「あまりにも古色蒼然」時代錯誤な自民党・麻生副総裁の国際社会二分論 永田町の裏を読む
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2024/01/17 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
あまりにもOld looking…(麻生太郎副総裁)/(C)日刊ゲンダイ
「麻生太郎自民党副総裁って、まるっきり前世紀の遺物、冷戦時代の化石だね」と、ワシントン在住の旧知の米国人記者からメールが入った。
麻生は今月、米共和党系の老舗のシンクタンク「大統領職・議会研究センター(CSPC)」の招きで訪米し、10日に同センター主催のシンポジウムで英語で演説した。そこでまた何か変なことを言ったのか?
「変というか、あまりにもオールドルッキング(古色蒼然)、時代錯誤なことを言っているのでビックリした。彼は現在のインド太平洋の現実について、ますます好戦的になっている北朝鮮や威圧的な態度を強めている中国によって秩序破壊や無法行為が繰り返されており、このような“嵐で”窓ガラスが次々に破られていくような状態を放置すればいずれルールに基づく国際秩序が破壊されるので、米日を筆頭に韓国、オーストラリア、ベトナム、フィリピン、台湾などが同盟して国際的な抑止力を強化すべきだと、『ブロークン・ウインドー・セオリー(破れ窓理論)』を提唱した。これは、1950年代にジョン・フォスター・ダレス国務長官らが唱えた『ドミノ理論』の亡霊復活だ」と。
ドミノ理論とは、ある一国が共産化するのに手をこまねいていればドミノ倒しのように周りの国々も共産化してしまうという理屈で、60年代には、まさにこれによって米国のベトナム戦争への過剰介入が正当化された。
このように、台頭著しい中国を頂点に専制主義の陣営が全面攻勢に出てきていて、それに対して民主主義の陣営が結束して対抗しなければならないといった危機感の持ち方は、バイデン政権の一部と米共和党右派、日本の自民党やその外側の右翼などが共有しているものだが、中国が「専制陣営」の盟主だというのは誤解も甚だしいし、そもそも「民主陣営」なるものがあるのかどうかも疑わしい。
「民主主義の本家」を自称してきた米国自身が「選挙」というその主要手段を信じられなくなって国内分裂に苦しんでいるありさまで、何が民主陣営だということにもなっている。
そんな時代、今こそ時代を先読みする自立思考が求められる時だというのに、昔ながらの世界二分論に立って「米国に付いて行けば大丈夫」という旧態依然の態度を表したにすぎなかったのが今回の麻生訪米だった。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
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