※2020年12月8日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※2020年12月8日 日刊ゲンダイ2面
【国民は改めて思い知った方がいい】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) December 9, 2020
安倍晋三という拭いきれない歴史の汚点
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※文字お越し
被害者延べ1万人、被害総額2100億円――磁気治療器のオーナー商法などを展開、経営破綻した「ジャパンライフ」の巨額詐欺事件。警視庁など6都県警の合同捜査本部は7日、新たに同社元店長ら男女13人を書類送検した。
これまでに元会長の山口隆祥被告ら元幹部14人を詐欺容疑で逮捕。山口は詐欺罪で、娘の元社長・ひろみ被告ら12人(1人は不起訴)は出資法違反罪で起訴された。
被害者の大半は、60歳以上の高齢者だ。山口らは老後資産への不安心理に付け込み、巧みな勧誘で、被害者が人生をかけて築き上げた資産を根こそぎ、かすめ取ったのだ。
こんな「希代のワル」の元に届いたとされるのが、2015年の総理主催の「桜を見る会」の招待状だ。悪党どもが利用しない手はない。
〈安倍晋三内閣総理大臣から山口会長に「桜を見る会」のご招待状が届きました〉
勧誘セミナーで山口の宛名が入った現物写真を見せられたら、半信半疑で話を聞いていた人々もコロッと信じてしまったに違いない。当時、ジャパンライフは自転車操業に陥っており、招待状は「最後の荒稼ぎ」に悪用されたとの指摘もある。一連の巨額詐欺事件の捜査は事実上終結する見通しだが、改めて安倍首相はワルの片棒を担いだようなものだ。
山口宛ての招待状にある「60」の記載は、06年の小泉政権時代の桜を見る会では「首相推薦枠」を示していた。それでも安倍政権は「60」を首相の推薦枠と認めず、あろうことか招待者名簿をシュレッダーにかけて廃棄。証拠を隠滅した上で、安倍は「山口元会長との面識はなく、名簿は廃棄されたため、なぜ招待状が送られたのか分からない」と国会でシラを切り通し、首相辞任で疑惑をウヤムヤにしたのだ。
いつも口先だけの「誠意」大将軍
安倍は虎の子の資産を奪われた1万人もの被害者への贖罪の気持ちも、道義的責任を果たすつもりも、さらさらナシ。
この人物にモラルを説いても仕方がないことは分かっているが、つくづく倫理観が崩壊している。
今になって検察捜査を機に、安倍側が「桜を見る会」前夜祭の費用を補填していたことが発覚。国会で「補填はしていない」「ホテルの明細書はない」などと散々繰り返した安倍の答弁が虚偽であることが判明した。
最新の世論調査では、菅政権の支持率が軒並み10ポイント以上ダウン。
共同通信の調査だと、安倍の国会招致を60・5%が要求。57・4%が政府に再調査を求めた。JNNの調査だと、これまでの安倍の説明に「納得できる」との回答は10%にとどまり、「納得できない」が76%に上った。
桜疑惑の再燃が国民世論の怒りを買って火に油。後継政権の足を引っ張る事態になっても、安倍は反省の色なし。公設秘書の「略式起訴」が報じられた4日、ようやく記者団の取材に応じたが、東京地検特捜部からの任意聴取要請については「報道について承知しているが、まだ何も聞いていない」とスットボケ。
捜査には「基本的に誠意をもって対応していく」と語ったが、捜査中を理由に「お答えを控える」を連発。幹事社が各社に質問を促した間隙を縫って「ありがとうございました」と一方的に打ち切った。去り際に「お話しされるつもりはないのか」と問いかけられると、色をなして「私が背中を向けた段階で、ぜひ言わないでいただきたい」と逆ギレする始末だ。
まさに口先だけの「“誠意”大将軍」。こんな人物を首相として7年以上も、のさばらせたのは痛恨の極みである。
健全な常識を徹底して破壊し尽くした |
