経済関係の強化で軍事的な緊張を緩和しようとしているロシアに対し、米国と朝鮮はその逆を目指す
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2017.09.17 櫻井ジャーナル
ロシア主催のEEF(東方経済フォーラム)が9月6日から7日にかけてウラジオストックで開かれたが、このイベントに朝鮮も韓国や日本と同様、代表団を送り込んだ。その前、9月4日から5日に中国の厦門でBRICSの会議が開催されている。
EEFへ朝鮮が代表団を送ってきたことは緊張緩和という側面からすると良い兆候だが、そうした流れを断ち切ろうとするかのように朝鮮は9月15日にIRBM(中距離弾道ミサイル)を発射した。朝鮮の内部にも対立がありそうだ。アメリカはこれを利用して東アジアを準戦争状態にしようと目論んだが、これが実行されたらアメリカ経済が崩壊することは間違いない。アメリカ支配層の内部でも反対の声は出ただろう。
すでに韓国はロシアとの関係強化に積極的で、昨年1月にはロシアが発注した砕氷能力のある天然ガス輸送船を韓国が建造、この夏に北極海を試験航行している。北極海の氷が薄くなっていることを利用して新たな航路を切り開こうとしているのだが、両国や中国は鉄道や天然ガス輸送用パイプラインの建設も推進しようとしている。そのプロジェクトで最大の障害になっている朝鮮を取り込むことに成功すれば、東アジアに強大な経済圏が登場することになる。アメリカ支配層にとっては見逃すことのできない事態だ。
1991年12月にソ連が消滅、旧ソ連圏を属国化したと考えたアメリカ支配層は新たなターゲットを東アジアへ切り替えた。19世紀からアングロサクソン系の国、つまりイギリスやアメリカに操られてきた日本はともかく、中国も1980年代から新自由主義(強者総取り)を導入させることに成功、そのエリートの子どもをアメリカへ留学させて洗脳を進めてきた。
だからこそ中国でアメリカ系巨大企業が工場を建設してきたのだろうが、アメリカの好戦派が中東、北アフリカ、ウクライナを破壊、ラテン・アメリカも再制圧しようとしていることを見た中国はロシアとの関係を強化している。1992年2月、国防次官だったポール・ウォルフォウィッツを中心とするグループが作成した国防総省のDPG草案は潜在的なライバルを潰すという方針を打ち出していたが、その方針が裏目に出た形だ。
少なくとも結果として、東アジアにおけるアメリカ支配層の政策を支えているのは朝鮮。この国では2013年に金正日の妹である金敬姫の夫で中国との関係が深い張成沢が処刑され、その人脈も粛清された。金敬姫も毒殺されたと見られている。また、昨年12月19日にトルコのアンカラで射殺されたロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使はトルコとロシアが陥っていた難しい状況を平和的に処理したと言われているが、朝鮮半島にロシアで最も強い人脈を持っている人物だということでも知られていた。
中国やロシアは朝鮮人脈にダメージを受けたが、そうした中、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はビジネス関係を強化することで軍事的な緊張を緩和させようとしている。それに対してアメリカは軍事的な緊張を高め、それに呼応する形で朝鮮は核爆発やミサイル発射の実験を繰り返してきた。その技術取得に疑惑があることは本ブログでも指摘した通りだ。
ネオコンをはじめと知る好戦派は行き詰まっている。ネオコン系シンクタンクPNACが2000年に発表した報告書「米国防の再構築」が言うところの「新たなパール・ハーバー」を目論んでいる可能性は否定できない。