がある。
その安芸高田市の石丸伸二市長(41)が、東京都知事選に出馬した。
1期にも満たなかった地元での評判はどうなのか。
安芸高田市の市議、元市議ら4人の男性に集まって頂いた。
■京大卒、三菱UFJ勤務
ーー4年前(2020年)、石丸さんはどういう経緯で市長に当選したのですか。
★A
2020年の7月、この辺りを地盤(広島3区)にしている衆院議員の河井克行さん(法務大臣)に絡む”収賄事件"で、現職だった児玉浩市長が引責辞任、2020年8月に選挙になりました。
児玉さんは後継として竹本峯昭副市長を立て、無投票かとばかり思われていた。
ところが、ここの出身で、京都大学(経済学部)を卒業して三菱UFJ銀行に勤め、ニューヨークに4年ほど赴任していたという石丸氏が突然、そんな
「エリート色」
を引っ提げて立候補したんです。
”贈収賄”事件で街の空気は沈滞ムードでした。
その上、過疎・高齢化が進む一方だったので、市民からは
「高収入を投げ捨てて故郷に戻って立候補した37歳の彼なら、街を活性化してくれるのではないか」
と期待する声が多かったですね。
結果、票数は石丸候補が8000ちょと、竹本候補が5300くらいで、大差で石丸氏が勝ちました。
★D
当時の石丸氏は、銀行で年収1000〜1300万円も稼いでいたんでしょう。
有権者は
「それをかなぐり捨てて故郷に尽くすのは立派だ」
と思った。
ここじゃ、市長をやっても1000万円あるかどうかだから。
★C
石丸氏にとって、逆の意味での
「河井風」
が吹いて、
「立候補した副市長なんて、どうせ前の収賄市長と変わらない」
と見られていた。
★B
石丸氏の親父さんは、地元の電鉄会社に勤めていました。
同じ会社の人が私の関係者にもいて、その伝で、立候補する時、本人が私にも挨拶に来ましたよ。
「立場上、応援はできなけれど、石丸さんは大都会にばかりいたんだろうから、しっかり中山間部の安芸高田市の事を勉強して下さいよ」
とは言っておきました。
■議会で議論が進まない
ーー石丸氏が辞めた現在、市議の熊高昌三さんが、その後継として市長選(2024年7月7日投開票)に出馬する。
★A
彼は石丸市政を評価していた男ですが、それでも議会などで意見が違うと、石丸市長は熊高議員を激しく罵倒していた。
私なら、とても付き合う気になりませんけど、熊高さんは忍耐強いんでしょうね。
★B
そういう人すら大事にしないんだから、2期目に出る気なんてさらさらなかったのでしょう。
ーー市長就任後、まず騒動になったのが、議員の居眠り問題でしたね。
★A
亡くなった武岡(隆文)市議のことですね。
2020年9月25日のことで、居眠りは事実です。
石丸氏がツイッター(現X)で、名前と共に
「恥を知れ!」
と投稿し、拍手喝采を浴びました。
武岡さんは翌日、すぐに
「居眠りしたことを会ってお詫びしたい」
と伝えましたが、石丸市長に
「会う気はない」
と断られました。
携帯メールでも謝意を伝え続け、それは市長も認めています。
それでも
「説明責任を果たせ」
と言われ続けたので、2021年6月10日に武岡さんは記者会見をし、
「医師から睡眠時無呼吸症候群の診断を受けて、居眠りではなく、軽い脳梗塞による意識の喪失だった」
と説明。
しかしその後、
「何で今更また謝罪しなくてはいけないのか」
と口にした発言が、またYouTubeで流されて叩かれてしまい、大変悩んでいました。
亡くなる直前に電話で話しましたが、憔悴しきっていました。
本当に気の毒です。
★B
武岡さんという人は神経質といってもよい性格で、医師の診断書も、市議長を通して正式に石丸市長に出されていました。
しかし、市長は
「個人情報だから受け取れない」
と言って、診断書をシュレッダーにかけたとか。
そもそも議会に出された診断書は公文書ではないのか。
■何でも「無駄だ」と潰す
ーー議会ではどんな事が。
★B
議員の質問に対して
「日本語が正しくない」
と噛み付いたり、
「おっしゃる意味がよく分かりませんが」
などと言葉に拘ってばかりで、内容が前に進まない。
まるで国語の試験のようでした。
正確な日本語でなくとも分かるはずなのに、議論の入り口で止まってしまっていた。
しかも切り取りで映像をYouTubeで発信する。
「あなた方は国語力がない」
といったつまらないやり取りばかりが流れて、議会でどんな事を議論しているのかがさっぱり伝わっていない。
★C
そりゃあ、私ら田舎の爺さんだから、正しい国語になっていないかもしれない。
しかし、石丸という男はハナから地方の年寄りを馬鹿にしているんです。
目上の人を敬うなんて気持ちはかけらもない。
学校の勉強はよくできたかもしれてないけど、人間としては失格だよ。
ーー石丸市長は、既存の事業の廃止を次々と打ち出してきましたね。
★B
2代前の浜田(一義)市長が
「田んぼアート」
という事業を提唱したのですが、石丸市長が
「鶴の一声」
で中止してしまった。
ーー田んぼに絵を描くことで、遠くや空から色んな図柄が楽しめるアート企画ですね。
★B
観光客誘致にも繋げたいとした
「田んぼアート」
は、特別委員会も作って
「さあやろう」
という時で、JAも含めて実行委員会を作り、先進県の青森まで視察に行って研究していました。
色んな企業から苦労して協賛金も集めていたのに、石丸市長は
「そんなものは金にならん」
といった感じで、一方的に中止を決めてしまった。
★A
他にも、八千代の森美術館を
「市外の人が利用するのに税金を使う必要がない」
「市の人は誰も利用してない」
と言って休館。
★B
安芸高田市には他に美術館がなく、八千代の森美術館は地域の文化を発信する重要な拠点でした。
今は赤字でも、長い目で見て施設を活かすやり方を模索することが政治ではないのでしょうか。
何でも
「無駄だ、無駄だ」
と潰す政治なら誰でもできるよ。
★A
市では従来からお見合いのような
「婚活事業」
もやっていましたが、これも潰してしまった。
多い時で年間5組くらい成立していて、他県から
「ノウハウを教えて下さい」
と安芸高田市に学びに来ていましたし、広島県庁からも
「県でやる」
と視察に来ていました。
高齢者ばかりになる中、若い人が増えてほしいという切実な思いで始めたのですが・・・。
★C
12年間やって、59組成立した。
★A
彼は中学の模擬議会にこの事業を持ち出して、生徒から
「続けるべきでは」
と言われ、
「結婚のようなプライバシーに行政が介入すべきではない」
と説明していたとか。
ーーそんなことを中学生に諮るのもちょっと妙ですね。
★C
高宮町に
「たかみや湯の森」
という温泉施設があります。
ここの温水プールは、高田町や高宮町のお年寄りが健康のために使っていたのですが、
「利用客が少なく、採算が悪い」
「1800万円は無駄な出費だ」
とプールをなくしてしまった。
★B
健康福祉という観点が全然ないんですよ。
全て今の採算性だけで物を考えている。
■評価された政策は?
★A
地元の総菜屋さんから給食を納入させることをやめさせ、廿日市(はつかいち)市から納入させるようにした。
地元の商売を潰しているんです。
廿日市の業者と個人的な繋がりでもあるのではないかと疑ってしまう。
また、
「土砂災害が起きると危険だ」
とある保育所の移転を言い出したのですが、代替地がなかなか見つからない。
市長は全く地元の人たちと協議もせず、机上で地図を見ているだけ。
★B
保育所の隣には小学校があるから、保育所が危険なら小学校だって危険だよ。
だけど、そっちはさっぱり言わない。
あれほど市民と直に接しない市長は今迄いなかった。
小中学校の入学式、卒業式や運動会、そういった地域の行事に、石丸市長はまず出なかった。
先日、中国地方の防災協会の表彰式がありました。
市で選ばれた人に市長が賞状を渡すのですが、
「この人はどういう事をしたのですか?」
と言ったことは何1つ訊かない。
地元の受賞者の業績など何の興味もなく、ただ賞状を渡せばいいと思っている。
最初からずっと、安芸高田市とは違う方を見ていたのでしょうね。
安芸高田市のために尽くす気はさらさらなかった。
■教育関連は評価、高かった
ーー逆に、石丸氏が評価された政策はないんですか。
★B
最も受けが良かったのは教育関連ですね。
学校の冷暖房などを充実させ、更に2つの高校(県立向原高校と県立吉田高校)に
「生徒が決める100万事業」
と言って
「自由に使って下さい」
と100万円ずつ渡した。
それも生徒会長に対してで、
「教員は使途に口を挟むな」
と。
そりゃあ、生徒は喜びますよ。
他にも、リクルート社の高い教材を高校生に無償提供して喜ばせている。
そういう若者への受け狙いは大変上手です。
学校も椅子や机を新調するなど手厚くしているので、当初、石丸市長を批判していた教育長は完全にシンパになり、
「石丸市長のお陰で」
と盛んに言うようになった。
ーー子育て政策も評価されているようですね。
★A
小中学校と保育所の給食費を無償化するのに1億円投じました。
廃止施設にかかっていた管理費などから捻出したのですが、毎年やるとなれば、今後どこから捻出するのか。
まあ、国が給食無償化をやるのが分かっているから、一足先にやって自分の業績のように見せたのでしょう。
そういう手法は上手い。
ーー自分から言い出して始めた政策はあるんですか。
★A
広島は大阪と違うお好み焼きで知られています。
そこに目を付けて、
「あきたかた焼き」
を名物にしようというプロジェクト。
他県にまで職員が行って研究して作ったのですが、その時点で市民は市長に着いて行けず、飲食店はほとんど手を上げませんでしたね。
売っているのは3軒くらいですよ。
★B
幟(のぼり)1つ立っていません。
よそから旅行で来ても、どこで食べられるのか分からない。
■人を見下す発言が多い
ーー石丸市長の公費の使い方が問題視されています。
★C
2024年5月に、2泊3日ほど上京して、橋下徹さんのYouTube番組に出演。
そして東京都江東区で行われたイベントで、都知事選に立候補することを宣言した。
安芸高田市のことで上京したわけでも何でもないのに、市の公費で出張したんですよ。
そのことを追及されると、
「市の窓口を通して依頼があったから、市長としての公務だ」
と抗弁しています。
それならどんな依頼だって、市の窓口を通させれば公費でどこにでも行けることになってしまう。
信じられない言い草ですよ。
さすがに趣味のトライアスロン大会は自費で行ったようですが、これも問題があった。
広島市では2018年に多くの人が亡くなった豪雨があったので、2年前(2016年)に台風が広島を直撃するという予報が出た際、市民は緊張して備えていました。
その
「台風直撃」
とされていた日、石丸氏は千葉県でトライアスロン大会に出場し、地元に居なかったのです。
台風はそれたのですが、自慢げにトライアスロンで何番になったという動画を配信していたのを山根温子市議が見付けて問題視した。
すると、
「(台風への)万全の準備を取らせている」
「遠くからでも指示はできる」
ーーそれなら、自治体首長はどんな時でも遠くに遊びに行けますね。市民は監査請求などをしないのですか。
★C
「安芸高田市政刷新ネットワーク」
という市民団体が監査請求をしたことがあります。
ところが、監察委員が調べたところ
「違法性はない」。
市の出張規定では市長、副市長、教育長の3役は
「出張の際、費用を支給する」
となっているだけで、
「公務で」
という条件が書かれていないのです。
市職員や市議会議員の場合は
「公務で」
という条件が付いています。
ーー議員との訴訟沙汰もあったとか。
★C
トライアスロン動画を追及したという山根温子議員とです。
石丸市長は4年前(2020年)、市議会全員協議会で、山根市議から
「議会を敵に回すなら政策が通らなくなる」
などと恫喝された、といった内容をツイッター(X)に複数回投稿した。
山根さんは
「嘘だ。名誉棄損だ」
と石丸市長に500万円、市に330万円の損害賠償を求めたんです。
広島地裁は録音記録を精査して、2023年12月に
「山根さんの恫喝発言はなかった」
と石丸市長による名誉棄損を認め、市に33万円の賠償を命じました。
更に、
「市長としての裁量を逸脱したもの」
「SNSで広報活動をする際に注意義務を尽くしておらず、違法な行為」
としました。
★A
議会では、山根議員が質問すると
「今の質問はウザイ」
とか
「きもい」
とか見下す。
人を蔑視するような発言が多かった。
控訴審判決(広島高裁)が2024年7月3日にありますが、石丸市長は
「控訴する」
という決定も議会に諮らず、
「控訴期限まで時間がない」
と専決処分しました。
ここまで訴訟費用は公費ですよ。
既に市長は退任していますが、2024年7月7日までの期間の市長代理を利用して、判決に不服で専決処分による最高裁への上告をするのかも見所ですね。
■売名のために市長に?
ーー石丸市長は自画自賛しているようですが、財政再建の実際の評価は。
★A
財政調整基金は残し、他の基金を切り崩し、数字のマジックのようなもので
「再建した」
と言っているだけです。
あれこれ事業をやめれば支出は減る。
新しい事をしないので償還金は減り、経常経理は下がり、立ち直っているように見えるだけ。
★C
基金を切り崩しただけですね。
ああいうことは、銀行出だから上手いのよ。
ーー石丸氏は、政治家になりたいという希望を早くから持っていたのでしょうか。
★B
持っていたでしょうけど、国会議員や県会議員では埋もれてしまう。
「お山の大将」、
即ち自分がトップの地位でなくては気が済まない。
だから議員にはならずに、首長という位置を狙ったのでしょうね。
★C
名を売るために1期市長になっただけ。
この市に尽くすなんていう気などさらさらない。
全国的に顔を売るチャンスを窺っていたところ、都知事選に目を付けたんでしょう。
★A
4年前(2020年)にここで立候補した時も、ある新聞社の記者が
「ここの市長を長くやろうなんて気は絶対ない」
「当選したら市は困るのでは」
と言っていたけど、その通りでしたね。
ーーネットを駆使されていましたが、既存メディアとはどういう関係でしたか。
★B
ある新聞記者をよく攻撃していました。
本来、自治体の首長なら地元紙とは良好な関係を持とうとするはずですが、そんな気は一切ない。
2期目以降は出ないつもりだったからでしょう。
★A
聞いた話ですが、ある社は彼を取材する時は事前に社内で会議を開いて打ち合わせて、質問は最低限にする。
やめることもあったそうです。
石丸市長は、自分の事が書かれた気に食わない記事、あるいは記者会見の質問が気に入らないと、会社宛てに公開質問状を送る。
新聞社はその対応に煩わされるから、記者に彼を刺激するような質問をやめさせ、当たり障りのない質問しかさせないんです。
この市出身の都民で、都知事選で彼を応援する人なんかいなんじないかな。
★B
彼の4年間は完全な売名行為ですよ。
1期で辞めるのも、早くから決めていたんじゃないですかね。
繰り返しになるけど、あれほど市民と接しない市長はいなかった。
2期目に出る気ならあり得ない。
★A
1年経って、騙されたと思う人が多くなってきましたからね。
★D
年寄りをあれほど馬鹿にした人はいませんね。
目上の人を敬うことなど全くない。
自分が世の中で一番賢い、頭がいいと思っていて、プライドばかり高い。
★A
市議会では、石丸氏の一番の攻撃対象になったのは私でしょうね。
SNSやYouTubeの影響は本当に怖い。
部分的に切り取られて世界中に発信され、それを真に受けた
「石丸応援団」
から色んな脅しが来ました。
最近は身の危険を感じて、一般質問しようと思っていた質問を封じてしまうことも・・・。
ああいうメディアに踊らされる人が多いのは、本当に怖い世の中ですね。
ーーでは、石丸市長の功績はゼロ?
★C
この騒動で、安芸高田市の名が全国版になったことくらいでしょうね(笑)。

「国籍の嘘」で蓮舫は政治家失格
Hanada2024年8月号 評論家 八幡和郎
■場当たり的な説明に終始
蓮舫参議院議員が東京都知事選挙に立候補を表明してい以来、二重国籍(多重国籍)への関心が再燃し、
「第1発見者」
である私は、様々な機会に意見を述べている。
二重国籍問題が激しく再燃するというのは、蓮舫陣営にとって想定外だったようだ。
「小池氏の抱える『学歴詐称疑惑』に対比させる形で、決着が着いたはずの蓮舫氏の『二重国籍問題』が蒸し返されている」
といった論調もあちこちに見受けられる。
しかし、蓮舫氏の二重国籍を能天気に擁護した記事を書いた人がヤフコメの世界で見事に炎上したのを見て、最初の指摘から8年間、私としても蓮舫氏の事件と二重国籍の弊害を地道に説いてきたことの成果が浸透しているのが感じられて嬉しい。
問題が発覚した2016年は
「何が悪い」
「政治家だからおかしいが、一般人なら問題ない」
と言う人が多かった。
メディアは人権侵害になるのではないかなどという見当外れの懸念を持っており、おっかなびっくりでほとんど取り上げなかった。
蓮舫二重国籍発覚事件とはどういう事件だったのか、顛末を改めて振り返り、その過程で見せた蓮舫氏の場当たり的な説明の酷さや、残ったままの疑惑、そして、なぜ二重国籍はいけないのかを、提起したい。
蓮舫氏は、台湾人(中華民国籍)の父親と日本人である資生堂の花形美容部員だった斎藤桂子さんの長女として、1967年に東京で生まれた。
祖母の陳杏村は台南地方の出身で、未亡人となった後、東京で洋裁を学び、軍関係者の知己を得て、日華事変後の上海で暗躍した政商だった。
戦後は、蓮舫氏の父で同志社大学出身の謝哲信と共に、台湾バナナ輸入の利権を握って日本政界で暗躍。
政治家にダミー会社を創らせて政治資金を渡す手法を使い、国会でも公明党の黒柳明参議院議員から追及されたことがある。
■「二重国籍」を自称
蓮舫氏は3人きょうだいで、幼稚園から大学まで青山学院で学んだ。
高校生時代からタレント活動をしてクラリオン・ガールとなったり、男性週刊誌のグラビアなどで人気を博し、テレビキャスターとなった。
子供の頃は、夏休みなど台湾に長期滞在していた。
1993年、田原総一郎氏のスタッフ的な存在だったジャーナリストの村田信之氏と結婚。
夫婦で北京に留学し、それ以降、中国政府の外交にも理解を示すようになる。
この留学のお世話をしたのは高野孟(はじめ)氏らしい。
タレント時代には、中国籍だとか二重国籍だとか自称していたが、2004年に参議院選挙東京都選挙区から出馬し当選した時には、選挙公報に
「1985年、台湾籍から帰化」
としていた。
誕生時の戸籍法では父親の国籍にされたから、台湾(中華民国)籍の謝蓮舫だった。
ところが17歳の時、国籍法の改正で、22歳までに両親どちらかの国籍を選択する条件の下で母親の日本国籍を取得出来るようになり、それを行使して合法的な二重国籍になった。
その時に、斎藤蓮舫という名も17歳にして獲得した。
「帰化」
と選挙公報に書いたが、法律用語としては間違いで、
「国籍取得」
である。
私が蓮舫氏をネットメディア「アゴラ」で追及し始めたのは、蓮舫氏の出馬が噂された2016年の東京都知事選の時だ。
私は「アゴラ」でこう書いた。
「帰化した人が政治家になっても構わないが、帰化した国の文化への愛着を示すとか、母国との関係で日本の国益を強く支持することが求められるのが世界の常識である」
「蓮舫氏はどちらでも失格だ」
こういった見方をしたのは、フランスでのアルジェリア系などの政治家や官僚に興味を持ち、彼らから話を聞いて研究していたからだ。
その後、蓮舫氏が野党第1党・民進党代表選に立候補したので、尖閣諸島についての問題発言とか、和服を着たこともなく日本文化への愛着がないといった視点から批判すると共に、蓮舫氏は日本国籍を選択した経緯と台湾籍離脱についても、日付も含めて説明すべきだと指摘した。
■言い訳の数々
ところが、蓮舫サイドは夕刊フジからの問い合わせにも答えず、慌てた様子だった。
私は、22歳までに国籍を選択はしたにしても、台湾籍からの離脱をしておらず法に反する形でそれなりの期間、あるいは、現在に至るまで二重国籍の可能性がある、と指摘した(2016年8月29日)。
それに対して、蓮舫氏は
「父親が台湾籍離脱手続きをしてくれたはず」
「(本人の名も載ったはずの)父親の台湾の戸籍は見たことがない(遺産相続しているので見なかったとは考えにくい)」
「私は18歳(実際は17歳)で日本国籍を選んだ」
「台湾籍をいつ抜いたかは台湾当局に問い合わせ中」
などと反論。
タレント時代の二重国籍発言については、深く考えずにしたとか、記事の原稿を確認しなかったとか、言を左右にした。
ただ、この段階では、
「日本国籍の選択」
をし、日本の戸籍法上の手続きは完了し、台湾の国籍を離脱するべきなのが遅滞しているだけだと、私も含めて思っていた。
離脱手続きを強い義務にしていないのは、ブラジルのように国籍離脱を許さなかったり、インドのように多大な時間や費用が生じたりするケースがあるからだ。
しかし、台湾では国籍離脱はそんなに難しくない。
ここで、更なる
「証拠」
が見つかる。
台湾籍を離脱したら台湾の官報に記載されるはずだが、
「謝蓮舫」
の国籍離脱の公示はされていないことを、ネット民が突き止めたのだ。
台湾の官報はネットで公開されていたので、過去の離脱記録を調べるのは何人かで手分けしたらさほど難しくなかった。
そこで、蓮舫氏は
「台湾籍を抜いたかどうかは確認中だが、抜いていない可能性があるので改めて離脱申請をした」
と言う(2016年9月6日)。
死んだ父親の責任にしたのである。
当時、民進党党首の党員・サポーター投票が続いていたから、それに影響すると困ると思ったのだろう。
締め切りの翌日になって、
「台湾当局から国籍が残っているという連絡を受けたので離脱手続きを進めたい」
とやっと公表した(2016年9月13日)。
■親兄弟も知らなかった?
ここに至って、蓮舫氏の説明全体が信用できる状態ではなくなり、蓮舫氏が国籍離脱手続きをしていないとの疑問も生じたので、アゴラ編集部から
「国籍選択をしたことを証明する書類」
「台湾旅券」
「台湾からの国籍離脱証明」
の3点セットを公開するようにという公開質問状を出した(2016年9月29日)。
そして2016年10月15日に、蓮舫氏は2016年9月23日に台湾の
「国籍離脱証明書を目黒区役所に提出」
して戸籍法に定める国籍選択をしようとしたが、台湾と国交がないことを理由に、もう1つの方法である
「国籍選択宣言」
の方法を選ぶように指導されて、その手続きをしたと語った(この時点ではいつか不明だったが、後に2016年10月7日だと判明)。
17歳から22歳までは合法的な二重国籍だった蓮舫氏は、その後は法に定められた
「日本国籍の選択」

「台湾籍からの離脱」
のどちらもしていない
「法的義務に反した」
二重国籍者だったことが判明したのである(ちなみに、この状況の法的説明としては、違法であるとか違法でないとかいう言葉に馴染まず、法的義務に反した状態と言うのだそうだ)。
つまり、2016年10月7日までは、台湾人謝蓮舫が日本国籍も併せ取って斎藤蓮舫、次いで村田蓮舫という名を獲得しただけだったのである。
これほど嘘が連鎖して、バレルと違う説明を繰り返せば、上記の説明すら信じてもらえないのは当然だ。
そこで、追い詰められた蓮舫氏は、翌年2017年の7月18日になって決断した。
つまり、日本国籍選択宣言日を
「平成28(2016)年10月7日」
と明記された戸籍謄本の複写の一部、2016年9月13日付発行の台湾籍の
「国籍喪失許可証書」、
離脱手続きのために提出した台湾の子供時代の旅券などを公開した。
しかし、今も多くの疑問がある。
最大のものは、二重国籍状態であることを知らなかったという発言を、まだ撤回していないことである。
如何にも不自然だし、本人の発言としても大々的に二重国籍とか報道されていた。
限りなく黒に近いが、身の潔白を説明しようとしないのは何故か。
蓮舫氏が余程物覚えが悪いとしても、親や兄弟が知らなかったはずがない。
公開した台湾の旅券は子供の時だけのものだが、台湾国籍を持っている以上は、日本の旅券で台湾に出入りすることは台湾において違法で、その疑問にも答えていない。
台湾の国籍離脱証明の様式が普通と違うとか、写真も真正面でないなど不自然で、偽物ではないにせよ、特別の便宜の結果ではないかと疑う人もいる(小池知事の卒業証明に似ている)。
戸籍謄本は国籍選択を記したページだけを公開したが、これが18〜19ページもある。
新しい夫婦と子供だけの戸籍が、これだけのページになることは普通ない。
何か複雑な状況でもあるように思える。
2021年になって、長男の琳(りん)さんが元自民党議員で資産家の糸山英太郎氏の養子になって、その後、解消したらしいが、例えば国籍についてのややこしい事情とか、本人か子供か知らないが、複雑な養子縁組でもしたかでないと説明できないと推察する人もいる。
保守派の中には、中国政府との繋がりを訝る人もいる。
ただ、蓮舫氏の人脈は台南地方出身であることもあって、民進党系の方が強いという指摘もあるし、陳水扁総統(当時)に会ったりもしている。
しかし、このような有力者の子弟で有名タレントが、日中交流の実力者の仲介で中国へ留学し、中国政府が繋がりを作らなかったなど不自然だ。
そもそも、台湾の有力者は大陸との繋がりを作っておき、保険を掛けているケースが多い。
中国との関係についても、蓮舫氏の過去の経緯、また、二重国籍を隠していたことを踏まえたら、証拠がないと開き直るべきではないのだ。
■なぜ二重国籍はいけないか
なぜ、二重国籍はいけないのか。
一言で言えば、1人分の義務で2人分の権利を有するという不公平な状態だからである。
国籍を持つと、その国のルールに沿って権利と義務とが生じ、外国にいても自国の政府に守ってもらえる。
だから、複数の国籍を持つと法的関係が複雑になるので、二重国籍を認めている米国政府も推奨はできないと明言している。
中国は禁止で、フランスはテロ組織に絡んだ場合は国籍剥奪するなど、規制が厳しくなっている。
一方、当事者にとっては、二重国籍はとても美味しい。
2人分の権利があるので、両国の選挙にも投票できるし、2枚の旅券も使い分けられる。
一方、二重課税されたり、両方の国で兵役を求められたりすることは皆無ではないが、少ないからだ。
両国の選挙で投票したり、候補者になれ、両方の国会議員になることもあり得るだろう。
また、就職にも有利だ。
両親がアメリカにいる時に生まれた米国との二重国籍者の場合、留学や勤務の際、ビザ取得や永住権の苦労がない。
企業にとっても余計な手間がなく、便利だから就職の時に有利に働き、ライバルたちに差を付けられる。
米国では前科などがあると入国拒否されるが、二重国籍ならそれもかいくぐることが出来る。
■安全保障上のリスク
二重国籍の容認は、不公平なだけでなく、安全保障上のリスクもある。
将来、韓国・北朝鮮・中国から反日的な行動を取るような義務を負ったまま帰化した大量の二重国籍者が、日本で参政権まで持つという危険性だってあるのだ。
いずれにせよ、日本では二重国籍を禁止している。
帰化するには前の国籍からの離脱を条件とし、よその国籍を取ったら日本国籍は剥奪が原則だ。
あるネットメディアで、政治ジャーナリストが
「決着が着いたはずの二重国籍問題」
とか書いていたが、国籍で嘘を付いた政治家は一生、政治家である資格はない。
少なくとも、蓮舫氏は一旦議員辞職するべきだった。
それに先述したように、
「疑惑」
はまだ残っているのだ。
法的義務に反する二重国籍であって、それを隠してい議員になった政治家を、そのまま党首として首相候補にしていた民進党はおかしかった。
「学歴について粉飾する」
のも問題だが、
「国籍について全くの嘘を付いて議員になった」
方が、政治家にとっては重大な
「欠格事由」
なのである。

東京都知事選 女の戦い カビ饅頭2つに割って誰が食う 小池百合子対蓮舫という究極の選択ー東京はどうなるのか
WiLL2024年8月号
元東京都選挙管理委員会事務局長・元東京都環境公社理事長 澤章
東京都議会議員 上田令子
■小池知事の作戦ミス
★澤
上田先生とお会いするのも久しぶりですね。
都庁の職員時代には、まさかこうして『WiLL』で対談をすることになるとは夢にも思いませんでした。
★上田
お互い”小池批判の急先鋒”ですから(笑)。
こうして対談できて嬉しいです。
★澤
2024年6月20日、東京都知事選挙が告示されました。
小池百合子知事は2024年6月20日、都議会定例会の最終日に都知事選挙への出馬を表明した。
当初、定例会の初日に表明をすると見られていましたが、大幅に遅れました。
これは先手を打った蓮舫氏の出馬表明が世間の耳目を集めたからでしょう。
★上田
”小池劇場”を格好よく幕開けしようと画策していたところ、自分よりも若く、しかもタレント出身の蓮舫氏が注目を集めたので、出鼻を挫かれたわけです。
さぞ、悔しがったに違いありません(笑)。
小池知事は蓮舫氏の出馬表明に焦り、自分をアピールするため、すぐさま都庁保育園の視察に行きました。
その時、小池知事が子供たちに
「おいで」
と手招きしたら、子供が嫌がって逃げたという”放送事故級”の映像がテレビで流れています(笑)。
★澤
お得意のパフォーマンスが失敗に終わったわけですね。
★上田
実は保育園視察のパフォーマンスは、2016年の最初の知事選の際も江戸川区の保育園で行っています。
これがマスコミにも大きく報道されたので、”成功体験再び”という狙いで、8年前と同じジャケットを着て都庁保育園へ視察に行ったのでしょう。
★澤
8年前と同じジャケットですか(笑)。
★上田
小池知事は物持ちが良いので、ゲンを担いで同じ物を着たのでしょう。
★澤
更に小池知事は自分のやってきた事をアピールするため、生成AIで自分の似姿を作り、
「AIゆりこ」
を使ってSNS上で自分の実績を流しました。
★上田
相変わらず自分をアピールすることには余念がない(笑)。
★澤
上田先生は小池知事が出馬表明した定例会最終日に、知事への不信任案を提出しています。
★上田
結局、不信任案に賛成したのは提出者の私1人でした。
2017年の都議選で、小池知事に一杯食わされた自民党も、ここ数年は小池知事に擦り寄っています。
今回の知事選でも小池知事支援を表明しており、不信任案には反対。
ここ数年の自民党を見ていると、本当に情けなく感じます。
しかし自民党以上に酷いのは、立憲民主党と共産党です。
この2党は都知事選で蓮舫氏を支援するのに、不信任案に反対しています。
もし不信任案が通った場合、知事は対抗手段として10日以内に議会を解散できます。
そうなると、都議会議員選挙になりますから、選挙準備の出来ていない彼らは自分の身が危うくなる。
つまり、自己保身のための反対です。
★澤
都議会も保身ですが、小池知事の出馬も同じです。
「カイロ大卒」
という”大嘘”を貫き通すためにも、小池知事は政治家という立場を続けている限りは、カイロ大側も日本の首都の知事が卒業しているというステータスとして利用価値があるので、口裏を合わせるはずですから。
★上田
アラブはギブアンドテイクの社会なので、旨味がなければ切り捨てられます。
小池知事がニュースキャスターのままなら、エジプト大使館も、わざわざフェイスブックで彼女の卒業証明なんてしなかったでしょう。
カイロ大卒の虚飾を続けるためにも、小池知事は都知事選で3選を目指すしかないのです。
■”アラブ人モドキ”
★澤
小池知事の動きを見ていると、小池知事側から自民党・公明党に擦り寄っているように見えます。
小池知事自身も、自民党の組織票がなければ、都知事選での勝利は厳しいと考えているのでしょう。
★上田
2016年の都知事選の時は、自民党東京都連を
「ブラックボックス」
と非難し、”反自民”を貫いて当選しましたが、今回は反自民の旗を蓮舫氏が掲げていますから、反自民票は蓮舫氏に流れやすい。
★澤
小池知事は”選挙の鬼”ですから、如何に票を得るかという策略には抜かりがありません。
各市町村の首長が応援してくれれば有権者が動いてくれると目論見、応援を要請しています。
ところが、その応援要請が何故か
「各首長から出馬を依頼された」
という
「出馬要請」
に掏り替わって報道されました。
★上田
これは小池知事による見事な”自作自演”です。
★澤
小池知事は
「応援要請はしていない」
と否定していますが、日野市の大坪冬彦市長が
「元々は小池知事からの応援要請だった」
と”暴露”しています。
どうしてこのような暴露が出るのかと言えば、東京都には三多摩格差(特別区と多摩地域の間に存在する社会基盤の格差)があり、多摩地域の首長が不満を持っているからです。
小池知事は臆病な性格なので、蓮舫氏の出馬で自分が不利なるのではないかと過剰に反応し、各自治体の首長に泣きつきました。
2020年の都知事選の際の学歴詐称疑惑を巡る騒動の時、沈静化のためにエジプト大使館に泣きついたのと同じ構図です。
★上田
小池知事は”アラブ人モドキ”なのです。
アラブ人は自ら脅す分、脅されることにも強い。
しかし、”モドキ”の小池知事は中途半端にエジプトにいたので、脅すことは出来ても、脅されるのには弱いのでしょう。
澤さんは都知事選の行方をどう見ますか?
★澤
小池都政の8年間、ピンポイントでの批判は多々ありますが、”政治とカネ”といった大きなスキャンダルはありません。
すると、多くの都民が
「小池さんでいいんじゃないの」
となるでしょう。
蓮舫氏の出馬会見も見ましたが、余りに小池知事に攻撃的でした。
国政と違い、都知事選では対立構図を鮮明にしても有権者には響きません。
「私ならこうする」
という具体的な政策で小池知事と戦わなければ、蓮舫氏が支持を広げることは難しいでしょう。
更に蓮舫氏は共産党との共闘を進めているので、共産党を嫌う
「連合東京」
も小池知事支援を決めています。
加えて、小池知事には現職の強みもあり、いくら知名度が高い蓮舫氏でも小池知事に勝利するのは至難の業です。
★上田
確かに蓮舫氏が小池知事に勝利するのは難しいでしょう。
しかし、私が地元を回っていると、映像に映る姿がふてぶてしいという理由で小池知事を嫌う声も多く耳にします。
私は当初、小池知事を圧勝させないことで力を削ぎたいと考えていました。
「辛くも勝利」
となれば、自公に頭が上がらなくなり、好き勝手な事が出来なくなるからです。
前回の選挙では366万票の支持を得て圧勝したので、その自信が
「私がいないと、政策実現が出来ないでしょ」
と言わんばかりに、”暴走”と”女帝化”に繋がりました。
いずれにしても小池知事、蓮舫氏。
カビた饅頭を2つに割って左右どちらかを食べろと言われても・・・という虚しい選択です。
(中略)
★上田
石原慎太郎都政下で積み上げた財政調整基金1兆円を使い果たした小池知事と都民ファーストの会(以下、都ファ)の議員。
★澤
都の財政調整基金がコロナの時に底をついてしまいましたが、小池知事が協力関係にあった公明党の要望を聞くために予算を膨張したのが原因で、都民を馬鹿にしています。
■女帝による陰湿なイジメ
★上田
お互い小池知事とは直に接してきていますが、澤さんは知事の人間性に対してどんな印象をお持ちですか?
★澤
ネチネチしたパワハラ気質だと感じました。
豊洲市場の追加対策工事がひと段落し、いよいよ1年後に豊洲移転が決まった直後、小池知事と市場当局の管理職との夕食会がセッティングされました。
私を含めた市場当局の管理職の面々はこれまで小池知事と移転について散々揉めてきましたから、遂に知事と和解できると手を叩いて喜びました。
ところが、職員が豊洲移転の詳細が書かれた資料を小池知事に見せる前にマスコミと議会に配ってしまったことで、知事は激怒。
小池知事に呼び出され、
「なぜ見せなかったのか」
とお説教が始まりました。
お説教が終わり、部屋を出ようとした際
「澤さん、今日は楽しい夕食会になるでしょう」
「でも、私は用事ができたので、野田(特別秘書を務めた小池知事の元側近・野田数(かずさ))を代わりに行かせます」
と言われました。
私は小池知事の静かなる怒りに背筋が凍るような感覚を覚えました。
★上田
小池知事が冷徹な口調で言い放った様が目に浮かびます。
澤さんが東京都環境公社の理事長を辞められたのも、事実上の”排除”でしたね。
★澤
私は理事長在任中に『築地と豊洲』(都政新報社)という本を出版し、小池都政を批判していましたから、目障りな存在だったのでしょう。
都庁人事の権限を握る副知事から呼び出され、クビを告げられた時に黙って従うのも嫌だったので、理由を聞きました。
すると、
「お前は常識がない」
「都知事選の前にマスコミに出て、雑誌・メディアで小池知事を批判している」
「これは都庁OBとしてあるまじき行為だ」
と言われました。
事実を主張しただけなので怒りで体が震えましたが、それ以上に呆れて何も言えませんでした。
★上田
まるでどこかの独裁国家みたいですね。
東京都に長年貢献し、知識もある澤さんをクビする一方、ただのイエスマンを要職に起用する。
小池知事は自分より目立たず、ほどよく利用できる人を重用します。
都ファの議員を見ていても、小池知事よりも目立って排除されないよう、服装も発言も地味に徹しています。
★澤
女帝に対し、皆、戦々恐々としている証拠です。
★上田
私は2016年の都知事選で小池知事を支援した際、仲間の無所属議員を集めて雨の中ポスター貼りなどの支援をしたにもかかわらず、”グリーン旋風”が吹き荒れた途端に街頭演説では、きっかけを作った私たちがマイクを持つことを許しませんでした。
これは手柄を全て小池知事自身と側近のものにしたいからで、私をはじめとした無所属議員は応援したのに”排除”されたのです。
私が媚びへつらうような態度を取らなかったので、面白くなかったのでしょう。
★澤
1度小池知事に疎まれると、”手を変え、品を変え”虐められます。
最近では、SNSで安易に都政関連の情報をアップすると都の職員がチェックしており、発信元の”犯人探し”が始まります。
私も1度、SNSで都庁の内部に関するコメントを書いたら、
「消して下さい」
と現役管理職から言われたことがあります。
このように今の都庁は、監視の目が常に光っている職場と化してしまった。
★上田
まるで言論統制ですね(笑)。
都庁に
「職員目安箱」
があり、小池知事は職員ファーストを掲げ、
「直接私に言って下さい」
と設置しましたが、そこに意見を投稿した職員が犯人探しされたという話も私の元に届いています。
都庁で何かあれば、秘書は必ず守るので、私のホームページにある問い合わせホームで相談してほしいと思います。
■小池知事最大の愚策
★上田
小池知事は人間性は疎か、都知事としての実務能力も欠いています。
安倍晋三元首相が『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)で、
「小池知事は実務が苦手」
と述べていましたが、当初の公約である
「7つのゼロ」
に関して、
「ペットの殺処分ゼロ」
しか達成出来ていないことがその象徴です。
しかし、ペット殺処分ゼロに関しても、譲渡可能なペットを殺すことを
「殺処分」、
病気の動物の処分を
「安楽死」
としているので、結果的に殺さてしまうペットがゼロになっているわけではありません。
★澤
私が小池知事の愚策としてまず思い浮かぶのが、多くの混乱を生じさせた築地市場の豊洲移転問題です。
また、直近のものでは2023年1月に突如宣言した0歳から18歳までの東京在住の子供に月5000円の支給を行う
「018サポート」
です。
018サポートは1200億円の予算がかかっていますが、議会で熟議されないまま政策が通ってしまった。
これでは議会制民主主義の体をなしていません。
しかも、マスコミから財源についての批判がないことも不自然です。
国の政策の場合、防衛費にしても少子化対策にしても財源が問題になり、マスコミから批判を浴びます。
マスコミは岸田政権と小池都政を対比させたいがために小池知事の財源問題に対しては”ダンマリ”を決め込む。
★上田
月額5000円を所得制限なしに子育て世帯に支給する018サポートは、2023年1月4日、都庁の仕事始めの午前中に突如発表されました。
これは所轄である福祉保健局の局長も知らなかった話です。
実は同日午後、岸田政権が異次元の少子化対策を発表することを受けて、小池知事は国より先に目立つ意図もあり、慌てて発表したのです。
018サポートが急に決まったこともあり、行政上の手続きが追い付かず、あろうことかこの支援を一番必要とする生活保護世帯が、恩恵を受けられないことが発覚しました。
小池知事が慌てて収入認定からの除外要請を依頼する手紙を、厚生労働大臣に送る事態に発展。
更に、案内チラシを17万件もの転居者に誤って送るミスまでありました。
この誤送付で、多額の血税が郵送費等で消えています。
それについて、私は情報開示請求をしています。
私が最も驚いたのは、小池知事の政策設計が悪かったにもかかわらず、あたかも政府に原因があるかのような報道をさせることで責任転嫁する始末です。
★澤
岸田首相と比較して自分がどれだけ目立つかということだけで018サポートを始めたので、まさに選挙を意識した”バラマキ”です。
小池知事はコロナ禍でも意味もなく国と対立構造を作りました。
また、忘れていけないのは、環境問題に関するパフォーマンスのため、新築住宅に太陽光パネルの設置を義務付ける条例改正をし、大混乱を引き起こしたことです。
都民の利益を考えずに、自分ファーストで突っ走っています。
★上田
本誌『WiLL』でも散々指摘してきましたが、太陽光パネルは8割が中国製です。
しかも、新疆ウイグル自治区での強制労働によって作られており、欧米では中国への制裁を発動しているにもかかわらず、小池知事は強硬に進めています。
最近新築戸建て住宅の価格がパネル設置で100万円上昇するということが報道され、それ見たことかという状況になりました。
更に、元日に発生した能登半島地震でも、経産省が、落下したパネルに触らないよう異例の注意喚起をするなど、危険性が明らかになりました。
万が一、東京都で首都直下型地震が起きてしまったら、目も当てられないような2次災害が起こりかねません。
★澤
自分のパフォーマンスのために都民に被害や犠牲が出かねない判断です。
都庁OBとして、都民のためにも職員のためにも小池知事には1秒でも早く都庁から去ってほしい。
皆が戦々恐々としながら、何も言えないという状況は異常です。
この状況を改善しなければ、都民のためにも東京の街のためにもなりません。
でも蓮舫氏はなあ・・・。
★上田
嘘つきは泥棒の始まりと言われているように、私たち日本人の美徳は正直であることです。
にもかかわらず、日本の首都・東京の顔である知事に学歴詐称疑惑が持ち上がっているのは如何なものか。
カイロ大学とエジプト政府に学歴を証明してもらって弱みを握られていることも外交上、”百害あって一利なし”です。
小池知事にはこの責任をきっちり取って頂きたいです。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/750.html#c79

[政治・選挙・NHK294] <れいわフレンズも支援を始めた!>都知事選 れいわの誇る音響設備が蓮舫陣営に届いた(田中龍作ジャーナル) 赤かぶ
40. 秘密のアッコちゃん[419] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年7月01日 17:58:28 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[532]
<■2336行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
移民に好かれる日本になれってか!
今だけ金だけ自分だけー事実上の移民政策を隠れて進める卑怯者たち
WiLL2024年8月号 麗澤大学客員教授・イスラム思想研究家 飯山陽
■”大量移民時代”に突入した
日本という国が音を立てて崩壊しています。
今国会で可決、成立した改正入管難民法がそれを象徴している。
これにより、
「技能実習」
が廃止され、代わりに
「育成就労」
を創設することが決まりました。
「技能実習」
は”国際協力”という美名の下、外国人実習生に”日本で働かせてあげる”という制度でした。
実習生に認められた滞在期間は最長5年。
帰国を前提としたものです。
ところが、
「技能実習」
は人権侵害の温床とも指摘されていた。
外国人を低賃金で酷使する経営者に耐えかねて、行方を眩ます実習生もいたほどです。
悪名高い
「技能実習」
を改めて、新たに
「育成就労」
制度を創設する。
それが法改正の目的ですが、これがなぜ問題なのか。
「育成就労」
は、外国人が日本で働き続けることを前提としているからです。
新制度は大きく分けて、3段階のプロセスから成ります。
3年間を目途に、外国人が一定の技能水準に到達するよう育成する。
その後、最長5年の就労が可能な
「特定技能1号」
への移行を促す。
最終的に、家族帯同や永住権も申請できる
「特定技能2号」
に格上げするー。
事実上の移民政策と言える。
いや、移民政策そのものです。
岸田総理は法案審議で詭弁を連発。
移民政策を
「一定規模の外国人や家族を制限なく受け入れる」
政策と定義した上で、
「いわゆる移民政策を採る考えはない」
と言うのです。
「育成就労」
は最終的に家族帯同、永住権を申請できるシステムになっている。
ところが、岸田政権は頑として認めない。
「LGBT法は理念法だから」
と言い逃れを繰り返したのとソックリです。
日本国民を欺きながら、移民政策を推進しているのが岸田政権に他なりません。
「育成就労」
創設により、日本は”大量移民時代”に突入しました。
■財界の代弁者
移民政策の推進により、一体誰が得をするのか。
経団連をはじめとする財界です。
経団連の十倉雅和会長は過去、
「(外国人に)ずっと働いてもらえる社会を作ることが大事」
などと訴えている。
財界に要請されて、政府は”ずっと働いてもらえる”ことを前提とする
「育成就労」
を推進した。
そんな構図が浮かび上がります。
財界の”親中”はかねて指摘されてきました。
日本企業は中国に生産拠点を作り、現地の安い労働力を使う。
人件費のコストカットにより、日本企業は利益を上げてきました。
その結果、日本国内の産業空洞化を招いてしまった。
日本企業が日本人の代わりに中国人を雇うというのは、日本人が受け取るべき給与が中国人に渡ることを意味している。
日本の富が中国に流出してしまったのです。
日本企業はバブル崩壊後、1990年代から中国進出に熱を入れるようになった。
”失われた30年”と重なるのは偶然なのでしょうか。
トランプ政権の登場などにより、
「脱・中国」
が世界の潮流になりつつある。
日本の財界が移民受け入れを声高に叫ぶ背景には
「脱・中国」
の影が垣間見えます。
中国への事業展開により、現地の中国人を労働力として使っていた。
それが難しくなったから、代わりに日本国内へ大量の移民を招き入れるという”頭の切り替え”があったのかもしれない。
いずれにせよ、一般の日本人労働者が犠牲になることに変わりはありません。
日本企業が移民を雇用すれば、その分だけ日本人の雇用は奪われる。
日本人の賃金上昇も鈍化します。
政府は
「育成就労」
創設の理由に人手不足を挙げている。
しかし、日本には200万人もの失業者がいます。
彼らに職を与えずして、移民をなぜ受け入れるのか。
完全に優先順位を誤っています。
■日本人の視点はゼロ
岸田総理は国会で、
「外国人にとって魅力ある制度を構築し、選ばれる国になることが必要不可欠だ」
と答弁している。
”選ばれる国”というのは、外国人に媚びへつらうような物言いですが、これも財界の代弁に他ならない。
経済同友会の新浪剛史代表幹事は
「(外国人に)日本での生活に馴染んでもらうために、どうすべきかを考えるべきだと思う」
と発言しています。
政府と財界がタッグを組んで推進する移民政策。
そこに欠けているのは日本人の視点です。
本来であれば、野党やメディアが日本人の立場を代弁しなければならない。
しかし、野党もメディアも思考停止=機能停止状態です。
「育成就労」
創設に反対したのは立憲民主党、共産党、れいわ新選組などですが、反対の理由は
「外国人の権利が守られないから」
というもの。
外国人への配慮が足りないと批判していたのです。
朝日新聞の社説には、改正案に対する苦言が呈されていました(2024年5月10日付)。
<理解し難いのは、税や社会保障などの支払いを故意に怠った永住者の在留資格を取り消せるようにする規定を、法案が含んでいることだ>
<在留が長く、既に社会に溶け込んだ人々の生活に直結する問題で、有識者会議にも諮られていないのに唐突に入った>
朝日新聞が野党の代弁者なら、読売新聞は与党と財界の代弁者と言える。
読売新聞は以下のような社説を掲載(2024年4月26日付)。
<政府は、育成就労と特定技能を「車の両輪」として、労働力を補っていく>
<他国も受け入れを進めており、獲得競争を勝ち抜くには「選ばれる国」にならなければならない>
政治家、官僚、財界、メディア・・・。
「育成就労」
を巡り、彼らが議論していたのは外国人の権利を如何に守るかだけ。
移民を受け入れることで、日本社会が被るデメリットは全く論じられない。
日本国民の視点が一切ありません。
日本にやって来る外国人は善人、彼らをこき使う日本人は悪人ー。
”外国人性善説”と”日本人性悪説”を前提に議論しているのです。
外国人が善人ばかりでないことは徐々に明らかになっている。
例えば、埼玉県川口市のクルド人問題が挙げられます。
川口市に住む約60万人のうち、外国人は約3万9000人。
人口の6.5%を占めます。
日本人の住民たちが、クルド人の犯罪や迷惑行為に怯えながら生活している現状がある。
円安がオーバーツーリズムを加速させていますが、外国人観光客が迷惑行為に手を染めるケースも多い。
日本の伝統や文化に敬意を払わない外国人からも”選ばれる国”を目指すのか。
■バイデン「2つの嘘」
バイデン大統領の演説が物議を醸しました。
<アメリカ経済が成長している理由の1つは、移民を受け入れているからだ>
<日本はなぜ問題を抱えているのか>
<彼らが外国人嫌いで、移民を望んでいないからだ>
バイデン大統領の発言には2つの誤りがあります。
第1に、
「移民を受け入れると経済が成長する」
という証拠はない。
移民を受け入れるほど、成長率はむしろ下がるというデータがあります。
日本政府は労働力不足を解消するために移民受け入れを推奨している。
他方、政府は彼らに家族の帯同を認めています。
移民の給料は安く、日本に連れて来た家族を養うのは難しい。
働く意欲を失ったり、病気になったりする外国人労働者も出てくるでしょう。
彼らが社会保障制度の世話になるのは火を見るより明らかです。
外国人により、その国の社会保障制度が食い潰されてしまいます。
これは欧米で実際に発生している問題なのです。
第2に、
「外国嫌いの日本人は移民を望んでいない」
というのも嘘です。
「育成就労」
がそれを証明しました。
アメリカでは党派を超えて、移民の入国制限を訴えています。
共和党のトランプ前大統領が不法移民策に力を入れていたのは有名です。
バイデン大統領も現在、トランプ氏に対抗するかのように、取り締まりを厳格化している。
民主党は移民に寛容なイメージが強い。
実際にオバマ政権は合法・不法を問わず、移民を歓迎していました。
ところが、民主党も慎重なスタンスを取るようになった。
アメリカ国民がそれを望んでいるからです。
「アメリカが抱える最重要課題は何か?」
を問う世論調査では、
「移民」
が1位でした。
アメリカでは
「多様性」
「共生社会」
という幻想は完全に打ち砕かれています。
■日本が”サンクチュアリ”に
移民にオープンな岸田政権の姿は、かつてのアメリカ民主党と重なります。
2024年11月の大統領選でトランプ氏が勝利すれば、アメリカに殺到している移民たちは日本を目指すことになる。
バイデン氏が勝利しても同じです。
日本は”サンクチュアリ(聖域)”になりかねない。
”サンクチュアリとは何かー。
アメリカでは州ごとに移民へのスタンスが異なります。
メキシコと国境を接するテキサス州は、不法移民を厳しく取り締まっている。
メキシコからの移民流入を防ぐために、貨物列車を止めたり、国境を流れる川にブイを置いたり、川岸にワイヤーを設置したりしてきた。
極め付きは、テキサス州にやって来た大量の不法移民を”サンクチュアリ・シティ”に送り付けたのです。
”サンクチュアリ・シティ”というのは、移民を歓迎する都市のこと。
その代表がニューヨーク市です。
リベラルが幅を利かせるニューヨーク市は、たとえ不法移民であっても歓迎するという姿勢でした。
ところが2022年、ニューヨーク市は非常事態を宣言。
財政破綻の危険を訴えたのです。
ニューヨーク市のみならず、不法移民を受け入れた州や都市は財政悪化に苦しんでいます。
地元住民の反移民感情も高まっている。
保守リベラルを問わず、アメリカ全体が移民政策を見直しつつある。
にもかかわらず、日本のメディアはアメリカの”変化”を報じません。
国民が世界の潮流に疎いのをいいことに、岸田政権は国民を騙すような形で移民政策を推進しているのです。
■”極右”というレッテル貼り
移民を巡り、欧州の政治地図は激変しています。
欧州議会選では保守勢力が立て続けに勝利を収めました。
最も注目されているのがフランスに他ならない。
マリーヌ・ルペン氏率いる
「国民連合」
が、マクロン大統領の与党連合にダブルスコアを付けて圧勝したからです。
欧州議会選はフランスのみならず、各国で右派の勝利に終わりました。
スペインは保守派の国民党、オーストリアは右派の自由党が勝利。
ベルギーは首相が率いる左派政党が敗北しています。
欧州はリベラルに代わり、保守が大きな支持を集めるようになったのです。
大変化は数年前から既に起こっていました。
イタリアではメローニ首相が誕生。
オランダでは2024年、ウィルダース氏率いる自由党が第1党になった。
ドイツでは
「ドイツのための選択肢」、
イギリスでは
「リフォームUK」、
スウェーデンでは
「スウェーデン民主党」、
ポルトガルでは
「シェーガ」
が支持を急速に拡大している。
共通しているのは、自国第1主義、反移民、反環境を掲げていること。
一言で言えば”愛国保守”です。
ところが、日本の大手メディアは彼らを”極右”呼ばわりしている。
自国の利益を第1に考え、自国民の幸せを最優先にする政党は”極右”扱いされます。
メディアの定義に従えば、私は立派な”極右言論人”です。
『WiLL』も”極右雑誌”といったところでしょうか。
いずれにせよ、愛国保守=危険というイメージを刷り込もうとしています。
メディアはなぜ自国第1主義を危険視するのか。
答えはシンプルです。
彼らは日本ではなく外国、日本人ではなく外国人の利益を代弁してきた。
それにより利益を得てきたからこそ、自国第1主義や反移民、反環境を唱える政党を貶めようと必死なのでしょう。
保守政党が勢力を拡大すれば、メディアがついてきた嘘は暴かれ、影響力と信用は失墜するー。
危機感を覚えているのかもしれない。
■全ての”卑怯者”に告ぐ
政治家が自国を第1に考えるのは当たり前です。
急増する移民・難民、非現実的な環境政策のせいで、これまでの生活や社会が崩壊した。
イスラム移民によるヨーロッパの退廃を、イギリス人ジャーナリストのダグラス・マレーは”西洋の自死”と呼びました。
滅びゆく国家や社会の姿を目の当たりにしたからこそ、欧州の人々はメディアの洗脳から解放され、保守に目覚めたのです。
欧州議会選挙の結果はその延長線上にある。
メディアが自国第1主義を唱える政党に極右のレッテルを貼ったところで、この流れは止まりません。
翻って日本はどうか。
欧米の失敗を教訓にするどころか、欧米の轍を踏もうとしています。
政治家、官僚、財界、メディア、アカデミズム・・・。
社会的に影響力を有する人たちが、日本を誤った方向に誘導しようと企んでいる。
嘘や誤魔化しを用いる彼らの手口は”卑怯”そのもの。
その悪行をどうにか暴けないか。
そんな思いから、『卑怯者!』(ワック)を上梓しました。
日本は今、猛スピードで”自死”に向かっている。
”時既に遅し”となる前に、1人でも多くの日本人に危機感を覚えてほしい。
飯山陽、日本のために闘い続けます!

メディアがダメだから国会議論もダメ
正論2024年7月号 政策シンクタンク代表 原英史
10年後、20年後に、
「あの法改正がその後の日本社会の破壊に繋がった」
と振り返ることになるのではなかろうか。
この通常国会で成立に向けて審議が進む、技能実習制度の見直しなどに関する法案のことだ。
■国会での意見陳述
技能実習制度は、劣悪な労働環境や失踪などが生じ、外国政府からも人権侵害との批判を受け、見直しの検討がなされてきた。
法務省の有識者会議での検討(2023年11月に最終報告)を経て、2024年の通常国会に法案が提出された。
2024年4月16日に審議入りし、2024年4月26日には衆議院法務委員会で参考人質疑が行われ、私も参考人として意見陳述を行った。
概略こんな事を述べた。
第1に、
「外国人に選ばれる国に」
という標語は再考すべきだ。
政府やマスコミは最近揃って、
「このままでは日本は外国人に選ばれなくなってしまう」
「外国人に選ばれる国にならないといけない」
などと唱えているが、違和感を感じる。
外国人の中には、日本文化を愛し、地域に溶け込み、経済成長に貢献する
「居て欲しい外国人」
もいれば、一方で、経済社会に貢献せず、犯罪を起こし、脱税や社会保障制度の悪用などを行う
「居て欲しくない外国人」
もいる。
まず、
「日本国が外国人を選ぶ」
ことが決定的に重要だ。
これを欠いたまま
「外国人に選ばれる国」
を目指しても、
「居て欲しくない外国人」
ばかりが日本を選ぶことになりかねず、これは害悪でしかない。
第2に、これまで日本政府が行ってきた事は、
「なし崩しの移民受け入れ」
だ。
政府は建前では
「移民政策は採らない」
と言い続けてきた。
第2次安倍政権の初期に
「年20万人の移民受け入れ」
の試算を示して猛反発を受けて以降、決まり文句として唱えることになり、菅内閣・岸田内閣にも引き継がれた。
しかし、現実には外国人労働者の数は、2012年に68万人から2023年には205万人になった。
この10年ほどの間、毎年12万人の移民受け入れを行ってきたのが実態だ。
また、政府のもう1つの建前は、
「高度な人材は積極的に受け入れるが、単純労働は受け入れない」
だが、これも現実と乖離している。
この10年ほどの移民受け入れの相当部分は、技能実習と資格外活動(主に留学生のアルバイト)だった。
言うまでもなく、どちらも技能水準のごく低い労働者だ。
一方で、
「積極的」
に受けれいているはずの高度人材は、2012年に高度人材ポイント制を創設したものの、技能実習などとは桁が異なり、外国人労働者総数の1%程度に留まって来た。

★表 外国人労働者データ(@2012年A2023年)、単位:人
・外国人労働者総数*1:@682,450A2,048,675
・技能実習*1:@134,228A412,501
・資格外活動*1:@108,492A352,581
・高度人材*2:@313A23,958
(出典)
*1:厚生労働省「外国人雇用状況」(各年10月末)
*2:出入国在留管理庁「在留外国人数」(各年末)

(【表】)要するに、日本政府が行ってきたことは、建前とは全く裏腹に、単純労働に重きを置く移民の受け入れだ。
これは、安価な労働力を求める一部産業界に引きずられた結果として生じて来た。
第3に、技能実習制度の問題の根源は、
「安価な労働力」
を求める一部産業界による悪用だ。
もちろん全てが悪用ではなく、好事例もある。
しかし、生産性の低い業界や企業が、高い賃金を払えないため人手不足に陥り、生産性を高めて賃金を上げる努力をする代わりに
「安価な労働力としての外国人」
に頼るケースが少なからずあった。
政府はこうした一部業界の要望に応えて対象業種を追加し、悪用を黙認してきた。
結果として、以下の問題が生じた。
@安価な労働力を求める企業が利用するので、自ずと劣悪な労働環境など人権侵害が生じがちになり、失踪などの事案も生じた。
A安価な労働力を受け入れるので、犯罪や社会的トラブルなど、社会への悪影響も生じがちになった。
B受け入れた企業は、生産性を高めて賃金を上げる代わりに、外国人労働力を受け入れて生き延びる道が与えられ、このため、賃金は低迷し、経済成長が阻害された。
日本は今、相対的に賃金の低い、貧しい国へと転落しつつあるが、大きな要因の1つが技能実習制度の悪用だった。
こうした経過を考えれば、問題解決には外国人政策を根本から見直す必要がある。
審議中の改正案のような小手先の手直し(技能実習の名称を改める、転籍を認めるなど)ではなく、何のためにどのような外国人を受け入れるのか、基本戦略を定めなければならない。
個別制度見直しの前にまず
「外国人基本法」
を制定すべきだ。
こういった事を国会で述べた。
実は、私は直前に骨折して入院中だったが、何としても国会議員の方々に問題を認識して、本来あるべき議論をして頂きたいと考えたので、無理に外出許可を貰って車椅子で出席した。
だが、残念ながら、徒労だったようだ。
私の提起した課題はほぼ議論されることなく、法案審議は粛々と進み、2024年5月17日に衆議院法務委員会で可決された。
参議院での審議が残されているものの、恐らくこのまま成立に向かう可能性が高そうだ。
■産業界に阿る与党
政府の改正案について、少し詳しく説明しておこう。
全くダメなわけではなく、評価できる部分もある。
技能実習関連以外で
「永住資格の取り消し」(永住者が税や社会保険料の支払いを故意に怠る場合や一定の犯罪を犯した場合に資格を取り消す規定)
の追加も提案されている。
これは望ましい改正だ。
本来そんな外国人には永住資格を与えるべきではなく、取り消し規定がなかったことがおかしかった。
早急に規定を追加し、厳正に執行すべきだ。
一方、
「技能実習制度の見直し」
は全く評価できない。
政府案では、技能実習制度を廃止し、代わりに
「育成就労制度」
を設ける。
報道では、
「育成就労では、技能実習と異なり、転籍が一部認められている」
といった事ばかり強調されているが、そんな事は枝葉の話でしかない。
事の本質は、従来の
「なし崩しの移民受け入れ」
を正面から制度化するものなのだ。
従来の仕組みは、
▽国際貢献(母国で働く人材を育てる)を目的とする技能実習制度に基づき、脱法的に低技能労働者を受け入れ、
▽更に、2018年改正で創設した特定技能制度と事実上接続して、長期在留を可能にし(ただし、あくまで事実上の接続であり、本来の制度趣旨には反するので、政府の説明資料では少し隙間が空いている)、なし崩しで
「低技能労働者を受け入れ、長期在留させる」
ものだった。
今回の改正では、
▽技能実習制度の代わりに、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を設けて、制度上堂々と低技能労働者を受け入れられるようにし、
▽更に、特定技能制度と正式に接続し(政府の説明資料では、隙間がなくなる)、制度的に
「低技能労働者を受け入れ、長期在留させる」
仕組みにするものだ。
看板の掛け替えに過ぎないという以上にこれまでコソコソと行ってきた事を堂々と看板に書いてしまうような改正と言って良い。
これではもちろん、先に述べた技能実習のもたらしてきた問題(人権侵害、犯罪・社会的トラブル、賃上げと経済成長の阻害)は何ら解消しない。
それどころか、今後は堂々と低技能労働者の受け入れを拡大できることになるから、益々増幅することになるだろう。
こうした改正の方向と軌を一にして、政府は2024年3月末、特定技能の受け入れ見込み数として
「今後5年で82万人」
との方針を決定した。
制度発足時の2018年からこれまでの5年間は34万人だったから、倍増以上だ。
また、対象業種として、バスやトラック運転手などの自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野を追加する方針も併せて決定している。
特定技能の入り口である育成就労も、自ずと拡大していくことになろう。
より長期的な見通しも示されている。
2023年4月に国立社会保障・人口問題研究所が示した将来人口推計だ。
「外国人が毎年16万人入って来る」
との前提の下、人口に占める外国人比率が2020年の2%から2070年に11%にまで増えるとの推計を示した。
「移民政策は採らない」
などという空虚の説明をしながら、政府は現実には
「なし崩しの移民受け入れ」
を着実に前進させ、本格的な拡大へと向かっている。
ちなみに私は、外国人雇用協議会という一般社団法人の代表理事も務めている。
この団体には、安価な労働力の受け入れとは一線を画し、
「日本の経済社会で活躍できる質の高い人材の受け入れ」
という理念を共有する外国人材関連企業の業界団体だ。
団体の会員企業にとっては、単に短期的な利益拡大だけを考えれば、今回の法改正で外国人の受け入れ規模が拡大するのはビジネスチャンスかもしれない。
しかし、日本社会には取り返しの付かない損失をもたらしかねない。
結果として、長期的に外国人材ビジネスの基盤も損なわれる。
だから、私個人はこの法案には反対であり、参考人質疑でもそう明言した。
正直なところ、政府・与党がこんな法案を国会に提出したことには甚だ失望した。
欧米諸国の多くでは、移民問題が深刻な社会混乱をもたらしている。
日本の政治家も官僚もその状況は十分認識しているはずだ。
それなのに何故、諸外国の失敗の道を辿るように、
「なし崩しの移民受け入れ」
を平然と制度化しようとするのか。
特に自民党の保守派の議員たちは一体何をしているのか。
結局、政府・与党は、人手不足を訴える一部産業界に阿って、国の未来を危うくする危険性に目を瞑っている。
本当に情けないことだが、これが今の政府・与党の現実だ。
「政治とカネ」
を巡る自民党の対応が問題になっているが、こちらの方が余程深刻だと思う。
■より低レベル人材を求める立憲
立憲民主党は対案として
「外国人労働者安心就労法案」
を提出した。
立憲民主党の説明によれば、政府案では外国人の人権侵害の要因が除去されなていないのに対し、対案は外国人の人権を守る内容だという。
しかし、中身を見ると、
「外国人の人権を守る」
とは逆行している。
まず、技能実習と特殊技能を一本化して
「一般労働」
という制度に改め、受け入れのハードルをこれまでより引き下げる。
技能講習でも政府・与党案の育成就労でも最低限の日本語能力が求められるが、これを不要にするという。
とんでもない話だ。
日本語のできない低技能労働者を受け入れれば、職場でも地域社会でもこれまで以上にトラブルが生じる。
周囲の日本人に迷惑を及ぼすだけでなく、外国人自身にとっても人権侵害や差別を受ける可能性が高まるだろう。
更に
「永住資格の取り消し」(永住者が税や社会保険料の支払いを故意に怠る場合や一定の犯罪を犯した場合に資格を取り消す規定)
には反対し、規定を削除している。
これもおかしなことだ。
ルールを守らない外国人を野放しにすれば、外国人への反感が高まり、ルールを守る外国人までその対象にされかねない。
むしろ外国人への人権侵害を増幅しかねない。
何故こんな逆行した対案を出すのか。
結局、本当に人権を守りたいわけではないのだと思う。
本当に人権を守りたければ、低技能労働者を受け入れるのをやめ、安価な労働力として悪用される道を断てば良い。
「可哀相な外国人」
を作らないよう未然防止するのが最善の解決策だ。
ところが、立憲民主党の対案は、政府・与党案以上にもっとレベルの低い低技能労働者を受け入れ、問題を起こす外国人も在留させ続けようという。
「可哀相な外国人」
をもっとたくさん作って、その上で
「可哀相な外国人」
を守ろうという話だ。
マッチポンプそのものだが、これが
「人権を守る」
と称する人たちの求めていることだ。
参考人質疑の際、共産党の本村伸子議員から、諸外国での移民受け入れの状況について問われ、私はこう答えた。
多くの国には、安価な労働力を求める産業界がある。
一方で、可哀相な外国人を受け入れたい、守りたいという人たちもいる。
これらは全く異質なようだが、実は同じ方性を向いて、一緒になって社会を悪くしてきた。
これが欧米諸国の多くで起きてきたことだ。
現在の国会状況を見れば、日本でも同様に、産業界と人権左翼の結託が起きている。
自民党は、産業界の要望に応えて安価な労働力の受け入れを制度化しようとする。
立憲民主党は、可哀相な外国人を守ると称し、更に低レベル人材を受け入れようとする。
与野党どちらも、安価な労働力を受け入れる方針では合致して、どちらがより社会を悪くできるかを競い合っている状況だ。
そして、基本的な方向は合致しているから、こんな劣悪な政府・与党案に対して、野党は徹底抗戦しようとしない。
粛々と法案は成立に向かっているのだ。
しかも、採決に際しては、
「永住資格の取り消し」(永住者が税や社会保険料の支払いを故意に怠る場合や一定の犯罪を犯した場合に資格を取り消す規定)
に関して立憲民主党の主張を一部受け入れ、
「外国人の状況に配慮して行う」、
即ち資格取り消しは抑制的にしか行わない旨の修正が施された。
せっかく的確な改正がなされようとしていたのに規定の実効性を損なったわけだ。
最早、与野党で手を握って、社会を危機に向かわせようとしているとしか思えない。
■一刻も早く国民的議論を
残念ながら、こうした惨状をマスコミは全く報じない。
私は、これまでも技能実習の見直しについて、マスコミの報道がおよそ的外れであることを繰り返し指摘してきた。
2023年5月に法務省の有識者会議が中間報告を出した段階で本誌2023年7月号に
「弱者を作る朝日 移民を歓迎する産経」、
本誌2023年11月号に最終報告が出た段階で産経新聞にコラム
「『外国人に選ばれる国』という美名の下に…」(2023年12月10日付)
を寄稿し、新聞各紙は
「人権を守れ」
「選ばれる国に」
などと唱えるばかりで、
「安価な労働力」
に偏った外国人受け入れなどの根本問題に触れていないことを指摘してきた。
国会での法案審議の段階になっても状況は全く変わらない。
▼読売新聞は、
「外国人の就労環境を改善せよ」
「『選ばれる日本』にしていくことが大切だ」
と説いている(2024年2月10日付社説)。
▼産経新聞は、
「労働環境の是非を着実に」
と唱え、取って付けたように
「移民に対し安易に道を開くことにならにように」
と付け加えるだけだ(2024年3月21日付主張)。
▼朝日新聞は、
「労働者の権利を重んじる態勢に生まれ変われるのか疑問」
と指摘し、永住資格の取り消しについては
「筋違いで、共生の理念を否定するメッセージ」
と厳しく批判している(2024年5月10日付社説)。
いずれも、これまで本稿で述べてきたような外国人政策の根本問題には全く目を向けていない。
更に、ルールを守らない外国人との
「共生」
を求める朝日新聞に至っては、論外と言う他ない。
マスコミがダメだから、国会でもダメな議論しかなされない。
本来、外国人政策は、国の未来の姿、国民1人1人の生活に重大な影響を与える。
国民が議論に参画し、選挙などを通じ選択すべき課題だ。
一刻も早く、国民的議論の土台を整える必要がある。
そのため、
「移民政策は採らない」
などの意味不明な言葉で誤魔化すのでなく、明確な選択肢を示して議論がなされるべきだ。
第1の道は、従来の延長、即ち
「低技能労働者を中心とした移民受け入れ」
の拡大だ。
これは、欧米の多くが辿って来た道だ。
「深刻な人手不足への対応」
「人口減少する地方の活力維持」
「外国人の人権を守る」
などともっともらしい説明がよくなされるが、行き着く先は大概同じだ。
第2の道は、
「外国人排斥」
だ。
欧米各国では、第1の道で深刻な社会問題が生じ、反作用として極端な排外主義を唱える勢力が力を強めた。
第1と第2の道の対立で、社会の分断も招いた。
日本でも今後、こうした声が高まる可能性は高い。
第3の道は、そのいずれでもなく、冒頭でも触れた
「外国人を選ぶ」
道だ。
経済社会を豊かにすることに貢献する高度人材は積極的に招き、低技能労働者は受け入れない。
表向きの説明としては、日本政府はずっとそう言い続けてきたのだから、本当にその通り実行したらよい。
私は、欧米諸国の失敗を踏まえれば、これが進むべき道だと考えている。
いずれにせよ、このまま漠然と
「なし崩しの移民受け入れ」
を延長・拡大し、社会が大混乱に陥ってからでは手遅れだ。
1度立ち止まって、国の進む道を冷静に議論するには、今が最後のチャンスだ。

育成就労法案、衆院通過へ 労働力不足に外国人材確保 職場変更「転籍」も可能
2024/5/21 7:11
https://www.sankei.com/article/20240521-PBYN6RJRE5MVXCKDP3TIJGYTHM/
技能実習に代わる外国人材受け入れの新制度
「育成就労」
を創設する入管難民法と技能実習適正化法の改正案が2024年5月21日、衆院本会議で可決され、衆院を通過する。
参院に送付され、今国会で成立する見通し。
人手不足の分野で労働力を確保し、即戦力とされる特定技能水準の人材を育て、長期就労を促す。
公布から3年以内に施行する。
育成就労の在留期間は原則3年で、技能実習では原則禁止されていた同じ業務分野で職場を変える
「転籍」
を一定の条件で認める。
転籍手続きなどで悪質なブローカーを排除するため、民間業者の関与を禁じる。
技能実習で受け入れ仲介を担う監理団体は
「監理支援機関」
と名称を変え、外部監査人を設置して中立性を高める。
今後は永住者の増加も見込まれるとして、納税などを故意に怠った場合は永住許可を取り消し、別の在留資格に切り替える規定も盛り込んだ。
衆院審議では与野党が修正を協議し、永住者の生活状況に配慮することなどを付則に追加した。

