東電の損失と11月の経済指標
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52901116.html
2016年12月27日 在野のアナリスト
東芝が子会社WHによる米原子力サービス会社S&Wの買収に関して、1000億円以上の損失を計上する可能性と伝わります。しかし三菱重工による仏原子力大手アレバへの出資も同様ですが、どうやら欧米の原子力関連産業が、中国などに買収されて技術を盗まれるのを恐れて、日本が損をだすことを半ば覚悟しながら買収や出資をしているような、そんな噂もあります。つまりかつての湾岸戦争のとき、軍をださなければカネを出せ、といわれた構図と同じ、米軍の傘の下で、原発を管理、維持することなくぬくぬくと過ごしているのだから、世界の原子力産業に対してカネをだせ、と言われて企業が政府から尻を叩かれた結果なのかもしれません。
損失度外視で海外の原子力産業にも、お金をだす。出すよう仕向けられている。そう考えると、政府が必死になって原発再稼動や、高速増殖炉計画をつづけようとすることも理解できます。国民の税金で原子力産業を潤し、そのお金で海外の原子力産業を下支えする。前回のWHの巨額損失のとき、どうして東芝をつぶさないのか? と疑念をもたれましたが、そもそも官製買収の一環でWHを買収したなら、東芝はとばっちり、政府の尻拭いをさせられただけなのですから、それで倒産させようとしたら東芝が怒りだすでしょう。
11月の有効求人倍率が1.41倍となりました。しかし新規求職者数が前年同月比5.4%も減少しており、さらに10月はほとんど横ばいか、マイナスだった産業まで、11月になると新規求人を増やした。年後半は暇になる、と思っていたらトランプ相場をみて、急に求人をだしたのかもしれません。もしくは年度末にむけて、在庫を生産するためか。いずれにしろ求職者が減っている中ですから、人材確保には苦労する構造となり、日本からますます産業は逃げていく方向なのでしょう。特に今回、器具製造業が伸びており、これは産業機械関連であることからも、株価上昇で企業が設備投資をしておく、といった需要をこなすための求人、とみることができます。
11月家計調査では実質で前年同月比1.5%減となり、今年は2月を除いてずっとマイナスが続きます。しかも教育、住居修繕、被服などの余剰的な消費が減っており、家計は苦しくなっていることがうかがえる。しかし勤労者世帯の実収入でみると、前年同月比で実質1.0%増と、収入は増えている。一連のことから読み解けるのは、求職者が減っていることからも、人材不足が顕著で、賃金上昇を促し易い状況がととのっている。ただし、産業機械の分野で人材確保を急いでいることからも、設備投資をしようとする企業の気配もある。それは人材不足で、日本から脱出して海外で工場を設置しよう、という動きにつながるのかもしれません。安倍政権では少子化対策もすすまず、労働人口の減少がますますすすむのですから、企業としては当然の判断といえます。
しかし原子力産業のように、海外企業を買収、出資しても痛い目に遭うケースも多い。また10月の世界電子部品出荷額が、前年同月比で13.1%減になるなど、世界経済には暗雲もただよう。スマホ需要も一巡し、またパソコンが低迷。IoTが主力になるのはまだまだ先、海外に出たとて需要減少の問題はつきまといます。日本企業に限った話ではありませんが、シェアリングが主流になれば、本格的な需要減退が、企業にとって重しになるでしょう。
しかも日本ではマイナス金利が導入され、資金は借りやすいものの、逆に金融機関にとっては貸し難くなった。しかも不動産は相場自体が高くなってしまい、金利の低さ以上に価値の目減りが気になってくる。一部では、このマイナス金利のことを『台無し金利』と呼びます。儲かりそうなところにはわっと資金が集まり、バブルをつくり、そして市場を壊していく。バブルの市場と、一方では衰退産業なのに、官製で下支えが入る原子力産業のようなところと。台無し金利なのに、破綻しかけた企業には資金が集まらない、という実体からすれば、今後の世界経済は不安定化していくことにもなり、企業の淘汰の時代がはじまることを、ある程度覚悟していくべきでもあるのでしょうね。