■リスクオフで日本円が通貨高になる理由
それでは、何故、リスクオフ局面で日本円は急激な通貨高に見舞われるのか。
詳細はテクニカルなので捨象するが、筆者が、ドル円レートがファンダメンタルズ(マネタリーベース比率)とトレーダーの順張り戦略(具体的には、1期前の為替レートの変動率で今期の為替レートの変動率を説明する方法)の混合モデルで決まるという定式化で推定した結果、金融危機や有事(例えば、戦争やテロ)による「リスクオフ」の局面では、為替レート変動におけるファンダメンタルズの説明力が急激に低下する一方、順張り戦略が有効になる可能性があることがわかった。(逆に、「リスクオン」の局面では、ファンダメンタルズの説明力が高まる)
これを解釈すると、リスクオフの局面では、ファンダメンタルズを重視する投資家が投資を控え、短期的な利益を追求するトレーダーによる順張り戦略が支配的な戦略になり、これが、円高、及びスイスフラン高をもたらしている可能性が高いということになる(多くのトレーダーは、逆張りでリスクをとるよりも、順張りでトレンドをフォローするような戦略を多く用いると考えられる)。
問題は、円やスイスフランにおいて、トレーダーが何故、円高、スイスフラン高方向の順張り戦略をとるかだが、それは、各種サーベイ調査によれば、これらの通貨の長期のトレンドがそれぞれ、円高、スイスフラン高であるという単純な理由、もしくは、いずれも、対外純債権国である可能性が指摘されている。
従って、「リスクオフ」での円高になった場合、金融政策によって短期的な円高を阻止するのは困難ということになる。
ただし、順張り戦略の影響力は、時間の経過とともに減衰していく。日本の場合、約半年程度で影響力はほぼゼロになり、ファンダメンタルズが再び支配的になる。
そして、円高がもたらす経済へのマイナスの影響を相殺するために金融緩和が実施されるのであれば、その後は円安に転換することが想定されるため、リスクオフ局面での急激な円高進行に過度に反応しないほうがよいかもしれない。
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