実は“爆弾”かもしれない! 肩痛は専門医にみてもらうべき3つの理由
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170605-00005836-besttimes-life
BEST TIMES 6/5(月) 12:00配信
肩の痛みや違和感、放置していませんか? 肩の痛みはつい放置してしまいがちですが、手遅れの場合は手術が必要になることも。つらい肩の痛みを改善するにはどうしたらよいのでしょうか。実は気づいていない肩痛のリスクと、専門医に診てもらうべき3つの理由を5000件超の治療実績を持つ肩治療のエキスパートである鈴木一秀先生が解説します。
■他人事じゃない「肩の病気」
現在、40〜60代での発症率が70%を超えており、もはや国民病と言っても過言ではない四十肩(五十肩)。その名の通り、高齢になってから起こる疾患とされていました。しかし、パソコンやスマートフォンを操作する時間が増えたために、今や大人だけでなく肩こりに悩む小中学生も増えています。肩の病気は年齢に関係なく、誰もが他人事だとは言えない疾患なのです。
私はこれまで肩関節の専門医として、5000件以上の治療にあたり、2000件を超える肩関節の手術を行ってきました。この中には人工関節に置き換える手術も含まれています。正確な患者数を数えることが難しい疾患ではありますが、全国の専門医の治療数を合わせるだけでも、相当な患者数になるはずです。
私が実際に診察や治療を行っている中で強く感じるのは、「肩の痛みはたとえ軽くても放置せず、専門家のいる医療機関で、できるだけ早く治療することが重要だ」という、ごく当たり前のことです。
肩の痛みは専門医に診てもらうべき3つの理由
(1) 肩痛の重症度は自分で判断できない
現在では、インターネットを開いて「肩が痛い」と検索すれば、たくさんの情報が出てきます。肩こりや四十肩にまつわる情報から「自然に治るなら病院に行かなくてもよい」と判断し、放置してしまう人は多いのではないでしょうか。
しかし、肩の疾患には、多くの種類があります。
〜肩痛の種類〜
■肩こり
肩こりの症状がある人は、いつ悪化するかわからない“四十肩予備軍”です。姿勢や習慣を見直して肩への負担を取り去らないと、激しい痛みに襲われる可能性があります。
■四十肩・五十肩
肩に炎症を起こしており、痛みが現れた状態が「四十肩」です。四十肩の症状には一定の段階があり、このときに適切なケアを行わないと、肩がかたまってしまい、腕が動かしにくくなってしまいます。
■腱板断裂
痛みによってうまく動かせないほど悪化している場合は、腱板断裂の疑いがあります。原因が転倒などのけがによるものなのか、加齢による変性によるものなのかで治療法が異なりますが、いずれにせよ早急に専門医に診てもらう必要があります。
このように、肩の疾患には多数の種類があります。自然に治る人がいる一方で、ごくわずかな痛みでも、知らぬ間に腱板が断裂し、日常動作がままならなくなってしまう人もいます。こうなると、リハビリだけでの治療が困難となり、高額な手術が必要になってしまうのです。
(2) 痛みの原因は肩こりだけじゃない
痛みは体の危険を知らせるサインです。たとえわずかな痛みでも、炎症を起こしているのは事実であるため、痛みの原因をしっかりと見極め、根本的に改善する必要があります。
肩の痛みの原因は、肩こりだけではありません。心筋梗塞や肺がん、胃腸障害などの内臓の疾患が原因で、肩痛が現れることがあります。中には、体は健康で、どこにも悪いことがないにも関わらず、ストレスによる心因性の痛みが生じているケースもあります。
肩の痛みといっても多様な原因があり、重大な疾患の症状である可能性もあるため、自己判断で痛みを放置してしまうのは、非常に危険なことなのです。
(3) 肩関節の診断は専門医でも難しい
当院には、肩の痛みを訴えて受診する人が年間1200名。その一割が腱板断裂を起こしています。痛みが生じてから2年以上という人も多く、「もっと早く来ていれば…」と思うことがよくあります。
また中には、近所の整形外科クリニックに通いながらも、なかなか治らなくて悩んでいるという人もいます。
これは、整形外科の中にも腰痛の専門医、膝痛の専門医、関節リウマチの専門医などがおり、専門外の整形外科医にとって肩関節の構造や機能は非常に複雑なため、肩関節は中々とっつきにくい分野でもあるためです。
さらに、腱板断裂はレントゲンで発見することは難しく、正確な判断の上でMRIなどの検査を行わなければ見落とされてしまう危険もあるのです。
■病院・医師の見極め方
良い医師や、自分に合った治療方法を見極めるのはたいへん難しいことです。患者さんは、どこに行けばよいのか、なかなか判断がつけられないのではないでしょうか。
まず、普段の生活で気になる症状が現れた時は、近所の整形外科クリニックを受診することになると思います。その際に医師を見極める基本的なポイントは「患者さんときちんと向き合っているかどうか」です。
患者さんを観察し、話に耳を傾け、きちんと目を見て話しているか。そのポイントを念頭に置いて、「もし満足のいく診療が行われていない」「なかなか治らない」と感じたら、肩の専門医に診てもらうと良いでしょう。
とはいえ、肩医療にはまだ細分化された専門医制度がなく、「肩の専門医」がいるわけではありません。
ただ、「日本肩関節学会」に所属している医師、特に代議員であれば、肩に関する学術的な知識を持ち、正確な診断と効果的な治療法、また最新の情報などを身に着けています。したがって、専門医を受診したいときは、日本肩関節学会の代議員名簿をホームページで確認してみるとよいかと思います。
肩の痛みをそのままにしていると、日常生活に支障をきたすばかりか、気持ちまで滅入ってしまいます。これまで普通にできたことが突然できなくなってしまうストレスは、想像以上に大きいものです。
肩関節の専門医を患者さんが見つけるのは困難です。病院であれば「肩関節専門診」を標榜している病院や大学病院を受診するのが良いでしょう。本文中に記載されている肩関節学会のサイトで代議員名簿を確認して受診するのも良いかと思います。慢性的な痛みに悩んでいる方は、これ以上重症化しないうちに、肩の専門医を受診してみてはいかがでしょうか?