国貧しくする外国人政策
政策シンクタンク代表 原英史 
2024/4/28 8:00
https://www.sankei.com/article/20240428-7IRYKFFZSFP2TFLRAJTQM47IVE/
外国人の技能実習制度の見直しなどを内容とする出入国管理法等改正案の国会審議が始まった。
2024年4月26日、衆院法務委員会で参考人質疑が行われ、私も参考人の1人として陳述を行った。
私の述べた意見は、技能実習など個別制度の手直しの前に、まず
「外国人基本法」
を制定し、受け入れの戦略を明確にすべきだということだ。
政府は従来、なし崩しで外国人政策を進めてきた。
表向きは
「移民は受け入れない」
と言いつつ、実態は安価な外国人労働力の受け入れが拡大した。
日本人に十分な賃金を払って人材確保できない企業や業界が、安易に外国人労働者に頼り、入管行政も要望に応えた。
「国際協力」
が目的の技能実習制度などの悪用を政府が容認してきたのだ。
この結果、劣悪な労働環境や失踪などの問題が生じ、外国人による犯罪、社会的トラブルなども広がりつつある。
業界・企業が賃上げせず事業継続する道が用意され、賃金水準低迷の一因となった。
今回の改正案はこうした根本問題を解決するものではない。
「技能実習制度の廃止」
を掲げ、実態とかけ離れた国際協力の名目を人材育成などに改めてはいるが、実質大きく変わった点と言えば、転職を認めた程度だ。
看板の掛け替えに近い。
今後、人手不足が拡大する中で外国人受け入れの規模は拡大するから、これまでの戦略なき受け入れの負の側面は、更に大きく広がりかねない。
政府が今、行うべきことは戦略なき状態の解消だ。
国民的な議論も経て、
「外国人基本法」
を制定することが不可欠だ。
基本法ではまず、何のために外国人を受け入れるのかを明確にする必要がある。
「人手不足の解消」
を目的とするのは危うい。
業界要望に安易に応え続けることになり、日本人も含めた賃金引き上げを阻害し、日本をより貧しい国にしかねない。
安易な労働力の受け入れは社会的軋轢も生みやすい。
目的は
「日本を豊かにすること」
とすべきだ。
生産性を高めて経済社会を発展させるため、貢献できる質の高い外国人を戦略的に受け入れていく必要がある。
併せて、外交・安保政策の観点で人的交流を強化すべき国から重点的に受け入れるよう戦略性も求められる。
日本に限らず、移民を巡る議論は、賛否が大きく分かれ、イデオロギー・感情的対立にも陥りがちだ。
解決の道は、安易な受け入れでも全面的排除でもなく、日本国にとって有用な外国人材を選び抜いて受け入れることだと考える。
だが、今回の改正案はなし崩しの延長で、安易な外国人受け入れの道を広げ、社会の混乱を招き、日本をより貧しくしかねない。
必要なのは、なし崩し的な移民から戦略的政策への転換だ。

「外国人に選ばれる国」という美名の下に… 政策シンクタンク代表・原英史
2023/12/10 8:00
https://www.sankei.com/article/20231210-K3VBLS7WBBPVZFO3Y4EMXZC6VA/
外国人が働きながら技能を学ぶ技能実習制度の抜本見直しに向けて、政府の有識者会議の最終報告書がまとまった。
国内外から指摘されてきた劣悪な労働環境などの問題を解消し、日本が
「外国人に選ばれる国」
になって、人手不足への対応を目指そうという。
具体的には
▽技能実習制度は廃止して新たに「育成就労」制度を設ける
▽人権侵害を防ぐべく、働く企業を変える「転籍」を認める
などの内容だ。
だが、欠落しているのは、
「外国人に選ばれる国」
になる前に
「日本国が外国人を選ぶ」
ことの重要性だ。
日本文化を愛し、地域に溶け込み、経済成長に大いに貢献する
「日本にいてほしい外国人」
もいれば、経済社会に貢献せず、犯罪を起こし、社会保障制度を悪用するなど
「いてほしくない外国人」
もいる。
後者が日本を選んでくれても害悪でしかない。
技能実習制度を巡る諸問題の根源は、この視点を欠いていたことだ。
「国際貢献」
という建前のもと、一部産業界の求める
「安価な労働力」
としての外国人受け入れに悪用されてきた。
欲しいのは
「安価な労働力」
だから、技能のない外国人を
「選ぶ」
ことなく受け入れ、余程の事がない限り在留し続けられる仕組みだった。
だから、劣悪な労働環境など人権侵害が生じ、一方、外国人犯罪なども起きがちになった。
本来必要な見直しは
「外国人を選ぶ」
制度への転換だ。
ところが、政府の有識者会議の最終報告書は小手先の見直しばかりで、問題の根源に手を付けていない。
新制度の目的は
「国際貢献」
から
「人材育成と人材確保」
に変えると言うが、
看板の掛け替えどころか、正面玄関から
「安価な労働力」
を受け入れることにも繋がりかねない。
一部産業界の要望に応え続けている限り、人権侵害の問題も解消しない。
結局、
「いてほしい外国人」
ほど日本を避け、選択肢の乏しい
「いてほしくない外国人」
ばかりが日本を選ぶ。
更に外国人受け入れの規模が拡大すれば、欧米諸国以上に深刻な移民問題に直面しかねなない。
これが
「外国人に選ばれる国」
という標語の行き着く先だ。
深刻な状況を前に主要新聞各紙の社説はおよそ的外れだ。
「(外国人に)選んでもらえる社会を作っていきたい」(朝日新聞)
「日本を『選ばれる国』に変えていくことが大切だ」(読売新聞)
「外国人にそっぽを向かれることになりかねない。政府は正念場」(日本経済新聞)
などと声を揃える。
せいぜい産経新聞が
「社会に様々な問題を生みかねない移民に対し、この改革が安易に道を開くことがあってはならない」
と一言指摘しているだけだ。
これでは、外国人政策はおかしな方向に向かうばかりである。

正論2024年2月号 政策シンクタンク代表 原英史
■人権左翼と一部産業界の結託?
政治とカネの騒動の陰で重要な政策転換も進んでいる。
その1つが技能実習制度の見直しだ。
技能実習を巡っては、劣悪な労働環境などの人権侵害、それに伴う失踪などが長らく国内外で指摘されてきた。
法務省の研究会でなされていた検討が2023年11月末にまとまり、2024年通常国会での法改正に向けて準備を進めることになった。
内容は、技能実習制度は廃止し、新たに
「育成就労」
制度を設けるという。
結論から言えば、看板の掛け替えどころか、むしろ更におかしな方向に向かっている。
そもそも技能実習制度の根本問題は、
「国際貢献」(途上国への支援)
という建前の下、
「安価な労働力」
として外国人受け入れの道を開いてきたことだった。
もちろん制度を有効利用する好事例もあり、全てを否定するわけではない。
だが、生産性の低い一部産業界が、賃金引き上げや設備投資の代わりに
「安価な労働力」
を要望し、政府が応えて対象業種を追加してきた面があった。
そんな事業者が利用しているから外国人への人権侵害が起きがちになった。
「安価な労働力」
を求める事業者は外国人を選ばず受け入れるので、犯罪なども起きがちになった。
生産性を高めない事業者を温存し、経済成長の阻害要因にもなった。
今回の報告書は根本問題に全く踏み込んでいない。
それどころか、
「就労育成」
制度は
「人材育成と人材確保」
が目的だという。
つまり、これまでのように
「国際貢献」
と建前を述べるのはやめて、堂々と
「人材育成」
と称する。
つまり、これまで通り、
「安価な労働力を」、
しかも正面玄関から受け入れようということだ。
その上で、人権侵害を防ぐため、別の企業などに移る
「転籍」
を認めるなどと言うが、小手先の見直しでしかない。
今、本当に求められるのは、
「日本国としてこれから、どんな外国人を(高度人材、安価な労働力など)、どのような方式で(短期か長期かなど)、どの程度の規模で受け入れるのか」
という国民的議論だ。
外国人の中には、日本の経済社会の成長や活性化に大いに貢献する
「日本に居て欲しい外国人」
もいれば、経済社会に貢献せず、罪を犯し、社会保険を悪用するなど
「日本に居て欲しくない外国人」
もいる。
これをどう選び、どう受け入れていくかが肝心なのだ。
政府はいつもこうした本来の議論から逃げ、技能実習の見直しなどの各論に突如入り込む。
基本戦略を定めていないので、結局、一部産業界などに引きずられ、なし崩しの移民受け入れに向かってしまうのだ。
これに対し、主要新聞各紙は的外れだ。
いずれも
「安価な労働力」
路線の継続を批判しようとはしない。
朝日新聞も毎日新聞も日経新聞も揃って
「これで外国人に選ばれる国になれるか」
と憂え、
「転籍」
をもっと拡大せよなどと論じている。
メディアがこんな状況では、外国人政策はおかしな方向に向かうばかりだ。
安価な労働力路線を続け、多くの
「日本に居て欲しくない外国人」
から
「選ばれる国」
になったところで、社会にとって害悪でしかないのは明らかだろう。
こんな状況から想起されるのは、欧米諸国でも生じてきた、人権左翼と一部産業界の暗黙の結託だ。
難民申請者などの幅広い受け入れに対し、人権を重視する勢力と、安価な労働力を求める一部産業界は、一見すると水と油のようだが、実は利益が一致している。
暗黙の結託を背景に、過剰な難民受け入れなどがなされてきた面が否めない。
今後、日本でも同様の事態が起きかねない。
事態は深刻だ。

弱者を作る朝日新聞 移民を歓迎する産経新聞
正論2023年7月号 政策シンクタンク代表 原英史
物事を見る時は、個々の事象の表層だけでなく、全体像や背後の構造まで見極めることが肝要だ。
例えば重大事故が生じた時、まず悲惨な被害状況などに向き合うことは欠かせないが、それだけでは不十分だ。
更に踏み込み、事故が何故生じたのか、製品の欠陥がなかったか、法規制や監督体制に問題はなかったかといった検証を行ってこそ、再発防止に繋がる。
報道機関にはそうした姿勢が求められる。
■入管法改正を巡る報道
しかるに2023年国会で焦点になっている入管難民法改正について、残念ながら新聞各紙の報道は実に底が浅い。
目立つのは、
「難民申請3回以降は送還可能」
について、在留外国人らの反対意見を紹介して批判的に報じるものだ。
毎日新聞(電子版)は
「ウィシュマさん妹『外国人の人権無視』入管法改正案の衆院委可決で」
(2023年4月29日)
で、今回の改正は
「不法滞在中の外国人の強制送還を進める狙いがあるが、日本で暮らす外国人の『排除』に繋がりかねないとの懸念も示されている」
とし、2021年に死亡したウィシュマさんの遺族の
「外国人の人権を無視し、尊重していない」
との意見を紹介している。
東京新聞は
「『国を分断する法案を許すな』『国家によるいじめだ』 入管法改正案への抗議デモ、国会前に4千人超」
(2023年5月13日)
で、仮放免中の外国籍の夫と暮らす女性のデモ参加者の声として
「夫は4回目の難民申請中」
「結婚したら収容はあり得ないと思っていたが、理由なく収容されて現実を受け止められず、弟に泣きながら電話したこともある」
「入管は厳正な判断をしているとは思えない」
「国を分断する法案を許してはいけない」
と報じる。
朝日新聞は社説
「入管法改正案 課題に背を向けた国会」(2023年4月28日)
でこう主張している。
「非正規滞在の外国人に対する入管当局の適正な処遇をどう確保するか」
「議論は大きな世論のうねりを生んだ」
「国会が拙速に封じるのは許されない」
(中略)
「入管施設での長期収容を防ぐ対策が問われたにもかかわらず、政府提出の法案は、収容をめぐる手続きに裁判所など第三者のチェックを入れることを避け、入管当局の強い裁量下にとどめる」
「難民申請中でも強制送還できる例外も設けた」
「保護を求めてきた人を迫害のおそれのある国に帰すリスクは高まる」
気になる点は色々ある。
「外国人の人権」
はもちろん尊重しなければならないが、外国人であっても日本にいる時は日本の法令を守らないといけない。
法令に違反したら収容や送還の対象になり得るのは当たり前だ。
東京新聞記事で紹介される女性は
「理由なく収容された」
と言うが、在留資格が切れているのに滞在していたので収容されたはずだ。
収容で引き裂かれて辛いだろうが、決して
「理由なく」
ではない。
だが、そうしたこと以上に根本的な問題は、不法滞在外国人に関わる不幸な事象の表層しか見ていないことだ。
■「弱者の味方」が弱者を作る
なぜ不幸な事象が生じてきたのか。
問題の根源は、不明瞭でどっちつかずで曖昧な入管行政だ。
確かに、難民認定はなかなか受け入れられない。
だが、申請を繰り返して長年日本に居続けることができる。
2010年以降は申請中の就労も法的に認められた。
在留資格が切れれば、収容されることもあるが、収容されないこともあり、何年も経ってから突然収容されることもある。
基準は不明確で運次第のようなものだ。
更に、在留特別許可という制度があり、日本人との結婚や、日本社会に定着しているなどの理由で特別に在留が認められることもある。
特に2000年代半ばには随分と許可がなされた。
こうした曖昧な入管行政が、
「日本にいれば何とかなる」
との期待をもたらしてきた。
難民認定申請者は、2000年頃は200〜300人程度だったが、2010年代後半には年間1万人以上に激増した(2018年に就労が制限されて2000〜4000人程度に減少した)。
政治的迫害など難民要件にはおよそ当てはまらず、経済目的で在留を望む外国人も相当程度含まれていたはずだ。
だが、期待と言っても、不確かな期待に過ぎない。
結果として、首尾よく在留できた人もいれば、収容や家族分断などの不幸な事態に陥る外国人も数多く生じたわけだ。
こうしてみれば、解決策は明らかだ。
認定基準を明確にすることだ。
保護すべき外国人は、何度も申請しなくても、迅速に難民や準難民として受け入れる。
認められない場合は、早期に退去してもらう。
曖昧な行政による不確かな期待を断ち切ることこそ肝要だ。
ところが、これに対し朝日新聞などは、
「申請を何度も繰り返す外国人が在留し続けられるようにせよ」
と唱える。
あやふやな期待を持たせ続けろというのだ。
「弱者の味方」
のつもりなのかもしれないが、実際には不幸な事態を更に引き起こすことになってしまう。
報じている記者らの気持ちは分からないでもない。
在留外国人などを取材するうちについ
「期待を持たせてあげたい」
と思うのだろう。
だが、不確かな期待を持たせてあげることで問題が解決するわけではない。
これも善意でやっていたことだろうが、不確かな助言で曖昧な入管行政が増幅した一部の支援者たちも、結果的には不幸を作り上げた一端だ。
朝日新聞などは自らの報道・主張が結局、新たな弱者を作りかねないことを自覚すべきだ。
■難民受け入れを進めた安倍内閣
外国人政策は全般に、建前と実態の乖離が深刻だ。
技能実習を巡る建前(国際貢献)の乖離はよく指摘されるが、もっと根本的な乖離もある。
まず
「移民は受け入れない」
という建前がある。
これについては、安倍晋三内閣の初期、経済財政諮問会議で
「年20万人の移民受け入れ」
が検討されたことがあった。
当時、諸方面から猛反発を受けて検討は中止され、その後は
「移民政策は採らない」
と言い続けることになった。
菅義偉内閣・岸田文雄内閣にも方針が引き継がれている。
だが、実態としてその間に何が起きたか。
「移民政策を採らない」
はずだった安倍内閣の間、外国人労働者総数は68万人(2012年末)から172万人(2020年末)と2.5倍に急拡大した。
その後コロナ禍で一旦鈍化したが、再び拡大しつつある。
「高度な外国人は受け入れるが、単純労働は受け入れない」
との建前もある。
だが、現実には100万人超の外国人労働者増のうち、半分は技能実習と留学生、即ち最も技能水準の低い労働者だ。
結局、実質的には
「単純労働を中心に毎年10万人以上の移民を受け入れてきた」
というのが現実なのだ。
何故こんなことになっているかというと、
「安価な労働力として外国人を利用したい」
という産業界の一部の要望に引きずられてきたためだ。
古くは1990年代から始まった日系移民の受け入れもそうだった。
その後は、技能実習や留学生アルバイトが広がった。
「移民は受け入れない」
「高度な外国人しか受け入れない」
との建前を守るため、名目上は
「日系だから」
「国際貢献(人材育成)のため」
といった理屈を付けてきたが、実態は
「安価な労働力としての外国人受け入れ」
そのものだった。
産業界の要望に引きずられるのは米国も欧州も同様だ。
メディアが
「日本と桁違いの認定率」
と称する難民受け入れも、実は
「安価な労働力を求める産業界」

「人権左派」
の意図せざる結託で過剰な受け入れがなされてきた面は否めない。
結果として過剰に
「安価な労働力としての外国人」
を受け入れ、移民に関わる深刻な社会問題をもたらした。
日本はこれまで受け入れ規模が小さかったが、今後、国内での人手不足の広がる中で
「安価な労働力受け入れ」
路線を拡大していけば、確実に欧米の轍を踏むのではないか。
■各社とも全体像度外視
技能実習については本来、こうした外国人政策の全体像を踏まえた見直しが求められるはずだ。
ところがメディアの報道では、劣悪な労働環境、失踪トラブル、海外からの「人権侵害」との指摘、といったことばかりが注目されがちだ。
法務省の有識者会議で2023年5月に公表された中間報告では、技能実習の廃止(人材育成を制度目的とする現行制度は廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新制度に)、転籍制限の緩和などを柱とする見直しの方向が示された。
これに対しても新聞各紙の報道は、
「外国人の人権を守れるか」
という視点での報道・主張ばかりだ。
朝日新聞は社説
「技能実習制度決別の意思を明確に」(2023年4月1日)
で、
「立場の弱い外国人の労働搾取だと指摘されてきた制度と、本当に決別できるのだろうか」
と危惧を示す。
日経新聞の社説
「技能実習制度の看板掛け替えでは困る」(2023年4月12日)
も、より抜本的な改革を求める内容だが、視点は
「日本が国際的な信用を取り戻すためには、技能実習制度の禍根を断ち、政策の転換を明確に示すことが欠かせない」
ということだ。
確かに
「外国人の人権」
は重要だが、課題はそれに止まらない。
「安価な労働力としての受け入れ」
を今後も維持・拡大するのか。
その場合に人材供給源はどう考えるのか(かつては中国、近年はベトナムだったが、経済水準が上がったので今後は難しい)。
諸外国で起きてきた移民問題にどう対処していくのか。
産経新聞くらいはまともな議論をしていないかと思って見てみたら、更にダメだった。
主張
「技能実習制度の廃止 人権を守る労働環境整えよ」(2023年4月25日)
では、人権問題を解決する観点から以下のように主張している。
「中間報告のたたき台案は、制度の目的を人材育成としたまま実習生を労働者として受け入れるのは『望ましくない』として制度廃止を求めた」
「その上で、人材育成だけでなく人材確保も目的とする新制度創設を提言したのは理に適う」
「ただしこれは移民問題とは別である」
「社会を変質させる恐れのある移民受け入れへと安易に道を開かないようにすべきだ」
率直に言って、これを書いた人は中間報告の意味が分かっていないのだと思う。
精度目的を
「人材育成」
から
「人材確保と人材育成」
に切り替えるとはどういうことか。
これまで表向き
「安価な労働力としての受け入れ」
とは言わずにこそこそとやってきたが、これからは正面から堂々とそう言ってしまおうということだ。
「人材育成」
も目的に残すことで技能水準の低い人材を受け入れ続けられる。
産経新聞はこの方針を
「理に適う」
として歓迎しているわけだ。
一方で
「移民問題は別」
とも言っているが、私の理解では、
「安価な労働力としての受け入れ」

「移民の受け入れ」
に他ならない。
政府の言い分では、
「在留期間の制限などがあるので移民には当たらない」
らしいが、どこの国でも単純労働者に最初から永住資格を与えることはあまりない。
今回の中間報告は、外国人政策の根本の転換だ。
だが、産経新聞までこの体たらくでは、国民の多くが気付かないうちに大転換がなされることになりかねない。
ここまで、私は外国人受け入れに否定的な主張ばかりしているように見えたかもしれないが、実は外国人雇用協議会という推進側の民間団体の代表理事も務めている。
本稿で述べたことはあくまで私個人の見解だが、この協議会も私も、能力水準が高く日本の経済社会に貢献できる外国人はもっと受け入れるべきとの考えだ。
高度人材に占める外国人の割合は、日本は欧米諸国などに比べて圧倒的に低い。
★高度人材に占める外国生まれの割合
OECDの資料を基に2010年11月経済産業省作成
◆15歳以上の高度人材の人口に占める外国生まれの割合
・英国 23%
・米国 16%
・フランス 13%
・ドイツ 13%
・日本 1%
これでは、グローバルな国際競争で日本が取り残され、日本の競争力は下がる一方だ。
日本の相対的な給与水準は急速に低下している。
2022年経済産業省が公表した
「未来人材ビジョン」
では、タイと日本の企業を比較し
「タイの方が部長に昇進する年齢が平均的に10歳若く、しかも年収が高い」
という衝撃的なデータも示された。
それなら能力に自信のあるアジアの若者は日本よりタイに行った方が良いわけだ。
このまま推移すれば、日本にやって来る外国人の水準はどんどん低下する。
経済社会への貢献度合いは小さくなり、半面で犯罪やトラブルは増えかねない。
そうした中で、
「安価な労働力としての外国人受け入れ」
路線を本当に更に進めるのか。
それで日本の競争力は上がるのか。
日本社会はどうなるのか。
産経新聞は
「社会を変質させる恐れ」
を本当に危惧するなら、真面目に考え直してもらいたい。
■「報道の能力」の欠如
毎年のことだが、
「国境なき記者団」
による
「報道の自由度ランキング」
が公表された。
朝日新聞ではこう報じられている。
朝日新聞
「報道の自由、日本は68位 主要7カ国で最下位」(2023年5月4日)
「国際NGO『国境なき記者団』(本部・パリ)は3日、2023年の『報道の自由度ランキング』を発表した」
「調査対象の180カ国・地域のうち日本は68位(昨年71位)で、昨年よりは順位を上げたものの、主要7カ国(G7)の中で依然、最下位だった」
「日本の状況について、『メディアの自由と多元主義の原則を支持している』としたものの、政治的圧力やジェンダー不平等などにより、『ジャーナリストは政府に説明責任を負わせるという役割を十分に発揮できていない』と批判した」
この記事は、重要な部分を報じていない。
本誌の読者ならば知っているだろうが、
「国境なき記者団」
のレポートでは例年、日本に関して
「記者クラブの問題」
「新聞・テレビのクロスオーナーシップ規制がないことにも起因する、メディアの極度の集中」
が指摘されている。
2023年も同様だ。
これらは
「政治的圧力」
などとは異なり、朝日新聞自らの問題だ。
少なくとも、このランキングを報じるならば、これらの点も報じないとおかしいだろう。
同時に、朝日新聞の報道の通り、
「政治的圧力」
などの指摘もある。
「2012年から右翼国家主義者(nationalist right)が政権について、ジャーナリストが敵視されている」
とか
「秘密保護法制で福島原発へのアクセスが制限された」
とか、私から見ると
「一体どこの国の話なのか?」
と思う内容だが、それこそ
「メディアの極度の集中」
の結果、朝日新聞など一部のメディアの特異な世界観や社会認識が世界にも広まっているのだろう。
私が思うに、日本のメディアに欠けているのは
「報道の自由」
ではなく
「報道の能力」
だ。
せっかく自由に報道できる環境があるのに、まともな報道ができていない。
今回取り上げた難民や技能講習に関しても、問題の本質に触れず、政府の方針に対する批判的検証もできていない。
決して政治的圧力で封じられているわけでなく、能力が欠けているからだ。
「政治的圧力」
云々と言うが、もし的確な取材に基づき自信を持って記事を出しているなら、圧力がかかっても、覚悟を持って抗したら良い。
実際には、能力不足で筋違いの記事を出しているためにしばしば抗議を受け、それに対し
「圧力だ」
と逆切れしているだけではないのか。
私自身、以前安倍政権で国家戦略特区ワーキンググループの座長代理を務めていた際、獣医学部の件をはじめ、いくつもの虚偽報道がなされ、その度に抗議していた。
朝日新聞本社に出向いて、そう間違っているのか詳細に説明したこともある。
担当の部長が何の反論もなく
「なるほど、なるほど」
と聞いているが、訂正記事が出ることはなかった。
毎日新聞にはデタラメな誹謗中傷記事まで掲載され、提訴して係争中だが、毎日新聞の言い分は
「そんなことは書いていない」
だった。
ひょっとすると朝日新聞や毎日新聞は、こうした抗議や提訴も
「政権の手先が圧力をかけてきた」
などと思い違いをしているのかもしれないが、まず自らの報道を省み、責任を持てる報道をしてほしい。
「ジェンダー不平等」
も同様だ。
取材対象に差別的な人物がいて、不当な扱いやセクハラを受けたなら、それを記事にして追い詰めれば良い。
能力不足でそれもできず、政治や社会のせいにしている様は、実に見苦しい。

国民を富ませない移民の経済効果
正論2024年7月号 青山学院大学教授 福井義高
政府が進める外国人の受け入れ策は事実上、移民社会へと舵を切ることにならないか。
その是非を巡って推進、制限論者とも自分たちの主張に拘泥し、感情論になりがちで、建設的な議論が進まぬ中、なし崩しに外国人労働者の受け入れは進んでいく。
筆者は2023年の本誌7月号で主にジョージ・ボーハス教授(米ハーバード大)による研究を基に、移民の経済効果を検討した。
建設的議論の一助とすべく移民を
「感情」
でなく
「勘定」
の問題として考えてみたのである。
その結果分かったのが、移民の受け入れは、受け入れ国のGDP(国民総生産)を増加させるけれど、移民の受け取る賃金相当分を除いた自国民に帰属するGDPはほとんど変わらないことである。
2015年の時点で移民労働者が全労働者の16%を占める米国でも、元からいる米国民分のGDPへの効果は全GDPの0.3%しかなかった。
ただし、移民の効果は企業と労働者で大きく異なる。
移民受け入れで賃金は下がり、企業利益(資本所得)は12%増加したのに対し、賃金は5%減少と推計された。
更に、自国労働者のうち移民労働者と競合する職種の賃金が下がる一方、移民と競合しない自国労働者は移民が従事するサービスの価格低下の恩恵を受ける。
こうした移民の経済効果は、米国に限らない。
2003年にオランダ中央計画局(CPB)が公表した報告書
「移民とオランダ経済」(Immigration and the Dutch Economy)
によれば、移民により労働者が5%増えると、資本(投資)財価格が一定で、移民が全て単純労働者だった場合、オランダの自国民全体への効果はほとんどない一方(GDPが0.06%増)、企業利益は4%増、非単純労働者賃金2%増に対し、単純労働者賃金は6%減少する。
米国とオランダの例から明らかなように、移民受け入れは、自国民の所得増を伴わない、格差を拡大する所得再分配政策なのである。
勝者は企業とエリート、敗者は一般国民である。
■不都合な結果
たとえ格差が拡大しても、高齢化が加速する中、外国人労働者に頼ることなしに日本経済は回らないのだから、受け入れざるを得ないという主張もあろう。
しかし、移民推進は、高齢化により益々厳しくなる国の財政状態を多少とも改善するどころか、更に悪化させるのである。
2023年に前述の
「移民とオランダ経済」
のアップデート版とも言うべき移民が財政に与える影響に焦点を当てた報告書
「国境なき福祉国家」(Borderless Welfare State)
の最終版が公表された。
(https://demo-demo.nl/wp-content/uploads/2023/06/Borderless_Welfare_State-2.pdf)
ただし、
「移民とオランダ経済」
が明らかにした移民の経済効果は、多文化共生を是とし移民受け入れを推進する政府にとって都合が悪いものだったこともあり、今回の報告は民間プロジェクトとして行われた。
オランダは2023年現在、人口が1800万人で日本の7分の1程度、65歳以上人口の割合は20%で日本の29%より低いものの高齢化が進んでおり、2021年のGDP比国民負担率(税金と社会保険料の合計がGDPに占める割合)は39%で日本の34%より高い。
日本同様、高齢化が財政に与えるマイナスの影響が深刻な問題と考えられている。
ただし、移民流入により人口は増加している。
例えば2022は前年に比べ、《native》即ち土着のオランダ人の人口は0.1%(2万人)減少したものの、移民とその子供は3.1%(13万人)増加し、全体では0.7%(12万人)増加した。
こうした中、報告書
「国境なき福祉国家」
は、通常アクセスできないオランダ全人口1720万人(2016年初人口+年間出生児数)の個人データを使い、オランダ人と移民、後者は出身地地域別にそれぞれどれだけ財政に貢献し、また支出を伴ったかを推計している。
まず、全人口がオランダ人1340万人と移民385万人に大別される。
移民は他国で出生しオランダにやって来た1世(第1世代)とその子供である2世(第2世代)からなり、全体の22%を占める。
尚、当初から帰国する予定の外国人労働者とその家族も含まれている。
移民は欧米(western)出身と非欧米(non-western)出身に大別され、更に42地域にグループ分けされている。
欧米に含まれるのは、ロシアを含む欧州諸国、北米(米国とカナダ)、大洋州(オーストラリアとカナダ)、インドネシア(旧オランダ領)そして日本である。
調査の基準となる2016年のデータを基に、オランダ人と移民に分けて財政への単年度ベースの影響を示したのが表1だ。
★表1 オランダ人・移民別財政への影響(単年度ベース、2023年価格、1ユーロ=160円換算)
(注)「国境なき福祉国家」に基づき筆者推計/日本は欧米に分類
「@人口(百万人)A人口(全体比)B貢献額(兆円)C支出額(兆円)D純貢献額(兆円)E純貢献額(GDP比)F1人当たり純貢献額(万円)」
・合計:@17.2AーB60.2C60.5D-0.2E-0.2%Fー
・オランダ人:@13.4A78%B49.5C46.3D3.2E2.3%F20
・移民全体:@3.8A22%B10.7C14.2D-3.5E-2.4%F-90
・移民欧米:@1.7A10%B5.9C5.7D0.2E0.1%F10
・移民非欧米:@2.1A12%B4.8C8.5D-3.7E-2.6%F-170
単年度ベースというのは、この1年間の収支に基づく、筆者たちの表現を借りれば
「静的」
な推計である。
尚、
「国境なき福祉国家」
のデータは全て2016年価格のユーロで表示され、その後のインフレが考慮されていない。
ここでは、オランダの2023年消費者物価指数が2016年比26%上昇したことを反映させ1ユーロを160円で換算して、2023年価格で表す。
以下、同様である。
全体の78%を占めるオランダ人の財政への貢献は49兆円5000億円だったのに対し、46兆3000億円が支出されたので、差し引き純貢献額はプラス3兆2000億円、GDP比プラス2.3%の貢献となった。
一方、全体の22%を占める移民は貢献額10兆7000億円に対し支出14兆2000億円で純貢献額マイナス3兆5000億円、GDP比2.4%の負担(-2.4%)をかけたことになる。
ただし、欧米出身と非欧米出身で大きく異なる。
全体の10%を占める欧米出身移民は貢献額5兆9000億円に対し支出額5兆7000億円で純貢献額プラス2000億円、GDP比プラス0.1%でほぼ収支トントンであった。
ところが、全体の12%を占める非欧米出身移民は、貢献額4兆8000億円に対し支出額8兆5000億円でGDP比2.6%の負担(-2.6%)をかけたことになる。
これは、1.6%と推計されているオランダにおける高齢化がもたらすマイナスの影響を上回っている。
1人当たりで見ると、非欧米出身移民は170万円の負担(マイナス170万円)となっている。
欧米出身移民は貢献額と支出額が釣り合っているので、移民の財政負担はほぼ全てオランダ人の肩にのしかかることになる。
■資本ストックで見る重要さ
しかしながら、単年度ベースの数値は、移民受け入れの効果を判断する上で、必ずしも適切な指標とは言えない。
移民受け入れは(マイナス価値のある場合も含め)一種の投資であり、永住せず出国(remigration)する移民もいるけれど、長期に渡って財政に影響を与えることは間違いない。
移民を受け入れることに伴い、学校教育や医療、その他行政サービスを追加的に提供する必要が生じ、財政負担が増す。
従って、将来に渡る移民のストック(複数年度ベース)価値を推計する必要がある。
実際、
「国境なき福祉国家」
では、単年度ベースの静的アプローチでなく、経済学で
「世代会計」
と呼ばれる手法を用いたストックベースの動的アプローチが必須であることは移民に限らない。
政府がある年に長期に渡る支出にコミットしても、その年の支出として計上されるのは実際に支払った額だけである。
例えば、日本政府が10年間毎年1兆円合計10兆円の新規道路建設を決定しても、最初の年には1兆円しか支出計上されない。
しかし、財政への影響を考える場合に重要なのは、長期に渡って必要となる10兆円という金額であることは自明だろう。
さて、投資即ちストックとしての移民を考える場合、移って来た本人のみならず、その子供たちの分も考慮する必要がある。
また、移民全てが永住するわけではないので、受け入れ国にとってのストック価値を推計するには、出国する可能性も考慮し、その分を控除する必要がある。
「国境なき福祉国家」
は、この2点を考慮に入れた推計をメインの数値としてしている。
移民1人当たりの子供の数については、出身地域別で出生率が違うことも考慮されている。
まず、欧米出身移民に関しては、ストック価値はほぼゼロと推計された。
つまりオランダ財政に貢献もしないけれど、負担にもならないということである。
★表2
非欧米出身移民の財政への影響(ストックベース、2023年価格、1ユーロ160円換算)
@2016年A2015〜2019年平均B1995〜2019年平均
・純貢献額(兆円):@-6.4A-5.4B-3.4
・2016年GDP比:@-4.5%A-3.8%B-2.4%
一方、表2に示したように、非欧米出身移民は、1995〜2019年の25年間で見ると、財政への純貢献額は年平均マイナス3兆4000億円、GDP比2.4の負担(-2.4%)であった。
2015〜2019年の直近5年間だと、純貢献額はマイナス5兆4000億円、GDP比3.8%の負担(-3.8%)、2016年は難民が大量に入国したため、純貢献額はマイナス6兆5000億円、GDP比4.5%の負担(-4.5%)であった。
要するに、非欧米出身移民はマイナスの資本ストックであり、オランダ人にとって移民受け入れは、ただでさえ高齢化によって厳しくなる一方の財政状況を更に悪化させる負の投資ということになる。
「今年いくらかかったか」
というフローで見るよりもストックで見た方が、貢献額がプラスの場合は小さく、マイナスの場合は更にマイナス幅が大きくなる。
これは、移民1世は大人になってから入国するので、オランダ人にも共通する、子供時代の財政上のマイナス要因(公教育コストなど)がかからないためである。
■移民1人当たりはどうか
移民全体でなく、移民1人当たりで見た場合、オランダで生まれる子供や出国の可能性を考慮した、ストックとしての財政への影響はどのくらいなのか示したのが表3である。
★表3
出身地別1人当たり移民の財政への影響(ストックベース、2023年価格、1ユーロ=160円換算)
(注)「国境なき福祉国家」に基づき筆者推計
@出国の可能性を考慮した場合(基本推計)A出国の可能性を考慮した場合(最小推計)B出国の可能性を考慮した場合(最大推計)C永住した場合
(単位:億円)
・仮想オランダ人:@プラス0.2AーBーCプラス0.4
・移民平均:@マイナス0.3AーBーCマイナス0.5
・移民欧米:@0.0AーBーCプラス0.1
・移民日本:@プラス0.4Aプラス0.3Bプラス0.5Cプラス1.0
・移民非欧米:@マイナス0.6AーBーCマイナス1.0
・移民中国:@マイナス0.1Aマイナス0.2B0.0Cマイナス0.2
・移民トルコ:@マイナス0.7Aマイナス1.0Bマイナス0.6Cマイナス1.1
・難民平均:@マイナス1.0AーBーCー
・難民欧米:@マイナス0.6AーBーCー
・難民非欧米:@マイナス1.1AーBーCー
・難民トルコ:@1.0AーBーCー
推計に際して、当然ながら多くの仮定が置かれており、仮定を変更すると数値が大きく変動するようでは信頼が置けない。
その懸念に対応し、仮定をもっともらしい範囲内で変えた推計がいくつか試みられている。
結果的に、最小推計と最大推計の差はさほど大きくなく、基本推計の数値はかなり信頼度が高いと思われる。
まず、比較の基準として、オランダ人と同じ属性の人間が移民として訪れた場合を考える。
入国する年齢や出国の可能性も考慮した、この
「仮想オランダ人」
のストック価値はプラス2000万円である。
移民は平均でマイナス3000万円と推計される。
ただし、出身地域別の違いは大きい。
欧米出身移民は全体ではほぼ財政に中立的ながら、日本出身移民はプラス4000万円の
「優良資産」
となっている。
日本以外では北米、大洋州、北欧、そして西欧の一部からの移民のストック価値が高い。
皮肉なことに、途上国の移民が行きたいと願う国からの移民こそ、オランダにとって
「資産」
価値があるということだ。
一方、欧米系でも東欧の一部からの移民のストック価値はマイナスである。
非欧米出身は平均でマイナス6000万円の
「負債」
となる。
ただし、やはり出身地別のバラツキは大きく、中国がマイナス1000万円であるのに対し、トルコはマイナス7000万円となっている。
移民は更に入国理由別に推計されており、オランダに限らず受入国にとって最も負担となる難民の場合、欧米出身(旧ユーゴスラビアなど)がマイナス6000万円、非欧米出身はマイナス1億1000万円だった。
その多くがクルド系と思われるトルコからの難民はマイナス1億円である。
更に、移民が永住した場合の推計も行われている。
財政貢献がプラスにせよマイナスにせよ、永住を仮定しない基本推計よりも、絶対値(プラス幅あるいはマイナス幅)は大きくなる。
とりわけ、例外的に日本出身移民は2世になってもオランダ人より純貢献額が大きいので、ストック価値はプラス1億円となる。
一方、トルコ出身移民はマイナス1億1000万円である。
トルコ出身のうち難民の数値は未公表なものの、恐らく1億5000万円前後と思われる。
日本出身移民が例外的というのは、日本以外でストック価値が高い欧米出身移民の場合、2世になるとほぼ財政に中立的なオランダ人(2016年生まれの場合、ストック価値マイナス60万円」)にほとんど同化するのに対し、日本出身2世はストック価値がプラス2000万円と推計されるからである。
■福祉国家が終わる
オランダ財政に貢献する移民と負担となる移民を分けるものは何か。
学力(教育レベル)と共に重要なのが文化的距離(宗教や慣習などの隔たりの大きさ)である。
学力が高いほど、出身地とオランダの文化的距離が近いほど貢献額は大きく(負担額は小さく)なる。
実は、日本出身移民はオランダ人より学力が高く、日本は米国よりも文化的距離がオランダに近いとされている。
その結果、日本出身移民の財政から見た同化度はオランダ人(定義上100%)を上回る134%となっている。
一方、貢献額がマイナス即ちオランダ財政の負担となっているのが、学力や文化的距離で隔たりがある
「アフリカ・イスラム・クラスター」
である。
推計では2世までしか考慮されていないけれども、こうした地域からの移民は、3世以降もオランダ社会への同化が進んでいないため、財政上の重荷である状態が続くと考えられる。
従って非欧米出身移民による財政への負の影響は、推計値よりもっと大きい可能性が高い。

「アフリカ・イスラム・クラスター」
の移民2世にかかる治安維持コストは他地域の2世の2.3倍と推計されている。
日本同様、オランダでも少子高齢化が進んでいる。
推計時の出生率はオランダ人女性1.7、欧米移民女性1.4、非欧米移民女性2.0であった。
コロナ禍前2019年には更に低下し、オランダ人女性1.6、欧米移民女性1.3、非欧米移民女性1.9だった。
少子高齢化による年金財政悪化、経済成長率低下に対処するには、移民を必要とする意見がある。
しかし、
「国境なき福祉国家」
が示したのは、途上国からの移民流入は、財政を更に悪化させ、そのマイナスの影響は高齢化の影響を上回るという現実である。
途上国出身の場合、難民だけでなく、労働移民であっても財政には負担となる。
「働くならば移民は問題ない」
という主張は正しくないのだ。
財政問題を度外視するとして、オランダが現実の年齢人口バランスを維持するために移民受け入れを進めた結果、21世紀終わりには人口は1億人に達する。
ただしオランダ人は僅か1割の少数派になってしまう。
「国境なき福祉国家」
が指摘するように、移民で少子高齢化を抑制する試みは必ず行き詰まる
「ネズミ講」
のようなものである。
今回の推計に含まれていないけれど、オランダのように既に人口密度が高い国の場合、人口増が社会・自然環境にもたらす非財政的コストや、自国民の心理的コストを無視することができない。
可住地面積当たり人口密度がオランダの倍近く、同質性の高い社会を長年に渡って構築してきた日本の場合、こうしたコストは更に大きなものとなるのは確実である。
オランダ政府は、ほぼ無条件に受け入れている
「難民」
と称する移民の多くが制度を悪用していることを認めている。
にもかかわらず、有効な対策を取ろうとしない。
労働移民についても、選り好みせず途上国から受け入れている。
<報告書は
「政府の移民政策」
が長期的に何を意味するかについて以下のことを疑いなく示した>
<財政への増大するプレッシャー、そして最終的には我々が知る福祉国家の終わりである>
<従って、現在の法的枠組みを続けるという選択は、明示することなく福祉国家に反対する選択なのだ>
■議論に欠けるもの
本稿ではオランダを例に、移民を財政的観点から分析する見方を紹介した。
多文化共生あるいは人権の観点に基づく移民推進論者は、移民の是非を金銭価値のみで判断するのはけしからんと主張するであろう。
しかし、移民を巡って、どのような美辞麗句で飾り立てようと、途上国からの大量移民は、一般国民からエリートへの所得再分配をもたらす上、財政を圧迫し、自国民に対する行政サービス水準を低下させる。
とりわけ弱者に対するセーフティーネットを劣化させる可能性が高い。
如何なる政治信条の持ち主であろうと、政治家が第1に考えねばならないのは、まず自国民、とりわけ弱い立場にある国民の福利であるはず。
ここで指摘した移民の経済財政効果を十分考慮せず、なし崩しに外国人労働者を受け入れることは、自国民への裏切りと言っても過言ではない。
【付記】本稿作成に当たり、「国境なき福祉国家」の筆頭著者ヤン・ファンデベーク博士より貴重な助言を賜った。

人手不足論はまやかしの市場重視
正論2023年7月号 青山学院大学教授 福井義高
海外からの移民を積極的に受け入れるべきという意見には2つのタイプがある。
まず、昨今流行りのダイバーシティ、多文化共生の観点からのもの。
一方、こうした移民による多様化推進論に対しては、日本社会の独自性を保つため、移民は受け入れるにしても限定的にすべきという主張も有力である。
もう1つの移民推進論は、人口が減少する中、経済成長を実現するには、移民による労働力確保が不可欠という、経済的要請によるものである。
実際、様々な分野で、なし崩しに外国人労働者受け入れが進んでいる。
多様性か独自性かという、特定の価値観に基づく主張は、お互い自分が正しいことを前提に相手を非難する感情論になりがちで、言いっ放しに終わってしまう。
それに対し、経済的観点からの是非は、生前、経済倫理学を提唱された竹内靖雄元成蹊大教授に倣って、感情ではなく勘定、つまり損得の問題として、検討することが可能である。
「感情」
ではなく
「勘定」、
つまり損得の問題として、検討することが可能である。
というわけで、ここでは高邁な文化論は避け、対象を移民(外国人労働者)の経済効果に絞って考えてみたい。
■もし国境を撤廃したら
第二大戦後、米国主導で進められた貿易自由化によって経済成長が促進され、日本のみならず各国国民の生活水準は大きく向上した。
貿易自由化とは、モノの移動に関して国境を撤廃するということなので、ヒトの移動に関しても国境を撤廃すれば、更に経済成長が促進されると考えても不思議ではない。
実際、グローバル経済推進論者は、そのように主張している。
もし世界中で移民制限を撤廃し、ヒトの移動を完全自由化すれば、その経済効果は如何ほどなのか。
幸い、移民の経済研究の第一人者であるジョージ・ボーハス教授(ハーバード大)がシミュレーションを行っているので、その結果(一部筆者推計)を紹介しよう。
ここでは、途上国の労働者は祖国を離れることに特別なコストは伴わないケースを取り上げる。
まず、世界銀行の推計に基づき、世界を人口11億人うち労働者6億人の先進国と、人口59億人うち労働者27億人の発展途上国に大別する。
現実のデータに即して、先進国・途上国共に、企業が利益を人件費に回す割合を示す
「労働分配率」
を70%、先進国と途上国の賃金格差を4対1と仮定する。
移民自由化の賃金格差は、労働力の質ではなく、社会の仕組みを反映したもので、先進国の高賃金は、途上国に比べて、より効率的な経済活動を可能とするものになっているからと考える。
従って、移民を完全自由化すれば、自由貿易によって同じモノの値段が世界中で等しくなるように、ヒトの値段即ち賃金も世界中で同じなる。
また、移民を完全自由化すると、先進国と途上国の人口と賃金はそれぞれどうなるのか、2つの場合を考える。
まず、移民を受け入れても、それまで効率的な経済活動を可能にしてきた先進国の社会体制が変わらない場合、そして、途上国からの大量移民で、先進国の社会が半ば途上国化する場合である。
先進国社会不変の場合、世界全体の国内総生産(GDP)は57%増加する。
ただし、先進国経済に対する移民の経済効果を見るには、移民自身が得る経済効果(賃金)を除外し、土着の自国労働者賃金と自国資本に帰属する所得の合計を、移民自由化前後で比較する必要がある。
移民賃金を除外しても先進国のGDPは39%増加するので、モノの自由貿易同様、ヒトの移動自由化は自国民に帰属する経済のパイを大きくする。
しかし、移民自由化がもたらすGDP増加は、大規模な移民と表裏一体である。
国境撤廃によって、労働者の家族も含めて、途上国人口の95%に当たる56億人が先進国に移住することになるのだ。
その結果、国民・移民共通の先進国賃金は39%減少する。
ただし、途上国からの移民から見れば143%の増加である。
一方、先進国の資本所得(企業利益)は、労働者増・賃下げの恩恵で、220%増加する。
大量の移民が流入すれば、受け入れる側の先進国の社会体制が、その経済効率性も含めて、大きく変化すると考える方がもっともらしい。
やって来るのは、働くロボットではなく、人間なのだから。
途上国からの大量移民で先進国社会が半ば途上国化する場合、移民自由化前より低下するとはいえ、それでも途上国より高い生産性が維持される先進国に、途上国人口の84%に当たる50億人がやって来る。
その結果、世界全体のGDPは13%増加するものの、社会の途上国化で、移民に支払われる賃金を除外した先進国のGDPは7%減少すると共に、自国民・移民共通の先進国賃金は56%減少する。
それでも移民から見れば74%の賃上げである。
一方、先進国の資本所得(企業利益)は、社会の途上国化によるマイナス効果にもかかわらず、労働者増・賃下げ効果がそれ以上に
「貢献」
し、108%増加する。
移民自由化の勝ち組は、言うまでもなく、まず先進国で働くことで賃金が大幅に上昇する途上国からの移民である。
そして、途上国から安い労働力を
「輸入」
することで、利益を大幅に増やすことができる企業である。
一方、負け組は、移民労働者による
「賃金ダンピング」
で、大幅な賃下げを余儀なくされる先進国の自国労働者である。
先進国における移民推進とは、グローバル化とか多様性とかいった美辞麗句を取り去って、その経済効果を直視すれば、労働者から資本家・経営者への所得再分配政策である。
ボーハス教授が指摘するように、
「先進国の労働者が、国境撤廃論者に従うことを拒否するのは、人種差別や外国人排斥とはほとんど関係ない」
「単に新世界秩序(New World Order)から恩恵を受けないからなのだ」。
移民推進は、先進国の国民大多数から見ると、勘定の問題として割に合わないのである。
■移民大国、米国の場合
国境完全撤廃によって途上国民の大半が移民するケースなど非現実的過ぎて、今後の日本の移民政策の参考にならないという批判があろう。
確かにそうかもしれない。
そこで、移民大国である米国の実例を、ボーハス教授の推計(一部筆者推計)に依りながら、見てみよう。
結論から先に言ってしまえば、移民推進が所得再分配政策であるという、その本質は変わらない。
2015年のデータによると、全労働者のGDPに対する貢献分は12%を占める。
しかし、移民流入で増加したGDPから移民の取り分を除くと、移民が自国民にもたらす経済効果はGDPの0.3%でしかない。
ただし、GDPの内訳を見ると、自国労働者の取り分が3%減少したのに対し、企業の取り分は3%増えている。
国境完全撤廃でほとんどの途上国民が先進国に殺到する場合と異なり、移民労働者が全体に占める割合が
「僅か」
16%であっても、移民労働者がいない場合に比べ、賃金は5%低下し、企業利益は13%も増加するのである。
更に、移民に対して提供される公的サービスの財政負担増が移民の納税額を上回る、つまり財政純負担増は確実であり、移民流入のネットのGDP貢献分0.3%は、その純負担増で帳消しになるか、マイナスになっている可能性が高い。
ここまでは労働者を一括して扱ってきたけれども、労働者といっても、大企業経営幹部から非正規雇用の単純労働者まで様々である。
実際に、移民労働者との競争を強いられ、賃金低下圧力に晒されるのは、元から低賃金の職種に従事する自国労働者である。
ボーハス教授の推計によれば、移民流入で競合する職種の労働者が10%増えると、その賃金が少なくとも3%、場合によっては10%程度低下する。
一方、移民労働者と競合しないエリートたちは、むしろ移民労働の恩恵を受ける側である。
移民推進は労働から資本への所得移転のみならず、低賃金労働者から高賃金労働者への所得移転をもたらす。
そもそも、アメリカは移民の国とされるけれども、これまで常に大量の移民を受け入れてきたわけではない。
日本では
「排日移民法」
と呼ばれる1924年に成立した改正移民法により、北・西欧系を除く移民が大幅に制限され、1920年代半ば以降、移民が激減する。
それから約40年経った1965年に移民法改正が行われた際、法案を提出した国会議員も政府も、この改正は移民送出国の構成が若干変わるだけで、移民数自体が増加することはないと
「確約」
したにもかかわらず、移民数は激増、しかも、改正前と異なり、欧州ではなく、途上国からの移民が大多数を占めるようになった。
20世紀半ばの移民制限期に所得格差が縮小したのに対し、大量移民が始まった1970年代以降、所得格差が拡がり、今日に至っている。
この間、米国非管理職労働者のインフレ分を除いた実質賃金はほぼ横ばいだったのに対し、大企業社長(CEO)報酬は労働者賃金の20倍程度だったのが、300倍を超える水準となっている。
■誰のための移民推進なのか
まず、移民の経済的メリット・デメリットを検討するに当たり、何を基準とするのか、はっきりさせる必要がある。
移民自身から見れば、日本の移民受け入れはプラスに決まっている。
そうでなければ、そもそも日本にやって来ない。
しかし、デモクラシーにおける政策の判断基準は、まず主権者たる国民の幸福や豊かさであり、今いる日本人にとって新たな移民受け入れがどのような経済効果をもたらすかが、移民政策の是非を巡る判断基準となるべきであろう。
出生率の低下で人口が減少する中、新たな労働力として大量の移民を受け入れれば、日本のGDPが押し上げられることは間違いない。
ただし、経済成長政策として有効か否かを判断するには、移民を受け入れなかった場合のGDPと、受け入れた場合のGDPから移民賃金と移民受け入れに起因する純財政負担を引いた額を比較しなければならない。
米国の実例でも分かる通り、移民推進は自国民の経済成長にはほとんど影響しない、ほぼ純粋な所得再分配政策である。
社会の途上国化による生産性の低下、純財政負担を考慮すれば、経済成長への効果はむしろ全体としてマイナスの可能性が高い。
移民推進は、労働から資本への所得移転に加え、低賃金労働者から高賃金労働者への所得移転を引き起こす、弱肉強食の格差拡大政策なのだ。
企業経営者をはじめ社会のエリートたちに移民推進論者が多いのは、要するに自分にとって得だからである。
多様化推進の観点からの移民推進論も、こうした主張を行う人が概して高学歴エリートであることを鑑みれば、正義感溢れる
「感情」
論でカムフラージュされた
「勘定」
論と見ることもできる。
一方、欧米では弱者の味方のはずの左翼・リベラルが移民受け入れを推進しているけれども、これは比較的最近の現象である。
元々、左翼・リベラルの間では、支持基盤だった労働者の利益を守るため、移民受け入れに慎重な意見が有力であった。
冷戦時代、
「移民の継続は深刻な問題をもたらす」
「合法、不法とも移民をストップせねばならない」
と主張したのは、極右どころか欧州左翼の大立者ジョルジュ・マルシュ仏共産党書記長である。
米国のある有力な大統領候補もこう語っていた。
「不法移民流入を阻止せねばならない」
「この目的を達するため、国境警備要員を増やさねばならない」
「合法移民に関する法律も、合衆国が移民の数と質をもっとコントロールできるよう改正せねばならない」
「移民受け入れに関しては、まず、合衆国は、無責任な他国干渉への干渉ーこうした干渉はほぼ確実に政治難民を生み出すーによって難民が生じることだ」
「もっと用心しなければならない」
「本当に難民かどうか、より確実に難民申請を審査せねばならない」。
発言の主はドナルド・トランプ前大統領ではなく、ベトナム反戦で名を馳せたリベラルの雄、ユージン・マッカシー民主党元上院議員である。
要するに、今日の労働者は左翼・リベラル主流派に見捨てられたのである。
ただし、新たな動きも見られる。
ドイツで急進左翼の代表格とみなされてきた旧東独出身のザーラ・ヴァーゲンクネヒト左派党連邦議会議員が、大量移民は自国労働者の経済的利益を損なうという
「勘定」
論を前面に出した移民反対論を唱え、左翼・リベラル主流派から非難される一方、
「極右」
正統とされるAfD支持者の間で大人気となっている。
■低賃金は企業の敗北宣言
豊かな社会では、必要であったも自国労働者がやりたがらない仕事が増え、移民なしにはやっていけないという主張をよく聞く。
しかし、先進国で移民が従事するのは、自国労働者がやらない仕事ではなく、現在の賃金水準ではやりたくない仕事である。
不法移民を一掃した米国のある地域で現実に起こったように、外国人労働者がいなければ、自国労働者がやりたくなる水準まで賃金は上昇する。
また、企業は技術革新で乗り切ろうとする。
実際、それは高度成長期の日本で起こったことである。
「人手不足」
にもかかわらず、移民を入れなかったことで、製造現場ではロボットが普及して省力化が進み、高学歴エリートと大衆の賃金格差が縮小し、戦前の大企業大卒社員の家庭では当たり前だった
「女中」
が賃金高騰でほとんど姿を消した。
一方、我々がどうしても生活に必要と考える財サービスであれば、十分に生産性を上げることができないため賃金上昇を価格に転嫁せざるを得ず高価格となっても、需要は残る。
一例として、生産性向上が困難な理美容業の料金は、高度成長前に比べ一般物価水準を超えて大きく上昇したけれども、今も需要は健在である。
低賃金でないと事業を継続できないというのは、高い価格を支払ってまで買う価値のある財サービスを提供できないという、企業としての敗北宣言に過ぎない。
低賃金の外国人労働者への依存は企業にとって麻薬のようなものであり、自国民の所得格差を拡げるのみならず、生産性向上努力を妨げ、結果的に、企業の衰退をもたらす。
経済的観点からの移民推進論者は、ほとんどの場合、自称市場重視論者でもある。
しかし、現在、
「人手不足」
が叫ばれている仕事の多くは、財サービス価格が低過ぎて超過需要が生じているのであって、価格を上げて需要を減少させるのが、本来の市場重視であろう。
その典型例が貨物輸送である。
人手不足対策に議論は不要である。
市場のシグナルに耳を傾け、トラック運転手の賃金を上げればよいのだ。
現在の価格で現時点の需要に応じようとする需要充足主義は、計画経済的・社会主義的発想であり、市場重視とは無縁である。
人手不足論者にみられる、こういう財サービスの価格あるいは職種の賃金は低くて当然という発想は、単なる思い込みに過ぎない。
理美容サービス料金に見られるように、社会の変化に伴い、財サービスの相対価格は劇的に変化してきた。
戦後、相対賃金が大きく変化したことは、先に述べた通りである。
人手不足を理由とした移民推進論は、国民経済の観点からは到底正当化できない。
市場のダイナミズムを無視したまやかしの市場重視、その実、反至上主義なのだ。
国境完全撤廃のシミュレーションはともかく、米国の実例は、EBPM(Evidence-based Policy Making:証拠に基づく政策立案)を標榜する日本政府にとって、移民政策を検討する際に、大いに参考になるはずである。
ともあれ、移民問題は感情ではなく、冷静な議論が可能な勘定の問題という認識が求められる。

EBPM(証拠に基づく政策立案)とは?
EBPMとは、Evidence-based Policy Makingの略称であり、日本においては内閣官房が以下のように定義している。
(1)政策目的を明確化させ、
(2)その目的のため本当に効果が上がる行政手段は何かなど、当該政策の拠って立つ論理を明確にし、これに即してデータ等の証拠を可能な限り求め、「政策の基本的な枠組み」を明確にする取組。
つまり、たまたま見聞きした事例や経験(エピソード)のみに基づいて政策を企画するのではなく、データを活用し、合理的根拠(エビデンス)に基づいて企画すること。

人手不足解消のカギは外国人労働者を受け入れないこと
Hanada2024年7月号 小西美術工藝社社長 D・アトキンソン
■衝撃的なアンケート結果
岸田政権は2024年3月29日、人手不足の分野で一定の技能がある外国人労働者を受け入れる在留資格
「特定技能」
について、2024年度から5年間の受け入れ枠を82万人とすることを閣議決定しました。
2023年度までの5年間で設定していた人数の2.4倍となり、外国人労働者の受け入れが加速することになります。
とんでもない話だと憤っていたら、最近、更に衝撃的なニュースが飛び込んできました。
「外国人労働者受け入れ『賛成』62%、高齢層で大幅増 朝日世論調査」(朝日デジタル)
<朝日新聞社が全国世論調査(郵送)のテーマ「人手不足社会」に関連して、人手不足の業種を対象に外国人労働者の受け入れを拡大する政府方針への賛否を尋ねたところ、「賛成」62%が「反対」28%を大きく上回り、賛否が拮抗した5年余り前の調査から大きく変化した>
もちろん、日本のマスコミの世論調査なので、どういう業種の人を対象にしたか、経営者だけにアンケートしたのかなど詳細が出ておらず、留意は必要ですが、6割もの人が外国人労働者受け入れに賛成というのは、驚きました。
人手不足に悩まされているのは、ほとんどが中小企業です。
人口減少の下、中小企業は生産性が低い。
有給休暇の取得率などを見ると、労働環境が大企業より厳しいので、労働者が不足すると、まず中小企業が人手不足になる。
日本の中小企業は社員数が非常に少ないので、すぐに大きなダメージを受けます。
日本企業の平均従業員数は9人。
85%の日本企業は、平均従業員数がたった3.4人。
仮に従業員数3人の職場から1人辞めると、労働力が3分の1減り、たちまち
「人手不足」
に陥ってしまうのです。
■努力したくない中小企業
私から言わせれば、中小企業は人手不足を解消する努力が進んでいません。
私は以前から、中小企業は統合して、次第に規模を大きくしていかなければいけないと主張しています。
合併統合することで、経営陣などの管理職や経理はこれまでの半分で済み、その分、人手不足の部署に人手を回すことができる。
統合まではいかなくても、会社間でお互いに人手が足りない時には融通し合うことができるよう連携はするべきです。
もう1つは、機械化など設備投資による作業の効率化。
ただ、経営者としては、日本人は低賃金でも仕事を真面目にこなしてくれるので、コストを掛けて設備投資を行う動機が生まれません。
機械化などをするより、低賃金で人間に働いてもらう方が安上がりなのです。
ここは肝心なポイントで、人口減少によって生じている人手不足は、本来、企業がそれに合わせてビジネスモデルを変えるチャンスであり、変えなければならないのです。
しかし、連携も合併もしたくない、設備投資で生産性向上もしない・・・中小企業がビジネスモデルを変える何の努力をすることもなく現状維持をするため、唯一残された方法が、減っていく日本人労働者の代わりに外国人労働者を受け入れることなのです。
現時点で、200万人の外国人労働者が日本に来ています。
2060年には生産年齢人口が3000万人減るので、低賃金労働者依存症の中小企業経営者を満足させるためには、1000万人単位で外国人労働者を受け入れなければならないでしょう。
主に最低賃金で働く外国人労働者が大量に入って来ると、日本人の賃金も上がらなくなります。
経営者は楽でしょうが、社会保障の負担が増える一方の日本で、財政も労働者も大きな打撃を受けます。
こんなふざけた話があるでしょうか。
■これまで以上に増える軋轢
2023年、2500万人の外国人観光客が日本を訪れました。
一方、
「オーバーツーリズムだ」
(ある地域を訪れる人が急増したことにより、その地に暮らす人々や自然環境、生態系、景観などに悪影響を及ぼしている状況)
と批判する声もあります。
満員でバスに乗れないとか、ホテルが満室で取れないとか、マスコミなどで
「オーバーツーリズム」
と批判されていることは、日本側の受け入れ体制の未整備によって起こっていることで、
「オーバーツーリズム」
などではありません。
1カ月当たり200万人来ているインバウンドは海外旅行できるレベルの層で、日本におカネを落として、欧米人などの場合、2〜3週間したら国に帰っていきます。
一方、外国人労働者は全く逆です。
中小企業が求めているのは、最低賃金で働いていくれる人材。
日本の最低賃金は世界23位で、ハンガリーやイランよりも低く、後進国レベル。
そんな低賃金であっても働きに来る外国人労働者は、言い方は悪いですが、どういう教育水準の人か分かりません。
そういう外国人が1000万人単位で日本に来て、定住するのです。
しかも最低賃金で働く外国人労働者は、経営者たちが住むようなエリアではなく、一般庶民が住むエリアで生活するようになる。
欧州などでは、低賃金の移民などは大変な問題を引き起こしています。
そもそも、イギリスがBrexit(イギリスが欧州連合 (EU) から離脱すること、離脱したこと)に踏み込んだ最大の原因は、庶民が強いられた移民の問題でした。
インバウンドは一時的にしかいないから、発生するトラブル、軋轢などたかが知れていますが、定住する外国人労働者は違います。
既にして、日本に住むイスラム教徒が
「土葬できる墓を作ってほしい」
と要請していたり、神社の賽銭箱を破壊したりする事態も起こっている。
1000万人単位で外国人が入ってきたら、これまで以上に様々な軋轢が生まれるでしょう。
なぜ経営者が低賃金で人をコキ使いたいがために、日本全体が迷惑を被らなければいけないのか。
「オーバーツーリズムだ!」
と騒いでいる人たちは、今すぐ外国人労働者受け入れに反対した方がいい。
どこの国でもそうですが、教育水準の低い移民を大量に入れれば、犯罪やトラブルが増えます。
移民政策で成功しているのは、高学歴かつポテンシャル(潜在的な力。可能性としての力)の高い人材を受け入れて、イノベーション(新製品の開発、新生産方式の導入、新市場の開拓、新原料・新資源の開発、新組織の形成などによって、経済発展や景気循環がもたらされるとする概念)をどんどん起こしているアメリカくらい。
■中小企業延命という愚策
私が日本に来た1990年代前半は、高学歴・高所得の外国人でないと就労ビザが下りませんでした。
「日本人にできる仕事は外国人にやってもらう必要がない」
という考え方で、よほどの特殊技能を持った外国人でなければ、日本で働くことができなかった。
自分で言うのも何ですが、イギリスでトップの大学であるオックスフォードを卒業していても、なかなか申請が通らなかったほどです。
人手不足が叫ばれたているのは、飲食宿泊や運送業など、労働環境が悪く、生産性も低い業種です。
高学歴の人材などを必要としていません。
少子化によって競争率が下がり、今の若者は名門大学、大企業に入れる確率が昔よりも飛躍的に上がっています。
そんな中で、若者が最低賃金でしか雇えないような会社を選ぶはずがない。
若い優秀な人材を確保したければ、先述したように、合併するなり設備投資するなりして、生産性を向上させ、若者にとっても魅力的な
「中堅企業」
になるしかありません。
ところが、政府は外国人労働者を受け入れて、中小企業を延命させようとしています。
これほどの愚策はありません。
成功例がほとんどないのに、なぜ政府は外国人労働者受け入れを拡大しているのか。
もちろん、中小企業経営者側からの要請もあるでしょうが、一番大きいのは、今の社会保障を維持するためでしょう。
先述したように、ピークから既に1300万人も減っている生産年齢人口は、2060年まで更に3000万人減ります。
そうなれば、今のビジネスモデルを維持して高齢化に伴う負担に応えるために、労働している人間の数を最低でも維持しないと、今の社会保障制度を維持することができなくなる。
だから低賃金の外国人労働者を入れようということなのでしょう。
しかし、この考え方は余りにも短絡的過ぎます。
■日本人労働者は増やせる
政府には、外国人労働者を受け入れる前にやるべき事がたくさんある。
まず、日本人労働者の供給量を増やすべきです。
そのためには、扶養控除の廃止。
これだけ人手不足が騒がれる中で、フルに働かないことで税制優遇するなど、あり得ない制度です。
もう1つは、専業主婦(主夫)への年金制度の廃止。
サラリーマン(第2号被保険者)に扶養されている専業主婦(第3号被保険者)は保険料を自ら負担することなく、将来的に老齢基礎年金が受給できるのです。
自分は払っていないのに年金を受け取れるというのは、社会保障の原則に反しているだけでなく、女性の働く動機を奪っています。
海外によくあるやり方を導入して、既に貰っている人は仕方ないですが、例えば平成何年生まれ以降の人の場合、第3号非被保険者を廃止すると決めればいい。
低賃金の外国人労働者を受け入れる前に、優秀な日本人女性にフルに活躍してもらう仕組みを徹底的に実施するべきです。
女性活躍を訴えるなら、まずこの2つの廃止は必須でしょう。
それに中小企業改革。
これまで何度も書いてきたように、規模が小さいというだけで日本の中小企業は優遇されています。
弱者扱いされて、期待もされません。
商工会議所などの中小企業の団体も、改善を要求されると、すぐに
「中小企業潰し!」
「中小企業淘汰論者!」
「中小企業は下請けいじめを受けている!」
などと煽ります。
それによって、中小企業は成長するインセンティブ( やる気を起こさせるような刺激。動機付け)が削がれています。
そうではなく、きちんと足腰の強い中堅企業に成長した企業をバックアップしていく。
規模が大きくなることで、人手不足にも強くなる。
■逆説的な人手不足解消方法
経済合理性を歪ませる中小企業優遇の最たる例が、
「交際費」
です。
今は日本では中小企業というだけで、取引先との接待などに使う交際費を800万円まで損金扱いできます。
私の経験則でしかありませんが、私の周囲の中小企業経営者で、会社のためにこの800万円を使っている人はほとんどいません。
仕事に関係なく、高級寿司屋で食事をしたり、夜の店に行ったりと
「”社長自身”への接待」
に使われており、全く実態を伴っていない。
要するに、公私混同です。
この制度をフルに使うことができる企業はほぼ小規模事業者です。
成長して中堅企業になろうとすれば、この制度のメリットは次第に減ります。
更に、サラリーマンをやって何の経費も使えないよりは、公私混同が許されている小規模事業者になった方が圧倒的に有利になる。
経済合理性より、経営者優遇を狙って起業するインセンティブが働いていしまうのです。
これは考え過ぎではありません。
日本企業の場合、6割以上の企業が赤字企業です。
この比率は、1960年代から景気と関係なくずっと上がっています。
諸外国の例を分析すると、企業数の赤字比率は2割で、日本では如何に経済合理性の低い小規模事業者が多いか分かります。
実は、中小企業が2017年度に支出した交際費は約3兆円。
もし、この3兆円に法人税(23%)を掛ければ、6900億円もの税金を取ることができます。
政府の肩を持つわけではありませんが、日本は何か物事を動かそうと思えば、とにかく批判・反対の風です。
中小企業はもっと頑張れと言えば
「中小企業いじめだ」
と批判され、扶養控除廃止を言えば
「専業主婦いじめだ」
と批判される。
日本は本当に疲れる国です。
中小企業問題について、商工会議所前会頭の三村明夫氏は、未だに私を批判しています。
日経新聞(2024年4月27日)の
「私の履歴書」
で、三村氏はこう語っていました。
<中小企業はサボっているのではない>
<統計の数字だけを見た
「生産性の低い中小企業は淘汰されるべきだ」
といった極論が罷り通れば、日本経済は本来の強さを失うだろう>
「統計の数字」
以外に、一体何を根拠にすればいいのでしょうか。
教育水準の高い日本人を低賃金で働かせている
「統計的事実」
について、三村氏はどう思っているのか、逆に訊きたいくらいです。
三村氏は、最低賃金を引き上げると大量に中小企業が倒産する、失業者は大量に増えるというような主張をよくしていました。
1990年代に比べて、最低賃金は2倍に上がっています。
安倍政権以降も1.3倍にもなっている。
三村氏の主張と真逆に、企業数は大幅に増えて、就業者数も史上最高水準になっている。
三村氏が主張していた
「大量の倒産」

「大量の失業者」
も、統計に表れていません。
だから、
「統計ではない」
と言うのでしょう。
政府も、強烈な反対に遭うことは目に見えているから、
「じゃあ、現状維持のために外国人労働者を入れるしかない」
と半ば諦めており、場当たり的な対応しか取れないのではないか。
この人手不足を解消するために、政府はどうすればいいか。
逆説的ですが、
「これ以上、外国人労働者を受け入れないこと」
です。
外国人労働者を受け入れないことで、中小企業はにっちもさっちもいかなくなり、自動的に中小企業間の提携・統合、設備投資による生産性向上が進みます。
それは、中小企業改革の前進にもなる。
先述したように、中小企業を延命させるために外国人労働者を受け入れるなど、百害あって一利なしの愚策中の愚策。
冒頭の世論調査で、外国人労働者受け入れに賛成した人には目を覚まして頂きたい。
政府は
「経営努力をしたくない」
「現状維持をしたい」
という経営者の甘え、自己中心的な考えなど一顧だにせず、毅然と対応してほしいと思います。

外国人受け入れ「特定技能制度」に4分野を追加、5年で82万人見込み 政府が閣議決定
2024/3/29 10:10
https://www.sankei.com/article/20240329-QQTAPVAO7JLS3PHI6X4N4G3SQQ/
政府は2024年3月29日、外国人を中長期的に受け入れる
「特定技能制度」
の対象にトラック運転手などの自動車運送業や鉄道、林業、木材産業の4分野を追加し、対象分野を現在の12から16に広げる方針を閣議決定した。
令和6年度から5年間の受け入れ見込み数は最大で82万人とした。
パブリックコメント(意見公募)を経て省令を改正する。
受け入れ見込み数は、国内の雇用拡大や生産性向上だけでは不足する労働力を業界ごとに算出したもの。
5年間で約34万人としていた制度開始時から2倍超となった。
人口減少や時間外労働規制強化によって物流分野での人手不足が深刻化する
「2024年問題」
などが反映された。
追加4分野のうち、利用客と会話の機会が多いタクシーの運転手や鉄道の車掌などは、必要な日本語試験の基準を他の分野よりも高いレベルとする。
既に特定技能の対象となっている製造業分野でも繊維や鉄鋼、印刷業務などを中に加える。
特定技能は平成31年4月に創設。
最長5年間働ける1号と、家族が帯同できて事実上永住できる2号がある。
政府は、外国人の研修を目的とする技能実習制度を廃止し、外国人材の確保と育成を目的として将来的に特定技能制度に移行できる
「育成就労制度」
創設を柱とする関連法案を通常国会に提出している。

祖国にいながら外国人に怯えて暮らすのか 「受け入れろと」と他人の国で暴走する移民たち
WiLL2024年7月号 イスラム思想研究家・麗澤大学客員教授 飯山陽
■クルド人がまた犯罪
先の衆議院東京15区の補欠選挙は、たくさんの応援を頂きましたが力及ばず落選してしまいました。
皆さんのお陰で、最後までマイクを握ることが出来ました。
今回、選挙に出馬した理由の1つが、日本の移民国家への道にストップをかけるためです。
しかし現状は厳しく、またクルド人による犯罪が起きました。
しかも今度の被害者は何と女子中学生です。
産経新聞オンラインの記事(2024年4月5日付)です。
「女子中学生に性的暴行をしたとして埼玉県警川口署は2024年3月7日、不同意性交等の疑いで、トルコ国籍でさいたま市南区大谷口の自称解体工、ハスギュル・アッバス容疑者(20歳)を逮捕した」
「『日本人女性と遊んだが暴行はしていません』と容疑を否認しているという」
再度確認してみると、この記事は削除されており、追加の記事では容疑者は匿名にされていました。
実名は
「デイリー新潮」
やまとめサイトのみで閲覧できます。
容疑者の居住地はさいたま市ですが、川口署が逮捕したということは、川口市で活動するクルド人の居住地が近隣の市にも広がっているということでしょう。
トルコ国籍のクルド人の多くはイスラム教徒ですが、一般的にそれほど信仰に熱心ではありません。
しかし、クルド人文化は、イスラム教文化と共通する所が多く、その1つが女性や性に関する文化です。
イスラム教では、異教徒の女性は二重の意味で卑しい存在とされており、尊厳を持つ人間として扱われません。
更にイスラム教には、性行為や結婚をしても許される最低年齢という概念がありません。
イスラム教徒の男性の中には、本件のような
「異教徒の女子中学生」
というのは、性的に何をしてもいい存在だと思っている人がいる可能性があるのです。
イスラム教徒の移民による、現地の女性たちに対する性暴力事件がヨーロッパで多発している背景には、このようなイスラム教の女性観、異教徒観があります。
イスラム教徒の男性は、異教徒の女性には何をしても構わない、髪や肌を露出させているのは尊厳がないことの証であり、むしろレイプされたがっているのだと、そう理解してしまうことがあるのです。
私はイスラム教の研究者ですから、イスラム教が如何に土着文化を侵食する力を持っているかを知識としてだけでなく、実感としても知っています。
世界にはこうした文化や価値観を当然とする人々が多く存在するため、理想の多文化共生・異文化共生を現実のものにするのは困難です。
実現したいのならば、外国人に対し、
「あなたの常識は日本では受け入れられない」
「日本では日本のルールを守ってもらわねば困る」
と、ハッキリと徹底的に主張するしかありません。
更に、外国人の子供には出来るだけ早いうちから、日本のルール、文化に馴染んでもらう必要があります。
フランスでは、2019年から義務教育が始まる年齢を6歳から3歳に引き下げました。
その背景には、自国の文化や風俗を守るために移民を教育する意図もあります。
一方で日本には、こうした対策は一切なく、多文化共生・異文化共生は素晴らしい、日本人は外国人の文化を理解し、受け入れろと主張するだけです。
このまま何の対策もしなければ、先述のような事件は今後更に増えるでしょう。
■何が、権力の監視役か
にもかかわらず、政府や自治体、企業、そしてメディアも、日本社会に対して影響力(インフルエンシャル)な発言権を持つ”権力者の皆さん”はこぞって、
「活力維持に外国人が必要だ!」
と声高に言います。
読売新聞オンライン版でも
「外国人・高齢者 活力維持へ重要『育成就労』『特定技能』着実に・・・人口減抑制」
と題して、次のような記事が掲載されました。