十八番の人事介入で“官邸の番人”の検察トップ就任をもくろんだ「検察庁法改正案」に国民が猛反発。思いつきの「アベノマスク」のムダ遣いは異物が見つかり一時回収、配布は遅れに遅れた。新型コロナ禍でも失態続きで、石もて追われるように政権を去った歴代最長首相。在任7年8カ月を振り返っても、何ら成果は思いつかない。
アベノミクスのトリクルダウンは今も実現せず、2度の消費税増税で景気を冷え込ませた。特に昨年10月の増税は今のコロナ不況に尾を引いている。政権との中立性が求められる日銀、内閣法制局、NHKなどのトップに息のかかった人物を据え、組織を骨抜き。
身勝手な法解釈の変更はお手の物で、集団的自衛権の容認まで解釈改憲。特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法の「戦争3法」の成立に邁進し、高齢者いじめの年金改革法やカジノ解禁法など世論の異論のある法案も数の力に頼って、強行採決を繰り返した。
自身の関わった森友・加計疑惑の「政治の私物化」は依然、真相があやふやなまま。かつて約束した「国民への丁寧な説明」を拒み続けている。「外交の安倍」とか言われたのも、お笑い草もいいところだ。
「政権の最重要課題」に掲げた北朝鮮の拉致問題は1ミリも動かず、「戦後外交の総決算」と位置付けた北方領土交渉もロシアのプーチン大統領にやられっぱなし。国会答弁などで「固有の領土」などの表現を自粛するハメになり、むしろ事態を悪化させた。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が言う。
「『深化』を目指した日米同盟も、ひたすらトランプ大統領に盲従。訪日した際は国賓扱いで天皇陛下に引き合わせ、ゴルフに相撲観戦と接待漬け。高額兵器を言い値で爆買い、貿易協定で日本の農業を売り渡す“ベタ降り”の連続でも何ひとつ譲歩を引き出せないまま。沖縄の基地問題も固定化し、辺野古の埋め立てで土建屋を喜ばせただけ。『米国には服従を誓うもの』と国民を洗脳するかのような隷従ぶりは、同じ同盟国でも英・独などとは大違いで、明らかに一線を越えていた。大統領選での往生際の悪さで、トランプ氏の正体が割れた今、日本は『プライドのない国』と世界の嘲笑の的。トランプ政権があと4年続くと踏んでいたのなら、情報分析にも問題がある。国益を大きく損ねています」
世界でも珍しい恥ずかしい国
要するに、安倍晋三という存在こそ拭い切れない歴史の汚点だと国民は改めて思い知った方がいい。なぜ、こんな首相が7年以上もやりたい放題を続けられたのか。その要因を検証し、排除しなければ、この国の民主主義に未来はない。
大手メディアは安倍政権の圧力にあらがい切れず、擁護と遠慮の塊のような報道に終始。NHKなどは、さも北方領土返還が実現しそうなムードを醸成したこともある。国民の目が曇るのも当然で、大手メディアは国民を騙し続けたようなもの。簡単に騙されてしまう国民性も問題だろう。
霞が関もヒドイありさまだ。恣意的人事で幹部官僚を恫喝。言うことを聞かせる政権の横暴に屈し、ヒラメ官僚の忖度はもはや行政の常識と、世界でも珍しい恥ずかしい国になってしまった。
安倍政権の7年8カ月はやりたい放題の私物化を正当化するペテン政治。菅首相はその継承を公然と言い放ち、この国の民主主義は今なお、風前の灯だ。政治評論家の森田実氏はこう言った。
「古代中国の昔から国造りの根幹は人間関係。その基本は道義と礼節であり、健全な常識の上に法の支配も成り立つ。国の根本を成す倫理観を徹底して破壊し尽くしたのが、安倍政治です。その継承など、とんでもありません。役人もメディアも堕落し、社会全体に腐敗が蔓延する今、この国が健全な常識を取り戻すのには莫大な時間がかかるかもしれません。それでも7年8カ月を悔い改めない限り、日本社会の将来は絶望的です」
支持率低下を歯牙にもかけず、菅政権は今後もデタラメを続ける。それが嫌なら国民はもっともっと怒りを可視化させるしかない。