※2024年9月26日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2024年9月26日 日刊ゲンダイ2面
「安倍後継」自任、議員票勝負だと気がかり、「クビ切り自由化」悪評…(C)日刊ゲンダイ
それにしても自民党議員、党員というのは、本当に不思議な組織だ。裏金の集団ネコババが露呈し、党存亡の機なのに、裏金推薦人を集めた安倍信奉者が急伸する倒錯。
決選投票を見据えた動きも、保身と打算が渦巻く醜悪。破廉恥集団は下野させる以外なし、を改めて確認。
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岸田首相の不出馬表明は8月14日。事実上、1カ月以上にも及んだ「バカ騒ぎ」がやっと終わる。27日、自民党総裁選がついに投開票を迎える。
出馬しているのは、高市早苗経済安全保障相(63)、小林鷹之前経済安保相(49)、林芳正官房長官(63)、小泉進次郎元環境相(43)、上川陽子外相(71)、加藤勝信元官房長官(68)、河野太郎デジタル相(61)、石破茂元幹事長(67)、茂木敏充幹事長(68)と史上最多の9人。全員の名前を記すだけでも一苦労のバカバカしさだ。
読売新聞が24日に行った党所属国会議員の支持動向調査と、14〜15日に実施した党員・党友への電話調査の合計によると、直前の下馬評は1位石破、2位高市、3位進次郎の順となっている。1回目の投票では、どの候補も過半数に達しそうになく、議員票の比重が増す決選投票にもつれ込むのはほぼ確実だ。想定されているのは「石破VS高市」「石破VS小泉」「高市VS小泉」の3パターンである。
最終決戦での投票先を巡り、党内は「勝ち馬」探しに必死。情報収集が展開され、各陣営は議員票確保に向け最後の追い込みに死に物狂いだ。
最終盤にきて、落ち込みが激しいのが進次郎である。もともと「最有力」と目されていたが、露出が増すにつれ大失速。“クビ切り自由化”と悪評ふんぷんの「解雇規制緩和」を打ち出したり、中身空っぽな発言が災いし、党員・党友にも愛想を尽かされたようだ。目下、決選投票に残るため議員票の積み上げに懸命だが、自民党関係者からは「選対事務所に来る議員が減っている」「既に進次郎陣営から乗り換えた議員がいる」といった声が上がるありさまだ。
そんな状況だからか、進次郎はワラをもつかむ思いで24日、党内唯一の派閥会長である麻生副総裁と面会。さらには裏金処分で離党し、総裁選の投票権すらない世耕弘成前参院幹事長とも会った。今なお参院安倍派に影響力を残す世耕に支援を求めたとされる。
まさに貧すれば鈍すだ。進次郎は今年初め、裏金事件を念頭に「派閥はなくしたらいい」と断言。
総裁選の出馬会見でも「今回の政治資金問題こそ、古い自民党の象徴」「古い自民党を終わらせる」とエラソーにのたまっていた。あの威勢の良さはどこへやら。結局、旧態依然の派閥に泣きつくとは、世襲の象徴でもある自分こそが「古い自民党」そのものと認めたようなものだ。
唯一の派閥会長にひれ伏す旧態依然
「麻生詣で」にシャカリキなのは進次郎だけじゃない。議員票獲得に不安がある石破陣営も、かつて麻生派に所属していた選対本部長の岩屋毅元防衛相を通じて麻生に接近を試みているという。
高市陣営も同様に、選対本部長を務める中曽根弘文元外相が麻生と国会内で会談。決選投票での支援を求めたとみられている。
さらに「高市陣営は安倍派の参院議員を頼って、世耕さんとも接近している」(自民党事情通)という。
見過ごせないのは、あの裏金議員たちも蠢き出したことだ。裏金554万円で戒告処分を受けた西村明宏前環境相ら衆参両院の安倍派議員約30人が25日、都内で会合。決選投票での投票行動を巡って意見交換したというのだ。
「安倍派議員は高市さんや小林さん、進次郎さんなど複数の陣営に入っていますが、決選投票では一致団結。勝ち馬に乗ろうというわけでしょう。支援した候補が勝てば役職も期待できる。自分たちの票を高く売るにはどう動くべきか、相談したに違いありません」(永田町関係者)