<人口が減って生産年齢人口(15〜64歳)が先細っていく中、社会の活力を維持するためには、労働力の確保が欠かせない>
<政府は今年(2024年)、外国人技能実習制度に代わる新制度「育成就労」の創設を決めた>
<掲げたのは「人材の確保と育成」>
<帰国を前提としていた技能実習制度から大きな転換を図った>
(中略)
<外国人の受け入れは、主に出入国在留管理庁が担っているが、労働者を巡る政策は多くの省庁にまたがる>
(中略)
<業種ごとに必要な人数や求める人材を呼び込むには、一元的に誘致していく必要がある>
<その司令塔として、政府に「誘致戦略本部」を創設すべきだ>
<制度を着実に進めていくため、自治体や地域住民にも配慮しながら、外国人との共生に向けた戦略を策定する>
(2024年4月26日付)

日本社会が人口減を抑制し、活力を維持するためには、外国人をどんどん日本に受け入れることが必須だとして、読売新聞がわざわざ提言しているわけです。
読売新聞だけでなく、既に国から企業まで皆揃って同じ事を言う有り様です。
外国人が必要だ、というのは、つまり”移民推進”です。
多様性の奨励はそのための地均しです。
多様性のある社会は
「活力を維持する」
と盛んに宣伝し、多様性を促進するために移民を受け入れる必要があるとして事を進める。
そもそも自民党は2016年3月15日の
「労働力の確保に関する特命委員会」
の初会合時に、政調会長の稲田朋美議員が
「日本は移民政策は採らない」
と明言した上で、議論を開始しています。
ところが、その8年後の2024年、岸田政権が在留資格
「特定技能」
について2024年度から5年間の受け入れ枠をこれまでの2倍を超える82万人とすると閣議決定しました。
8年前・2016年の方針を平気で変え、国民に嘘を付く、これが自民党政権です。
そしてこの嘘を嘘だと指摘せず、政府方針に同調しているのがメディアです。
何が
「権力の監視役」
でしょう。
「笑わせるな、愚か者!」
と言いたくもなります。
■7つの大罪である理由
読売新聞が提言した、
「日本社会の人口減を抑制し活力を維持し、成長を続けるためには外国人移民が必要だ」
という主張は完全に間違っています。
理由は7つー。
第1に、人口減の埋め合わせをするために移民を受け入れるなら、考えられないほど多くの移民を受け入れなければならないため、この政策自体が非現実的であることは、国連の調査でも明らかになっています。
第2に、人口減を埋め合わせするために移民を受け入れても、日本人でない人が増えるだけなので、日本で外国人による人口の置き換え(人口が増加も減少もしない均衡した状態になる)が進むだけです。
これを
「人口減の抑制」
だと言う人は、日本が日本でなくなることを積極的に推進する人たちです。
第3に、不足する労働力を補うために移民を受け入れても、移民もいずれ年を取って働けなくなります。
日本は今、永住を認めるという条件で移民を受け入れようとしていますが、労働力だったはずの移民は遠からず、日本の福祉によってその生活を支えなければならなくなります。
■移民と社会の暴走
第4に、不足する労働力を補うために移民を受け入れると言いながら、日本政府は彼らに家族の帯同を認めています。
5人、10人の家族を帯同すれば、移民の安い賃金では家族全員を養えなくなり、その分を補うのは、私たちの福祉、つまり税金です。
労働力が必要だと言って外国人を受け入れたのに、彼らの生活を我々の福祉で支えなければならないという事態が生じます。
労働力として受け入れた移民が、働く意欲を失ったり、病気になったり、失職すれば移民の家族の生活は、私たちの税金、私たちの福祉で支えなければならない。
これは移民を多く受け入れた欧米で実際に発生している問題です。
第5に、労働力として移民を受け入れれば、日本人の賃金が下がります。
政府が推進するインフレを上回る程度まで賃上げをする方針とは、正反対のベクトルに進みます。
サウジアラビアは移民を多く受け入れている国の1つですが、企業に一定数の自国民の雇用を義務付け、給与体系も外国人とは異なる水準を義務付けています。
しかし日本にはこうした規制はありません。
安い移民労働力を受け入れれば、企業と経営者が得をするだけで、日本人の労働者は専ら損をします。
これでは日本社会を弱体化させるばかりで、
「活力の維持」
どころではありません。
第6に、世界の文化の中には、日本の文化、伝統、常識、法律とは相容れない、矛盾するものが大量にあるため、全て受け入れれば、社会が混乱し、秩序が乱れます。
第7に、移民が増えれば間違いなく治安が悪化します。
現在、警察は外国人の犯罪を見逃し、仮に逮捕しても検察が不起訴にして犯罪者を無罪放免にします。
警察を恐れない”無敵の外国人”が、日本社会で暴走し、好き放題に犯罪に手を染めているのは、こうした背景があるからです。
外国人が増えれば、この状況は更に悪化するでしょう。
日本人は祖国にいながら、外国人に怯えて暮らさなければならなくなり、警察に守ってもらえなければ、自衛せざるを得なくなります。
犯罪の被害者となっても、誰も助けてくれない、そんな世の中にしたいですか?
■”聖域”という名の移民都市
2024年5月1日、バイデン大統領はワシントンでの集会で、日本経済が低迷している理由として
「外国人嫌いで移民を望んでいないからだ」
と述べました。
そんなアメリカでは現在、不法移民が急増しています。
米南西部の国境を越えて拘束・保護された不法移民は2023年度(2022年10月〜2023年9月)に247万人と3年連続で過去最多を更新。
かつてはメキシコや南米各国からの流入がほとんどでしたが、今は、中国などから中南米を経由してアメリカを目指す不法移民も増えています。
バイデンの
「外国人好きで移民を望む」
政策が、世界中から不法移民を引き寄せているのです。
アメリカ内で移民に寛容な都市、いわゆるサンクチュアリ・シティ(聖域地域)の代表がニューヨーク市です。
ニューヨーク市では移民を10万人ほど受け入れ、日々増え続ける移民の数に悲鳴を上げ、2022年10月に民主党のエリック・アダムス市長がとうとう非常事態を宣言しました。
「移民はニューヨークのストーリー(歴史)の一部で、アメリカの一部でもある」
「しかし移民政策は崩壊している」
「国家的危機だ」
「もう限界だ」
「市単位の予算には限りがあり、思いやりだけではどうにもならない所まで来ている」
アダムス市長は移民の受け入れの危機的状況を踏まえ、度々このように訴えてきました。
ニューヨーク市の移民関連の予算は2024年度が約42億ドル、2025年度が約49億ドルと巨額です。
その後、アダムス市長は法律違反の疑いのある移民を保護してきた政策を転換する考えを示しています。
つまり不法移民を矢継ぎ早に受け入れる政策を採った結果、市が財政破綻しかかっているのです。
ニューヨーク市に限らず、不法移民を受け入れた州や都市は軒並み財政や治安が悪化し、地元住民の不法移民に対する感情も悪化しています。
今や28%のアメリカ人が不法移民の問題は、アメリカにとって最大の問題だと認識しています。
■”日本”であるために
一方、日本はどうか。
岸田政権は今まさに
「移民を望む」
政策を採りつつあります。
アメリカで不法移民に厳しい共和党が政権を取れば、アメリカに殺到している世界の不法移民が、今度は日本に殺到するでしょう。
今度は日本が不法移民の”サンクチュアリ(聖域)”になろうとしています。
日本が日本であり続けること、日本が国民にとって安心して暮らせる祖国であり続けること、日本人の暮らし、豊かさ、安全が守られることが何より大事です。
移民受け入れ推進は、こうした安心・安全を全て破壊します。
しかし今の日本の国会議員に、日本国民の安全を主張する人はほとんどいません。
彼らは皆、嘘を付き、移民を受け入れることによって起こる問題に言及する人はほとんどいません。
移民によって破壊された欧米社会や、先述のクルド人による性的暴行事件が彼らには見えていないのでしょうか。
文化や価値観の違いによって生じる事件、財政や治安の悪化などが起き得る移民政策を阻止する必要があります。
日本が移民問題で苦しむ欧米のようになるのは、時間の問題です。
私たちにとって大切な日本という国を、守り抜かなければなりません。

女子中学生に性暴行の容疑者、難民申請中のクルド人 トルコ生まれ川口育ちの「移民2世」
「移民」と日本人
2024/3/8 17:25
https://www.sankei.com/article/20240308-LUTLMINZTNOZNGADECZPNB3CGY/
女子中学生に性的暴行をしたとして埼玉県警川口署に逮捕されたトルコ国籍で自称解体工の男(20)が、難民認定申請中で仮放免中だったことが2024年3月8日、同署の調べで分かった。
男はトルコ生まれ日本育ちの在日クルド人で、事実上の
「移民2世」
という。
調べによると、男は2024年1月13日午後10時半頃、川口市内のコンビニ駐車場に止めた乗用車内で、東京都内の10代の女子生徒に性的暴行をしたとして2024年3月7日、不同意性交などの容疑で逮捕された。
同署によると、男は先に来日していた父親を頼って幼少期に来日し、地元の小中学校に通っていた。
卒業後は家業の解体業を手伝っていたと供述している。
男は父親と共に難民認定申請中で、入管施設への収容を一時的に解かれた仮放免中だった。
自宅はさいたま市内だが、川口市北部の隣接地域だった。
男は自身の運転する車で、SNS(交流サイト)を通じて知り合った都内の女子中学生らや、日本人男性らとドライブに行くことになった。
女子生徒らは横浜方面に向かうと考えていたが、車は都内から川口市内へ直行。
女子生徒らは車内でスマホを使ってやり取りして逃げ出そうとしたが、犯行現場のコンビニ近くで降ろされ、被害にあった女子生徒だけが車に残されたという。
男は
「日本人女性と遊んだが暴行はしていません」
と容疑を否認。
同署はトルコ語の通訳を介しながら調べを進めている。
川口市内では近年、一部クルド人と地域住民との軋轢が表面化。
「2世」
とみられる若者らによる車の暴走行為や煽り運転も問題となっている。

中学生に性的暴行したクルド人は難民申請中だった 地元市議は「実態を正しく直視するべき」
2024年4月5日
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/04050558/?all=1
埼玉・川口市でクルド人男性が不同意性交容疑で逮捕された。
女子中学生に性的暴行をした疑いである。
実はこの男性、難民申請中だった。
悲劇の主人公のはずの
「難民」
が他人を悲劇に追いやる、その実態とは。
 ***
報道等によると、2024年3月7日に逮捕されたのはさいたま市に住むハスギュル・アッバス容疑者。
トルコ国籍の20歳、解体工だという。
事件があったのは2024年1月13日のことだ。
アッバスは都内の女子中学生とSNSで知り合い、複数人でドライブ。
2人きりになった後、川口市内のコンビニの駐車場に停車し、車内で犯行に及んだ。
行為の時間は約6分。
粗暴極まりない事件である。
川口市とその周辺でクルド系の住民と地元住民との間に軋轢が生じているのは周知の通り。
■市議も「不安に思う市民が増えている」
2023年7月4日は男女の揉め事で怪我をしたクルド人男性が川口市立医療センターに運び込まれ、それを巡ってクルド人が100人ほど病院に集結。
一時、救急搬送の受け入れが停止されるという大騒動が起きた。
「不安に思う市民が増えていると感じます」
とは、川口市議の奥富精一氏。
「これまでも一部のクルド人が改造車で危険運転や違法駐車をしたり、あるいは喧嘩をしたりという事例が見られてきました」
2023年6月には市議会で
「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」
が採択されている。
「そこにきて今回の事件ですから、市民の不安が益々増したとしても不思議ではありません」
■クルド人増加の背景事情
クルド人とは、中東のトルコやイラン、イラク、シリアなどの国境地帯に住む「国を持たない民族」。
川口は彼らが集住する地域として知られ、現在、2000人以上が暮らしている。
「彼らは難民申請をしているケースが少なくない」
と言うのは、入管のさる関係者だ。
「トルコと日本は現在、短期滞在ならビザは必要ではありません」
「で、ノービザで入国し、滞在期限が切れるまでの間に難民申請を行うんです」
「すると、その審査期間中は強制送還が止められる」
「川口に来るクルド人の多くは、ある特定の地域の出身です」
「こうした仕組みで入った人たちが地元の親類縁者を呼び寄せ、数が増えていったんです」
今回の事件を起こしたアッバスも、先に日本に来た父を頼って幼少期に来日し、難民申請をした“移民2世”だという。
「実際、彼らが難民認定されることはほとんどありません」
「クルド人が母国で差別されているのは事実でしょう」
「が、難民条約が規定するように、自由が奪われたり、生活が著しく損なわれ、生命の危機が生じているかと言えば、そこまでとは認められないことが多い」
「申請期間中に日本で稼いで帰国するか、或いは子供が小中学校に長期間通うなどすれば、在留特別許可を貰えるかもしれない」
「クルド人増加にはこうした背景事情があります」
しかし、そうした入国経緯の者の中から凶悪犯が出れば、住民との摩擦が生じるのは当然の事だろう。
■グレる2世
この地域で長年、クルド人支援に携わってきた「在日クルド人と共に」理事の松澤秀延氏は、
「彼らも日本の社会に順応したいと思っていますが、日本側の拒否反応が強く、そこで絶望を感じてしまうことも多い」
と分析するが、
「今回の事件もそうですが、2世の中には学校に行かず、いわゆる“グレて”しまうケースも少なくない」
「この問題を指摘するとすぐ差別と言われますが、まずは実態を正しく直視することが重要だと思います」
(奥富市議)
多様性尊重――そんな建前だけでは語れない現実が、この川口には横たわっているのである。
週刊新潮 2024年4月4日号掲載

外国人・高齢者 活力維持へ重要 「育成就労」「特定技能」着実に…人口減抑制[読売新聞社提言<7>]
2024/4/26 5:01
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240425-OYT1T50222/
■労働者に「選ばれる国」
人口が減って生産年齢人口(15〜64歳)が先細っていく中、社会の活力を維持するためには、労働力の確保が欠かせない。
政府は今年、外国人技能実習制度に代わる新制度
「育成就労」
の創設を決めた。
掲げたのは
「人材の確保と育成」。
帰国を前提としていた技能実習制度から大きな転換を図った。
外国人労働者を中期的に受け入れる在留資格
「特定技能1号」
も、自動車運送業や鉄道などの4分野を追加して16分野に広げた。
日本で暮らす外国人は増えており、約340万人に上る。
労働者は2023年10月末時点で約204万人だ。
政府は、育成就労と特定技能を
「車の両輪」
として、労働力を補っていく。
他国も受け入れを進めており、獲得競争を勝ち抜くには
「選ばれる国」
にならなければならない。
外国人の受け入れは、主に出入国在留管理庁が担っているが、労働者を巡る政策は多くの省庁にまたがる。
農業や介護、建設など職種も幅広い。
業種ごとに必要な人数や求める人材を呼び込むには、一元的に誘致していく必要がある。
その司令塔として、政府に
「誘致戦略本部」
を創設すべきだ。
制度を着実に進めていくため、自治体や地域住民にも配慮しながら、外国人との共生に向けた戦略を策定する。
育成就労では3年間働いた後、在留期間が5年の特定技能1号、永住が事実上可能な2号を段階的に取得してもらうことを目指す。
外国人の受け入れ先は主に地方の中小企業で、自力での育成には限界がある。
自治体の支援が欠かせない。
広島県は2023年、2号取得を目指す外国人を雇う企業に、最大300万円を補助する事業を始めた。
尾道市の
「因島鉄工」
はこの事業を使い、造船・舶用工業分野で全国初の合格者を出した。
その一人、ベトナム人のファン・ヴァン・マインさん(35)は
「将来は奥さんを連れてきて、ここでずっと働きたい」
と語る。
同社では試験対策として日本語講師を雇い、技能向上のための模擬試験を実施。
外国人向けの寮も整備した。
人材を繋ぎ止めるには、異国の地で働く外国人が暮らしやすく、文化に馴染める工夫も求められる。
■フレイル対策
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、2020年に7000万人超だった生産年齢人口は、2100年に3200万人に減る。
人手不足を補うため高齢者の力も必要だ。
内閣府の調査では、仕事で収入を得ている60歳以上の9割が、「いつまでも」を含め、70歳以上になっても働きたいと回答している。
企業は、技術や経験を持つ高齢者を積極的に受け入れるべきだ。
2040年には医療・介護人材が100万人近く不足するとされ、介護が必要な高齢者を少しでも減らしたい。
要介護一歩手前の状態「フレイル」の高齢者が対策を取った場合、5年後に15%が改善し、35%が状態を維持したという調査もある。
予防には食事や運動、就労といった心身の充実がカギを握る。

「共生」ではなく「統合」が必要だ
正論2024年7月号 評論家 三浦小太郎
本稿では、まず戦後の日本における外国人の受け入れ政策の歴史を簡単に辿り、私が実際に接した外国人を巡るいくつかのケースを示した上で日本が今後、受け入れを行う場合に考えるべき
「思想的原則」
を述べる。
尚、本稿で私は
「移民」
という言葉を原則として使わない。
日本政府はこれまで、我が国の外国人労働者の受け入れについて、あくまで一定の期間に限定した、専門的、技術的分野の労働者の受け入れであって、我が国への定住を目指す
「移民政策」
は採っていないと一貫して述べてきた。
しかし現実には、一定期間就労した労働者が長期滞在や定住を継続して求める可能性は極めて高く、こうした線引き自体、外国人受け入れ策について移民政策か否かと議論することと同様余り意味がないと思えるからだ。
大東亜戦争の敗戦後、日本には約200万人に及ぶ朝鮮半島出身者が存在した。
敗戦までは
「日本国民」
だった彼らを単純に外国人問題と捉えることには無理がある。
ただ、歴史的教訓とすべきことは、在日朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)という北朝鮮に従属する組織の存在を事実上容認してしまった点で、我が国に禍根をもたらした。
これは後述する。
日本の外国人受け入れの大きな転機となったのは1970年代後半のベトナム難民の受け入れと1979年の国際人権条約、1981年の難民条約の批准である。
戦争と革命の世紀であった20世紀に、国境を越えた難民、移民の権利を守るために打ち立てられた理念の1つが、条約にある内外人平等待遇、即ち自国民に与えるものと同等の待遇を外国人にも保障するという原則である。
この原則に基づき、1948年に国連で採択された世界人権宣言では
「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身」
による差別を否定し全ての人が
「社会の一員として、社会保障を受ける権利」(第22条)
を持つと見做した。
更に1966年に採択された国際人権規約には
「社会的及び文化的権利に関する国際規約」
として
「国民若しくは社会的出身による差別」
の撤廃が記されている。
難民条約にも、第23条で公的扶助を難民に対し自国民と平等待遇とするような条文が存在することは外国人受け入れにおいてまず議論の前提にならなければならない。
1989年には出入国管理法が改正される。
この法律は現在に至るまで日本政府の外国人受け入れの基準を定めたもので
@不法就労、不正規滞在の取り締まり
A専門・技術職の受け入れ拡大
B技能実習制度の先駆けとなった「企業研修」制度による在留資格
が特徴だ。
在留に期限と資格を設けて外国人を受け入れるという原則を掲げたものである。
当時の時代背景を説明すると、1985年のプラザ合意以後、円高によって外国人労働者が日本で働くメリットを感じ、出稼ぎ労働者として日本に流入していた。
「3K」
と言われた
「きつい」「汚い」「危険」
な職場に不法就労や資格外活動といった劣悪な労働条件の下で単純労働を課されるという実態が横行していた。
2012年には高度人材ポイント制度が導入された。
これは
「高度」
な学術研究、専門技術、経営管理などに従事している外国人に対し、学歴、職歴、年収などについてそれぞれポイントを設け、合計が70点に達した場合は優遇措置として配偶者の就労、永住許可申請に必要な居住年数の短縮など様々な優遇措置が設けられた。
2023年には更に拡充された特別高度人材制度が導入された。
高度人材として滞在する外国人の数は、2022年度の段階で1万8315人におり、うち63.9%が中国である。
次いでインド5.7%、韓国4.4%、アメリカ4.1%、台湾3.2%と続く。
(出入国在留管理庁資料より http://www.moj.go.jp/isa/content/930003527.pdf)
日本の高度先端技術の分野に迎え入れられている外国人の6割以上が中国人であるという現実は、安全保障上も注意が必要である。
2018年に行われた出入国管理法改正では、更に新たな在留資格として
「特定技能」
が設立された。
日本の産業を支える業種のうち、@介護AビルクリーニングB素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業C建設D造船・舶用工業E自動車整備F航空G宿泊H農業I漁業J飲食料品製造業K外食業など人手不足業界と列挙した上で
「特定技能1号」
「特定技能2号」
の2種類の在留資格を認める制度である。
これまでの在留資格はいずれも国際貢献を目的にしていたが、初めて明確に人手不足の中で業態維持のために外国人を受け入れると掲げた。
2024年3月29日には自動車運送、鉄道、繊維、林業などの業界が追加された。
「特定技能2号」
はより熟練した労働者で日本語にも長け、在留期限は無制限とし、家族の帯同も許可される。
本来日本が公的には認めていないはずの単純労働者の受け入れが横行していたのが、日系ブラジル人など日系人の受け入れと、1993年から始まった技能実習制度、更には不法就労者だった。
技能実習制度は外国人が最長で5年間、働きながら技能を学ぶことで
「技術移転」
を行うことが目的であったが、現実には最低賃金を下回る額で厳しい労働条件下に置かれ、また、実習生が職場から失踪するなどの問題が相次いだ。
結果、政府の有識者会議の決定として、2023年の段階で現行制度を廃止し
「育成就労制度」
に変更、基本的に3年で一定の専門性や技能を持つ水準にまで育成し、受け入れ職種を、介護や建設、農業などの分野に限定することになった。
この技能実習は、外国人受け入れにおける本質的な問題が露呈した例である。
実習生の受け入れ目的が技術移転という国際貢献であっても、実際に受け入れる企業の立場からすれば、現場で作業をする労働者とは本来雇用関係にあり、企業に利益をもたらす存在でなければならない。
国家の方針にどんな理想論が掲げられようと、それが実践されるのはあくまで現場なのだ。
実習生たちを送り出す国側も、的確な制度の下に行っている場合もあれば、国によってはブローカーまがいの組織が高額な借金を課す形で日本へ送り出すケースもある。
私はある外国人が日本における就労ビザのために100万円以上を必要としたと聞いたことがある。
良心的で法に則った受け入れと技能研修を行ってきた企業や組織の名誉のためにも、送り出し国側の諸問題は日本の受け入れの在り方と共に抜本的に解決されなければならない。
更に不法就労者たちの存在は、日本の治安の脅威となるだけでなく、何らの法的保護も設けられない彼ら自身の人権問題として深刻な事態を引き起こしかねない。
以上に見られるように、日本政府は
「移民政策」
という言葉を否定はしてきたが、事実上外国人労働者の受け入れを継続して行ってきた。
そして、ほとんどの決定は閣議決定でなされ、国会においても政府与党内においてもそれ以後、十分な審議が尽くされたとは言い難い。
仮に審議が尽くされたとしても
「少子化の実情から外国人受け入れは日本経済のために必要である」
という、政府や企業の多数派によって疑われることのない命題に沿った結論(及びリベラル側からの多文化共生と差別反対がこれを補強する)しか生まれないのではないだろうか。
私たちはこの命題自体を再検討すべき時に来ている。
そのために参考になる文献の1つは、自身もキューバからの移民である経済学者、ジョージ・ボージャスが著した『移民の政治経済学』(白水社、2017年)である。
■単なる労働力ではなく『人間』
まずボージャスは、移民=外国人労働者は、
「人間」
であって
「労働者」
「労働力」
といった抽象的な存在ではないことを常に強調する。
彼らは自らの意志で行動し、受け入れ国にロボットのように使われ、必要がなくなれば処分されるような存在ではない。
外国人労働者を受け入れることは、彼らの社会福祉や人権を当然守ることを前提とする。
これは先述した国連の規定からも明らかだ。
同時にボージャスは、人類の歴史において、移民受け入れは受け入れ国にとって経済的利益がある場合のみ行われ、そうでない場合には国境は閉ざされたという歴史的事実を確認している。
この両面が外国人受け入れを考える上では必要な姿勢なのだ。
ボージャスは移民のもたらす経済的利益を一概に否定しているのではない。
移民が労働人口に参加すれば、確かに富は移民と競合する立場にある労働者から、移民を使う側の経営者に移転される。
移民が労働市場に入ることで、労働者の賃金は低下するが、この賃金減少分は、人件費を節約できた企業の利益となる。
これを
「移民余剰」
という。
この
「移民余剰」
によって受け入れ国全体の富は確かに増加するが、それは同時に自国の労働者にとっては富を失うことである。
ボージャスの指摘は更に付加すれば、企業が設備投資などの生産性向上よりも、安価な外国人労働者を雇うという安易な選択を行い、本来は社会的に改革すべき低生産性の工程・部門が国内に残存してしまう。
またボージャスは移民余剰の利益は、先進福祉国家では、移民への社会保障費によってほぼ相殺されると述べている。
短期的には移民は経済的のみならず、社会的、政治的、経済的に負の影響をもたらす可能性が高い。
そしてボージャスは現代のアメリカに対し
「1100万人もの書類不所持移民を入国させているような穴だらけの国境」
の現状のままでは、移民政策を論議すること自体が無意味だと断定する。
尚、不法移民の取り締まりのためには、ボージャスは国境封鎖よりも不法就労者を雇用する雇用主への処罰の厳格化を求めている。
更に中東からの難民にも触れ、自身の体験から深い同情を持ちつつ
「我々は現実的でなければならない」
「難民の中には少数だが恨みや争いを持ち込み、それを受け入れ国で晴らそうと思う人々がいる」
「また、受け入れ国の社会と政治の安定を揺るがす恐れのある文化的慣習を持ち込む人もいる」
「移民政策は益々(難民であろうがなかろうが)移民が単なる労働職以上のものを持ち込む存在であることを考慮に入れなければならなくなるだろう」
(『移民の政治経済学』)
と警鐘を鳴らす。
■脱北者の順法意識
ここで私のささやかな体験を述べておきたい。
私はある時期、北朝鮮から脱出して日本に入国した脱北者たちの定着支援に関わっていた。
日本は、1959年に始まった帰還事業により北朝鮮に渡った帰国者とその子孫に関しては、彼らが脱北後、希望した場合は歴史的経緯と人道的配慮で日本国に受け入れてきた。
その中には帰還事業の責任と国内の人権弾圧を告発して北朝鮮国家を訴えている人たちもおり、多くは無事日本社会に適応している。
しかし、私の接した脱北者の中には、日本の法律や制度を軽視する傾向もまた見られた。
脱北者は中国においても難民としての保護は受けられず、警察に見つかれば強制送還の運命が待っていた。
「違法状態」
に置かれ、しばしば中国人のブローカーに匿われてきた脱北者の中に、法律への軽視の意識が生まれてもやむをえまい。
しかしその結果、中国朝鮮族が脱北者に成りすました形で入国したり、脱北者自身がブローカーまがいの振る舞いを行うこともあった。
あるいは麻薬の売買に関与したり、偽パスポートによって偽装難民化したりした事例が、ごく少数とはいえ、散見されたことも事実である。
私は一部の例を持ち出して脱北者を受け入れてきたという人道的意義を否定したいのではない。
ただ、難民の性格を考え得る上で決して無視できない一面である。
今、埼玉県川口市で問題になっているクルド人問題も同様である。
2024年4月13日の産経ニュースの記事
「川口の仮放免者700人、初めて判明 大半はクルド人か 各自治体に情報提供へ運用見直し」
によれば、埼玉県川口市内には、現在、難民認定申請中で入管施設への収容を一時的に解かれた不法滞在状態の
「仮放免者」
が約700人存在している。
これは出入国在留管理庁のまとめた数字であり、大半はトルコ国籍のクルド人とみられる。
記事によれば
「仮放免者の情報はこれまで、本人が希望しない場合は当該自治体へ通知されず、自治体にとって実態把握が困難」
であったが、今後は
「自治体から要請があれば入管庁から仮放免者の情報が提供されるよう、入管難民法の運用を見直した」。
更に2024年6月10日の改正難民法施行以後は
「仮放免許可書」
の携帯を新たに義務付ける。
埼玉県川口市内では近年、クルド人と地元住民らの軋轢が表面化している。
「仮放免者」
の問題は、今の入管の病が凝縮しているとも言えるだろう。
厳正な法執行こそがまず必要であるにもかかわらず、それが出来ずにいる。
一方で外国人への門戸を広げることは際限がないのに、在留管理という我が国の外国人受け入れの原則は貫けずにいる。
本誌令和3年8月号でも論じたが、今回の改正入管法で難民申請中の送還停止は2回までが限界となり、申請3回目(もしくはそれ以上)の場合は送還の対象となる。
これは難民認定が却下された後も、ほとんど同一の資料で、何度も申請要求を繰り返し在留を引き延ばす行為への防止策だ。
私にも国家を持たぬクルド人の歴史に一定の同情はある。
ただ、敢えて言えば国家を持ち得なかったクルド人に、国家秩序や法意識への軽視が見られるならば、それは受け入れ国の保護を自ら放棄したことと同じ事なのだ。
■「国家」の在り方議論を
外国人の受け入れと文化的統合のモデルとしては、これまではアメリカ型の
「メルディング・ポット」(多様な人種、民族による文化が社会で溶け合い、新しい生活文化を形成する)
という概念が存在した。
しかしこの理念は本家アメリカにおいて、1960年代の公民権運動やブラック・パワーをはじめとする様々なマイノリティ運動の中で否定されていく。
人種のるつぼ理念とは、白人多数派の価値観への従属を強いるもので、各民族の文化を否定するものだと批判されたのだ。
次に生まれたのが多文化共生の理念で
「モザイク型」
の受け入れ理念として世界に広がった。
だが、多文化共生には大きな落とし穴がある。
それは現在普遍的な理念として受け入れられている、政教分離、男女平等、自由民主主義、反差別主義、人権擁護、また伝統を尊重した上での自由といった、西欧近代の生み出してきた最良の理念を相対化し、各民族文化の差異を強調することで、BLM(ブッラクライブズマター)に代表されるような激しい分離・対立を社会に招くことに繋がってしまったのだ。
白人の差別意識への批判が行き過ぎたアファーマティブ・アクション(マイノリティ優遇政策)を引き起こし、人権擁護が事実上の言論弾圧であるポリティカル・コレクトネス(社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策(または対策)などを表す言葉の総称であり、人種、信条、性別、体型などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を使用することを指す)として猛威を振るい、表現の自由をも脅かしている。
少数派の文化が時として普遍的な自由や平等の価値観に反する場合にそれは無条件で肯定すべきなのか。
イスラム教における
「名誉殺人」
(婚姻拒否、強姦を含む婚前・婚外交渉、「誤った」男性との結婚・駆け落ちなど自由恋愛をした女性、更には、これを手伝った女性らを「家族の名誉を汚す」ものと見なし、親族がその名誉を守るために私刑として殺害する風習のことである)
(射殺、刺殺、石打ち、焼殺、窒息が多く、現代では人権や倫理的な客観から人道的問題としても議論される)
(一部の文化圏では父や夫以外の男性と同空間滞在(非隔離)した女性や同性愛者が対象となったとされる)
(殺害被害者は多くは女性であり、男性の場合は同性愛者の場合が多いが、異性愛の男性が殺される事件も稀にある)
(「名誉殺人」とも言う)
(イスラム教が盛んな地域で主に行われているため、その宗教や文化と関連付けられて語られることが多い)
(しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチの責任者の1人であるウィドニー・ブラウンは、この犯罪について「文化や宗教を超えて行われる」と警鐘を鳴らしている)
やかつてインドで存在した寡婦が夫を追って焼身自殺する儀式(サティー)を私たちの社会で認めることなどできまい。
そして我が日本では、朝鮮総連の存在が
「在日朝鮮人の人権組織」
と見做され、このことが事実上国内での工作活動や犯罪を看過することに繋がった。
今、新たなモデルとして生まれているのは
「市民的統合」
である。
これは外国人が、受け入れ国の言語、歴史、自由民主主義の価値観について教育によって受け入れ、身に付ける形で統合を目指すやり方である。
これはオランダが最初に打ち出し、1998年、オランダ語習得や市民教育などの
「統合コース」
への参加が移民に義務付けられた。
その後、この統合システムはヨーロッパに拡大している。
私はこのモデルを応用することが日本の今後に最も相応しいと思うが、ここで敢えて
「国民統合」
という言葉を使いたい。
「国民統合」
とは、自由民主主義と政教分離といった現在国際社会で通用する普遍的価値観の許容や日本の文化伝統への一定の理解を外国人受け入れの前提とすることである。
このシステムは難民や準難民に対しても適応される。
受け入れた外国人を外国人と見てその文化を尊重する共生政策とは異なり、
「日本国民」
と同等に扱う同化主義に近いが、それは普遍性への同化と、今後在住する日本国の文化への理解を求めることだ。
もちろん、その原則の上でも各民族文化への尊重は同時に可能なはずであり、そのバランスを取ることこそが、元々寛容な姿勢で多文化を(西欧の近代主義も含めて)受け入れてきた日本の伝統である。
最後に、私は前述した人権規約や難民条約における、内外人平等待遇の原則を、今、国際社会は見直すべき時に来ていると考える。
難民や移民を保護してその権利を守ろうとする精神は何ら間違ってはいない。
だが、特に近年の欧州における難民・移民の現状を見る時、かつての
「迫害する国家から脱出した難民を守る」
という理念と同様に
「難民(及びそれと判別し難い大量難民)から、既存の国家や社会の秩序を守る」
こともまた重要な時代に私たちは生きているのだ。
社会秩序や安全保障の問題、ひいては国家とは何かという理念の問題まで拡大して議論することが、国会でも民間でもまず必要である。

川口の仮放免者700人、初めて判明 大半はクルド人か 各自治体に情報提供へ運用見直し
「移民」と日本人
2024/4/13 19:14
https://www.sankei.com/article/20240413-EBG6TISPPRGJTEK7FDFWV7C2FE/
日本語、トルコ語、クルド語で「公園内で、夜に大きな声や音を出してはいけません」「ごみはきちんと持ち帰りましょう」と呼びかける看板=埼玉県川口市
https://www.sankei.com/article/20240413-EBG6TISPPRGJTEK7FDFWV7C2FE/photo/JESUUVVFENF75H7HMVM5MJDCNY/
難民認定申請中で入管施設への収容を一時的に解かれた不法滞在状態の
「仮放免者」
が、埼玉県川口市内に700人程度いることが2024年4月13日、出入国在留管理庁のまとめで分かった。
大半はトルコの少数民族クルド人とみられる。
仮放免者の情報はこれまで、本人が希望しない場合は当該自治体へ通知されず、自治体にとって実態把握が困難だった。
このため、自治体から要請があれば入管庁から仮放免者の情報が提供されるよう、入管難民法の運用を見直した。
また、2024年6月10日施行の改正入管難民法では、仮放免者に
「仮放免許可書」
の携帯を新たに義務付け、携帯しやすいよう、許可書の大きさを従来のA4判からカード大のサイズに変更するという。
川口市内では近年、クルド人と地元住民らの軋轢が表面化している。
この日、市内で国会議員らが
「一部の外国人による迷惑行為のある地区」
を視察。
その後に市や市議、入管庁との意見交換会が開かれ、終了後に参加者らが報道陣に明らかにした。
入管庁によると、仮放免者数は日々変動するが、直近では川口市内に約700人おり、大半はトルコ国籍という。
同市内にはトルコ国籍の正規の在留者が約1300人おり、トルコ人も含め、合わせて約2000人となる。
強制退去処分が出ながら送還を拒む不法滞在状態の
「送還忌避者」
は、令和3年末時点で3224人。
このうち半数に当たる1629人は難民申請中で送還が停止されていた。
送還忌避者は令和4年末時点では4233人まで増えた。
改正法施行後は、難民認定申請中の強制送還停止が原則2回までに制限され、仮放免者の数も減ることが想定されている。

きっと再燃する外国人参政権問題
正論2024年7月号 日本政策研究センター 岡田邦宏
我が国の外国人政策が大転換しようとしている。
今、国会に提出されている法案(出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案など)は、出身国への技術移転など国際貢献を建前とした現在の
「外国人技能実習」
制度を廃止し、人手不足を補うことを正面に掲げた
「育成就労」
制度、つまり外国人労働者を労働力として位置付け導入する制度へと転換することが眼目となっている。
この
「育成就労」
資格で3年の在留期間を経て技能や日本語能力が育成されたとなると在留資格が
「特定技能1号」
となり、更に次の段階として熟練技能が求められる
「特定技能2号」
の試験に合格すれば永住資格の取得も家族呼び寄せも可能となる。
また、これまでの技能実習制度では原則認められていなかった実習先の転籍が、新制度では1つの職場で1年を超えて働いた場合、条件付きで認められることとなる。
こうして
「育成就労」
資格で3年の在留期間を経て在留資格が
「特定技能」
となった場合も、外国人が働くことのできる職種が従来の14業種に自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野が追加されることが決定している。
近い将来、水産加工や製造業、農作業だけでなくバス・タクシーの運転手や鉄道の駅員として外国人が働く姿を見ることとなる。
まさに、外国人政策の大転換と言えるが、この転換がもたらすものは何か。
人手不足が幾分か解消されるというだけの単純な話ではない。
朝日新聞は
「未熟練労働者として入国した人たちに中長期のキャリアパスを示し、将来的な定住への道筋が見えるようにした」(2023年10月20日・社説)
と評価したが、外国人労働者の定住を促進するかのような政策変更と言える。
我が国の外国人政策は在留期限と在留資格を限定して在留を許可する
「在留管理」
が原則で、期限が切れると在留できなくなる制度のはずだったが、今回の政策転換が定住を前提とまで言わないが、定住を促進する、移民政策に転換するかのような内容と読めてしまうことは否定し難い。
■外国人が10%を超える日
問題は定住化だけではない。
既に日本人人口が急激に減少する一方、今回の政策転換以前から在留外国人は着実に増加する時代が始まっている。
2023年6月時点での在留外国人の総数は322万3856人(出入国在留管理庁)で過去最高となった。
そのうち外国人労働者は204万8675人(2023年10月末時点)で、前年から22万人余り増加し、初めて200万人を超えた。
政府は今回の政策転換によって5年間で82万人の外国人労働者の増加を見込んでいるというのだから、今回の法改正が外国人労働者の流入を加速させることは間違いあるまい。
このまま日本人人口が減少し、外国人人口の増加が続けばどうなるか。
国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研と略)による推計(2023年4月公表)では、今から45年後の2070年に日本の総人口は8700万人に減少し(2020年の国勢調査による1億2615万人から31%減)、その一方で在留外国人は939万人へと増加するとの推計を発表している。
つまり、総人口に占める外国人の比率が10.8%となり、現状の比率約2%と比べて約5倍、日本は10人に1人が外国人という人口推計となると予測されている。
しかも、既にその時期が45年後の2070年よりかなり早く前倒しされる可能性すら指摘されている。
入管庁の発表によると外国人の入国者数から出国者数を引いた
「入国超過」、
つまり外国人の増加数は2023年9月までの1年間で24万人と前年同時期を5万人も上回っていた。
実は、先の社人研による外国人人口推計は毎年16.4万人の入超を想定した推計だったが、現実には既にその1.5倍も増加している。
この増加傾向が続けば外国人人口比率10%は2070年より10年、20年早まるのは確実と言える。
ちなみに外国人比率10%と言えば、ヨーロッパではドイツ(19%)には及ばないが、イタリア(11%)とほぼ同率、フランス(13%)やイギリス(14%)に近い数字と言える。
これらの国々では移民問題が国政上の大問題となっているが、外国人労働者を移民とは呼ばない我が国においても、本格的な
「外国人政策」
が論じられねばならない時代がやって来ていることは確かである。
■抜け落ちた地方への視点
外国人政策は、出入国管理が国家の主権に係わり、労働政策を含めて出入国や在留、帰化などの制度も基本的に国政マターであり、今回の政策転換を行った背景となったのも外国人材受け入れ・共生に関する関係閣僚会議の報告書
「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」
と言える。
そこで何が掲げられているのかと言うと、
「外国人も社会の一員として包摂する安全・安心な社会」
「外国人を含む全ての人の社会参加」
「個人の尊厳と人権を尊重した社会」
の3つのビジョンを挙げ、外国人との共生社会を目指そうという構想である。
このロードマップに掲げられた共生のビジョンを真っ向から否定しようとは思わないが、その実現性に疑問を持たざるを得ないというのが率直な感想と言える。
というのも、外国人人口の増加、定住化の波に直面するのは
「地方」
なのだが、このロードマップにはその
「地方」
への視点が見当たらないというかすっぽり抜け落ちていると言わざるを得ないからである。
外国人は日本で働くために入国し在留しているが、単なる労働力として位置付けるだけで済む問題ではない。
「我々は労働力を呼んだが、やって来たのは人間だった」
というスイス人の言葉があるように、職場での労働環境、年金・健康保険、子供の保育・学校教育、本人と家族の日本語教育、更には生活保護を含めた生活環境の整備が必要とされることは言うまでもない。
そうした課題や問題に実際に直面するのは中央官庁ではなく地方自治体である市町村だが、自治体財政や人的問題への言及は余りに少ない。
そうした地方との連携が余りに希薄で、
「外国人との共生」
だけが独り歩きしているように読めてしまうというのが筆者の感想である。
■その先に外国人参政権
先に挙げた行政対応など財政的・人的問題はクリア可能だとしても、もっと深刻な問題がある。
ロードマップが外国人を
「日本社会を共に作る一員」
と位置付け、外国人の
「個人の尊厳と人権」
が尊重される社会を目指すことを強調している。
しかし、外国人の
「個人の尊厳と人権」
を強調すれするほど、その先には
「外国人参政権」
という議論が待ち構えていることは間違いない。
そもそも参政権(選挙権・被選挙権)は国民が自国の政治に参加する権利であり、外国人には与えられていない。
少し説明すると、平成7(1995)年の最高裁判決は概略次のように外国人の地方参政権を否定している。
憲法15条1項は公務員の選定罷免権は
「国民固有の権利」
と規定し、その
「国民」
とは憲法が規定する国民主権の原理における国民、つまり我が国の国籍を有する者を意味することは明らかで、そうした性質上、地方選挙であっても在留する外国人には及ばない。
また
「住民」
についても
「憲法第93条2項に言う『住民』とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当」
とも判示した。
その意味で外国人の参政権問題はこの最高裁判決で決着が着いていると言えるが、近年、当時とは違う事情が生じてきていることに留意したい。
平成7(1995)年の最高裁判決当時は憲法学者の間でも外国人の参政権は憲法上保障されないとする全面否認説(禁止説)が有力であったが、最近では国政レベルにおいて外国人の参政権は認められないが、地方自治体レベルの参政権は、外国人に認めても憲法違反にはならないとする学説(許容説)が有力となっているからである。
例えば、芦部信喜・高橋和之『憲法』(第7版)は、
「狭義の参政権(選挙権・被選挙権)は外国人には及ばない」
「しかし、地方自治体、特に市町村という住民の生活に最も密接した地方自治体のレベルにおける選挙権は、永住資格を有する定住外国人に認めることもできる、と解すべきであろう」
としており、樋口陽一『憲法』(第4版)も
「(外国人の)地域社会構成員としての性格に着目して、地方自治体の選挙につきそれらを認めることは、一般的に言って、違憲の問題を生じないと解することができよう」
と解釈している。
こうした憲法解釈を読めば、外国人を
「日本社会を共に作る一員」
と位置付けるロードマップのロジックと類似していることが分かる。
外国人の
「個人の尊厳と人権」
が尊重される社会を目指すという方向性は外国人地方参政権許容説と重なると言えよう。
尚、この他に憲法学者の中には憲法が外国人参政権を要請しているとの学説もあるがここでは省略する。
今現在、具体的に外国人参政権要求が叫ばれているわけではない。
しかし、近い将来、新たな参政権要求が提起された場合、最高裁判決当時(平成7年、1995年)とは学説状況が変わっていることを考えれば、従来の最高裁判決が維持できるのかどうか、不安なしとは言えない。
今の政府の閣僚会議が最高裁判決を超えて外国人参政権の議論を報告書に書くことはあり得ないが、関係閣僚会議のロードマップが外国人を
「日本社会を共に作る一員」
とし、外国人の
「個人の尊厳と人権」
の尊重を提言したことが、参政権議論の中で許容説の布石となることは十分にあり得るように思える。
■急増する10%超の市町村
参政権問題では、こうした憲法解釈とは別に外国人人口の増加によって市町村単位で深刻な問題が持ち上がることが予想される。
前提となる解説をさせて頂くと、先に外国人の人口比率が10%を超える時代が到来すると書いたが、この10%はその時の総人口の分母とし全外国人を分子とした比率、言わば全国平均であって、これを個別の市町村で見ると事情が大きく変わってくる。
4年前2020年の国勢調査では、外国人比率が10%を超えている市町村は10自治体程度しかなかったが、外国人人口の増加傾向を踏まえて5年後10年後に10%を超える市町村がどれほど増えるだろうか。
実は将来の市町村ごとの外国人人口は推計されていない。
ただ、社人研は毎年の全国レベルの外国人人口の
「入超」(増加)
分を16.4万人として計算しているので、この増加分を既知の国勢調査(2020年)の市町村別の外国人人口のシェアに基づいて年ごとに市町村に加算する方法で計算してみると、個別の市町村の数字は正確ではないにしても、ある程度のトレンドを知ることができる。
全体の傾向として言えることは、今から6年後の2030年になると、外国人比率が10%を超える市町村の数は40〜50と急増し、しかも分母となる日本人人口が少なくて外国人人口が多い現在の10%越えの市町村とは違って、地方では製造業の大規模工場や工場団地周辺の小都市、都市部では大阪や東京の一部の区に加えて名古屋市や神戸市の一部の区も、埼玉県川口市など特定の国の外国人が集中する自治体も10%を超えるという傾向が読み取れる。
このままの傾向が更に次の10年も続けば、10%超の自治体は100近くになる可能性がある。
また、10%超の予備軍とも言える外国人比率7〜9%の市町村は4年前2020年の国勢調査時には26しかなかったが、2030年の段階で既に倍増するとの傾向が窺える。
■地方政治を左右する勢力に
こうした外国人人口の急増は、仮に外国人に選挙権が与えられたとすれば、地方政治に大きな影響をもたらすこととなる。
人口10万人規模の市では市会議員は1200票程度で当選している(定数25〜30)。
その市の外国人人口比率が10%の場合、有権者数や投票率を考慮しない粗っぽい計算だが、複数の議員を外国人だけで当選させられる。
人口20万人の市と言えば地域の中心的な自治体だが、市議は1400票〜1500票で当選している。
ここでも外国人の人口比率が10%を超えていれば、更に複数の議員が当選可能と言える。
そうなれば外国人の政治集団ができると言えよう。
在留外国人からすれば、人口の一定比率を占めながら(ここでは仮に10%としたがそれ未満でも問題の性質は変わらない)、自分たちの代表を持てないのは、
「個人の尊厳と人権を尊重した社会」
というロードマップの共生ビジョンに反する、まさに人権が損なわれているという問題意識が生まれても何ら不思議ではない。
日本人の側にも、こうした外国人の政治パワーを利用しようと地方参政権の獲得を掲げる政治勢力も出てこよう。
かつて民主党政権は2009年の総選挙での民団(在日本大韓民国民団)の選挙支援と引き換えに外国人地方参政権法案を当時の小沢一郎幹事長が主導して提出しようとしたことがあった。
外国人労働者問題の専門家の中には参政権など当然だと主張する向きもある。
宮島喬(みやじまたかし)お茶の水女子大学名誉教授は
「(外国人労働者は)住民として国や自治体から様々なサービスを受ける権利を持ち、またサービスを受けるだけでなく、参加する権利、つまり地域の諸組織に参加したり、地域政治に参加する権利も認められるべきでしょう(住民投票、地方議員・首長の選挙に参加したり、請求権などを行使したりする権利)」
と主張している(岩波ブックレット『新版外国人労働者受け入れを問う』)。
今後、子弟の教育など外国人の生活に係わるテーマが地方選挙の争点となった場合、選挙権が認められていないことが問題視されることは十分に考えられよう。
こうした状況の背景にあるのは、これまで日本人が経験したことのない外国人の増加であることは間違いない。
にもかかわらず、先のロードマップは、こうした地方に係わる深刻な問題について問題意識がすっぽり抜け落ちていると言わざるを得ない。
■「国益の原則」忘れるな
そもそも外国人政策の原則とは如何なるものなのか。
外国人の政治的自由と在留許可を国が制限できるかが問題となったマクリーン事件において最高裁は、余り注目されなていない論点だが、法務大臣の任務についてこう判示している「昭和53(1978)年10月4日」。
「法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたっては、外国人に対する出入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立って、申請者の申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・経済・杜会等の諾事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情をしんしやくし、時宜に応じた的確な判断をしなければならない」
この判決で注目すべきは
「出入国の管理及び在留の規制」

「国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定など」

「国益の保持」
を目的としている点にある。
外国人政策は
「国益」
が原則だということである。
外国人労働者を受け入れる究極の目的は我が国経済に寄与してもらうためであることを考えれば、当然とも言える。
現在の外国人政策もこうした
「国益の原則」
に沿って、ここまで取り上げてきた地方の観点だけでなく、様々な観点から外国人政策がデメリットを含めて論じられ捉え直されるべきであろう。
外国人に係わる治安問題は国民の関心事だが、そうした問題指摘はロードマップには余りにも少ない。
経済的観点からは外国人労働者の受け入れの経済効果について、経済界は人手不足だけを強調するが、外国人労働者の受け入れにはどんなデメリットがあるのかも論じられるべきであろう。
また安全保障という観点からも検討が必須である。
中国の国防動員法は中国政府が有事を認定すれば日本在住の中国人も動員対象となる。
我が国に在留する外国人約342万人のうち、中国人は約82万人で最大勢力である。
外国人の4人に1人が中国人という現実を踏まえれば、中国の国防動員法は、それが実際に在留中国人に適用されるかどうかは別として、日本の外国人政策にとって検討されるべき大問題と言える。
こうして見ると、外国人との共生を目指すと言っているだけで問題が解決できるかのように思える、そんな時代では既にないことは確かと言えよう。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/760.html#c40

[政治・選挙・NHK294] 石丸候補過剰宣伝報道のわけ(植草一秀の『知られざる真実』) 赤かぶ
25. 秘密のアッコちゃん[420] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年7月02日 23:26:23 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[533]
<■2841行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
日本は「選ばれる国」より「選ぶ国」だよ
経済成長に貢献する外国人は入れる、貢献しない外国人は入れないーこれほどシンプルな話はない
WiLL2024年8月号
経済学者 竹中平蔵
数量政策学者 高橋洋一
■事実上の移民政策
★竹中
移民政策を巡り、国論が二分しています。
今国会では改正入管難民法などが可決、成立しました。
「技能実習」
を廃止する代わりに、
「育成就労」
なる制度が創設されることになった。
★高橋
「技能実習」
は1993年、”国際貢献”を名目に始まりました。
東南アジアなど開発途上国の人々が最長5年、日本で働きながら技能を学ぶという制度です。
2023年末の時点では、約40万人が
「技能実習生」
として就労している。
★竹中
「技能実習」
は評判が悪かった。
表向きは”国際貢献”ですが、実態が伴っていないケースが多い。
★高橋
技能実習生を安い労働力として酷使するだけの経営者もいる。
劣悪な労働環境に耐えかねて逃げ出し、行方不明になる実習生も問題視されました。
★竹中
「技能実習」

「育成就労」
は法務省や外務省が出入国管理の問題として扱うことが多い。
でも、本来は厚労省が管轄すべき事柄です。
「育成就労」
の目的は
「人材の育成と確保」
と明記されています。
”国際貢献”という建前を捨て去り、”人手不足の解消”という本音を前面に出した。
その是非は置くとして、本音と建て前が一致したことは評価できる。
★高橋
”現代の奴隷制度”とも呼ばれた悪名高き
「技能実習」。
その廃止は一見、歓迎すべきことのように思える。
しかし、
「育成就労」
は新たな懸念を生む。
「育成就労」
は試験などの条件を満たせば、最長5年の就労が可能な
「特定技能1号」、
更には在留資格の更新に制限がない
「特定技能2号」
に”キャリアアップ”できる。
2号は家族帯同も可能、将来的に永住権も申請できます。
★竹中
岸田総理は国会審議において、
「いわゆる移民政策を取る考えはない」
と強調しました。
★高橋
「技能実習」
は5年という期限が設けられていた。
ところが、
「育成就労」
は永住までのレールが敷かれている。
事実上の
「移民政策」
と言われても仕方がない。
■日本は”選ぶ立場”である
★竹中
先進国は移民を
「パーマネント(永住)」

「テンポラリー(一時滞在)」
に分けています。
★高橋
要するに、「長期」と「短期」ですね。
★竹中
前者は高い技能を有し、移住先の言語も堪能である必要があります。
その国の伝統や文化を尊重できる人たちでなければ認められない。
後者は特殊な技能を必要としない分野に従事する人たちが多い。
アメリカでは農繁期や建設工事が始まると、メキシコから出稼ぎ労働者がやって来る。
彼らは契約期間が終わると母国に帰ります。
英語力は日常会話レベルで十分、アメリカ文化にリスペクトがなくても構わない。
★高橋
日本も欧米と同じように、「長期」と「短期」を明確に区別しなければならない。
ところが、
「育成就労」
は短期と長期の区別を曖昧にしています。
★竹中
日本国民、中でも保守派は
「移民」
という言葉にアレルギーがある。
第2次安倍政権の初期、年間20万人の外国人労働者を入れるという議論があった。
保守派にあれだけ支持された安倍元総理でさえ、当時は猛バッシングに晒されました。
岸田総理は批判を恐れて、真正面からの議論を避けたのかもしれない。
その結果、皮肉にも事実上の移民政策が”なし崩し”に進んでいる。
政府は国民に”移民”の是非を訴えるべきです。
そこで初めて、賛成派も反対派も意見をぶつけ合うことができる。
★高橋
保守派と言えど、外国人の受け入れそれ自体に全面的に反対しているわけではない。
日本のために働いてくれる外国人は歓迎。
貢献してくれない外国人はお断りー。
至ってシンプルな議論です。
★竹中
日本は幕末・明治の時代、海外から優秀な人材を受け入れています。
シーボルトやクラーク博士などの”お雇い外国人”は有名です。
福沢諭吉はハーバード大学から慶應義塾に優秀な教授陣を招聘することで、東京大学に対抗しようとしていた。
江戸時代の鎖国以前にも、日本人は海外から技術や知見を得てきました。
★高橋
岸田総理は育成就労について問われ、
「外国人にとって魅力ある制度を構築し、選ばれる国になることが必要不可欠だ」
と答弁している。
読売新聞も以下の提言を掲載しました(2024年4月26日付)。
<政府は、育成就労と特定技能を「車の両輪」として、労働力を補っていく>
<他国も受け入れを進めており、獲得競争を勝ち抜くには「選ばれる国」にならなければならない>
★竹中
日本が外国人に
「選ばれる国」
になるべきだという主張をよく耳にします。
日本は
「選ばれる国」
になる必要はない。
むしろ選ぶ立場でなければなりません。
★高橋
幕末明治の御雇外国人は”選んだ”人たちであり、野放図の移民流入でないはずです。
「育成就労」
導入のベースになっているのが、2023年11月に公表された法務省の報告書。
そこには
「外国人との共生社会の実現」
に向けた取り組みが記されている。
しかし、宗教も文化も風習も違う人たちとの
「共生」
は難しい。
「共生」
に無差別の受け入れがセットになっているのが問題です。
■国益をベースに議論せよ
★高橋
移民が経済成長をもたらすー。
それが”常識”であるかのように論じられている。
一方で、移民受け入れは国内の社会保障制度にダメージを与える。
他方で、経済成長のプラスが社会保障のマイナスを補うのであれば、移民受け入れという選択肢はあり得ます。
でも、移民が必ずしも経済成長をもたらすわけではありません。
国連が出している2010年〜2022年の平均データを基に、各国の移民人口比と経済成長率を並べてみました。
しかし、移民人口比が高くても、経済成長率は上昇するわけではない。
それどころか、移民が増えると成長率が下がる傾向すら見受けられます。
★竹中
興味深いですね。
ただ、成功例もあります。
アメリカやオーストラリアは歴史的にも”移民の国”という色彩が強い。
両国は今でも、移民政策により人口増加を成長戦略に組み入れています。
とはいえ、自国経済に有益な外国人を選択的に受け入れている。
多様性に寛容なイメージがある国でも、実は慎重に検証を重ねながら移民政策を運営しているのです。
★高橋
ドイツやフランスなどの欧州は完全に失敗しています。
欧州議会選挙では対移民強硬派の”極右”が勢力を伸ばした。
行き過ぎた移民政策の反動が起こっているのに、日本だけが周回遅れの議論をしている。
一部の自民党や財界は、安い労働力として外国人を入れたがる。
それとは別に、リベラル左派は”多文化共生”というイデオロギーを掲げて移民受け入れを推進しています。
★竹中
感情論に流されず、国益をベースにした冷静な議論が必要です。
他国の成功例と失敗例から学ばなければならない。
★高橋
成功例よりも失敗例の方が多い。
その結果が、先程指摘した移民と経済成長の分析です。
受け身で大量に移民を受け入れると、失敗確率が増すのではないか。
経営者が安価な外国人を雇用すると、日本人は雇用を奪われ、賃金上昇も鈍化します。
外来種に在来種が駆逐されるのと同じような事態が起きかねない。
外国人に頼らずとも、AI化・機械化を進めることで労働力不足を補えます。
★竹中
サービス業は労働力不足に加えて、機械化も難しい。
外国人の手を借りざるを得ない状況があります。
しかし、農業などは機械化やAI化を進められる。
代替手段があるのに、安価な労働力に頼るのは間違いですね。
★高橋
日本企業が投資を渋った結果、”失われた30年”に突入しました。
移民を受け入れるより、まず先に投資を活性化した方が成長に繋がります。
★竹中
過去30年を振り返ると、アメリカの設備投資額は2倍以上になりました。
ところが、日本は2割程度の伸びにとどまっている。
それが”失われた30年”を招いてしまった。
企業の設備投資が停滞した原因の1つに、規制改革の遅れが挙げられます。
■成長を妨げる既得権益
★竹中
2024年4月から、東京や京都などで
「ライドシェア」
が始まりました。
ここに規制改革と移民を巡る課題が凝縮されている。
★高橋
ライドシェアとは要するに”白タク”です。
日本では禁止されていましたが、タクシーが不足する地域や時間帯においては、自家用車や一般ドライバーによる有償運転が一部認められるようになった。
★竹中
ところが、日本版ライドシェアの運営主体はタクシー会社に限定されている。
海外で普及しているライドシェアとは似ても似つかないものです。
★高橋
海外では素人でもライドシェアを始めることができる。
アプリに登録すれば、私も自家用車に人を乗せて運賃を取れるのです。
しかし、日本では新規参入が認めていられない。
しかも、現行のタクシー会社に許可されている地域、台数の範囲内で運用するという制度がある。
★竹中
既得権益に他なりません。
★高橋
日本版ライドシェアを巡っては、元々治安が悪い海外のデータを示しながら、
「新規参入を認めると犯罪の危険が高まる」
などと主張する人たちがいた。
タクシー業界はあらゆる理由を並べて新規参入を阻止しようとしたのです。
★竹中
タクシー業界は全ての選挙区に存在しています。
既得権益を守るために、地元選出の政治家に相当なロビー活動を行っているのでしょうね。
医師会のようなものです(笑)。
★高橋
日本版ライドシェア解禁とタイミングを同じくして、
「特定技能」
の対象にタクシーやトラックなどの
「自動車運送業」
が追加された。
外国人ドライバーを技能実習生として雇えば、タクシー業者はコスト削減が可能となります。
タクシー業界はライドシェアを巡り、国交省に働き掛けて新規参入を阻止した。
それと同時に、法務省にロビイングして外国人ドライバーの確保に成功したのかもしれない。
国民には何のメリットもありません。
得するのはタクシー業者だけです。
★竹中
ライドシェアは過去10年、世界で最も成長した産業の1つです。
アメリカの
「ウーバー」
は今や時価総額が20兆円以上、
中国の
「滴滴出行(ディディ)」
も10兆円を超えている。
日本に世界的ベンチャーが登場しないと嘆かれて久しい。
その背景には既得権があるのです。
★高橋
既得権はどの国にもありますが、それを打破しようと挑む勢力がいる。
日本が海外と異なるのは、何故か既得権益がそのまま放置されていることです。
★竹中
既得権益を死守する側の業界団体、族議員、官僚という
「鉄のトライアングル」
が存在している。
本来であれば野党、メディア、民間の有識者らがその牙城を崩さなければなりません。
言わば
「挑むトライアングル」
です。
しかし、誰も役割を果たそうとしない。
★高橋
家計学園を巡る問題で明らかになったように、野党もメディアも既得権益の人たちです。
マスコミが独占する電波利権などは既得権そのもの(笑)。
■遅くてショボい定額減税
★高橋
移民政策が典型ですが、岸田政権には戦略が欠如している。
経済政策も場当たり的な対応が目立ちます。
2024年6月から実施される定額減税も例外ではない。
岸田総理は一体何がやりたいのか。
未だに見えてこない。
★竹中
岸田総理は2023年10月、所信表明演説で
「経済、経済、経済」
「何よりも経済に重点を置く」
と連呼。
総合経済対策を打ち出しました。
ところが、蓋を開ければ4万円の減税。
言葉と実際の政策にギャップがありますね。
★高橋
減税を唱えたのは”増税メガネ”のイメージを払拭するために過ぎない。
国民生活に本気で寄り添う気がないことが、改めて明らかとなった。
支持率が低迷するのも無理はありません。
★竹中
2024年1〜3月期の実質GDPは2期ぶりにマイナス成長を記録しました。
個人消費は4期連続で減少。
4期連続の減少はリーマンショック以来です。
2023年末に減税を実施していれば、消費の落ち込みも防げたでしょうね。
減税のタイミングが遅過ぎた。
★高橋
経済政策はタイミングが命です。
2023年末に減税していれば、GDPギャップ(潜在GDPと実際のGDPの差)をそれなりに埋められたでしょうね。
ところが、迅速な対応を怠ったために、GDPギャップは昨秋に比べて10兆円以上も開いてしまった。
遅くてショボい。
この一言に尽きます。
★竹中
消費は将来の所得見込みに左右されます。
4万円を渡して、消費者の将来に対する期待は高まるのか。
物足りないと言わざるを得ない。
政策は目的とプロセスが重要です。
何のために政策を打つのか、それをどう実現するのかー。
今の政府からはどちらも見えてこない。
岸田総理の言動には
「なぜ?」
という疑問が多過ぎる(笑)。
★高橋
2023年の臨時国会で税制改正案を出すことができれば、2023年12月の年末調整までに減税も可能でした。
しかし、改正案の提出は2024年の通常国会に回された。
その結果、減税の実施が2024年6月になってしまったのです。
財務省は当初、所得減税そのものに難色を示していました。
しかし、定額減税は前例があるから、渋々ながら認めざるを得なかった。
とはいえ、2023年の臨時国会での税法改正は回避したい。
「自民党の税調に議論を任せる」
という”理由にならない理由”を付けて、後回しにしたのです。
聞くところによれば、岸田総理が自民党の税務調査会を抑えられず、税制改正は先送りになったとか。
とはいえ、税制調査会は自民党内の機関です。
岸田総理は自民党の総裁でもあるから、本気になれば
「イエス」
と言わせることができる。
財務省には何も言えない岸田総理の弱さが、改めて浮き彫りになりました。
■官僚に乗っ取られた官邸
★竹中
1990年代、官僚主導の政治が問題視されました。
官僚支配を是正するために、橋本龍太郎総理は行政改革案を作った。
それにより、中央省庁再編などが行われました。
いわゆる”橋本行革”の最終報告には、3つの重要な柱が記されています。
・内閣の「首長」である内閣総理大臣が指導性を十分に発揮できるような仕組みを整える
・内閣総理大臣の補佐・支援体制として、内閣官房、内閣府及び総務省を置く
・内閣府の企画・調整部門には、民間や学界を含め広く行政の内外から優秀な人材を登用する
政治主導を実現するために、総理を支える組織を作り、そこに優秀な人材を登用すべきだと述べられています。
それ以来、内閣には総理自らが議長を務め、民間の有識者が閣僚と同じテーブルについて政策を議論する場が設けられた。
あれから20年以上が経ち、政治主導はどうなったか。
岸田内閣には政策会議や有識者会議が多数あります。
「新しい資本主義実現会議」
「デジタル田園都市実現会議」
「こども未来戦略会議」・・・。
気が付けば、内閣官房には30を超える事務局が存在している。
そこに派遣されるのは各省庁の官僚たちです。
★高橋
政治主導を実現するために官邸の力を強化したのに、官邸それ自体が官僚に支配されている。
官僚からすれば”乗っ取り”に成功したわけです。
★竹中
小泉純一郎政権時代、経済財政諮問会議に分科会を置くべきかが議論になりました。
小泉総理は
「大事な事は全て自分の前で議論してくれ」
と、政策会議の数を増やすことに反対した。
★高橋
30以上もある会議の中で、官僚が好き勝手に議論している。
岸田総理も一体何が話し合われているかを把握しきれていないでしょうね(笑)。
★竹中
各省庁の利益を代弁する官僚たちが、総理にバラバラに政策メニューを提示する。
総理はそれを眺めながら、無難な政策を決めるー。
そんな状態が続いているのではないか。
岸田政権は政策決定システムがまともに機能していない。
■被災地を見捨てるのか
★高橋
官邸の機能不全を象徴しているのが、能登半島地震への不可解な対応です。
過去に震度7の地震が起こった時、1カ月ほどで災害対策費などの名目で補正予算が組まれているのです。
・阪神淡路大震災(1995年1月17日):1兆223億円の補正予算が閣議決定(1995年2月24日)
・新潟県中越地震(2004年10月23日):1兆3618億円の補正予算が閣議決定(2004年12月20日)
・東日本大震災(20011年3月11日):4兆53億円の補正予算が閣議決定(2011年4月22日)
・熊本地震(2016年4月14日):7780億円の補正予算が閣議決定(2016年5月13日)
今回の能登半島地震では補正予算を組まず、2023年度予算の予備費から2767億円を支出するという対応でした。
予備費は手続きが面倒臭い。
まとまった政府支出に不向きです。
予備費をチマチマ使うのではなく、補正予算でドカンと出せばいいのに。
★竹中
馳浩知事は震災直後、
「1カ月以内に数兆円規模の補正予算編成をお願いしたい」
と政府に要請していた。
しかし、その声は政府に届かなかった。
震災から半年が経とうとしているのに、能登半島には瓦礫の山が積み上がったまま。
速やかに補正予算を組めなかったことが復興の遅れを招いたのは明らかです。
★高橋
そんな中、財務省がとんでもないことを言い出した。
財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)の分科会は被災地の復旧について、
「将来の需要減少や維持管理コストを念頭に置き、住民の意向を踏まえ、十分な検討が必要だ」
などと訴えたのです。
震災復興に”コスト論”を持ち出すとは・・・。
能登半島のために財政支出をしても無駄だと言っているに等しい。
被災地を見捨てるような財務省の議論に、馳知事は
「上から目線でモノを言われている気がして気分が悪い」
「冷や水をバケツでぶっかけられたような気持ち」
と不快感を露わにした。
★竹中
岸田総理が思い切って大きな方向性を示せば、官僚も従わざるを得ない。
結局、リーダーシップの問題ですね。
■「ポスト岸田」の運命
★竹中
自民党総裁選が2024年9月に予定されています。
自民党は岸田総理に代わる強いリーダーを選べるか。
それとも、岸田総理の続投を望むのか。
★高橋
岸田総理は就任以来、表向きには憲法改正に強い意欲を燃やしていました。
ところが、やる気がないことが明らかとなった。
本気で憲法を改正したいなら、国会の会期延長や総裁選の延期に踏み切っていったはずです。
国民はこれ以上、岸田総理に何も期待していません。
さっさと辞めた方がいい。
★竹中
岸田総理は自ら”黄金の3年間”を手放してしまった。
本来であれば、じっくり腰を据えて政権運営に集中するつもりだったはずです。
しかし、これを乗り切るのは至難の業。
近年だと、小泉元総理と安倍元総理しか”3年の壁”を破れていません。
小泉政権と安倍政権に共通していたのは、早期の解散に踏み切り、長期政権の基盤を固めたことです。
★高橋
岸田総理も2023年の広島サミット後に解散を考えていたでしょうね。
しかし、息子のスキャンダルやLGBT理解増進法により支持率が急落。
回復を待っているうちにタイミングを逃してしまった。
★竹中
補選や地方選でも自民党は連戦連敗。
このまま総裁選に突入したら、岸田総理は厳しい戦いを強いられる。
内閣改造でイメージ回復を図るという手もありますが、人気者が果たして閣僚入りを受けてくれるかどうか・・・。
★高橋
内閣支持率がここまで低かったら、”岸田降ろし”の風が吹いてもおかしくない。
それでも、露骨な”岸田降ろし”の動きは起こっていない。
一時的な派閥解体により、総裁の力が強まったからでしょうね。
★竹中
派閥解体にも物申したい。
派閥解体よりも重要なのは
「政党はどうあるべきか」
という問題です。
会社には会社法があり、宗教法人には宗教法人法がある。
ところが、政党には政党法がありません。
日本には政党のガバナンスを効かせる仕組みがないのです。
政治資金の問題にしても、自分たちで自分たちのことを決めているから穴が生まれる。
政党法がないという根本原因を解決しない限り、派閥を解体しても、議員を処分しても意味がない。
日本に政党法がなくても、自民党は曲がりなりにも政権与党であり続けた。
それを可能にしてきたのは派閥の均衡です。
言わば、セカンドベストのガバナンスシステムでした。
総裁がおかしな政策を打てば、党内から苦言を呈される。
派閥が睨みを利かせることで、党内ガバナンスを保ってきたのです。
政党法も派閥もないまま、自民党はどこに向かうのでしょうか。
★高橋
全ては2024年9月の総裁選次第です。
いや、2024年11月のアメリカ大統領選の方が大事かもしれない。
日本は外圧によってしか変わらない国ですから(笑)。

移民に好かれる日本になれってか!
今だけ金だけ自分だけー事実上の移民政策を隠れて進める卑怯者たち
WiLL2024年8月号 麗澤大学客員教授・イスラム思想研究家 飯山陽
■”大量移民時代”に突入した
日本という国が音を立てて崩壊しています。
今国会で可決、成立した改正入管難民法がそれを象徴している。
これにより、
「技能実習」
が廃止され、代わりに
「育成就労」
を創設することが決まりました。
「技能実習」
は”国際協力”という美名の下、外国人実習生に”日本で働かせてあげる”という制度でした。
実習生に認められた滞在期間は最長5年。
帰国を前提としたものです。
ところが、
「技能実習」
は人権侵害の温床とも指摘されていた。
外国人を低賃金で酷使する経営者に耐えかねて、行方を眩ます実習生もいたほどです。
悪名高い
「技能実習」
を改めて、新たに
「育成就労」
制度を創設する。
それが法改正の目的ですが、これがなぜ問題なのか。
「育成就労」
は、外国人が日本で働き続けることを前提としているからです。
新制度は大きく分けて、3段階のプロセスから成ります。
3年間を目途に、外国人が一定の技能水準に到達するよう育成する。
その後、最長5年の就労が可能な
「特定技能1号」
への移行を促す。
最終的に、家族帯同や永住権も申請できる
「特定技能2号」
に格上げするー。
事実上の移民政策と言える。
いや、移民政策そのものです。
岸田総理は法案審議で詭弁を連発。
移民政策を
「一定規模の外国人や家族を制限なく受け入れる」
政策と定義した上で、
「いわゆる移民政策を採る考えはない」
と言うのです。
「育成就労」
は最終的に家族帯同、永住権を申請できるシステムになっている。
ところが、岸田政権は頑として認めない。
「LGBT法は理念法だから」
と言い逃れを繰り返したのとソックリです。
日本国民を欺きながら、移民政策を推進しているのが岸田政権に他なりません。
「育成就労」
創設により、日本は”大量移民時代”に突入しました。
■財界の代弁者
移民政策の推進により、一体誰が得をするのか。
経団連をはじめとする財界です。
経団連の十倉雅和会長は過去、
「(外国人に)ずっと働いてもらえる社会を作ることが大事」
などと訴えている。
財界に要請されて、政府は”ずっと働いてもらえる”ことを前提とする
「育成就労」
を推進した。
そんな構図が浮かび上がります。
財界の”親中”はかねて指摘されてきました。
日本企業は中国に生産拠点を作り、現地の安い労働力を使う。
人件費のコストカットにより、日本企業は利益を上げてきました。
その結果、日本国内の産業空洞化を招いてしまった。
日本企業が日本人の代わりに中国人を雇うというのは、日本人が受け取るべき給与が中国人に渡ることを意味している。
日本の富が中国に流出してしまったのです。
日本企業はバブル崩壊後、1990年代から中国進出に熱を入れるようになった。
”失われた30年”と重なるのは偶然なのでしょうか。
トランプ政権の登場などにより、
「脱・中国」
が世界の潮流になりつつある。
日本の財界が移民受け入れを声高に叫ぶ背景には
「脱・中国」
の影が垣間見えます。
中国への事業展開により、現地の中国人を労働力として使っていた。
それが難しくなったから、代わりに日本国内へ大量の移民を招き入れるという”頭の切り替え”があったのかもしれない。
いずれにせよ、一般の日本人労働者が犠牲になることに変わりはありません。
日本企業が移民を雇用すれば、その分だけ日本人の雇用は奪われる。
日本人の賃金上昇も鈍化します。
政府は
「育成就労」
創設の理由に人手不足を挙げている。
しかし、日本には200万人もの失業者がいます。
彼らに職を与えずして、移民をなぜ受け入れるのか。
完全に優先順位を誤っています。
■日本人の視点はゼロ
岸田総理は国会で、
「外国人にとって魅力ある制度を構築し、選ばれる国になることが必要不可欠だ」
と答弁している。
”選ばれる国”というのは、外国人に媚びへつらうような物言いですが、これも財界の代弁に他ならない。
経済同友会の新浪剛史代表幹事は
「(外国人に)日本での生活に馴染んでもらうために、どうすべきかを考えるべきだと思う」
と発言しています。
政府と財界がタッグを組んで推進する移民政策。
そこに欠けているのは日本人の視点です。
本来であれば、野党やメディアが日本人の立場を代弁しなければならない。
しかし、野党もメディアも思考停止=機能停止状態です。
「育成就労」
創設に反対したのは立憲民主党、共産党、れいわ新選組などですが、反対の理由は
「外国人の権利が守られないから」
というもの。
外国人への配慮が足りないと批判していたのです。
朝日新聞の社説には、改正案に対する苦言が呈されていました(2024年5月10日付)。
<理解し難いのは、税や社会保障などの支払いを故意に怠った永住者の在留資格を取り消せるようにする規定を、法案が含んでいることだ>
<在留が長く、既に社会に溶け込んだ人々の生活に直結する問題で、有識者会議にも諮られていないのに唐突に入った>
朝日新聞が野党の代弁者なら、読売新聞は与党と財界の代弁者と言える。
読売新聞は以下のような社説を掲載(2024年4月26日付)。
<政府は、育成就労と特定技能を「車の両輪」として、労働力を補っていく>
<他国も受け入れを進めており、獲得競争を勝ち抜くには「選ばれる国」にならなければならない>
政治家、官僚、財界、メディア・・・。
「育成就労」
を巡り、彼らが議論していたのは外国人の権利を如何に守るかだけ。
移民を受け入れることで、日本社会が被るデメリットは全く論じられない。
日本国民の視点が一切ありません。
日本にやって来る外国人は善人、彼らをこき使う日本人は悪人ー。
”外国人性善説”と”日本人性悪説”を前提に議論しているのです。
外国人が善人ばかりでないことは徐々に明らかになっている。
例えば、埼玉県川口市のクルド人問題が挙げられます。
川口市に住む約60万人のうち、外国人は約3万9000人。
人口の6.5%を占めます。
日本人の住民たちが、クルド人の犯罪や迷惑行為に怯えながら生活している現状がある。
円安がオーバーツーリズムを加速させていますが、外国人観光客が迷惑行為に手を染めるケースも多い。
日本の伝統や文化に敬意を払わない外国人からも”選ばれる国”を目指すのか。
■バイデン「2つの嘘」
バイデン大統領の演説が物議を醸しました。
<アメリカ経済が成長している理由の1つは、移民を受け入れているからだ>
<日本はなぜ問題を抱えているのか>
<彼らが外国人嫌いで、移民を望んでいないからだ>
バイデン大統領の発言には2つの誤りがあります。
第1に、
「移民を受け入れると経済が成長する」
という証拠はない。
移民を受け入れるほど、成長率はむしろ下がるというデータがあります。
日本政府は労働力不足を解消するために移民受け入れを推奨している。
他方、政府は彼らに家族の帯同を認めています。
移民の給料は安く、日本に連れて来た家族を養うのは難しい。
働く意欲を失ったり、病気になったりする外国人労働者も出てくるでしょう。
彼らが社会保障制度の世話になるのは火を見るより明らかです。
外国人により、その国の社会保障制度が食い潰されてしまいます。
これは欧米で実際に発生している問題なのです。
第2に、
「外国嫌いの日本人は移民を望んでいない」
というのも嘘です。
「育成就労」
がそれを証明しました。
アメリカでは党派を超えて、移民の入国制限を訴えています。
共和党のトランプ前大統領が不法移民策に力を入れていたのは有名です。
バイデン大統領も現在、トランプ氏に対抗するかのように、取り締まりを厳格化している。
民主党は移民に寛容なイメージが強い。
実際にオバマ政権は合法・不法を問わず、移民を歓迎していました。
ところが、民主党も慎重なスタンスを取るようになった。
アメリカ国民がそれを望んでいるからです。
「アメリカが抱える最重要課題は何か?」
を問う世論調査では、
「移民」
が1位でした。
アメリカでは
「多様性」
「共生社会」
という幻想は完全に打ち砕かれています。
■日本が”サンクチュアリ”に
移民にオープンな岸田政権の姿は、かつてのアメリカ民主党と重なります。
2024年11月の大統領選でトランプ氏が勝利すれば、アメリカに殺到している移民たちは日本を目指すことになる。
バイデン氏が勝利しても同じです。
日本は”サンクチュアリ(聖域)”になりかねない。
”サンクチュアリとは何かー。
アメリカでは州ごとに移民へのスタンスが異なります。
メキシコと国境を接するテキサス州は、不法移民を厳しく取り締まっている。
メキシコからの移民流入を防ぐために、貨物列車を止めたり、国境を流れる川にブイを置いたり、川岸にワイヤーを設置したりしてきた。
極め付きは、テキサス州にやって来た大量の不法移民を”サンクチュアリ・シティ”に送り付けたのです。
”サンクチュアリ・シティ”というのは、移民を歓迎する都市のこと。
その代表がニューヨーク市です。
リベラルが幅を利かせるニューヨーク市は、たとえ不法移民であっても歓迎するという姿勢でした。
ところが2022年、ニューヨーク市は非常事態を宣言。
財政破綻の危険を訴えたのです。
ニューヨーク市のみならず、不法移民を受け入れた州や都市は財政悪化に苦しんでいます。
地元住民の反移民感情も高まっている。
保守リベラルを問わず、アメリカ全体が移民政策を見直しつつある。
にもかかわらず、日本のメディアはアメリカの”変化”を報じません。
国民が世界の潮流に疎いのをいいことに、岸田政権は国民を騙すような形で移民政策を推進しているのです。
■”極右”というレッテル貼り
移民を巡り、欧州の政治地図は激変しています。
欧州議会選では保守勢力が立て続けに勝利を収めました。
最も注目されているのがフランスに他ならない。
マリーヌ・ルペン氏率いる
「国民連合」
が、マクロン大統領の与党連合にダブルスコアを付けて圧勝したからです。
欧州議会選はフランスのみならず、各国で右派の勝利に終わりました。
スペインは保守派の国民党、オーストリアは右派の自由党が勝利。
ベルギーは首相が率いる左派政党が敗北しています。
欧州はリベラルに代わり、保守が大きな支持を集めるようになったのです。
大変化は数年前から既に起こっていました。
イタリアではメローニ首相が誕生。
オランダでは2024年、ウィルダース氏率いる自由党が第1党になった。
ドイツでは
「ドイツのための選択肢」、
イギリスでは
「リフォームUK」、
スウェーデンでは
「スウェーデン民主党」、
ポルトガルでは
「シェーガ」
が支持を急速に拡大している。
共通しているのは、自国第1主義、反移民、反環境を掲げていること。
一言で言えば”愛国保守”です。
ところが、日本の大手メディアは彼らを”極右”呼ばわりしている。
自国の利益を第1に考え、自国民の幸せを最優先にする政党は”極右”扱いされます。
メディアの定義に従えば、私は立派な”極右言論人”です。
『WiLL』も”極右雑誌”といったところでしょうか。
いずれにせよ、愛国保守=危険というイメージを刷り込もうとしています。
メディアはなぜ自国第1主義を危険視するのか。
答えはシンプルです。
彼らは日本ではなく外国、日本人ではなく外国人の利益を代弁してきた。
それにより利益を得てきたからこそ、自国第1主義や反移民、反環境を唱える政党を貶めようと必死なのでしょう。
保守政党が勢力を拡大すれば、メディアがついてきた嘘は暴かれ、影響力と信用は失墜するー。
危機感を覚えているのかもしれない。
■全ての”卑怯者”に告ぐ
政治家が自国を第1に考えるのは当たり前です。
急増する移民・難民、非現実的な環境政策のせいで、これまでの生活や社会が崩壊した。
イスラム移民によるヨーロッパの退廃を、イギリス人ジャーナリストのダグラス・マレーは”西洋の自死”と呼びました。
滅びゆく国家や社会の姿を目の当たりにしたからこそ、欧州の人々はメディアの洗脳から解放され、保守に目覚めたのです。
欧州議会選挙の結果はその延長線上にある。
メディアが自国第1主義を唱える政党に極右のレッテルを貼ったところで、この流れは止まりません。
翻って日本はどうか。
欧米の失敗を教訓にするどころか、欧米の轍を踏もうとしています。
政治家、官僚、財界、メディア、アカデミズム・・・。
社会的に影響力を有する人たちが、日本を誤った方向に誘導しようと企んでいる。
嘘や誤魔化しを用いる彼らの手口は”卑怯”そのもの。
その悪行をどうにか暴けないか。
そんな思いから、『卑怯者!』(ワック)を上梓しました。
日本は今、猛スピードで”自死”に向かっている。
”時既に遅し”となる前に、1人でも多くの日本人に危機感を覚えてほしい。
飯山陽、日本のために闘い続けます!

