以下は、老人の孤独と若者の孤独を一緒くたにした残念な毎日新聞の特集記事だ。老人の孤独には、望まずになった孤独『ロンリネス』と望んで孤独『ソリチュード』と云う英語がある。非常に宗教的であるし、哲学的でもある。この二つの孤独の概念は、人生経験が豊かで、それまでに培った人生哲学で選択した『ソリチュード』であり、正直、社会風潮など関係のない「孤高」という選択だ。孤高を選んだ人々は、生きている限り、恥を晒しても生きるが、鬱陶しい他人との関係を極力減らして人生をまっとうしようと云う覚悟があるのだろう。
残念ながら、夫婦で生活を営んでいたが、妻に先立たれた男の老人に関しては、多々問題を含んでいるだろう。日本の男社会では、ポジショントークは当然であり、佐川元理財局長のような答弁も、その地位にける範囲の答弁であり、佐川宜久(本名は宜寿、なぜ漢字を変えている?…安倍人脈のニオイ?)個人の答弁ではないと云うのが安倍や麻生の言い分だ。当時の理財局長は、真実がばれていなかったのだから、そのばれていない範囲で理財局長として答弁したのだから、官僚の鏡である。
あくまで元理財局長のポジショントークを適切にこなしたのだから、国税庁長官への転出は適材適所だと云う言い分になる。まぁ幾分大袈裟な話になったが、リストラ担当役員が、社員の首を切る時も、似たような心境で行動している。それでなければ、やりきれなくて、みずから命を絶つことも大いにある。銀行の貸しはがしを行った連中も、ポジションにおける行為であり、犯罪ではないと云うのが彼らの立場だろう。ただ、ポジションを失った時、その喪失感は大きい。
このように、日本の男社会の企業や役所では日常茶飯事な出来事で、それを乗り切った男達が、男社会の企業や役所と云う共同体からドロップアウトした時、その連れ合いが亡くなり、“男やもめ”で生きなければならなくなった場合、彼らが『ソリチュード』な選択が出来ず、『ロンリネス』になった場合は、社会の救済は欠かせないだろう。しかし、国民的な宗教的背景のない日本では、やはり、国家が責任を持つべきである。無論、その精神的支えまでを要求するのは民主主義や自由主義に反するので、最低限の文化的生活扶助に留めるべきだ。今の安倍政権のように国家主義的色彩の強い政権には、『ロンリネス』と『ソリチュード』の区別も判らないだろうから、老後の選択の自由さえ奪われかねない点は大きな問題だ。
個人的に思うことは、筆者は現在女房と暮らしているので、なんらの生活上の支障はない。子供も独立したので、互いの財布や手伝いを求めないように努めている。平穏無事に生きているわけだが、心がけておくことがある。我が家では、二年に一回のペースで、女房に2週間くらいの旅に出て貰うことにしている。つまり、この2週間は、孤独と闘う為のシミュレーション期間なのだ。この間に、家のどこに何があり、灯油はどこで買い、近所となりとの関係も最低限こなしておく。急に発熱などで動けない場合はどうするか、やはりシミュレーションは「孤高」を望む場合でも重要な前哨戦だ。
若者に関しては、老人の孤独と本質的面で、あまりの質の違いがあるので、並列的語る気にはなれない。ネットカフェ難民問題も含め、若者の孤独と云う問題は、別途考えてみたいと思う。ただ、若者の場合、世代によって、家庭によって、或いは経済力によって、その対応は大きく異なるので、老人のように『ロンリネス』と『ソリチュード』と云う大別よりも複雑であり、知識が不十分なことも含まれるので、コラムにするのは厄介だろう。
≪ 社会風潮:大丈夫か孤独大国・日本 「孤高」美化の風潮も
【 孤独が健康などに悪影響を及ぼすとして、メイ英首相は1月、「孤独担当相」を新たに設けると発表した。人口約6500万人の英国では、900万人以上が「常に」あるいは「頻繁に」孤独を感じ、1カ月以上も友人や家族と会話しない高齢者は20万人に上るという。ならば、孤独死が社会問題化している日本に「担当相」は必要ないのか。】(庄司哲也)
「日本には『孤独』に関する統計は、ほとんどありませんが、欧米以上に『孤独大国』と思われます。少子高齢化が進む中、早急な対策が必要ではないでしょうか」。そう話すのは、「世界一孤独な日本のオジサン」(角川新書)の著者で、コミュニケーション戦略の専門家、岡本純子さんだ。なぜ、「孤独大国」なのだろうか。 若者が無料通信アプリ「LINE」(ライン)」で、リストカットしたことを打ち明けている画面。メッセージを受け取ったのは、若者メンタルサポート協会理事長の岡田沙織さん=岡田さん提供(画像の一部を加工しています)
*画像省略
岡本さんが示したのは、英シンクタンク「レガタム研究所」が発表した2017年版の「繁栄指数」だ。九つの指標のうち、日本は「ソーシャル・キャピタル(社会や地域での人の信頼関係や結びつき)」で149カ国・地域のうち101位。14年に内戦が起きたリビア(53位)や90年代に内戦が勃発したルワンダ(84位)より低い順位だ。