今回の総裁選のポイントは「脱派閥」だったはずだ。「派閥による締め付けがないから、9人もの候補が出馬できた」(自民党議員)なんて解説されてもいた。ところが、最後にモノを言うのは結局、「派閥の力学」と「数の論理」。この期に及んで、有力候補がそろいもそろって「数の力」を頼りに麻生や世耕にペコペコと頭を下げる。この派閥の呪縛は皆が皆、非主流派への転落を恐れているからに他ならない。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう言う。
「岸田首相が年初に派閥解散を打ち出しましたが、何のことはない。派閥は『再編』されただけで存続しているのです。そのため、各候補は決選投票で勝つためには派閥のトップにひれ伏すしかない。派閥側は支援した候補を勝たせることでポストを期待する。逆に言えば、派閥が依然として力を持っているからこそ、重鎮同士のキングメーカー争いが展開されているとも言えます。また、個々の議員たちが意識しているのは、次の選挙の顔を誰にすれば勝てるか、ということ。事実上、次の総理を決める選挙なのに『国の将来をどうすべきか』という発想はありません。この状況を変えるには、決選投票で議員票の比重が大きくなる今の制度を変えるしかないでしょう」
要するに、自民党議員は誰もが保身と打算ばかりで国民目線は皆無ということ。あまりに醜悪な内幕である。
安倍元首相の呪縛から逃れられないブキミ
党内議員は「勝ち馬」探しに必死。「議論百出」からはまるで程遠い(C)共同通信社
それにしても、議員のみならず党員を含め、自民党というのは、つくづく不思議な組織だ。世間の批判をよそに、なぜか推薦人に裏金議員を最も多く集めた高市の支持が急伸しているからだ。
高市の推薦人20人のうち、裏金づくりに手を染めていたのは13人。裏金総額は実に9015万円にも上り、他陣営と比べて突出している。裏金の集団ネコババが露呈し、党存亡の機だというのに、なぜ、こうも支持を集めるのか。摩訶不思議だ。ルール無用の政策リーフレットの全国配布だけが要因ではないだろう。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「安倍元首相の後継者を自称する高市さんのもとに集まっているのは、いわゆる『安倍信奉者』です。改憲や軍拡、アベノミクスを重視する議員だけでなく、約100万人といわれる党員のコアメンバーにも信奉者が多い。反ジェンダーの『伝統的な家族観』を重んじる、いわゆる岩盤保守層です。彼らが『我こそは安倍後継』と声高に訴える高市さんに呼応した結果、彼女は支持を伸ばしているのです」
今回の総裁選では、岸田政権まで脈々と続く安倍路線からの転換も問われている。にもかかわらず、横死から2年を経ても安倍の呪縛から、まだ逃れられないとはブキミさを感じざるを得ない。
そもそも、高市が勝てば支援に回った裏金議員たちは無罪放免になるに違いない。それこそ、自民党議員が口にしていた「刷新感」からはほど遠い結果となる。
「自民党は9人もの候補が立った総裁選で『議論百出』と思っているのでしょうが、チャンチャラおかしな話です。序盤こそ裏金議員の非公認に言及する候補がいましたが、結局はトーンダウン。最終的にはどの候補も、使途の公開義務がない『政策活動費』の廃止に落ち着きました。裏金の実態解明の再調査は、まるで議論されませんでしたから、新総裁の下で事件は闇に葬り去られる。総裁選を通じて、クサいものにはフタの魂胆です。全ては自分たちの都合で、国民目線はゼロと言っていい」(本澤二郎氏=前出)
どいつもこいつも「今だけ」「自分だけ」。クソ長い総裁選で改めて確認できたのは、こんな破廉恥集団は下野させる以外ない、ということだけ。壮大な時間の無駄だ。
http://www.asyura2.com/24/senkyo295/msg/581.html