メディアがダメだから国会議論もダメ
正論2024年7月号 政策シンクタンク代表 原英史
10年後、20年後に、
「あの法改正がその後の日本社会の破壊に繋がった」
と振り返ることになるのではなかろうか。
この通常国会で成立に向けて審議が進む、技能実習制度の見直しなどに関する法案のことだ。
■国会での意見陳述
技能実習制度は、劣悪な労働環境や失踪などが生じ、外国政府からも人権侵害との批判を受け、見直しの検討がなされてきた。
法務省の有識者会議での検討(2023年11月に最終報告)を経て、2024年の通常国会に法案が提出された。
2024年4月16日に審議入りし、2024年4月26日には衆議院法務委員会で参考人質疑が行われ、私も参考人として意見陳述を行った。
概略こんな事を述べた。
第1に、
「外国人に選ばれる国に」
という標語は再考すべきだ。
政府やマスコミは最近揃って、
「このままでは日本は外国人に選ばれなくなってしまう」
「外国人に選ばれる国にならないといけない」
などと唱えているが、違和感を感じる。
外国人の中には、日本文化を愛し、地域に溶け込み、経済成長に貢献する
「居て欲しい外国人」
もいれば、一方で、経済社会に貢献せず、犯罪を起こし、脱税や社会保障制度の悪用などを行う
「居て欲しくない外国人」
もいる。
まず、
「日本国が外国人を選ぶ」
ことが決定的に重要だ。
これを欠いたまま
「外国人に選ばれる国」
を目指しても、
「居て欲しくない外国人」
ばかりが日本を選ぶことになりかねず、これは害悪でしかない。
第2に、これまで日本政府が行ってきた事は、
「なし崩しの移民受け入れ」
だ。
政府は建前では
「移民政策は採らない」
と言い続けてきた。
第2次安倍政権の初期に
「年20万人の移民受け入れ」
の試算を示して猛反発を受けて以降、決まり文句として唱えることになり、菅内閣・岸田内閣にも引き継がれた。
しかし、現実には外国人労働者の数は、2012年に68万人から2023年には205万人になった。
この10年ほどの間、毎年12万人の移民受け入れを行ってきたのが実態だ。
また、政府のもう1つの建前は、
「高度な人材は積極的に受け入れるが、単純労働は受け入れない」
だが、これも現実と乖離している。
この10年ほどの移民受け入れの相当部分は、技能実習と資格外活動(主に留学生のアルバイト)だった。
言うまでもなく、どちらも技能水準のごく低い労働者だ。
一方で、
「積極的」
に受けれいているはずの高度人材は、2012年に高度人材ポイント制を創設したものの、技能実習などとは桁が異なり、外国人労働者総数の1%程度に留まって来た。

★表 外国人労働者データ(@2012年A2023年)、単位:人
・外国人労働者総数*1:@682,450A2,048,675
・技能実習*1:@134,228A412,501
・資格外活動*1:@108,492A352,581
・高度人材*2:@313A23,958
(出典)
*1:厚生労働省「外国人雇用状況」(各年10月末)
*2:出入国在留管理庁「在留外国人数」(各年末)

(【表】)要するに、日本政府が行ってきたことは、建前とは全く裏腹に、単純労働に重きを置く移民の受け入れだ。
これは、安価な労働力を求める一部産業界に引きずられた結果として生じて来た。
第3に、技能実習制度の問題の根源は、
「安価な労働力」
を求める一部産業界による悪用だ。
もちろん全てが悪用ではなく、好事例もある。
しかし、生産性の低い業界や企業が、高い賃金を払えないため人手不足に陥り、生産性を高めて賃金を上げる努力をする代わりに
「安価な労働力としての外国人」
に頼るケースが少なからずあった。
政府はこうした一部業界の要望に応えて対象業種を追加し、悪用を黙認してきた。
結果として、以下の問題が生じた。
@安価な労働力を求める企業が利用するので、自ずと劣悪な労働環境など人権侵害が生じがちになり、失踪などの事案も生じた。
A安価な労働力を受け入れるので、犯罪や社会的トラブルなど、社会への悪影響も生じがちになった。
B受け入れた企業は、生産性を高めて賃金を上げる代わりに、外国人労働力を受け入れて生き延びる道が与えられ、このため、賃金は低迷し、経済成長が阻害された。
日本は今、相対的に賃金の低い、貧しい国へと転落しつつあるが、大きな要因の1つが技能実習制度の悪用だった。
こうした経過を考えれば、問題解決には外国人政策を根本から見直す必要がある。
審議中の改正案のような小手先の手直し(技能実習の名称を改める、転籍を認めるなど)ではなく、何のためにどのような外国人を受け入れるのか、基本戦略を定めなければならない。
個別制度見直しの前にまず
「外国人基本法」
を制定すべきだ。
こういった事を国会で述べた。
実は、私は直前に骨折して入院中だったが、何としても国会議員の方々に問題を認識して、本来あるべき議論をして頂きたいと考えたので、無理に外出許可を貰って車椅子で出席した。
だが、残念ながら、徒労だったようだ。
私の提起した課題はほぼ議論されることなく、法案審議は粛々と進み、2024年5月17日に衆議院法務委員会で可決された。
参議院での審議が残されているものの、恐らくこのまま成立に向かう可能性が高そうだ。
■産業界に阿る与党
政府の改正案について、少し詳しく説明しておこう。
全くダメなわけではなく、評価できる部分もある。
技能実習関連以外で
「永住資格の取り消し」(永住者が税や社会保険料の支払いを故意に怠る場合や一定の犯罪を犯した場合に資格を取り消す規定)
の追加も提案されている。
これは望ましい改正だ。
本来そんな外国人には永住資格を与えるべきではなく、取り消し規定がなかったことがおかしかった。
早急に規定を追加し、厳正に執行すべきだ。
一方、
「技能実習制度の見直し」
は全く評価できない。
政府案では、技能実習制度を廃止し、代わりに
「育成就労制度」
を設ける。
報道では、
「育成就労では、技能実習と異なり、転籍が一部認められている」
といった事ばかり強調されているが、そんな事は枝葉の話でしかない。
事の本質は、従来の
「なし崩しの移民受け入れ」
を正面から制度化するものなのだ。
従来の仕組みは、
▽国際貢献(母国で働く人材を育てる)を目的とする技能実習制度に基づき、脱法的に低技能労働者を受け入れ、
▽更に、2018年改正で創設した特定技能制度と事実上接続して、長期在留を可能にし(ただし、あくまで事実上の接続であり、本来の制度趣旨には反するので、政府の説明資料では少し隙間が空いている)、なし崩しで
「低技能労働者を受け入れ、長期在留させる」
ものだった。
今回の改正では、
▽技能実習制度の代わりに、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を設けて、制度上堂々と低技能労働者を受け入れられるようにし、
▽更に、特定技能制度と正式に接続し(政府の説明資料では、隙間がなくなる)、制度的に
「低技能労働者を受け入れ、長期在留させる」
仕組みにするものだ。
看板の掛け替えに過ぎないという以上にこれまでコソコソと行ってきた事を堂々と看板に書いてしまうような改正と言って良い。
これではもちろん、先に述べた技能実習のもたらしてきた問題(人権侵害、犯罪・社会的トラブル、賃上げと経済成長の阻害)は何ら解消しない。
それどころか、今後は堂々と低技能労働者の受け入れを拡大できることになるから、益々増幅することになるだろう。
こうした改正の方向と軌を一にして、政府は2024年3月末、特定技能の受け入れ見込み数として
「今後5年で82万人」
との方針を決定した。
制度発足時の2018年からこれまでの5年間は34万人だったから、倍増以上だ。
また、対象業種として、バスやトラック運転手などの自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野を追加する方針も併せて決定している。
特定技能の入り口である育成就労も、自ずと拡大していくことになろう。
より長期的な見通しも示されている。
2023年4月に国立社会保障・人口問題研究所が示した将来人口推計だ。
「外国人が毎年16万人入って来る」
との前提の下、人口に占める外国人比率が2020年の2%から2070年に11%にまで増えるとの推計を示した。
「移民政策は採らない」
などという空虚の説明をしながら、政府は現実には
「なし崩しの移民受け入れ」
を着実に前進させ、本格的な拡大へと向かっている。
ちなみに私は、外国人雇用協議会という一般社団法人の代表理事も務めている。
この団体には、安価な労働力の受け入れとは一線を画し、
「日本の経済社会で活躍できる質の高い人材の受け入れ」
という理念を共有する外国人材関連企業の業界団体だ。
団体の会員企業にとっては、単に短期的な利益拡大だけを考えれば、今回の法改正で外国人の受け入れ規模が拡大するのはビジネスチャンスかもしれない。
しかし、日本社会には取り返しの付かない損失をもたらしかねない。
結果として、長期的に外国人材ビジネスの基盤も損なわれる。
だから、私個人はこの法案には反対であり、参考人質疑でもそう明言した。
正直なところ、政府・与党がこんな法案を国会に提出したことには甚だ失望した。
欧米諸国の多くでは、移民問題が深刻な社会混乱をもたらしている。
日本の政治家も官僚もその状況は十分認識しているはずだ。
それなのに何故、諸外国の失敗の道を辿るように、
「なし崩しの移民受け入れ」
を平然と制度化しようとするのか。
特に自民党の保守派の議員たちは一体何をしているのか。
結局、政府・与党は、人手不足を訴える一部産業界に阿って、国の未来を危うくする危険性に目を瞑っている。
本当に情けないことだが、これが今の政府・与党の現実だ。
「政治とカネ」
を巡る自民党の対応が問題になっているが、こちらの方が余程深刻だと思う。
■より低レベル人材を求める立憲
立憲民主党は対案として
「外国人労働者安心就労法案」
を提出した。
立憲民主党の説明によれば、政府案では外国人の人権侵害の要因が除去されなていないのに対し、対案は外国人の人権を守る内容だという。
しかし、中身を見ると、
「外国人の人権を守る」
とは逆行している。
まず、技能実習と特殊技能を一本化して
「一般労働」
という制度に改め、受け入れのハードルをこれまでより引き下げる。
技能講習でも政府・与党案の育成就労でも最低限の日本語能力が求められるが、これを不要にするという。
とんでもない話だ。
日本語のできない低技能労働者を受け入れれば、職場でも地域社会でもこれまで以上にトラブルが生じる。
周囲の日本人に迷惑を及ぼすだけでなく、外国人自身にとっても人権侵害や差別を受ける可能性が高まるだろう。
更に
「永住資格の取り消し」(永住者が税や社会保険料の支払いを故意に怠る場合や一定の犯罪を犯した場合に資格を取り消す規定)
には反対し、規定を削除している。
これもおかしなことだ。
ルールを守らない外国人を野放しにすれば、外国人への反感が高まり、ルールを守る外国人までその対象にされかねない。
むしろ外国人への人権侵害を増幅しかねない。
何故こんな逆行した対案を出すのか。
結局、本当に人権を守りたいわけではないのだと思う。
本当に人権を守りたければ、低技能労働者を受け入れるのをやめ、安価な労働力として悪用される道を断てば良い。
「可哀相な外国人」
を作らないよう未然防止するのが最善の解決策だ。
ところが、立憲民主党の対案は、政府・与党案以上にもっとレベルの低い低技能労働者を受け入れ、問題を起こす外国人も在留させ続けようという。
「可哀相な外国人」
をもっとたくさん作って、その上で
「可哀相な外国人」
を守ろうという話だ。
マッチポンプそのものだが、これが
「人権を守る」
と称する人たちの求めていることだ。
参考人質疑の際、共産党の本村伸子議員から、諸外国での移民受け入れの状況について問われ、私はこう答えた。
多くの国には、安価な労働力を求める産業界がある。
一方で、可哀相な外国人を受け入れたい、守りたいという人たちもいる。
これらは全く異質なようだが、実は同じ方性を向いて、一緒になって社会を悪くしてきた。
これが欧米諸国の多くで起きてきたことだ。
現在の国会状況を見れば、日本でも同様に、産業界と人権左翼の結託が起きている。
自民党は、産業界の要望に応えて安価な労働力の受け入れを制度化しようとする。
立憲民主党は、可哀相な外国人を守ると称し、更に低レベル人材を受け入れようとする。
与野党どちらも、安価な労働力を受け入れる方針では合致して、どちらがより社会を悪くできるかを競い合っている状況だ。
そして、基本的な方向は合致しているから、こんな劣悪な政府・与党案に対して、野党は徹底抗戦しようとしない。
粛々と法案は成立に向かっているのだ。
しかも、採決に際しては、
「永住資格の取り消し」(永住者が税や社会保険料の支払いを故意に怠る場合や一定の犯罪を犯した場合に資格を取り消す規定)
に関して立憲民主党の主張を一部受け入れ、
「外国人の状況に配慮して行う」、
即ち資格取り消しは抑制的にしか行わない旨の修正が施された。
せっかく的確な改正がなされようとしていたのに規定の実効性を損なったわけだ。
最早、与野党で手を握って、社会を危機に向かわせようとしているとしか思えない。
■一刻も早く国民的議論を
残念ながら、こうした惨状をマスコミは全く報じない。
私は、これまでも技能実習の見直しについて、マスコミの報道がおよそ的外れであることを繰り返し指摘してきた。
2023年5月に法務省の有識者会議が中間報告を出した段階で本誌2023年7月号に
「弱者を作る朝日 移民を歓迎する産経」、
本誌2023年11月号に最終報告が出た段階で産経新聞にコラム
「『外国人に選ばれる国』という美名の下に…」(2023年12月10日付)
を寄稿し、新聞各紙は
「人権を守れ」
「選ばれる国に」
などと唱えるばかりで、
「安価な労働力」
に偏った外国人受け入れなどの根本問題に触れていないことを指摘してきた。
国会での法案審議の段階になっても状況は全く変わらない。
▼読売新聞は、
「外国人の就労環境を改善せよ」
「『選ばれる日本』にしていくことが大切だ」
と説いている(2024年2月10日付社説)。
▼産経新聞は、
「労働環境の是非を着実に」
と唱え、取って付けたように
「移民に対し安易に道を開くことにならにように」
と付け加えるだけだ(2024年3月21日付主張)。
▼朝日新聞は、
「労働者の権利を重んじる態勢に生まれ変われるのか疑問」
と指摘し、永住資格の取り消しについては
「筋違いで、共生の理念を否定するメッセージ」
と厳しく批判している(2024年5月10日付社説)。
いずれも、これまで本稿で述べてきたような外国人政策の根本問題には全く目を向けていない。
更に、ルールを守らない外国人との
「共生」
を求める朝日新聞に至っては、論外と言う他ない。
マスコミがダメだから、国会でもダメな議論しかなされない。
本来、外国人政策は、国の未来の姿、国民1人1人の生活に重大な影響を与える。
国民が議論に参画し、選挙などを通じ選択すべき課題だ。
一刻も早く、国民的議論の土台を整える必要がある。
そのため、
「移民政策は採らない」
などの意味不明な言葉で誤魔化すのでなく、明確な選択肢を示して議論がなされるべきだ。
第1の道は、従来の延長、即ち
「低技能労働者を中心とした移民受け入れ」
の拡大だ。
これは、欧米の多くが辿って来た道だ。
「深刻な人手不足への対応」
「人口減少する地方の活力維持」
「外国人の人権を守る」
などともっともらしい説明がよくなされるが、行き着く先は大概同じだ。
第2の道は、
「外国人排斥」
だ。
欧米各国では、第1の道で深刻な社会問題が生じ、反作用として極端な排外主義を唱える勢力が力を強めた。
第1と第2の道の対立で、社会の分断も招いた。
日本でも今後、こうした声が高まる可能性は高い。
第3の道は、そのいずれでもなく、冒頭でも触れた
「外国人を選ぶ」
道だ。
経済社会を豊かにすることに貢献する高度人材は積極的に招き、低技能労働者は受け入れない。
表向きの説明としては、日本政府はずっとそう言い続けてきたのだから、本当にその通り実行したらよい。
私は、欧米諸国の失敗を踏まえれば、これが進むべき道だと考えている。
いずれにせよ、このまま漠然と
「なし崩しの移民受け入れ」
を延長・拡大し、社会が大混乱に陥ってからでは手遅れだ。
1度立ち止まって、国の進む道を冷静に議論するには、今が最後のチャンスだ。

育成就労法案、衆院通過へ 労働力不足に外国人材確保 職場変更「転籍」も可能
2024/5/21 7:11
https://www.sankei.com/article/20240521-PBYN6RJRE5MVXCKDP3TIJGYTHM/
技能実習に代わる外国人材受け入れの新制度
「育成就労」
を創設する入管難民法と技能実習適正化法の改正案が2024年5月21日、衆院本会議で可決され、衆院を通過する。
参院に送付され、今国会で成立する見通し。
人手不足の分野で労働力を確保し、即戦力とされる特定技能水準の人材を育て、長期就労を促す。
公布から3年以内に施行する。
育成就労の在留期間は原則3年で、技能実習では原則禁止されていた同じ業務分野で職場を変える
「転籍」
を一定の条件で認める。
転籍手続きなどで悪質なブローカーを排除するため、民間業者の関与を禁じる。
技能実習で受け入れ仲介を担う監理団体は
「監理支援機関」
と名称を変え、外部監査人を設置して中立性を高める。
今後は永住者の増加も見込まれるとして、納税などを故意に怠った場合は永住許可を取り消し、別の在留資格に切り替える規定も盛り込んだ。
衆院審議では与野党が修正を協議し、永住者の生活状況に配慮することなどを付則に追加した。

国貧しくする外国人政策
政策シンクタンク代表 原英史 
2024/4/28 8:00
https://www.sankei.com/article/20240428-7IRYKFFZSFP2TFLRAJTQM47IVE/
外国人の技能実習制度の見直しなどを内容とする出入国管理法等改正案の国会審議が始まった。
2024年4月26日、衆院法務委員会で参考人質疑が行われ、私も参考人の1人として陳述を行った。
私の述べた意見は、技能実習など個別制度の手直しの前に、まず
「外国人基本法」
を制定し、受け入れの戦略を明確にすべきだということだ。
政府は従来、なし崩しで外国人政策を進めてきた。
表向きは
「移民は受け入れない」
と言いつつ、実態は安価な外国人労働力の受け入れが拡大した。
日本人に十分な賃金を払って人材確保できない企業や業界が、安易に外国人労働者に頼り、入管行政も要望に応えた。
「国際協力」
が目的の技能実習制度などの悪用を政府が容認してきたのだ。
この結果、劣悪な労働環境や失踪などの問題が生じ、外国人による犯罪、社会的トラブルなども広がりつつある。
業界・企業が賃上げせず事業継続する道が用意され、賃金水準低迷の一因となった。
今回の改正案はこうした根本問題を解決するものではない。
「技能実習制度の廃止」
を掲げ、実態とかけ離れた国際協力の名目を人材育成などに改めてはいるが、実質大きく変わった点と言えば、転職を認めた程度だ。
看板の掛け替えに近い。
今後、人手不足が拡大する中で外国人受け入れの規模は拡大するから、これまでの戦略なき受け入れの負の側面は、更に大きく広がりかねない。
政府が今、行うべきことは戦略なき状態の解消だ。
国民的な議論も経て、
「外国人基本法」
を制定することが不可欠だ。
基本法ではまず、何のために外国人を受け入れるのかを明確にする必要がある。
「人手不足の解消」
を目的とするのは危うい。
業界要望に安易に応え続けることになり、日本人も含めた賃金引き上げを阻害し、日本をより貧しい国にしかねない。
安易な労働力の受け入れは社会的軋轢も生みやすい。
目的は
「日本を豊かにすること」
とすべきだ。
生産性を高めて経済社会を発展させるため、貢献できる質の高い外国人を戦略的に受け入れていく必要がある。
併せて、外交・安保政策の観点で人的交流を強化すべき国から重点的に受け入れるよう戦略性も求められる。
日本に限らず、移民を巡る議論は、賛否が大きく分かれ、イデオロギー・感情的対立にも陥りがちだ。
解決の道は、安易な受け入れでも全面的排除でもなく、日本国にとって有用な外国人材を選び抜いて受け入れることだと考える。
だが、今回の改正案はなし崩しの延長で、安易な外国人受け入れの道を広げ、社会の混乱を招き、日本をより貧しくしかねない。
必要なのは、なし崩し的な移民から戦略的政策への転換だ。

「外国人に選ばれる国」という美名の下に… 政策シンクタンク代表・原英史
2023/12/10 8:00
https://www.sankei.com/article/20231210-K3VBLS7WBBPVZFO3Y4EMXZC6VA/
外国人が働きながら技能を学ぶ技能実習制度の抜本見直しに向けて、政府の有識者会議の最終報告書がまとまった。
国内外から指摘されてきた劣悪な労働環境などの問題を解消し、日本が
「外国人に選ばれる国」
になって、人手不足への対応を目指そうという。
具体的には
▽技能実習制度は廃止して新たに「育成就労」制度を設ける
▽人権侵害を防ぐべく、働く企業を変える「転籍」を認める
などの内容だ。
だが、欠落しているのは、
「外国人に選ばれる国」
になる前に
「日本国が外国人を選ぶ」
ことの重要性だ。
日本文化を愛し、地域に溶け込み、経済成長に大いに貢献する
「日本にいてほしい外国人」
もいれば、経済社会に貢献せず、犯罪を起こし、社会保障制度を悪用するなど
「いてほしくない外国人」
もいる。
後者が日本を選んでくれても害悪でしかない。
技能実習制度を巡る諸問題の根源は、この視点を欠いていたことだ。
「国際貢献」
という建前のもと、一部産業界の求める
「安価な労働力」
としての外国人受け入れに悪用されてきた。
欲しいのは
「安価な労働力」
だから、技能のない外国人を
「選ぶ」
ことなく受け入れ、余程の事がない限り在留し続けられる仕組みだった。
だから、劣悪な労働環境など人権侵害が生じ、一方、外国人犯罪なども起きがちになった。
本来必要な見直しは
「外国人を選ぶ」
制度への転換だ。
ところが、政府の有識者会議の最終報告書は小手先の見直しばかりで、問題の根源に手を付けていない。
新制度の目的は
「国際貢献」
から
「人材育成と人材確保」
に変えると言うが、
看板の掛け替えどころか、正面玄関から
「安価な労働力」
を受け入れることにも繋がりかねない。
一部産業界の要望に応え続けている限り、人権侵害の問題も解消しない。
結局、
「いてほしい外国人」
ほど日本を避け、選択肢の乏しい
「いてほしくない外国人」
ばかりが日本を選ぶ。
更に外国人受け入れの規模が拡大すれば、欧米諸国以上に深刻な移民問題に直面しかねなない。
これが
「外国人に選ばれる国」
という標語の行き着く先だ。
深刻な状況を前に主要新聞各紙の社説はおよそ的外れだ。
「(外国人に)選んでもらえる社会を作っていきたい」(朝日新聞)
「日本を『選ばれる国』に変えていくことが大切だ」(読売新聞)
「外国人にそっぽを向かれることになりかねない。政府は正念場」(日本経済新聞)
などと声を揃える。
せいぜい産経新聞が
「社会に様々な問題を生みかねない移民に対し、この改革が安易に道を開くことがあってはならない」
と一言指摘しているだけだ。
これでは、外国人政策はおかしな方向に向かうばかりである。

正論2024年2月号 政策シンクタンク代表 原英史
■人権左翼と一部産業界の結託?
政治とカネの騒動の陰で重要な政策転換も進んでいる。
その1つが技能実習制度の見直しだ。
技能実習を巡っては、劣悪な労働環境などの人権侵害、それに伴う失踪などが長らく国内外で指摘されてきた。
法務省の研究会でなされていた検討が2023年11月末にまとまり、2024年通常国会での法改正に向けて準備を進めることになった。
内容は、技能実習制度は廃止し、新たに
「育成就労」
制度を設けるという。
結論から言えば、看板の掛け替えどころか、むしろ更におかしな方向に向かっている。
そもそも技能実習制度の根本問題は、
「国際貢献」(途上国への支援)
という建前の下、
「安価な労働力」
として外国人受け入れの道を開いてきたことだった。
もちろん制度を有効利用する好事例もあり、全てを否定するわけではない。
だが、生産性の低い一部産業界が、賃金引き上げや設備投資の代わりに
「安価な労働力」
を要望し、政府が応えて対象業種を追加してきた面があった。
そんな事業者が利用しているから外国人への人権侵害が起きがちになった。
「安価な労働力」
を求める事業者は外国人を選ばず受け入れるので、犯罪なども起きがちになった。
生産性を高めない事業者を温存し、経済成長の阻害要因にもなった。
今回の報告書は根本問題に全く踏み込んでいない。
それどころか、
「就労育成」
制度は
「人材育成と人材確保」
が目的だという。
つまり、これまでのように
「国際貢献」
と建前を述べるのはやめて、堂々と
「人材育成」
と称する。
つまり、これまで通り、
「安価な労働力を」、
しかも正面玄関から受け入れようということだ。
その上で、人権侵害を防ぐため、別の企業などに移る
「転籍」
を認めるなどと言うが、小手先の見直しでしかない。
今、本当に求められるのは、
「日本国としてこれから、どんな外国人を(高度人材、安価な労働力など)、どのような方式で(短期か長期かなど)、どの程度の規模で受け入れるのか」
という国民的議論だ。
外国人の中には、日本の経済社会の成長や活性化に大いに貢献する
「日本に居て欲しい外国人」
もいれば、経済社会に貢献せず、罪を犯し、社会保険を悪用するなど
「日本に居て欲しくない外国人」
もいる。
これをどう選び、どう受け入れていくかが肝心なのだ。
政府はいつもこうした本来の議論から逃げ、技能実習の見直しなどの各論に突如入り込む。
基本戦略を定めていないので、結局、一部産業界などに引きずられ、なし崩しの移民受け入れに向かってしまうのだ。
これに対し、主要新聞各紙は的外れだ。
いずれも
「安価な労働力」
路線の継続を批判しようとはしない。
朝日新聞も毎日新聞も日経新聞も揃って
「これで外国人に選ばれる国になれるか」
と憂え、
「転籍」
をもっと拡大せよなどと論じている。
メディアがこんな状況では、外国人政策はおかしな方向に向かうばかりだ。
安価な労働力路線を続け、多くの
「日本に居て欲しくない外国人」
から
「選ばれる国」
になったところで、社会にとって害悪でしかないのは明らかだろう。
こんな状況から想起されるのは、欧米諸国でも生じてきた、人権左翼と一部産業界の暗黙の結託だ。
難民申請者などの幅広い受け入れに対し、人権を重視する勢力と、安価な労働力を求める一部産業界は、一見すると水と油のようだが、実は利益が一致している。
暗黙の結託を背景に、過剰な難民受け入れなどがなされてきた面が否めない。
今後、日本でも同様の事態が起きかねない。
事態は深刻だ。

弱者を作る朝日新聞 移民を歓迎する産経新聞
正論2023年7月号 政策シンクタンク代表 原英史
物事を見る時は、個々の事象の表層だけでなく、全体像や背後の構造まで見極めることが肝要だ。
例えば重大事故が生じた時、まず悲惨な被害状況などに向き合うことは欠かせないが、それだけでは不十分だ。
更に踏み込み、事故が何故生じたのか、製品の欠陥がなかったか、法規制や監督体制に問題はなかったかといった検証を行ってこそ、再発防止に繋がる。
報道機関にはそうした姿勢が求められる。
■入管法改正を巡る報道
しかるに2023年国会で焦点になっている入管難民法改正について、残念ながら新聞各紙の報道は実に底が浅い。
目立つのは、
「難民申請3回以降は送還可能」
について、在留外国人らの反対意見を紹介して批判的に報じるものだ。
毎日新聞(電子版)は
「ウィシュマさん妹『外国人の人権無視』入管法改正案の衆院委可決で」
(2023年4月29日)
で、今回の改正は
「不法滞在中の外国人の強制送還を進める狙いがあるが、日本で暮らす外国人の『排除』に繋がりかねないとの懸念も示されている」
とし、2021年に死亡したウィシュマさんの遺族の
「外国人の人権を無視し、尊重していない」
との意見を紹介している。
東京新聞は
「『国を分断する法案を許すな』『国家によるいじめだ』 入管法改正案への抗議デモ、国会前に4千人超」
(2023年5月13日)
で、仮放免中の外国籍の夫と暮らす女性のデモ参加者の声として
「夫は4回目の難民申請中」
「結婚したら収容はあり得ないと思っていたが、理由なく収容されて現実を受け止められず、弟に泣きながら電話したこともある」
「入管は厳正な判断をしているとは思えない」
「国を分断する法案を許してはいけない」
と報じる。
朝日新聞は社説
「入管法改正案 課題に背を向けた国会」(2023年4月28日)
でこう主張している。
「非正規滞在の外国人に対する入管当局の適正な処遇をどう確保するか」
「議論は大きな世論のうねりを生んだ」
「国会が拙速に封じるのは許されない」
(中略)
「入管施設での長期収容を防ぐ対策が問われたにもかかわらず、政府提出の法案は、収容をめぐる手続きに裁判所など第三者のチェックを入れることを避け、入管当局の強い裁量下にとどめる」
「難民申請中でも強制送還できる例外も設けた」
「保護を求めてきた人を迫害のおそれのある国に帰すリスクは高まる」
気になる点は色々ある。
「外国人の人権」
はもちろん尊重しなければならないが、外国人であっても日本にいる時は日本の法令を守らないといけない。
法令に違反したら収容や送還の対象になり得るのは当たり前だ。
東京新聞記事で紹介される女性は
「理由なく収容された」
と言うが、在留資格が切れているのに滞在していたので収容されたはずだ。
収容で引き裂かれて辛いだろうが、決して
「理由なく」
ではない。
だが、そうしたこと以上に根本的な問題は、不法滞在外国人に関わる不幸な事象の表層しか見ていないことだ。
■「弱者の味方」が弱者を作る
なぜ不幸な事象が生じてきたのか。
問題の根源は、不明瞭でどっちつかずで曖昧な入管行政だ。
確かに、難民認定はなかなか受け入れられない。
だが、申請を繰り返して長年日本に居続けることができる。
2010年以降は申請中の就労も法的に認められた。
在留資格が切れれば、収容されることもあるが、収容されないこともあり、何年も経ってから突然収容されることもある。
基準は不明確で運次第のようなものだ。
更に、在留特別許可という制度があり、日本人との結婚や、日本社会に定着しているなどの理由で特別に在留が認められることもある。
特に2000年代半ばには随分と許可がなされた。
こうした曖昧な入管行政が、
「日本にいれば何とかなる」
との期待をもたらしてきた。
難民認定申請者は、2000年頃は200〜300人程度だったが、2010年代後半には年間1万人以上に激増した(2018年に就労が制限されて2000〜4000人程度に減少した)。
政治的迫害など難民要件にはおよそ当てはまらず、経済目的で在留を望む外国人も相当程度含まれていたはずだ。
だが、期待と言っても、不確かな期待に過ぎない。
結果として、首尾よく在留できた人もいれば、収容や家族分断などの不幸な事態に陥る外国人も数多く生じたわけだ。
こうしてみれば、解決策は明らかだ。
認定基準を明確にすることだ。
保護すべき外国人は、何度も申請しなくても、迅速に難民や準難民として受け入れる。
認められない場合は、早期に退去してもらう。
曖昧な行政による不確かな期待を断ち切ることこそ肝要だ。
ところが、これに対し朝日新聞などは、
「申請を何度も繰り返す外国人が在留し続けられるようにせよ」
と唱える。
あやふやな期待を持たせ続けろというのだ。
「弱者の味方」
のつもりなのかもしれないが、実際には不幸な事態を更に引き起こすことになってしまう。
報じている記者らの気持ちは分からないでもない。
在留外国人などを取材するうちについ
「期待を持たせてあげたい」
と思うのだろう。
だが、不確かな期待を持たせてあげることで問題が解決するわけではない。
これも善意でやっていたことだろうが、不確かな助言で曖昧な入管行政が増幅した一部の支援者たちも、結果的には不幸を作り上げた一端だ。
朝日新聞などは自らの報道・主張が結局、新たな弱者を作りかねないことを自覚すべきだ。
■難民受け入れを進めた安倍内閣
外国人政策は全般に、建前と実態の乖離が深刻だ。
技能実習を巡る建前(国際貢献)の乖離はよく指摘されるが、もっと根本的な乖離もある。
まず
「移民は受け入れない」
という建前がある。
これについては、安倍晋三内閣の初期、経済財政諮問会議で
「年20万人の移民受け入れ」
が検討されたことがあった。
当時、諸方面から猛反発を受けて検討は中止され、その後は
「移民政策は採らない」
と言い続けることになった。
菅義偉内閣・岸田文雄内閣にも方針が引き継がれている。
だが、実態としてその間に何が起きたか。
「移民政策を採らない」
はずだった安倍内閣の間、外国人労働者総数は68万人(2012年末)から172万人(2020年末)と2.5倍に急拡大した。
その後コロナ禍で一旦鈍化したが、再び拡大しつつある。
「高度な外国人は受け入れるが、単純労働は受け入れない」
との建前もある。
だが、現実には100万人超の外国人労働者増のうち、半分は技能実習と留学生、即ち最も技能水準の低い労働者だ。
結局、実質的には
「単純労働を中心に毎年10万人以上の移民を受け入れてきた」
というのが現実なのだ。
何故こんなことになっているかというと、
「安価な労働力として外国人を利用したい」
という産業界の一部の要望に引きずられてきたためだ。
古くは1990年代から始まった日系移民の受け入れもそうだった。
その後は、技能実習や留学生アルバイトが広がった。
「移民は受け入れない」
「高度な外国人しか受け入れない」
との建前を守るため、名目上は
「日系だから」
「国際貢献(人材育成)のため」
といった理屈を付けてきたが、実態は
「安価な労働力としての外国人受け入れ」
そのものだった。
産業界の要望に引きずられるのは米国も欧州も同様だ。
メディアが
「日本と桁違いの認定率」
と称する難民受け入れも、実は
「安価な労働力を求める産業界」

「人権左派」
の意図せざる結託で過剰な受け入れがなされてきた面は否めない。
結果として過剰に
「安価な労働力としての外国人」
を受け入れ、移民に関わる深刻な社会問題をもたらした。
日本はこれまで受け入れ規模が小さかったが、今後、国内での人手不足の広がる中で
「安価な労働力受け入れ」
路線を拡大していけば、確実に欧米の轍を踏むのではないか。
■各社とも全体像度外視
技能実習については本来、こうした外国人政策の全体像を踏まえた見直しが求められるはずだ。
ところがメディアの報道では、劣悪な労働環境、失踪トラブル、海外からの「人権侵害」との指摘、といったことばかりが注目されがちだ。
法務省の有識者会議で2023年5月に公表された中間報告では、技能実習の廃止(人材育成を制度目的とする現行制度は廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新制度に)、転籍制限の緩和などを柱とする見直しの方向が示された。
これに対しても新聞各紙の報道は、
「外国人の人権を守れるか」
という視点での報道・主張ばかりだ。
朝日新聞は社説
「技能実習制度決別の意思を明確に」(2023年4月1日)
で、
「立場の弱い外国人の労働搾取だと指摘されてきた制度と、本当に決別できるのだろうか」
と危惧を示す。
日経新聞の社説
「技能実習制度の看板掛け替えでは困る」(2023年4月12日)
も、より抜本的な改革を求める内容だが、視点は
「日本が国際的な信用を取り戻すためには、技能実習制度の禍根を断ち、政策の転換を明確に示すことが欠かせない」
ということだ。
確かに
「外国人の人権」
は重要だが、課題はそれに止まらない。
「安価な労働力としての受け入れ」
を今後も維持・拡大するのか。
その場合に人材供給源はどう考えるのか(かつては中国、近年はベトナムだったが、経済水準が上がったので今後は難しい)。
諸外国で起きてきた移民問題にどう対処していくのか。
産経新聞くらいはまともな議論をしていないかと思って見てみたら、更にダメだった。
主張
「技能実習制度の廃止 人権を守る労働環境整えよ」(2023年4月25日)
では、人権問題を解決する観点から以下のように主張している。
「中間報告のたたき台案は、制度の目的を人材育成としたまま実習生を労働者として受け入れるのは『望ましくない』として制度廃止を求めた」
「その上で、人材育成だけでなく人材確保も目的とする新制度創設を提言したのは理に適う」
「ただしこれは移民問題とは別である」
「社会を変質させる恐れのある移民受け入れへと安易に道を開かないようにすべきだ」
率直に言って、これを書いた人は中間報告の意味が分かっていないのだと思う。
精度目的を
「人材育成」
から
「人材確保と人材育成」
に切り替えるとはどういうことか。
これまで表向き
「安価な労働力としての受け入れ」
とは言わずにこそこそとやってきたが、これからは正面から堂々とそう言ってしまおうということだ。
「人材育成」
も目的に残すことで技能水準の低い人材を受け入れ続けられる。
産経新聞はこの方針を
「理に適う」
として歓迎しているわけだ。
一方で
「移民問題は別」
とも言っているが、私の理解では、
「安価な労働力としての受け入れ」

「移民の受け入れ」
に他ならない。
政府の言い分では、
「在留期間の制限などがあるので移民には当たらない」
らしいが、どこの国でも単純労働者に最初から永住資格を与えることはあまりない。
今回の中間報告は、外国人政策の根本の転換だ。
だが、産経新聞までこの体たらくでは、国民の多くが気付かないうちに大転換がなされることになりかねない。
ここまで、私は外国人受け入れに否定的な主張ばかりしているように見えたかもしれないが、実は外国人雇用協議会という推進側の民間団体の代表理事も務めている。
本稿で述べたことはあくまで私個人の見解だが、この協議会も私も、能力水準が高く日本の経済社会に貢献できる外国人はもっと受け入れるべきとの考えだ。
高度人材に占める外国人の割合は、日本は欧米諸国などに比べて圧倒的に低い。
★高度人材に占める外国生まれの割合
OECDの資料を基に2010年11月経済産業省作成
◆15歳以上の高度人材の人口に占める外国生まれの割合
・英国 23%
・米国 16%
・フランス 13%
・ドイツ 13%
・日本 1%
これでは、グローバルな国際競争で日本が取り残され、日本の競争力は下がる一方だ。
日本の相対的な給与水準は急速に低下している。
2022年経済産業省が公表した
「未来人材ビジョン」
では、タイと日本の企業を比較し
「タイの方が部長に昇進する年齢が平均的に10歳若く、しかも年収が高い」
という衝撃的なデータも示された。
それなら能力に自信のあるアジアの若者は日本よりタイに行った方が良いわけだ。
このまま推移すれば、日本にやって来る外国人の水準はどんどん低下する。
経済社会への貢献度合いは小さくなり、半面で犯罪やトラブルは増えかねない。
そうした中で、
「安価な労働力としての外国人受け入れ」
路線を本当に更に進めるのか。
それで日本の競争力は上がるのか。
日本社会はどうなるのか。
産経新聞は
「社会を変質させる恐れ」
を本当に危惧するなら、真面目に考え直してもらいたい。
■「報道の能力」の欠如
毎年のことだが、
「国境なき記者団」
による
「報道の自由度ランキング」
が公表された。
朝日新聞ではこう報じられている。
朝日新聞
「報道の自由、日本は68位 主要7カ国で最下位」(2023年5月4日)
「国際NGO『国境なき記者団』(本部・パリ)は3日、2023年の『報道の自由度ランキング』を発表した」
「調査対象の180カ国・地域のうち日本は68位(昨年71位)で、昨年よりは順位を上げたものの、主要7カ国(G7)の中で依然、最下位だった」
「日本の状況について、『メディアの自由と多元主義の原則を支持している』としたものの、政治的圧力やジェンダー不平等などにより、『ジャーナリストは政府に説明責任を負わせるという役割を十分に発揮できていない』と批判した」
この記事は、重要な部分を報じていない。
本誌の読者ならば知っているだろうが、
「国境なき記者団」
のレポートでは例年、日本に関して
「記者クラブの問題」
「新聞・テレビのクロスオーナーシップ規制がないことにも起因する、メディアの極度の集中」
が指摘されている。
2023年も同様だ。
これらは
「政治的圧力」
などとは異なり、朝日新聞自らの問題だ。
少なくとも、このランキングを報じるならば、これらの点も報じないとおかしいだろう。
同時に、朝日新聞の報道の通り、
「政治的圧力」
などの指摘もある。
「2012年から右翼国家主義者(nationalist right)が政権について、ジャーナリストが敵視されている」
とか
「秘密保護法制で福島原発へのアクセスが制限された」
とか、私から見ると
「一体どこの国の話なのか?」
と思う内容だが、それこそ
「メディアの極度の集中」
の結果、朝日新聞など一部のメディアの特異な世界観や社会認識が世界にも広まっているのだろう。
私が思うに、日本のメディアに欠けているのは
「報道の自由」
ではなく
「報道の能力」
だ。
せっかく自由に報道できる環境があるのに、まともな報道ができていない。
今回取り上げた難民や技能講習に関しても、問題の本質に触れず、政府の方針に対する批判的検証もできていない。
決して政治的圧力で封じられているわけでなく、能力が欠けているからだ。
「政治的圧力」
云々と言うが、もし的確な取材に基づき自信を持って記事を出しているなら、圧力がかかっても、覚悟を持って抗したら良い。
実際には、能力不足で筋違いの記事を出しているためにしばしば抗議を受け、それに対し
「圧力だ」
と逆切れしているだけではないのか。
私自身、以前安倍政権で国家戦略特区ワーキンググループの座長代理を務めていた際、獣医学部の件をはじめ、いくつもの虚偽報道がなされ、その度に抗議していた。
朝日新聞本社に出向いて、そう間違っているのか詳細に説明したこともある。
担当の部長が何の反論もなく
「なるほど、なるほど」
と聞いているが、訂正記事が出ることはなかった。
毎日新聞にはデタラメな誹謗中傷記事まで掲載され、提訴して係争中だが、毎日新聞の言い分は
「そんなことは書いていない」
だった。
ひょっとすると朝日新聞や毎日新聞は、こうした抗議や提訴も
「政権の手先が圧力をかけてきた」
などと思い違いをしているのかもしれないが、まず自らの報道を省み、責任を持てる報道をしてほしい。
「ジェンダー不平等」
も同様だ。
取材対象に差別的な人物がいて、不当な扱いやセクハラを受けたなら、それを記事にして追い詰めれば良い。
能力不足でそれもできず、政治や社会のせいにしている様は、実に見苦しい。

国民を富ませない移民の経済効果
正論2024年7月号 青山学院大学教授 福井義高
政府が進める外国人の受け入れ策は事実上、移民社会へと舵を切ることにならないか。
その是非を巡って推進、制限論者とも自分たちの主張に拘泥し、感情論になりがちで、建設的な議論が進まぬ中、なし崩しに外国人労働者の受け入れは進んでいく。
筆者は2023年の本誌7月号で主にジョージ・ボーハス教授(米ハーバード大)による研究を基に、移民の経済効果を検討した。
建設的議論の一助とすべく移民を
「感情」
でなく
「勘定」
の問題として考えてみたのである。
その結果分かったのが、移民の受け入れは、受け入れ国のGDP(国民総生産)を増加させるけれど、移民の受け取る賃金相当分を除いた自国民に帰属するGDPはほとんど変わらないことである。
2015年の時点で移民労働者が全労働者の16%を占める米国でも、元からいる米国民分のGDPへの効果は全GDPの0.3%しかなかった。
ただし、移民の効果は企業と労働者で大きく異なる。
移民受け入れで賃金は下がり、企業利益(資本所得)は12%増加したのに対し、賃金は5%減少と推計された。
更に、自国労働者のうち移民労働者と競合する職種の賃金が下がる一方、移民と競合しない自国労働者は移民が従事するサービスの価格低下の恩恵を受ける。
こうした移民の経済効果は、米国に限らない。
2003年にオランダ中央計画局(CPB)が公表した報告書
「移民とオランダ経済」(Immigration and the Dutch Economy)
によれば、移民により労働者が5%増えると、資本(投資)財価格が一定で、移民が全て単純労働者だった場合、オランダの自国民全体への効果はほとんどない一方(GDPが0.06%増)、企業利益は4%増、非単純労働者賃金2%増に対し、単純労働者賃金は6%減少する。
米国とオランダの例から明らかなように、移民受け入れは、自国民の所得増を伴わない、格差を拡大する所得再分配政策なのである。
勝者は企業とエリート、敗者は一般国民である。
■不都合な結果
たとえ格差が拡大しても、高齢化が加速する中、外国人労働者に頼ることなしに日本経済は回らないのだから、受け入れざるを得ないという主張もあろう。
しかし、移民推進は、高齢化により益々厳しくなる国の財政状態を多少とも改善するどころか、更に悪化させるのである。
2023年に前述の
「移民とオランダ経済」
のアップデート版とも言うべき移民が財政に与える影響に焦点を当てた報告書
「国境なき福祉国家」(Borderless Welfare State)
の最終版が公表された。
(https://demo-demo.nl/wp-content/uploads/2023/06/Borderless_Welfare_State-2.pdf)
ただし、
「移民とオランダ経済」
が明らかにした移民の経済効果は、多文化共生を是とし移民受け入れを推進する政府にとって都合が悪いものだったこともあり、今回の報告は民間プロジェクトとして行われた。
オランダは2023年現在、人口が1800万人で日本の7分の1程度、65歳以上人口の割合は20%で日本の29%より低いものの高齢化が進んでおり、2021年のGDP比国民負担率(税金と社会保険料の合計がGDPに占める割合)は39%で日本の34%より高い。
日本同様、高齢化が財政に与えるマイナスの影響が深刻な問題と考えられている。
ただし、移民流入により人口は増加している。
例えば2022は前年に比べ、《native》即ち土着のオランダ人の人口は0.1%(2万人)減少したものの、移民とその子供は3.1%(13万人)増加し、全体では0.7%(12万人)増加した。
こうした中、報告書
「国境なき福祉国家」
は、通常アクセスできないオランダ全人口1720万人(2016年初人口+年間出生児数)の個人データを使い、オランダ人と移民、後者は出身地地域別にそれぞれどれだけ財政に貢献し、また支出を伴ったかを推計している。
まず、全人口がオランダ人1340万人と移民385万人に大別される。
移民は他国で出生しオランダにやって来た1世(第1世代)とその子供である2世(第2世代)からなり、全体の22%を占める。
尚、当初から帰国する予定の外国人労働者とその家族も含まれている。
移民は欧米(western)出身と非欧米(non-western)出身に大別され、更に42地域にグループ分けされている。
欧米に含まれるのは、ロシアを含む欧州諸国、北米(米国とカナダ)、大洋州(オーストラリアとカナダ)、インドネシア(旧オランダ領)そして日本である。
調査の基準となる2016年のデータを基に、オランダ人と移民に分けて財政への単年度ベースの影響を示したのが表1だ。
★表1 オランダ人・移民別財政への影響(単年度ベース、2023年価格、1ユーロ=160円換算)
(注)「国境なき福祉国家」に基づき筆者推計/日本は欧米に分類
「@人口(百万人)A人口(全体比)B貢献額(兆円)C支出額(兆円)D純貢献額(兆円)E純貢献額(GDP比)F1人当たり純貢献額(万円)」
・合計:@17.2AーB60.2C60.5D-0.2E-0.2%Fー
・オランダ人:@13.4A78%B49.5C46.3D3.2E2.3%F20
・移民全体:@3.8A22%B10.7C14.2D-3.5E-2.4%F-90
・移民欧米:@1.7A10%B5.9C5.7D0.2E0.1%F10
・移民非欧米:@2.1A12%B4.8C8.5D-3.7E-2.6%F-170
単年度ベースというのは、この1年間の収支に基づく、筆者たちの表現を借りれば
「静的」
な推計である。
尚、
「国境なき福祉国家」
のデータは全て2016年価格のユーロで表示され、その後のインフレが考慮されていない。
ここでは、オランダの2023年消費者物価指数が2016年比26%上昇したことを反映させ1ユーロを160円で換算して、2023年価格で表す。
以下、同様である。
全体の78%を占めるオランダ人の財政への貢献は49兆円5000億円だったのに対し、46兆3000億円が支出されたので、差し引き純貢献額はプラス3兆2000億円、GDP比プラス2.3%の貢献となった。
一方、全体の22%を占める移民は貢献額10兆7000億円に対し支出14兆2000億円で純貢献額マイナス3兆5000億円、GDP比2.4%の負担(-2.4%)をかけたことになる。
ただし、欧米出身と非欧米出身で大きく異なる。
全体の10%を占める欧米出身移民は貢献額5兆9000億円に対し支出額5兆7000億円で純貢献額プラス2000億円、GDP比プラス0.1%でほぼ収支トントンであった。
ところが、全体の12%を占める非欧米出身移民は、貢献額4兆8000億円に対し支出額8兆5000億円でGDP比2.6%の負担(-2.6%)をかけたことになる。
これは、1.6%と推計されているオランダにおける高齢化がもたらすマイナスの影響を上回っている。
1人当たりで見ると、非欧米出身移民は170万円の負担(マイナス170万円)となっている。
欧米出身移民は貢献額と支出額が釣り合っているので、移民の財政負担はほぼ全てオランダ人の肩にのしかかることになる。
■資本ストックで見る重要さ
しかしながら、単年度ベースの数値は、移民受け入れの効果を判断する上で、必ずしも適切な指標とは言えない。
移民受け入れは(マイナス価値のある場合も含め)一種の投資であり、永住せず出国(remigration)する移民もいるけれど、長期に渡って財政に影響を与えることは間違いない。
移民を受け入れることに伴い、学校教育や医療、その他行政サービスを追加的に提供する必要が生じ、財政負担が増す。
従って、将来に渡る移民のストック(複数年度ベース)価値を推計する必要がある。
実際、
「国境なき福祉国家」
では、単年度ベースの静的アプローチでなく、経済学で
「世代会計」
と呼ばれる手法を用いたストックベースの動的アプローチが必須であることは移民に限らない。
政府がある年に長期に渡る支出にコミットしても、その年の支出として計上されるのは実際に支払った額だけである。
例えば、日本政府が10年間毎年1兆円合計10兆円の新規道路建設を決定しても、最初の年には1兆円しか支出計上されない。
しかし、財政への影響を考える場合に重要なのは、長期に渡って必要となる10兆円という金額であることは自明だろう。
さて、投資即ちストックとしての移民を考える場合、移って来た本人のみならず、その子供たちの分も考慮する必要がある。
また、移民全てが永住するわけではないので、受け入れ国にとってのストック価値を推計するには、出国する可能性も考慮し、その分を控除する必要がある。
「国境なき福祉国家」
は、この2点を考慮に入れた推計をメインの数値としてしている。
移民1人当たりの子供の数については、出身地域別で出生率が違うことも考慮されている。
まず、欧米出身移民に関しては、ストック価値はほぼゼロと推計された。
つまりオランダ財政に貢献もしないけれど、負担にもならないということである。
★表2
非欧米出身移民の財政への影響(ストックベース、2023年価格、1ユーロ160円換算)
@2016年A2015〜2019年平均B1995〜2019年平均
・純貢献額(兆円):@-6.4A-5.4B-3.4
・2016年GDP比:@-4.5%A-3.8%B-2.4%
一方、表2に示したように、非欧米出身移民は、1995〜2019年の25年間で見ると、財政への純貢献額は年平均マイナス3兆4000億円、GDP比2.4の負担(-2.4%)であった。
2015〜2019年の直近5年間だと、純貢献額はマイナス5兆4000億円、GDP比3.8%の負担(-3.8%)、2016年は難民が大量に入国したため、純貢献額はマイナス6兆5000億円、GDP比4.5%の負担(-4.5%)であった。
要するに、非欧米出身移民はマイナスの資本ストックであり、オランダ人にとって移民受け入れは、ただでさえ高齢化によって厳しくなる一方の財政状況を更に悪化させる負の投資ということになる。
「今年いくらかかったか」
というフローで見るよりもストックで見た方が、貢献額がプラスの場合は小さく、マイナスの場合は更にマイナス幅が大きくなる。
これは、移民1世は大人になってから入国するので、オランダ人にも共通する、子供時代の財政上のマイナス要因(公教育コストなど)がかからないためである。
■移民1人当たりはどうか
移民全体でなく、移民1人当たりで見た場合、オランダで生まれる子供や出国の可能性を考慮した、ストックとしての財政への影響はどのくらいなのか示したのが表3である。
★表3
出身地別1人当たり移民の財政への影響(ストックベース、2023年価格、1ユーロ=160円換算)
(注)「国境なき福祉国家」に基づき筆者推計
@出国の可能性を考慮した場合(基本推計)A出国の可能性を考慮した場合(最小推計)B出国の可能性を考慮した場合(最大推計)C永住した場合
(単位:億円)
・仮想オランダ人:@プラス0.2AーBーCプラス0.4
・移民平均:@マイナス0.3AーBーCマイナス0.5
・移民欧米:@0.0AーBーCプラス0.1
・移民日本:@プラス0.4Aプラス0.3Bプラス0.5Cプラス1.0
・移民非欧米:@マイナス0.6AーBーCマイナス1.0
・移民中国:@マイナス0.1Aマイナス0.2B0.0Cマイナス0.2
・移民トルコ:@マイナス0.7Aマイナス1.0Bマイナス0.6Cマイナス1.1
・難民平均:@マイナス1.0AーBーCー
・難民欧米:@マイナス0.6AーBーCー
・難民非欧米:@マイナス1.1AーBーCー
・難民トルコ:@1.0AーBーCー
推計に際して、当然ながら多くの仮定が置かれており、仮定を変更すると数値が大きく変動するようでは信頼が置けない。
その懸念に対応し、仮定をもっともらしい範囲内で変えた推計がいくつか試みられている。
結果的に、最小推計と最大推計の差はさほど大きくなく、基本推計の数値はかなり信頼度が高いと思われる。
まず、比較の基準として、オランダ人と同じ属性の人間が移民として訪れた場合を考える。
入国する年齢や出国の可能性も考慮した、この
「仮想オランダ人」
のストック価値はプラス2000万円である。
移民は平均でマイナス3000万円と推計される。
ただし、出身地域別の違いは大きい。
欧米出身移民は全体ではほぼ財政に中立的ながら、日本出身移民はプラス4000万円の
「優良資産」
となっている。
日本以外では北米、大洋州、北欧、そして西欧の一部からの移民のストック価値が高い。
皮肉なことに、途上国の移民が行きたいと願う国からの移民こそ、オランダにとって
「資産」
価値があるということだ。
一方、欧米系でも東欧の一部からの移民のストック価値はマイナスである。
非欧米出身は平均でマイナス6000万円の
「負債」
となる。
ただし、やはり出身地別のバラツキは大きく、中国がマイナス1000万円であるのに対し、トルコはマイナス7000万円となっている。
移民は更に入国理由別に推計されており、オランダに限らず受入国にとって最も負担となる難民の場合、欧米出身(旧ユーゴスラビアなど)がマイナス6000万円、非欧米出身はマイナス1億1000万円だった。
その多くがクルド系と思われるトルコからの難民はマイナス1億円である。
更に、移民が永住した場合の推計も行われている。
財政貢献がプラスにせよマイナスにせよ、永住を仮定しない基本推計よりも、絶対値(プラス幅あるいはマイナス幅)は大きくなる。
とりわけ、例外的に日本出身移民は2世になってもオランダ人より純貢献額が大きいので、ストック価値はプラス1億円となる。
一方、トルコ出身移民はマイナス1億1000万円である。
トルコ出身のうち難民の数値は未公表なものの、恐らく1億5000万円前後と思われる。
日本出身移民が例外的というのは、日本以外でストック価値が高い欧米出身移民の場合、2世になるとほぼ財政に中立的なオランダ人(2016年生まれの場合、ストック価値マイナス60万円」)にほとんど同化するのに対し、日本出身2世はストック価値がプラス2000万円と推計されるからである。
■福祉国家が終わる
オランダ財政に貢献する移民と負担となる移民を分けるものは何か。
学力(教育レベル)と共に重要なのが文化的距離(宗教や慣習などの隔たりの大きさ)である。
学力が高いほど、出身地とオランダの文化的距離が近いほど貢献額は大きく(負担額は小さく)なる。
実は、日本出身移民はオランダ人より学力が高く、日本は米国よりも文化的距離がオランダに近いとされている。
その結果、日本出身移民の財政から見た同化度はオランダ人(定義上100%)を上回る134%となっている。
一方、貢献額がマイナス即ちオランダ財政の負担となっているのが、学力や文化的距離で隔たりがある
「アフリカ・イスラム・クラスター」
である。
推計では2世までしか考慮されていないけれども、こうした地域からの移民は、3世以降もオランダ社会への同化が進んでいないため、財政上の重荷である状態が続くと考えられる。
従って非欧米出身移民による財政への負の影響は、推計値よりもっと大きい可能性が高い。

「アフリカ・イスラム・クラスター」
の移民2世にかかる治安維持コストは他地域の2世の2.3倍と推計されている。
日本同様、オランダでも少子高齢化が進んでいる。
推計時の出生率はオランダ人女性1.7、欧米移民女性1.4、非欧米移民女性2.0であった。
コロナ禍前2019年には更に低下し、オランダ人女性1.6、欧米移民女性1.3、非欧米移民女性1.9だった。
少子高齢化による年金財政悪化、経済成長率低下に対処するには、移民を必要とする意見がある。
しかし、
「国境なき福祉国家」
が示したのは、途上国からの移民流入は、財政を更に悪化させ、そのマイナスの影響は高齢化の影響を上回るという現実である。
途上国出身の場合、難民だけでなく、労働移民であっても財政には負担となる。
「働くならば移民は問題ない」
という主張は正しくないのだ。
財政問題を度外視するとして、オランダが現実の年齢人口バランスを維持するために移民受け入れを進めた結果、21世紀終わりには人口は1億人に達する。
ただしオランダ人は僅か1割の少数派になってしまう。
「国境なき福祉国家」
が指摘するように、移民で少子高齢化を抑制する試みは必ず行き詰まる
「ネズミ講」
のようなものである。
今回の推計に含まれていないけれど、オランダのように既に人口密度が高い国の場合、人口増が社会・自然環境にもたらす非財政的コストや、自国民の心理的コストを無視することができない。
可住地面積当たり人口密度がオランダの倍近く、同質性の高い社会を長年に渡って構築してきた日本の場合、こうしたコストは更に大きなものとなるのは確実である。
オランダ政府は、ほぼ無条件に受け入れている
「難民」
と称する移民の多くが制度を悪用していることを認めている。
にもかかわらず、有効な対策を取ろうとしない。
労働移民についても、選り好みせず途上国から受け入れている。
<報告書は
「政府の移民政策」
が長期的に何を意味するかについて以下のことを疑いなく示した>
<財政への増大するプレッシャー、そして最終的には我々が知る福祉国家の終わりである>
<従って、現在の法的枠組みを続けるという選択は、明示することなく福祉国家に反対する選択なのだ>
■議論に欠けるもの
本稿ではオランダを例に、移民を財政的観点から分析する見方を紹介した。
多文化共生あるいは人権の観点に基づく移民推進論者は、移民の是非を金銭価値のみで判断するのはけしからんと主張するであろう。
しかし、移民を巡って、どのような美辞麗句で飾り立てようと、途上国からの大量移民は、一般国民からエリートへの所得再分配をもたらす上、財政を圧迫し、自国民に対する行政サービス水準を低下させる。
とりわけ弱者に対するセーフティーネットを劣化させる可能性が高い。
如何なる政治信条の持ち主であろうと、政治家が第1に考えねばならないのは、まず自国民、とりわけ弱い立場にある国民の福利であるはず。
ここで指摘した移民の経済財政効果を十分考慮せず、なし崩しに外国人労働者を受け入れることは、自国民への裏切りと言っても過言ではない。
【付記】本稿作成に当たり、「国境なき福祉国家」の筆頭著者ヤン・ファンデベーク博士より貴重な助言を賜った。

