65. 真のジャーナリズムとは[1] kF6CzINXg4OBW4Npg4qDWYOAgsaCzQ 2022年7月24日 18:08:51 : U7O32ojzdc :TOR OTQuLzZia0tRSXM=[-2]
22.貧しい人たちに
クリストの「ジャーナリズム」は貧しい人たちや奴隷を慰めることになった。
それは勿論天国なぞに行こうと思はない貴族や金持ちに都合の善かった為
もあるであろう。
しかし彼の天才は彼等を動かさずにはいられなかったのである。
いや、彼等ばかりではない。
我々も彼の「ジャーナリズム」の中に何か美しいものを見出している。
何度叩いても開かれない門のあることは我々も亦知らないわけではない。
狭い門からはいることもやはり我我には必ずしも幸福でないことを
示している。
しかし彼の「ジャーナリズム」はいつも無花果のように甘みを持っている。
彼は實にイスラエルの民の生んだ、古人に珍しい「ジャーナリスト」だった。
同時に又我々人間の生んだ、古今に珍しい天才だった。
「預言者」は彼以後には流行していない。
しかし彼の一生はいつも我々を動かすであろう。
彼は十字架にかかる為に、
---「ジャーナリズム」至上主義を推し立てる為にあらゆるものを犠牲にした。
ゲーテは婉曲にクリストに対する彼の軽蔑を示している。
丁度後代のクリストたちの多少はゲーテを嫉妬しているように。
---我々はエマヲの旅びとたちのように我々の心を燃え上がらせるクリストを
求めずにはいられないのである。
芥川龍之介『續西方の人』より
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