「日本では『おひとりさま』や『孤独のグルメ』といった言葉がメディアで取り上げられるように、『孤独』が決して消極的な意味ではとらえられません。特に男性は『群れない男がカッコいい』といった男性像を押し付けられている」。そうした日本社会の風潮が、孤独を後押しするというのだ。
岡本さんによると、英国で孤独対策の本格的な取り組みが始まったのは5〜6年前から。孤独は認知症や高血圧に結びつくなど健康を損なうという認識が広まり、五つの慈善団体などを中心に「孤独を終わらせるキャンペーン」が11年に始まった。調査や研究、啓発活動が行われ、メディアも頻繁に取り上げた。孤独なお年寄りが集える場や、相談のホットラインなどが、民間が主体となって設けられたという。 日英を比較できるデータがある。日本の研究者のプロジェクト「JAGES」(日本老年学的評価研究)によると、65歳以上の日本人1万3176人と英国人5551人を約10年間追跡し、友人とのつながり、婚姻状態などの項目別に生存期間を比較した。「友人とのつながりが相対的に多い英国人男性では、日本人男性と比べて45日間の長寿につながった」という。孤独が寿命に影響を与える因子になり得ることが示された。
研究の中心となった東北大大学院歯学研究科准教授の相田潤さん(公衆衛生)は「日本では関心があまり払われていませんが、米国の研究チームによる『孤独であることは酒の飲みすぎやたばこを1日15本吸うのと同じぐらい健康に悪い』という調査結果は欧米に広く浸透しています」。
孤独を抱えるのは中高年だけではない。「リストカットした」「今からこれ(大量の薬)飲みます」。NPO法人「若者メンタルサポート協会」理事長の岡田沙織さんのスマートフォンには無料通信アプリ「LINE(ライン)」を通じて1日に100〜200件の相談が届く。
自身もリストカットなどの経験がある岡田さんが「子供たちの孤独感を受け止める場を作ろう」と、相談の受け付けを始めたのは12年からだ。岡田さんが相談を寄せた子に実際に会ってみると、親が不在がち、家庭内暴力がひどいといった例よりも、一見するとありふれた家庭環境の子が多いという。母親が兄弟ばかりをかわいがる▽両親が不仲▽学歴にこだわり成績のことばかり言われる−−。そんな子たちだ。「『うちは普通の家庭だし、学校もちゃんと行っているから大丈夫』。でも、そう言うあなたの子供の体には、自傷行為の痕があるかもしれないのです」
岡田さんは最近、こんなことを考え始めている。「『死にたい』『消えてしまいたい』と、子供が希望を持てないのは、こうあるべきだと縛られて毎日が満たされない親や大人を見ているからでは。相談を寄せる子の周りの大人もまた孤独なのかもしれません」
「英語には『孤独』を意味する言葉に『ロンリネス』と、『ソリチュード』の二つがあります。英国の担当相は『ロンリネス』の対策にあたります。一方、『ソリチュード』は、自ら選択して独りを楽しむというポジティブな意味を含みます。日本ではこの二つが混同されがちです」と話すのは、大手広告代理店「博報堂」の荒川和久さんだ。「ソロ」(一人)でのライフスタイルを研究してマーケティングにつなげる、同社のプロジェクト「ソロもんLABO」のリーダーを務める。
「『ソロで生きる力』とは、決して一人きりで、誰の力も借りないということではありません。むしろ、誰かとつながる力を持つこと。社会から孤立せず、個人が個人と結ばれるネットワークの構築が大切です」
国立社会保障・人口問題研究所の最新の推計によると、00年に27.6%だった1人暮らし世帯は、40年には39.3%になる。4割が1人暮らしだ。荒川さんは、「孤独」への危機感が特に希薄なのは、配偶者への依存度が高い既婚男性で、他人と関係が築きにくい人だと指摘する。
「会社に所属する自分しかない人です。肩書に依存し、名刺交換をしないと会話を始められない。定年後に肩書がなくなったらどうするのでしょうか。今のうちに、社名や肩書を名乗らず知らない人と会話できるようにトレーニングを積んだ方がいいと思います」
前出の岡本さんもこの意見に同意する。「会社という場所に存在意義を求める。『個』より『場』に重きを置く。定年退職でその場を失うと途端に元気を失うのです。『部長』など肩書で膨張したプライドは、人とつながることの障害となりやすい」
岡本さんは以前、会社勤めをしていた頃を思い出した。「当時、私の周囲にも定年後に孤独に陥りそうな予備軍の人たちがたくさんいました。やたらと人事や肩書にこだわったり。大切なのは個人のはず。10年間、新聞記者をしていたのですが」
岡本さんのその言葉に一瞬、凍りつきそうになった。当事者の私たちが自覚しないまま、孤独が社会にまん延しているのかもしれない。 ≫(毎日新聞)
http://www.asyura2.com/13/nametoroku7/msg/711.html