人手不足論はまやかしの市場重視
正論2023年7月号 青山学院大学教授 福井義高
海外からの移民を積極的に受け入れるべきという意見には2つのタイプがある。
まず、昨今流行りのダイバーシティ、多文化共生の観点からのもの。
一方、こうした移民による多様化推進論に対しては、日本社会の独自性を保つため、移民は受け入れるにしても限定的にすべきという主張も有力である。
もう1つの移民推進論は、人口が減少する中、経済成長を実現するには、移民による労働力確保が不可欠という、経済的要請によるものである。
実際、様々な分野で、なし崩しに外国人労働者受け入れが進んでいる。
多様性か独自性かという、特定の価値観に基づく主張は、お互い自分が正しいことを前提に相手を非難する感情論になりがちで、言いっ放しに終わってしまう。
それに対し、経済的観点からの是非は、生前、経済倫理学を提唱された竹内靖雄元成蹊大教授に倣って、感情ではなく勘定、つまり損得の問題として、検討することが可能である。
「感情」
ではなく
「勘定」、
つまり損得の問題として、検討することが可能である。
というわけで、ここでは高邁な文化論は避け、対象を移民(外国人労働者)の経済効果に絞って考えてみたい。
■もし国境を撤廃したら
第二大戦後、米国主導で進められた貿易自由化によって経済成長が促進され、日本のみならず各国国民の生活水準は大きく向上した。
貿易自由化とは、モノの移動に関して国境を撤廃するということなので、ヒトの移動に関しても国境を撤廃すれば、更に経済成長が促進されると考えても不思議ではない。
実際、グローバル経済推進論者は、そのように主張している。
もし世界中で移民制限を撤廃し、ヒトの移動を完全自由化すれば、その経済効果は如何ほどなのか。
幸い、移民の経済研究の第一人者であるジョージ・ボーハス教授(ハーバード大)がシミュレーションを行っているので、その結果(一部筆者推計)を紹介しよう。
ここでは、途上国の労働者は祖国を離れることに特別なコストは伴わないケースを取り上げる。
まず、世界銀行の推計に基づき、世界を人口11億人うち労働者6億人の先進国と、人口59億人うち労働者27億人の発展途上国に大別する。
現実のデータに即して、先進国・途上国共に、企業が利益を人件費に回す割合を示す
「労働分配率」
を70%、先進国と途上国の賃金格差を4対1と仮定する。
移民自由化の賃金格差は、労働力の質ではなく、社会の仕組みを反映したもので、先進国の高賃金は、途上国に比べて、より効率的な経済活動を可能とするものになっているからと考える。
従って、移民を完全自由化すれば、自由貿易によって同じモノの値段が世界中で等しくなるように、ヒトの値段即ち賃金も世界中で同じなる。
また、移民を完全自由化すると、先進国と途上国の人口と賃金はそれぞれどうなるのか、2つの場合を考える。
まず、移民を受け入れても、それまで効率的な経済活動を可能にしてきた先進国の社会体制が変わらない場合、そして、途上国からの大量移民で、先進国の社会が半ば途上国化する場合である。
先進国社会不変の場合、世界全体の国内総生産(GDP)は57%増加する。
ただし、先進国経済に対する移民の経済効果を見るには、移民自身が得る経済効果(賃金)を除外し、土着の自国労働者賃金と自国資本に帰属する所得の合計を、移民自由化前後で比較する必要がある。
移民賃金を除外しても先進国のGDPは39%増加するので、モノの自由貿易同様、ヒトの移動自由化は自国民に帰属する経済のパイを大きくする。
しかし、移民自由化がもたらすGDP増加は、大規模な移民と表裏一体である。
国境撤廃によって、労働者の家族も含めて、途上国人口の95%に当たる56億人が先進国に移住することになるのだ。
その結果、国民・移民共通の先進国賃金は39%減少する。
ただし、途上国からの移民から見れば143%の増加である。
一方、先進国の資本所得(企業利益)は、労働者増・賃下げの恩恵で、220%増加する。
大量の移民が流入すれば、受け入れる側の先進国の社会体制が、その経済効率性も含めて、大きく変化すると考える方がもっともらしい。
やって来るのは、働くロボットではなく、人間なのだから。
途上国からの大量移民で先進国社会が半ば途上国化する場合、移民自由化前より低下するとはいえ、それでも途上国より高い生産性が維持される先進国に、途上国人口の84%に当たる50億人がやって来る。
その結果、世界全体のGDPは13%増加するものの、社会の途上国化で、移民に支払われる賃金を除外した先進国のGDPは7%減少すると共に、自国民・移民共通の先進国賃金は56%減少する。
それでも移民から見れば74%の賃上げである。
一方、先進国の資本所得(企業利益)は、社会の途上国化によるマイナス効果にもかかわらず、労働者増・賃下げ効果がそれ以上に
「貢献」
し、108%増加する。
移民自由化の勝ち組は、言うまでもなく、まず先進国で働くことで賃金が大幅に上昇する途上国からの移民である。
そして、途上国から安い労働力を
「輸入」
することで、利益を大幅に増やすことができる企業である。
一方、負け組は、移民労働者による
「賃金ダンピング」
で、大幅な賃下げを余儀なくされる先進国の自国労働者である。
先進国における移民推進とは、グローバル化とか多様性とかいった美辞麗句を取り去って、その経済効果を直視すれば、労働者から資本家・経営者への所得再分配政策である。
ボーハス教授が指摘するように、
「先進国の労働者が、国境撤廃論者に従うことを拒否するのは、人種差別や外国人排斥とはほとんど関係ない」
「単に新世界秩序(New World Order)から恩恵を受けないからなのだ」。
移民推進は、先進国の国民大多数から見ると、勘定の問題として割に合わないのである。
■移民大国、米国の場合
国境完全撤廃によって途上国民の大半が移民するケースなど非現実的過ぎて、今後の日本の移民政策の参考にならないという批判があろう。
確かにそうかもしれない。
そこで、移民大国である米国の実例を、ボーハス教授の推計(一部筆者推計)に依りながら、見てみよう。
結論から先に言ってしまえば、移民推進が所得再分配政策であるという、その本質は変わらない。
2015年のデータによると、全労働者のGDPに対する貢献分は12%を占める。
しかし、移民流入で増加したGDPから移民の取り分を除くと、移民が自国民にもたらす経済効果はGDPの0.3%でしかない。
ただし、GDPの内訳を見ると、自国労働者の取り分が3%減少したのに対し、企業の取り分は3%増えている。
国境完全撤廃でほとんどの途上国民が先進国に殺到する場合と異なり、移民労働者が全体に占める割合が
「僅か」
16%であっても、移民労働者がいない場合に比べ、賃金は5%低下し、企業利益は13%も増加するのである。
更に、移民に対して提供される公的サービスの財政負担増が移民の納税額を上回る、つまり財政純負担増は確実であり、移民流入のネットのGDP貢献分0.3%は、その純負担増で帳消しになるか、マイナスになっている可能性が高い。
ここまでは労働者を一括して扱ってきたけれども、労働者といっても、大企業経営幹部から非正規雇用の単純労働者まで様々である。
実際に、移民労働者との競争を強いられ、賃金低下圧力に晒されるのは、元から低賃金の職種に従事する自国労働者である。
ボーハス教授の推計によれば、移民流入で競合する職種の労働者が10%増えると、その賃金が少なくとも3%、場合によっては10%程度低下する。
一方、移民労働者と競合しないエリートたちは、むしろ移民労働の恩恵を受ける側である。
移民推進は労働から資本への所得移転のみならず、低賃金労働者から高賃金労働者への所得移転をもたらす。
そもそも、アメリカは移民の国とされるけれども、これまで常に大量の移民を受け入れてきたわけではない。
日本では
「排日移民法」
と呼ばれる1924年に成立した改正移民法により、北・西欧系を除く移民が大幅に制限され、1920年代半ば以降、移民が激減する。
それから約40年経った1965年に移民法改正が行われた際、法案を提出した国会議員も政府も、この改正は移民送出国の構成が若干変わるだけで、移民数自体が増加することはないと
「確約」
したにもかかわらず、移民数は激増、しかも、改正前と異なり、欧州ではなく、途上国からの移民が大多数を占めるようになった。
20世紀半ばの移民制限期に所得格差が縮小したのに対し、大量移民が始まった1970年代以降、所得格差が拡がり、今日に至っている。
この間、米国非管理職労働者のインフレ分を除いた実質賃金はほぼ横ばいだったのに対し、大企業社長(CEO)報酬は労働者賃金の20倍程度だったのが、300倍を超える水準となっている。
■誰のための移民推進なのか
まず、移民の経済的メリット・デメリットを検討するに当たり、何を基準とするのか、はっきりさせる必要がある。
移民自身から見れば、日本の移民受け入れはプラスに決まっている。
そうでなければ、そもそも日本にやって来ない。
しかし、デモクラシーにおける政策の判断基準は、まず主権者たる国民の幸福や豊かさであり、今いる日本人にとって新たな移民受け入れがどのような経済効果をもたらすかが、移民政策の是非を巡る判断基準となるべきであろう。
出生率の低下で人口が減少する中、新たな労働力として大量の移民を受け入れれば、日本のGDPが押し上げられることは間違いない。
ただし、経済成長政策として有効か否かを判断するには、移民を受け入れなかった場合のGDPと、受け入れた場合のGDPから移民賃金と移民受け入れに起因する純財政負担を引いた額を比較しなければならない。
米国の実例でも分かる通り、移民推進は自国民の経済成長にはほとんど影響しない、ほぼ純粋な所得再分配政策である。
社会の途上国化による生産性の低下、純財政負担を考慮すれば、経済成長への効果はむしろ全体としてマイナスの可能性が高い。
移民推進は、労働から資本への所得移転に加え、低賃金労働者から高賃金労働者への所得移転を引き起こす、弱肉強食の格差拡大政策なのだ。
企業経営者をはじめ社会のエリートたちに移民推進論者が多いのは、要するに自分にとって得だからである。
多様化推進の観点からの移民推進論も、こうした主張を行う人が概して高学歴エリートであることを鑑みれば、正義感溢れる
「感情」
論でカムフラージュされた
「勘定」
論と見ることもできる。
一方、欧米では弱者の味方のはずの左翼・リベラルが移民受け入れを推進しているけれども、これは比較的最近の現象である。
元々、左翼・リベラルの間では、支持基盤だった労働者の利益を守るため、移民受け入れに慎重な意見が有力であった。
冷戦時代、
「移民の継続は深刻な問題をもたらす」
「合法、不法とも移民をストップせねばならない」
と主張したのは、極右どころか欧州左翼の大立者ジョルジュ・マルシュ仏共産党書記長である。
米国のある有力な大統領候補もこう語っていた。
「不法移民流入を阻止せねばならない」
「この目的を達するため、国境警備要員を増やさねばならない」
「合法移民に関する法律も、合衆国が移民の数と質をもっとコントロールできるよう改正せねばならない」
「移民受け入れに関しては、まず、合衆国は、無責任な他国干渉への干渉ーこうした干渉はほぼ確実に政治難民を生み出すーによって難民が生じることだ」
「もっと用心しなければならない」
「本当に難民かどうか、より確実に難民申請を審査せねばならない」。
発言の主はドナルド・トランプ前大統領ではなく、ベトナム反戦で名を馳せたリベラルの雄、ユージン・マッカシー民主党元上院議員である。
要するに、今日の労働者は左翼・リベラル主流派に見捨てられたのである。
ただし、新たな動きも見られる。
ドイツで急進左翼の代表格とみなされてきた旧東独出身のザーラ・ヴァーゲンクネヒト左派党連邦議会議員が、大量移民は自国労働者の経済的利益を損なうという
「勘定」
論を前面に出した移民反対論を唱え、左翼・リベラル主流派から非難される一方、
「極右」
正統とされるAfD支持者の間で大人気となっている。
■低賃金は企業の敗北宣言
豊かな社会では、必要であったも自国労働者がやりたがらない仕事が増え、移民なしにはやっていけないという主張をよく聞く。
しかし、先進国で移民が従事するのは、自国労働者がやらない仕事ではなく、現在の賃金水準ではやりたくない仕事である。
不法移民を一掃した米国のある地域で現実に起こったように、外国人労働者がいなければ、自国労働者がやりたくなる水準まで賃金は上昇する。
また、企業は技術革新で乗り切ろうとする。
実際、それは高度成長期の日本で起こったことである。
「人手不足」
にもかかわらず、移民を入れなかったことで、製造現場ではロボットが普及して省力化が進み、高学歴エリートと大衆の賃金格差が縮小し、戦前の大企業大卒社員の家庭では当たり前だった
「女中」
が賃金高騰でほとんど姿を消した。
一方、我々がどうしても生活に必要と考える財サービスであれば、十分に生産性を上げることができないため賃金上昇を価格に転嫁せざるを得ず高価格となっても、需要は残る。
一例として、生産性向上が困難な理美容業の料金は、高度成長前に比べ一般物価水準を超えて大きく上昇したけれども、今も需要は健在である。
低賃金でないと事業を継続できないというのは、高い価格を支払ってまで買う価値のある財サービスを提供できないという、企業としての敗北宣言に過ぎない。
低賃金の外国人労働者への依存は企業にとって麻薬のようなものであり、自国民の所得格差を拡げるのみならず、生産性向上努力を妨げ、結果的に、企業の衰退をもたらす。
経済的観点からの移民推進論者は、ほとんどの場合、自称市場重視論者でもある。
しかし、現在、
「人手不足」
が叫ばれている仕事の多くは、財サービス価格が低過ぎて超過需要が生じているのであって、価格を上げて需要を減少させるのが、本来の市場重視であろう。
その典型例が貨物輸送である。
人手不足対策に議論は不要である。
市場のシグナルに耳を傾け、トラック運転手の賃金を上げればよいのだ。
現在の価格で現時点の需要に応じようとする需要充足主義は、計画経済的・社会主義的発想であり、市場重視とは無縁である。
人手不足論者にみられる、こういう財サービスの価格あるいは職種の賃金は低くて当然という発想は、単なる思い込みに過ぎない。
理美容サービス料金に見られるように、社会の変化に伴い、財サービスの相対価格は劇的に変化してきた。
戦後、相対賃金が大きく変化したことは、先に述べた通りである。
人手不足を理由とした移民推進論は、国民経済の観点からは到底正当化できない。
市場のダイナミズムを無視したまやかしの市場重視、その実、反至上主義なのだ。
国境完全撤廃のシミュレーションはともかく、米国の実例は、EBPM(Evidence-based Policy Making:証拠に基づく政策立案)を標榜する日本政府にとって、移民政策を検討する際に、大いに参考になるはずである。
ともあれ、移民問題は感情ではなく、冷静な議論が可能な勘定の問題という認識が求められる。

EBPM(証拠に基づく政策立案)とは?
EBPMとは、Evidence-based Policy Makingの略称であり、日本においては内閣官房が以下のように定義している。
(1)政策目的を明確化させ、
(2)その目的のため本当に効果が上がる行政手段は何かなど、当該政策の拠って立つ論理を明確にし、これに即してデータ等の証拠を可能な限り求め、「政策の基本的な枠組み」を明確にする取組。
つまり、たまたま見聞きした事例や経験(エピソード)のみに基づいて政策を企画するのではなく、データを活用し、合理的根拠(エビデンス)に基づいて企画すること。

人手不足解消のカギは外国人労働者を受け入れないこと
Hanada2024年7月号 小西美術工藝社社長 D・アトキンソン
■衝撃的なアンケート結果
岸田政権は2024年3月29日、人手不足の分野で一定の技能がある外国人労働者を受け入れる在留資格
「特定技能」
について、2024年度から5年間の受け入れ枠を82万人とすることを閣議決定しました。
2023年度までの5年間で設定していた人数の2.4倍となり、外国人労働者の受け入れが加速することになります。
とんでもない話だと憤っていたら、最近、更に衝撃的なニュースが飛び込んできました。
「外国人労働者受け入れ『賛成』62%、高齢層で大幅増 朝日世論調査」(朝日デジタル)
<朝日新聞社が全国世論調査(郵送)のテーマ「人手不足社会」に関連して、人手不足の業種を対象に外国人労働者の受け入れを拡大する政府方針への賛否を尋ねたところ、「賛成」62%が「反対」28%を大きく上回り、賛否が拮抗した5年余り前の調査から大きく変化した>
もちろん、日本のマスコミの世論調査なので、どういう業種の人を対象にしたか、経営者だけにアンケートしたのかなど詳細が出ておらず、留意は必要ですが、6割もの人が外国人労働者受け入れに賛成というのは、驚きました。
人手不足に悩まされているのは、ほとんどが中小企業です。
人口減少の下、中小企業は生産性が低い。
有給休暇の取得率などを見ると、労働環境が大企業より厳しいので、労働者が不足すると、まず中小企業が人手不足になる。
日本の中小企業は社員数が非常に少ないので、すぐに大きなダメージを受けます。
日本企業の平均従業員数は9人。
85%の日本企業は、平均従業員数がたった3.4人。
仮に従業員数3人の職場から1人辞めると、労働力が3分の1減り、たちまち
「人手不足」
に陥ってしまうのです。
■努力したくない中小企業
私から言わせれば、中小企業は人手不足を解消する努力が進んでいません。
私は以前から、中小企業は統合して、次第に規模を大きくしていかなければいけないと主張しています。
合併統合することで、経営陣などの管理職や経理はこれまでの半分で済み、その分、人手不足の部署に人手を回すことができる。
統合まではいかなくても、会社間でお互いに人手が足りない時には融通し合うことができるよう連携はするべきです。
もう1つは、機械化など設備投資による作業の効率化。
ただ、経営者としては、日本人は低賃金でも仕事を真面目にこなしてくれるので、コストを掛けて設備投資を行う動機が生まれません。
機械化などをするより、低賃金で人間に働いてもらう方が安上がりなのです。
ここは肝心なポイントで、人口減少によって生じている人手不足は、本来、企業がそれに合わせてビジネスモデルを変えるチャンスであり、変えなければならないのです。
しかし、連携も合併もしたくない、設備投資で生産性向上もしない・・・中小企業がビジネスモデルを変える何の努力をすることもなく現状維持をするため、唯一残された方法が、減っていく日本人労働者の代わりに外国人労働者を受け入れることなのです。
現時点で、200万人の外国人労働者が日本に来ています。
2060年には生産年齢人口が3000万人減るので、低賃金労働者依存症の中小企業経営者を満足させるためには、1000万人単位で外国人労働者を受け入れなければならないでしょう。
主に最低賃金で働く外国人労働者が大量に入って来ると、日本人の賃金も上がらなくなります。
経営者は楽でしょうが、社会保障の負担が増える一方の日本で、財政も労働者も大きな打撃を受けます。
こんなふざけた話があるでしょうか。
■これまで以上に増える軋轢
2023年、2500万人の外国人観光客が日本を訪れました。
一方、
「オーバーツーリズムだ」
(ある地域を訪れる人が急増したことにより、その地に暮らす人々や自然環境、生態系、景観などに悪影響を及ぼしている状況)
と批判する声もあります。
満員でバスに乗れないとか、ホテルが満室で取れないとか、マスコミなどで
「オーバーツーリズム」
と批判されていることは、日本側の受け入れ体制の未整備によって起こっていることで、
「オーバーツーリズム」
などではありません。
1カ月当たり200万人来ているインバウンドは海外旅行できるレベルの層で、日本におカネを落として、欧米人などの場合、2〜3週間したら国に帰っていきます。
一方、外国人労働者は全く逆です。
中小企業が求めているのは、最低賃金で働いていくれる人材。
日本の最低賃金は世界23位で、ハンガリーやイランよりも低く、後進国レベル。
そんな低賃金であっても働きに来る外国人労働者は、言い方は悪いですが、どういう教育水準の人か分かりません。
そういう外国人が1000万人単位で日本に来て、定住するのです。
しかも最低賃金で働く外国人労働者は、経営者たちが住むようなエリアではなく、一般庶民が住むエリアで生活するようになる。
欧州などでは、低賃金の移民などは大変な問題を引き起こしています。
そもそも、イギリスがBrexit(イギリスが欧州連合 (EU) から離脱すること、離脱したこと)に踏み込んだ最大の原因は、庶民が強いられた移民の問題でした。
インバウンドは一時的にしかいないから、発生するトラブル、軋轢などたかが知れていますが、定住する外国人労働者は違います。
既にして、日本に住むイスラム教徒が
「土葬できる墓を作ってほしい」
と要請していたり、神社の賽銭箱を破壊したりする事態も起こっている。
1000万人単位で外国人が入ってきたら、これまで以上に様々な軋轢が生まれるでしょう。
なぜ経営者が低賃金で人をコキ使いたいがために、日本全体が迷惑を被らなければいけないのか。
「オーバーツーリズムだ!」
と騒いでいる人たちは、今すぐ外国人労働者受け入れに反対した方がいい。
どこの国でもそうですが、教育水準の低い移民を大量に入れれば、犯罪やトラブルが増えます。
移民政策で成功しているのは、高学歴かつポテンシャル(潜在的な力。可能性としての力)の高い人材を受け入れて、イノベーション(新製品の開発、新生産方式の導入、新市場の開拓、新原料・新資源の開発、新組織の形成などによって、経済発展や景気循環がもたらされるとする概念)をどんどん起こしているアメリカくらい。
■中小企業延命という愚策
私が日本に来た1990年代前半は、高学歴・高所得の外国人でないと就労ビザが下りませんでした。
「日本人にできる仕事は外国人にやってもらう必要がない」
という考え方で、よほどの特殊技能を持った外国人でなければ、日本で働くことができなかった。
自分で言うのも何ですが、イギリスでトップの大学であるオックスフォードを卒業していても、なかなか申請が通らなかったほどです。
人手不足が叫ばれたているのは、飲食宿泊や運送業など、労働環境が悪く、生産性も低い業種です。
高学歴の人材などを必要としていません。
少子化によって競争率が下がり、今の若者は名門大学、大企業に入れる確率が昔よりも飛躍的に上がっています。
そんな中で、若者が最低賃金でしか雇えないような会社を選ぶはずがない。
若い優秀な人材を確保したければ、先述したように、合併するなり設備投資するなりして、生産性を向上させ、若者にとっても魅力的な
「中堅企業」
になるしかありません。
ところが、政府は外国人労働者を受け入れて、中小企業を延命させようとしています。
これほどの愚策はありません。
成功例がほとんどないのに、なぜ政府は外国人労働者受け入れを拡大しているのか。
もちろん、中小企業経営者側からの要請もあるでしょうが、一番大きいのは、今の社会保障を維持するためでしょう。
先述したように、ピークから既に1300万人も減っている生産年齢人口は、2060年まで更に3000万人減ります。
そうなれば、今のビジネスモデルを維持して高齢化に伴う負担に応えるために、労働している人間の数を最低でも維持しないと、今の社会保障制度を維持することができなくなる。
だから低賃金の外国人労働者を入れようということなのでしょう。
しかし、この考え方は余りにも短絡的過ぎます。
■日本人労働者は増やせる
政府には、外国人労働者を受け入れる前にやるべき事がたくさんある。
まず、日本人労働者の供給量を増やすべきです。
そのためには、扶養控除の廃止。
これだけ人手不足が騒がれる中で、フルに働かないことで税制優遇するなど、あり得ない制度です。
もう1つは、専業主婦(主夫)への年金制度の廃止。
サラリーマン(第2号被保険者)に扶養されている専業主婦(第3号被保険者)は保険料を自ら負担することなく、将来的に老齢基礎年金が受給できるのです。
自分は払っていないのに年金を受け取れるというのは、社会保障の原則に反しているだけでなく、女性の働く動機を奪っています。
海外によくあるやり方を導入して、既に貰っている人は仕方ないですが、例えば平成何年生まれ以降の人の場合、第3号非被保険者を廃止すると決めればいい。
低賃金の外国人労働者を受け入れる前に、優秀な日本人女性にフルに活躍してもらう仕組みを徹底的に実施するべきです。
女性活躍を訴えるなら、まずこの2つの廃止は必須でしょう。
それに中小企業改革。
これまで何度も書いてきたように、規模が小さいというだけで日本の中小企業は優遇されています。
弱者扱いされて、期待もされません。
商工会議所などの中小企業の団体も、改善を要求されると、すぐに
「中小企業潰し!」
「中小企業淘汰論者!」
「中小企業は下請けいじめを受けている!」
などと煽ります。
それによって、中小企業は成長するインセンティブ( やる気を起こさせるような刺激。動機付け)が削がれています。
そうではなく、きちんと足腰の強い中堅企業に成長した企業をバックアップしていく。
規模が大きくなることで、人手不足にも強くなる。
■逆説的な人手不足解消方法
経済合理性を歪ませる中小企業優遇の最たる例が、
「交際費」
です。
今は日本では中小企業というだけで、取引先との接待などに使う交際費を800万円まで損金扱いできます。
私の経験則でしかありませんが、私の周囲の中小企業経営者で、会社のためにこの800万円を使っている人はほとんどいません。
仕事に関係なく、高級寿司屋で食事をしたり、夜の店に行ったりと
「”社長自身”への接待」
に使われており、全く実態を伴っていない。
要するに、公私混同です。
この制度をフルに使うことができる企業はほぼ小規模事業者です。
成長して中堅企業になろうとすれば、この制度のメリットは次第に減ります。
更に、サラリーマンをやって何の経費も使えないよりは、公私混同が許されている小規模事業者になった方が圧倒的に有利になる。
経済合理性より、経営者優遇を狙って起業するインセンティブが働いていしまうのです。
これは考え過ぎではありません。
日本企業の場合、6割以上の企業が赤字企業です。
この比率は、1960年代から景気と関係なくずっと上がっています。
諸外国の例を分析すると、企業数の赤字比率は2割で、日本では如何に経済合理性の低い小規模事業者が多いか分かります。
実は、中小企業が2017年度に支出した交際費は約3兆円。
もし、この3兆円に法人税(23%)を掛ければ、6900億円もの税金を取ることができます。
政府の肩を持つわけではありませんが、日本は何か物事を動かそうと思えば、とにかく批判・反対の風です。
中小企業はもっと頑張れと言えば
「中小企業いじめだ」
と批判され、扶養控除廃止を言えば
「専業主婦いじめだ」
と批判される。
日本は本当に疲れる国です。
中小企業問題について、商工会議所前会頭の三村明夫氏は、未だに私を批判しています。
日経新聞(2024年4月27日)の
「私の履歴書」
で、三村氏はこう語っていました。
<中小企業はサボっているのではない>
<統計の数字だけを見た
「生産性の低い中小企業は淘汰されるべきだ」
といった極論が罷り通れば、日本経済は本来の強さを失うだろう>
「統計の数字」
以外に、一体何を根拠にすればいいのでしょうか。
教育水準の高い日本人を低賃金で働かせている
「統計的事実」
について、三村氏はどう思っているのか、逆に訊きたいくらいです。
三村氏は、最低賃金を引き上げると大量に中小企業が倒産する、失業者は大量に増えるというような主張をよくしていました。
1990年代に比べて、最低賃金は2倍に上がっています。
安倍政権以降も1.3倍にもなっている。
三村氏の主張と真逆に、企業数は大幅に増えて、就業者数も史上最高水準になっている。
三村氏が主張していた
「大量の倒産」

「大量の失業者」
も、統計に表れていません。
だから、
「統計ではない」
と言うのでしょう。
政府も、強烈な反対に遭うことは目に見えているから、
「じゃあ、現状維持のために外国人労働者を入れるしかない」
と半ば諦めており、場当たり的な対応しか取れないのではないか。
この人手不足を解消するために、政府はどうすればいいか。
逆説的ですが、
「これ以上、外国人労働者を受け入れないこと」
です。
外国人労働者を受け入れないことで、中小企業はにっちもさっちもいかなくなり、自動的に中小企業間の提携・統合、設備投資による生産性向上が進みます。
それは、中小企業改革の前進にもなる。
先述したように、中小企業を延命させるために外国人労働者を受け入れるなど、百害あって一利なしの愚策中の愚策。
冒頭の世論調査で、外国人労働者受け入れに賛成した人には目を覚まして頂きたい。
政府は
「経営努力をしたくない」
「現状維持をしたい」
という経営者の甘え、自己中心的な考えなど一顧だにせず、毅然と対応してほしいと思います。

外国人受け入れ「特定技能制度」に4分野を追加、5年で82万人見込み 政府が閣議決定
2024/3/29 10:10
https://www.sankei.com/article/20240329-QQTAPVAO7JLS3PHI6X4N4G3SQQ/
政府は2024年3月29日、外国人を中長期的に受け入れる
「特定技能制度」
の対象にトラック運転手などの自動車運送業や鉄道、林業、木材産業の4分野を追加し、対象分野を現在の12から16に広げる方針を閣議決定した。
令和6年度から5年間の受け入れ見込み数は最大で82万人とした。
パブリックコメント(意見公募)を経て省令を改正する。
受け入れ見込み数は、国内の雇用拡大や生産性向上だけでは不足する労働力を業界ごとに算出したもの。
5年間で約34万人としていた制度開始時から2倍超となった。
人口減少や時間外労働規制強化によって物流分野での人手不足が深刻化する
「2024年問題」
などが反映された。
追加4分野のうち、利用客と会話の機会が多いタクシーの運転手や鉄道の車掌などは、必要な日本語試験の基準を他の分野よりも高いレベルとする。
既に特定技能の対象となっている製造業分野でも繊維や鉄鋼、印刷業務などを中に加える。
特定技能は平成31年4月に創設。
最長5年間働ける1号と、家族が帯同できて事実上永住できる2号がある。
政府は、外国人の研修を目的とする技能実習制度を廃止し、外国人材の確保と育成を目的として将来的に特定技能制度に移行できる
「育成就労制度」
創設を柱とする関連法案を通常国会に提出している。

祖国にいながら外国人に怯えて暮らすのか 「受け入れろと」と他人の国で暴走する移民たち
WiLL2024年7月号 イスラム思想研究家・麗澤大学客員教授 飯山陽
■クルド人がまた犯罪
先の衆議院東京15区の補欠選挙は、たくさんの応援を頂きましたが力及ばず落選してしまいました。
皆さんのお陰で、最後までマイクを握ることが出来ました。
今回、選挙に出馬した理由の1つが、日本の移民国家への道にストップをかけるためです。
しかし現状は厳しく、またクルド人による犯罪が起きました。
しかも今度の被害者は何と女子中学生です。
産経新聞オンラインの記事(2024年4月5日付)です。
「女子中学生に性的暴行をしたとして埼玉県警川口署は2024年3月7日、不同意性交等の疑いで、トルコ国籍でさいたま市南区大谷口の自称解体工、ハスギュル・アッバス容疑者(20歳)を逮捕した」
「『日本人女性と遊んだが暴行はしていません』と容疑を否認しているという」
再度確認してみると、この記事は削除されており、追加の記事では容疑者は匿名にされていました。
実名は
「デイリー新潮」
やまとめサイトのみで閲覧できます。
容疑者の居住地はさいたま市ですが、川口署が逮捕したということは、川口市で活動するクルド人の居住地が近隣の市にも広がっているということでしょう。
トルコ国籍のクルド人の多くはイスラム教徒ですが、一般的にそれほど信仰に熱心ではありません。
しかし、クルド人文化は、イスラム教文化と共通する所が多く、その1つが女性や性に関する文化です。
イスラム教では、異教徒の女性は二重の意味で卑しい存在とされており、尊厳を持つ人間として扱われません。
更にイスラム教には、性行為や結婚をしても許される最低年齢という概念がありません。
イスラム教徒の男性の中には、本件のような
「異教徒の女子中学生」
というのは、性的に何をしてもいい存在だと思っている人がいる可能性があるのです。
イスラム教徒の移民による、現地の女性たちに対する性暴力事件がヨーロッパで多発している背景には、このようなイスラム教の女性観、異教徒観があります。
イスラム教徒の男性は、異教徒の女性には何をしても構わない、髪や肌を露出させているのは尊厳がないことの証であり、むしろレイプされたがっているのだと、そう理解してしまうことがあるのです。
私はイスラム教の研究者ですから、イスラム教が如何に土着文化を侵食する力を持っているかを知識としてだけでなく、実感としても知っています。
世界にはこうした文化や価値観を当然とする人々が多く存在するため、理想の多文化共生・異文化共生を現実のものにするのは困難です。
実現したいのならば、外国人に対し、
「あなたの常識は日本では受け入れられない」
「日本では日本のルールを守ってもらわねば困る」
と、ハッキリと徹底的に主張するしかありません。
更に、外国人の子供には出来るだけ早いうちから、日本のルール、文化に馴染んでもらう必要があります。
フランスでは、2019年から義務教育が始まる年齢を6歳から3歳に引き下げました。
その背景には、自国の文化や風俗を守るために移民を教育する意図もあります。
一方で日本には、こうした対策は一切なく、多文化共生・異文化共生は素晴らしい、日本人は外国人の文化を理解し、受け入れろと主張するだけです。
このまま何の対策もしなければ、先述のような事件は今後更に増えるでしょう。
■何が、権力の監視役か
にもかかわらず、政府や自治体、企業、そしてメディアも、日本社会に対して影響力(インフルエンシャル)な発言権を持つ”権力者の皆さん”はこぞって、
「活力維持に外国人が必要だ!」
と声高に言います。
読売新聞オンライン版でも
「外国人・高齢者 活力維持へ重要『育成就労』『特定技能』着実に・・・人口減抑制」
と題して、次のような記事が掲載されました。

<人口が減って生産年齢人口(15〜64歳)が先細っていく中、社会の活力を維持するためには、労働力の確保が欠かせない>
<政府は今年(2024年)、外国人技能実習制度に代わる新制度「育成就労」の創設を決めた>
<掲げたのは「人材の確保と育成」>
<帰国を前提としていた技能実習制度から大きな転換を図った>
(中略)
<外国人の受け入れは、主に出入国在留管理庁が担っているが、労働者を巡る政策は多くの省庁にまたがる>
(中略)
<業種ごとに必要な人数や求める人材を呼び込むには、一元的に誘致していく必要がある>
<その司令塔として、政府に「誘致戦略本部」を創設すべきだ>
<制度を着実に進めていくため、自治体や地域住民にも配慮しながら、外国人との共生に向けた戦略を策定する>
(2024年4月26日付)

日本社会が人口減を抑制し、活力を維持するためには、外国人をどんどん日本に受け入れることが必須だとして、読売新聞がわざわざ提言しているわけです。
読売新聞だけでなく、既に国から企業まで皆揃って同じ事を言う有り様です。
外国人が必要だ、というのは、つまり”移民推進”です。
多様性の奨励はそのための地均しです。
多様性のある社会は
「活力を維持する」
と盛んに宣伝し、多様性を促進するために移民を受け入れる必要があるとして事を進める。
そもそも自民党は2016年3月15日の
「労働力の確保に関する特命委員会」
の初会合時に、政調会長の稲田朋美議員が
「日本は移民政策は採らない」
と明言した上で、議論を開始しています。
ところが、その8年後の2024年、岸田政権が在留資格
「特定技能」
について2024年度から5年間の受け入れ枠をこれまでの2倍を超える82万人とすると閣議決定しました。
8年前・2016年の方針を平気で変え、国民に嘘を付く、これが自民党政権です。
そしてこの嘘を嘘だと指摘せず、政府方針に同調しているのがメディアです。
何が
「権力の監視役」
でしょう。
「笑わせるな、愚か者!」
と言いたくもなります。
■7つの大罪である理由
読売新聞が提言した、
「日本社会の人口減を抑制し活力を維持し、成長を続けるためには外国人移民が必要だ」
という主張は完全に間違っています。
理由は7つー。
第1に、人口減の埋め合わせをするために移民を受け入れるなら、考えられないほど多くの移民を受け入れなければならないため、この政策自体が非現実的であることは、国連の調査でも明らかになっています。
第2に、人口減を埋め合わせするために移民を受け入れても、日本人でない人が増えるだけなので、日本で外国人による人口の置き換え(人口が増加も減少もしない均衡した状態になる)が進むだけです。
これを
「人口減の抑制」
だと言う人は、日本が日本でなくなることを積極的に推進する人たちです。
第3に、不足する労働力を補うために移民を受け入れても、移民もいずれ年を取って働けなくなります。
日本は今、永住を認めるという条件で移民を受け入れようとしていますが、労働力だったはずの移民は遠からず、日本の福祉によってその生活を支えなければならなくなります。
■移民と社会の暴走
第4に、不足する労働力を補うために移民を受け入れると言いながら、日本政府は彼らに家族の帯同を認めています。
5人、10人の家族を帯同すれば、移民の安い賃金では家族全員を養えなくなり、その分を補うのは、私たちの福祉、つまり税金です。
労働力が必要だと言って外国人を受け入れたのに、彼らの生活を我々の福祉で支えなければならないという事態が生じます。
労働力として受け入れた移民が、働く意欲を失ったり、病気になったり、失職すれば移民の家族の生活は、私たちの税金、私たちの福祉で支えなければならない。
これは移民を多く受け入れた欧米で実際に発生している問題です。
第5に、労働力として移民を受け入れれば、日本人の賃金が下がります。
政府が推進するインフレを上回る程度まで賃上げをする方針とは、正反対のベクトルに進みます。
サウジアラビアは移民を多く受け入れている国の1つですが、企業に一定数の自国民の雇用を義務付け、給与体系も外国人とは異なる水準を義務付けています。
しかし日本にはこうした規制はありません。
安い移民労働力を受け入れれば、企業と経営者が得をするだけで、日本人の労働者は専ら損をします。
これでは日本社会を弱体化させるばかりで、
「活力の維持」
どころではありません。
第6に、世界の文化の中には、日本の文化、伝統、常識、法律とは相容れない、矛盾するものが大量にあるため、全て受け入れれば、社会が混乱し、秩序が乱れます。
第7に、移民が増えれば間違いなく治安が悪化します。
現在、警察は外国人の犯罪を見逃し、仮に逮捕しても検察が不起訴にして犯罪者を無罪放免にします。
警察を恐れない”無敵の外国人”が、日本社会で暴走し、好き放題に犯罪に手を染めているのは、こうした背景があるからです。
外国人が増えれば、この状況は更に悪化するでしょう。
日本人は祖国にいながら、外国人に怯えて暮らさなければならなくなり、警察に守ってもらえなければ、自衛せざるを得なくなります。
犯罪の被害者となっても、誰も助けてくれない、そんな世の中にしたいですか?
■”聖域”という名の移民都市
2024年5月1日、バイデン大統領はワシントンでの集会で、日本経済が低迷している理由として
「外国人嫌いで移民を望んでいないからだ」
と述べました。
そんなアメリカでは現在、不法移民が急増しています。
米南西部の国境を越えて拘束・保護された不法移民は2023年度(2022年10月〜2023年9月)に247万人と3年連続で過去最多を更新。
かつてはメキシコや南米各国からの流入がほとんどでしたが、今は、中国などから中南米を経由してアメリカを目指す不法移民も増えています。
バイデンの
「外国人好きで移民を望む」
政策が、世界中から不法移民を引き寄せているのです。
アメリカ内で移民に寛容な都市、いわゆるサンクチュアリ・シティ(聖域地域)の代表がニューヨーク市です。
ニューヨーク市では移民を10万人ほど受け入れ、日々増え続ける移民の数に悲鳴を上げ、2022年10月に民主党のエリック・アダムス市長がとうとう非常事態を宣言しました。
「移民はニューヨークのストーリー(歴史)の一部で、アメリカの一部でもある」
「しかし移民政策は崩壊している」
「国家的危機だ」
「もう限界だ」
「市単位の予算には限りがあり、思いやりだけではどうにもならない所まで来ている」
アダムス市長は移民の受け入れの危機的状況を踏まえ、度々このように訴えてきました。
ニューヨーク市の移民関連の予算は2024年度が約42億ドル、2025年度が約49億ドルと巨額です。
その後、アダムス市長は法律違反の疑いのある移民を保護してきた政策を転換する考えを示しています。
つまり不法移民を矢継ぎ早に受け入れる政策を採った結果、市が財政破綻しかかっているのです。
ニューヨーク市に限らず、不法移民を受け入れた州や都市は軒並み財政や治安が悪化し、地元住民の不法移民に対する感情も悪化しています。
今や28%のアメリカ人が不法移民の問題は、アメリカにとって最大の問題だと認識しています。
■”日本”であるために
一方、日本はどうか。
岸田政権は今まさに
「移民を望む」
政策を採りつつあります。
アメリカで不法移民に厳しい共和党が政権を取れば、アメリカに殺到している世界の不法移民が、今度は日本に殺到するでしょう。
今度は日本が不法移民の”サンクチュアリ(聖域)”になろうとしています。
日本が日本であり続けること、日本が国民にとって安心して暮らせる祖国であり続けること、日本人の暮らし、豊かさ、安全が守られることが何より大事です。
移民受け入れ推進は、こうした安心・安全を全て破壊します。
しかし今の日本の国会議員に、日本国民の安全を主張する人はほとんどいません。
彼らは皆、嘘を付き、移民を受け入れることによって起こる問題に言及する人はほとんどいません。
移民によって破壊された欧米社会や、先述のクルド人による性的暴行事件が彼らには見えていないのでしょうか。
文化や価値観の違いによって生じる事件、財政や治安の悪化などが起き得る移民政策を阻止する必要があります。
日本が移民問題で苦しむ欧米のようになるのは、時間の問題です。
私たちにとって大切な日本という国を、守り抜かなければなりません。

女子中学生に性暴行の容疑者、難民申請中のクルド人 トルコ生まれ川口育ちの「移民2世」
「移民」と日本人
2024/3/8 17:25
https://www.sankei.com/article/20240308-LUTLMINZTNOZNGADECZPNB3CGY/
女子中学生に性的暴行をしたとして埼玉県警川口署に逮捕されたトルコ国籍で自称解体工の男(20)が、難民認定申請中で仮放免中だったことが2024年3月8日、同署の調べで分かった。
男はトルコ生まれ日本育ちの在日クルド人で、事実上の
「移民2世」
という。
調べによると、男は2024年1月13日午後10時半頃、川口市内のコンビニ駐車場に止めた乗用車内で、東京都内の10代の女子生徒に性的暴行をしたとして2024年3月7日、不同意性交などの容疑で逮捕された。
同署によると、男は先に来日していた父親を頼って幼少期に来日し、地元の小中学校に通っていた。
卒業後は家業の解体業を手伝っていたと供述している。
男は父親と共に難民認定申請中で、入管施設への収容を一時的に解かれた仮放免中だった。
自宅はさいたま市内だが、川口市北部の隣接地域だった。
男は自身の運転する車で、SNS(交流サイト)を通じて知り合った都内の女子中学生らや、日本人男性らとドライブに行くことになった。
女子生徒らは横浜方面に向かうと考えていたが、車は都内から川口市内へ直行。
女子生徒らは車内でスマホを使ってやり取りして逃げ出そうとしたが、犯行現場のコンビニ近くで降ろされ、被害にあった女子生徒だけが車に残されたという。
男は
「日本人女性と遊んだが暴行はしていません」
と容疑を否認。
同署はトルコ語の通訳を介しながら調べを進めている。
川口市内では近年、一部クルド人と地域住民との軋轢が表面化。
「2世」
とみられる若者らによる車の暴走行為や煽り運転も問題となっている。

中学生に性的暴行したクルド人は難民申請中だった 地元市議は「実態を正しく直視するべき」
2024年4月5日
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/04050558/?all=1
埼玉・川口市でクルド人男性が不同意性交容疑で逮捕された。
女子中学生に性的暴行をした疑いである。
実はこの男性、難民申請中だった。
悲劇の主人公のはずの
「難民」
が他人を悲劇に追いやる、その実態とは。
 ***
報道等によると、2024年3月7日に逮捕されたのはさいたま市に住むハスギュル・アッバス容疑者。
トルコ国籍の20歳、解体工だという。
事件があったのは2024年1月13日のことだ。
アッバスは都内の女子中学生とSNSで知り合い、複数人でドライブ。
2人きりになった後、川口市内のコンビニの駐車場に停車し、車内で犯行に及んだ。
行為の時間は約6分。
粗暴極まりない事件である。
川口市とその周辺でクルド系の住民と地元住民との間に軋轢が生じているのは周知の通り。
■市議も「不安に思う市民が増えている」
2023年7月4日は男女の揉め事で怪我をしたクルド人男性が川口市立医療センターに運び込まれ、それを巡ってクルド人が100人ほど病院に集結。
一時、救急搬送の受け入れが停止されるという大騒動が起きた。
「不安に思う市民が増えていると感じます」
とは、川口市議の奥富精一氏。
「これまでも一部のクルド人が改造車で危険運転や違法駐車をしたり、あるいは喧嘩をしたりという事例が見られてきました」
2023年6月には市議会で
「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」
が採択されている。
「そこにきて今回の事件ですから、市民の不安が益々増したとしても不思議ではありません」
■クルド人増加の背景事情
クルド人とは、中東のトルコやイラン、イラク、シリアなどの国境地帯に住む「国を持たない民族」。
川口は彼らが集住する地域として知られ、現在、2000人以上が暮らしている。
「彼らは難民申請をしているケースが少なくない」
と言うのは、入管のさる関係者だ。
「トルコと日本は現在、短期滞在ならビザは必要ではありません」
「で、ノービザで入国し、滞在期限が切れるまでの間に難民申請を行うんです」
「すると、その審査期間中は強制送還が止められる」
「川口に来るクルド人の多くは、ある特定の地域の出身です」
「こうした仕組みで入った人たちが地元の親類縁者を呼び寄せ、数が増えていったんです」
今回の事件を起こしたアッバスも、先に日本に来た父を頼って幼少期に来日し、難民申請をした“移民2世”だという。
「実際、彼らが難民認定されることはほとんどありません」
「クルド人が母国で差別されているのは事実でしょう」
「が、難民条約が規定するように、自由が奪われたり、生活が著しく損なわれ、生命の危機が生じているかと言えば、そこまでとは認められないことが多い」
「申請期間中に日本で稼いで帰国するか、或いは子供が小中学校に長期間通うなどすれば、在留特別許可を貰えるかもしれない」
「クルド人増加にはこうした背景事情があります」
しかし、そうした入国経緯の者の中から凶悪犯が出れば、住民との摩擦が生じるのは当然の事だろう。
■グレる2世
この地域で長年、クルド人支援に携わってきた「在日クルド人と共に」理事の松澤秀延氏は、
「彼らも日本の社会に順応したいと思っていますが、日本側の拒否反応が強く、そこで絶望を感じてしまうことも多い」
と分析するが、
「今回の事件もそうですが、2世の中には学校に行かず、いわゆる“グレて”しまうケースも少なくない」
「この問題を指摘するとすぐ差別と言われますが、まずは実態を正しく直視することが重要だと思います」
(奥富市議)
多様性尊重――そんな建前だけでは語れない現実が、この川口には横たわっているのである。
週刊新潮 2024年4月4日号掲載

外国人・高齢者 活力維持へ重要 「育成就労」「特定技能」着実に…人口減抑制[読売新聞社提言<7>]
2024/4/26 5:01
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240425-OYT1T50222/
■労働者に「選ばれる国」
人口が減って生産年齢人口(15〜64歳)が先細っていく中、社会の活力を維持するためには、労働力の確保が欠かせない。
政府は今年、外国人技能実習制度に代わる新制度
「育成就労」
の創設を決めた。
掲げたのは
「人材の確保と育成」。
帰国を前提としていた技能実習制度から大きな転換を図った。
外国人労働者を中期的に受け入れる在留資格
「特定技能1号」
も、自動車運送業や鉄道などの4分野を追加して16分野に広げた。
日本で暮らす外国人は増えており、約340万人に上る。
労働者は2023年10月末時点で約204万人だ。
政府は、育成就労と特定技能を
「車の両輪」
として、労働力を補っていく。
他国も受け入れを進めており、獲得競争を勝ち抜くには
「選ばれる国」
にならなければならない。
外国人の受け入れは、主に出入国在留管理庁が担っているが、労働者を巡る政策は多くの省庁にまたがる。
農業や介護、建設など職種も幅広い。
業種ごとに必要な人数や求める人材を呼び込むには、一元的に誘致していく必要がある。
その司令塔として、政府に
「誘致戦略本部」
を創設すべきだ。
制度を着実に進めていくため、自治体や地域住民にも配慮しながら、外国人との共生に向けた戦略を策定する。
育成就労では3年間働いた後、在留期間が5年の特定技能1号、永住が事実上可能な2号を段階的に取得してもらうことを目指す。
外国人の受け入れ先は主に地方の中小企業で、自力での育成には限界がある。
自治体の支援が欠かせない。
広島県は2023年、2号取得を目指す外国人を雇う企業に、最大300万円を補助する事業を始めた。
尾道市の
「因島鉄工」
はこの事業を使い、造船・舶用工業分野で全国初の合格者を出した。
その一人、ベトナム人のファン・ヴァン・マインさん(35)は
「将来は奥さんを連れてきて、ここでずっと働きたい」
と語る。
同社では試験対策として日本語講師を雇い、技能向上のための模擬試験を実施。
外国人向けの寮も整備した。
人材を繋ぎ止めるには、異国の地で働く外国人が暮らしやすく、文化に馴染める工夫も求められる。
■フレイル対策
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、2020年に7000万人超だった生産年齢人口は、2100年に3200万人に減る。
人手不足を補うため高齢者の力も必要だ。
内閣府の調査では、仕事で収入を得ている60歳以上の9割が、「いつまでも」を含め、70歳以上になっても働きたいと回答している。
企業は、技術や経験を持つ高齢者を積極的に受け入れるべきだ。
2040年には医療・介護人材が100万人近く不足するとされ、介護が必要な高齢者を少しでも減らしたい。
要介護一歩手前の状態「フレイル」の高齢者が対策を取った場合、5年後に15%が改善し、35%が状態を維持したという調査もある。
予防には食事や運動、就労といった心身の充実がカギを握る。

「共生」ではなく「統合」が必要だ
正論2024年7月号 評論家 三浦小太郎
本稿では、まず戦後の日本における外国人の受け入れ政策の歴史を簡単に辿り、私が実際に接した外国人を巡るいくつかのケースを示した上で日本が今後、受け入れを行う場合に考えるべき
「思想的原則」
を述べる。
尚、本稿で私は
「移民」
という言葉を原則として使わない。
日本政府はこれまで、我が国の外国人労働者の受け入れについて、あくまで一定の期間に限定した、専門的、技術的分野の労働者の受け入れであって、我が国への定住を目指す
「移民政策」
は採っていないと一貫して述べてきた。
しかし現実には、一定期間就労した労働者が長期滞在や定住を継続して求める可能性は極めて高く、こうした線引き自体、外国人受け入れ策について移民政策か否かと議論することと同様余り意味がないと思えるからだ。
大東亜戦争の敗戦後、日本には約200万人に及ぶ朝鮮半島出身者が存在した。
敗戦までは
「日本国民」
だった彼らを単純に外国人問題と捉えることには無理がある。
ただ、歴史的教訓とすべきことは、在日朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)という北朝鮮に従属する組織の存在を事実上容認してしまった点で、我が国に禍根をもたらした。
これは後述する。
日本の外国人受け入れの大きな転機となったのは1970年代後半のベトナム難民の受け入れと1979年の国際人権条約、1981年の難民条約の批准である。
戦争と革命の世紀であった20世紀に、国境を越えた難民、移民の権利を守るために打ち立てられた理念の1つが、条約にある内外人平等待遇、即ち自国民に与えるものと同等の待遇を外国人にも保障するという原則である。
この原則に基づき、1948年に国連で採択された世界人権宣言では
「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身」
による差別を否定し全ての人が
「社会の一員として、社会保障を受ける権利」(第22条)
を持つと見做した。
更に1966年に採択された国際人権規約には
「社会的及び文化的権利に関する国際規約」
として
「国民若しくは社会的出身による差別」
の撤廃が記されている。
難民条約にも、第23条で公的扶助を難民に対し自国民と平等待遇とするような条文が存在することは外国人受け入れにおいてまず議論の前提にならなければならない。
1989年には出入国管理法が改正される。
この法律は現在に至るまで日本政府の外国人受け入れの基準を定めたもので
@不法就労、不正規滞在の取り締まり
A専門・技術職の受け入れ拡大
B技能実習制度の先駆けとなった「企業研修」制度による在留資格
が特徴だ。
在留に期限と資格を設けて外国人を受け入れるという原則を掲げたものである。
当時の時代背景を説明すると、1985年のプラザ合意以後、円高によって外国人労働者が日本で働くメリットを感じ、出稼ぎ労働者として日本に流入していた。
「3K」
と言われた
「きつい」「汚い」「危険」
な職場に不法就労や資格外活動といった劣悪な労働条件の下で単純労働を課されるという実態が横行していた。
2012年には高度人材ポイント制度が導入された。
これは
「高度」
な学術研究、専門技術、経営管理などに従事している外国人に対し、学歴、職歴、年収などについてそれぞれポイントを設け、合計が70点に達した場合は優遇措置として配偶者の就労、永住許可申請に必要な居住年数の短縮など様々な優遇措置が設けられた。
2023年には更に拡充された特別高度人材制度が導入された。
高度人材として滞在する外国人の数は、2022年度の段階で1万8315人におり、うち63.9%が中国である。
次いでインド5.7%、韓国4.4%、アメリカ4.1%、台湾3.2%と続く。
(出入国在留管理庁資料より http://www.moj.go.jp/isa/content/930003527.pdf)
日本の高度先端技術の分野に迎え入れられている外国人の6割以上が中国人であるという現実は、安全保障上も注意が必要である。
2018年に行われた出入国管理法改正では、更に新たな在留資格として
「特定技能」
が設立された。
日本の産業を支える業種のうち、@介護AビルクリーニングB素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業C建設D造船・舶用工業E自動車整備F航空G宿泊H農業I漁業J飲食料品製造業K外食業など人手不足業界と列挙した上で
「特定技能1号」
「特定技能2号」
の2種類の在留資格を認める制度である。
これまでの在留資格はいずれも国際貢献を目的にしていたが、初めて明確に人手不足の中で業態維持のために外国人を受け入れると掲げた。
2024年3月29日には自動車運送、鉄道、繊維、林業などの業界が追加された。
「特定技能2号」
はより熟練した労働者で日本語にも長け、在留期限は無制限とし、家族の帯同も許可される。
本来日本が公的には認めていないはずの単純労働者の受け入れが横行していたのが、日系ブラジル人など日系人の受け入れと、1993年から始まった技能実習制度、更には不法就労者だった。
技能実習制度は外国人が最長で5年間、働きながら技能を学ぶことで
「技術移転」
を行うことが目的であったが、現実には最低賃金を下回る額で厳しい労働条件下に置かれ、また、実習生が職場から失踪するなどの問題が相次いだ。
結果、政府の有識者会議の決定として、2023年の段階で現行制度を廃止し
「育成就労制度」
に変更、基本的に3年で一定の専門性や技能を持つ水準にまで育成し、受け入れ職種を、介護や建設、農業などの分野に限定することになった。
この技能実習は、外国人受け入れにおける本質的な問題が露呈した例である。
実習生の受け入れ目的が技術移転という国際貢献であっても、実際に受け入れる企業の立場からすれば、現場で作業をする労働者とは本来雇用関係にあり、企業に利益をもたらす存在でなければならない。
国家の方針にどんな理想論が掲げられようと、それが実践されるのはあくまで現場なのだ。
実習生たちを送り出す国側も、的確な制度の下に行っている場合もあれば、国によってはブローカーまがいの組織が高額な借金を課す形で日本へ送り出すケースもある。
私はある外国人が日本における就労ビザのために100万円以上を必要としたと聞いたことがある。
良心的で法に則った受け入れと技能研修を行ってきた企業や組織の名誉のためにも、送り出し国側の諸問題は日本の受け入れの在り方と共に抜本的に解決されなければならない。
更に不法就労者たちの存在は、日本の治安の脅威となるだけでなく、何らの法的保護も設けられない彼ら自身の人権問題として深刻な事態を引き起こしかねない。
以上に見られるように、日本政府は
「移民政策」
という言葉を否定はしてきたが、事実上外国人労働者の受け入れを継続して行ってきた。
そして、ほとんどの決定は閣議決定でなされ、国会においても政府与党内においてもそれ以後、十分な審議が尽くされたとは言い難い。
仮に審議が尽くされたとしても
「少子化の実情から外国人受け入れは日本経済のために必要である」
という、政府や企業の多数派によって疑われることのない命題に沿った結論(及びリベラル側からの多文化共生と差別反対がこれを補強する)しか生まれないのではないだろうか。
私たちはこの命題自体を再検討すべき時に来ている。
そのために参考になる文献の1つは、自身もキューバからの移民である経済学者、ジョージ・ボージャスが著した『移民の政治経済学』(白水社、2017年)である。
■単なる労働力ではなく『人間』
まずボージャスは、移民=外国人労働者は、
「人間」
であって
「労働者」
「労働力」
といった抽象的な存在ではないことを常に強調する。
彼らは自らの意志で行動し、受け入れ国にロボットのように使われ、必要がなくなれば処分されるような存在ではない。
外国人労働者を受け入れることは、彼らの社会福祉や人権を当然守ることを前提とする。
これは先述した国連の規定からも明らかだ。
同時にボージャスは、人類の歴史において、移民受け入れは受け入れ国にとって経済的利益がある場合のみ行われ、そうでない場合には国境は閉ざされたという歴史的事実を確認している。
この両面が外国人受け入れを考える上では必要な姿勢なのだ。
ボージャスは移民のもたらす経済的利益を一概に否定しているのではない。
移民が労働人口に参加すれば、確かに富は移民と競合する立場にある労働者から、移民を使う側の経営者に移転される。
移民が労働市場に入ることで、労働者の賃金は低下するが、この賃金減少分は、人件費を節約できた企業の利益となる。
これを
「移民余剰」
という。
この
「移民余剰」
によって受け入れ国全体の富は確かに増加するが、それは同時に自国の労働者にとっては富を失うことである。
ボージャスの指摘は更に付加すれば、企業が設備投資などの生産性向上よりも、安価な外国人労働者を雇うという安易な選択を行い、本来は社会的に改革すべき低生産性の工程・部門が国内に残存してしまう。
またボージャスは移民余剰の利益は、先進福祉国家では、移民への社会保障費によってほぼ相殺されると述べている。
短期的には移民は経済的のみならず、社会的、政治的、経済的に負の影響をもたらす可能性が高い。
そしてボージャスは現代のアメリカに対し
「1100万人もの書類不所持移民を入国させているような穴だらけの国境」
の現状のままでは、移民政策を論議すること自体が無意味だと断定する。
尚、不法移民の取り締まりのためには、ボージャスは国境封鎖よりも不法就労者を雇用する雇用主への処罰の厳格化を求めている。
更に中東からの難民にも触れ、自身の体験から深い同情を持ちつつ
「我々は現実的でなければならない」
「難民の中には少数だが恨みや争いを持ち込み、それを受け入れ国で晴らそうと思う人々がいる」
「また、受け入れ国の社会と政治の安定を揺るがす恐れのある文化的慣習を持ち込む人もいる」
「移民政策は益々(難民であろうがなかろうが)移民が単なる労働職以上のものを持ち込む存在であることを考慮に入れなければならなくなるだろう」
(『移民の政治経済学』)
と警鐘を鳴らす。
■脱北者の順法意識
ここで私のささやかな体験を述べておきたい。
私はある時期、北朝鮮から脱出して日本に入国した脱北者たちの定着支援に関わっていた。
日本は、1959年に始まった帰還事業により北朝鮮に渡った帰国者とその子孫に関しては、彼らが脱北後、希望した場合は歴史的経緯と人道的配慮で日本国に受け入れてきた。
その中には帰還事業の責任と国内の人権弾圧を告発して北朝鮮国家を訴えている人たちもおり、多くは無事日本社会に適応している。
しかし、私の接した脱北者の中には、日本の法律や制度を軽視する傾向もまた見られた。
脱北者は中国においても難民としての保護は受けられず、警察に見つかれば強制送還の運命が待っていた。
「違法状態」
に置かれ、しばしば中国人のブローカーに匿われてきた脱北者の中に、法律への軽視の意識が生まれてもやむをえまい。
しかしその結果、中国朝鮮族が脱北者に成りすました形で入国したり、脱北者自身がブローカーまがいの振る舞いを行うこともあった。
あるいは麻薬の売買に関与したり、偽パスポートによって偽装難民化したりした事例が、ごく少数とはいえ、散見されたことも事実である。
私は一部の例を持ち出して脱北者を受け入れてきたという人道的意義を否定したいのではない。
ただ、難民の性格を考え得る上で決して無視できない一面である。
今、埼玉県川口市で問題になっているクルド人問題も同様である。
2024年4月13日の産経ニュースの記事
「川口の仮放免者700人、初めて判明 大半はクルド人か 各自治体に情報提供へ運用見直し」
によれば、埼玉県川口市内には、現在、難民認定申請中で入管施設への収容を一時的に解かれた不法滞在状態の
「仮放免者」
が約700人存在している。
これは出入国在留管理庁のまとめた数字であり、大半はトルコ国籍のクルド人とみられる。
記事によれば
「仮放免者の情報はこれまで、本人が希望しない場合は当該自治体へ通知されず、自治体にとって実態把握が困難」
であったが、今後は
「自治体から要請があれば入管庁から仮放免者の情報が提供されるよう、入管難民法の運用を見直した」。
更に2024年6月10日の改正難民法施行以後は
「仮放免許可書」
の携帯を新たに義務付ける。
埼玉県川口市内では近年、クルド人と地元住民らの軋轢が表面化している。
「仮放免者」
の問題は、今の入管の病が凝縮しているとも言えるだろう。
厳正な法執行こそがまず必要であるにもかかわらず、それが出来ずにいる。
一方で外国人への門戸を広げることは際限がないのに、在留管理という我が国の外国人受け入れの原則は貫けずにいる。
本誌令和3年8月号でも論じたが、今回の改正入管法で難民申請中の送還停止は2回までが限界となり、申請3回目(もしくはそれ以上)の場合は送還の対象となる。
これは難民認定が却下された後も、ほとんど同一の資料で、何度も申請要求を繰り返し在留を引き延ばす行為への防止策だ。
私にも国家を持たぬクルド人の歴史に一定の同情はある。
ただ、敢えて言えば国家を持ち得なかったクルド人に、国家秩序や法意識への軽視が見られるならば、それは受け入れ国の保護を自ら放棄したことと同じ事なのだ。
■「国家」の在り方議論を
外国人の受け入れと文化的統合のモデルとしては、これまではアメリカ型の
「メルディング・ポット」(多様な人種、民族による文化が社会で溶け合い、新しい生活文化を形成する)
という概念が存在した。
しかしこの理念は本家アメリカにおいて、1960年代の公民権運動やブラック・パワーをはじめとする様々なマイノリティ運動の中で否定されていく。
人種のるつぼ理念とは、白人多数派の価値観への従属を強いるもので、各民族の文化を否定するものだと批判されたのだ。
次に生まれたのが多文化共生の理念で
「モザイク型」
の受け入れ理念として世界に広がった。
だが、多文化共生には大きな落とし穴がある。
それは現在普遍的な理念として受け入れられている、政教分離、男女平等、自由民主主義、反差別主義、人権擁護、また伝統を尊重した上での自由といった、西欧近代の生み出してきた最良の理念を相対化し、各民族文化の差異を強調することで、BLM(ブッラクライブズマター)に代表されるような激しい分離・対立を社会に招くことに繋がってしまったのだ。
白人の差別意識への批判が行き過ぎたアファーマティブ・アクション(マイノリティ優遇政策)を引き起こし、人権擁護が事実上の言論弾圧であるポリティカル・コレクトネス(社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策(または対策)などを表す言葉の総称であり、人種、信条、性別、体型などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を使用することを指す)として猛威を振るい、表現の自由をも脅かしている。
少数派の文化が時として普遍的な自由や平等の価値観に反する場合にそれは無条件で肯定すべきなのか。
イスラム教における
「名誉殺人」
(婚姻拒否、強姦を含む婚前・婚外交渉、「誤った」男性との結婚・駆け落ちなど自由恋愛をした女性、更には、これを手伝った女性らを「家族の名誉を汚す」ものと見なし、親族がその名誉を守るために私刑として殺害する風習のことである)
(射殺、刺殺、石打ち、焼殺、窒息が多く、現代では人権や倫理的な客観から人道的問題としても議論される)
(一部の文化圏では父や夫以外の男性と同空間滞在(非隔離)した女性や同性愛者が対象となったとされる)
(殺害被害者は多くは女性であり、男性の場合は同性愛者の場合が多いが、異性愛の男性が殺される事件も稀にある)
(「名誉殺人」とも言う)
(イスラム教が盛んな地域で主に行われているため、その宗教や文化と関連付けられて語られることが多い)
(しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチの責任者の1人であるウィドニー・ブラウンは、この犯罪について「文化や宗教を超えて行われる」と警鐘を鳴らしている)
やかつてインドで存在した寡婦が夫を追って焼身自殺する儀式(サティー)を私たちの社会で認めることなどできまい。
そして我が日本では、朝鮮総連の存在が
「在日朝鮮人の人権組織」
と見做され、このことが事実上国内での工作活動や犯罪を看過することに繋がった。
今、新たなモデルとして生まれているのは
「市民的統合」
である。
これは外国人が、受け入れ国の言語、歴史、自由民主主義の価値観について教育によって受け入れ、身に付ける形で統合を目指すやり方である。
これはオランダが最初に打ち出し、1998年、オランダ語習得や市民教育などの
「統合コース」
への参加が移民に義務付けられた。
その後、この統合システムはヨーロッパに拡大している。
私はこのモデルを応用することが日本の今後に最も相応しいと思うが、ここで敢えて
「国民統合」
という言葉を使いたい。
「国民統合」
とは、自由民主主義と政教分離といった現在国際社会で通用する普遍的価値観の許容や日本の文化伝統への一定の理解を外国人受け入れの前提とすることである。
このシステムは難民や準難民に対しても適応される。
受け入れた外国人を外国人と見てその文化を尊重する共生政策とは異なり、
「日本国民」
と同等に扱う同化主義に近いが、それは普遍性への同化と、今後在住する日本国の文化への理解を求めることだ。
もちろん、その原則の上でも各民族文化への尊重は同時に可能なはずであり、そのバランスを取ることこそが、元々寛容な姿勢で多文化を(西欧の近代主義も含めて)受け入れてきた日本の伝統である。
最後に、私は前述した人権規約や難民条約における、内外人平等待遇の原則を、今、国際社会は見直すべき時に来ていると考える。
難民や移民を保護してその権利を守ろうとする精神は何ら間違ってはいない。
だが、特に近年の欧州における難民・移民の現状を見る時、かつての
「迫害する国家から脱出した難民を守る」
という理念と同様に
「難民(及びそれと判別し難い大量難民)から、既存の国家や社会の秩序を守る」
こともまた重要な時代に私たちは生きているのだ。
社会秩序や安全保障の問題、ひいては国家とは何かという理念の問題まで拡大して議論することが、国会でも民間でもまず必要である。

川口の仮放免者700人、初めて判明 大半はクルド人か 各自治体に情報提供へ運用見直し
「移民」と日本人
2024/4/13 19:14
https://www.sankei.com/article/20240413-EBG6TISPPRGJTEK7FDFWV7C2FE/
日本語、トルコ語、クルド語で「公園内で、夜に大きな声や音を出してはいけません」「ごみはきちんと持ち帰りましょう」と呼びかける看板=埼玉県川口市
https://www.sankei.com/article/20240413-EBG6TISPPRGJTEK7FDFWV7C2FE/photo/JESUUVVFENF75H7HMVM5MJDCNY/
難民認定申請中で入管施設への収容を一時的に解かれた不法滞在状態の
「仮放免者」
が、埼玉県川口市内に700人程度いることが2024年4月13日、出入国在留管理庁のまとめで分かった。
大半はトルコの少数民族クルド人とみられる。
仮放免者の情報はこれまで、本人が希望しない場合は当該自治体へ通知されず、自治体にとって実態把握が困難だった。
このため、自治体から要請があれば入管庁から仮放免者の情報が提供されるよう、入管難民法の運用を見直した。
また、2024年6月10日施行の改正入管難民法では、仮放免者に
「仮放免許可書」
の携帯を新たに義務付け、携帯しやすいよう、許可書の大きさを従来のA4判からカード大のサイズに変更するという。
川口市内では近年、クルド人と地元住民らの軋轢が表面化している。
この日、市内で国会議員らが
「一部の外国人による迷惑行為のある地区」
を視察。
その後に市や市議、入管庁との意見交換会が開かれ、終了後に参加者らが報道陣に明らかにした。
入管庁によると、仮放免者数は日々変動するが、直近では川口市内に約700人おり、大半はトルコ国籍という。
同市内にはトルコ国籍の正規の在留者が約1300人おり、トルコ人も含め、合わせて約2000人となる。
強制退去処分が出ながら送還を拒む不法滞在状態の
「送還忌避者」
は、令和3年末時点で3224人。
このうち半数に当たる1629人は難民申請中で送還が停止されていた。
送還忌避者は令和4年末時点では4233人まで増えた。
改正法施行後は、難民認定申請中の強制送還停止が原則2回までに制限され、仮放免者の数も減ることが想定されている。

きっと再燃する外国人参政権問題
正論2024年7月号 日本政策研究センター 岡田邦宏
我が国の外国人政策が大転換しようとしている。
今、国会に提出されている法案(出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案など)は、出身国への技術移転など国際貢献を建前とした現在の
「外国人技能実習」
制度を廃止し、人手不足を補うことを正面に掲げた
「育成就労」
制度、つまり外国人労働者を労働力として位置付け導入する制度へと転換することが眼目となっている。
この
「育成就労」
資格で3年の在留期間を経て技能や日本語能力が育成されたとなると在留資格が
「特定技能1号」
となり、更に次の段階として熟練技能が求められる
「特定技能2号」
の試験に合格すれば永住資格の取得も家族呼び寄せも可能となる。
また、これまでの技能実習制度では原則認められていなかった実習先の転籍が、新制度では1つの職場で1年を超えて働いた場合、条件付きで認められることとなる。
こうして
「育成就労」
資格で3年の在留期間を経て在留資格が
「特定技能」
となった場合も、外国人が働くことのできる職種が従来の14業種に自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野が追加されることが決定している。
近い将来、水産加工や製造業、農作業だけでなくバス・タクシーの運転手や鉄道の駅員として外国人が働く姿を見ることとなる。
まさに、外国人政策の大転換と言えるが、この転換がもたらすものは何か。
人手不足が幾分か解消されるというだけの単純な話ではない。
朝日新聞は
「未熟練労働者として入国した人たちに中長期のキャリアパスを示し、将来的な定住への道筋が見えるようにした」(2023年10月20日・社説)
と評価したが、外国人労働者の定住を促進するかのような政策変更と言える。
我が国の外国人政策は在留期限と在留資格を限定して在留を許可する
「在留管理」
が原則で、期限が切れると在留できなくなる制度のはずだったが、今回の政策転換が定住を前提とまで言わないが、定住を促進する、移民政策に転換するかのような内容と読めてしまうことは否定し難い。
■外国人が10%を超える日
問題は定住化だけではない。
既に日本人人口が急激に減少する一方、今回の政策転換以前から在留外国人は着実に増加する時代が始まっている。
2023年6月時点での在留外国人の総数は322万3856人(出入国在留管理庁)で過去最高となった。
そのうち外国人労働者は204万8675人(2023年10月末時点)で、前年から22万人余り増加し、初めて200万人を超えた。
政府は今回の政策転換によって5年間で82万人の外国人労働者の増加を見込んでいるというのだから、今回の法改正が外国人労働者の流入を加速させることは間違いあるまい。
このまま日本人人口が減少し、外国人人口の増加が続けばどうなるか。
国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研と略)による推計(2023年4月公表)では、今から45年後の2070年に日本の総人口は8700万人に減少し(2020年の国勢調査による1億2615万人から31%減)、その一方で在留外国人は939万人へと増加するとの推計を発表している。
つまり、総人口に占める外国人の比率が10.8%となり、現状の比率約2%と比べて約5倍、日本は10人に1人が外国人という人口推計となると予測されている。
しかも、既にその時期が45年後の2070年よりかなり早く前倒しされる可能性すら指摘されている。
入管庁の発表によると外国人の入国者数から出国者数を引いた
「入国超過」、
つまり外国人の増加数は2023年9月までの1年間で24万人と前年同時期を5万人も上回っていた。
実は、先の社人研による外国人人口推計は毎年16.4万人の入超を想定した推計だったが、現実には既にその1.5倍も増加している。
この増加傾向が続けば外国人人口比率10%は2070年より10年、20年早まるのは確実と言える。
ちなみに外国人比率10%と言えば、ヨーロッパではドイツ(19%)には及ばないが、イタリア(11%)とほぼ同率、フランス(13%)やイギリス(14%)に近い数字と言える。
これらの国々では移民問題が国政上の大問題となっているが、外国人労働者を移民とは呼ばない我が国においても、本格的な
「外国人政策」
が論じられねばならない時代がやって来ていることは確かである。
■抜け落ちた地方への視点
外国人政策は、出入国管理が国家の主権に係わり、労働政策を含めて出入国や在留、帰化などの制度も基本的に国政マターであり、今回の政策転換を行った背景となったのも外国人材受け入れ・共生に関する関係閣僚会議の報告書
「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」
と言える。
そこで何が掲げられているのかと言うと、
「外国人も社会の一員として包摂する安全・安心な社会」
「外国人を含む全ての人の社会参加」
「個人の尊厳と人権を尊重した社会」
の3つのビジョンを挙げ、外国人との共生社会を目指そうという構想である。
このロードマップに掲げられた共生のビジョンを真っ向から否定しようとは思わないが、その実現性に疑問を持たざるを得ないというのが率直な感想と言える。
というのも、外国人人口の増加、定住化の波に直面するのは
「地方」
なのだが、このロードマップにはその
「地方」
への視点が見当たらないというかすっぽり抜け落ちていると言わざるを得ないからである。
外国人は日本で働くために入国し在留しているが、単なる労働力として位置付けるだけで済む問題ではない。
「我々は労働力を呼んだが、やって来たのは人間だった」
というスイス人の言葉があるように、職場での労働環境、年金・健康保険、子供の保育・学校教育、本人と家族の日本語教育、更には生活保護を含めた生活環境の整備が必要とされることは言うまでもない。
そうした課題や問題に実際に直面するのは中央官庁ではなく地方自治体である市町村だが、自治体財政や人的問題への言及は余りに少ない。
そうした地方との連携が余りに希薄で、
「外国人との共生」
だけが独り歩きしているように読めてしまうというのが筆者の感想である。
■その先に外国人参政権
先に挙げた行政対応など財政的・人的問題はクリア可能だとしても、もっと深刻な問題がある。
ロードマップが外国人を
「日本社会を共に作る一員」
と位置付け、外国人の
「個人の尊厳と人権」
が尊重される社会を目指すことを強調している。
しかし、外国人の
「個人の尊厳と人権」
を強調すれするほど、その先には
「外国人参政権」
という議論が待ち構えていることは間違いない。
そもそも参政権(選挙権・被選挙権)は国民が自国の政治に参加する権利であり、外国人には与えられていない。
少し説明すると、平成7(1995)年の最高裁判決は概略次のように外国人の地方参政権を否定している。
憲法15条1項は公務員の選定罷免権は
「国民固有の権利」
と規定し、その
「国民」
とは憲法が規定する国民主権の原理における国民、つまり我が国の国籍を有する者を意味することは明らかで、そうした性質上、地方選挙であっても在留する外国人には及ばない。
また
「住民」
についても
「憲法第93条2項に言う『住民』とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当」
とも判示した。
その意味で外国人の参政権問題はこの最高裁判決で決着が着いていると言えるが、近年、当時とは違う事情が生じてきていることに留意したい。
平成7(1995)年の最高裁判決当時は憲法学者の間でも外国人の参政権は憲法上保障されないとする全面否認説(禁止説)が有力であったが、最近では国政レベルにおいて外国人の参政権は認められないが、地方自治体レベルの参政権は、外国人に認めても憲法違反にはならないとする学説(許容説)が有力となっているからである。
例えば、芦部信喜・高橋和之『憲法』(第7版)は、
「狭義の参政権(選挙権・被選挙権)は外国人には及ばない」
「しかし、地方自治体、特に市町村という住民の生活に最も密接した地方自治体のレベルにおける選挙権は、永住資格を有する定住外国人に認めることもできる、と解すべきであろう」
としており、樋口陽一『憲法』(第4版)も
「(外国人の)地域社会構成員としての性格に着目して、地方自治体の選挙につきそれらを認めることは、一般的に言って、違憲の問題を生じないと解することができよう」
と解釈している。
こうした憲法解釈を読めば、外国人を
「日本社会を共に作る一員」
と位置付けるロードマップのロジックと類似していることが分かる。
外国人の
「個人の尊厳と人権」
が尊重される社会を目指すという方向性は外国人地方参政権許容説と重なると言えよう。
尚、この他に憲法学者の中には憲法が外国人参政権を要請しているとの学説もあるがここでは省略する。
今現在、具体的に外国人参政権要求が叫ばれているわけではない。
しかし、近い将来、新たな参政権要求が提起された場合、最高裁判決当時(平成7年、1995年)とは学説状況が変わっていることを考えれば、従来の最高裁判決が維持できるのかどうか、不安なしとは言えない。
今の政府の閣僚会議が最高裁判決を超えて外国人参政権の議論を報告書に書くことはあり得ないが、関係閣僚会議のロードマップが外国人を
「日本社会を共に作る一員」
とし、外国人の
「個人の尊厳と人権」
の尊重を提言したことが、参政権議論の中で許容説の布石となることは十分にあり得るように思える。
■急増する10%超の市町村
参政権問題では、こうした憲法解釈とは別に外国人人口の増加によって市町村単位で深刻な問題が持ち上がることが予想される。
前提となる解説をさせて頂くと、先に外国人の人口比率が10%を超える時代が到来すると書いたが、この10%はその時の総人口の分母とし全外国人を分子とした比率、言わば全国平均であって、これを個別の市町村で見ると事情が大きく変わってくる。
4年前2020年の国勢調査では、外国人比率が10%を超えている市町村は10自治体程度しかなかったが、外国人人口の増加傾向を踏まえて5年後10年後に10%を超える市町村がどれほど増えるだろうか。
実は将来の市町村ごとの外国人人口は推計されていない。
ただ、社人研は毎年の全国レベルの外国人人口の
「入超」(増加)
分を16.4万人として計算しているので、この増加分を既知の国勢調査(2020年)の市町村別の外国人人口のシェアに基づいて年ごとに市町村に加算する方法で計算してみると、個別の市町村の数字は正確ではないにしても、ある程度のトレンドを知ることができる。
全体の傾向として言えることは、今から6年後の2030年になると、外国人比率が10%を超える市町村の数は40〜50と急増し、しかも分母となる日本人人口が少なくて外国人人口が多い現在の10%越えの市町村とは違って、地方では製造業の大規模工場や工場団地周辺の小都市、都市部では大阪や東京の一部の区に加えて名古屋市や神戸市の一部の区も、埼玉県川口市など特定の国の外国人が集中する自治体も10%を超えるという傾向が読み取れる。
このままの傾向が更に次の10年も続けば、10%超の自治体は100近くになる可能性がある。
また、10%超の予備軍とも言える外国人比率7〜9%の市町村は4年前2020年の国勢調査時には26しかなかったが、2030年の段階で既に倍増するとの傾向が窺える。
■地方政治を左右する勢力に
こうした外国人人口の急増は、仮に外国人に選挙権が与えられたとすれば、地方政治に大きな影響をもたらすこととなる。
人口10万人規模の市では市会議員は1200票程度で当選している(定数25〜30)。
その市の外国人人口比率が10%の場合、有権者数や投票率を考慮しない粗っぽい計算だが、複数の議員を外国人だけで当選させられる。
人口20万人の市と言えば地域の中心的な自治体だが、市議は1400票〜1500票で当選している。
ここでも外国人の人口比率が10%を超えていれば、更に複数の議員が当選可能と言える。
そうなれば外国人の政治集団ができると言えよう。
在留外国人からすれば、人口の一定比率を占めながら(ここでは仮に10%としたがそれ未満でも問題の性質は変わらない)、自分たちの代表を持てないのは、
「個人の尊厳と人権を尊重した社会」
というロードマップの共生ビジョンに反する、まさに人権が損なわれているという問題意識が生まれても何ら不思議ではない。
日本人の側にも、こうした外国人の政治パワーを利用しようと地方参政権の獲得を掲げる政治勢力も出てこよう。
かつて民主党政権は2009年の総選挙での民団(在日本大韓民国民団)の選挙支援と引き換えに外国人地方参政権法案を当時の小沢一郎幹事長が主導して提出しようとしたことがあった。
外国人労働者問題の専門家の中には参政権など当然だと主張する向きもある。
宮島喬(みやじまたかし)お茶の水女子大学名誉教授は
「(外国人労働者は)住民として国や自治体から様々なサービスを受ける権利を持ち、またサービスを受けるだけでなく、参加する権利、つまり地域の諸組織に参加したり、地域政治に参加する権利も認められるべきでしょう(住民投票、地方議員・首長の選挙に参加したり、請求権などを行使したりする権利)」
と主張している(岩波ブックレット『新版外国人労働者受け入れを問う』)。
今後、子弟の教育など外国人の生活に係わるテーマが地方選挙の争点となった場合、選挙権が認められていないことが問題視されることは十分に考えられよう。
こうした状況の背景にあるのは、これまで日本人が経験したことのない外国人の増加であることは間違いない。
にもかかわらず、先のロードマップは、こうした地方に係わる深刻な問題について問題意識がすっぽり抜け落ちていると言わざるを得ない。
■「国益の原則」忘れるな
そもそも外国人政策の原則とは如何なるものなのか。
外国人の政治的自由と在留許可を国が制限できるかが問題となったマクリーン事件において最高裁は、余り注目されなていない論点だが、法務大臣の任務についてこう判示している「昭和53(1978)年10月4日」。
「法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたっては、外国人に対する出入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立って、申請者の申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・経済・杜会等の諾事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情をしんしやくし、時宜に応じた的確な判断をしなければならない」
この判決で注目すべきは
「出入国の管理及び在留の規制」

「国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定など」

「国益の保持」
を目的としている点にある。
外国人政策は
「国益」
が原則だということである。
外国人労働者を受け入れる究極の目的は我が国経済に寄与してもらうためであることを考えれば、当然とも言える。
現在の外国人政策もこうした
「国益の原則」
に沿って、ここまで取り上げてきた地方の観点だけでなく、様々な観点から外国人政策がデメリットを含めて論じられ捉え直されるべきであろう。
外国人に係わる治安問題は国民の関心事だが、そうした問題指摘はロードマップには余りにも少ない。
経済的観点からは外国人労働者の受け入れの経済効果について、経済界は人手不足だけを強調するが、外国人労働者の受け入れにはどんなデメリットがあるのかも論じられるべきであろう。
また安全保障という観点からも検討が必須である。
中国の国防動員法は中国政府が有事を認定すれば日本在住の中国人も動員対象となる。
我が国に在留する外国人約342万人のうち、中国人は約82万人で最大勢力である。
外国人の4人に1人が中国人という現実を踏まえれば、中国の国防動員法は、それが実際に在留中国人に適用されるかどうかは別として、日本の外国人政策にとって検討されるべき大問題と言える。
こうして見ると、外国人との共生を目指すと言っているだけで問題が解決できるかのように思える、そんな時代では既にないことは確かと言えよう。

郷に入って「郷に従わん」外国人
直球&曲球 宮嶋茂樹
2024/5/9 10:00
https://www.sankei.com/article/20240509-H4LOHB4JIROYBC6FPXFOHBKM7Y/
日本経済が低調なのは
「外国人嫌いで、移民を望んでいないためだ」
やて?
いやいや、バイデン米大統領、言葉は正確に伝えんとアカンわ。
多くの日本人が嫌いなんは、日本に来ても日本の文化や伝統、ルールを尊重せず、皇室を敬愛するどころか敵視するような外国人のことや。
日本人もどないかしとるで。
政・官・財・民、挙げて
「インバウンド」
景気やと歓迎して、いちびっとるけど、日本に来る観光客や定住外国人は、当たり前のことやけど、善意の人≠ホかりやないんやで。
最初から転売目的で爆買い≠オたり、白タクで荒稼ぎしたりしとる外国人も後を絶たん。
オーバーツーリズム
(とある地域を訪れる人が急増したことにより様々な問題が発生し、その地に暮らす人々や自然環境、生態系、景観などに悪影響を及ぼしている状況のこと。日本では「観光公害」とも呼ばれており、県や市といった全体で起きるものではなく、「〇〇市の橋周辺」や「春の〇〇府の寺院」など、特定の場所や季節、時間に起きるものを指す言葉)
の弊害も深刻や。
そこで暮らしとる日本人が多大な不便や迷惑を強いられとる。
東京や大阪じゃ日本人が泊まれるホテルを探すだけで一苦労や。
富士山もゴミだらけやんけ。
これほど外国人観光客が日本に押し寄せる理由は色々ある。
メシがうまいし、安い。
種類も豊富や。
治安もエエし、皆が皆とは言わんけど、まぁ日本人は外国人に親切や。
しかし、一番の原因は昨今の円安やろ。
円安=日本が安う見られとるというこっちゃ。
ハワイやヨーロッパは無理やけど
「円安」
の日本やったらいけるわ、とな。
それでも、ワシは何もやみくもに外国人の観光客や定住者を締め出せ、と言うとるわけやないんや。
困っとるんは、日本に来てまで犯罪まがいのことをやったり、日本の法令に反する自分らの風習を認めろ、と叫んだり、日本を理解しようともしたりせん、外国人なのである。
海外の日本人を見てみい。
皆から嫌われんようにちゃんと努力しとる。
その国の慣習、ルールを尊重して気、遣っとる。
イスラム圏に行ったら、お祈りの時間は静かにしとるし、豚肉は食べんし、公の場では酒も飲まんようにしとる。
「郷に入れば郷に従え」
という、諺を知っとるからや。
その国の交通ルールから公共マナーまで、いくら日本人には理解不能でも尊重するで。
そんな日本人を
「外国人嫌い」
やて?
バイデン大統領、それはないで!

