朝日のインタビューがネット記事でアップされました。⇒【前夜夕食会「首相の領収書は?」 元検事が見た首相答弁】:朝日新聞デジタル https://t.co/whQTXUqsgi
— 郷原信郎 (@nobuogohara) 2019年11月21日
前夜夕食会「首相の領収書は?」 元検事が見た首相答弁
https://digital.asahi.com/articles/ASMCN5K4NMCNUTFK020.html
2019年11月21日09時00分 朝日新聞
インターネットで、参院本会議での安倍晋三首相の答弁を見る弁護士の郷原信郎さん=2019年11月20日午前10時13分、東京都港区、林敏行撮影
参院本会議で、共産党の紙智子氏の質問に答弁する安倍晋三首相=2019年11月20日午前11時44分、岩下毅撮影
プロが観る 国会論戦
国の予算を使って、首相が主催する「桜を見る会」をめぐる一連の問題について、安倍晋三首相が20日、参院本会議で答弁した。元検事の郷原信郎弁護士がこの日の審議をインターネット中継で傍聴。これまでの安倍首相の説明に、ブログで疑問を投げかけ続けてきた法律のプロは、首相答弁をどう見たか――。
郷原氏が最も注目した首相答弁は、桜を見る会の前夜に例年行っている夕食会の主催者がだれか、という点だった。
ネット経由で見た国会審議について、感想を話す弁護士の郷原信郎さん=2019年11月20日午前9時36分、東京都港区、林敏行撮影
【立憲民主・那谷屋正義氏】 主催者は誰か。首相ご自身か後援会か。まさかホテル主催か。
【首相】 夕食会の主催者は安倍晋三後援会であり、夕食会の段取りについては、私の事務所がホテル側と相談を行った。
首相は、官邸で記者団に説明した15日には「政治資金規正法で定められた後援会活動と、実際の後援会活動は分けて考える必要があると思うが、広い意味で言えば、当然、後援会活動」と話したが、夕食会の主催者は明らかにしていなかった。
郷原氏は「後援会主催」という20日の首相答弁を重要視する。「今後、夕食会での収支が明らかになれば報告書への記載義務が生じ、政治資金規正法違反の疑いに直結する」
インターネットで、参院本会議や衆院内閣委の論戦を見る弁護士の郷原信郎さん=2019年11月20日午前10時19分、東京都港区、林敏行撮影
一方で、郷原氏は次の首相答弁に首をひねった。
【首相】 夕食会に関して安倍晋三後援会としての収入、支出は一切無いことから、政治資金収支報告書への記載は必要ないものと認識している。
「夕食会の費用を、会場のホテル側と参加者個人とが直接のやりとりしたと首相が主張するならば、会に参加した首相夫妻、安倍事務所の関係者も、他の参加者同様に支払ったのか」と疑問を投げかける。
さらに「仮に首相や妻の昭恵氏らが支払っていれば領収書があるはずで、領収書を出すべきだ」と指摘。領収書があった場合には、首相側の収支報告書に何らかの記載があるべきで、未記載の場合は、政治資金規正法違反とする。
首相らの分が未払いだったとすれば、その金額分がホテル側から無償で提供されたことになり、企業からの利益供与に当たる。こちらも政党以外の政治団体が特定の企業からの献金を禁じる同法違反の可能性がある、と指摘する。
疑惑解明、首相否定の明細書が不可欠
【共産・紙智子氏】 会費は参加者がホテルに支払った、安倍事務所は集金しただけだという趣旨の説明を繰り返している。
【首相】 ホテル側への事前の支払いを行っていない。会場受付で安倍事務所が1人5千円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受け付け終了後に全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で支払いが行われた。
この答弁にも郷原氏は納得できないとした。「会場になったニューオータニのような一流のホテルが、入金がある前に領収書を切ることは通常あり得ない」
首相の主張通り、ホテル側と参加者が直接やりとりしたとすれば、「ホテル側は夕食会の総費用をいくらと見積もり、5千円の領収書を何枚用意したのか。参加者の実数と用意した領収書の枚数に1枚でも齟齬(そご)があれば、総費用とホテル側が実際に受け取った額に差が生まれる。ホテル側が損をした場合は、主催の後援会への利益供与になる」と話した。実態の解明には、首相が存在を否定する明細書の提示が不可欠との認識を示した。
夕食会の参加者を「800人規模」と想定して価格設定がされたという説明に対しては「実際に提供された飲食費が本当に5千円相当だったのかを明示しないといけない」と断じた。「仮に5千円を超過していた場合は、その超過金額は、後援会から、参加した有権者への『寄付』にあたり、公職選挙法に抵触する」とみる。
今年の夕食会ではプロの女性歌手が約20分間、無償で歌声を披露した。郷原氏は「実質的な寄付行為にあたり、公職選挙法違反の疑いも拭えない」と話す。
【首相】 私自身も事務所から相談を受ければ、推薦者について意見を言うこともあった。
首相は8日の参院予算委員会で「招待者の取りまとめなどには関与していない」と答えていたが、20日は一転、招待者の選定過程への自身の関与を認めた。郷原氏は「正直に答えず、ごまかそうとする姿勢は疑問だ。政治家として違法の疑いをかけられているのだから、もっと真摯(しんし)に説明責任を果たすべきだ」と語った。(聞き手・永田大)
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〈桜を見る会前夜祭〉桜を見る会の前日に東京都内で、安倍晋三首相夫妻同席のもと開かれる夕食会。首相の後援会が主催し、「ホテルニューオータニ」などを会場に、「1人5千円」の会費で行われている。野党からは会費が安すぎるという指摘が挙がっている。
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〈ごうはら・のぶお〉1955年生まれ。東京地検特捜部検事などを経て、2006年弁護士に。企業不祥事の第三者委員会の委員長も多く務める。著書に「『法令遵守(じゅんしゅ)』が日本を滅ぼす」など。
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国会で議論される法案や政策をめぐり、専門家や問題の当事者が質疑を観(み)て、論戦を評します。随時配信します。
2019年11月20日 参議院 本会議