バイデン米大統領が同盟国を「外国人嫌い」と切り捨てた失言の背景
ポトマック通信
2024/5/9 7:00
https://www.sankei.com/article/20240509-MFUGY3GBRVNUJJQMQJDL5YUPEA/
バイデン米大統領は2024年5月1日、アジアや太平洋諸島系の支持者集会でこう述べた。
「米国経済が成長を続けるのはなぜか」
「理由は我々が移民を歓迎するからだ」
「なぜ中国は経済的に行き詰まっているのか」
「なぜ日本は困難な状況なのか」
「ロシア、インドはなぜか」
「理由は彼らが外国人嫌い(xenophobic)で、移民を望まないからだ」
人は異なる人種、言語、宗教、生活習慣の人々の存在に拒否感や嫌悪感を抱くもので、どの国も受容と葛藤の歴史を続けている。
私が驚いたのは、大統領の失言に慣れっこのはずの米メディアの反応だった。
「同盟国に否定的用語を使った意図は?」
との疑問だ。
バイデン氏がなぜ日印中露を一括りに
「外国人嫌い」
としたのか報道官の釈明を聞いても判然としない。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは社説で、米国の移民差別の事例を挙げて
「日本の友人たちがバイデン氏のコメントを受け流してくれることを願う」
と述べた。
流せなかったのか、日本政府は
「正確な理解に基づかず残念」
と申し入れをしたと聞く。
日印を軸に中露を牽制する政権のインド太平洋外交への影響を懸念する向きもあるというが、失言には本心や願望が表れることもある。
日本を権威主義陣営との橋渡し役とする新構想があるのかと想像した。

林官房長官、バイデン米大統領の「日本は外国人嫌い」 「正確な理解に基づかない発言」
2024/5/7 12:18
https://www.sankei.com/article/20240507-GHSI6VL6DRNXPNOBYGMUH7TUQU/
林芳正官房長官は2024年5月7日の記者会見で、バイデン米大統領が、日本経済が低調なのは外国人嫌いなためだと発言したことに関し
「日本の政策に対する正確な理解に基づかない発言で残念だ」
「米国には日本の考えや政策を改めて説明した」
と述べた。
2024年4月の岸田文雄首相の国賓待遇での訪米を踏まえ、
「日米関係はかつてなく強固であり、引き続き日米関係の一層の強化に取り組んでいきたい」
とも強調した。

バイデン氏の発言は「残念」 日本政府が米側に伝達
2024/5/4 16:01
https://www.sankei.com/article/20240504-UYFMDSHLXZKMPNKFYEN72HZNLA/
バイデン米大統領が日本経済が低調なのは
「外国人嫌いで、移民を望んでいないためだ」
と発言したことについて、日本政府は2024年5月3日までに
「正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」
と米側に伝達した。
関係者が明らかにした。
ホワイトハウスが公表した発言録によると、バイデン氏は2024年5月1日、ワシントンでの選挙資金集めイベントで、好調な米経済を支えているのは移民だと称賛し
「中国が経済面で停滞し、日本が問題を抱えているのは、ロシアやインドも同じで、外国人嫌いだからだ」
と語った。
ジャンピエール大統領報道官は2024年5月2日、バイデン氏の発言について
「移民が如何に米国を強くしているかについて話した」
と記者団に釈明した。
記者から日本との関係を悪化させるのではないかと問われると
「日本とは力強い関係がある」
とだけ答えた。(共同)

日本や中国の経済不調は「外国人嫌いのせい」 バイデン米大統領が集会で発言、移民を称賛
2024/5/2 18:35
https://www.sankei.com/article/20240502-HXPLHHHEO5LJ5LECJI6HHSVFW4/
バイデン米大統領は2024年5月1日、好調な米経済を支えているのは移民だと称賛した上で、日本や中国などの経済が低調なのは
「彼らが外国人嫌いで、移民を望んでいないためだ」
と発言した。
ワシントンでの選挙資金集めイベントで述べたと、ロイター通信が報じた。
2024年11月の大統領選で対決するトランプ前大統領の移民受け入れに消極的な姿勢を念頭に、バイデン氏は集会で
「移民こそが私たちを強くしてくれている」
と強調。
一方で
「中国が経済面で停滞し、日本が問題を抱えているのは、ロシアやインドも同じで、外国人嫌いだからだ」
との見方を示した。
国際通貨基金(IMF)が2024年4月に発表した2024年の経済成長率の見通しでは、米国は2.7%で日本は0.9%。
一方、中国は4.6%、インドは6.8%となっている。(共同)

育成就労決定 永住資格を厳格化 税金滞納で取り消し
産経新聞2024年2月10日
政府の関係閣僚会議は2024年2月9日、外国人の永住許可制度を適正化する政府方針を決定した。
外国人永住者を巡っては、税金を滞納する事例などが確認されており、悪質な場合は在留資格を取り消せるよう要件を見直す。
政府は2024年2月9日、技能実習制度の代わりに新たに外国人を受け入れる
「育成就労」
制度の方針を決定。
即戦力の外国人労働者を受け入れる在留資格を
「特定技能」
のうち、事実上永住できる特定技能2号への移行を促す同制度下では永住者の更なる増加が見込まれることから、悪質な外国人を排除する仕組みを整備する。
入管難民法は、永住資格の許可要件として素行の善良さなどを規定。
政府のガイドラインでは他に、納税義務の履行などを要件に挙げている。
一方、入管難民法で在留資格を取り消せるのは虚偽の申請で資格を得た場合などに限られ、税金や社会保険料の滞納を重ねても取り消されない。
関係者によると、永住資格取得後、納税などを拒むケースが複数、確認されている。
永住者は在留期限や活動に制限がない。
2023年6月末時点で約88万人で10年前から4割弱増加。
在留外国人の約3割を占める。

政府、外国人の「育成就労」新設方針 転籍1〜2年で可能 技能実習制度は廃止
2024/2/9 10:30
https://www.sankei.com/article/20240209-44RUQO4NEFNRPJT2WJRKPZ2X5Q/
政府の関係閣僚会議は2024年2月9日、技能実習制度の代わりに新たに外国人を受け入れる
「育成就労」
制度創設を柱とする政府方針を決定した。
技能実習制度では原則認められていなかった転籍(転職)を原則1年で認める一方、最長で2年間、転籍を制限できるとした。
政府は2024年3月にも国会に関連法案を提出する。
技能実習制度を巡っては劣悪な労働環境の影響で人権侵害事案などが発覚。
政府の有識者会議が昨年、公表した最終報告書は技能実習制度を廃止し、育成就労制度を創設。
育成就労期間が1年を超えるなどの条件を満たせば原則、転籍を認めるとしていた。
その後、地方から都市部に人材が流出する可能性があるなどの懸念を払拭するため、転籍に一定の制限をかける必要があると自民党の部会が提言。
政府方針は、当面、業界ごとに最長で2年まで転籍を制限できるとした。
転籍時の日本語能力は、最も易しい日本語能力試験「N5」レベルや、基本的な日本語を理解することができる「N4」レベルを設定する。
転籍要件の緩和に伴い、悪質な転籍ブローカーの介入を防ぐため、転籍の仲介状況を透明化するための体制を整備をする他、資格のない外国人を雇うことを禁じる不法就労助長罪の法定刑を引き上げる。
受け入れの仲介を担う監理団体は
「監理支援機関」
とし、外部監査人の設置を義務付ける。
新制度は、人材の育成だけでなく確保も目的とし、受け入れる分野を特定技能制度と揃える。
育成就労期間を終えて日本語と技能の試験に合格すれば、特定技能1号に移行できる。

欧州、難民は「外国に送れ」の新潮流 メローニ伊首相「モデルになる」と意欲満々 
緯度経度 三井美奈
2024/2/9 9:00
https://www.sankei.com/article/20240209-O2HOXT6SKVMYXM4VF7UMMMLY64/
移民流入に悩む欧州で、
「難民を第3国に送る」
という奇策が浮上した。
イタリアと英国が先導している。
イタリアの計画は2023年11月、メローニ首相が発表した。
地中海を渡ってくる不法移民を隣国アルバニアに送るという。
2024年春にもスタートし、年間3万6000人を見込んでいる。
「欧州のモデルになる」
と誇った。
計画によると、アルバニアの沿岸に受け入れ施設を造ってもらい、イタリアに移民船が来たら、上陸させずに施設に直送する。
施設ではイタリアの職員が難民審査を行い、周辺の警備はアルバニアが担う。
難民資格が得られなかった人は、イタリアの責任で送り返すことになっている。
イタリアには2023年、北アフリカから移民船で15万人以上が押し寄せた。
イタリア政府は欧州連合(EU)加盟国に
「分担して受け入れを」
と求めたが、応じてもらえない。
そこで、アルバニアに
「EU加盟を支援する」
と約束し、合意を取り付けた。
地元紙によると、経費は5年間で推計6億5000万ユーロ(約1030億円)。
全てイタリアが負担する。
金と手間をかけて、わざわざ移民を外国に送るのには訳がある。
欧州人権法では、1度入国させると追放は極めて難しい。
難民資格がない人も申請を繰り返し、
「子供や病人がいる」
と法廷で訴えれば、強制退去にブレーキがかかる。
そこで
「とにかく入国させない」
ことが重要になった。
「我が国(イタリア)に来ても外国に送るからムダ」
と示し、密航を諦めさせる狙いもある。
メローニ氏は
「不法移民に危険な旅をさせずに済む」
と、抑止効果を強調した。
欧州研究機関
「国際移民政策開発センター」(ICMPD)
のマルティン・ホフマン顧問は
「よく練られたアイデア」
「EU域外の受け入れ施設でも、イタリア法で運営すれば『人権軽視』の批判をかわせる」
「うまくいけば、追随国が増えるだろう」
と予測する。
英国では今、
「移民のルワンダ移送」
法案が国会で審議されている。
英仏海峡を渡ってくる不法移民を6500km南のルワンダに送り、難民申請から定住まで委任することを目指す。
イタリアと英国は、人権団体や左派野党から
「残酷」
「難民保護の責任逃れ」
と批判された。
英国では2023年、当初法案に最高裁が
「人権侵害の恐れあり」
として違憲判決を示し、政局は大揺れになった。
それでも、第3国移送案への関心は高い。
デンマークの他、ドイツ最大野党の中道右派
「キリスト教民主同盟(CDU)」
が、EUによる取り組みを訴えている。
フォンデアライエン欧州委員長は、イタリア案を
「画期的」
と讃えた。
EUはこれまで、リビアやチュニジアに支援金を出し、移民船の出航を止めてもらおうとした。
EU加盟国で受け入れ枠を作り、負担を分け合うことも定めた。
いずれもあまり成果がない。
どの国も
「何とかしろ」
という世論の圧力に直面している。
注目が集まるのは、欧州人を良心の呵責から救う効果もあるからだろう。
各国政府は本音では不法移民を追い払いたいのだが、
「瀕死で救いを求める人を見捨てるのか」
という人権団体の訴えを無下にできず、常に逡巡している。
苦難の末にやってきた移民を、また外国に送る。
そんな方策に飛びつくほど、事態は切迫している。
2023年、欧州で難民申請件数は100万件を超えた。
地中海を渡る途中で死亡、行方不明になった移民は約3000人に上る。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/772.html#c25

[政治・選挙・NHK294] 政府と巨大資本によって人権が格付けされている 二極化・格差社会の真相(日刊ゲンダイ) 赤かぶ
14. 秘密のアッコちゃん[421] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年7月03日 17:30:42 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[534]
<■3100行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
草の根保守からの移民国家反対論
普通の日本国民は”グローバル化”など望んでいない
WiLL2024年8月号 九州大学教授 施光恒
■”普通の日本人”の感覚
私がこの論考で示したいのは、
「草の根保守」
の感覚に基づく移民国家化反対論である。
「草の根保守」
とは、まさに身の回りにいるような多数派の人々である。
自国の伝統や文化、言語、生活習慣に愛着を持つ大多数の普通の人々だと言ってもよい。
彼らは
「多文化共生」
「グローバリズム」
「地球市民」
など流行の言葉に惹かれもするが、同時にそれらの言葉が纏(まと)う”胡散臭さ”にも気付いている。
日本において現在、大規模な移民受け入れが進められているが、事実上の”移民国家化”にも大いに不安を感じている。
「草の根保守」
は頑迷な守旧派というわけではない。
普通の日本人の感覚を持つ者であるから、日本の文化や伝統を大切にする一方で、外国人や外国文化も好きである。
メジャーリーグ中継はよく見るし、ハリウッド映画や韓国ドラマも嫌いではない。
外国の友人もいる。
海外旅行も好きである。
こうした普通の人々の感覚に根差して、大規模な移民の流入、並びに無国籍的なグローバリズムや多文化共生に反対する議論を示してみたい。
とはいえ、それは外国や外国との活発な交流を否定せず、むしろ肯定する。
鍵となるのは、
「グローバル化」

「国際化」
の区別である。
■「移民国家化」の背景
「草の根保守」
の人々は、現在の政治に違和感を覚えているのではないだろうか。
保守政党を自認してきた自民党が、事実上の移民国家化を推し進めてきたからである。
岸田政権は2023年6月、外国人単純労働者の受け入れの大幅拡大を決め、事実上の移民国家化への道筋を付けてしまった。
永住も家族の帯同も可能という外国人労働者の在留資格
「特定技能2号」
の対象分野を拡大。
11分野の産業分野に認めることを閣議決定したからだ。
自民党はなぜ変質してしまったのか。
自民党が取ってきた、いわゆる新自由主義に基づくグローバル化路線が原因であろう。
「新自由主義」
とは、いわゆる
「小さな政府主義」
であり、辞書的に述べれば
「政府部門の縮小や市場競争の導入を通じて経済社会の効率化を目指す考え方」
だと言える。
1990年代以降、本格化した日本を含む各国のグローバル化推進路線は、新自由主義に依拠してきた。
「グローバル化」
とは、基本的に
「国境の垣根を出来る限り引き下げ、ルールや制度、文化、慣習などを共通化し、ヒト、モノ、カネ、サービスの流れを活発化させる現象、及びそうすべきだという考え方」
だと規定できる。
日本や他の先進諸国は1990年代後半頃から、各種の
「構造改革」
を進めてきた。
それまでの金融制度や会計基準、企業統治の方法などを、米国を範例とする
「グローバル標準」
に合わせる改革である。
日本では上記のような構造改革に加え、郵政民営化、TPP加入、教育における英語化の推進なども行ってきた。
事実上の大規模移民受け入れに道を開く近年の決定もその1つである。
これらの動きはいずれも制度や文化(言語)、慣習をなるべく共通化し、カネ(資本)やモノ、ヒト(労働力)の国境を超える移動を円滑化しようとするものである。
■庶民を苦しめるグローバル化
グローバル化推進策が先進各国にいくらかの生活の利便化をもたらしたことは事実である。
だが同時に、様々な社会問題も生じさせてきた。
経済的格差の拡大、民主主義の機能不全、国民意識の分断などである。
グローバル化が、こうした社会問題を引き起こしてきたのは必然である。
グローバル化の進展は、国境を越えて資本を動かす力を有するグローバルな投資家や企業の政治的影響力を過度に増大させる。
そして、グローバルな投資家や企業関係者の意思が、各国の一般市民の意思よりも強く各国の政府に反映される状態を招いてしまう。
なぜなら、グローバルな投資家や企業は、自分たちがビジネスし易い(稼ぎ易い)環境を準備しなければ、資本を他所へ移動させるぞと各国政府に圧力を掛けられるようになったからである。
例えば、彼らは
「人件費を下げられるよう非正規労働者を雇用しやすくする改革を行え」
「さもなければ生産拠点をこの国から移す」
「法人税を引き下げる税制改革を実行しないと貴国にはもう投資しない」
などと要求できるようになったのである。
グローバリズム化以降、各国ではグローバルな投資家や企業の要求を受けた制度や政策が数多く作られ、各国の社会は経済的・政治的に不公正なものとなった。
経済的には富裕層が有利になる一方、庶民層にとっては不利なものとなり、格差が拡大した。
政治的には、民主主義の機能不全が生じた。
庶民層の声がグローバルな投資家や企業関係者に比べ、各国政府に届きにくくなったせいである。
グローバル化推進策から利益を得る層と、そうでない庶民層との対立も激化。
国民意識の分断も招いた。
大規模移民の流入が先進各国で進められてきたのも、各国の一般庶民に比べ、グローバルな投資家や企業の政治的影響力が増大したためである。
グローバルな投資家や企業関係者は、外国人労働者や移民の大規模な流入を望む。
外国人労働者や移民の受け入れは、人件費を下げ、グローバルな投資家や企業がビジネスし易い環境を作るからである。
彼らは、各国の庶民のコストは考えない。
移民が増えれば庶民には不利である。
賃金は上がらなくなるし、雇用の安定化も望めなくなる。
福祉や教育の社会的負担も増える。
米国の労働経済学者ジョージ・ボージャスによれば、ある労働者集団に移民が1割増えると、賃金が約3%も下落するという。
労働者から企業(投資家や経営者)に多大な所得移転も起きてしまう。
(白水社『移民の政治経済学』2017年)。
一般庶民はそれまでよりも貧困化してしまうのである。
■”排外主義者”というレッテル
グローバル化や移民国家化の推進策は、各国の一般庶民に多くの不利益をもたらす不公正なものである。
だが、グローバル化や移民国家化に対する批判はさほど盛り上がらない。
その理由の1つは、少なくとも日本では、グローバル化や移民国家化に批判的であると、すぐさま
「排外主義者」
「鎖国主義者」
「極右」
などとレッテル貼りをされるからであろう。
普通の人々は、そういうレッテルを貼られる危険を避けるため、口を噤んでしまう。
最近では、こうしたレッテル貼りをバイデン米大統領までが行った。
2024年5月初め、日本は米国などと異なり、移民を受け入れないから、ロシアや中国と同じく排外主義国家だという趣旨の発言をしたのだ。
グローバル化路線を批判した場合も、この種のレッテル貼りをされる恐れが大きい。
実際、菅義偉政権のブレーンとして著名となったデービッド・アトキンソン氏は、自身のグローバル化路線を批判した者に対して、次のような反論を自身のX(旧ツイッター)に投稿している。
「反グローバリズムを言うなら、ビール、電気、洋間、自動車、テレビ、パソコン、地下鉄、電車、民主主義、ベッド、飛行機、西洋医学等々を使うな!」
「全てグローバリズムの結果」
「軽率な発言を控えなさい」
(2023年10月3日)。
このように、グローバル化や大規模移民受け入れに否定的な見解を述べると、すぐさま
「排外主義」
「極右」
などのレッテル貼りをされてしまう。
その理由は、国境をなるべく取り払ってしまおうというグローバル化以外の世界秩序構想(世界の描き方)が、よく認識されていないからだ。
グローバル化を否定すると、外国や外国人との交流の一切を否定していると誤解されてしまう。
”ヤバイ奴”扱いされてしまうのだ。
グローバル化や大規模移民受け入れに否定的だと
「排外主義」
「極右」
というのは、全く正しくない。
国境線をなるべく取り払おうというグローバル化路線とは別の形で、外国や外国人と積極的に交流する仕方は大いにあり得る。
例えば、
「国境はそのまま維持し、互いの制度や文化の違いは認め合い尊重する」
「その上で、互いの良い所を学び合い、必要であれば自国の発展のために取り入れる」
「国造りの目指すべき方向性は各国で異なるかもしれないが、自分の国を良くするようにそれぞれ頑張る」
といった付き合い方だ。
こうした交流の仕方を
「国際化」
と呼び、
「グローバル化」
とはっきりと区別したらどうか。
私は近年、このように考え、
「グローバル化」

「国際化」
を概念的に区別すべきだと主張してきた。
前述の通り、グローバル化は国境の垣根を出来る限り取り払い、ヒトやモノ、カネの国境を超える移動を活発化させるために制度や文化、慣習を共通化しようとするものである。
他方、ここで言う
「国際化」
とは、国境や国籍の除去を良いことだとは見做さず、制度や文化、慣習の差異を互いに尊重すべきだと理解する。
即ち国際化とは
「国境や国籍は維持したままで、各国の伝統や文化、制度を尊重し、互いの相違を認めつつ、積極的に交流していく現象、及びそうすべきだという考え方」
だと言える。
現在の多くの日本人は実は
「グローバル化」
よりも
「国際化」
を望んでいるのではないかー。
■グローバル化は望んでいない
私の研究室では2023年12月、
「グローバル化」

「国際化」
を巡る質問紙を作成。
社会調査会社に委託する形で、全国300名の18歳〜70代の成人男女を対象にアンケートを実施した。
性別や年代は日本の人口構成比に準拠している。
職業や学歴も偏りのないように回収した。
アンケート調査の際には、どちらの選択肢がそれぞれ
「グローバル化」型、
「国際化」型
に当たるのかは回答者に示していない(読者に分かり易いように、本稿では記す)。
ここで設問や回答の一部を紹介したい。
第1の質問は
「外国や外国の人々との活発な交流は大切だと思いますか?」
である。
87.7%(263人)が
「そう思う」
「どちらかと言えばそう思う」
と回答した。
「そうは思わない」
は13.2%(37名)のみだった。
日本人の大多数は、外国や外国人との交流を歓迎している。
第2の質問は、
「外国や外国人との交流の仕方」
のうち、いずれが自分の望ましいと思う交流の在り方に近いか尋ねた。
選択肢は以下である。
@「国境線の役割をなるべく低下させ、ヒトやモノなどが活発に行き交う状態を作り出し、様々な制度やルール・文化・慣習を共通化していく交流」(グローバル化型)
A「国境線は維持したままで、また自国と他国の制度やルール・文化・慣習などの様々な違いも前提とした上で、互いに良い所を学び合う交流」(国際化型)
結果は、前者を選んだ者は16%(48人)のみで、残りの84%(252名)は後者を選択した。
次に、移民と国際貢献について訊いた。
「あなたが考える望ましい国際援助の在り方は、次のうちどちらに近いですか?」
という質問だ。
選択肢は次の2つだ。
@「豊かな先進国(欧米諸国や日本)は、貧しい途上国の人々が自分たちの国をより豊かで安定したものに出来るように貧しい途上国の国造りを支援する」(国際化型)
A「豊かな先進国(欧米諸国や日本)は、自国に、貧しい途上国の人々を受け入れて、そこ(先進国)で働き、暮らせるようにする」(グローバル化型)
前者は、人々は自分の国で暮らす方がいいという前提に立ち、国造りを重視している。
その意味で
「国際化」
型の援助である。
Aは手っ取り早く、国境線を開き、移動を奨励するという点で
「グローバル化」
型だと言える。
結果は、@「国際化」型が76%(228名)であり、A「グローバル化」型が24%(72名)だった。
やはり
「国際化」
型を選ぶ人が多かった。
ちなみにイタリアの女性首相メローニ氏は、ここで言う
「国際化」
型の援助政策を実践している。
彼女は、一部かから
「極右」
「反グローバリスト」
と称される政治家であり、移民受け入れには厳しい態度を取る。
その一方、
「マッティ・プラン」
という北アフリカ諸国への巨額の援助も推進する。
移民の大規模流入を防ぐためにも、これらの国への国造り支援が必要だと考えるからだ。
一般に、移民に反対すると、
「非人道的」
「非リベラル」
だとよく非難される。
だが貧困国民の弱みに付け込み、自国に来させ、自国民のやりたがらない低賃金労働に従事させることのどこが
「人道的」

「リベラル」
なのか。
大規模移民に反対しつつ、移民送出国への国造り援助を積極的に行うメローニ首相の政策こそ人道的でリベラルだと言えよう。
■国境線は維持されるべき
調査結果に戻ろう。
「多文化共生」
に関しても尋ねた。
「多様な文化が地球上で共存・共栄する状態を現実的に作り出す方法として、どちらが適切だと思いますか?」。
選択肢は以下である。
@「国境や国籍を維持したままで、人々は自分の国や地域で暮らしつつも、各々の文化や伝統、言語を豊かにするために他の文化から互いに学び合う世界」(国際化型)
A「国境や国籍の区別を取り払い、異なる文化や伝統、言語、宗教を持つ人々が1つの地域に入り交じって暮らす世界」(グローバル化型)
の2つだ。
結果は、「国際化」型の@を選んだ人々が77%(232名)、「グローバル化」型のAを選択した人々は23%(68名)だった。
やはり多くの人々は、国境線を維持する形を望むのである。
加えて、望ましい日本の経済政策についても設問を作った。
「あなたが考える日本の望ましい経済政策の基本方針は、次のうちどちらに近いですか?」
というものだ。
これに関しても
「グローバル化」型

「国際化」型
の2つの選択肢を用意した。
@「日本経済をグローバル市場の中に適切に位置付け、投資家や企業に投資先として選ばれやすい日本を実現すること」(グローバル化型)
A「日本国民の生活の向上と安定化を第1に考え、国内に多様な産業が栄え、様々な職業の選択肢が国内で得られるようにすること」(国際化型)
@は、まさに1990年代後半以降、現在に至るまでの日本の経済政策である。
Aは、一般国民の生活を第1に考え、ナショナル・エコノミー(国民経済)の充実を図る路線だ。
必要であれば適度に関税をかけることも厭わない。
その結果、@の「グローバル化」型を選んだ者は27%(80名)、Aの「国際化」型を選んだ者は73%(220名)であった。
教育の在り方も尋ねた。
「あなたが考える望ましい現代の教育の在り方は、次のどちらに近いですか?」。
2つの選択肢とその回答の割合(人数)は次のようになった。
@「国境や国籍を意識せず、『地球市民』や『グローバル人材』としての自覚を持ち、人類の幸福のために寄与する人を育てる教育」(グローバル化型、31%、93名)
A「将来の自国を支える意欲や責任感を持ち、自国の文化や伝統に愛着を感じると同時に、他国の文化や伝統も尊重する人を育てる教育」(国際化型、69%、207名)
「地球市民」

「グローバル人材」
という流行りの一見、美しく聞こえる言葉に引っ張られたのか、他の設問よりも
「グローバル化」
型を選んだ者が多い。
しかし、それでもダブルスコア以上で
「国際化」
型を選択した者が多いのが分かる。
■「国際化」型を目指せ
前述の通り1990年代半ば以降の日本政府の政策は、新自由主義に基づくグローバル化推進策だった。
人や資本の移動を活発化させるため、可能ならば国境を取り払おうとする政策だ。
だが、多数の国民が望んでいるのは、国境を維持し、国の役割を重視する
「国際化」
型である。
最初の設問の回答が示すように、日本の多くの人々は外国や外国人との活発な交流を大切だと思っている。
グローバル化を推し進めてきた勢力は、外国や外国人との交流を好ましいと思う日本人の心情に乗じて、大多数の人々が実は好まない不公正な
「改革」
を推し進めてきたのではないだろうか。
日本の普通の人々は、外国や外国人との活発な交流は望んでいる。
しかし、それは国境を取り払い、ヒト、モノ、カネ(資本)の流れを過度に生じさせ、またルールや制度、文化、慣習を共通化していこうといういわゆる
「グローバル化」
型ではない。
普通の人々が望んでいるのは、
「国際化」
型の交流である。
国家の重要性を認識し、ルールや制度、文化、慣習などの違いを互いに尊重し、国造りの方向性はたとえ違ったとしてもお互いに活発に付き合い、学び合う形の交流である。
本稿の議論をまとめてみたい。
草の根保守の人々、つまり文化や伝統を守りたいと思う普通の日本人が語るべき反・移民国家化論とは次のようなものだろう。
現行の新自由主義に基づくグローバル化推進論は不公平である。
どうしても一般庶民の声よりも、グローバルな投資家や企業関係者の声を強く政治に反映してしまう。
これは、国民を
「勝ち組」

「負け組」
に分断してしまう経済的格差拡大を招く。
また、一般国民の声を蔑ろにする点で非民主的でもある。
大規模移民の推進論も、グローバルな投資家や企業の声が政治に過度に反映されてしまった結果である。
一般庶民の生活を利するものではなく、むしろ害することの方が多い。
グローバル化、並びにその表れの1つである移民国家化の路線を改めるためには、根本的には、1980年代以前のように、資本の国際的移動に対し、ある程度、各国が民主的な規制を掛けることを認める国際経済秩序作りが必要である。
だが、これは主要国の合意を取り付ける必要があり、実現には時間を要する。
ひとまず、現時点で我々が出来る事は、
「グローバル化」

「国際化」
を区別し、グローバル化や移民国家化を批判しても
「排外主義」
「極右」
「鎖国主義」
などとレッテル貼りをされない言論環境を作ることだ。
「私は『グローバル化』には反対だが、『国際化』には賛成だ」
「大規模移民には反対だが、互いの国や文化を認め合う国際交流は大いに賛成だ」
と言えるようになって初めて、大多数の普通の人々の感覚を踏まえた、理想的世界秩序の議論が可能になるのである。
日本だけでなく、各国の
「草の根保守」
の人々が安心して暮らせる世界を目指すべきである。

日本は「選ばれる国」より「選ぶ国」だよ
経済成長に貢献する外国人は入れる、貢献しない外国人は入れないーこれほどシンプルな話はない
WiLL2024年8月号
経済学者 竹中平蔵
数量政策学者 高橋洋一
■事実上の移民政策
★竹中
移民政策を巡り、国論が二分しています。
今国会では改正入管難民法などが可決、成立しました。
「技能実習」
を廃止する代わりに、
「育成就労」
なる制度が創設されることになった。
★高橋
「技能実習」
は1993年、”国際貢献”を名目に始まりました。
東南アジアなど開発途上国の人々が最長5年、日本で働きながら技能を学ぶという制度です。
2023年末の時点では、約40万人が
「技能実習生」
として就労している。
★竹中
「技能実習」
は評判が悪かった。
表向きは”国際貢献”ですが、実態が伴っていないケースが多い。
★高橋
技能実習生を安い労働力として酷使するだけの経営者もいる。
劣悪な労働環境に耐えかねて逃げ出し、行方不明になる実習生も問題視されました。
★竹中
「技能実習」

「育成就労」
は法務省や外務省が出入国管理の問題として扱うことが多い。
でも、本来は厚労省が管轄すべき事柄です。
「育成就労」
の目的は
「人材の育成と確保」
と明記されています。
”国際貢献”という建前を捨て去り、”人手不足の解消”という本音を前面に出した。
その是非は置くとして、本音と建て前が一致したことは評価できる。
★高橋
”現代の奴隷制度”とも呼ばれた悪名高き
「技能実習」。
その廃止は一見、歓迎すべきことのように思える。
しかし、
「育成就労」
は新たな懸念を生む。
「育成就労」
は試験などの条件を満たせば、最長5年の就労が可能な
「特定技能1号」、
更には在留資格の更新に制限がない
「特定技能2号」
に”キャリアアップ”できる。
2号は家族帯同も可能、将来的に永住権も申請できます。
★竹中
岸田総理は国会審議において、
「いわゆる移民政策を取る考えはない」
と強調しました。
★高橋
「技能実習」
は5年という期限が設けられていた。
ところが、
「育成就労」
は永住までのレールが敷かれている。
事実上の
「移民政策」
と言われても仕方がない。
■日本は”選ぶ立場”である
★竹中
先進国は移民を
「パーマネント(永住)」

「テンポラリー(一時滞在)」
に分けています。
★高橋
要するに、「長期」と「短期」ですね。
★竹中
前者は高い技能を有し、移住先の言語も堪能である必要があります。
その国の伝統や文化を尊重できる人たちでなければ認められない。
後者は特殊な技能を必要としない分野に従事する人たちが多い。
アメリカでは農繁期や建設工事が始まると、メキシコから出稼ぎ労働者がやって来る。
彼らは契約期間が終わると母国に帰ります。
英語力は日常会話レベルで十分、アメリカ文化にリスペクトがなくても構わない。
★高橋
日本も欧米と同じように、「長期」と「短期」を明確に区別しなければならない。
ところが、
「育成就労」
は短期と長期の区別を曖昧にしています。
★竹中
日本国民、中でも保守派は
「移民」
という言葉にアレルギーがある。
第2次安倍政権の初期、年間20万人の外国人労働者を入れるという議論があった。
保守派にあれだけ支持された安倍元総理でさえ、当時は猛バッシングに晒されました。
岸田総理は批判を恐れて、真正面からの議論を避けたのかもしれない。
その結果、皮肉にも事実上の移民政策が”なし崩し”に進んでいる。
政府は国民に”移民”の是非を訴えるべきです。
そこで初めて、賛成派も反対派も意見をぶつけ合うことができる。
★高橋
保守派と言えど、外国人の受け入れそれ自体に全面的に反対しているわけではない。
日本のために働いてくれる外国人は歓迎。
貢献してくれない外国人はお断りー。
至ってシンプルな議論です。
★竹中
日本は幕末・明治の時代、海外から優秀な人材を受け入れています。
シーボルトやクラーク博士などの”お雇い外国人”は有名です。
福沢諭吉はハーバード大学から慶應義塾に優秀な教授陣を招聘することで、東京大学に対抗しようとしていた。
江戸時代の鎖国以前にも、日本人は海外から技術や知見を得てきました。
★高橋
岸田総理は育成就労について問われ、
「外国人にとって魅力ある制度を構築し、選ばれる国になることが必要不可欠だ」
と答弁している。
読売新聞も以下の提言を掲載しました(2024年4月26日付)。
<政府は、育成就労と特定技能を「車の両輪」として、労働力を補っていく>
<他国も受け入れを進めており、獲得競争を勝ち抜くには「選ばれる国」にならなければならない>
★竹中
日本が外国人に
「選ばれる国」
になるべきだという主張をよく耳にします。
日本は
「選ばれる国」
になる必要はない。
むしろ選ぶ立場でなければなりません。
★高橋
幕末明治の御雇外国人は”選んだ”人たちであり、野放図の移民流入でないはずです。
「育成就労」
導入のベースになっているのが、2023年11月に公表された法務省の報告書。
そこには
「外国人との共生社会の実現」
に向けた取り組みが記されている。
しかし、宗教も文化も風習も違う人たちとの
「共生」
は難しい。
「共生」
に無差別の受け入れがセットになっているのが問題です。
■国益をベースに議論せよ
★高橋
移民が経済成長をもたらすー。
それが”常識”であるかのように論じられている。
一方で、移民受け入れは国内の社会保障制度にダメージを与える。
他方で、経済成長のプラスが社会保障のマイナスを補うのであれば、移民受け入れという選択肢はあり得ます。
でも、移民が必ずしも経済成長をもたらすわけではありません。
国連が出している2010年〜2022年の平均データを基に、各国の移民人口比と経済成長率を並べてみました。
しかし、移民人口比が高くても、経済成長率は上昇するわけではない。
それどころか、移民が増えると成長率が下がる傾向すら見受けられます。
★竹中
興味深いですね。
ただ、成功例もあります。
アメリカやオーストラリアは歴史的にも”移民の国”という色彩が強い。
両国は今でも、移民政策により人口増加を成長戦略に組み入れています。
とはいえ、自国経済に有益な外国人を選択的に受け入れている。
多様性に寛容なイメージがある国でも、実は慎重に検証を重ねながら移民政策を運営しているのです。
★高橋
ドイツやフランスなどの欧州は完全に失敗しています。
欧州議会選挙では対移民強硬派の”極右”が勢力を伸ばした。
行き過ぎた移民政策の反動が起こっているのに、日本だけが周回遅れの議論をしている。
一部の自民党や財界は、安い労働力として外国人を入れたがる。
それとは別に、リベラル左派は”多文化共生”というイデオロギーを掲げて移民受け入れを推進しています。
★竹中
感情論に流されず、国益をベースにした冷静な議論が必要です。
他国の成功例と失敗例から学ばなければならない。
★高橋
成功例よりも失敗例の方が多い。
その結果が、先程指摘した移民と経済成長の分析です。
受け身で大量に移民を受け入れると、失敗確率が増すのではないか。
経営者が安価な外国人を雇用すると、日本人は雇用を奪われ、賃金上昇も鈍化します。
外来種に在来種が駆逐されるのと同じような事態が起きかねない。
外国人に頼らずとも、AI化・機械化を進めることで労働力不足を補えます。
★竹中
サービス業は労働力不足に加えて、機械化も難しい。
外国人の手を借りざるを得ない状況があります。
しかし、農業などは機械化やAI化を進められる。
代替手段があるのに、安価な労働力に頼るのは間違いですね。
★高橋
日本企業が投資を渋った結果、”失われた30年”に突入しました。
移民を受け入れるより、まず先に投資を活性化した方が成長に繋がります。
★竹中
過去30年を振り返ると、アメリカの設備投資額は2倍以上になりました。
ところが、日本は2割程度の伸びにとどまっている。
それが”失われた30年”を招いてしまった。
企業の設備投資が停滞した原因の1つに、規制改革の遅れが挙げられます。
■成長を妨げる既得権益
★竹中
2024年4月から、東京や京都などで
「ライドシェア」
が始まりました。
ここに規制改革と移民を巡る課題が凝縮されている。
★高橋
ライドシェアとは要するに”白タク”です。
日本では禁止されていましたが、タクシーが不足する地域や時間帯においては、自家用車や一般ドライバーによる有償運転が一部認められるようになった。
★竹中
ところが、日本版ライドシェアの運営主体はタクシー会社に限定されている。
海外で普及しているライドシェアとは似ても似つかないものです。
★高橋
海外では素人でもライドシェアを始めることができる。
アプリに登録すれば、私も自家用車に人を乗せて運賃を取れるのです。
しかし、日本では新規参入が認めていられない。
しかも、現行のタクシー会社に許可されている地域、台数の範囲内で運用するという制度がある。
★竹中
既得権益に他なりません。
★高橋
日本版ライドシェアを巡っては、元々治安が悪い海外のデータを示しながら、
「新規参入を認めると犯罪の危険が高まる」
などと主張する人たちがいた。
タクシー業界はあらゆる理由を並べて新規参入を阻止しようとしたのです。
★竹中
タクシー業界は全ての選挙区に存在しています。
既得権益を守るために、地元選出の政治家に相当なロビー活動を行っているのでしょうね。
医師会のようなものです(笑)。
★高橋
日本版ライドシェア解禁とタイミングを同じくして、
「特定技能」
の対象にタクシーやトラックなどの
「自動車運送業」
が追加された。
外国人ドライバーを技能実習生として雇えば、タクシー業者はコスト削減が可能となります。
タクシー業界はライドシェアを巡り、国交省に働き掛けて新規参入を阻止した。
それと同時に、法務省にロビイングして外国人ドライバーの確保に成功したのかもしれない。
国民には何のメリットもありません。
得するのはタクシー業者だけです。
★竹中
ライドシェアは過去10年、世界で最も成長した産業の1つです。
アメリカの
「ウーバー」
は今や時価総額が20兆円以上、
中国の
「滴滴出行(ディディ)」
も10兆円を超えている。
日本に世界的ベンチャーが登場しないと嘆かれて久しい。
その背景には既得権があるのです。
★高橋
既得権はどの国にもありますが、それを打破しようと挑む勢力がいる。
日本が海外と異なるのは、何故か既得権益がそのまま放置されていることです。
★竹中
既得権益を死守する側の業界団体、族議員、官僚という
「鉄のトライアングル」
が存在している。
本来であれば野党、メディア、民間の有識者らがその牙城を崩さなければなりません。
言わば
「挑むトライアングル」
です。
しかし、誰も役割を果たそうとしない。
★高橋
家計学園を巡る問題で明らかになったように、野党もメディアも既得権益の人たちです。
マスコミが独占する電波利権などは既得権そのもの(笑)。
■遅くてショボい定額減税
★高橋
移民政策が典型ですが、岸田政権には戦略が欠如している。
経済政策も場当たり的な対応が目立ちます。
2024年6月から実施される定額減税も例外ではない。
岸田総理は一体何がやりたいのか。
未だに見えてこない。
★竹中
岸田総理は2023年10月、所信表明演説で
「経済、経済、経済」
「何よりも経済に重点を置く」
と連呼。
総合経済対策を打ち出しました。
ところが、蓋を開ければ4万円の減税。
言葉と実際の政策にギャップがありますね。
★高橋
減税を唱えたのは”増税メガネ”のイメージを払拭するために過ぎない。
国民生活に本気で寄り添う気がないことが、改めて明らかとなった。
支持率が低迷するのも無理はありません。
★竹中
2024年1〜3月期の実質GDPは2期ぶりにマイナス成長を記録しました。
個人消費は4期連続で減少。
4期連続の減少はリーマンショック以来です。
2023年末に減税を実施していれば、消費の落ち込みも防げたでしょうね。
減税のタイミングが遅過ぎた。
★高橋
経済政策はタイミングが命です。
2023年末に減税していれば、GDPギャップ(潜在GDPと実際のGDPの差)をそれなりに埋められたでしょうね。
ところが、迅速な対応を怠ったために、GDPギャップは昨秋に比べて10兆円以上も開いてしまった。
遅くてショボい。
この一言に尽きます。
★竹中
消費は将来の所得見込みに左右されます。
4万円を渡して、消費者の将来に対する期待は高まるのか。
物足りないと言わざるを得ない。
政策は目的とプロセスが重要です。
何のために政策を打つのか、それをどう実現するのかー。
今の政府からはどちらも見えてこない。
岸田総理の言動には
「なぜ?」
という疑問が多過ぎる(笑)。
★高橋
2023年の臨時国会で税制改正案を出すことができれば、2023年12月の年末調整までに減税も可能でした。
しかし、改正案の提出は2024年の通常国会に回された。
その結果、減税の実施が2024年6月になってしまったのです。
財務省は当初、所得減税そのものに難色を示していました。
しかし、定額減税は前例があるから、渋々ながら認めざるを得なかった。
とはいえ、2023年の臨時国会での税法改正は回避したい。
「自民党の税調に議論を任せる」
という”理由にならない理由”を付けて、後回しにしたのです。
聞くところによれば、岸田総理が自民党の税務調査会を抑えられず、税制改正は先送りになったとか。
とはいえ、税制調査会は自民党内の機関です。
岸田総理は自民党の総裁でもあるから、本気になれば
「イエス」
と言わせることができる。
財務省には何も言えない岸田総理の弱さが、改めて浮き彫りになりました。
■官僚に乗っ取られた官邸
★竹中
1990年代、官僚主導の政治が問題視されました。
官僚支配を是正するために、橋本龍太郎総理は行政改革案を作った。
それにより、中央省庁再編などが行われました。
いわゆる”橋本行革”の最終報告には、3つの重要な柱が記されています。
・内閣の「首長」である内閣総理大臣が指導性を十分に発揮できるような仕組みを整える
・内閣総理大臣の補佐・支援体制として、内閣官房、内閣府及び総務省を置く
・内閣府の企画・調整部門には、民間や学界を含め広く行政の内外から優秀な人材を登用する
政治主導を実現するために、総理を支える組織を作り、そこに優秀な人材を登用すべきだと述べられています。
それ以来、内閣には総理自らが議長を務め、民間の有識者が閣僚と同じテーブルについて政策を議論する場が設けられた。
あれから20年以上が経ち、政治主導はどうなったか。
岸田内閣には政策会議や有識者会議が多数あります。
「新しい資本主義実現会議」
「デジタル田園都市実現会議」
「こども未来戦略会議」・・・。
気が付けば、内閣官房には30を超える事務局が存在している。
そこに派遣されるのは各省庁の官僚たちです。
★高橋
政治主導を実現するために官邸の力を強化したのに、官邸それ自体が官僚に支配されている。
官僚からすれば”乗っ取り”に成功したわけです。
★竹中
小泉純一郎政権時代、経済財政諮問会議に分科会を置くべきかが議論になりました。
小泉総理は
「大事な事は全て自分の前で議論してくれ」
と、政策会議の数を増やすことに反対した。
★高橋
30以上もある会議の中で、官僚が好き勝手に議論している。
岸田総理も一体何が話し合われているかを把握しきれていないでしょうね(笑)。
★竹中
各省庁の利益を代弁する官僚たちが、総理にバラバラに政策メニューを提示する。
総理はそれを眺めながら、無難な政策を決めるー。
そんな状態が続いているのではないか。
岸田政権は政策決定システムがまともに機能していない。
■被災地を見捨てるのか
★高橋
官邸の機能不全を象徴しているのが、能登半島地震への不可解な対応です。
過去に震度7の地震が起こった時、1カ月ほどで災害対策費などの名目で補正予算が組まれているのです。
・阪神淡路大震災(1995年1月17日):1兆223億円の補正予算が閣議決定(1995年2月24日)
・新潟県中越地震(2004年10月23日):1兆3618億円の補正予算が閣議決定(2004年12月20日)
・東日本大震災(20011年3月11日):4兆53億円の補正予算が閣議決定(2011年4月22日)
・熊本地震(2016年4月14日):7780億円の補正予算が閣議決定(2016年5月13日)
今回の能登半島地震では補正予算を組まず、2023年度予算の予備費から2767億円を支出するという対応でした。
予備費は手続きが面倒臭い。
まとまった政府支出に不向きです。
予備費をチマチマ使うのではなく、補正予算でドカンと出せばいいのに。
★竹中
馳浩知事は震災直後、
「1カ月以内に数兆円規模の補正予算編成をお願いしたい」
と政府に要請していた。
しかし、その声は政府に届かなかった。
震災から半年が経とうとしているのに、能登半島には瓦礫の山が積み上がったまま。
速やかに補正予算を組めなかったことが復興の遅れを招いたのは明らかです。
★高橋
そんな中、財務省がとんでもないことを言い出した。
財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)の分科会は被災地の復旧について、
「将来の需要減少や維持管理コストを念頭に置き、住民の意向を踏まえ、十分な検討が必要だ」
などと訴えたのです。
震災復興に”コスト論”を持ち出すとは・・・。
能登半島のために財政支出をしても無駄だと言っているに等しい。
被災地を見捨てるような財務省の議論に、馳知事は
「上から目線でモノを言われている気がして気分が悪い」
「冷や水をバケツでぶっかけられたような気持ち」
と不快感を露わにした。
★竹中
岸田総理が思い切って大きな方向性を示せば、官僚も従わざるを得ない。
結局、リーダーシップの問題ですね。
■「ポスト岸田」の運命
★竹中
自民党総裁選が2024年9月に予定されています。
自民党は岸田総理に代わる強いリーダーを選べるか。
それとも、岸田総理の続投を望むのか。
★高橋
岸田総理は就任以来、表向きには憲法改正に強い意欲を燃やしていました。
ところが、やる気がないことが明らかとなった。
本気で憲法を改正したいなら、国会の会期延長や総裁選の延期に踏み切っていったはずです。
国民はこれ以上、岸田総理に何も期待していません。
さっさと辞めた方がいい。
★竹中
岸田総理は自ら”黄金の3年間”を手放してしまった。
本来であれば、じっくり腰を据えて政権運営に集中するつもりだったはずです。
しかし、これを乗り切るのは至難の業。
近年だと、小泉元総理と安倍元総理しか”3年の壁”を破れていません。
小泉政権と安倍政権に共通していたのは、早期の解散に踏み切り、長期政権の基盤を固めたことです。
★高橋
岸田総理も2023年の広島サミット後に解散を考えていたでしょうね。
しかし、息子のスキャンダルやLGBT理解増進法により支持率が急落。
回復を待っているうちにタイミングを逃してしまった。
★竹中
補選や地方選でも自民党は連戦連敗。
このまま総裁選に突入したら、岸田総理は厳しい戦いを強いられる。
内閣改造でイメージ回復を図るという手もありますが、人気者が果たして閣僚入りを受けてくれるかどうか・・・。
★高橋
内閣支持率がここまで低かったら、”岸田降ろし”の風が吹いてもおかしくない。
それでも、露骨な”岸田降ろし”の動きは起こっていない。
一時的な派閥解体により、総裁の力が強まったからでしょうね。
★竹中
派閥解体にも物申したい。
派閥解体よりも重要なのは
「政党はどうあるべきか」
という問題です。
会社には会社法があり、宗教法人には宗教法人法がある。
ところが、政党には政党法がありません。
日本には政党のガバナンスを効かせる仕組みがないのです。
政治資金の問題にしても、自分たちで自分たちのことを決めているから穴が生まれる。
政党法がないという根本原因を解決しない限り、派閥を解体しても、議員を処分しても意味がない。
日本に政党法がなくても、自民党は曲がりなりにも政権与党であり続けた。
それを可能にしてきたのは派閥の均衡です。
言わば、セカンドベストのガバナンスシステムでした。
総裁がおかしな政策を打てば、党内から苦言を呈される。
派閥が睨みを利かせることで、党内ガバナンスを保ってきたのです。
政党法も派閥もないまま、自民党はどこに向かうのでしょうか。
★高橋
全ては2024年9月の総裁選次第です。
いや、2024年11月のアメリカ大統領選の方が大事かもしれない。
日本は外圧によってしか変わらない国ですから(笑)。

移民に好かれる日本になれってか!
今だけ金だけ自分だけー事実上の移民政策を隠れて進める卑怯者たち
WiLL2024年8月号 麗澤大学客員教授・イスラム思想研究家 飯山陽
■”大量移民時代”に突入した
日本という国が音を立てて崩壊しています。
今国会で可決、成立した改正入管難民法がそれを象徴している。
これにより、
「技能実習」
が廃止され、代わりに
「育成就労」
を創設することが決まりました。
「技能実習」
は”国際協力”という美名の下、外国人実習生に”日本で働かせてあげる”という制度でした。
実習生に認められた滞在期間は最長5年。
帰国を前提としたものです。
ところが、
「技能実習」
は人権侵害の温床とも指摘されていた。
外国人を低賃金で酷使する経営者に耐えかねて、行方を眩ます実習生もいたほどです。
悪名高い
「技能実習」
を改めて、新たに
「育成就労」
制度を創設する。
それが法改正の目的ですが、これがなぜ問題なのか。
「育成就労」
は、外国人が日本で働き続けることを前提としているからです。
新制度は大きく分けて、3段階のプロセスから成ります。
3年間を目途に、外国人が一定の技能水準に到達するよう育成する。
その後、最長5年の就労が可能な
「特定技能1号」
への移行を促す。
最終的に、家族帯同や永住権も申請できる
「特定技能2号」
に格上げするー。
事実上の移民政策と言える。
いや、移民政策そのものです。
岸田総理は法案審議で詭弁を連発。
移民政策を
「一定規模の外国人や家族を制限なく受け入れる」
政策と定義した上で、
「いわゆる移民政策を採る考えはない」
と言うのです。
「育成就労」
は最終的に家族帯同、永住権を申請できるシステムになっている。
ところが、岸田政権は頑として認めない。
「LGBT法は理念法だから」
と言い逃れを繰り返したのとソックリです。
日本国民を欺きながら、移民政策を推進しているのが岸田政権に他なりません。
「育成就労」
創設により、日本は”大量移民時代”に突入しました。
■財界の代弁者
移民政策の推進により、一体誰が得をするのか。
経団連をはじめとする財界です。
経団連の十倉雅和会長は過去、
「(外国人に)ずっと働いてもらえる社会を作ることが大事」
などと訴えている。
財界に要請されて、政府は”ずっと働いてもらえる”ことを前提とする
「育成就労」
を推進した。
そんな構図が浮かび上がります。
財界の”親中”はかねて指摘されてきました。
日本企業は中国に生産拠点を作り、現地の安い労働力を使う。
人件費のコストカットにより、日本企業は利益を上げてきました。
その結果、日本国内の産業空洞化を招いてしまった。
日本企業が日本人の代わりに中国人を雇うというのは、日本人が受け取るべき給与が中国人に渡ることを意味している。
日本の富が中国に流出してしまったのです。
日本企業はバブル崩壊後、1990年代から中国進出に熱を入れるようになった。
”失われた30年”と重なるのは偶然なのでしょうか。
トランプ政権の登場などにより、
「脱・中国」
が世界の潮流になりつつある。
日本の財界が移民受け入れを声高に叫ぶ背景には
「脱・中国」
の影が垣間見えます。
中国への事業展開により、現地の中国人を労働力として使っていた。
それが難しくなったから、代わりに日本国内へ大量の移民を招き入れるという”頭の切り替え”があったのかもしれない。
いずれにせよ、一般の日本人労働者が犠牲になることに変わりはありません。
日本企業が移民を雇用すれば、その分だけ日本人の雇用は奪われる。
日本人の賃金上昇も鈍化します。
政府は
「育成就労」
創設の理由に人手不足を挙げている。
しかし、日本には200万人もの失業者がいます。
彼らに職を与えずして、移民をなぜ受け入れるのか。
完全に優先順位を誤っています。
■日本人の視点はゼロ
岸田総理は国会で、
「外国人にとって魅力ある制度を構築し、選ばれる国になることが必要不可欠だ」
と答弁している。
”選ばれる国”というのは、外国人に媚びへつらうような物言いですが、これも財界の代弁に他ならない。
経済同友会の新浪剛史代表幹事は
「(外国人に)日本での生活に馴染んでもらうために、どうすべきかを考えるべきだと思う」
と発言しています。
政府と財界がタッグを組んで推進する移民政策。
そこに欠けているのは日本人の視点です。
本来であれば、野党やメディアが日本人の立場を代弁しなければならない。
しかし、野党もメディアも思考停止=機能停止状態です。
「育成就労」
創設に反対したのは立憲民主党、共産党、れいわ新選組などですが、反対の理由は
「外国人の権利が守られないから」
というもの。
外国人への配慮が足りないと批判していたのです。
朝日新聞の社説には、改正案に対する苦言が呈されていました(2024年5月10日付)。
<理解し難いのは、税や社会保障などの支払いを故意に怠った永住者の在留資格を取り消せるようにする規定を、法案が含んでいることだ>
<在留が長く、既に社会に溶け込んだ人々の生活に直結する問題で、有識者会議にも諮られていないのに唐突に入った>
朝日新聞が野党の代弁者なら、読売新聞は与党と財界の代弁者と言える。
読売新聞は以下のような社説を掲載(2024年4月26日付)。
<政府は、育成就労と特定技能を「車の両輪」として、労働力を補っていく>
<他国も受け入れを進めており、獲得競争を勝ち抜くには「選ばれる国」にならなければならない>
政治家、官僚、財界、メディア・・・。
「育成就労」
を巡り、彼らが議論していたのは外国人の権利を如何に守るかだけ。
移民を受け入れることで、日本社会が被るデメリットは全く論じられない。
日本国民の視点が一切ありません。
日本にやって来る外国人は善人、彼らをこき使う日本人は悪人ー。
”外国人性善説”と”日本人性悪説”を前提に議論しているのです。
外国人が善人ばかりでないことは徐々に明らかになっている。
例えば、埼玉県川口市のクルド人問題が挙げられます。
川口市に住む約60万人のうち、外国人は約3万9000人。
人口の6.5%を占めます。
日本人の住民たちが、クルド人の犯罪や迷惑行為に怯えながら生活している現状がある。
円安がオーバーツーリズムを加速させていますが、外国人観光客が迷惑行為に手を染めるケースも多い。
日本の伝統や文化に敬意を払わない外国人からも”選ばれる国”を目指すのか。
■バイデン「2つの嘘」
バイデン大統領の演説が物議を醸しました。
<アメリカ経済が成長している理由の1つは、移民を受け入れているからだ>
<日本はなぜ問題を抱えているのか>
<彼らが外国人嫌いで、移民を望んでいないからだ>
バイデン大統領の発言には2つの誤りがあります。
第1に、
「移民を受け入れると経済が成長する」
という証拠はない。
移民を受け入れるほど、成長率はむしろ下がるというデータがあります。
日本政府は労働力不足を解消するために移民受け入れを推奨している。
他方、政府は彼らに家族の帯同を認めています。
移民の給料は安く、日本に連れて来た家族を養うのは難しい。
働く意欲を失ったり、病気になったりする外国人労働者も出てくるでしょう。
彼らが社会保障制度の世話になるのは火を見るより明らかです。
外国人により、その国の社会保障制度が食い潰されてしまいます。
これは欧米で実際に発生している問題なのです。
第2に、
「外国嫌いの日本人は移民を望んでいない」
というのも嘘です。
「育成就労」
がそれを証明しました。
アメリカでは党派を超えて、移民の入国制限を訴えています。
共和党のトランプ前大統領が不法移民策に力を入れていたのは有名です。
バイデン大統領も現在、トランプ氏に対抗するかのように、取り締まりを厳格化している。
民主党は移民に寛容なイメージが強い。
実際にオバマ政権は合法・不法を問わず、移民を歓迎していました。
ところが、民主党も慎重なスタンスを取るようになった。
アメリカ国民がそれを望んでいるからです。
「アメリカが抱える最重要課題は何か?」
を問う世論調査では、
「移民」
が1位でした。
アメリカでは
「多様性」
「共生社会」
という幻想は完全に打ち砕かれています。
■日本が”サンクチュアリ”に
移民にオープンな岸田政権の姿は、かつてのアメリカ民主党と重なります。
2024年11月の大統領選でトランプ氏が勝利すれば、アメリカに殺到している移民たちは日本を目指すことになる。
バイデン氏が勝利しても同じです。
日本は”サンクチュアリ(聖域)”になりかねない。
”サンクチュアリとは何かー。
アメリカでは州ごとに移民へのスタンスが異なります。
メキシコと国境を接するテキサス州は、不法移民を厳しく取り締まっている。
メキシコからの移民流入を防ぐために、貨物列車を止めたり、国境を流れる川にブイを置いたり、川岸にワイヤーを設置したりしてきた。
極め付きは、テキサス州にやって来た大量の不法移民を”サンクチュアリ・シティ”に送り付けたのです。
”サンクチュアリ・シティ”というのは、移民を歓迎する都市のこと。
その代表がニューヨーク市です。
リベラルが幅を利かせるニューヨーク市は、たとえ不法移民であっても歓迎するという姿勢でした。
ところが2022年、ニューヨーク市は非常事態を宣言。
財政破綻の危険を訴えたのです。
ニューヨーク市のみならず、不法移民を受け入れた州や都市は財政悪化に苦しんでいます。
地元住民の反移民感情も高まっている。
保守リベラルを問わず、アメリカ全体が移民政策を見直しつつある。
にもかかわらず、日本のメディアはアメリカの”変化”を報じません。
国民が世界の潮流に疎いのをいいことに、岸田政権は国民を騙すような形で移民政策を推進しているのです。
■”極右”というレッテル貼り
移民を巡り、欧州の政治地図は激変しています。
欧州議会選では保守勢力が立て続けに勝利を収めました。
最も注目されているのがフランスに他ならない。
マリーヌ・ルペン氏率いる
「国民連合」
が、マクロン大統領の与党連合にダブルスコアを付けて圧勝したからです。
欧州議会選はフランスのみならず、各国で右派の勝利に終わりました。
スペインは保守派の国民党、オーストリアは右派の自由党が勝利。
ベルギーは首相が率いる左派政党が敗北しています。
欧州はリベラルに代わり、保守が大きな支持を集めるようになったのです。
大変化は数年前から既に起こっていました。
イタリアではメローニ首相が誕生。
オランダでは2024年、ウィルダース氏率いる自由党が第1党になった。
ドイツでは
「ドイツのための選択肢」、
イギリスでは
「リフォームUK」、
スウェーデンでは
「スウェーデン民主党」、
ポルトガルでは
「シェーガ」
が支持を急速に拡大している。
共通しているのは、自国第1主義、反移民、反環境を掲げていること。
一言で言えば”愛国保守”です。
ところが、日本の大手メディアは彼らを”極右”呼ばわりしている。
自国の利益を第1に考え、自国民の幸せを最優先にする政党は”極右”扱いされます。
メディアの定義に従えば、私は立派な”極右言論人”です。
『WiLL』も”極右雑誌”といったところでしょうか。
いずれにせよ、愛国保守=危険というイメージを刷り込もうとしています。
メディアはなぜ自国第1主義を危険視するのか。
答えはシンプルです。
彼らは日本ではなく外国、日本人ではなく外国人の利益を代弁してきた。
それにより利益を得てきたからこそ、自国第1主義や反移民、反環境を唱える政党を貶めようと必死なのでしょう。
保守政党が勢力を拡大すれば、メディアがついてきた嘘は暴かれ、影響力と信用は失墜するー。
危機感を覚えているのかもしれない。
■全ての”卑怯者”に告ぐ
政治家が自国を第1に考えるのは当たり前です。
急増する移民・難民、非現実的な環境政策のせいで、これまでの生活や社会が崩壊した。
イスラム移民によるヨーロッパの退廃を、イギリス人ジャーナリストのダグラス・マレーは”西洋の自死”と呼びました。
滅びゆく国家や社会の姿を目の当たりにしたからこそ、欧州の人々はメディアの洗脳から解放され、保守に目覚めたのです。
欧州議会選挙の結果はその延長線上にある。
メディアが自国第1主義を唱える政党に極右のレッテルを貼ったところで、この流れは止まりません。
翻って日本はどうか。
欧米の失敗を教訓にするどころか、欧米の轍を踏もうとしています。
政治家、官僚、財界、メディア、アカデミズム・・・。
社会的に影響力を有する人たちが、日本を誤った方向に誘導しようと企んでいる。
嘘や誤魔化しを用いる彼らの手口は”卑怯”そのもの。
その悪行をどうにか暴けないか。
そんな思いから、『卑怯者!』(ワック)を上梓しました。
日本は今、猛スピードで”自死”に向かっている。
”時既に遅し”となる前に、1人でも多くの日本人に危機感を覚えてほしい。
飯山陽、日本のために闘い続けます!

メディアがダメだから国会議論もダメ
正論2024年7月号 政策シンクタンク代表 原英史
10年後、20年後に、
「あの法改正がその後の日本社会の破壊に繋がった」
と振り返ることになるのではなかろうか。
この通常国会で成立に向けて審議が進む、技能実習制度の見直しなどに関する法案のことだ。
■国会での意見陳述
技能実習制度は、劣悪な労働環境や失踪などが生じ、外国政府からも人権侵害との批判を受け、見直しの検討がなされてきた。
法務省の有識者会議での検討(2023年11月に最終報告)を経て、2024年の通常国会に法案が提出された。
2024年4月16日に審議入りし、2024年4月26日には衆議院法務委員会で参考人質疑が行われ、私も参考人として意見陳述を行った。
概略こんな事を述べた。
第1に、
「外国人に選ばれる国に」
という標語は再考すべきだ。
政府やマスコミは最近揃って、
「このままでは日本は外国人に選ばれなくなってしまう」
「外国人に選ばれる国にならないといけない」
などと唱えているが、違和感を感じる。
外国人の中には、日本文化を愛し、地域に溶け込み、経済成長に貢献する
「居て欲しい外国人」
もいれば、一方で、経済社会に貢献せず、犯罪を起こし、脱税や社会保障制度の悪用などを行う
「居て欲しくない外国人」
もいる。
まず、
「日本国が外国人を選ぶ」
ことが決定的に重要だ。
これを欠いたまま
「外国人に選ばれる国」
を目指しても、
「居て欲しくない外国人」
ばかりが日本を選ぶことになりかねず、これは害悪でしかない。
第2に、これまで日本政府が行ってきた事は、
「なし崩しの移民受け入れ」
だ。
政府は建前では
「移民政策は採らない」
と言い続けてきた。
第2次安倍政権の初期に
「年20万人の移民受け入れ」
の試算を示して猛反発を受けて以降、決まり文句として唱えることになり、菅内閣・岸田内閣にも引き継がれた。
しかし、現実には外国人労働者の数は、2012年に68万人から2023年には205万人になった。
この10年ほどの間、毎年12万人の移民受け入れを行ってきたのが実態だ。
また、政府のもう1つの建前は、
「高度な人材は積極的に受け入れるが、単純労働は受け入れない」
だが、これも現実と乖離している。
この10年ほどの移民受け入れの相当部分は、技能実習と資格外活動(主に留学生のアルバイト)だった。
言うまでもなく、どちらも技能水準のごく低い労働者だ。
一方で、
「積極的」
に受けれいているはずの高度人材は、2012年に高度人材ポイント制を創設したものの、技能実習などとは桁が異なり、外国人労働者総数の1%程度に留まって来た。

★表 外国人労働者データ(@2012年A2023年)、単位:人
・外国人労働者総数*1:@682,450A2,048,675
・技能実習*1:@134,228A412,501
・資格外活動*1:@108,492A352,581
・高度人材*2:@313A23,958
(出典)
*1:厚生労働省「外国人雇用状況」(各年10月末)
*2:出入国在留管理庁「在留外国人数」(各年末)

(【表】)要するに、日本政府が行ってきたことは、建前とは全く裏腹に、単純労働に重きを置く移民の受け入れだ。
これは、安価な労働力を求める一部産業界に引きずられた結果として生じて来た。
第3に、技能実習制度の問題の根源は、
「安価な労働力」
を求める一部産業界による悪用だ。
もちろん全てが悪用ではなく、好事例もある。
しかし、生産性の低い業界や企業が、高い賃金を払えないため人手不足に陥り、生産性を高めて賃金を上げる努力をする代わりに
「安価な労働力としての外国人」
に頼るケースが少なからずあった。
政府はこうした一部業界の要望に応えて対象業種を追加し、悪用を黙認してきた。
結果として、以下の問題が生じた。
@安価な労働力を求める企業が利用するので、自ずと劣悪な労働環境など人権侵害が生じがちになり、失踪などの事案も生じた。
A安価な労働力を受け入れるので、犯罪や社会的トラブルなど、社会への悪影響も生じがちになった。
B受け入れた企業は、生産性を高めて賃金を上げる代わりに、外国人労働力を受け入れて生き延びる道が与えられ、このため、賃金は低迷し、経済成長が阻害された。
日本は今、相対的に賃金の低い、貧しい国へと転落しつつあるが、大きな要因の1つが技能実習制度の悪用だった。
こうした経過を考えれば、問題解決には外国人政策を根本から見直す必要がある。
審議中の改正案のような小手先の手直し(技能実習の名称を改める、転籍を認めるなど)ではなく、何のためにどのような外国人を受け入れるのか、基本戦略を定めなければならない。
個別制度見直しの前にまず
「外国人基本法」
を制定すべきだ。
こういった事を国会で述べた。
実は、私は直前に骨折して入院中だったが、何としても国会議員の方々に問題を認識して、本来あるべき議論をして頂きたいと考えたので、無理に外出許可を貰って車椅子で出席した。
だが、残念ながら、徒労だったようだ。
私の提起した課題はほぼ議論されることなく、法案審議は粛々と進み、2024年5月17日に衆議院法務委員会で可決された。
参議院での審議が残されているものの、恐らくこのまま成立に向かう可能性が高そうだ。
■産業界に阿る与党
政府の改正案について、少し詳しく説明しておこう。
全くダメなわけではなく、評価できる部分もある。
技能実習関連以外で
「永住資格の取り消し」(永住者が税や社会保険料の支払いを故意に怠る場合や一定の犯罪を犯した場合に資格を取り消す規定)
の追加も提案されている。
これは望ましい改正だ。
本来そんな外国人には永住資格を与えるべきではなく、取り消し規定がなかったことがおかしかった。
早急に規定を追加し、厳正に執行すべきだ。
一方、
「技能実習制度の見直し」
は全く評価できない。
政府案では、技能実習制度を廃止し、代わりに
「育成就労制度」
を設ける。
報道では、
「育成就労では、技能実習と異なり、転籍が一部認められている」
といった事ばかり強調されているが、そんな事は枝葉の話でしかない。
事の本質は、従来の
「なし崩しの移民受け入れ」
を正面から制度化するものなのだ。
従来の仕組みは、
▽国際貢献(母国で働く人材を育てる)を目的とする技能実習制度に基づき、脱法的に低技能労働者を受け入れ、
▽更に、2018年改正で創設した特定技能制度と事実上接続して、長期在留を可能にし(ただし、あくまで事実上の接続であり、本来の制度趣旨には反するので、政府の説明資料では少し隙間が空いている)、なし崩しで
「低技能労働者を受け入れ、長期在留させる」
ものだった。
今回の改正では、
▽技能実習制度の代わりに、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を設けて、制度上堂々と低技能労働者を受け入れられるようにし、
▽更に、特定技能制度と正式に接続し(政府の説明資料では、隙間がなくなる)、制度的に
「低技能労働者を受け入れ、長期在留させる」
仕組みにするものだ。
看板の掛け替えに過ぎないという以上にこれまでコソコソと行ってきた事を堂々と看板に書いてしまうような改正と言って良い。
これではもちろん、先に述べた技能実習のもたらしてきた問題(人権侵害、犯罪・社会的トラブル、賃上げと経済成長の阻害)は何ら解消しない。
それどころか、今後は堂々と低技能労働者の受け入れを拡大できることになるから、益々増幅することになるだろう。
こうした改正の方向と軌を一にして、政府は2024年3月末、特定技能の受け入れ見込み数として
「今後5年で82万人」
との方針を決定した。
制度発足時の2018年からこれまでの5年間は34万人だったから、倍増以上だ。
また、対象業種として、バスやトラック運転手などの自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野を追加する方針も併せて決定している。
特定技能の入り口である育成就労も、自ずと拡大していくことになろう。
より長期的な見通しも示されている。
2023年4月に国立社会保障・人口問題研究所が示した将来人口推計だ。
「外国人が毎年16万人入って来る」
との前提の下、人口に占める外国人比率が2020年の2%から2070年に11%にまで増えるとの推計を示した。
「移民政策は採らない」
などという空虚の説明をしながら、政府は現実には
「なし崩しの移民受け入れ」
を着実に前進させ、本格的な拡大へと向かっている。
ちなみに私は、外国人雇用協議会という一般社団法人の代表理事も務めている。
この団体には、安価な労働力の受け入れとは一線を画し、
「日本の経済社会で活躍できる質の高い人材の受け入れ」
という理念を共有する外国人材関連企業の業界団体だ。
団体の会員企業にとっては、単に短期的な利益拡大だけを考えれば、今回の法改正で外国人の受け入れ規模が拡大するのはビジネスチャンスかもしれない。
しかし、日本社会には取り返しの付かない損失をもたらしかねない。
結果として、長期的に外国人材ビジネスの基盤も損なわれる。
だから、私個人はこの法案には反対であり、参考人質疑でもそう明言した。
正直なところ、政府・与党がこんな法案を国会に提出したことには甚だ失望した。
欧米諸国の多くでは、移民問題が深刻な社会混乱をもたらしている。
日本の政治家も官僚もその状況は十分認識しているはずだ。
それなのに何故、諸外国の失敗の道を辿るように、
「なし崩しの移民受け入れ」
を平然と制度化しようとするのか。
特に自民党の保守派の議員たちは一体何をしているのか。
結局、政府・与党は、人手不足を訴える一部産業界に阿って、国の未来を危うくする危険性に目を瞑っている。
本当に情けないことだが、これが今の政府・与党の現実だ。
「政治とカネ」
を巡る自民党の対応が問題になっているが、こちらの方が余程深刻だと思う。
■より低レベル人材を求める立憲
立憲民主党は対案として
「外国人労働者安心就労法案」
を提出した。
立憲民主党の説明によれば、政府案では外国人の人権侵害の要因が除去されなていないのに対し、対案は外国人の人権を守る内容だという。
しかし、中身を見ると、
「外国人の人権を守る」
とは逆行している。
まず、技能実習と特殊技能を一本化して
「一般労働」
という制度に改め、受け入れのハードルをこれまでより引き下げる。
技能講習でも政府・与党案の育成就労でも最低限の日本語能力が求められるが、これを不要にするという。
とんでもない話だ。
日本語のできない低技能労働者を受け入れれば、職場でも地域社会でもこれまで以上にトラブルが生じる。
周囲の日本人に迷惑を及ぼすだけでなく、外国人自身にとっても人権侵害や差別を受ける可能性が高まるだろう。
更に
「永住資格の取り消し」(永住者が税や社会保険料の支払いを故意に怠る場合や一定の犯罪を犯した場合に資格を取り消す規定)
には反対し、規定を削除している。
これもおかしなことだ。
ルールを守らない外国人を野放しにすれば、外国人への反感が高まり、ルールを守る外国人までその対象にされかねない。
むしろ外国人への人権侵害を増幅しかねない。
何故こんな逆行した対案を出すのか。
結局、本当に人権を守りたいわけではないのだと思う。
本当に人権を守りたければ、低技能労働者を受け入れるのをやめ、安価な労働力として悪用される道を断てば良い。
「可哀相な外国人」
を作らないよう未然防止するのが最善の解決策だ。
ところが、立憲民主党の対案は、政府・与党案以上にもっとレベルの低い低技能労働者を受け入れ、問題を起こす外国人も在留させ続けようという。
「可哀相な外国人」
をもっとたくさん作って、その上で
「可哀相な外国人」
を守ろうという話だ。
マッチポンプそのものだが、これが
「人権を守る」
と称する人たちの求めていることだ。
参考人質疑の際、共産党の本村伸子議員から、諸外国での移民受け入れの状況について問われ、私はこう答えた。
多くの国には、安価な労働力を求める産業界がある。
一方で、可哀相な外国人を受け入れたい、守りたいという人たちもいる。
これらは全く異質なようだが、実は同じ方性を向いて、一緒になって社会を悪くしてきた。
これが欧米諸国の多くで起きてきたことだ。
現在の国会状況を見れば、日本でも同様に、産業界と人権左翼の結託が起きている。
自民党は、産業界の要望に応えて安価な労働力の受け入れを制度化しようとする。
立憲民主党は、可哀相な外国人を守ると称し、更に低レベル人材を受け入れようとする。
与野党どちらも、安価な労働力を受け入れる方針では合致して、どちらがより社会を悪くできるかを競い合っている状況だ。
そして、基本的な方向は合致しているから、こんな劣悪な政府・与党案に対して、野党は徹底抗戦しようとしない。
粛々と法案は成立に向かっているのだ。
しかも、採決に際しては、
「永住資格の取り消し」(永住者が税や社会保険料の支払いを故意に怠る場合や一定の犯罪を犯した場合に資格を取り消す規定)
に関して立憲民主党の主張を一部受け入れ、
「外国人の状況に配慮して行う」、
即ち資格取り消しは抑制的にしか行わない旨の修正が施された。
せっかく的確な改正がなされようとしていたのに規定の実効性を損なったわけだ。
最早、与野党で手を握って、社会を危機に向かわせようとしているとしか思えない。
■一刻も早く国民的議論を
残念ながら、こうした惨状をマスコミは全く報じない。
私は、これまでも技能実習の見直しについて、マスコミの報道がおよそ的外れであることを繰り返し指摘してきた。
2023年5月に法務省の有識者会議が中間報告を出した段階で本誌2023年7月号に
「弱者を作る朝日 移民を歓迎する産経」、
本誌2023年11月号に最終報告が出た段階で産経新聞にコラム
「『外国人に選ばれる国』という美名の下に…」(2023年12月10日付)
を寄稿し、新聞各紙は
「人権を守れ」
「選ばれる国に」
などと唱えるばかりで、
「安価な労働力」
に偏った外国人受け入れなどの根本問題に触れていないことを指摘してきた。
国会での法案審議の段階になっても状況は全く変わらない。
▼読売新聞は、
「外国人の就労環境を改善せよ」
「『選ばれる日本』にしていくことが大切だ」
と説いている(2024年2月10日付社説)。
▼産経新聞は、
「労働環境の是非を着実に」
と唱え、取って付けたように
「移民に対し安易に道を開くことにならにように」
と付け加えるだけだ(2024年3月21日付主張)。
▼朝日新聞は、
「労働者の権利を重んじる態勢に生まれ変われるのか疑問」
と指摘し、永住資格の取り消しについては
「筋違いで、共生の理念を否定するメッセージ」
と厳しく批判している(2024年5月10日付社説)。
いずれも、これまで本稿で述べてきたような外国人政策の根本問題には全く目を向けていない。
更に、ルールを守らない外国人との
「共生」
を求める朝日新聞に至っては、論外と言う他ない。
マスコミがダメだから、国会でもダメな議論しかなされない。
本来、外国人政策は、国の未来の姿、国民1人1人の生活に重大な影響を与える。
国民が議論に参画し、選挙などを通じ選択すべき課題だ。
一刻も早く、国民的議論の土台を整える必要がある。
そのため、
「移民政策は採らない」
などの意味不明な言葉で誤魔化すのでなく、明確な選択肢を示して議論がなされるべきだ。
第1の道は、従来の延長、即ち
「低技能労働者を中心とした移民受け入れ」
の拡大だ。
これは、欧米の多くが辿って来た道だ。
「深刻な人手不足への対応」
「人口減少する地方の活力維持」
「外国人の人権を守る」
などともっともらしい説明がよくなされるが、行き着く先は大概同じだ。
第2の道は、
「外国人排斥」
だ。
欧米各国では、第1の道で深刻な社会問題が生じ、反作用として極端な排外主義を唱える勢力が力を強めた。
第1と第2の道の対立で、社会の分断も招いた。
日本でも今後、こうした声が高まる可能性は高い。
第3の道は、そのいずれでもなく、冒頭でも触れた
「外国人を選ぶ」
道だ。
経済社会を豊かにすることに貢献する高度人材は積極的に招き、低技能労働者は受け入れない。
表向きの説明としては、日本政府はずっとそう言い続けてきたのだから、本当にその通り実行したらよい。
私は、欧米諸国の失敗を踏まえれば、これが進むべき道だと考えている。
いずれにせよ、このまま漠然と
「なし崩しの移民受け入れ」
を延長・拡大し、社会が大混乱に陥ってからでは手遅れだ。
1度立ち止まって、国の進む道を冷静に議論するには、今が最後のチャンスだ。

育成就労法案、衆院通過へ 労働力不足に外国人材確保 職場変更「転籍」も可能
2024/5/21 7:11
https://www.sankei.com/article/20240521-PBYN6RJRE5MVXCKDP3TIJGYTHM/
技能実習に代わる外国人材受け入れの新制度
「育成就労」
を創設する入管難民法と技能実習適正化法の改正案が2024年5月21日、衆院本会議で可決され、衆院を通過する。
参院に送付され、今国会で成立する見通し。
人手不足の分野で労働力を確保し、即戦力とされる特定技能水準の人材を育て、長期就労を促す。
公布から3年以内に施行する。
育成就労の在留期間は原則3年で、技能実習では原則禁止されていた同じ業務分野で職場を変える
「転籍」
を一定の条件で認める。
転籍手続きなどで悪質なブローカーを排除するため、民間業者の関与を禁じる。
技能実習で受け入れ仲介を担う監理団体は
「監理支援機関」
と名称を変え、外部監査人を設置して中立性を高める。
今後は永住者の増加も見込まれるとして、納税などを故意に怠った場合は永住許可を取り消し、別の在留資格に切り替える規定も盛り込んだ。
衆院審議では与野党が修正を協議し、永住者の生活状況に配慮することなどを付則に追加した。

国貧しくする外国人政策
政策シンクタンク代表 原英史 
2024/4/28 8:00
https://www.sankei.com/article/20240428-7IRYKFFZSFP2TFLRAJTQM47IVE/
外国人の技能実習制度の見直しなどを内容とする出入国管理法等改正案の国会審議が始まった。
2024年4月26日、衆院法務委員会で参考人質疑が行われ、私も参考人の1人として陳述を行った。
私の述べた意見は、技能実習など個別制度の手直しの前に、まず
「外国人基本法」
を制定し、受け入れの戦略を明確にすべきだということだ。
政府は従来、なし崩しで外国人政策を進めてきた。
表向きは
「移民は受け入れない」
と言いつつ、実態は安価な外国人労働力の受け入れが拡大した。
日本人に十分な賃金を払って人材確保できない企業や業界が、安易に外国人労働者に頼り、入管行政も要望に応えた。
「国際協力」
が目的の技能実習制度などの悪用を政府が容認してきたのだ。
この結果、劣悪な労働環境や失踪などの問題が生じ、外国人による犯罪、社会的トラブルなども広がりつつある。
業界・企業が賃上げせず事業継続する道が用意され、賃金水準低迷の一因となった。
今回の改正案はこうした根本問題を解決するものではない。
「技能実習制度の廃止」
を掲げ、実態とかけ離れた国際協力の名目を人材育成などに改めてはいるが、実質大きく変わった点と言えば、転職を認めた程度だ。
看板の掛け替えに近い。
今後、人手不足が拡大する中で外国人受け入れの規模は拡大するから、これまでの戦略なき受け入れの負の側面は、更に大きく広がりかねない。
政府が今、行うべきことは戦略なき状態の解消だ。
国民的な議論も経て、
「外国人基本法」
を制定することが不可欠だ。
基本法ではまず、何のために外国人を受け入れるのかを明確にする必要がある。
「人手不足の解消」
を目的とするのは危うい。
業界要望に安易に応え続けることになり、日本人も含めた賃金引き上げを阻害し、日本をより貧しい国にしかねない。
安易な労働力の受け入れは社会的軋轢も生みやすい。
目的は
「日本を豊かにすること」
とすべきだ。
生産性を高めて経済社会を発展させるため、貢献できる質の高い外国人を戦略的に受け入れていく必要がある。
併せて、外交・安保政策の観点で人的交流を強化すべき国から重点的に受け入れるよう戦略性も求められる。
日本に限らず、移民を巡る議論は、賛否が大きく分かれ、イデオロギー・感情的対立にも陥りがちだ。
解決の道は、安易な受け入れでも全面的排除でもなく、日本国にとって有用な外国人材を選び抜いて受け入れることだと考える。
だが、今回の改正案はなし崩しの延長で、安易な外国人受け入れの道を広げ、社会の混乱を招き、日本をより貧しくしかねない。
必要なのは、なし崩し的な移民から戦略的政策への転換だ。

「外国人に選ばれる国」という美名の下に… 政策シンクタンク代表・原英史
2023/12/10 8:00
https://www.sankei.com/article/20231210-K3VBLS7WBBPVZFO3Y4EMXZC6VA/
外国人が働きながら技能を学ぶ技能実習制度の抜本見直しに向けて、政府の有識者会議の最終報告書がまとまった。
国内外から指摘されてきた劣悪な労働環境などの問題を解消し、日本が
「外国人に選ばれる国」
になって、人手不足への対応を目指そうという。
具体的には
▽技能実習制度は廃止して新たに「育成就労」制度を設ける
▽人権侵害を防ぐべく、働く企業を変える「転籍」を認める
などの内容だ。
だが、欠落しているのは、
「外国人に選ばれる国」
になる前に
「日本国が外国人を選ぶ」
ことの重要性だ。
日本文化を愛し、地域に溶け込み、経済成長に大いに貢献する
「日本にいてほしい外国人」
もいれば、経済社会に貢献せず、犯罪を起こし、社会保障制度を悪用するなど
「いてほしくない外国人」
もいる。
後者が日本を選んでくれても害悪でしかない。
技能実習制度を巡る諸問題の根源は、この視点を欠いていたことだ。
「国際貢献」
という建前のもと、一部産業界の求める
「安価な労働力」
としての外国人受け入れに悪用されてきた。
欲しいのは
「安価な労働力」
だから、技能のない外国人を
「選ぶ」
ことなく受け入れ、余程の事がない限り在留し続けられる仕組みだった。
だから、劣悪な労働環境など人権侵害が生じ、一方、外国人犯罪なども起きがちになった。
本来必要な見直しは
「外国人を選ぶ」
制度への転換だ。
ところが、政府の有識者会議の最終報告書は小手先の見直しばかりで、問題の根源に手を付けていない。
新制度の目的は
「国際貢献」
から
「人材育成と人材確保」
に変えると言うが、
看板の掛け替えどころか、正面玄関から
「安価な労働力」
を受け入れることにも繋がりかねない。
一部産業界の要望に応え続けている限り、人権侵害の問題も解消しない。
結局、
「いてほしい外国人」
ほど日本を避け、選択肢の乏しい
「いてほしくない外国人」
ばかりが日本を選ぶ。
更に外国人受け入れの規模が拡大すれば、欧米諸国以上に深刻な移民問題に直面しかねなない。
これが
「外国人に選ばれる国」
という標語の行き着く先だ。
深刻な状況を前に主要新聞各紙の社説はおよそ的外れだ。
「(外国人に)選んでもらえる社会を作っていきたい」(朝日新聞)
「日本を『選ばれる国』に変えていくことが大切だ」(読売新聞)
「外国人にそっぽを向かれることになりかねない。政府は正念場」(日本経済新聞)
などと声を揃える。
せいぜい産経新聞が
「社会に様々な問題を生みかねない移民に対し、この改革が安易に道を開くことがあってはならない」
と一言指摘しているだけだ。
これでは、外国人政策はおかしな方向に向かうばかりである。

正論2024年2月号 政策シンクタンク代表 原英史
■人権左翼と一部産業界の結託?
政治とカネの騒動の陰で重要な政策転換も進んでいる。
その1つが技能実習制度の見直しだ。
技能実習を巡っては、劣悪な労働環境などの人権侵害、それに伴う失踪などが長らく国内外で指摘されてきた。
法務省の研究会でなされていた検討が2023年11月末にまとまり、2024年通常国会での法改正に向けて準備を進めることになった。
内容は、技能実習制度は廃止し、新たに
「育成就労」
制度を設けるという。
結論から言えば、看板の掛け替えどころか、むしろ更におかしな方向に向かっている。
そもそも技能実習制度の根本問題は、
「国際貢献」(途上国への支援)
という建前の下、
「安価な労働力」
として外国人受け入れの道を開いてきたことだった。
もちろん制度を有効利用する好事例もあり、全てを否定するわけではない。
だが、生産性の低い一部産業界が、賃金引き上げや設備投資の代わりに
「安価な労働力」
を要望し、政府が応えて対象業種を追加してきた面があった。
そんな事業者が利用しているから外国人への人権侵害が起きがちになった。
「安価な労働力」
を求める事業者は外国人を選ばず受け入れるので、犯罪なども起きがちになった。
生産性を高めない事業者を温存し、経済成長の阻害要因にもなった。
今回の報告書は根本問題に全く踏み込んでいない。
それどころか、
「就労育成」
制度は
「人材育成と人材確保」
が目的だという。
つまり、これまでのように
「国際貢献」
と建前を述べるのはやめて、堂々と
「人材育成」
と称する。
つまり、これまで通り、
「安価な労働力を」、
しかも正面玄関から受け入れようということだ。
その上で、人権侵害を防ぐため、別の企業などに移る
「転籍」
を認めるなどと言うが、小手先の見直しでしかない。
今、本当に求められるのは、
「日本国としてこれから、どんな外国人を(高度人材、安価な労働力など)、どのような方式で(短期か長期かなど)、どの程度の規模で受け入れるのか」
という国民的議論だ。
外国人の中には、日本の経済社会の成長や活性化に大いに貢献する
「日本に居て欲しい外国人」
もいれば、経済社会に貢献せず、罪を犯し、社会保険を悪用するなど
「日本に居て欲しくない外国人」
もいる。
これをどう選び、どう受け入れていくかが肝心なのだ。
政府はいつもこうした本来の議論から逃げ、技能実習の見直しなどの各論に突如入り込む。
基本戦略を定めていないので、結局、一部産業界などに引きずられ、なし崩しの移民受け入れに向かってしまうのだ。
これに対し、主要新聞各紙は的外れだ。
いずれも
「安価な労働力」
路線の継続を批判しようとはしない。
朝日新聞も毎日新聞も日経新聞も揃って
「これで外国人に選ばれる国になれるか」
と憂え、
「転籍」
をもっと拡大せよなどと論じている。
メディアがこんな状況では、外国人政策はおかしな方向に向かうばかりだ。
安価な労働力路線を続け、多くの
「日本に居て欲しくない外国人」
から
「選ばれる国」
になったところで、社会にとって害悪でしかないのは明らかだろう。
こんな状況から想起されるのは、欧米諸国でも生じてきた、人権左翼と一部産業界の暗黙の結託だ。
難民申請者などの幅広い受け入れに対し、人権を重視する勢力と、安価な労働力を求める一部産業界は、一見すると水と油のようだが、実は利益が一致している。
暗黙の結託を背景に、過剰な難民受け入れなどがなされてきた面が否めない。
今後、日本でも同様の事態が起きかねない。
事態は深刻だ。

弱者を作る朝日新聞 移民を歓迎する産経新聞
正論2023年7月号 政策シンクタンク代表 原英史
物事を見る時は、個々の事象の表層だけでなく、全体像や背後の構造まで見極めることが肝要だ。
例えば重大事故が生じた時、まず悲惨な被害状況などに向き合うことは欠かせないが、それだけでは不十分だ。
更に踏み込み、事故が何故生じたのか、製品の欠陥がなかったか、法規制や監督体制に問題はなかったかといった検証を行ってこそ、再発防止に繋がる。
報道機関にはそうした姿勢が求められる。
■入管法改正を巡る報道
しかるに2023年国会で焦点になっている入管難民法改正について、残念ながら新聞各紙の報道は実に底が浅い。
目立つのは、
「難民申請3回以降は送還可能」
について、在留外国人らの反対意見を紹介して批判的に報じるものだ。
毎日新聞(電子版)は
「ウィシュマさん妹『外国人の人権無視』入管法改正案の衆院委可決で」
(2023年4月29日)
で、今回の改正は
「不法滞在中の外国人の強制送還を進める狙いがあるが、日本で暮らす外国人の『排除』に繋がりかねないとの懸念も示されている」
とし、2021年に死亡したウィシュマさんの遺族の
「外国人の人権を無視し、尊重していない」
との意見を紹介している。
東京新聞は
「『国を分断する法案を許すな』『国家によるいじめだ』 入管法改正案への抗議デモ、国会前に4千人超」
(2023年5月13日)
で、仮放免中の外国籍の夫と暮らす女性のデモ参加者の声として
「夫は4回目の難民申請中」
「結婚したら収容はあり得ないと思っていたが、理由なく収容されて現実を受け止められず、弟に泣きながら電話したこともある」
「入管は厳正な判断をしているとは思えない」
「国を分断する法案を許してはいけない」
と報じる。
朝日新聞は社説
「入管法改正案 課題に背を向けた国会」(2023年4月28日)
でこう主張している。
「非正規滞在の外国人に対する入管当局の適正な処遇をどう確保するか」
「議論は大きな世論のうねりを生んだ」
「国会が拙速に封じるのは許されない」
(中略)
「入管施設での長期収容を防ぐ対策が問われたにもかかわらず、政府提出の法案は、収容をめぐる手続きに裁判所など第三者のチェックを入れることを避け、入管当局の強い裁量下にとどめる」
「難民申請中でも強制送還できる例外も設けた」
「保護を求めてきた人を迫害のおそれのある国に帰すリスクは高まる」
気になる点は色々ある。
「外国人の人権」
はもちろん尊重しなければならないが、外国人であっても日本にいる時は日本の法令を守らないといけない。
法令に違反したら収容や送還の対象になり得るのは当たり前だ。
東京新聞記事で紹介される女性は
「理由なく収容された」
と言うが、在留資格が切れているのに滞在していたので収容されたはずだ。
収容で引き裂かれて辛いだろうが、決して
「理由なく」
ではない。
だが、そうしたこと以上に根本的な問題は、不法滞在外国人に関わる不幸な事象の表層しか見ていないことだ。
■「弱者の味方」が弱者を作る
なぜ不幸な事象が生じてきたのか。
問題の根源は、不明瞭でどっちつかずで曖昧な入管行政だ。
確かに、難民認定はなかなか受け入れられない。
だが、申請を繰り返して長年日本に居続けることができる。
2010年以降は申請中の就労も法的に認められた。
在留資格が切れれば、収容されることもあるが、収容されないこともあり、何年も経ってから突然収容されることもある。
基準は不明確で運次第のようなものだ。
更に、在留特別許可という制度があり、日本人との結婚や、日本社会に定着しているなどの理由で特別に在留が認められることもある。
特に2000年代半ばには随分と許可がなされた。
こうした曖昧な入管行政が、
「日本にいれば何とかなる」
との期待をもたらしてきた。
難民認定申請者は、2000年頃は200〜300人程度だったが、2010年代後半には年間1万人以上に激増した(2018年に就労が制限されて2000〜4000人程度に減少した)。
政治的迫害など難民要件にはおよそ当てはまらず、経済目的で在留を望む外国人も相当程度含まれていたはずだ。
だが、期待と言っても、不確かな期待に過ぎない。
結果として、首尾よく在留できた人もいれば、収容や家族分断などの不幸な事態に陥る外国人も数多く生じたわけだ。
こうしてみれば、解決策は明らかだ。
認定基準を明確にすることだ。
保護すべき外国人は、何度も申請しなくても、迅速に難民や準難民として受け入れる。
認められない場合は、早期に退去してもらう。
曖昧な行政による不確かな期待を断ち切ることこそ肝要だ。
ところが、これに対し朝日新聞などは、
「申請を何度も繰り返す外国人が在留し続けられるようにせよ」
と唱える。
あやふやな期待を持たせ続けろというのだ。
「弱者の味方」
のつもりなのかもしれないが、実際には不幸な事態を更に引き起こすことになってしまう。
報じている記者らの気持ちは分からないでもない。
在留外国人などを取材するうちについ
「期待を持たせてあげたい」
と思うのだろう。
だが、不確かな期待を持たせてあげることで問題が解決するわけではない。
これも善意でやっていたことだろうが、不確かな助言で曖昧な入管行政が増幅した一部の支援者たちも、結果的には不幸を作り上げた一端だ。
朝日新聞などは自らの報道・主張が結局、新たな弱者を作りかねないことを自覚すべきだ。
■難民受け入れを進めた安倍内閣
外国人政策は全般に、建前と実態の乖離が深刻だ。
技能実習を巡る建前(国際貢献)の乖離はよく指摘されるが、もっと根本的な乖離もある。
まず
「移民は受け入れない」
という建前がある。
これについては、安倍晋三内閣の初期、経済財政諮問会議で
「年20万人の移民受け入れ」
が検討されたことがあった。
当時、諸方面から猛反発を受けて検討は中止され、その後は
「移民政策は採らない」
と言い続けることになった。
菅義偉内閣・岸田文雄内閣にも方針が引き継がれている。
だが、実態としてその間に何が起きたか。
「移民政策を採らない」
はずだった安倍内閣の間、外国人労働者総数は68万人(2012年末)から172万人(2020年末)と2.5倍に急拡大した。
その後コロナ禍で一旦鈍化したが、再び拡大しつつある。
「高度な外国人は受け入れるが、単純労働は受け入れない」
との建前もある。
だが、現実には100万人超の外国人労働者増のうち、半分は技能実習と留学生、即ち最も技能水準の低い労働者だ。
結局、実質的には
「単純労働を中心に毎年10万人以上の移民を受け入れてきた」
というのが現実なのだ。
何故こんなことになっているかというと、
「安価な労働力として外国人を利用したい」
という産業界の一部の要望に引きずられてきたためだ。
古くは1990年代から始まった日系移民の受け入れもそうだった。
その後は、技能実習や留学生アルバイトが広がった。
「移民は受け入れない」
「高度な外国人しか受け入れない」
との建前を守るため、名目上は
「日系だから」
「国際貢献(人材育成)のため」
といった理屈を付けてきたが、実態は
「安価な労働力としての外国人受け入れ」
そのものだった。
産業界の要望に引きずられるのは米国も欧州も同様だ。
メディアが
「日本と桁違いの認定率」
と称する難民受け入れも、実は
「安価な労働力を求める産業界」

「人権左派」
の意図せざる結託で過剰な受け入れがなされてきた面は否めない。
結果として過剰に
「安価な労働力としての外国人」
を受け入れ、移民に関わる深刻な社会問題をもたらした。
日本はこれまで受け入れ規模が小さかったが、今後、国内での人手不足の広がる中で
「安価な労働力受け入れ」
路線を拡大していけば、確実に欧米の轍を踏むのではないか。
■各社とも全体像度外視
技能実習については本来、こうした外国人政策の全体像を踏まえた見直しが求められるはずだ。
ところがメディアの報道では、劣悪な労働環境、失踪トラブル、海外からの「人権侵害」との指摘、といったことばかりが注目されがちだ。
法務省の有識者会議で2023年5月に公表された中間報告では、技能実習の廃止(人材育成を制度目的とする現行制度は廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新制度に)、転籍制限の緩和などを柱とする見直しの方向が示された。
これに対しても新聞各紙の報道は、
「外国人の人権を守れるか」
という視点での報道・主張ばかりだ。
朝日新聞は社説
「技能実習制度決別の意思を明確に」(2023年4月1日)
で、
「立場の弱い外国人の労働搾取だと指摘されてきた制度と、本当に決別できるのだろうか」
と危惧を示す。
日経新聞の社説
「技能実習制度の看板掛け替えでは困る」(2023年4月12日)
も、より抜本的な改革を求める内容だが、視点は
「日本が国際的な信用を取り戻すためには、技能実習制度の禍根を断ち、政策の転換を明確に示すことが欠かせない」
ということだ。
確かに
「外国人の人権」
は重要だが、課題はそれに止まらない。
「安価な労働力としての受け入れ」
を今後も維持・拡大するのか。
その場合に人材供給源はどう考えるのか(かつては中国、近年はベトナムだったが、経済水準が上がったので今後は難しい)。
諸外国で起きてきた移民問題にどう対処していくのか。
産経新聞くらいはまともな議論をしていないかと思って見てみたら、更にダメだった。
主張
「技能実習制度の廃止 人権を守る労働環境整えよ」(2023年4月25日)
では、人権問題を解決する観点から以下のように主張している。
「中間報告のたたき台案は、制度の目的を人材育成としたまま実習生を労働者として受け入れるのは『望ましくない』として制度廃止を求めた」
「その上で、人材育成だけでなく人材確保も目的とする新制度創設を提言したのは理に適う」
「ただしこれは移民問題とは別である」
「社会を変質させる恐れのある移民受け入れへと安易に道を開かないようにすべきだ」
率直に言って、これを書いた人は中間報告の意味が分かっていないのだと思う。
精度目的を
「人材育成」
から
「人材確保と人材育成」
に切り替えるとはどういうことか。
これまで表向き
「安価な労働力としての受け入れ」
とは言わずにこそこそとやってきたが、これからは正面から堂々とそう言ってしまおうということだ。
「人材育成」
も目的に残すことで技能水準の低い人材を受け入れ続けられる。
産経新聞はこの方針を
「理に適う」
として歓迎しているわけだ。
一方で
「移民問題は別」
とも言っているが、私の理解では、
「安価な労働力としての受け入れ」

「移民の受け入れ」
に他ならない。
政府の言い分では、
「在留期間の制限などがあるので移民には当たらない」
らしいが、どこの国でも単純労働者に最初から永住資格を与えることはあまりない。
今回の中間報告は、外国人政策の根本の転換だ。
だが、産経新聞までこの体たらくでは、国民の多くが気付かないうちに大転換がなされることになりかねない。
ここまで、私は外国人受け入れに否定的な主張ばかりしているように見えたかもしれないが、実は外国人雇用協議会という推進側の民間団体の代表理事も務めている。
本稿で述べたことはあくまで私個人の見解だが、この協議会も私も、能力水準が高く日本の経済社会に貢献できる外国人はもっと受け入れるべきとの考えだ。
高度人材に占める外国人の割合は、日本は欧米諸国などに比べて圧倒的に低い。
★高度人材に占める外国生まれの割合
OECDの資料を基に2010年11月経済産業省作成
◆15歳以上の高度人材の人口に占める外国生まれの割合
・英国 23%
・米国 16%
・フランス 13%
・ドイツ 13%
・日本 1%
これでは、グローバルな国際競争で日本が取り残され、日本の競争力は下がる一方だ。
日本の相対的な給与水準は急速に低下している。
2022年経済産業省が公表した
「未来人材ビジョン」
では、タイと日本の企業を比較し
「タイの方が部長に昇進する年齢が平均的に10歳若く、しかも年収が高い」
という衝撃的なデータも示された。
それなら能力に自信のあるアジアの若者は日本よりタイに行った方が良いわけだ。
このまま推移すれば、日本にやって来る外国人の水準はどんどん低下する。
経済社会への貢献度合いは小さくなり、半面で犯罪やトラブルは増えかねない。
そうした中で、
「安価な労働力としての外国人受け入れ」
路線を本当に更に進めるのか。
それで日本の競争力は上がるのか。
日本社会はどうなるのか。
産経新聞は
「社会を変質させる恐れ」
を本当に危惧するなら、真面目に考え直してもらいたい。
■「報道の能力」の欠如
毎年のことだが、
「国境なき記者団」
による
「報道の自由度ランキング」
が公表された。
朝日新聞ではこう報じられている。
朝日新聞
「報道の自由、日本は68位 主要7カ国で最下位」(2023年5月4日)
「国際NGO『国境なき記者団』(本部・パリ)は3日、2023年の『報道の自由度ランキング』を発表した」
「調査対象の180カ国・地域のうち日本は68位(昨年71位)で、昨年よりは順位を上げたものの、主要7カ国(G7)の中で依然、最下位だった」
「日本の状況について、『メディアの自由と多元主義の原則を支持している』としたものの、政治的圧力やジェンダー不平等などにより、『ジャーナリストは政府に説明責任を負わせるという役割を十分に発揮できていない』と批判した」
この記事は、重要な部分を報じていない。
本誌の読者ならば知っているだろうが、
「国境なき記者団」
のレポートでは例年、日本に関して
「記者クラブの問題」
「新聞・テレビのクロスオーナーシップ規制がないことにも起因する、メディアの極度の集中」
が指摘されている。
2023年も同様だ。
これらは
「政治的圧力」
などとは異なり、朝日新聞自らの問題だ。
少なくとも、このランキングを報じるならば、これらの点も報じないとおかしいだろう。
同時に、朝日新聞の報道の通り、
「政治的圧力」
などの指摘もある。
「2012年から右翼国家主義者(nationalist right)が政権について、ジャーナリストが敵視されている」
とか
「秘密保護法制で福島原発へのアクセスが制限された」
とか、私から見ると
「一体どこの国の話なのか?」
と思う内容だが、それこそ
「メディアの極度の集中」
の結果、朝日新聞など一部のメディアの特異な世界観や社会認識が世界にも広まっているのだろう。
私が思うに、日本のメディアに欠けているのは
「報道の自由」
ではなく
「報道の能力」
だ。
せっかく自由に報道できる環境があるのに、まともな報道ができていない。
今回取り上げた難民や技能講習に関しても、問題の本質に触れず、政府の方針に対する批判的検証もできていない。
決して政治的圧力で封じられているわけでなく、能力が欠けているからだ。
「政治的圧力」
云々と言うが、もし的確な取材に基づき自信を持って記事を出しているなら、圧力がかかっても、覚悟を持って抗したら良い。
実際には、能力不足で筋違いの記事を出しているためにしばしば抗議を受け、それに対し
「圧力だ」
と逆切れしているだけではないのか。
私自身、以前安倍政権で国家戦略特区ワーキンググループの座長代理を務めていた際、獣医学部の件をはじめ、いくつもの虚偽報道がなされ、その度に抗議していた。
朝日新聞本社に出向いて、そう間違っているのか詳細に説明したこともある。
担当の部長が何の反論もなく
「なるほど、なるほど」
と聞いているが、訂正記事が出ることはなかった。
毎日新聞にはデタラメな誹謗中傷記事まで掲載され、提訴して係争中だが、毎日新聞の言い分は
「そんなことは書いていない」
だった。
ひょっとすると朝日新聞や毎日新聞は、こうした抗議や提訴も
「政権の手先が圧力をかけてきた」
などと思い違いをしているのかもしれないが、まず自らの報道を省み、責任を持てる報道をしてほしい。
「ジェンダー不平等」
も同様だ。
取材対象に差別的な人物がいて、不当な扱いやセクハラを受けたなら、それを記事にして追い詰めれば良い。
能力不足でそれもできず、政治や社会のせいにしている様は、実に見苦しい。

国民を富ませない移民の経済効果
正論2024年7月号 青山学院大学教授 福井義高
政府が進める外国人の受け入れ策は事実上、移民社会へと舵を切ることにならないか。
その是非を巡って推進、制限論者とも自分たちの主張に拘泥し、感情論になりがちで、建設的な議論が進まぬ中、なし崩しに外国人労働者の受け入れは進んでいく。
筆者は2023年の本誌7月号で主にジョージ・ボーハス教授(米ハーバード大)による研究を基に、移民の経済効果を検討した。
建設的議論の一助とすべく移民を
「感情」
でなく
「勘定」
の問題として考えてみたのである。
その結果分かったのが、移民の受け入れは、受け入れ国のGDP(国民総生産)を増加させるけれど、移民の受け取る賃金相当分を除いた自国民に帰属するGDPはほとんど変わらないことである。
2015年の時点で移民労働者が全労働者の16%を占める米国でも、元からいる米国民分のGDPへの効果は全GDPの0.3%しかなかった。
ただし、移民の効果は企業と労働者で大きく異なる。
移民受け入れで賃金は下がり、企業利益(資本所得)は12%増加したのに対し、賃金は5%減少と推計された。
更に、自国労働者のうち移民労働者と競合する職種の賃金が下がる一方、移民と競合しない自国労働者は移民が従事するサービスの価格低下の恩恵を受ける。
こうした移民の経済効果は、米国に限らない。
2003年にオランダ中央計画局(CPB)が公表した報告書
「移民とオランダ経済」(Immigration and the Dutch Economy)
によれば、移民により労働者が5%増えると、資本(投資)財価格が一定で、移民が全て単純労働者だった場合、オランダの自国民全体への効果はほとんどない一方(GDPが0.06%増)、企業利益は4%増、非単純労働者賃金2%増に対し、単純労働者賃金は6%減少する。
米国とオランダの例から明らかなように、移民受け入れは、自国民の所得増を伴わない、格差を拡大する所得再分配政策なのである。
勝者は企業とエリート、敗者は一般国民である。
■不都合な結果
たとえ格差が拡大しても、高齢化が加速する中、外国人労働者に頼ることなしに日本経済は回らないのだから、受け入れざるを得ないという主張もあろう。
しかし、移民推進は、高齢化により益々厳しくなる国の財政状態を多少とも改善するどころか、更に悪化させるのである。
2023年に前述の
「移民とオランダ経済」
のアップデート版とも言うべき移民が財政に与える影響に焦点を当てた報告書
「国境なき福祉国家」(Borderless Welfare State)
の最終版が公表された。
(https://demo-demo.nl/wp-content/uploads/2023/06/Borderless_Welfare_State-2.pdf)
ただし、
「移民とオランダ経済」
が明らかにした移民の経済効果は、多文化共生を是とし移民受け入れを推進する政府にとって都合が悪いものだったこともあり、今回の報告は民間プロジェクトとして行われた。
オランダは2023年現在、人口が1800万人で日本の7分の1程度、65歳以上人口の割合は20%で日本の29%より低いものの高齢化が進んでおり、2021年のGDP比国民負担率(税金と社会保険料の合計がGDPに占める割合)は39%で日本の34%より高い。
日本同様、高齢化が財政に与えるマイナスの影響が深刻な問題と考えられている。
ただし、移民流入により人口は増加している。
例えば2022は前年に比べ、《native》即ち土着のオランダ人の人口は0.1%(2万人)減少したものの、移民とその子供は3.1%(13万人)増加し、全体では0.7%(12万人)増加した。
こうした中、報告書
「国境なき福祉国家」
は、通常アクセスできないオランダ全人口1720万人(2016年初人口+年間出生児数)の個人データを使い、オランダ人と移民、後者は出身地地域別にそれぞれどれだけ財政に貢献し、また支出を伴ったかを推計している。
まず、全人口がオランダ人1340万人と移民385万人に大別される。
移民は他国で出生しオランダにやって来た1世(第1世代)とその子供である2世(第2世代)からなり、全体の22%を占める。
尚、当初から帰国する予定の外国人労働者とその家族も含まれている。
移民は欧米(western)出身と非欧米(non-western)出身に大別され、更に42地域にグループ分けされている。
欧米に含まれるのは、ロシアを含む欧州諸国、北米(米国とカナダ)、大洋州(オーストラリアとカナダ)、インドネシア(旧オランダ領)そして日本である。
調査の基準となる2016年のデータを基に、オランダ人と移民に分けて財政への単年度ベースの影響を示したのが表1だ。
★表1 オランダ人・移民別財政への影響(単年度ベース、2023年価格、1ユーロ=160円換算)
(注)「国境なき福祉国家」に基づき筆者推計/日本は欧米に分類
「@人口(百万人)A人口(全体比)B貢献額(兆円)C支出額(兆円)D純貢献額(兆円)E純貢献額(GDP比)F1人当たり純貢献額(万円)」
・合計:@17.2AーB60.2C60.5D-0.2E-0.2%Fー
・オランダ人:@13.4A78%B49.5C46.3D3.2E2.3%F20
・移民全体:@3.8A22%B10.7C14.2D-3.5E-2.4%F-90
・移民欧米:@1.7A10%B5.9C5.7D0.2E0.1%F10
・移民非欧米:@2.1A12%B4.8C8.5D-3.7E-2.6%F-170
単年度ベースというのは、この1年間の収支に基づく、筆者たちの表現を借りれば
「静的」
な推計である。
尚、
「国境なき福祉国家」
のデータは全て2016年価格のユーロで表示され、その後のインフレが考慮されていない。
ここでは、オランダの2023年消費者物価指数が2016年比26%上昇したことを反映させ1ユーロを160円で換算して、2023年価格で表す。
以下、同様である。
全体の78%を占めるオランダ人の財政への貢献は49兆円5000億円だったのに対し、46兆3000億円が支出されたので、差し引き純貢献額はプラス3兆2000億円、GDP比プラス2.3%の貢献となった。
一方、全体の22%を占める移民は貢献額10兆7000億円に対し支出14兆2000億円で純貢献額マイナス3兆5000億円、GDP比2.4%の負担(-2.4%)をかけたことになる。
ただし、欧米出身と非欧米出身で大きく異なる。
全体の10%を占める欧米出身移民は貢献額5兆9000億円に対し支出額5兆7000億円で純貢献額プラス2000億円、GDP比プラス0.1%でほぼ収支トントンであった。
ところが、全体の12%を占める非欧米出身移民は、貢献額4兆8000億円に対し支出額8兆5000億円でGDP比2.6%の負担(-2.6%)をかけたことになる。
これは、1.6%と推計されているオランダにおける高齢化がもたらすマイナスの影響を上回っている。
1人当たりで見ると、非欧米出身移民は170万円の負担(マイナス170万円)となっている。
欧米出身移民は貢献額と支出額が釣り合っているので、移民の財政負担はほぼ全てオランダ人の肩にのしかかることになる。
■資本ストックで見る重要さ
しかしながら、単年度ベースの数値は、移民受け入れの効果を判断する上で、必ずしも適切な指標とは言えない。
移民受け入れは(マイナス価値のある場合も含め)一種の投資であり、永住せず出国(remigration)する移民もいるけれど、長期に渡って財政に影響を与えることは間違いない。
移民を受け入れることに伴い、学校教育や医療、その他行政サービスを追加的に提供する必要が生じ、財政負担が増す。
従って、将来に渡る移民のストック(複数年度ベース)価値を推計する必要がある。
実際、
「国境なき福祉国家」
では、単年度ベースの静的アプローチでなく、経済学で
「世代会計」
と呼ばれる手法を用いたストックベースの動的アプローチが必須であることは移民に限らない。
政府がある年に長期に渡る支出にコミットしても、その年の支出として計上されるのは実際に支払った額だけである。
例えば、日本政府が10年間毎年1兆円合計10兆円の新規道路建設を決定しても、最初の年には1兆円しか支出計上されない。
しかし、財政への影響を考える場合に重要なのは、長期に渡って必要となる10兆円という金額であることは自明だろう。
さて、投資即ちストックとしての移民を考える場合、移って来た本人のみならず、その子供たちの分も考慮する必要がある。
また、移民全てが永住するわけではないので、受け入れ国にとってのストック価値を推計するには、出国する可能性も考慮し、その分を控除する必要がある。
「国境なき福祉国家」
は、この2点を考慮に入れた推計をメインの数値としてしている。
移民1人当たりの子供の数については、出身地域別で出生率が違うことも考慮されている。
まず、欧米出身移民に関しては、ストック価値はほぼゼロと推計された。
つまりオランダ財政に貢献もしないけれど、負担にもならないということである。
★表2
非欧米出身移民の財政への影響(ストックベース、2023年価格、1ユーロ160円換算)
@2016年A2015〜2019年平均B1995〜2019年平均
・純貢献額(兆円):@-6.4A-5.4B-3.4
・2016年GDP比:@-4.5%A-3.8%B-2.4%
一方、表2に示したように、非欧米出身移民は、1995〜2019年の25年間で見ると、財政への純貢献額は年平均マイナス3兆4000億円、GDP比2.4の負担(-2.4%)であった。
2015〜2019年の直近5年間だと、純貢献額はマイナス5兆4000億円、GDP比3.8%の負担(-3.8%)、2016年は難民が大量に入国したため、純貢献額はマイナス6兆5000億円、GDP比4.5%の負担(-4.5%)であった。
要するに、非欧米出身移民はマイナスの資本ストックであり、オランダ人にとって移民受け入れは、ただでさえ高齢化によって厳しくなる一方の財政状況を更に悪化させる負の投資ということになる。
「今年いくらかかったか」
というフローで見るよりもストックで見た方が、貢献額がプラスの場合は小さく、マイナスの場合は更にマイナス幅が大きくなる。
これは、移民1世は大人になってから入国するので、オランダ人にも共通する、子供時代の財政上のマイナス要因(公教育コストなど)がかからないためである。
■移民1人当たりはどうか
移民全体でなく、移民1人当たりで見た場合、オランダで生まれる子供や出国の可能性を考慮した、ストックとしての財政への影響はどのくらいなのか示したのが表3である。
★表3
出身地別1人当たり移民の財政への影響(ストックベース、2023年価格、1ユーロ=160円換算)
(注)「国境なき福祉国家」に基づき筆者推計
@出国の可能性を考慮した場合(基本推計)A出国の可能性を考慮した場合(最小推計)B出国の可能性を考慮した場合(最大推計)C永住した場合
(単位:億円)
・仮想オランダ人:@プラス0.2AーBーCプラス0.4
・移民平均:@マイナス0.3AーBーCマイナス0.5
・移民欧米:@0.0AーBーCプラス0.1
・移民日本:@プラス0.4Aプラス0.3Bプラス0.5Cプラス1.0
・移民非欧米:@マイナス0.6AーBーCマイナス1.0
・移民中国:@マイナス0.1Aマイナス0.2B0.0Cマイナス0.2
・移民トルコ:@マイナス0.7Aマイナス1.0Bマイナス0.6Cマイナス1.1
・難民平均:@マイナス1.0AーBーCー
・難民欧米:@マイナス0.6AーBーCー
・難民非欧米:@マイナス1.1AーBーCー
・難民トルコ:@1.0AーBーCー
推計に際して、当然ながら多くの仮定が置かれており、仮定を変更すると数値が大きく変動するようでは信頼が置けない。
その懸念に対応し、仮定をもっともらしい範囲内で変えた推計がいくつか試みられている。
結果的に、最小推計と最大推計の差はさほど大きくなく、基本推計の数値はかなり信頼度が高いと思われる。
まず、比較の基準として、オランダ人と同じ属性の人間が移民として訪れた場合を考える。
入国する年齢や出国の可能性も考慮した、この
「仮想オランダ人」
のストック価値はプラス2000万円である。
移民は平均でマイナス3000万円と推計される。
ただし、出身地域別の違いは大きい。
欧米出身移民は全体ではほぼ財政に中立的ながら、日本出身移民はプラス4000万円の
「優良資産」
となっている。
日本以外では北米、大洋州、北欧、そして西欧の一部からの移民のストック価値が高い。
皮肉なことに、途上国の移民が行きたいと願う国からの移民こそ、オランダにとって
「資産」
価値があるということだ。
一方、欧米系でも東欧の一部からの移民のストック価値はマイナスである。
非欧米出身は平均でマイナス6000万円の
「負債」
となる。
ただし、やはり出身地別のバラツキは大きく、中国がマイナス1000万円であるのに対し、トルコはマイナス7000万円となっている。
移民は更に入国理由別に推計されており、オランダに限らず受入国にとって最も負担となる難民の場合、欧米出身(旧ユーゴスラビアなど)がマイナス6000万円、非欧米出身はマイナス1億1000万円だった。
その多くがクルド系と思われるトルコからの難民はマイナス1億円である。
更に、移民が永住した場合の推計も行われている。
財政貢献がプラスにせよマイナスにせよ、永住を仮定しない基本推計よりも、絶対値(プラス幅あるいはマイナス幅)は大きくなる。
とりわけ、例外的に日本出身移民は2世になってもオランダ人より純貢献額が大きいので、ストック価値はプラス1億円となる。
一方、トルコ出身移民はマイナス1億1000万円である。
トルコ出身のうち難民の数値は未公表なものの、恐らく1億5000万円前後と思われる。
日本出身移民が例外的というのは、日本以外でストック価値が高い欧米出身移民の場合、2世になるとほぼ財政に中立的なオランダ人(2016年生まれの場合、ストック価値マイナス60万円」)にほとんど同化するのに対し、日本出身2世はストック価値がプラス2000万円と推計されるからである。
■福祉国家が終わる
オランダ財政に貢献する移民と負担となる移民を分けるものは何か。
学力(教育レベル)と共に重要なのが文化的距離(宗教や慣習などの隔たりの大きさ)である。
学力が高いほど、出身地とオランダの文化的距離が近いほど貢献額は大きく(負担額は小さく)なる。
実は、日本出身移民はオランダ人より学力が高く、日本は米国よりも文化的距離がオランダに近いとされている。
その結果、日本出身移民の財政から見た同化度はオランダ人(定義上100%)を上回る134%となっている。
一方、貢献額がマイナス即ちオランダ財政の負担となっているのが、学力や文化的距離で隔たりがある
「アフリカ・イスラム・クラスター」
である。
推計では2世までしか考慮されていないけれども、こうした地域からの移民は、3世以降もオランダ社会への同化が進んでいないため、財政上の重荷である状態が続くと考えられる。
従って非欧米出身移民による財政への負の影響は、推計値よりもっと大きい可能性が高い。

「アフリカ・イスラム・クラスター」
の移民2世にかかる治安維持コストは他地域の2世の2.3倍と推計されている。
日本同様、オランダでも少子高齢化が進んでいる。
推計時の出生率はオランダ人女性1.7、欧米移民女性1.4、非欧米移民女性2.0であった。
コロナ禍前2019年には更に低下し、オランダ人女性1.6、欧米移民女性1.3、非欧米移民女性1.9だった。
少子高齢化による年金財政悪化、経済成長率低下に対処するには、移民を必要とする意見がある。
しかし、
「国境なき福祉国家」
が示したのは、途上国からの移民流入は、財政を更に悪化させ、そのマイナスの影響は高齢化の影響を上回るという現実である。
途上国出身の場合、難民だけでなく、労働移民であっても財政には負担となる。
「働くならば移民は問題ない」
という主張は正しくないのだ。
財政問題を度外視するとして、オランダが現実の年齢人口バランスを維持するために移民受け入れを進めた結果、21世紀終わりには人口は1億人に達する。
ただしオランダ人は僅か1割の少数派になってしまう。
「国境なき福祉国家」
が指摘するように、移民で少子高齢化を抑制する試みは必ず行き詰まる
「ネズミ講」
のようなものである。
今回の推計に含まれていないけれど、オランダのように既に人口密度が高い国の場合、人口増が社会・自然環境にもたらす非財政的コストや、自国民の心理的コストを無視することができない。
可住地面積当たり人口密度がオランダの倍近く、同質性の高い社会を長年に渡って構築してきた日本の場合、こうしたコストは更に大きなものとなるのは確実である。
オランダ政府は、ほぼ無条件に受け入れている
「難民」
と称する移民の多くが制度を悪用していることを認めている。
にもかかわらず、有効な対策を取ろうとしない。
労働移民についても、選り好みせず途上国から受け入れている。
<報告書は
「政府の移民政策」
が長期的に何を意味するかについて以下のことを疑いなく示した>
<財政への増大するプレッシャー、そして最終的には我々が知る福祉国家の終わりである>
<従って、現在の法的枠組みを続けるという選択は、明示することなく福祉国家に反対する選択なのだ>
■議論に欠けるもの
本稿ではオランダを例に、移民を財政的観点から分析する見方を紹介した。
多文化共生あるいは人権の観点に基づく移民推進論者は、移民の是非を金銭価値のみで判断するのはけしからんと主張するであろう。
しかし、移民を巡って、どのような美辞麗句で飾り立てようと、途上国からの大量移民は、一般国民からエリートへの所得再分配をもたらす上、財政を圧迫し、自国民に対する行政サービス水準を低下させる。
とりわけ弱者に対するセーフティーネットを劣化させる可能性が高い。
如何なる政治信条の持ち主であろうと、政治家が第1に考えねばならないのは、まず自国民、とりわけ弱い立場にある国民の福利であるはず。
ここで指摘した移民の経済財政効果を十分考慮せず、なし崩しに外国人労働者を受け入れることは、自国民への裏切りと言っても過言ではない。
【付記】本稿作成に当たり、「国境なき福祉国家」の筆頭著者ヤン・ファンデベーク博士より貴重な助言を賜った。

人手不足論はまやかしの市場重視
正論2023年7月号 青山学院大学教授 福井義高
海外からの移民を積極的に受け入れるべきという意見には2つのタイプがある。
まず、昨今流行りのダイバーシティ、多文化共生の観点からのもの。
一方、こうした移民による多様化推進論に対しては、日本社会の独自性を保つため、移民は受け入れるにしても限定的にすべきという主張も有力である。
もう1つの移民推進論は、人口が減少する中、経済成長を実現するには、移民による労働力確保が不可欠という、経済的要請によるものである。
実際、様々な分野で、なし崩しに外国人労働者受け入れが進んでいる。
多様性か独自性かという、特定の価値観に基づく主張は、お互い自分が正しいことを前提に相手を非難する感情論になりがちで、言いっ放しに終わってしまう。
それに対し、経済的観点からの是非は、生前、経済倫理学を提唱された竹内靖雄元成蹊大教授に倣って、感情ではなく勘定、つまり損得の問題として、検討することが可能である。
「感情」
ではなく
「勘定」、
つまり損得の問題として、検討することが可能である。
というわけで、ここでは高邁な文化論は避け、対象を移民(外国人労働者)の経済効果に絞って考えてみたい。
■もし国境を撤廃したら
第二大戦後、米国主導で進められた貿易自由化によって経済成長が促進され、日本のみならず各国国民の生活水準は大きく向上した。
貿易自由化とは、モノの移動に関して国境を撤廃するということなので、ヒトの移動に関しても国境を撤廃すれば、更に経済成長が促進されると考えても不思議ではない。
実際、グローバル経済推進論者は、そのように主張している。
もし世界中で移民制限を撤廃し、ヒトの移動を完全自由化すれば、その経済効果は如何ほどなのか。
幸い、移民の経済研究の第一人者であるジョージ・ボーハス教授(ハーバード大)がシミュレーションを行っているので、その結果(一部筆者推計)を紹介しよう。
ここでは、途上国の労働者は祖国を離れることに特別なコストは伴わないケースを取り上げる。
まず、世界銀行の推計に基づき、世界を人口11億人うち労働者6億人の先進国と、人口59億人うち労働者27億人の発展途上国に大別する。
現実のデータに即して、先進国・途上国共に、企業が利益を人件費に回す割合を示す
「労働分配率」
を70%、先進国と途上国の賃金格差を4対1と仮定する。
移民自由化の賃金格差は、労働力の質ではなく、社会の仕組みを反映したもので、先進国の高賃金は、途上国に比べて、より効率的な経済活動を可能とするものになっているからと考える。
従って、移民を完全自由化すれば、自由貿易によって同じモノの値段が世界中で等しくなるように、ヒトの値段即ち賃金も世界中で同じなる。
また、移民を完全自由化すると、先進国と途上国の人口と賃金はそれぞれどうなるのか、2つの場合を考える。
まず、移民を受け入れても、それまで効率的な経済活動を可能にしてきた先進国の社会体制が変わらない場合、そして、途上国からの大量移民で、先進国の社会が半ば途上国化する場合である。
先進国社会不変の場合、世界全体の国内総生産(GDP)は57%増加する。
ただし、先進国経済に対する移民の経済効果を見るには、移民自身が得る経済効果(賃金)を除外し、土着の自国労働者賃金と自国資本に帰属する所得の合計を、移民自由化前後で比較する必要がある。
移民賃金を除外しても先進国のGDPは39%増加するので、モノの自由貿易同様、ヒトの移動自由化は自国民に帰属する経済のパイを大きくする。
しかし、移民自由化がもたらすGDP増加は、大規模な移民と表裏一体である。
国境撤廃によって、労働者の家族も含めて、途上国人口の95%に当たる56億人が先進国に移住することになるのだ。
その結果、国民・移民共通の先進国賃金は39%減少する。
ただし、途上国からの移民から見れば143%の増加である。
一方、先進国の資本所得(企業利益)は、労働者増・賃下げの恩恵で、220%増加する。
大量の移民が流入すれば、受け入れる側の先進国の社会体制が、その経済効率性も含めて、大きく変化すると考える方がもっともらしい。
やって来るのは、働くロボットではなく、人間なのだから。
途上国からの大量移民で先進国社会が半ば途上国化する場合、移民自由化前より低下するとはいえ、それでも途上国より高い生産性が維持される先進国に、途上国人口の84%に当たる50億人がやって来る。
その結果、世界全体のGDPは13%増加するものの、社会の途上国化で、移民に支払われる賃金を除外した先進国のGDPは7%減少すると共に、自国民・移民共通の先進国賃金は56%減少する。
それでも移民から見れば74%の賃上げである。
一方、先進国の資本所得(企業利益)は、社会の途上国化によるマイナス効果にもかかわらず、労働者増・賃下げ効果がそれ以上に
「貢献」
し、108%増加する。
移民自由化の勝ち組は、言うまでもなく、まず先進国で働くことで賃金が大幅に上昇する途上国からの移民である。
そして、途上国から安い労働力を
「輸入」
することで、利益を大幅に増やすことができる企業である。
一方、負け組は、移民労働者による
「賃金ダンピング」
で、大幅な賃下げを余儀なくされる先進国の自国労働者である。
先進国における移民推進とは、グローバル化とか多様性とかいった美辞麗句を取り去って、その経済効果を直視すれば、労働者から資本家・経営者への所得再分配政策である。
ボーハス教授が指摘するように、
「先進国の労働者が、国境撤廃論者に従うことを拒否するのは、人種差別や外国人排斥とはほとんど関係ない」
「単に新世界秩序(New World Order)から恩恵を受けないからなのだ」。
移民推進は、先進国の国民大多数から見ると、勘定の問題として割に合わないのである。
■移民大国、米国の場合
国境完全撤廃によって途上国民の大半が移民するケースなど非現実的過ぎて、今後の日本の移民政策の参考にならないという批判があろう。
確かにそうかもしれない。
そこで、移民大国である米国の実例を、ボーハス教授の推計(一部筆者推計)に依りながら、見てみよう。
結論から先に言ってしまえば、移民推進が所得再分配政策であるという、その本質は変わらない。
2015年のデータによると、全労働者のGDPに対する貢献分は12%を占める。
しかし、移民流入で増加したGDPから移民の取り分を除くと、移民が自国民にもたらす経済効果はGDPの0.3%でしかない。
ただし、GDPの内訳を見ると、自国労働者の取り分が3%減少したのに対し、企業の取り分は3%増えている。
国境完全撤廃でほとんどの途上国民が先進国に殺到する場合と異なり、移民労働者が全体に占める割合が
「僅か」
16%であっても、移民労働者がいない場合に比べ、賃金は5%低下し、企業利益は13%も増加するのである。
更に、移民に対して提供される公的サービスの財政負担増が移民の納税額を上回る、つまり財政純負担増は確実であり、移民流入のネットのGDP貢献分0.3%は、その純負担増で帳消しになるか、マイナスになっている可能性が高い。
ここまでは労働者を一括して扱ってきたけれども、労働者といっても、大企業経営幹部から非正規雇用の単純労働者まで様々である。
実際に、移民労働者との競争を強いられ、賃金低下圧力に晒されるのは、元から低賃金の職種に従事する自国労働者である。
ボーハス教授の推計によれば、移民流入で競合する職種の労働者が10%増えると、その賃金が少なくとも3%、場合によっては10%程度低下する。
一方、移民労働者と競合しないエリートたちは、むしろ移民労働の恩恵を受ける側である。
移民推進は労働から資本への所得移転のみならず、低賃金労働者から高賃金労働者への所得移転をもたらす。
そもそも、アメリカは移民の国とされるけれども、これまで常に大量の移民を受け入れてきたわけではない。
日本では
「排日移民法」
と呼ばれる1924年に成立した改正移民法により、北・西欧系を除く移民が大幅に制限され、1920年代半ば以降、移民が激減する。
それから約40年経った1965年に移民法改正が行われた際、法案を提出した国会議員も政府も、この改正は移民送出国の構成が若干変わるだけで、移民数自体が増加することはないと
「確約」
したにもかかわらず、移民数は激増、しかも、改正前と異なり、欧州ではなく、途上国からの移民が大多数を占めるようになった。
20世紀半ばの移民制限期に所得格差が縮小したのに対し、大量移民が始まった1970年代以降、所得格差が拡がり、今日に至っている。
この間、米国非管理職労働者のインフレ分を除いた実質賃金はほぼ横ばいだったのに対し、大企業社長(CEO)報酬は労働者賃金の20倍程度だったのが、300倍を超える水準となっている。
■誰のための移民推進なのか
まず、移民の経済的メリット・デメリットを検討するに当たり、何を基準とするのか、はっきりさせる必要がある。
移民自身から見れば、日本の移民受け入れはプラスに決まっている。
そうでなければ、そもそも日本にやって来ない。
しかし、デモクラシーにおける政策の判断基準は、まず主権者たる国民の幸福や豊かさであり、今いる日本人にとって新たな移民受け入れがどのような経済効果をもたらすかが、移民政策の是非を巡る判断基準となるべきであろう。
出生率の低下で人口が減少する中、新たな労働力として大量の移民を受け入れれば、日本のGDPが押し上げられることは間違いない。
ただし、経済成長政策として有効か否かを判断するには、移民を受け入れなかった場合のGDPと、受け入れた場合のGDPから移民賃金と移民受け入れに起因する純財政負担を引いた額を比較しなければならない。
米国の実例でも分かる通り、移民推進は自国民の経済成長にはほとんど影響しない、ほぼ純粋な所得再分配政策である。
社会の途上国化による生産性の低下、純財政負担を考慮すれば、経済成長への効果はむしろ全体としてマイナスの可能性が高い。
移民推進は、労働から資本への所得移転に加え、低賃金労働者から高賃金労働者への所得移転を引き起こす、弱肉強食の格差拡大政策なのだ。
企業経営者をはじめ社会のエリートたちに移民推進論者が多いのは、要するに自分にとって得だからである。
多様化推進の観点からの移民推進論も、こうした主張を行う人が概して高学歴エリートであることを鑑みれば、正義感溢れる
「感情」
論でカムフラージュされた
「勘定」
論と見ることもできる。
一方、欧米では弱者の味方のはずの左翼・リベラルが移民受け入れを推進しているけれども、これは比較的最近の現象である。
元々、左翼・リベラルの間では、支持基盤だった労働者の利益を守るため、移民受け入れに慎重な意見が有力であった。
冷戦時代、
「移民の継続は深刻な問題をもたらす」
「合法、不法とも移民をストップせねばならない」
と主張したのは、極右どころか欧州左翼の大立者ジョルジュ・マルシュ仏共産党書記長である。
米国のある有力な大統領候補もこう語っていた。
「不法移民流入を阻止せねばならない」
「この目的を達するため、国境警備要員を増やさねばならない」
「合法移民に関する法律も、合衆国が移民の数と質をもっとコントロールできるよう改正せねばならない」
「移民受け入れに関しては、まず、合衆国は、無責任な他国干渉への干渉ーこうした干渉はほぼ確実に政治難民を生み出すーによって難民が生じることだ」
「もっと用心しなければならない」
「本当に難民かどうか、より確実に難民申請を審査せねばならない」。
発言の主はドナルド・トランプ前大統領ではなく、ベトナム反戦で名を馳せたリベラルの雄、ユージン・マッカシー民主党元上院議員である。
要するに、今日の労働者は左翼・リベラル主流派に見捨てられたのである。
ただし、新たな動きも見られる。
ドイツで急進左翼の代表格とみなされてきた旧東独出身のザーラ・ヴァーゲンクネヒト左派党連邦議会議員が、大量移民は自国労働者の経済的利益を損なうという
「勘定」
論を前面に出した移民反対論を唱え、左翼・リベラル主流派から非難される一方、
「極右」
正統とされるAfD支持者の間で大人気となっている。
■低賃金は企業の敗北宣言
豊かな社会では、必要であったも自国労働者がやりたがらない仕事が増え、移民なしにはやっていけないという主張をよく聞く。
しかし、先進国で移民が従事するのは、自国労働者がやらない仕事ではなく、現在の賃金水準ではやりたくない仕事である。
不法移民を一掃した米国のある地域で現実に起こったように、外国人労働者がいなければ、自国労働者がやりたくなる水準まで賃金は上昇する。
また、企業は技術革新で乗り切ろうとする。
実際、それは高度成長期の日本で起こったことである。
「人手不足」
にもかかわらず、移民を入れなかったことで、製造現場ではロボットが普及して省力化が進み、高学歴エリートと大衆の賃金格差が縮小し、戦前の大企業大卒社員の家庭では当たり前だった
「女中」
が賃金高騰でほとんど姿を消した。
一方、我々がどうしても生活に必要と考える財サービスであれば、十分に生産性を上げることができないため賃金上昇を価格に転嫁せざるを得ず高価格となっても、需要は残る。
一例として、生産性向上が困難な理美容業の料金は、高度成長前に比べ一般物価水準を超えて大きく上昇したけれども、今も需要は健在である。
低賃金でないと事業を継続できないというのは、高い価格を支払ってまで買う価値のある財サービスを提供できないという、企業としての敗北宣言に過ぎない。
低賃金の外国人労働者への依存は企業にとって麻薬のようなものであり、自国民の所得格差を拡げるのみならず、生産性向上努力を妨げ、結果的に、企業の衰退をもたらす。
経済的観点からの移民推進論者は、ほとんどの場合、自称市場重視論者でもある。
しかし、現在、
「人手不足」
が叫ばれている仕事の多くは、財サービス価格が低過ぎて超過需要が生じているのであって、価格を上げて需要を減少させるのが、本来の市場重視であろう。
その典型例が貨物輸送である。
人手不足対策に議論は不要である。
市場のシグナルに耳を傾け、トラック運転手の賃金を上げればよいのだ。
現在の価格で現時点の需要に応じようとする需要充足主義は、計画経済的・社会主義的発想であり、市場重視とは無縁である。
人手不足論者にみられる、こういう財サービスの価格あるいは職種の賃金は低くて当然という発想は、単なる思い込みに過ぎない。
理美容サービス料金に見られるように、社会の変化に伴い、財サービスの相対価格は劇的に変化してきた。
戦後、相対賃金が大きく変化したことは、先に述べた通りである。
人手不足を理由とした移民推進論は、国民経済の観点からは到底正当化できない。
市場のダイナミズムを無視したまやかしの市場重視、その実、反至上主義なのだ。
国境完全撤廃のシミュレーションはともかく、米国の実例は、EBPM(Evidence-based Policy Making:証拠に基づく政策立案)を標榜する日本政府にとって、移民政策を検討する際に、大いに参考になるはずである。
ともあれ、移民問題は感情ではなく、冷静な議論が可能な勘定の問題という認識が求められる。

EBPM(証拠に基づく政策立案)とは?
EBPMとは、Evidence-based Policy Makingの略称であり、日本においては内閣官房が以下のように定義している。
(1)政策目的を明確化させ、
(2)その目的のため本当に効果が上がる行政手段は何かなど、当該政策の拠って立つ論理を明確にし、これに即してデータ等の証拠を可能な限り求め、「政策の基本的な枠組み」を明確にする取組。
つまり、たまたま見聞きした事例や経験(エピソード)のみに基づいて政策を企画するのではなく、データを活用し、合理的根拠(エビデンス)に基づいて企画すること。

人手不足解消のカギは外国人労働者を受け入れないこと
Hanada2024年7月号 小西美術工藝社社長 D・アトキンソン
■衝撃的なアンケート結果
岸田政権は2024年3月29日、人手不足の分野で一定の技能がある外国人労働者を受け入れる在留資格
「特定技能」
について、2024年度から5年間の受け入れ枠を82万人とすることを閣議決定しました。
2023年度までの5年間で設定していた人数の2.4倍となり、外国人労働者の受け入れが加速することになります。
とんでもない話だと憤っていたら、最近、更に衝撃的なニュースが飛び込んできました。
「外国人労働者受け入れ『賛成』62%、高齢層で大幅増 朝日世論調査」(朝日デジタル)
<朝日新聞社が全国世論調査(郵送)のテーマ「人手不足社会」に関連して、人手不足の業種を対象に外国人労働者の受け入れを拡大する政府方針への賛否を尋ねたところ、「賛成」62%が「反対」28%を大きく上回り、賛否が拮抗した5年余り前の調査から大きく変化した>
もちろん、日本のマスコミの世論調査なので、どういう業種の人を対象にしたか、経営者だけにアンケートしたのかなど詳細が出ておらず、留意は必要ですが、6割もの人が外国人労働者受け入れに賛成というのは、驚きました。
人手不足に悩まされているのは、ほとんどが中小企業です。
人口減少の下、中小企業は生産性が低い。
有給休暇の取得率などを見ると、労働環境が大企業より厳しいので、労働者が不足すると、まず中小企業が人手不足になる。
日本の中小企業は社員数が非常に少ないので、すぐに大きなダメージを受けます。
日本企業の平均従業員数は9人。
85%の日本企業は、平均従業員数がたった3.4人。
仮に従業員数3人の職場から1人辞めると、労働力が3分の1減り、たちまち
「人手不足」
に陥ってしまうのです。
■努力したくない中小企業
私から言わせれば、中小企業は人手不足を解消する努力が進んでいません。
私は以前から、中小企業は統合して、次第に規模を大きくしていかなければいけないと主張しています。
合併統合することで、経営陣などの管理職や経理はこれまでの半分で済み、その分、人手不足の部署に人手を回すことができる。
統合まではいかなくても、会社間でお互いに人手が足りない時には融通し合うことができるよう連携はするべきです。
もう1つは、機械化など設備投資による作業の効率化。
ただ、経営者としては、日本人は低賃金でも仕事を真面目にこなしてくれるので、コストを掛けて設備投資を行う動機が生まれません。
機械化などをするより、低賃金で人間に働いてもらう方が安上がりなのです。
ここは肝心なポイントで、人口減少によって生じている人手不足は、本来、企業がそれに合わせてビジネスモデルを変えるチャンスであり、変えなければならないのです。
しかし、連携も合併もしたくない、設備投資で生産性向上もしない・・・中小企業がビジネスモデルを変える何の努力をすることもなく現状維持をするため、唯一残された方法が、減っていく日本人労働者の代わりに外国人労働者を受け入れることなのです。
現時点で、200万人の外国人労働者が日本に来ています。
2060年には生産年齢人口が3000万人減るので、低賃金労働者依存症の中小企業経営者を満足させるためには、1000万人単位で外国人労働者を受け入れなければならないでしょう。
主に最低賃金で働く外国人労働者が大量に入って来ると、日本人の賃金も上がらなくなります。
経営者は楽でしょうが、社会保障の負担が増える一方の日本で、財政も労働者も大きな打撃を受けます。
こんなふざけた話があるでしょうか。
■これまで以上に増える軋轢
2023年、2500万人の外国人観光客が日本を訪れました。
一方、
「オーバーツーリズムだ」
(ある地域を訪れる人が急増したことにより、その地に暮らす人々や自然環境、生態系、景観などに悪影響を及ぼしている状況)
と批判する声もあります。
満員でバスに乗れないとか、ホテルが満室で取れないとか、マスコミなどで
「オーバーツーリズム」
と批判されていることは、日本側の受け入れ体制の未整備によって起こっていることで、
「オーバーツーリズム」
などではありません。
1カ月当たり200万人来ているインバウンドは海外旅行できるレベルの層で、日本におカネを落として、欧米人などの場合、2〜3週間したら国に帰っていきます。
一方、外国人労働者は全く逆です。
中小企業が求めているのは、最低賃金で働いていくれる人材。
日本の最低賃金は世界23位で、ハンガリーやイランよりも低く、後進国レベル。
そんな低賃金であっても働きに来る外国人労働者は、言い方は悪いですが、どういう教育水準の人か分かりません。
そういう外国人が1000万人単位で日本に来て、定住するのです。
しかも最低賃金で働く外国人労働者は、経営者たちが住むようなエリアではなく、一般庶民が住むエリアで生活するようになる。
欧州などでは、低賃金の移民などは大変な問題を引き起こしています。
そもそも、イギリスがBrexit(イギリスが欧州連合 (EU) から離脱すること、離脱したこと)に踏み込んだ最大の原因は、庶民が強いられた移民の問題でした。
インバウンドは一時的にしかいないから、発生するトラブル、軋轢などたかが知れていますが、定住する外国人労働者は違います。
既にして、日本に住むイスラム教徒が
「土葬できる墓を作ってほしい」
と要請していたり、神社の賽銭箱を破壊したりする事態も起こっている。
1000万人単位で外国人が入ってきたら、これまで以上に様々な軋轢が生まれるでしょう。
なぜ経営者が低賃金で人をコキ使いたいがために、日本全体が迷惑を被らなければいけないのか。
「オーバーツーリズムだ!」
と騒いでいる人たちは、今すぐ外国人労働者受け入れに反対した方がいい。
どこの国でもそうですが、教育水準の低い移民を大量に入れれば、犯罪やトラブルが増えます。
移民政策で成功しているのは、高学歴かつポテンシャル(潜在的な力。可能性としての力)の高い人材を受け入れて、イノベーション(新製品の開発、新生産方式の導入、新市場の開拓、新原料・新資源の開発、新組織の形成などによって、経済発展や景気循環がもたらされるとする概念)をどんどん起こしているアメリカくらい。
■中小企業延命という愚策
私が日本に来た1990年代前半は、高学歴・高所得の外国人でないと就労ビザが下りませんでした。
「日本人にできる仕事は外国人にやってもらう必要がない」
という考え方で、よほどの特殊技能を持った外国人でなければ、日本で働くことができなかった。
自分で言うのも何ですが、イギリスでトップの大学であるオックスフォードを卒業していても、なかなか申請が通らなかったほどです。
人手不足が叫ばれたているのは、飲食宿泊や運送業など、労働環境が悪く、生産性も低い業種です。
高学歴の人材などを必要としていません。
少子化によって競争率が下がり、今の若者は名門大学、大企業に入れる確率が昔よりも飛躍的に上がっています。
そんな中で、若者が最低賃金でしか雇えないような会社を選ぶはずがない。
若い優秀な人材を確保したければ、先述したように、合併するなり設備投資するなりして、生産性を向上させ、若者にとっても魅力的な
「中堅企業」
になるしかありません。
ところが、政府は外国人労働者を受け入れて、中小企業を延命させようとしています。
これほどの愚策はありません。
成功例がほとんどないのに、なぜ政府は外国人労働者受け入れを拡大しているのか。
もちろん、中小企業経営者側からの要請もあるでしょうが、一番大きいのは、今の社会保障を維持するためでしょう。
先述したように、ピークから既に1300万人も減っている生産年齢人口は、2060年まで更に3000万人減ります。
そうなれば、今のビジネスモデルを維持して高齢化に伴う負担に応えるために、労働している人間の数を最低でも維持しないと、今の社会保障制度を維持することができなくなる。
だから低賃金の外国人労働者を入れようということなのでしょう。
しかし、この考え方は余りにも短絡的過ぎます。
■日本人労働者は増やせる
政府には、外国人労働者を受け入れる前にやるべき事がたくさんある。
まず、日本人労働者の供給量を増やすべきです。
そのためには、扶養控除の廃止。
これだけ人手不足が騒がれる中で、フルに働かないことで税制優遇するなど、あり得ない制度です。
もう1つは、専業主婦(主夫)への年金制度の廃止。
サラリーマン(第2号被保険者)に扶養されている専業主婦(第3号被保険者)は保険料を自ら負担することなく、将来的に老齢基礎年金が受給できるのです。
自分は払っていないのに年金を受け取れるというのは、社会保障の原則に反しているだけでなく、女性の働く動機を奪っています。
海外によくあるやり方を導入して、既に貰っている人は仕方ないですが、例えば平成何年生まれ以降の人の場合、第3号非被保険者を廃止すると決めればいい。
低賃金の外国人労働者を受け入れる前に、優秀な日本人女性にフルに活躍してもらう仕組みを徹底的に実施するべきです。
女性活躍を訴えるなら、まずこの2つの廃止は必須でしょう。
それに中小企業改革。
これまで何度も書いてきたように、規模が小さいというだけで日本の中小企業は優遇されています。
弱者扱いされて、期待もされません。
商工会議所などの中小企業の団体も、改善を要求されると、すぐに
「中小企業潰し!」
「中小企業淘汰論者!」
「中小企業は下請けいじめを受けている!」
などと煽ります。
それによって、中小企業は成長するインセンティブ( やる気を起こさせるような刺激。動機付け)が削がれています。
そうではなく、きちんと足腰の強い中堅企業に成長した企業をバックアップしていく。
規模が大きくなることで、人手不足にも強くなる。
■逆説的な人手不足解消方法
経済合理性を歪ませる中小企業優遇の最たる例が、
「交際費」
です。
今は日本では中小企業というだけで、取引先との接待などに使う交際費を800万円まで損金扱いできます。
私の経験則でしかありませんが、私の周囲の中小企業経営者で、会社のためにこの800万円を使っている人はほとんどいません。
仕事に関係なく、高級寿司屋で食事をしたり、夜の店に行ったりと
「”社長自身”への接待」
に使われており、全く実態を伴っていない。
要するに、公私混同です。
この制度をフルに使うことができる企業はほぼ小規模事業者です。
成長して中堅企業になろうとすれば、この制度のメリットは次第に減ります。
更に、サラリーマンをやって何の経費も使えないよりは、公私混同が許されている小規模事業者になった方が圧倒的に有利になる。
経済合理性より、経営者優遇を狙って起業するインセンティブが働いていしまうのです。
これは考え過ぎではありません。
日本企業の場合、6割以上の企業が赤字企業です。
この比率は、1960年代から景気と関係なくずっと上がっています。
諸外国の例を分析すると、企業数の赤字比率は2割で、日本では如何に経済合理性の低い小規模事業者が多いか分かります。
実は、中小企業が2017年度に支出した交際費は約3兆円。
もし、この3兆円に法人税(23%)を掛ければ、6900億円もの税金を取ることができます。
政府の肩を持つわけではありませんが、日本は何か物事を動かそうと思えば、とにかく批判・反対の風です。
中小企業はもっと頑張れと言えば
「中小企業いじめだ」
と批判され、扶養控除廃止を言えば
「専業主婦いじめだ」
と批判される。
日本は本当に疲れる国です。
中小企業問題について、商工会議所前会頭の三村明夫氏は、未だに私を批判しています。
日経新聞(2024年4月27日)の
「私の履歴書」
で、三村氏はこう語っていました。
<中小企業はサボっているのではない>
<統計の数字だけを見た
「生産性の低い中小企業は淘汰されるべきだ」
といった極論が罷り通れば、日本経済は本来の強さを失うだろう>
「統計の数字」
以外に、一体何を根拠にすればいいのでしょうか。
教育水準の高い日本人を低賃金で働かせている
「統計的事実」
について、三村氏はどう思っているのか、逆に訊きたいくらいです。
三村氏は、最低賃金を引き上げると大量に中小企業が倒産する、失業者は大量に増えるというような主張をよくしていました。
1990年代に比べて、最低賃金は2倍に上がっています。
安倍政権以降も1.3倍にもなっている。
三村氏の主張と真逆に、企業数は大幅に増えて、就業者数も史上最高水準になっている。
三村氏が主張していた
「大量の倒産」

「大量の失業者」
も、統計に表れていません。
だから、
「統計ではない」
と言うのでしょう。
政府も、強烈な反対に遭うことは目に見えているから、
「じゃあ、現状維持のために外国人労働者を入れるしかない」
と半ば諦めており、場当たり的な対応しか取れないのではないか。
この人手不足を解消するために、政府はどうすればいいか。
逆説的ですが、
「これ以上、外国人労働者を受け入れないこと」
です。
外国人労働者を受け入れないことで、中小企業はにっちもさっちもいかなくなり、自動的に中小企業間の提携・統合、設備投資による生産性向上が進みます。
それは、中小企業改革の前進にもなる。
先述したように、中小企業を延命させるために外国人労働者を受け入れるなど、百害あって一利なしの愚策中の愚策。
冒頭の世論調査で、外国人労働者受け入れに賛成した人には目を覚まして頂きたい。
政府は
「経営努力をしたくない」
「現状維持をしたい」
という経営者の甘え、自己中心的な考えなど一顧だにせず、毅然と対応してほしいと思います。

外国人受け入れ「特定技能制度」に4分野を追加、5年で82万人見込み 政府が閣議決定
2024/3/29 10:10
https://www.sankei.com/article/20240329-QQTAPVAO7JLS3PHI6X4N4G3SQQ/
政府は2024年3月29日、外国人を中長期的に受け入れる
「特定技能制度」
の対象にトラック運転手などの自動車運送業や鉄道、林業、木材産業の4分野を追加し、対象分野を現在の12から16に広げる方針を閣議決定した。
令和6年度から5年間の受け入れ見込み数は最大で82万人とした。
パブリックコメント(意見公募)を経て省令を改正する。
受け入れ見込み数は、国内の雇用拡大や生産性向上だけでは不足する労働力を業界ごとに算出したもの。
5年間で約34万人としていた制度開始時から2倍超となった。
人口減少や時間外労働規制強化によって物流分野での人手不足が深刻化する
「2024年問題」
などが反映された。
追加4分野のうち、利用客と会話の機会が多いタクシーの運転手や鉄道の車掌などは、必要な日本語試験の基準を他の分野よりも高いレベルとする。
既に特定技能の対象となっている製造業分野でも繊維や鉄鋼、印刷業務などを中に加える。
特定技能は平成31年4月に創設。
最長5年間働ける1号と、家族が帯同できて事実上永住できる2号がある。
政府は、外国人の研修を目的とする技能実習制度を廃止し、外国人材の確保と育成を目的として将来的に特定技能制度に移行できる
「育成就労制度」
創設を柱とする関連法案を通常国会に提出している。

祖国にいながら外国人に怯えて暮らすのか 「受け入れろと」と他人の国で暴走する移民たち
WiLL2024年7月号 イスラム思想研究家・麗澤大学客員教授 飯山陽
■クルド人がまた犯罪
先の衆議院東京15区の補欠選挙は、たくさんの応援を頂きましたが力及ばず落選してしまいました。
皆さんのお陰で、最後までマイクを握ることが出来ました。
今回、選挙に出馬した理由の1つが、日本の移民国家への道にストップをかけるためです。
しかし現状は厳しく、またクルド人による犯罪が起きました。
しかも今度の被害者は何と女子中学生です。
産経新聞オンラインの記事(2024年4月5日付)です。
「女子中学生に性的暴行をしたとして埼玉県警川口署は2024年3月7日、不同意性交等の疑いで、トルコ国籍でさいたま市南区大谷口の自称解体工、ハスギュル・アッバス容疑者(20歳)を逮捕した」
「『日本人女性と遊んだが暴行はしていません』と容疑を否認しているという」
再度確認してみると、この記事は削除されており、追加の記事では容疑者は匿名にされていました。
実名は
「デイリー新潮」
やまとめサイトのみで閲覧できます。
容疑者の居住地はさいたま市ですが、川口署が逮捕したということは、川口市で活動するクルド人の居住地が近隣の市にも広がっているということでしょう。
トルコ国籍のクルド人の多くはイスラム教徒ですが、一般的にそれほど信仰に熱心ではありません。
しかし、クルド人文化は、イスラム教文化と共通する所が多く、その1つが女性や性に関する文化です。
イスラム教では、異教徒の女性は二重の意味で卑しい存在とされており、尊厳を持つ人間として扱われません。
更にイスラム教には、性行為や結婚をしても許される最低年齢という概念がありません。
イスラム教徒の男性の中には、本件のような
「異教徒の女子中学生」
というのは、性的に何をしてもいい存在だと思っている人がいる可能性があるのです。
イスラム教徒の移民による、現地の女性たちに対する性暴力事件がヨーロッパで多発している背景には、このようなイスラム教の女性観、異教徒観があります。
イスラム教徒の男性は、異教徒の女性には何をしても構わない、髪や肌を露出させているのは尊厳がないことの証であり、むしろレイプされたがっているのだと、そう理解してしまうことがあるのです。
私はイスラム教の研究者ですから、イスラム教が如何に土着文化を侵食する力を持っているかを知識としてだけでなく、実感としても知っています。
世界にはこうした文化や価値観を当然とする人々が多く存在するため、理想の多文化共生・異文化共生を現実のものにするのは困難です。
実現したいのならば、外国人に対し、
「あなたの常識は日本では受け入れられない」
「日本では日本のルールを守ってもらわねば困る」
と、ハッキリと徹底的に主張するしかありません。
更に、外国人の子供には出来るだけ早いうちから、日本のルール、文化に馴染んでもらう必要があります。
フランスでは、2019年から義務教育が始まる年齢を6歳から3歳に引き下げました。
その背景には、自国の文化や風俗を守るために移民を教育する意図もあります。
一方で日本には、こうした対策は一切なく、多文化共生・異文化共生は素晴らしい、日本人は外国人の文化を理解し、受け入れろと主張するだけです。
このまま何の対策もしなければ、先述のような事件は今後更に増えるでしょう。
■何が、権力の監視役か
にもかかわらず、政府や自治体、企業、そしてメディアも、日本社会に対して影響力(インフルエンシャル)な発言権を持つ”権力者の皆さん”はこぞって、
「活力維持に外国人が必要だ!」
と声高に言います。
読売新聞オンライン版でも
「外国人・高齢者 活力維持へ重要『育成就労』『特定技能』着実に・・・人口減抑制」
と題して、次のような記事が掲載されました。

<人口が減って生産年齢人口(15〜64歳)が先細っていく中、社会の活力を維持するためには、労働力の確保が欠かせない>
<政府は今年(2024年)、外国人技能実習制度に代わる新制度「育成就労」の創設を決めた>
<掲げたのは「人材の確保と育成」>
<帰国を前提としていた技能実習制度から大きな転換を図った>
(中略)
<外国人の受け入れは、主に出入国在留管理庁が担っているが、労働者を巡る政策は多くの省庁にまたがる>
(中略)
<業種ごとに必要な人数や求める人材を呼び込むには、一元的に誘致していく必要がある>
<その司令塔として、政府に「誘致戦略本部」を創設すべきだ>
<制度を着実に進めていくため、自治体や地域住民にも配慮しながら、外国人との共生に向けた戦略を策定する>
(2024年4月26日付)

日本社会が人口減を抑制し、活力を維持するためには、外国人をどんどん日本に受け入れることが必須だとして、読売新聞がわざわざ提言しているわけです。
読売新聞だけでなく、既に国から企業まで皆揃って同じ事を言う有り様です。
外国人が必要だ、というのは、つまり”移民推進”です。
多様性の奨励はそのための地均しです。
多様性のある社会は
「活力を維持する」
と盛んに宣伝し、多様性を促進するために移民を受け入れる必要があるとして事を進める。
そもそも自民党は2016年3月15日の
「労働力の確保に関する特命委員会」
の初会合時に、政調会長の稲田朋美議員が
「日本は移民政策は採らない」
と明言した上で、議論を開始しています。
ところが、その8年後の2024年、岸田政権が在留資格
「特定技能」
について2024年度から5年間の受け入れ枠をこれまでの2倍を超える82万人とすると閣議決定しました。
8年前・2016年の方針を平気で変え、国民に嘘を付く、これが自民党政権です。
そしてこの嘘を嘘だと指摘せず、政府方針に同調しているのがメディアです。
何が
「権力の監視役」
でしょう。
「笑わせるな、愚か者!」
と言いたくもなります。
■7つの大罪である理由
読売新聞が提言した、
「日本社会の人口減を抑制し活力を維持し、成長を続けるためには外国人移民が必要だ」
という主張は完全に間違っています。
理由は7つー。
第1に、人口減の埋め合わせをするために移民を受け入れるなら、考えられないほど多くの移民を受け入れなければならないため、この政策自体が非現実的であることは、国連の調査でも明らかになっています。
第2に、人口減を埋め合わせするために移民を受け入れても、日本人でない人が増えるだけなので、日本で外国人による人口の置き換え(人口が増加も減少もしない均衡した状態になる)が進むだけです。
これを
「人口減の抑制」
だと言う人は、日本が日本でなくなることを積極的に推進する人たちです。
第3に、不足する労働力を補うために移民を受け入れても、移民もいずれ年を取って働けなくなります。
日本は今、永住を認めるという条件で移民を受け入れようとしていますが、労働力だったはずの移民は遠からず、日本の福祉によってその生活を支えなければならなくなります。
■移民と社会の暴走
第4に、不足する労働力を補うために移民を受け入れると言いながら、日本政府は彼らに家族の帯同を認めています。
5人、10人の家族を帯同すれば、移民の安い賃金では家族全員を養えなくなり、その分を補うのは、私たちの福祉、つまり税金です。
労働力が必要だと言って外国人を受け入れたのに、彼らの生活を我々の福祉で支えなければならないという事態が生じます。
労働力として受け入れた移民が、働く意欲を失ったり、病気になったり、失職すれば移民の家族の生活は、私たちの税金、私たちの福祉で支えなければならない。
これは移民を多く受け入れた欧米で実際に発生している問題です。
第5に、労働力として移民を受け入れれば、日本人の賃金が下がります。
政府が推進するインフレを上回る程度まで賃上げをする方針とは、正反対のベクトルに進みます。
サウジアラビアは移民を多く受け入れている国の1つですが、企業に一定数の自国民の雇用を義務付け、給与体系も外国人とは異なる水準を義務付けています。
しかし日本にはこうした規制はありません。
安い移民労働力を受け入れれば、企業と経営者が得をするだけで、日本人の労働者は専ら損をします。
これでは日本社会を弱体化させるばかりで、
「活力の維持」
どころではありません。
第6に、世界の文化の中には、日本の文化、伝統、常識、法律とは相容れない、矛盾するものが大量にあるため、全て受け入れれば、社会が混乱し、秩序が乱れます。
第7に、移民が増えれば間違いなく治安が悪化します。
現在、警察は外国人の犯罪を見逃し、仮に逮捕しても検察が不起訴にして犯罪者を無罪放免にします。
警察を恐れない”無敵の外国人”が、日本社会で暴走し、好き放題に犯罪に手を染めているのは、こうした背景があるからです。
外国人が増えれば、この状況は更に悪化するでしょう。
日本人は祖国にいながら、外国人に怯えて暮らさなければならなくなり、警察に守ってもらえなければ、自衛せざるを得なくなります。
犯罪の被害者となっても、誰も助けてくれない、そんな世の中にしたいですか?
■”聖域”という名の移民都市
2024年5月1日、バイデン大統領はワシントンでの集会で、日本経済が低迷している理由として
「外国人嫌いで移民を望んでいないからだ」
と述べました。
そんなアメリカでは現在、不法移民が急増しています。
米南西部の国境を越えて拘束・保護された不法移民は2023年度(2022年10月〜2023年9月)に247万人と3年連続で過去最多を更新。
かつてはメキシコや南米各国からの流入がほとんどでしたが、今は、中国などから中南米を経由してアメリカを目指す不法移民も増えています。
バイデンの
「外国人好きで移民を望む」
政策が、世界中から不法移民を引き寄せているのです。
アメリカ内で移民に寛容な都市、いわゆるサンクチュアリ・シティ(聖域地域)の代表がニューヨーク市です。
ニューヨーク市では移民を10万人ほど受け入れ、日々増え続ける移民の数に悲鳴を上げ、2022年10月に民主党のエリック・アダムス市長がとうとう非常事態を宣言しました。
「移民はニューヨークのストーリー(歴史)の一部で、アメリカの一部でもある」
「しかし移民政策は崩壊している」
「国家的危機だ」
「もう限界だ」
「市単位の予算には限りがあり、思いやりだけではどうにもならない所まで来ている」
アダムス市長は移民の受け入れの危機的状況を踏まえ、度々このように訴えてきました。
ニューヨーク市の移民関連の予算は2024年度が約42億ドル、2025年度が約49億ドルと巨額です。
その後、アダムス市長は法律違反の疑いのある移民を保護してきた政策を転換する考えを示しています。
つまり不法移民を矢継ぎ早に受け入れる政策を採った結果、市が財政破綻しかかっているのです。
ニューヨーク市に限らず、不法移民を受け入れた州や都市は軒並み財政や治安が悪化し、地元住民の不法移民に対する感情も悪化しています。
今や28%のアメリカ人が不法移民の問題は、アメリカにとって最大の問題だと認識しています。
■”日本”であるために
一方、日本はどうか。
岸田政権は今まさに
「移民を望む」
政策を採りつつあります。
アメリカで不法移民に厳しい共和党が政権を取れば、アメリカに殺到している世界の不法移民が、今度は日本に殺到するでしょう。
今度は日本が不法移民の”サンクチュアリ(聖域)”になろうとしています。
日本が日本であり続けること、日本が国民にとって安心して暮らせる祖国であり続けること、日本人の暮らし、豊かさ、安全が守られることが何より大事です。
移民受け入れ推進は、こうした安心・安全を全て破壊します。
しかし今の日本の国会議員に、日本国民の安全を主張する人はほとんどいません。
彼らは皆、嘘を付き、移民を受け入れることによって起こる問題に言及する人はほとんどいません。
移民によって破壊された欧米社会や、先述のクルド人による性的暴行事件が彼らには見えていないのでしょうか。
文化や価値観の違いによって生じる事件、財政や治安の悪化などが起き得る移民政策を阻止する必要があります。
日本が移民問題で苦しむ欧米のようになるのは、時間の問題です。
私たちにとって大切な日本という国を、守り抜かなければなりません。

女子中学生に性暴行の容疑者、難民申請中のクルド人 トルコ生まれ川口育ちの「移民2世」
「移民」と日本人
2024/3/8 17:25
https://www.sankei.com/article/20240308-LUTLMINZTNOZNGADECZPNB3CGY/
女子中学生に性的暴行をしたとして埼玉県警川口署に逮捕されたトルコ国籍で自称解体工の男(20)が、難民認定申請中で仮放免中だったことが2024年3月8日、同署の調べで分かった。
男はトルコ生まれ日本育ちの在日クルド人で、事実上の
「移民2世」
という。
調べによると、男は2024年1月13日午後10時半頃、川口市内のコンビニ駐車場に止めた乗用車内で、東京都内の10代の女子生徒に性的暴行をしたとして2024年3月7日、不同意性交などの容疑で逮捕された。
同署によると、男は先に来日していた父親を頼って幼少期に来日し、地元の小中学校に通っていた。
卒業後は家業の解体業を手伝っていたと供述している。
男は父親と共に難民認定申請中で、入管施設への収容を一時的に解かれた仮放免中だった。
自宅はさいたま市内だが、川口市北部の隣接地域だった。
男は自身の運転する車で、SNS(交流サイト)を通じて知り合った都内の女子中学生らや、日本人男性らとドライブに行くことになった。
女子生徒らは横浜方面に向かうと考えていたが、車は都内から川口市内へ直行。
女子生徒らは車内でスマホを使ってやり取りして逃げ出そうとしたが、犯行現場のコンビニ近くで降ろされ、被害にあった女子生徒だけが車に残されたという。
男は
「日本人女性と遊んだが暴行はしていません」
と容疑を否認。
同署はトルコ語の通訳を介しながら調べを進めている。
川口市内では近年、一部クルド人と地域住民との軋轢が表面化。
「2世」
とみられる若者らによる車の暴走行為や煽り運転も問題となっている。

中学生に性的暴行したクルド人は難民申請中だった 地元市議は「実態を正しく直視するべき」
2024年4月5日
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/04050558/?all=1
埼玉・川口市でクルド人男性が不同意性交容疑で逮捕された。
女子中学生に性的暴行をした疑いである。
実はこの男性、難民申請中だった。
悲劇の主人公のはずの
「難民」
が他人を悲劇に追いやる、その実態とは。
 ***
報道等によると、2024年3月7日に逮捕されたのはさいたま市に住むハスギュル・アッバス容疑者。
トルコ国籍の20歳、解体工だという。
事件があったのは2024年1月13日のことだ。
アッバスは都内の女子中学生とSNSで知り合い、複数人でドライブ。
2人きりになった後、川口市内のコンビニの駐車場に停車し、車内で犯行に及んだ。
行為の時間は約6分。
粗暴極まりない事件である。
川口市とその周辺でクルド系の住民と地元住民との間に軋轢が生じているのは周知の通り。
■市議も「不安に思う市民が増えている」
2023年7月4日は男女の揉め事で怪我をしたクルド人男性が川口市立医療センターに運び込まれ、それを巡ってクルド人が100人ほど病院に集結。
一時、救急搬送の受け入れが停止されるという大騒動が起きた。
「不安に思う市民が増えていると感じます」
とは、川口市議の奥富精一氏。
「これまでも一部のクルド人が改造車で危険運転や違法駐車をしたり、あるいは喧嘩をしたりという事例が見られてきました」
2023年6月には市議会で
「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」
が採択されている。
「そこにきて今回の事件ですから、市民の不安が益々増したとしても不思議ではありません」
■クルド人増加の背景事情
クルド人とは、中東のトルコやイラン、イラク、シリアなどの国境地帯に住む「国を持たない民族」。
川口は彼らが集住する地域として知られ、現在、2000人以上が暮らしている。
「彼らは難民申請をしているケースが少なくない」
と言うのは、入管のさる関係者だ。
「トルコと日本は現在、短期滞在ならビザは必要ではありません」
「で、ノービザで入国し、滞在期限が切れるまでの間に難民申請を行うんです」
「すると、その審査期間中は強制送還が止められる」
「川口に来るクルド人の多くは、ある特定の地域の出身です」
「こうした仕組みで入った人たちが地元の親類縁者を呼び寄せ、数が増えていったんです」
今回の事件を起こしたアッバスも、先に日本に来た父を頼って幼少期に来日し、難民申請をした“移民2世”だという。
「実際、彼らが難民認定されることはほとんどありません」
「クルド人が母国で差別されているのは事実でしょう」
「が、難民条約が規定するように、自由が奪われたり、生活が著しく損なわれ、生命の危機が生じているかと言えば、そこまでとは認められないことが多い」
「申請期間中に日本で稼いで帰国するか、或いは子供が小中学校に長期間通うなどすれば、在留特別許可を貰えるかもしれない」
「クルド人増加にはこうした背景事情があります」
しかし、そうした入国経緯の者の中から凶悪犯が出れば、住民との摩擦が生じるのは当然の事だろう。
■グレる2世
この地域で長年、クルド人支援に携わってきた「在日クルド人と共に」理事の松澤秀延氏は、
「彼らも日本の社会に順応したいと思っていますが、日本側の拒否反応が強く、そこで絶望を感じてしまうことも多い」
と分析するが、
「今回の事件もそうですが、2世の中には学校に行かず、いわゆる“グレて”しまうケースも少なくない」
「この問題を指摘するとすぐ差別と言われますが、まずは実態を正しく直視することが重要だと思います」
(奥富市議)
多様性尊重――そんな建前だけでは語れない現実が、この川口には横たわっているのである。
週刊新潮 2024年4月4日号掲載

外国人・高齢者 活力維持へ重要 「育成就労」「特定技能」着実に…人口減抑制[読売新聞社提言<7>]
2024/4/26 5:01
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240425-OYT1T50222/
■労働者に「選ばれる国」
人口が減って生産年齢人口(15〜64歳)が先細っていく中、社会の活力を維持するためには、労働力の確保が欠かせない。
政府は今年、外国人技能実習制度に代わる新制度
「育成就労」
の創設を決めた。
掲げたのは
「人材の確保と育成」。
帰国を前提としていた技能実習制度から大きな転換を図った。
外国人労働者を中期的に受け入れる在留資格
「特定技能1号」
も、自動車運送業や鉄道などの4分野を追加して16分野に広げた。
日本で暮らす外国人は増えており、約340万人に上る。
労働者は2023年10月末時点で約204万人だ。
政府は、育成就労と特定技能を
「車の両輪」
として、労働力を補っていく。
他国も受け入れを進めており、獲得競争を勝ち抜くには
「選ばれる国」
にならなければならない。
外国人の受け入れは、主に出入国在留管理庁が担っているが、労働者を巡る政策は多くの省庁にまたがる。
農業や介護、建設など職種も幅広い。
業種ごとに必要な人数や求める人材を呼び込むには、一元的に誘致していく必要がある。
その司令塔として、政府に
「誘致戦略本部」
を創設すべきだ。
制度を着実に進めていくため、自治体や地域住民にも配慮しながら、外国人との共生に向けた戦略を策定する。
育成就労では3年間働いた後、在留期間が5年の特定技能1号、永住が事実上可能な2号を段階的に取得してもらうことを目指す。
外国人の受け入れ先は主に地方の中小企業で、自力での育成には限界がある。
自治体の支援が欠かせない。
広島県は2023年、2号取得を目指す外国人を雇う企業に、最大300万円を補助する事業を始めた。
尾道市の
「因島鉄工」
はこの事業を使い、造船・舶用工業分野で全国初の合格者を出した。
その一人、ベトナム人のファン・ヴァン・マインさん(35)は
「将来は奥さんを連れてきて、ここでずっと働きたい」
と語る。
同社では試験対策として日本語講師を雇い、技能向上のための模擬試験を実施。
外国人向けの寮も整備した。
人材を繋ぎ止めるには、異国の地で働く外国人が暮らしやすく、文化に馴染める工夫も求められる。
■フレイル対策
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、2020年に7000万人超だった生産年齢人口は、2100年に3200万人に減る。
人手不足を補うため高齢者の力も必要だ。
内閣府の調査では、仕事で収入を得ている60歳以上の9割が、「いつまでも」を含め、70歳以上になっても働きたいと回答している。
企業は、技術や経験を持つ高齢者を積極的に受け入れるべきだ。
2040年には医療・介護人材が100万人近く不足するとされ、介護が必要な高齢者を少しでも減らしたい。
要介護一歩手前の状態「フレイル」の高齢者が対策を取った場合、5年後に15%が改善し、35%が状態を維持したという調査もある。
予防には食事や運動、就労といった心身の充実がカギを握る。

「共生」ではなく「統合」が必要だ
正論2024年7月号 評論家 三浦小太郎
本稿では、まず戦後の日本における外国人の受け入れ政策の歴史を簡単に辿り、私が実際に接した外国人を巡るいくつかのケースを示した上で日本が今後、受け入れを行う場合に考えるべき
「思想的原則」
を述べる。
尚、本稿で私は
「移民」
という言葉を原則として使わない。
日本政府はこれまで、我が国の外国人労働者の受け入れについて、あくまで一定の期間に限定した、専門的、技術的分野の労働者の受け入れであって、我が国への定住を目指す
「移民政策」
は採っていないと一貫して述べてきた。
しかし現実には、一定期間就労した労働者が長期滞在や定住を継続して求める可能性は極めて高く、こうした線引き自体、外国人受け入れ策について移民政策か否かと議論することと同様余り意味がないと思えるからだ。
大東亜戦争の敗戦後、日本には約200万人に及ぶ朝鮮半島出身者が存在した。
敗戦までは
「日本国民」
だった彼らを単純に外国人問題と捉えることには無理がある。
ただ、歴史的教訓とすべきことは、在日朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)という北朝鮮に従属する組織の存在を事実上容認してしまった点で、我が国に禍根をもたらした。
これは後述する。
日本の外国人受け入れの大きな転機となったのは1970年代後半のベトナム難民の受け入れと1979年の国際人権条約、1981年の難民条約の批准である。
戦争と革命の世紀であった20世紀に、国境を越えた難民、移民の権利を守るために打ち立てられた理念の1つが、条約にある内外人平等待遇、即ち自国民に与えるものと同等の待遇を外国人にも保障するという原則である。
この原則に基づき、1948年に国連で採択された世界人権宣言では
「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身」
による差別を否定し全ての人が
「社会の一員として、社会保障を受ける権利」(第22条)
を持つと見做した。
更に1966年に採択された国際人権規約には
「社会的及び文化的権利に関する国際規約」
として
「国民若しくは社会的出身による差別」
の撤廃が記されている。
難民条約にも、第23条で公的扶助を難民に対し自国民と平等待遇とするような条文が存在することは外国人受け入れにおいてまず議論の前提にならなければならない。
1989年には出入国管理法が改正される。
この法律は現在に至るまで日本政府の外国人受け入れの基準を定めたもので
@不法就労、不正規滞在の取り締まり
A専門・技術職の受け入れ拡大
B技能実習制度の先駆けとなった「企業研修」制度による在留資格
が特徴だ。
在留に期限と資格を設けて外国人を受け入れるという原則を掲げたものである。
当時の時代背景を説明すると、1985年のプラザ合意以後、円高によって外国人労働者が日本で働くメリットを感じ、出稼ぎ労働者として日本に流入していた。
「3K」
と言われた
「きつい」「汚い」「危険」
な職場に不法就労や資格外活動といった劣悪な労働条件の下で単純労働を課されるという実態が横行していた。
2012年には高度人材ポイント制度が導入された。
これは
「高度」
な学術研究、専門技術、経営管理などに従事している外国人に対し、学歴、職歴、年収などについてそれぞれポイントを設け、合計が70点に達した場合は優遇措置として配偶者の就労、永住許可申請に必要な居住年数の短縮など様々な優遇措置が設けられた。
2023年には更に拡充された特別高度人材制度が導入された。
高度人材として滞在する外国人の数は、2022年度の段階で1万8315人におり、うち63.9%が中国である。
次いでインド5.7%、韓国4.4%、アメリカ4.1%、台湾3.2%と続く。
(出入国在留管理庁資料より http://www.moj.go.jp/isa/content/930003527.pdf)
日本の高度先端技術の分野に迎え入れられている外国人の6割以上が中国人であるという現実は、安全保障上も注意が必要である。
2018年に行われた出入国管理法改正では、更に新たな在留資格として
「特定技能」
が設立された。
日本の産業を支える業種のうち、@介護AビルクリーニングB素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業C建設D造船・舶用工業E自動車整備F航空G宿泊H農業I漁業J飲食料品製造業K外食業など人手不足業界と列挙した上で
「特定技能1号」
「特定技能2号」
の2種類の在留資格を認める制度である。
これまでの在留資格はいずれも国際貢献を目的にしていたが、初めて明確に人手不足の中で業態維持のために外国人を受け入れると掲げた。
2024年3月29日には自動車運送、鉄道、繊維、林業などの業界が追加された。
「特定技能2号」
はより熟練した労働者で日本語にも長け、在留期限は無制限とし、家族の帯同も許可される。
本来日本が公的には認めていないはずの単純労働者の受け入れが横行していたのが、日系ブラジル人など日系人の受け入れと、1993年から始まった技能実習制度、更には不法就労者だった。
技能実習制度は外国人が最長で5年間、働きながら技能を学ぶことで
「技術移転」
を行うことが目的であったが、現実には最低賃金を下回る額で厳しい労働条件下に置かれ、また、実習生が職場から失踪するなどの問題が相次いだ。
結果、政府の有識者会議の決定として、2023年の段階で現行制度を廃止し
「育成就労制度」
に変更、基本的に3年で一定の専門性や技能を持つ水準にまで育成し、受け入れ職種を、介護や建設、農業などの分野に限定することになった。
この技能実習は、外国人受け入れにおける本質的な問題が露呈した例である。
実習生の受け入れ目的が技術移転という国際貢献であっても、実際に受け入れる企業の立場からすれば、現場で作業をする労働者とは本来雇用関係にあり、企業に利益をもたらす存在でなければならない。
国家の方針にどんな理想論が掲げられようと、それが実践されるのはあくまで現場なのだ。
実習生たちを送り出す国側も、的確な制度の下に行っている場合もあれば、国によってはブローカーまがいの組織が高額な借金を課す形で日本へ送り出すケースもある。
私はある外国人が日本における就労ビザのために100万円以上を必要としたと聞いたことがある。
良心的で法に則った受け入れと技能研修を行ってきた企業や組織の名誉のためにも、送り出し国側の諸問題は日本の受け入れの在り方と共に抜本的に解決されなければならない。
更に不法就労者たちの存在は、日本の治安の脅威となるだけでなく、何らの法的保護も設けられない彼ら自身の人権問題として深刻な事態を引き起こしかねない。
以上に見られるように、日本政府は
「移民政策」
という言葉を否定はしてきたが、事実上外国人労働者の受け入れを継続して行ってきた。
そして、ほとんどの決定は閣議決定でなされ、国会においても政府与党内においてもそれ以後、十分な審議が尽くされたとは言い難い。
仮に審議が尽くされたとしても
「少子化の実情から外国人受け入れは日本経済のために必要である」
という、政府や企業の多数派によって疑われることのない命題に沿った結論(及びリベラル側からの多文化共生と差別反対がこれを補強する)しか生まれないのではないだろうか。
私たちはこの命題自体を再検討すべき時に来ている。
そのために参考になる文献の1つは、自身もキューバからの移民である経済学者、ジョージ・ボージャスが著した『移民の政治経済学』(白水社、2017年)である。
■単なる労働力ではなく『人間』
まずボージャスは、移民=外国人労働者は、
「人間」
であって
「労働者」
「労働力」
といった抽象的な存在ではないことを常に強調する。
彼らは自らの意志で行動し、受け入れ国にロボットのように使われ、必要がなくなれば処分されるような存在ではない。
外国人労働者を受け入れることは、彼らの社会福祉や人権を当然守ることを前提とする。
これは先述した国連の規定からも明らかだ。
同時にボージャスは、人類の歴史において、移民受け入れは受け入れ国にとって経済的利益がある場合のみ行われ、そうでない場合には国境は閉ざされたという歴史的事実を確認している。
この両面が外国人受け入れを考える上では必要な姿勢なのだ。
ボージャスは移民のもたらす経済的利益を一概に否定しているのではない。
移民が労働人口に参加すれば、確かに富は移民と競合する立場にある労働者から、移民を使う側の経営者に移転される。
移民が労働市場に入ることで、労働者の賃金は低下するが、この賃金減少分は、人件費を節約できた企業の利益となる。
これを
「移民余剰」
という。
この
「移民余剰」
によって受け入れ国全体の富は確かに増加するが、それは同時に自国の労働者にとっては富を失うことである。
ボージャスの指摘は更に付加すれば、企業が設備投資などの生産性向上よりも、安価な外国人労働者を雇うという安易な選択を行い、本来は社会的に改革すべき低生産性の工程・部門が国内に残存してしまう。
またボージャスは移民余剰の利益は、先進福祉国家では、移民への社会保障費によってほぼ相殺されると述べている。
短期的には移民は経済的のみならず、社会的、政治的、経済的に負の影響をもたらす可能性が高い。
そしてボージャスは現代のアメリカに対し
「1100万人もの書類不所持移民を入国させているような穴だらけの国境」
の現状のままでは、移民政策を論議すること自体が無意味だと断定する。
尚、不法移民の取り締まりのためには、ボージャスは国境封鎖よりも不法就労者を雇用する雇用主への処罰の厳格化を求めている。
更に中東からの難民にも触れ、自身の体験から深い同情を持ちつつ
「我々は現実的でなければならない」
「難民の中には少数だが恨みや争いを持ち込み、それを受け入れ国で晴らそうと思う人々がいる」
「また、受け入れ国の社会と政治の安定を揺るがす恐れのある文化的慣習を持ち込む人もいる」
「移民政策は益々(難民であろうがなかろうが)移民が単なる労働職以上のものを持ち込む存在であることを考慮に入れなければならなくなるだろう」
(『移民の政治経済学』)
と警鐘を鳴らす。
■脱北者の順法意識
ここで私のささやかな体験を述べておきたい。
私はある時期、北朝鮮から脱出して日本に入国した脱北者たちの定着支援に関わっていた。
日本は、1959年に始まった帰還事業により北朝鮮に渡った帰国者とその子孫に関しては、彼らが脱北後、希望した場合は歴史的経緯と人道的配慮で日本国に受け入れてきた。
その中には帰還事業の責任と国内の人権弾圧を告発して北朝鮮国家を訴えている人たちもおり、多くは無事日本社会に適応している。
しかし、私の接した脱北者の中には、日本の法律や制度を軽視する傾向もまた見られた。
脱北者は中国においても難民としての保護は受けられず、警察に見つかれば強制送還の運命が待っていた。
「違法状態」
に置かれ、しばしば中国人のブローカーに匿われてきた脱北者の中に、法律への軽視の意識が生まれてもやむをえまい。
しかしその結果、中国朝鮮族が脱北者に成りすました形で入国したり、脱北者自身がブローカーまがいの振る舞いを行うこともあった。
あるいは麻薬の売買に関与したり、偽パスポートによって偽装難民化したりした事例が、ごく少数とはいえ、散見されたことも事実である。
私は一部の例を持ち出して脱北者を受け入れてきたという人道的意義を否定したいのではない。
ただ、難民の性格を考え得る上で決して無視できない一面である。
今、埼玉県川口市で問題になっているクルド人問題も同様である。
2024年4月13日の産経ニュースの記事
「川口の仮放免者700人、初めて判明 大半はクルド人か 各自治体に情報提供へ運用見直し」
によれば、埼玉県川口市内には、現在、難民認定申請中で入管施設への収容を一時的に解かれた不法滞在状態の
「仮放免者」
が約700人存在している。
これは出入国在留管理庁のまとめた数字であり、大半はトルコ国籍のクルド人とみられる。
記事によれば
「仮放免者の情報はこれまで、本人が希望しない場合は当該自治体へ通知されず、自治体にとって実態把握が困難」
であったが、今後は
「自治体から要請があれば入管庁から仮放免者の情報が提供されるよう、入管難民法の運用を見直した」。
更に2024年6月10日の改正難民法施行以後は
「仮放免許可書」
の携帯を新たに義務付ける。
埼玉県川口市内では近年、クルド人と地元住民らの軋轢が表面化している。
「仮放免者」
の問題は、今の入管の病が凝縮しているとも言えるだろう。
厳正な法執行こそがまず必要であるにもかかわらず、それが出来ずにいる。
一方で外国人への門戸を広げることは際限がないのに、在留管理という我が国の外国人受け入れの原則は貫けずにいる。
本誌令和3年8月号でも論じたが、今回の改正入管法で難民申請中の送還停止は2回までが限界となり、申請3回目(もしくはそれ以上)の場合は送還の対象となる。
これは難民認定が却下された後も、ほとんど同一の資料で、何度も申請要求を繰り返し在留を引き延ばす行為への防止策だ。
私にも国家を持たぬクルド人の歴史に一定の同情はある。
ただ、敢えて言えば国家を持ち得なかったクルド人に、国家秩序や法意識への軽視が見られるならば、それは受け入れ国の保護を自ら放棄したことと同じ事なのだ。
■「国家」の在り方議論を
外国人の受け入れと文化的統合のモデルとしては、これまではアメリカ型の
「メルディング・ポット」(多様な人種、民族による文化が社会で溶け合い、新しい生活文化を形成する)
という概念が存在した。
しかしこの理念は本家アメリカにおいて、1960年代の公民権運動やブラック・パワーをはじめとする様々なマイノリティ運動の中で否定されていく。
人種のるつぼ理念とは、白人多数派の価値観への従属を強いるもので、各民族の文化を否定するものだと批判されたのだ。
次に生まれたのが多文化共生の理念で
「モザイク型」
の受け入れ理念として世界に広がった。
だが、多文化共生には大きな落とし穴がある。
それは現在普遍的な理念として受け入れられている、政教分離、男女平等、自由民主主義、反差別主義、人権擁護、また伝統を尊重した上での自由といった、西欧近代の生み出してきた最良の理念を相対化し、各民族文化の差異を強調することで、BLM(ブッラクライブズマター)に代表されるような激しい分離・対立を社会に招くことに繋がってしまったのだ。
白人の差別意識への批判が行き過ぎたアファーマティブ・アクション(マイノリティ優遇政策)を引き起こし、人権擁護が事実上の言論弾圧であるポリティカル・コレクトネス(社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策(または対策)などを表す言葉の総称であり、人種、信条、性別、体型などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を使用することを指す)として猛威を振るい、表現の自由をも脅かしている。
少数派の文化が時として普遍的な自由や平等の価値観に反する場合にそれは無条件で肯定すべきなのか。
イスラム教における
「名誉殺人」
(婚姻拒否、強姦を含む婚前・婚外交渉、「誤った」男性との結婚・駆け落ちなど自由恋愛をした女性、更には、これを手伝った女性らを「家族の名誉を汚す」ものと見なし、親族がその名誉を守るために私刑として殺害する風習のことである)
(射殺、刺殺、石打ち、焼殺、窒息が多く、現代では人権や倫理的な客観から人道的問題としても議論される)
(一部の文化圏では父や夫以外の男性と同空間滞在(非隔離)した女性や同性愛者が対象となったとされる)
(殺害被害者は多くは女性であり、男性の場合は同性愛者の場合が多いが、異性愛の男性が殺される事件も稀にある)
(「名誉殺人」とも言う)
(イスラム教が盛んな地域で主に行われているため、その宗教や文化と関連付けられて語られることが多い)
(しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチの責任者の1人であるウィドニー・ブラウンは、この犯罪について「文化や宗教を超えて行われる」と警鐘を鳴らしている)
やかつてインドで存在した寡婦が夫を追って焼身自殺する儀式(サティー)を私たちの社会で認めることなどできまい。
そして我が日本では、朝鮮総連の存在が
「在日朝鮮人の人権組織」
と見做され、このことが事実上国内での工作活動や犯罪を看過することに繋がった。
今、新たなモデルとして生まれているのは
「市民的統合」
である。
これは外国人が、受け入れ国の言語、歴史、自由民主主義の価値観について教育によって受け入れ、身に付ける形で統合を目指すやり方である。
これはオランダが最初に打ち出し、1998年、オランダ語習得や市民教育などの
「統合コース」
への参加が移民に義務付けられた。
その後、この統合システムはヨーロッパに拡大している。
私はこのモデルを応用することが日本の今後に最も相応しいと思うが、ここで敢えて
「国民統合」
という言葉を使いたい。
「国民統合」
とは、自由民主主義と政教分離といった現在国際社会で通用する普遍的価値観の許容や日本の文化伝統への一定の理解を外国人受け入れの前提とすることである。
このシステムは難民や準難民に対しても適応される。
受け入れた外国人を外国人と見てその文化を尊重する共生政策とは異なり、
「日本国民」
と同等に扱う同化主義に近いが、それは普遍性への同化と、今後在住する日本国の文化への理解を求めることだ。
もちろん、その原則の上でも各民族文化への尊重は同時に可能なはずであり、そのバランスを取ることこそが、元々寛容な姿勢で多文化を(西欧の近代主義も含めて)受け入れてきた日本の伝統である。
最後に、私は前述した人権規約や難民条約における、内外人平等待遇の原則を、今、国際社会は見直すべき時に来ていると考える。
難民や移民を保護してその権利を守ろうとする精神は何ら間違ってはいない。
だが、特に近年の欧州における難民・移民の現状を見る時、かつての
「迫害する国家から脱出した難民を守る」
という理念と同様に
「難民(及びそれと判別し難い大量難民)から、既存の国家や社会の秩序を守る」
こともまた重要な時代に私たちは生きているのだ。
社会秩序や安全保障の問題、ひいては国家とは何かという理念の問題まで拡大して議論することが、国会でも民間でもまず必要である。

川口の仮放免者700人、初めて判明 大半はクルド人か 各自治体に情報提供へ運用見直し
「移民」と日本人
2024/4/13 19:14
https://www.sankei.com/article/20240413-EBG6TISPPRGJTEK7FDFWV7C2FE/
日本語、トルコ語、クルド語で「公園内で、夜に大きな声や音を出してはいけません」「ごみはきちんと持ち帰りましょう」と呼びかける看板=埼玉県川口市
https://www.sankei.com/article/20240413-EBG6TISPPRGJTEK7FDFWV7C2FE/photo/JESUUVVFENF75H7HMVM5MJDCNY/
難民認定申請中で入管施設への収容を一時的に解かれた不法滞在状態の
「仮放免者」
が、埼玉県川口市内に700人程度いることが2024年4月13日、出入国在留管理庁のまとめで分かった。
大半はトルコの少数民族クルド人とみられる。
仮放免者の情報はこれまで、本人が希望しない場合は当該自治体へ通知されず、自治体にとって実態把握が困難だった。
このため、自治体から要請があれば入管庁から仮放免者の情報が提供されるよう、入管難民法の運用を見直した。
また、2024年6月10日施行の改正入管難民法では、仮放免者に
「仮放免許可書」
の携帯を新たに義務付け、携帯しやすいよう、許可書の大きさを従来のA4判からカード大のサイズに変更するという。
川口市内では近年、クルド人と地元住民らの軋轢が表面化している。
この日、市内で国会議員らが
「一部の外国人による迷惑行為のある地区」
を視察。
その後に市や市議、入管庁との意見交換会が開かれ、終了後に参加者らが報道陣に明らかにした。
入管庁によると、仮放免者数は日々変動するが、直近では川口市内に約700人おり、大半はトルコ国籍という。
同市内にはトルコ国籍の正規の在留者が約1300人おり、トルコ人も含め、合わせて約2000人となる。
強制退去処分が出ながら送還を拒む不法滞在状態の
「送還忌避者」
は、令和3年末時点で3224人。
このうち半数に当たる1629人は難民申請中で送還が停止されていた。
送還忌避者は令和4年末時点では4233人まで増えた。
改正法施行後は、難民認定申請中の強制送還停止が原則2回までに制限され、仮放免者の数も減ることが想定されている。

きっと再燃する外国人参政権問題
正論2024年7月号 日本政策研究センター 岡田邦宏
我が国の外国人政策が大転換しようとしている。
今、国会に提出されている法案(出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案など)は、出身国への技術移転など国際貢献を建前とした現在の
「外国人技能実習」
制度を廃止し、人手不足を補うことを正面に掲げた
「育成就労」
制度、つまり外国人労働者を労働力として位置付け導入する制度へと転換することが眼目となっている。
この
「育成就労」
資格で3年の在留期間を経て技能や日本語能力が育成されたとなると在留資格が
「特定技能1号」
となり、更に次の段階として熟練技能が求められる
「特定技能2号」
の試験に合格すれば永住資格の取得も家族呼び寄せも可能となる。
また、これまでの技能実習制度では原則認められていなかった実習先の転籍が、新制度では1つの職場で1年を超えて働いた場合、条件付きで認められることとなる。
こうして
「育成就労」
資格で3年の在留期間を経て在留資格が
「特定技能」
となった場合も、外国人が働くことのできる職種が従来の14業種に自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野が追加されることが決定している。
近い将来、水産加工や製造業、農作業だけでなくバス・タクシーの運転手や鉄道の駅員として外国人が働く姿を見ることとなる。
まさに、外国人政策の大転換と言えるが、この転換がもたらすものは何か。
人手不足が幾分か解消されるというだけの単純な話ではない。
朝日新聞は
「未熟練労働者として入国した人たちに中長期のキャリアパスを示し、将来的な定住への道筋が見えるようにした」(2023年10月20日・社説)
と評価したが、外国人労働者の定住を促進するかのような政策変更と言える。
我が国の外国人政策は在留期限と在留資格を限定して在留を許可する
「在留管理」
が原則で、期限が切れると在留できなくなる制度のはずだったが、今回の政策転換が定住を前提とまで言わないが、定住を促進する、移民政策に転換するかのような内容と読めてしまうことは否定し難い。
■外国人が10%を超える日
問題は定住化だけではない。
既に日本人人口が急激に減少する一方、今回の政策転換以前から在留外国人は着実に増加する時代が始まっている。
2023年6月時点での在留外国人の総数は322万3856人(出入国在留管理庁)で過去最高となった。
そのうち外国人労働者は204万8675人(2023年10月末時点)で、前年から22万人余り増加し、初めて200万人を超えた。
政府は今回の政策転換によって5年間で82万人の外国人労働者の増加を見込んでいるというのだから、今回の法改正が外国人労働者の流入を加速させることは間違いあるまい。
このまま日本人人口が減少し、外国人人口の増加が続けばどうなるか。
国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研と略)による推計(2023年4月公表)では、今から45年後の2070年に日本の総人口は8700万人に減少し(2020年の国勢調査による1億2615万人から31%減)、その一方で在留外国人は939万人へと増加するとの推計を発表している。
つまり、総人口に占める外国人の比率が10.8%となり、現状の比率約2%と比べて約5倍、日本は10人に1人が外国人という人口推計となると予測されている。
しかも、既にその時期が45年後の2070年よりかなり早く前倒しされる可能性すら指摘されている。
入管庁の発表によると外国人の入国者数から出国者数を引いた
「入国超過」、
つまり外国人の増加数は2023年9月までの1年間で24万人と前年同時期を5万人も上回っていた。
実は、先の社人研による外国人人口推計は毎年16.4万人の入超を想定した推計だったが、現実には既にその1.5倍も増加している。
この増加傾向が続けば外国人人口比率10%は2070年より10年、20年早まるのは確実と言える。
ちなみに外国人比率10%と言えば、ヨーロッパではドイツ(19%)には及ばないが、イタリア(11%)とほぼ同率、フランス(13%)やイギリス(14%)に近い数字と言える。
これらの国々では移民問題が国政上の大問題となっているが、外国人労働者を移民とは呼ばない我が国においても、本格的な
「外国人政策」
が論じられねばならない時代がやって来ていることは確かである。
■抜け落ちた地方への視点
外国人政策は、出入国管理が国家の主権に係わり、労働政策を含めて出入国や在留、帰化などの制度も基本的に国政マターであり、今回の政策転換を行った背景となったのも外国人材受け入れ・共生に関する関係閣僚会議の報告書
「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」
と言える。
そこで何が掲げられているのかと言うと、
「外国人も社会の一員として包摂する安全・安心な社会」
「外国人を含む全ての人の社会参加」
「個人の尊厳と人権を尊重した社会」
の3つのビジョンを挙げ、外国人との共生社会を目指そうという構想である。
このロードマップに掲げられた共生のビジョンを真っ向から否定しようとは思わないが、その実現性に疑問を持たざるを得ないというのが率直な感想と言える。
というのも、外国人人口の増加、定住化の波に直面するのは
「地方」
なのだが、このロードマップにはその
「地方」
への視点が見当たらないというかすっぽり抜け落ちていると言わざるを得ないからである。
外国人は日本で働くために入国し在留しているが、単なる労働力として位置付けるだけで済む問題ではない。
「我々は労働力を呼んだが、やって来たのは人間だった」
というスイス人の言葉があるように、職場での労働環境、年金・健康保険、子供の保育・学校教育、本人と家族の日本語教育、更には生活保護を含めた生活環境の整備が必要とされることは言うまでもない。
そうした課題や問題に実際に直面するのは中央官庁ではなく地方自治体である市町村だが、自治体財政や人的問題への言及は余りに少ない。
そうした地方との連携が余りに希薄で、
「外国人との共生」
だけが独り歩きしているように読めてしまうというのが筆者の感想である。
■その先に外国人参政権
先に挙げた行政対応など財政的・人的問題はクリア可能だとしても、もっと深刻な問題がある。
ロードマップが外国人を
「日本社会を共に作る一員」
と位置付け、外国人の
「個人の尊厳と人権」
が尊重される社会を目指すことを強調している。
しかし、外国人の
「個人の尊厳と人権」
を強調すれするほど、その先には
「外国人参政権」
という議論が待ち構えていることは間違いない。
そもそも参政権(選挙権・被選挙権)は国民が自国の政治に参加する権利であり、外国人には与えられていない。
少し説明すると、平成7(1995)年の最高裁判決は概略次のように外国人の地方参政権を否定している。
憲法15条1項は公務員の選定罷免権は
「国民固有の権利」
と規定し、その
「国民」
とは憲法が規定する国民主権の原理における国民、つまり我が国の国籍を有する者を意味することは明らかで、そうした性質上、地方選挙であっても在留する外国人には及ばない。
また
「住民」
についても
「憲法第93条2項に言う『住民』とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当」
とも判示した。
その意味で外国人の参政権問題はこの最高裁判決で決着が着いていると言えるが、近年、当時とは違う事情が生じてきていることに留意したい。
平成7(1995)年の最高裁判決当時は憲法学者の間でも外国人の参政権は憲法上保障されないとする全面否認説(禁止説)が有力であったが、最近では国政レベルにおいて外国人の参政権は認められないが、地方自治体レベルの参政権は、外国人に認めても憲法違反にはならないとする学説(許容説)が有力となっているからである。
例えば、芦部信喜・高橋和之『憲法』(第7版)は、
「狭義の参政権(選挙権・被選挙権)は外国人には及ばない」
「しかし、地方自治体、特に市町村という住民の生活に最も密接した地方自治体のレベルにおける選挙権は、永住資格を有する定住外国人に認めることもできる、と解すべきであろう」
としており、樋口陽一『憲法』(第4版)も
「(外国人の)地域社会構成員としての性格に着目して、地方自治体の選挙につきそれらを認めることは、一般的に言って、違憲の問題を生じないと解することができよう」
と解釈している。
こうした憲法解釈を読めば、外国人を
「日本社会を共に作る一員」
と位置付けるロードマップのロジックと類似していることが分かる。
外国人の
「個人の尊厳と人権」
が尊重される社会を目指すという方向性は外国人地方参政権許容説と重なると言えよう。
尚、この他に憲法学者の中には憲法が外国人参政権を要請しているとの学説もあるがここでは省略する。
今現在、具体的に外国人参政権要求が叫ばれているわけではない。
しかし、近い将来、新たな参政権要求が提起された場合、最高裁判決当時(平成7年、1995年)とは学説状況が変わっていることを考えれば、従来の最高裁判決が維持できるのかどうか、不安なしとは言えない。
今の政府の閣僚会議が最高裁判決を超えて外国人参政権の議論を報告書に書くことはあり得ないが、関係閣僚会議のロードマップが外国人を
「日本社会を共に作る一員」
とし、外国人の
「個人の尊厳と人権」
の尊重を提言したことが、参政権議論の中で許容説の布石となることは十分にあり得るように思える。
■急増する10%超の市町村
参政権問題では、こうした憲法解釈とは別に外国人人口の増加によって市町村単位で深刻な問題が持ち上がることが予想される。
前提となる解説をさせて頂くと、先に外国人の人口比率が10%を超える時代が到来すると書いたが、この10%はその時の総人口の分母とし全外国人を分子とした比率、言わば全国平均であって、これを個別の市町村で見ると事情が大きく変わってくる。
4年前2020年の国勢調査では、外国人比率が10%を超えている市町村は10自治体程度しかなかったが、外国人人口の増加傾向を踏まえて5年後10年後に10%を超える市町村がどれほど増えるだろうか。
実は将来の市町村ごとの外国人人口は推計されていない。
ただ、社人研は毎年の全国レベルの外国人人口の
「入超」(増加)
分を16.4万人として計算しているので、この増加分を既知の国勢調査(2020年)の市町村別の外国人人口のシェアに基づいて年ごとに市町村に加算する方法で計算してみると、個別の市町村の数字は正確ではないにしても、ある程度のトレンドを知ることができる。
全体の傾向として言えることは、今から6年後の2030年になると、外国人比率が10%を超える市町村の数は40〜50と急増し、しかも分母となる日本人人口が少なくて外国人人口が多い現在の10%越えの市町村とは違って、地方では製造業の大規模工場や工場団地周辺の小都市、都市部では大阪や東京の一部の区に加えて名古屋市や神戸市の一部の区も、埼玉県川口市など特定の国の外国人が集中する自治体も10%を超えるという傾向が読み取れる。
このままの傾向が更に次の10年も続けば、10%超の自治体は100近くになる可能性がある。
また、10%超の予備軍とも言える外国人比率7〜9%の市町村は4年前2020年の国勢調査時には26しかなかったが、2030年の段階で既に倍増するとの傾向が窺える。
■地方政治を左右する勢力に
こうした外国人人口の急増は、仮に外国人に選挙権が与えられたとすれば、地方政治に大きな影響をもたらすこととなる。
人口10万人規模の市では市会議員は1200票程度で当選している(定数25〜30)。
その市の外国人人口比率が10%の場合、有権者数や投票率を考慮しない粗っぽい計算だが、複数の議員を外国人だけで当選させられる。
人口20万人の市と言えば地域の中心的な自治体だが、市議は1400票〜1500票で当選している。
ここでも外国人の人口比率が10%を超えていれば、更に複数の議員が当選可能と言える。
そうなれば外国人の政治集団ができると言えよう。
在留外国人からすれば、人口の一定比率を占めながら(ここでは仮に10%としたがそれ未満でも問題の性質は変わらない)、自分たちの代表を持てないのは、
「個人の尊厳と人権を尊重した社会」
というロードマップの共生ビジョンに反する、まさに人権が損なわれているという問題意識が生まれても何ら不思議ではない。
日本人の側にも、こうした外国人の政治パワーを利用しようと地方参政権の獲得を掲げる政治勢力も出てこよう。
かつて民主党政権は2009年の総選挙での民団(在日本大韓民国民団)の選挙支援と引き換えに外国人地方参政権法案を当時の小沢一郎幹事長が主導して提出しようとしたことがあった。
外国人労働者問題の専門家の中には参政権など当然だと主張する向きもある。
宮島喬(みやじまたかし)お茶の水女子大学名誉教授は
「(外国人労働者は)住民として国や自治体から様々なサービスを受ける権利を持ち、またサービスを受けるだけでなく、参加する権利、つまり地域の諸組織に参加したり、地域政治に参加する権利も認められるべきでしょう(住民投票、地方議員・首長の選挙に参加したり、請求権などを行使したりする権利)」
と主張している(岩波ブックレット『新版外国人労働者受け入れを問う』)。
今後、子弟の教育など外国人の生活に係わるテーマが地方選挙の争点となった場合、選挙権が認められていないことが問題視されることは十分に考えられよう。
こうした状況の背景にあるのは、これまで日本人が経験したことのない外国人の増加であることは間違いない。
にもかかわらず、先のロードマップは、こうした地方に係わる深刻な問題について問題意識がすっぽり抜け落ちていると言わざるを得ない。
■「国益の原則」忘れるな
そもそも外国人政策の原則とは如何なるものなのか。
外国人の政治的自由と在留許可を国が制限できるかが問題となったマクリーン事件において最高裁は、余り注目されなていない論点だが、法務大臣の任務についてこう判示している「昭和53(1978)年10月4日」。
「法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたっては、外国人に対する出入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立って、申請者の申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・経済・杜会等の諾事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情をしんしやくし、時宜に応じた的確な判断をしなければならない」
この判決で注目すべきは
「出入国の管理及び在留の規制」

「国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定など」

「国益の保持」
を目的としている点にある。
外国人政策は
「国益」
が原則だということである。
外国人労働者を受け入れる究極の目的は我が国経済に寄与してもらうためであることを考えれば、当然とも言える。
現在の外国人政策もこうした
「国益の原則」
に沿って、ここまで取り上げてきた地方の観点だけでなく、様々な観点から外国人政策がデメリットを含めて論じられ捉え直されるべきであろう。
外国人に係わる治安問題は国民の関心事だが、そうした問題指摘はロードマップには余りにも少ない。
経済的観点からは外国人労働者の受け入れの経済効果について、経済界は人手不足だけを強調するが、外国人労働者の受け入れにはどんなデメリットがあるのかも論じられるべきであろう。
また安全保障という観点からも検討が必須である。
中国の国防動員法は中国政府が有事を認定すれば日本在住の中国人も動員対象となる。
我が国に在留する外国人約342万人のうち、中国人は約82万人で最大勢力である。
外国人の4人に1人が中国人という現実を踏まえれば、中国の国防動員法は、それが実際に在留中国人に適用されるかどうかは別として、日本の外国人政策にとって検討されるべき大問題と言える。
こうして見ると、外国人との共生を目指すと言っているだけで問題が解決できるかのように思える、そんな時代では既にないことは確かと言えよう。

郷に入って「郷に従わん」外国人
直球&曲球 宮嶋茂樹
2024/5/9 10:00
https://www.sankei.com/article/20240509-H4LOHB4JIROYBC6FPXFOHBKM7Y/
日本経済が低調なのは
「外国人嫌いで、移民を望んでいないためだ」
やて?
いやいや、バイデン米大統領、言葉は正確に伝えんとアカンわ。
多くの日本人が嫌いなんは、日本に来ても日本の文化や伝統、ルールを尊重せず、皇室を敬愛するどころか敵視するような外国人のことや。
日本人もどないかしとるで。
政・官・財・民、挙げて
「インバウンド」
景気やと歓迎して、いちびっとるけど、日本に来る観光客や定住外国人は、当たり前のことやけど、善意の人≠ホかりやないんやで。
最初から転売目的で爆買い≠オたり、白タクで荒稼ぎしたりしとる外国人も後を絶たん。
オーバーツーリズム
(とある地域を訪れる人が急増したことにより様々な問題が発生し、その地に暮らす人々や自然環境、生態系、景観などに悪影響を及ぼしている状況のこと。日本では「観光公害」とも呼ばれており、県や市といった全体で起きるものではなく、「〇〇市の橋周辺」や「春の〇〇府の寺院」など、特定の場所や季節、時間に起きるものを指す言葉)
の弊害も深刻や。
そこで暮らしとる日本人が多大な不便や迷惑を強いられとる。
東京や大阪じゃ日本人が泊まれるホテルを探すだけで一苦労や。
富士山もゴミだらけやんけ。
これほど外国人観光客が日本に押し寄せる理由は色々ある。
メシがうまいし、安い。
種類も豊富や。
治安もエエし、皆が皆とは言わんけど、まぁ日本人は外国人に親切や。
しかし、一番の原因は昨今の円安やろ。
円安=日本が安う見られとるというこっちゃ。
ハワイやヨーロッパは無理やけど
「円安」
の日本やったらいけるわ、とな。
それでも、ワシは何もやみくもに外国人の観光客や定住者を締め出せ、と言うとるわけやないんや。
困っとるんは、日本に来てまで犯罪まがいのことをやったり、日本の法令に反する自分らの風習を認めろ、と叫んだり、日本を理解しようともしたりせん、外国人なのである。
海外の日本人を見てみい。
皆から嫌われんようにちゃんと努力しとる。
その国の慣習、ルールを尊重して気、遣っとる。
イスラム圏に行ったら、お祈りの時間は静かにしとるし、豚肉は食べんし、公の場では酒も飲まんようにしとる。
「郷に入れば郷に従え」
という、諺を知っとるからや。
その国の交通ルールから公共マナーまで、いくら日本人には理解不能でも尊重するで。
そんな日本人を
「外国人嫌い」
やて?
バイデン大統領、それはないで!

バイデン米大統領が同盟国を「外国人嫌い」と切り捨てた失言の背景
ポトマック通信
2024/5/9 7:00
https://www.sankei.com/article/20240509-MFUGY3GBRVNUJJQMQJDL5YUPEA/
バイデン米大統領は2024年5月1日、アジアや太平洋諸島系の支持者集会でこう述べた。
「米国経済が成長を続けるのはなぜか」
「理由は我々が移民を歓迎するからだ」
「なぜ中国は経済的に行き詰まっているのか」
「なぜ日本は困難な状況なのか」
「ロシア、インドはなぜか」
「理由は彼らが外国人嫌い(xenophobic)で、移民を望まないからだ」
人は異なる人種、言語、宗教、生活習慣の人々の存在に拒否感や嫌悪感を抱くもので、どの国も受容と葛藤の歴史を続けている。
私が驚いたのは、大統領の失言に慣れっこのはずの米メディアの反応だった。
「同盟国に否定的用語を使った意図は?」
との疑問だ。
バイデン氏がなぜ日印中露を一括りに
「外国人嫌い」
としたのか報道官の釈明を聞いても判然としない。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは社説で、米国の移民差別の事例を挙げて
「日本の友人たちがバイデン氏のコメントを受け流してくれることを願う」
と述べた。
流せなかったのか、日本政府は
「正確な理解に基づかず残念」
と申し入れをしたと聞く。
日印を軸に中露を牽制する政権のインド太平洋外交への影響を懸念する向きもあるというが、失言には本心や願望が表れることもある。
日本を権威主義陣営との橋渡し役とする新構想があるのかと想像した。

林官房長官、バイデン米大統領の「日本は外国人嫌い」 「正確な理解に基づかない発言」
2024/5/7 12:18
https://www.sankei.com/article/20240507-GHSI6VL6DRNXPNOBYGMUH7TUQU/
林芳正官房長官は2024年5月7日の記者会見で、バイデン米大統領が、日本経済が低調なのは外国人嫌いなためだと発言したことに関し
「日本の政策に対する正確な理解に基づかない発言で残念だ」
「米国には日本の考えや政策を改めて説明した」
と述べた。
2024年4月の岸田文雄首相の国賓待遇での訪米を踏まえ、
「日米関係はかつてなく強固であり、引き続き日米関係の一層の強化に取り組んでいきたい」
とも強調した。

バイデン氏の発言は「残念」 日本政府が米側に伝達
2024/5/4 16:01
https://www.sankei.com/article/20240504-UYFMDSHLXZKMPNKFYEN72HZNLA/
バイデン米大統領が日本経済が低調なのは
「外国人嫌いで、移民を望んでいないためだ」
と発言したことについて、日本政府は2024年5月3日までに
「正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」
と米側に伝達した。
関係者が明らかにした。
ホワイトハウスが公表した発言録によると、バイデン氏は2024年5月1日、ワシントンでの選挙資金集めイベントで、好調な米経済を支えているのは移民だと称賛し
「中国が経済面で停滞し、日本が問題を抱えているのは、ロシアやインドも同じで、外国人嫌いだからだ」
と語った。
ジャンピエール大統領報道官は2024年5月2日、バイデン氏の発言について
「移民が如何に米国を強くしているかについて話した」
と記者団に釈明した。
記者から日本との関係を悪化させるのではないかと問われると
「日本とは力強い関係がある」
とだけ答えた。(共同)

日本や中国の経済不調は「外国人嫌いのせい」 バイデン米大統領が集会で発言、移民を称賛
2024/5/2 18:35
https://www.sankei.com/article/20240502-HXPLHHHEO5LJ5LECJI6HHSVFW4/
バイデン米大統領は2024年5月1日、好調な米経済を支えているのは移民だと称賛した上で、日本や中国などの経済が低調なのは
「彼らが外国人嫌いで、移民を望んでいないためだ」
と発言した。
ワシントンでの選挙資金集めイベントで述べたと、ロイター通信が報じた。
2024年11月の大統領選で対決するトランプ前大統領の移民受け入れに消極的な姿勢を念頭に、バイデン氏は集会で
「移民こそが私たちを強くしてくれている」
と強調。
一方で
「中国が経済面で停滞し、日本が問題を抱えているのは、ロシアやインドも同じで、外国人嫌いだからだ」
との見方を示した。
国際通貨基金(IMF)が2024年4月に発表した2024年の経済成長率の見通しでは、米国は2.7%で日本は0.9%。
一方、中国は4.6%、インドは6.8%となっている。(共同)

育成就労決定 永住資格を厳格化 税金滞納で取り消し
産経新聞2024年2月10日
政府の関係閣僚会議は2024年2月9日、外国人の永住許可制度を適正化する政府方針を決定した。
外国人永住者を巡っては、税金を滞納する事例などが確認されており、悪質な場合は在留資格を取り消せるよう要件を見直す。
政府は2024年2月9日、技能実習制度の代わりに新たに外国人を受け入れる
「育成就労」
制度の方針を決定。
即戦力の外国人労働者を受け入れる在留資格を
「特定技能」
のうち、事実上永住できる特定技能2号への移行を促す同制度下では永住者の更なる増加が見込まれることから、悪質な外国人を排除する仕組みを整備する。
入管難民法は、永住資格の許可要件として素行の善良さなどを規定。
政府のガイドラインでは他に、納税義務の履行などを要件に挙げている。
一方、入管難民法で在留資格を取り消せるのは虚偽の申請で資格を得た場合などに限られ、税金や社会保険料の滞納を重ねても取り消されない。
関係者によると、永住資格取得後、納税などを拒むケースが複数、確認されている。
永住者は在留期限や活動に制限がない。
2023年6月末時点で約88万人で10年前から4割弱増加。
在留外国人の約3割を占める。

政府、外国人の「育成就労」新設方針 転籍1〜2年で可能 技能実習制度は廃止
2024/2/9 10:30
https://www.sankei.com/article/20240209-44RUQO4NEFNRPJT2WJRKPZ2X5Q/
政府の関係閣僚会議は2024年2月9日、技能実習制度の代わりに新たに外国人を受け入れる
「育成就労」
制度創設を柱とする政府方針を決定した。
技能実習制度では原則認められていなかった転籍(転職)を原則1年で認める一方、最長で2年間、転籍を制限できるとした。
政府は2024年3月にも国会に関連法案を提出する。
技能実習制度を巡っては劣悪な労働環境の影響で人権侵害事案などが発覚。
政府の有識者会議が昨年、公表した最終報告書は技能実習制度を廃止し、育成就労制度を創設。
育成就労期間が1年を超えるなどの条件を満たせば原則、転籍を認めるとしていた。
その後、地方から都市部に人材が流出する可能性があるなどの懸念を払拭するため、転籍に一定の制限をかける必要があると自民党の部会が提言。
政府方針は、当面、業界ごとに最長で2年まで転籍を制限できるとした。
転籍時の日本語能力は、最も易しい日本語能力試験「N5」レベルや、基本的な日本語を理解することができる「N4」レベルを設定する。
転籍要件の緩和に伴い、悪質な転籍ブローカーの介入を防ぐため、転籍の仲介状況を透明化するための体制を整備をする他、資格のない外国人を雇うことを禁じる不法就労助長罪の法定刑を引き上げる。
受け入れの仲介を担う監理団体は
「監理支援機関」
とし、外部監査人の設置を義務付ける。
新制度は、人材の育成だけでなく確保も目的とし、受け入れる分野を特定技能制度と揃える。
育成就労期間を終えて日本語と技能の試験に合格すれば、特定技能1号に移行できる。

欧州、難民は「外国に送れ」の新潮流 メローニ伊首相「モデルになる」と意欲満々 
緯度経度 三井美奈
2024/2/9 9:00
https://www.sankei.com/article/20240209-O2HOXT6SKVMYXM4VF7UMMMLY64/
移民流入に悩む欧州で、
「難民を第3国に送る」
という奇策が浮上した。
イタリアと英国が先導している。
イタリアの計画は2023年11月、メローニ首相が発表した。
地中海を渡ってくる不法移民を隣国アルバニアに送るという。
2024年春にもスタートし、年間3万6000人を見込んでいる。
「欧州のモデルになる」
と誇った。
計画によると、アルバニアの沿岸に受け入れ施設を造ってもらい、イタリアに移民船が来たら、上陸させずに施設に直送する。
施設ではイタリアの職員が難民審査を行い、周辺の警備はアルバニアが担う。
難民資格が得られなかった人は、イタリアの責任で送り返すことになっている。
イタリアには2023年、北アフリカから移民船で15万人以上が押し寄せた。
イタリア政府は欧州連合(EU)加盟国に
「分担して受け入れを」
と求めたが、応じてもらえない。
そこで、アルバニアに
「EU加盟を支援する」
と約束し、合意を取り付けた。
地元紙によると、経費は5年間で推計6億5000万ユーロ(約1030億円)。
全てイタリアが負担する。
金と手間をかけて、わざわざ移民を外国に送るのには訳がある。
欧州人権法では、1度入国させると追放は極めて難しい。
難民資格がない人も申請を繰り返し、
「子供や病人がいる」
と法廷で訴えれば、強制退去にブレーキがかかる。
そこで
「とにかく入国させない」
ことが重要になった。
「我が国(イタリア)に来ても外国に送るからムダ」
と示し、密航を諦めさせる狙いもある。
メローニ氏は
「不法移民に危険な旅をさせずに済む」
と、抑止効果を強調した。
欧州研究機関
「国際移民政策開発センター」(ICMPD)
のマルティン・ホフマン顧問は
「よく練られたアイデア」
「EU域外の受け入れ施設でも、イタリア法で運営すれば『人権軽視』の批判をかわせる」
「うまくいけば、追随国が増えるだろう」
と予測する。
英国では今、
「移民のルワンダ移送」
法案が国会で審議されている。
英仏海峡を渡ってくる不法移民を6500km南のルワンダに送り、難民申請から定住まで委任することを目指す。
イタリアと英国は、人権団体や左派野党から
「残酷」
「難民保護の責任逃れ」
と批判された。
英国では2023年、当初法案に最高裁が
「人権侵害の恐れあり」
として違憲判決を示し、政局は大揺れになった。
それでも、第3国移送案への関心は高い。
デンマークの他、ドイツ最大野党の中道右派
「キリスト教民主同盟(CDU)」
が、EUによる取り組みを訴えている。
フォンデアライエン欧州委員長は、イタリア案を
「画期的」
と讃えた。
EUはこれまで、リビアやチュニジアに支援金を出し、移民船の出航を止めてもらおうとした。
EU加盟国で受け入れ枠を作り、負担を分け合うことも定めた。
いずれもあまり成果がない。
どの国も
「何とかしろ」
という世論の圧力に直面している。
注目が集まるのは、欧州人を良心の呵責から救う効果もあるからだろう。
各国政府は本音では不法移民を追い払いたいのだが、
「瀕死で救いを求める人を見捨てるのか」
という人権団体の訴えを無下にできず、常に逡巡している。
苦難の末にやってきた移民を、また外国に送る。
そんな方策に飛びつくほど、事態は切迫している。
2023年、欧州で難民申請件数は100万件を超えた。
地中海を渡る途中で死亡、行方不明になった移民は約3000人に上る。
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